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審決分類 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1130086
審判番号 不服2003-5425  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-03 
確定日 2006-01-26 
事件の表示 平成 9年特許願第168384号「モデルベースの業務支援システムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 3月31日出願公開,特開平10- 83420〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成9年6月25日(優先権主張 平成8年6月28日)の出願であって,平成15年2月28日付で拒絶査定がされ,これに対し,同年4月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年4月11日付で手続補正がなされたものである。

第2 平成15年4月11日付の手続補正についての補正却下の決定
1 補正却下の決定の結論
平成15年4月11日付の手続補正を却下する。

2 理由
(1)補正後の本願発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,
「【請求項1】 コンピュータが業務支援サービスを提供するシステムであって,
ユーザの業務に関する組織,文書,作業のうち少なくとも1つを表す情報と,該情報間の参照関係を該参照関係の種別を示すリンク情報によって静的に定義した業務モデルとを記憶する業務モデル記憶手段と,
前記業務モデルで定義されている情報を用いて前記ユーザに提供されるサービスの処理の記述であるサービスモデルを記憶するサービスモデル記憶手段と,
入力されたサービス要求に基づいて前記サービスモデル記憶手段から前記サービスモデルを取り出し,さらに,前記サービス要求に応じて,前記リンク情報によって関係付けられた1または2以上の情報を前記業務モデル記憶手段から取り出し,該取り出した情報を用いて,前記サービスモデルに記述された処理を実行するサービス手段と
を備えることを特徴とする業務支援システム。」と補正された。

上記補正は,請求項に記載した必須の構成要件を明確に定義するための補正であり,特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2) 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,概略「請求項1には「入力されたサービス要求に基づいて前記サービスモデル記憶手段から前記サービスモデルを取り出して,前記サービス要求に応じて前記業務モデル記憶手段から取り出した前記業務モデルを参照しながら,前記サービスモデルに記述された処理を実行するサービス手段」について,依然として,業務支援システムの動作がコンピュータのハードウエア資源を用いて具体的に実現されたソフトウエアによる情報処理であると把握できる程度に具体的に記載されていないから,この請求項に係る発明は自然法則を利用した技術的思想の創作である発明には該当しない。」というものである。

(3) 請求人の主張
請求人は,前述のとおり請求項を補正し,次の主張を展開している。
本願の請求項1に係る発明は,コンピュータが業務支援サービスを提供するシステムに関するものであって,「業務モデル記憶手段」,「サービスモデル記憶手段」,及び「サービス手段」を備えることを特徴とするものである。
(ア) 「業務モデル記憶手段」は,「ユーザの業務に関する組織,文書,作業のうち少なくとも1つを表す情報と,該情報間の参照関係を該参照関係の種別を示すリンク情報によって静的に定義した業務モデルとを記憶する手段」であり,これはコンピュータの記憶装置によって実現されるものである。
(イ) 「サービスモデル記憶手段」は,「前記業務モデルで定義されている情報を用いて前記ユーザに提供されるサービスの処理の記述であるサービスモデルを記憶する手段」であり,このサービスモデル記憶手段もコンピュータの記憶装置によって実現されるものである。
(ウ) 「サービス手段」は,「入力されたサービス要求に基づいて前記サービスモデル記憶手段から前記サービスモデルを取り出し,さらに,前記サービス要求に応じて,前記リンク情報によって関係付けられた1または2以上の情報を前記業務モデル記憶手段から取り出し,該取り出した情報を用いて,前記サービスモデルに記述された処理を実行する手段」であり,ここに記載の処理は,コンピュータがその記憶装置(業務モデル記憶手段やサービスモデル記憶手段)に記憶された各種情報を用いてCPU等の制御により実行するものである。
(エ) コンピュータのハードウエア資源を用いて具体的に実現されたソフトウエアによる情報処理であることは明らかである。

(4) 当審の判断
コンピュータが入力装置や出力装置及び記憶手段を備えていることは自明であり,記憶手段に記憶したデータを指示に基づき処理することは,コンピュータが道具として備えている本来の機能である。
補正発明では,業務モデル記憶手段,サービスモデル記憶手段,サービス手段を備えており,コンピュータのハードウエア資源が具体的に記載されているとはいえても,各手段の処理と処理手段とが具体的どのように協働しているのかを具体的に記載していないから各手段の情報処理が具体的に実現されているとはいえない。
すなわち,業務モデル記憶手段,サービスモデル記憶手段は,特定の定義がなされたモデルを記憶することが記載されているにすぎず,ハードウエア資源との具体的な関係は認められず,道具としてのハードウエアが記載されているにとどまる。
また,サービス手段は,記憶手段に記述された処理に基づきサービスを実行することが示されているが,具体的な記述がハードウエアとの関連で示されているとも認められない。

そして,本願補正発明を全体としてみとも,ハードウエア資源であるコンピュータを用いて具体的に実現した情報処理システムの動作が記載されたシステムであるとは認められない。

したがって,請求人が主張する(ア)「業務モデル記憶手段」は,コンピュータの記憶装置によって実現されるものである,との主張,(イ)「サービスモデル記憶手段」は,コンピュータの記憶装置によって実現されるものである,との主張,及び(ウ)「サービス手段」は,コンピュータがその記憶装置(業務モデル記憶手段やサービスモデル記憶手段)に記憶された各種情報を用いてCPU等の制御により実行するものである,との主張は,コンピュータが本来備えている機能を発揮することを主張しているものであり,単に道具としてコンピュータを用いたものにすぎないから,自然法則を利用した技術的思想の創作ではなく,特許法2条1項に規定する発明に該当せず,特許法29条1項柱書に規定する要件を満たしているとはいえない。

3 むすび
以上のとおり,本件補正は,平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反するものであり,特許法159条1項で準用する特許法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 平成15年4月11日付の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成15年2月12日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「【請求項1】 コンピュータが業務支援サービスを提供するシステムであって,
ユーザの業務に関する組織,文書,作業のうち少なくとも1つを表す情報と該情報間の参照関係を静的に定義した業務モデルを記憶する業務モデル記憶手段と,
前記業務モデルで定義されている情報を用いて前記ユーザに提供されるサービスの処理の記述であるサービスモデルを記憶するサービスモデル記憶手段と,
入力されたサービス要求に基づいて前記サービスモデル記憶手段から前記サービスモデルを取り出して,前記サービス要求に応じて前記業務モデル記憶手段から取り出した前記業務モデルを参照しながら,前記サービスモデルに記述された処理を実行するサービス手段と
を備えることを特徴とする業務支援システム。」

2 当審の判断
前記第2の箇所で検討したとおり,本願発明を更に限定した本願補正発明が特許を受けることができないものであるから,限定事項を省いたこととなる本願発明も同様の理由により特許を受けることができない。

3 むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,特許法2条で定義する発明に該当せず,特許法29条1項柱書に規定する要件を満たしていないので,特許を受けることができない。

したがって,請求項2ないし17に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-24 
結審通知日 2005-11-29 
審決日 2005-12-12 
出願番号 特願平9-168384
審決分類 P 1 8・ 14- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 達也  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 大野 弘
田中幸雄
発明の名称 モデルベースの業務支援システムおよび方法  
代理人 大菅 義之  
代理人 久木元 彰  

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