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審決分類 審判 訂正 特許請求の範囲の実質的変更 訂正しない C02F
管理番号 1130237
審判番号 訂正2004-39171  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-12-11 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-07-20 
確定日 2006-01-27 
事件の表示 特許第3319592号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.請求の要旨

本件審判の請求の要旨は、特許第3319592号に係る明細書の記載を本件訂正審判請求書に添付した訂正明細書(以下「本件訂正明細書」という。)の記載のとおりに訂正(以下「本件訂正」という。)することを請求するものであり、訂正事項は以下のとおりである。
1)訂正事項ア
特許請求の範囲の請求項2において、「毎秒」とあるのを削除する。
2)訂正事項イ
特許請求の範囲の請求項2において、「150アンペアターン以上」とあるのを「60〜144アンペアターン」と訂正する。
3)訂正事項ウ
明細書の段落番号【0005】の下から2行目に、「のイオン励起状態」とあるのを削除する。
4)訂正事項工
明細書の段落番号【0007】の2〜3行に、「抑制されたイオン励起状態の下で、」とあるのを削除する。
5)訂正事項オ
明細書の段落番号【0008】の3〜4行に、「によるイオン励起状態の形成」とあるのを削除する。
6)訂正事項力
明細書の段落番号【0015】の2〜3行に、「磁束密着、極性変換のための交流電流周波数」とあるのを「磁束密度、極性変換のために発生した交流電流周波数」と訂正する。
7)訂正事項キ
明細書の段落番号【0017】の5行目の、「本発明に係る」の前に「、図1に示すコイルを使用した」を加入する。
8)訂正事項ク
明細書の段落番号【0018】の末尾に、「実施例1の場合、磁力通電量5A×巻き数12=60アンペアターンとなる。」を加入する。
9)訂正事項ケ
明細書の段落番号【0019】【実施例2】の1〜2行に「かつ通電コイルの巻き数を倍の12としたほかは、」とあるのを「かつ通電コイルの巻き数を12とし、ほかは」と訂正する。
10)訂正事項コ
明細書の段落番号【0019】の末尾に、「実施例2の場合、磁力通電量10A×巻き数12=120アンペアターンとなる。」を加入する。
11)訂正事項サ
明細書の段落番号【0022】の末尾に、「実施例3の場合、磁力通電量5A×巻き数12=60アンペアターンとなる。」を加入する。
12)訂正事項シ
明細書の段落番号【0023】の末尾に、「実施例4の場合、磁力通電量12A×巻き数12=144アンペアターンとなる。」を加入する。
13)訂正事項ス
明細書の段落番号【0026】に、「負の作用を起こさない抑制されたイオン励起状態の下で、」とあるのを、「実施例及び比較例から判断されるように」と訂正する。

2.訂正拒絶の理由

一方、平成16年9月29日付けで通知した訂正の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
「1.本件訂正事項アおよび訂正事項イは、請求項2に係る発明において「磁束方向が毎秒150アンペアターン以上で反転を繰り返す」とあるのを「磁束方向が60〜144アンペアターンで反転を繰り返す」と訂正するものであるが、
(1)訂正前の「毎秒150アンペアターン以上で反転を繰り返す」は、「毎秒」について、i)「毎秒150アンペアターン以上」、ii)「毎秒、反転を繰り返す」、の二通りの解釈が可能であり、該記載が「毎秒」に係わりなく、磁束方向が特定の起磁力で反転を繰り返すことを、一義的に意味するものとは認められず、訂正事項アおよび訂正事項イは、実質的に特許請求の範囲を変更するものである。
(2)「150アンペアターン以上」は数値範囲として明確であり、この範囲を「60〜144アンペアターン」と訂正することは、特許請求の範囲を変更するものである。

したがって、上記訂正事項アおよびイを含む本件訂正は、特許法第126条第4項の規定に該当しない。

2.本件訂正が、特許法第126条第1項ただし書第1号又は第2号に掲げる事項を目的とするものと仮定し、本件訂正発明が、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか否かを検討する(本件特許に対する無効審判事件(無効2003-35170号)の無効事由)に、本件訂正発明は、次の(1)、(2)の理由からして、特許出願の際、独立して特許を受けることができない。
(1)本件訂正明細書の段落【0007】の「分子会合を解いて、物質の活性度を回復可能とすること」、段落【0008】の「会合分子に対して効果的な活性化処理を行うこと」の意味が、本件明細書に記載されていない。
(2)本件訂正明細書の段落【0026】の「分子会合を解いて物質の活性度を顕著な段階にまで回復することができる」という本件発明の効果は、本件訂正明細書で実証されていない。

したがって、本件訂正は、特許法第126条第5項の規定に該当しない。」

3.当審の判断

まず、本件訂正前明細書に本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に係る発明(以下、本件訂正前発明という。)についてどのように記載されているのかについて検討する。

(あ)本件訂正前の特許請求の範囲の記載について

本件特許第33319592号の訂正前の特許請求の範囲請求項1及び2に記載された発明は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】移動する被処理物中に含まれる会合分子の磁気処理のための装置であって、通電により磁束を形成するコイルを被処理物が流れる管路の外周に2重に巻き付け、一方のコイルを駆動する電気回路と他の一方のコイルを駆動する電気回路を制御することによって被処理物に作用する磁束方向を変化させることを特徴とする会合分子の磁気処理のための電磁処理装置。
【請求項2】電気回路は、磁束方向が互いに逆向きとなるように2重のコイルを制御するものであり、かつ磁束方向が毎秒150アンペアターン以上で反転を繰り返すように構成されている請求項1記載の会合分子の磁気処理のための電磁処理装置。」

(い)本件訂正前発明が解決すべき課題及びその課題を解決するための手段について

本件訂正前特許明細書には、先行技術(特願平11-264410に係る発明)では、高エネルギーレベルでの磁気処理が可能であるが、「無電解めっき法、電解めっき法及びエッチング法では、高エネルギーレベルのイオン励起状態が負の作用を為すという側面がある。」と記載され(段落【0005】)、本件訂正前発明の課題は「抑制されたイオン励起状態の下で、分子会合を解いて、物質の活性度を回復可能とすることである。」と記載され(段落【0007】)、本件訂正前発明の他の課題は「無電解めっき法、電解めっき法及びエッチング法等の上記酸化還元反応系のように高エネルギーレベルによるイオン励起状態の形成が負の作用を為すような条件の下でも、会合分子に対して効果的な活性化処理を行うことができる電磁処理装置を提供することである。」と記載され(段落【0008】)、【課題を解決するための手段】の欄に「前記の課題を解決するため、本発明は、通電により磁束を形成するコイルを被処理物が流れる管路の外周に2重に巻き付け、一方のコイルを駆動する電気回路と他の一方のコイルを駆動する電気回路を制御することによって被処理物に作用する磁束方向を変化させるという手段を講じたものである。」(段落【0009】)と記載されている。

(う)課題を解決するための手段と本件訂正前発明との関連について

これら本件訂正前特許明細書の記載によれば、上記の事項のうち「抑制されたイオン励起状態の下で、分子会合を解いて、物質の活性度を回復可能とする」とは、無電解めっき法など特定の操作において、高エネルギーレベルでの磁気処理における不都合が低減することを意味するものと解される。
そして、本件訂正前特許明細書に記載される実施例によれば、本件発明の装置と称する「電磁処理装置」を使用した場合は使用しない場合と比べ、電解めっき処理における電流効率、およびエッチング処理におけるエッチングファクターの向上が認められる。
そして、本件訂正前発明は、「通電により磁束を形成するコイルを被処理物が流れる管路の外周に2重に巻き付け、一方のコイルを駆動する電気回路と他の一方のコイルを駆動する電気回路を制御することによって被処理物に作用する磁束方向を変化させるという手段」という新規な構成を「課題を解決すべき手段」として採用することにより上記の課題を解決しようとしたものである。
そうすると、本件訂正前明細書中に、本件訂正前発明における「課題を解決すべき手段」についての実施の態様とその作用効果が当業者にその実施のできる程度に明確かつ十分に記載されていることが明細書の記載要件として必要ということになる。

しかしながら、以下の理由で、本件訂正前明細書中に記載される「課題を解決すべき手段」と、「課題を解決すべき手段」についての実施の態様とその作用効果が記載されているべきである上記実施例における「電磁処理装置」との関連が不明である。

i)「課題を解決すべき手段」では、通電により磁束を形成するコイルを被処理物が流れる管路の外周に2重に巻き付けるとしているが、「実施例」では、コイルを2重に巻き付けることについての説明がなく、単に「巻き数」の記載しかない。
ii)「課題を解決すべき手段」では、一方のコイルを駆動する電気回路と他の一方のコイルを駆動する電気回路を制御することによって被処理物に作用する磁束方向を変化させるとしているが、「実施例」では、磁束方向を変化させるための具体的な方法についての説明がなく、単に「周波数」の記載しかない。そして、「周波数」の記載だけをよりどころとして磁束方向を変化させるための具体的な方法について理解することはできない。

そして、これらの点に関連する記載としては段落【0014】があるが、「「電磁処理装置」を駆動するための具体的な電気的駆動方法」に関する記載としては、同段落には「ここで制御装置15を操作し、・・・一方のコイル例えば11を駆動する電気回路と他の一方のコイル例えば12を駆動する電気回路との通電を制御し、」との具体的電気的駆動方法が不明な記載と、「ここで制御装置15を操作し、一方のコイル例えば11を駆動する電気回路と他の一方のコイル例えば12を駆動する電気回路とが互いに逆向きに作動するように通電を制御すると、」との具体的電気的駆動方法が不明な記載とが在るだけである。
そうすると、段落【0014】の記載は、「コイルに通電した場合に得られる磁束方向が互いに逆向きに作動するようにするためには、単に各コイルの通電方向を逆にすればよい」との「課題を解決すべき技術思想」を単に言い換えてそのまま繰り返しているにすぎない程度のものというべきものである。
したがって、段落【0014】には、発明の実施の態様である「「電磁処理装置」を駆動するための具体的な電気的駆動方法」はなんら記載されておらず、本件特許明細書の段落【0014】の記載から、本件明細書中に記載される課題を解決すべき手段と上記実施例における「電磁処理装置」との関連を導くことはできないものである。
また、周波数に関連する記載としては段落【0015】、【0016】があるが、「「電磁処理装置」を駆動するための具体的な電気的駆動方法」に関する記載はなく、いずれの段落にも周波数についての一般的説明が記載されているにすぎず、これらの段落の周波数についての記載から発明の実施の態様である「「電磁処理装置」を駆動するための具体的な電気的駆動方法」を特定することはできない。また、具体的な電気的駆動方法が当業者の技術常識であることも裏づけられてはいない。
したがって、段落【0015】、【0016】にも、発明の実施の態様である「「電磁処理装置」を駆動するための具体的な電気的駆動方法」はなんら記載されていないというべきである。

そして、本件訂正前明細書のその余の記載箇所を参酌してみても上記判断は変わるものではない。

(え)まとめ

以上のように、本件訂正前特許明細書には、本件訂正前発明における課題を解決すべき技術思想がそのまま繰り返し記載されているにとどまり、本件訂正前発明における課題を解決すべき手段が実施の態様とその作用効果と関連づけて記載されているとは認められず、したがって、本件訂正前発明は、本件訂正前特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものとは認められないものである。

上記の認定をふまえて以下訂正事項ア、イについて検討する。

(1)訂正事項アについての判断

本件訂正前特許明細書の本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2には「磁束方向が毎秒150アンペアターン以上で反転を繰り返す」と記載されているが、この記載は、この記載だけをみれば、i)「毎秒150アンペアターン以上」を意味しているとも、ii)「毎秒、反転を繰り返す」を意味しているとも読めるものであり、この記載がi)「毎秒150アンペアターン以上」を意味しているのか、それとも、ii)「毎秒、反転を繰り返す」を意味しているのかをこの記載だけから一義的に決定することはできない。

そこで、まず、本件訂正前特許明細書中の記載だけを参酌することによりi)なのかii)なのかを一義的に決定できるかどうかを検討することとする。
本件訂正前特許明細書中の記載をみると、i)の前者についての直接の記載は全くなく、実施例1から4に磁力通電量と巻き数が記載されているのみであるので、下記の技術常識に基いて該記載から算出した実施例1から4の「磁力通電量と巻き数から求められる『起磁力』が60から144のアンペアターンである」ということはわかるが、この「60から144のアンペアターン」が毎秒のものであるかどうかは不明である。ii)の後者についても実施例1、3に「2000Hz」と記載されているのみであり、そして、この「2000Hz」という記載は「毎秒2000回反転を繰り返す」ことであって、「毎秒、反転を繰り返す」、つまり、一秒毎に反転を繰り返すことも示されていない。そして、実施例1、3にはコイルを2重に巻き付けることと、毎秒、反転を繰り返すこととの関係についての具体的な説明もなく、単に「巻き数」の記載しかない実施例が記載されているだけであり、一方、この「2000Hz」という記載だけではその反転を繰り返す対象と、毎秒、反転を繰り返すこととの具体的な関係も明らかではないのであるから、この周波数についての記載が、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に記載されている「毎秒、反転を繰り返す」記載と結び付くものであるかどうかは不明というほかはない。
したがって、本件訂正前特許明細書中の記載だけをを参酌することによりi)なのかii)なのかを一義的に決定することはできない。

そこで、次に、技術常識を参酌することによりi)なのかii)なのかを一義的に決定できるかどうかを検討することとする。
まず、アンペアターンの技術的意義についてみるに、そもそも、「アンペアターン」とはソレノイドの巻数とソレノイドに流れる電流の積を表し『起磁力』の単位であり、また、アンペア単位が電流の単位であり導体の断面を1秒間に1クーロンの電気量が流れる場合を1アンペアとしていることからすると、アンペアターンは毎秒という時間の観念に関係するものといえ、このことからすると、「磁束方向が毎秒150アンペアターン以上で反転を繰り返す」の意味はi)「毎秒150アンペアターン以上」の意味に解することは不可能ではないが、技術常識を参酌しても「毎秒150アンペアターン以上」とは仕事量を表す単位とは認められないだけでなく、そもそも本件訂正前特許明細書には、「被処理物に作用する磁束方向を変化させる」物理的条件を、エネルギー量(仕事量×時間)で限定することは記載も示唆もされていないのであるから、この点からみても「磁束方向が毎秒150アンペアターン以上で反転を繰り返す」との記載がi)「毎秒150アンペアターン以上」を一義的に意味しているとまではいえない。
また、請求項2の「磁束方向が毎秒150アンペアターン以上で反転を繰り返す」が請求項1の「磁束方向を変化させる」について限定していることからすると、「磁束方向が毎秒150アンペアターン以上で反転を繰り返す」の意味は、一秒毎に繰り返すいう意味に解釈でき、このことからすると、「磁束方向が毎秒150アンペアターン以上で反転を繰り返す」の意味は、ii)「毎秒、反転を繰り返す」の意味に解釈できるところであるが、上記したように、i)「毎秒150アンペアターン以上」を意味しているとの解釈もできるのであるから、「磁束方向が毎秒150アンペアターン以上で反転を繰り返す」との記載がii)「毎秒、反転を繰り返す」を一義的に意味しているともいえない。

そうすると、明細書中の記載と技術常識を参酌してみてもi)なのかii)なのかを決定することはできないということになる。

以上のことからすると、「磁束方向が毎秒150アンペアターン以上で反転を繰り返す」との記載は、いずれの意味に解すべきか判別せず、かつ、いずれの場合でも作用効果との関係が不明確である「二通りの解釈が可能である」ということになる。

そうすると、訂正前の「毎秒150アンペアターン以上で反転を繰り返す」は、「毎秒」について、i)「毎秒150アンペアターン以上」、ii)「毎秒、反転を繰り返す」、の二通りの解釈が可能であるのに対して、訂正後の「150アンペアターン以上で反転を繰り返す」は該記載が「毎秒」に係わりなく、磁束方向が特定の起磁力で反転を繰り返すことを、一義的に意味するものとなるから、訂正事項アは、実質的に特許請求の範囲を変更するものである。

この点について、請求人は、本件明細書の記載を参酌すれば訂正前の「毎秒150アンペアターン以上で反転を繰り返す」は、「毎秒」について、ii)「毎秒、反転を繰り返す」の意味であると一義的に定まると主張しているが、本件訂正前明細書中に記載される課題を解決すべき手段と、上記実施例における「電磁処理装置」との関連が不明であることをふまえると、訂正前の「毎秒150アンペアターン以上で反転を繰り返す」は、「毎秒」について、i)「毎秒150アンペアターン以上」、ii)「毎秒、反転を繰り返す」、の二通りの解釈が可能であることは上記したとおりであるから、請求人の主張は認めることができない。

(2)訂正事項イについての判断

特許請求の範囲の請求項2に記載の「150アンペアターン以上」という事項については本件明細書の発明の詳細な説明には記載されていない。
そこで、本件特許明細書中の関連する記載についてみるに、本願発明の先行技術である米国特許第5074998号明細書に記載される発明の装置について「同発明の実施品と見なされる装置では、電磁コイルの特性が実質的に120アンペアターン程度しか得られない」との記載があるだけであり、他に「アンペアターン」の記載はない。
また、本件特許明細書に記載される実施例における巻数とアンペア数から求められる「アンペアターン」も、実施例1、3にはコイルを2重巻き付けることについての説明がないので、単に「巻き数」の記載しかない実施例について60ないし144と記載されているだけであり、これらの記載は、コイルを2重巻き付けることについての説明がなく、単に「巻き数」の記載しかない実施例についてのものであるから、コイルを2重巻き付けるものである特許請求の範囲の請求項2に記載の「150アンペアターン以上」と関連するものであるかどうかは明細書のいずれの記載をみても認めることができないものである。
そうすると、「150アンペアターン以上」という記載事項は、そもそも、明細書の詳細な説明に記載されていない事項というべきなのであるから、明細書中の実施例の数値をもとに特許請求の範囲の請求項2に記載の「150アンペアターン以上」という記載を訂正することはできないものであり、明細書の詳細な説明に記載されている事項の誤記であるとすることはできないものである。
そして、また、「150アンペアターン以上」という記載は上限を限定的に記載するものではないが、数値範囲の下限値に臨界的意義があって上限が自ずと理解できる場合には特に不明瞭とはならないものであり、本件の磁束方向についての数値として係る「150アンペアターン以上」という数値をみるに、「150アンペアターン以上」という記載は従来の数値を改善したものの数値範囲として技術的に意味があると解せるものであるから、「150アンペアターン以上」という記載は数値範囲として明確であるといえ、この数値範囲に「60〜144アンペアターン」の数値が含まれないことは明らかである。
すなわち、「150アンペアターン」という記載が数値範囲として明確であることは、この数値範囲に「60〜144アンペアターン」の数値範囲が含まれていないということを裏付けるものである。
そうすると、訂正事項イは、「150アンペアターン」を「60〜144アンペアターン」というもともとの訂正事項に含まれないものに訂正するものということになり、特許請求の範囲を変更するものである。

この点について、請求人は明細書中の「実施例」を参酌すれば「150アンペアターン以上」は「60〜144アンペアターン」の誤記であると主張しているが、本件訂正前明細書中に記載される課題を解決すべき手段と、上記実施例における「電磁処理装置」との関連が不明である以上、「実施例」の記載をそのまま参酌することはできないのであるから、請求人の主張は認めることができない。

4.むすび

したがって、本件審判の請求は、特許法第126条第4項の規定に適合しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-27 
結審通知日 2005-05-11 
審決日 2005-05-24 
出願番号 特願2000-167034(P2000-167034)
審決分類 P 1 41・ 855- Z (C02F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 敬子  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 鈴木 毅
岡田 和加子
中村 泰三
大黒 浩之
登録日 2002-06-21 
登録番号 特許第3319592号(P3319592)
発明の名称 会合分子の磁気処理のための電磁処理装置  
代理人 井澤 洵  
代理人 井澤 幹  
代理人 井澤 幹  
代理人 井澤 洵  

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