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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J |
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管理番号 | 1129984 |
審判番号 | 不服2003-18399 |
総通号数 | 75 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-07-09 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-09-19 |
確定日 | 2006-01-19 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第334769号「記録装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 7月 9日出願公開、特開平 8-174880〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成6年12月20日の出願であって、平成15年8月15日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年9月19日付けで本件審判請求がされるとともに、同年10月20日付けで明細書についての手続補正(平成6年改正前特許法17条の2第1項5号の規定に基づく手続補正であり、以下「本件補正」という。)がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成15年10月20日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正内容 本件補正後の【請求項1】、【請求項2】及び【請求項8】の記載は次のとおりであり(下線部が補正により追加された箇所である。)、本件補正は特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものと認める。 【請求項1】 記録体の表面に液体又は蒸気又は加熱により液体となる固体と接した状態で加熱し加熱温度に応じた後退接触角を形成し、その潜像部に色材を含有した記録剤を接触させ可視像を形成し、その可視像を記録紙に転写した後、該潜像部表面を液体又は蒸気又は加熱により液体となる固体と非接触の状態で加熱することにより潜像を消去する記録装置において、潜像消去用加熱部の駆動を記録体搬送速度に応じて制御する機構を設け、印字および転写時の記録体搬送速度と潜像消去時の記録体搬送速度とを変えること、記録体長を1つの画像データが書き込まれる部分とし、その記録体長を除像部から転写部までの長さと、記録紙長から送り方向の余白長を差し引いた長さとの和よりも長くしたことを特徴とする記録装置。 【請求項2】 記録体の表面に液体又は蒸気又は加熱により液体となる固体と接した状態で加熱し加熱温度に応じた後退接触角を形成し、その潜像部に色剤を含有した記録剤を接触させ可視像を形成し、その可視像を記録紙に転写した後、該潜像部表面を液体又は蒸気又は加熱により液体となる固体と非接触の状態で加熱することにより潜像を消去する記録装置において、記録体の搬送速度、又は記録体の搬送速度及び印字速度を、該潜像消去部を通過する記録体の温度に応じて制御する機構を設け、印字および転写時の記録体搬送速度と潜像消去時の記録体搬送速度とを変えること、記録体長を1つの画像データが書き込まれる部分とし、その記録体長を除像部から転写部までの長さと、記録紙長から送り方向の余白長を差し引いた長さとの和よりも長くしたことを特徴とする記録装置。 【請求項8】 該記録体の形状をシート状とし、その巻き取り部に潜像消去用加熱機構を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の記録装置。 2.独立特許要件の判断 本件補正後の請求項1〜8に係る発明は、すべて「印字および転写時の記録体搬送速度と潜像消去時の記録体搬送速度とを変えること」(以下「限定事項1」という。)、「記録体長を1つの画像データが書き込まれる部分とし、その記録体長を除像部から転写部までの長さと、記録紙長から送り方向の余白長を差し引いた長さとの和よりも長くしたこと」(以下「限定事項2」という。)との2つの限定事項を必須の構成としている。 限定事項2の「1つの画像データが書き込まれる部分」の最大長は「記録紙長から送り方向の余白長を差し引いた長さ」であるから、「記録体長を1つの画像データが書き込まれる部分とし」との構成が、記録体長が1つの画像データよりも長いということだけを意味するのであれば、「記録紙長から送り方向の余白長を差し引いた長さとの和よりも長くしたこと」以外に何もつけ加えるものではないから、2つの画像データを書き込むことができない程度の長さと解する余地が十分ある。その解釈を採れば、「記録体長を1つの画像データが書き込まれる部分とし」との構成は願書に最初に添付した明細書(以下、添付図面を含めて「当初明細書」という。)には記載されていない。そこで、記録体長が1つの画像データよりも長いということだけを意味すると解すべきであろうが、二様の解釈が可能ということは、請求項1,2の記載が明確でないということであり、「特許を受けようとする発明の構成に欠くことができない事項のみを記載した」には該当しないから、平成6年改正前特許法36条5項2号に規定する要件を満たさない。したがって、本件補正後の請求項1〜8に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない、すなわち平成6年改正前特許法17条の2第4項で読み替えて準用する同法126条3項の規定に違反している。 後記3.では、「記録体長を1つの画像データが書き込まれる部分とし」との意味を、記録体長が1つの画像データよりも長いという意味に解する。 3.新規事項追加の判断 本件補正後の請求項8は請求項1又は2を引用しているから、請求項8に係る発明は限定事項1,2に加えて、「該記録体の形状をシート状とし、その巻き取り部に潜像消去用加熱機構を設けたこと」(以下「限定事項3」という。)との3つの限定事項を必須の構成とするものである。 当初明細書の特許請求の範囲には、限定事項1が【請求項8】において請求項1〜7を引用して記載されており、限定事項2のうち「記録体長を除像部から転写部までの長さと、記録紙長から送り方向の余白長を差し引いた長さとの和よりも長くしたこと」が【請求項9】において請求項8を引用して記載されており、限定事項3が【請求項10】において請求項1又は2を引用して記載されている(請求項8,9を引用していない。)。すなわち、限定事項1〜3すべてを必須の構成とする請求項は当初明細書には存在しない。 当初明細書の発明の詳細な説明には、限定事項1が段落【0018】に記載され、それを前提とし「望ましくは」と断った上で、「記録体長を除像部から転写部までの長さと、記録紙長から送り方向の余白長を差し引いた長さとの和よりも長くしたこと」(限定事項2の一部)が段落【0019】に記載されており、同段落には「このような構成にすることで、印字及び転写中に除像部へ除像すべき領域の先頭部が達することがなくなるため、印字及び転写のモード時と除像モード時の記録体搬送速度を変えて除像を行なうことが簡単に実現できるようになる。」と記載されているから、【図1】に代表されるような無端状記録体を用いる場合を前提として、「除像部から転写部までの長さ」とは、記録体搬送方向において除像部から転写部までの長さ(その間に潜像形成・現像部が存する)を意味し、記録体搬送方向において転写部から除像部までの長さが「記録紙長から送り方向の余白長を差し引いた長さ」を超えることを意味することが明らかである。また、2.で述べたとおり、「記録体長を1つの画像データが書き込まれる部分とし」との意味が、記録体長が1つの画像データよりも長いという意味であれば、「記録体長を除像部から転写部までの長さと、記録紙長から送り方向の余白長を差し引いた長さとの和よりも長くしたこと」以外につけ加えるものではない。 他方、限定事項3については、【図10】にその例が図示されているとともに、「図10は記録体を形状をシート状としその巻き取り部(終端部)に除像用加熱機構を設けるようにした装置構成例である。この例では記録体をシート状としシート巻き取り部(終端部)で一括して加熱し、除像を行なう構成となっている。シートは全て巻き取られとシート搬送を逆方向に駆動し、元に戻すようにしても良い。除像はヒーターが配され、外部と断熱された終端部のケース中で行なわれる。記録体はヒーターの配されたケース中に長時間留まるため、ヒーター温度を高温としなくても良好に除像がなされる。この手段によれば、高速印字の時でも良好な除像を行なうことができ、また、除像ヒーター部を低消費電力で駆動することができる。」(段落【0020】、改行及び1字空白は省略)及び「請求項10の発明によれば、高速印字のときでも良好な除像を行なうことができ、また、除像ヒーター部を低消費電力で駆動することができる。」(当初明細書の段落【0031】)との各記載があるにとどまる。【図10】の例であれば、「画像データが書き込まれる部分」(記録紙長から送り方向の余白長を差し引いた長さ)はすべて巻き取り部に収納されなければならないから、「記録体長を除像部から転写部までの長さと、記録紙長から送り方向の余白長を差し引いた長さとの和よりも長く」するだけでは不十分であり、除像部から記録体保持部(【図10】の左側の巻き取り部)までの長さ、記録紙長から送り方向の余白長を差し引いた長さ、及び除像部の巻取軸から潜像形成部(ヘッド部)までの長さの和よりも長くしなければならないはずである。 さらに、限定事項1については、段落【0019】の記載からみて、潜像消去時の記録体搬送速度が、その一時期において転写時の記録体搬送速度と異なっておればよいのではなく、常に異なっていなければならない。すなわち、転写時には潜像消去は行われず、潜像消去時には転写は行われないと解すべきであって、【図10】の例では、転写部から除像部までの長さを「記録紙長から送り方向の余白長を差し引いた長さ」より長くしなければならないが、そのようなことは当初明細書に記載されていない。 以上のとおりであるから、限定事項1〜3を必須の構成とする発明(本件補正後の請求項8に係る発明)が、当初明細書に記載されているとも、当初明細書の記載から自明であるとも認めることができないから、本件補正は当初明細書に記載した事項の範囲内においてされたものではない。すなわち、本件補正は平成6年改正前特許法17条の2第2項で準用する同法17条2項の規定に違反している。 [補正の却下の決定のむすび] 本件補正が平成6年改正前特許法17条の2第2項で準用する同法17条2項の規定及び同法17条の2第4項で準用する同法126条3項の規定に違反しているから、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により、本件補正は却下されなければならない。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての当審の判断 1.本願発明の認定 本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成14年8月5日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載されたとおりの次のものと認める。 「記録体の表面に液体又は蒸気又は加熱により液体となる固体と接した状態で加熱し加熱温度に応じた後退接触角を形成し、その潜像部に色材を含有した記録剤を接触させ可視像を形成し、その可視像を記録紙に転写した後、該潜像部表面を液体又は蒸気又は加熱により液体となる固体と非接触の状態で加熱することにより潜像を消去する記録装置において、潜像消去用加熱部の駆動を記録体搬送速度に応じて制御する機構を設けたことを特徴とする記録装置。」 2.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-91909号公報(以下「引用例1」という。)には、次のア〜ウの記載が図示とともにある。 ア.「加熱状態でかつ液体と接触させた場合に後退接触角が低下する表面を有する記録体を備え、該記録体の表面に液体もしくは蒸気あるいは加熱により液体となる固体からなる接触材料を接した状態で選択的に加熱し加熱温度に応じた後退接触角を形成する方法で当該加熱部に潜像を形成し、該潜像に色材を含有した記録剤を接触させて現像することにより可視像を形成し、この可視像を記録紙に転写して画像を記録する手段を有する記録装置において、 上記接触材料中及び/または記録剤中及び/またはクリーニング液中に帯電防止剤を添加することを特徴とする記録装置。」(【請求項1】) イ.「請求項1,2記載の記録装置において、可視像を記録紙に転写した後、加熱によって潜像を消去(除像)する手段を有することを特徴とする記録装置。」(【請求項3】) ウ.「記録体表面は、接触材料の不存在下で加熱を受けると、接触材料との相互作用が生じないないため、元の後退接触角に戻り潜像が消去(除像)される。従って、接触材料と接触させた状態で加熱する手段と、接触材料の不存在下で加熱する手段とを設けることにより、記録、消去が容易に行なえる記録装置を形成することができる。」(段落【0004】) 3.引用例1記載の発明の認定 引用例1の記載ウによれば、記載イの「加熱によって潜像を消去(除像)」は、接触材料の不存在下で行われる。 したがって、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。 「加熱状態でかつ液体と接触させた場合に後退接触角が低下する表面を有する記録体を備え、該記録体の表面に液体もしくは蒸気あるいは加熱により液体となる固体からなる接触材料を接した状態で選択的に加熱し加熱温度に応じた後退接触角を形成する方法で当該加熱部に潜像を形成し、該潜像に色材を含有した記録剤を接触させて現像することにより可視像を形成し、この可視像を記録紙に転写して画像を記録する手段、及び可視像を記録紙に転写した後、接触材料の不存在下で加熱によって潜像を消去(除像)する手段を有する記録装置において、 上記接触材料中及び/または記録剤中及び/またはクリーニング液中に帯電防止剤を添加すること記録装置。」(以下「引用発明1」という。) 4.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定 引用発明1の「接触材料の不存在下で加熱によって潜像を消去(除像)」と、本願発明の「潜像部表面を液体又は蒸気又は加熱により液体となる固体と非接触の状態で加熱することにより潜像を消去」に相違はないから、引用発明1の「潜像を消去(除像)する手段」を「潜像消去用加熱部」ということができる。 したがって、本願発明と引用発明1とは、 「記録体の表面に液体又は蒸気又は加熱により液体となる固体と接した状態で加熱し加熱温度に応じた後退接触角を形成し、その潜像部に色材を含有した記録剤を接触させ可視像を形成し、その可視像を記録紙に転写した後、該潜像部表面を液体又は蒸気又は加熱により液体となる固体と非接触の状態で加熱することにより潜像を消去する潜像消去用加熱部を有する記録装置。」である点で一致し、次の点で相違する。 〈相違点〉本願発明が「潜像消去用加熱部の駆動を記録体搬送速度に応じて制御する機構」を設けたのに対し、引用発明1は同機構を設けていない点。 5.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-31954号公報(以下「引用例2」という。)には、次のエ〜カの記載がある。 エ.「印字データに従ってインクリボンのインクを部分的に溶融するサーマルヘッドと加熱手段により加熱されている中間転写体との間にインクリボンを介装させ、前記中間転写体にばね部材により圧接されるプレッシャローラを配設し、前記サーマルヘッドによりインクリボンのインクを前記中間転写体に転写して一次記録像を形成し、前記中間転写体と前記プレッシャローラとの間に挿入される用紙に、前記中間転写体の一次記録像を前記プレッシャローラの圧接力により転写して所望の印字を行なう熱転写プリンタにおいて、印字モードに対応して印字速度を変化させる印字速度調整手段と、印字速度に対応して前記中間転写体に対する前記プレッシャローラの圧接圧を変化させる圧接圧調整手段と、印字速度に対応して前記加熱手段による前記中間転写体の加熱温度を変化させる加熱温度調整手段とを設けたことを特徴とする熱転写プリンタ。」(【請求項3】) オ.「本熱転写プリンタは、印字パターンにより印字速度を変化させるようになっている。すなわち、図形や表などを含むグラフィック印字の場合には、普通の文章の印字であるキャラクタ印字と比較して印字速度が遅くなるよう本プリンタの制御手段(図示せず)により印字速度を制御されるようになっている。」(段落【0023】) カ.「印字速度の遅いグラフィックデータの場合には、中間転写ローラ1と一次記録像をなすインクとの接触時間が長く、一方、印字速度の速いキャラクタデータの場合には、中間転写ローラ1と一次記録像をなすインクとの接触時間が短い。そこで、この接触時間の長短に係わりなく、中間転写ローラ1からインクに与えられる熱量をほぼ等しくするため、印字速度の遅いグラフィックデータの場合には、ヒータ2による中間転写ローラ1の加熱温度を低く設定し、また、印字速度の速いキャラクタデータの場合には、ヒータ2による中間転写ローラ1の加熱温度を高く設定するようになっている。」(段落【0036】) これら記載によれば、引用例2には「サーマルヘッドによりインクリボンのインクを中間転写体に転写して一次記録像を形成し、前記中間転写体の一次記録像を用紙に転写する熱転写プリンタにおいて、印字速度の異なる複数の印字モードがあり、印字速度に応じて中間転写体の加熱温度を変化させる熱転写プリンタ。」(以下「引用発明2」という。)が記載されている。 引用発明1と引用発明2はともに、選択的加熱を行うことで、印字又は記録する装置である(より具体的には、引用発明1の実施例及び引用発明2は、共通してサーマルヘッドを用いている。)。そして、引用発明2は、印字速度の異なる複数の印字モードを有しており(その理由は、グラフィック印字とキャラクタ印字では、印字速度を異ならせることが適当だからである。)、引用発明1においても引用発明2と同様の理由により、印字速度(記録速度)の異なる複数の印字モード(記録モード)を有するよう構成することには、当業者にとって何の困難性もなく、記録速度が速ければ記録体搬送速度も速くなる。 ところで、引用発明1の「潜像を消去(除像)する手段」(潜像消去用加熱部)は、加熱により潜像を除去するのであるが、潜像除去のためにはある必要所定量加熱しなければならないことは自明であるとともに、記録体搬送速度を速くすれば、「潜像を消去(除像)する手段」を通過する時間が短くなるから、加熱量(単位時間の)を記録速度(記録体搬送速度)とは無関係に一定としたのでは、高速記録時には低速記録時よりも、記録体に対する加熱量が小さくなることは自明である。 そして、引用発明1の「潜像を消去(除像)する手段」と引用発明2における中間転写体加熱手段は、サーマルヘッドとは別の加熱手段である点で一致し、引用発明2においては、中間転写体と一次記録像をなすインクとの接触時間の長短に係わりなく、中間転写体からインクに与えられる熱量をほぼ等しくするために、中間転写体の加熱温度を変化させる加熱温度調整手段を有しているものである。 そうすると、引用発明1の「潜像を消去(除像)する手段」と引用発明2の中間転写体加熱手段は、ともに記録体(中間転写体)とが他の何らかの部材の通過時間又は接触時間の長短により、記録体又は中間転写体に対する加熱量が変化するものであるから、引用発明2における加熱温度調整手段を引用発明1に適用して、記録体が「潜像を消去(除像)する手段」を通過する時間の長短にかかわらず、記録体に対しての加熱量をほぼ等しくすることには、当業者にとって何の困難性もない。 そればかりか、引用発明1において、確実に潜像を除去できる程度に加熱する必要があることは当然であるところ、記録体搬送速度が高速である場合に確実に潜像除去できる程度に加熱量(単位時間の)を設定しておき、低速の場合に加熱量を減少しないとしても、確実な潜像除去は行えるかもしれないが、それでは必要以上に加熱することになり、エネルギーを無駄に消費することになるから、省エネルギーという観点から見ても、必要な加熱は行うが、必要以上に過度に加熱しないようにすることに困難性があるということはできない。 そして、引用発明1において、記録速度の異なる複数の記録モードを有するよう構成し、記録体が「潜像を消去(除像)する手段」の長短にかかわらず、記録体に対しての加熱量(単位時間の)をほぼ等しくすることは、とりもなおさず、相違点に係る本願発明の構成を採用することにほかならない。 以上のとおりであるから、相違点に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。なお、記録体搬送速度が速ければ、単位時間の加熱量を大きくする必要があることは当然の技術常識であるが、例えば特開平6-55833号公報(原査定の拒絶の理由に引用された文献の1つである。)に「記録状態での記録体速度が大きくなるので、潜像除去時における赤外線ヒーター5の熱量不足が懸念されるが、このような場合には、ヒーター5への印加電力を大きくするか、あるいは、ヒーター5の数を増やすことで記録体1の高速移動時における除像機能を確保することができる。」(段落【0025】)と記載されていることを指摘しておく。 したがって、本願発明は引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-11-16 |
結審通知日 | 2005-11-22 |
審決日 | 2005-12-05 |
出願番号 | 特願平6-334769 |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J) P 1 8・ 121- Z (B41J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 藤本 義仁 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
長島 和子 國田 正久 |
発明の名称 | 記録装置 |
代理人 | 廣田 浩一 |