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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02F |
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管理番号 | 1130629 |
審判番号 | 不服2003-4667 |
総通号数 | 75 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-05-11 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-03-20 |
確定日 | 2006-02-09 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第292465号「マトリクス基板及び液晶表示装置と投写型液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 5月11日出願公開、特開平11-125834〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年10月24日に出願された特許出願であって、原審において平成14年8月15日付けで通知された拒絶理由通知書に対して、同年10月18日付けで手続補正書が提出された後、平成15年2月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年3月20日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月18日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成15年4月18付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年4月18日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 平成15年4月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、 「複数の画素電極と複数の画素トランジスタを有する表示領域と、前記表示領域の外側に設けられた駆動用トランジスタを有する駆動回路領域と、を有し、前記表示領域及び前記駆動回路領域の外周のシール領域に付与されるシール材及びスペーサを用いて対向基板と貼り合わされて表示装置を形成し得るマトリクス基板において、 前記画素電極より下の層であって、且つ前記画素トランジスタ及び前記駆動用トランジスタより上に設けられた第1の導電層と、前記画素電極より下の層であって、且つ前記シール領域内に設けられた第2の導電層と、が電気的に分離されていることを特徴とするマトリクス基板。」と補正された。 上記補正は、「シール領域に設けられた第2の導電層」を「シール領域内に設けられた第2の導電層」とする補正であって、特許法第17条の2第4項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 よって、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第4項の規定による特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 (2)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である、特公平2-61725号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 (a)「また図において1は水平方向のシフトレジスタ、バツフア回路入力回路等を含む水平方向の制御回路部を示し、2は垂直方向のシフトレジスタ、バツフア回路等を含む垂直方向の制御回路部で、水平方向制御回路部1に表示信号が与えられて順次的にスイツチングMOSトランジスタによつて各液晶表示部を表示するようになされる。」(第1頁2欄4-10行) (b)「基板11上には、第3図に示すように、液晶表示部を駆動制御する制御回路及び各絵素に対応して設けられる駆動回路を構成する半導体回路が設けられる。半導体基板11の周辺部には、前述したように、第1図で説明した制御回路1及び2を構成する周辺回路部Sが設けられ、これより内側において表示部Eの複数の絵素部が基板11及び12の板面方向に沿つて水平及び垂直方向にすなわちマトリクス状に配列される。そして半導体基板11の液晶13が配置される側にはこれらの表示部に対応して例えばN型のソース及びドレイン領域14s及び14dがイオン注入法、拡散法等によつて形成され、これら間上にゲート絶縁層15例えばSiO2層が形成され、更にこれの上にゲート電極16が設けられて第1図で説明したスイツチング用のMOSトランジスタが形成される。またこれらソース領域14s及びドレイン領域14d上にオーミツクに連結して夫々ソース電極及びドレイン電極となり且つこれらよりの配線部となる導電層17が設けられる。またこれら各MOSに隣合つて基板11の表面に基板11と同導電型の高濃度領域18が設けられ、これの上には例えばゲート絶縁層15と同時に形成されたSiO2等の薄い誘電体層19が形成され、これの上にMOSのドレイン電極に連結された導電層17が延在して高濃度領域18との間に第1図で説明した容量Cが構成される。導電層17が周辺回路部Sにおける配線或いは電極等の導電層20と共に例えば低比抵抗の多結晶半導体層例えばソース及びドレイン、領域14s及び14dと同導電型のN型の多結晶シリコン層によつて形成し得る。21は基体11の表面に形成された絶縁層、例えば厚いSiO2酸化物層である。また、導電層17及び20上を含んで例えば全面的に燐ガラス或いは砒素ガラス等の絶縁層33を形成し、これの導電層17及び20上の所定部に窓が穿設され、これら窓を通じて導電層17及び20と電気的に連結する端子導出或いは各導電層17及び20の相互の接続等を行う金属配線層例えばAl層22が所定のパターンに形成されてこれの上に表面が平滑化されるようにいわゆるガラスフローされた燐ガラス或いはポリイミド系樹脂等による絶縁層23が被着される。そしてこの絶縁層23上に液晶13に電圧を与えるための電極特に表示部Eすなわち各絵素に対応して設けられる絵素電極24と、周辺回路部S上に対向する部分、言い換えれば本来の表示部以外で且つ液晶13の四周に対する例えばリング状の周辺電極25と、更に端子部32とを配置する。各絵素電極24はこれの下の例えば容量Cの一方の電極となる導電層17に接続された金層配線層22に、絶縁層23に穿設された窓を通じて電気的に接続される。電極24及び25上とこれらが形成されていない絶縁層23上に渡つて全面的にSiO2等の液晶の配向効果を得るための配向処理がなされた配向層26が全面的に被着される。」(第2頁3欄12-4欄23行) (c)「30は基板11及び透明基板12間の間隔を規制して液晶13の封入空間の厚さを規制するスペーサとなり且つ液晶封入空間を液密に保持する障壁でまた31はAgペースト或いはInバンプ等よりなる導電体で、例えば遮光電極27とこれに対応する端子部32とを電気的に接続する。」(第2頁4欄38-44行) (d)第3図から、基板11及び透明基板12間の間隔を規制して液晶13の封入空間の厚さを規制するスペーサとなり且つ液晶封入空間を液密に保持する障壁30(以下、スペーサ且つ障壁30という。)が形成された領域に、周辺電極25と端子部32で接続された金属配線層22が見てとれる。 そして、上記(b)に記載のとおり、表示部Eの複数の絵素部が基板11及び12の板面方向に沿つて水平及び垂直方向にすなわちマトリクス状に配列されていることから、基板11はマトリクス基板である。 また、絵素電極24と周辺電極25とが電気的に分離されていることは明らかであり、それぞれと接続される金属配線層22も電気的に分離されていることは自明である。 したがって、上記(a)-(d)の記載事項からみて、引用例には以下の発明が記載されていると認められる。 「複数の絵素電極と複数のスイッチング用のMOSトランジスタを有する表示部Eと、前記表示部Eの外側に設けられた周辺回路部Sと、を有し、前記表示部E及び前記周辺回路部Sの外周のスペーサ且つ障壁30が形成された領域に付与されるスペーサ且つ障壁30を用いて対向基板と貼り合わされて表示装置を形成し得るマトリクス基板において、 前記絵素電極より下の層であって、且つ前記スイッチング用のMOSトランジスタ及び前記周辺回路部Sより上に設けられた導電層17に接続された金属配線層22と、前記絵素電極より下の層であって、且つ前記スペーサ且つ障壁30が形成された領域に設けられた周辺電極25に接続された金属配線層22と、が電気的に分離されていることを特徴とするマトリクス基板。」(以下、引用例発明という。) (3)対比・判断 次に、本願補正発明と引用例発明とを対比すると、 (a)引用例発明における「絵素電極」、「スイッチング用MOSトランジスタ」、「表示部E」及び「周辺回路部S」は、本願補正発明における「画素電極」、「画素トランジスタ」、「表示領域」及び「駆動回路領域」に相当する。 (b)上記「(2)(b)」に記載のとおり、周辺回路部Sは制御回路1及び2を構成するものであって、上記「(2)(a)」には、制御回路1及び2はシフトレジスタ、バツフア回路等を含むものである、と記載されていることから、周辺回路部Sがトランジスタを有していることは明らかであり、当該トランジスタは絵素の駆動に用いられるものである。 よって、周辺回路部Sは駆動用トランジスタを有するものである。 (c)上記(b)のとおり、周辺回路部Sは駆動用トランジスタを有しているので、周辺回路部Sの上に設けられた金属配線層22は駆動用トランジスタの上に設けられたものとなる。 (d)引用例発明における「スペーサ且つ障壁30が形成された領域」は液晶封入空間を液密に保持している領域であることから、本願補正発明における「シール領域」に相当するものであって、当該「スペーサ且つ障壁30」は「スペーサ」の機能と「液晶封入空間を液密に保持する障壁」即ち「シール材」の機能を有するものであることから、本願補正発明の「シール材及びスペーサ」に相当するものである。 (e)引用例発明における「金属配線層22」が導電性を有していることは明らかであるから、引用例発明における「導電層17に接続された金属配線層22」及び「周辺電極25に接続された金属配線層22」は、本願補正発明の「第1の導電層」及び「第2の導電層」に相当するものである。 (f)引用例発明における「スペーサ且つ障壁30が形成された領域に設けられた周辺電極25に接続された金属配線22」とは「領域内に設けられた」との意味を含むものであるから、該記載と「スペーサ且つ障壁30が形成された領域内に設けられた周辺電極25に接続された金属配線22」とは、同様の構成を言い換えたものであって、差異を有するものではい。 以上のとおり、本願補正発明と引用例発明とを対比すると相違点は認められず、実質的に同一のものである。 したがって、本願補正発明は引用例に記載された発明と実質的に同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成15年法第律47号)附則第2条第7項の規定によりなお従前の例によるものとされた(同法[第1条の規定]による)改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成15年4月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成14年10月18日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明は、以下のものである。 「複数の画素電極と複数の画素トランジスタを有する表示領域と、前記表示領域の外側に設けられた駆動用トランジスタを有する駆動回路領域と、を有し、前記表示領域及び前記駆動回路領域の外周のシール領域に付与されるシール材及びスペーサを用いて対向基板と貼り合わされて表示装置を形成し得るマトリクス基板において、 前記画素電極より下の層であって、且つ前記画素トランジスタ及び前記駆動用トランジスタより上に設けられた第1の導電層と、前記画素電極より下の層であって、且つ前記シール領域に設けられた第2の導電層と、が電気的に分離されていることを特徴とするマトリクス基板。」(以下、「本願発明」という。) (1)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、上記「2.」で検討した本願補正発明の「シール領域内に設けられた第2の導電層」が「シール領域に設けられた第2の導電層」となったものであり、上記 「2.(3)(f)」のとおり、両者の相違は表現上の違いであって、実質的に同一である。 したがって、本願補正発明は、上記「2.(3)」に記載したとおり、引用例に記載された発明と実質的に同一であるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明と実質的に同一である。 なお、原査定の拒絶理由は、特許法第29条第1項第3号に該当するというものではないが、審判請求人は、平成14年10月18日付け手続補正書において、本件発明と引例1(上記引用例と同じ)とを対比する上で、引例1の開示内容に関し言及しているから、容易性のみならず、同一性についても検討していることは明らかである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明と実質的に同一であるから、特許法第29条第1項3号の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-12-12 |
結審通知日 | 2005-12-13 |
審決日 | 2005-12-27 |
出願番号 | 特願平9-292465 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G02F)
P 1 8・ 113- Z (G02F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 右田 昌士、藤田 都志行、小牧 修 |
特許庁審判長 |
平井 良憲 |
特許庁審判官 |
吉野 三寛 吉田 禎治 |
発明の名称 | マトリクス基板及び液晶表示装置と投写型液晶表示装置 |
代理人 | 山下 穣平 |