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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1130379
審判番号 不服2003-9057  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-03-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-16 
確定日 2006-01-04 
事件の表示 平成11年特許願第553989号「高周波誘導加熱を利用した塞栓術用装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月4日国際公開、WO99/55398、平成13年3月13日国内公表、特表2001-503308号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成11年4月27日(優先権主張平成10年4月27日、大韓民国)を国際出願日とする出願であって、平成15年3月11日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年4月16日付で拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月16日付で手続補正がなされたものである。

【2】平成15年5月16日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年5月16日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)本件補正
本件補正は、請求項1を次のとおりに補正することを含むものである。
「血管(5)の血管畸形部(6)に金属性コイル(3)を充填させて動脈瘤を栓塞させる手術方法に使用する塞栓術用装置において、
高周波電源(12)と、
患者の血管畸形部(6)に挿入された金属性コイル(3)と、
それぞれ前記高周波電源(12)に連結され、前記金属性コイル(3)に渦電流が発生されるように前記金属性コイル(3)が挿入された患者の患部周囲に位置する誘導コイル及び前記誘導コイル内に内蔵された磁性体コアからなる少なくとも一対以上の誘導コイル部(14、15;16、17;18、19)を含むことを特徴とする塞栓術用装置。」(以下、「補正発明」という。)

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明の発明特定事項である「金属性コイル」の挿入位置を「患者の血管畸形部(6)に」と限定し、かつ同じく発明特定事項である「誘導コイル部」の構成を「それぞれ前記高周波電源(12)に連結され、前記金属性コイル(3)に渦電流が発生されるように前記金属性コイル(3)が挿入された患者の患部周囲に位置する誘導コイル及び前記誘導コイル内に内蔵された磁性体コアからなる少なくとも一対以上の誘導コイル部(14、15;16、17;18、19)」と限定したものであって、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であって、本願優先日前の平成9年6月26日に頒布された国際公開第97/22290号パンフレット(以下、「刊行物」という。)は、「生体に挿入された金属インプラントのための誘導加熱装置」に関するものであって、図1および2とともに、以下の事項が記載されている(翻訳は当審による。)。

a)「誘導加熱装置において、装置の発電機が、中間周波数範囲または下部高周波範囲において作動し、装置の誘導コイルの径が、コイル内部に人の体の受容に十分な大きさであり、装置の出力電力が、人の体内にある金属インプラントを選択的に誘導加熱し、インプラント近傍の生きた細胞の熱的損傷を誘起するよう設計してあることを特徴とする装置。」(請求項1)

b)「チューブ状人工補整器(“ステント”)は、ヒトの血管系の動脈硬化起因の狭窄の拡張および副子法のために且つ他の中空器官(食道、気管、胆管、導出尿管,etc.)の腫瘍起因の狭窄の一時的処置のために効果的に使用される。しかしながら、過剰の組織反応 (いわゆる、動脈内膜増殖)によって早かれ遅かれ始まるステント処理器官セグメントの再狭窄が問題であり、ステント処理した腫瘍発生中空器官の場合、ステント内の腫瘍細胞の成長による狭窄が問題である。 血管膨張(動脈瘤)、血管リーク(内出血)および腫瘍血管は、カテーテルを介して導入された金属インプラント(例えば、金属スパイラル)によって閉鎖できる。所望の完全な閉鎖は、必ずしも常に行われる訳ではなく、その結果、動脈瘤が、更に成長し、出血が、完全には止血されない,etc.。
本発明の課題は、装置に関連して、一方では、生体のボデーの侵襲作用なく、金属インプラントの周辺の過剰な組織反応または腫瘍細胞の異常増殖を減少し、他方では、金属インプラントによる不完全な血管閉鎖を完全化する処置法を提供することにある。」(明細書1頁4行〜21行)

c)「装置の本質的構造部材は、コイル(1)および関連の発電機(2)である(図1)。コイルは、電気導体(好ましくは、銅線または銅パイプ)の複数の巻からなる。発電機は、中波範囲または長波範囲の中間周波数信号または高周波数信号(30kHz-1MHz)を供給する。コイル径の大きさは、金属製人工補整器を設けた患者の身体範囲が、コイル内で、中心位置を取り得るように選択されている(図2)。コイルに発電機の信号を印加すると、金属インプラント内にうず電流が誘導される。うず電流ロスは、周波数、出力および作用時間に依存して、インプラントの加熱を誘起する。基本実験において、300kHzの周波数、15kWの発電機出力、7巻の銅パイプからなる径5cmのコイル、5-20秒の作用時間の場合に、すべての通常タイプのステントが2-10度、加熱されるということが判った。金属ステントマトリックスの周辺の生きている細胞が、死滅される。死滅した細胞の範囲の膨張は、他のパラメータを一定に保持して、作用時間によって調節できる。細胞の死滅は、ステントの金属マトリックスから出発する直接的な熱伝導によって行われた。金属インプラントのない筋肉組織および脂肪組織は、同1条件の下で、測定可能な昇温を示さなかった。誘導加熱装置内に生体のボディーを置いた場合、30kHz-1MHzの周波数範囲において、金属インプラントは選択的に加熱される。正常な身体組織は、測定可能な誘導加熱を受けない。この方法は、金属インプラントの近傍の生きた細胞の死滅(例えば、血管ステントを血管壁に組込んだ際の動脈内膜増殖の減少または他の中空器官の一時的ステント処置時の腫瘍細胞の増殖の減少)のために使用できる。本方法は、意図的に誘導された血管(動脈瘤)の完全化に合目的的であることも実証できる。この場合、血流中のインプラント(金属スパイラル)の選択的加熱によって、血液細胞の局部的な熱的損傷が誘起され、従って、血栓が生成される。」(明細書2頁1〜24行)

上記a)ないしc)の記載事項を総合すると、刊行物には以下の発明が記載されていると認められる。
「動脈瘤に金属スパイラルを導入して血管閉鎖を完全化する処置に使用する装置において、高周波信号を供給する発電機と、
患者の動脈瘤に挿入された金属スパイラルと、
前記発電機に連結され、前記金属スパイラル内にうず電流が誘導されるように前記金属スパイラルが挿入された患者の体がその内部に受容されるよう位置する誘導コイルを含む血管閉鎖を完全化する処置に使用する装置」(以下、「引用発明」という。)

(3)対比・判断
補正発明と引用発明とを対比すると、その構成、機能等からみて、後者の「動脈瘤」は前者の「血管畸形部」に相当し、以下同様に後者の「金属スパイラル」は前者の「金属性コイル」に、後者の「高周波信号を供給する発電機」は前者の「高周波電源」に、後者の「うず電流」は前者の「渦電流」に、後者の「誘導される」は前者の「発生される」に、後者の「患者の体がその内部に受容されるよう位置する誘導コイル」は前者の「患者の患部周囲に位置する誘導コイル」に、後者の「動脈瘤に金属スパイラルを導入して血管閉鎖を完全化する処置に使用する装置」は前者の「血管の血管畸形部に金属性コイルを充填させて動脈瘤を栓塞させる手術方法に使用する塞栓術用装置」に、それぞれ相当する。
また、後者の「発電機に連結され、金属スパイラルが挿入された患者の体がその内部に受容されるよう位置する誘導コイル」と前者の「それぞれ前記高周波電源に連結され、前記金属性コイルに渦電流が発生されるように前記金属性コイルが挿入された患者の患部周囲に位置する誘導コイル及び前記誘導コイル内に内蔵された磁性体コアからなる少なくとも一対以上の誘導コイル部」とは、どちらも金属性コイルに渦電流を発生させるための磁界発生手段であるという点で共通するものといえる。

してみると、両者は、「血管の血管畸形部に金属性コイルを充填させて動脈瘤を栓塞させる手術方法に使用する塞栓術用装置において、
高周波電源(12)と、
患者の血管畸形部に挿入された金属性コイル(3)と、
前記高周波電源(12)に連結され、前記金属性コイル(3)に渦電流が発生されるように前記金属性コイル(3)が挿入された患者の患部周囲に位置する誘導コイルを有する磁界発生手段を含む塞栓術用装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。

【相違点】金属性コイルに渦電流を発生させるための磁界発生手段に関し、補正発明では「それぞれ前記高周波電源に連結された誘導コイル及び前記誘導コイル内に内蔵された磁性体コアからなる少なくとも一対以上の誘導コイル部」であるのに対し、引用発明では「高周波電源に連結された誘導コイル」である点。

上記相違点について検討する。
ところで、この種の医療用装置における磁界発生手段として、それぞれ電源に連結され、誘導コイル及び前記誘導コイル内に内蔵された磁性体コアからなる少なくとも一対以上の誘導コイル部を採用することは、本願出願前に周知の技術である。(必要があれば、拒絶理由通知書に引用文献2および3として提示された特開平7-155384号公報、特開平3-267072号公報等を参照。)

してみると、引用発明に磁界発生手段として上記周知技術を採用して、補正発明に係る相違点の構成とすることは、当業者が容易に想到できたものといえる。
そして、補正発明が奏する作用効果も、当業者が引用発明および上記周知技術から予期し得る程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、補正発明は、引用発明および上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定によりその特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

以上のように、本件補正は、平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反するから、同法159条1項において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。

【3】本願発明について
(1)本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年5月16日付の手続補正が上記のとおり却下されたので、出願当初の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「血管(5)の血管畸形部(6)に金属性コイル(3)を充填させて動脈瘤を栓塞させる手術方法に使用する塞栓術用装置において、
高周波電源(12)と、
この高周波電源(12)に連結して血管畸形部(6)に挿入された金属性コイル(3)に渦電流が発生されるように前記金属性コイル(3)が挿入された患者の患部周囲に位置する誘導コイル部(13、14、16、18)を含むことを特徴とする塞栓術用装置。 」

(2)引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物、およびその記載事項は、上記「【2】(2)引用刊行物」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
前述したように補正発明は、本願発明の発明特定事項である「金属性コイル」の挿入位置を「患者の血管畸形部(6)に」と限定し、かつ同じく発明特定事項である「誘導コイル部」の構成を「それぞれ前記高周波電源(12)に連結され、前記金属性コイル(3)に渦電流が発生されるように前記金属性コイル(3)が挿入された患者の患部周囲に位置する誘導コイル及び前記誘導コイル内に内蔵された磁性体コアからなる少なくとも一対以上の誘導コイル部(14、15;16、17;18、19)」と限定したものである。

そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらにその発明特定事項を限定したものに相当する補正発明が、上記「【2】(3)対比・判断」に記載したように、引用発明および周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明および上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

(4)むすび
したがって、本願発明は、刊行物に記載された発明および上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-27 
結審通知日 2005-08-02 
審決日 2005-08-17 
出願番号 特願平11-553989
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土田 嘉一山口 直  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 川本 真裕
内藤 真徳
発明の名称 高周波誘導加熱を利用した塞栓術用装置  
代理人 鈴木 正剛  
代理人 鈴木 正剛  

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