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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G07F
管理番号 1130848
異議申立番号 異議2002-70493  
総通号数 75 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-04-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-02-27 
確定日 2005-12-05 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3203134号「自動販売機」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3203134号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
(1)特許第3203134号(請求項の数4)に係る発明についての出願は、平成6年9月19日に特許出願され、平成13年6月22日にその発明について特許権の設定登録がなされた。
(2)その後、全請求項に係る特許について、申立人・松野靖恵より特許異議の申立てがなされ、平成14年4月30日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年7月23日に訂正請求がされた後、平成14年11月13日付けで「訂正を認める。特許第3203134号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。」との決定がなされた。
(3)この決定に対し、東京高等裁判所に決定の取り消しを求める訴え(平成14年(行ケ)第646号)が提起されたところ、東京高等裁判所において、決定を取り消すとの判決(平成15年9月24日判決言渡)がなされ、確定した。
(4)そこで、さらに審理し、平成16年1月5日付けで再度取り消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年3月16日に意見書が提出された後、平成16年5月18日付けで「訂正を認める。特許第3203134号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。」との決定がなされた。
(5)この決定に対し、東京高等裁判所に決定の取り消しを求める訴え(平成17年(行ケ)第10011号)が提起されたところ、知的財産高等裁判所において、決定を取り消すとの判決(平成17年10月19日判決言渡)がなされ、確定した。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1において、「前壁を有する搬出口扉」を、「前壁を有し、該重心位置を前記商品取出口側に寄せることによって生じるモーメントの作用により、商品の通過後に前記商品搬出口の前縁部に当接して該商品搬出口を塞ぐ搬出口扉」と訂正する。
イ.訂正事項b
明細書の段落【0011】において、「前壁を有する搬出口扉」を、「前壁を有し、該重心位置を前記商品取出口側に寄せることによって生じるモーメントの作用により、商品の通過後に前記商品搬出口の前縁部に当接して該商品搬出口を塞ぐ搬出口扉」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、願書に添付した明細書の段落【0022】の「重心位置を商品取出口5側に寄せることにより商品搬出口扉11に商品搬出口1の前縁部に当接する方向の力(モーメント)を生じさせることができる」なる記載、及び、段落【0033】の「商品搬出口扉11は商品が通過した後、・ ・ ・商品搬出口1の前縁に当接させる方向の力により商品搬出口1を塞ぐ」なる記載に基いて、特許請求の範囲の請求項1における「搬出口扉」の構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものであって、新規事項の追加に該当しない。
また、上記訂正事項bは、上記訂正事項aとの整合を図るためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。
そして、上記いずれの訂正事項も、「外扉の奥行き寸法を小さくすることのできる自動販売機を提供する」という課題に変更を及ぼすものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1ないし4に係る発明は、上記訂正に係る訂正明細書の記載からみて次のとおりのものと認められる。
【請求項1】内部に商品収納室が形成されている断熱構造の本体と、
前記本体の前部に設けられると共に下部前面に商品取出口が設けられている外扉と、
前記外扉に対向配置されると共に前記本体の前面開口を開閉する内扉と、 前記内扉の下部に前記商品取出口に対応するように設けられ、前記商品収納室内に設けられた商品シュートを滑落する商品を前記商品取出口へ搬出するための商品搬出口と、
前記商品搬出口に上端が軸支され、重心位置を前記商品取出口側に寄せるとともに前記商品シュートを滑落してきた商品が内壁面に沿って滑落できるように前記商品取出口側に湾曲して形成された前壁を有し、該重心位置を前記商品取出口側に寄せることによって生じるモーメントの作用により、商品の通過後に前記商品搬出口の前縁部に当接して該商品搬出口を塞ぐ搬出口扉と
を備えたことを特徴とする自動販売機。
(以下、「本件発明1」という。)
【請求項2】前記搬出口扉を透明な部材にて形成したことを特徴とする請求項1記載の自動販売機。
(以下、「本件発明2」という。)
【請求項3】前記搬出口扉の前壁の内壁面に縦方向のリブを多数形成したことを特徴とする請求項1記載の自動販売機。
(以下、「本件発明3」という。)
【請求項4】前記搬出口扉の前壁の下部に横方向のリブを複数形成したことを特徴とする請求項1記載の自動販売機。
(以下、「本件発明4」という。)
なお、訂正明細書の【請求項3】には、「特徴とす請求項1」と記載されているが、これは「特徴とする請求項1」の誤記と認められるため、請求項3に係る本件発明3を上記のように認定した。

(2)特許異議の申立ての理由
特許異議申立人・松野靖恵は、証拠方法として
甲第1号証:実願昭55-151450号(実開昭57-73762号)の マイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)
甲第2号証:実願昭54-124165号(実開昭56-41368号)の マイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)
甲第3号証:実願昭55-151456号(実開昭57-73773号)の マイクロフィルム(以下「刊行物3」という。)
甲第4号証:特開平3-40189号公報(以下、「刊行物4」という。)
を提出し、
・本件発明1は、刊行物1に記載された発明であり、もしくは、刊行物1に記載された発明又は刊行物1〜刊行物4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号、もしくは、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
・本件発明2は、刊行物1、刊行物2、刊行物4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
・本件発明3は、刊行物1に記載された発明および周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
・本件発明4は、刊行物1に記載された発明および周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
旨主張している。

(3)対比・判断
ア.本件発明1について
従来のものは、搬出口扉と商品搬出口とが傾斜した分だけ、外扉の奥行き寸法が大きくなるという問題点があり、このため、本件発明1は、外扉の奥行き寸法を小さくすることを解決しようとする課題とし、該課題を解決するために「商品搬出口に上端が軸支され、重心位置を前記商品取出口側に寄せるとともに…商品シュートを滑落してきた商品が内壁面に沿って滑落できるように…商品取出口側に湾曲して形成された前壁を有し、該重心位置を…商品取出口側に寄せることによって生じるモーメントの作用により、商品の通過後に…商品搬出口の前縁部に当接して該商品搬出口を塞ぐ搬出口扉」の構成を採用し、これによって、搬出口扉と当接する当接部を商品搬出口の前縁に突設しなくても、商品搬出口を塞ぐことができ、外扉の奥行き寸法を小さくすることができる発明である。
そして、本件発明1の搬出口扉自体のモーメントは、その技術的意義からして、搬出口扉が商品搬出口の前縁に当接し、かつ、商品収納口6内を循環する冷気又は暖気によって開くことはなく、搬出口扉を開く方向に外力が加わらない限り、継続的に当接した状態を維持し施蓋状態を保つほどのものである。(平成17(行ケ)第10011号判決22頁参照)
イ.刊行物1の「部材100(異議申立人が便宜上付した符号)」について
刊行物1には、「部材100」の構造について、第2図から、「部材100」の上部が枢支されていることと、商品取出口側が凸となるような屈曲部が形成されていることがうかがわれるだけであり、他に、「部材100」の構造について、刊行物1には具体的な記載は見当たらず、また、「部材100」がどのような手段によって施蓋状態を保つような構成となっているか明らかでない。
そうすると、刊行物1から把握できるのは、「部材100」が回動自在で、商品取出口に当接しているということであって、本件発明1のように、搬出口扉の重心位置によって生じるモーメントの作用のみによって、搬出口扉が商品搬出口の前縁に当接し、かつ、商品収納口6内を循環する冷気又は暖気によって開くことはなく、搬出口扉を開く方向に外力が加わらない限り、継続的に当接した状態を維持し施蓋状態を保つような構成となっているとは認められない。(平成17(行ケ)第10011号判決24頁参照)
ウ.刊行物2の「搬出口シャッター18」について
刊行物2の「搬出口シャッター18」は、上端を軸21により軸支されて垂下するように設けられ、その断面形状は、ほぼ直線状であるが、上端部分と下端部分では屈曲して取出口16とは逆の側に突出している。そして、刊行物2の図2から、搬出口13は、後方に傾斜し下端部が上端部よりも前方に突出している。
したがって、刊行物2の「搬出口シャッター18」の重心位置が商品取出口側に寄り、それ自体のモーメントが、本件発明1のように、商品収納口6内を循環する冷気又は暖気によって開くことはなく、「搬出口シャッター18」を開く方向に外力が加わらない限り、継続的に当接した状態を維持し施蓋状態を保つほどのものであるか否か明確でなく、また、搬出口13は、後方に傾斜し下端部が上端部よりも前方に突出しているため、外扉の奥行き寸法が小さくなるものではない。
エ.刊行物3の「断熱扉18」について
刊行物3には、断熱扉18が開口部16を塞ぐことに関して、「バネ部材(33)の付勢により、断熱扉(18)が常に開口部(16)内周に張出した扉当鍔部(34)に接当して開口部(16)を閉鎖するようになしてある。」(4頁15行〜18行)、「商品(2)の落下後、断熱扉(18)はバネ部材(33)の付勢力により開口部(16)を閉じる。」(6頁12行〜14行)との記載があるのみであり、断熱扉18が開口部16を塞ぐ機能は専らバネ部材の付勢力によっていることは明らかである。
したがって、刊行物3の「断熱扉18」は、本件発明1のように、「断熱扉18」の重心位置により生じるモーメントの作用のみにより開口部を塞いだ状態に維持するものではない。(平成14年(行ケ)第646号判決15頁〜16頁参照)
オ.刊行物4の「蓋32」について
刊行物4の「蓋32」は、断面略S字形状で開口部31を常時閉塞するように開閉自在に軸支されている。「蓋32」の下端部が当接する開口部は、「蓋32」の軸支部よりも前方に突出している。
したがって、刊行物4の「蓋32」の重心位置により生じるモーメントは、本件発明1のように、商品収納口6内を循環する冷気又は暖気によって開くことはなく、「搬出口シャッター18」を開く方向に外力が加わらない限り、継続的に当接した状態を維持し施蓋状態を保つほどのものであるか否か明確ではない。
以上のことから、刊行物1〜4には、本件発明1のように、搬出口扉の重心位置により生じるモーメントを、搬出口扉が商品搬出口の前縁に当接し、かつ、商品収納口6内を循環する冷気又は暖気によって開くことはなく、搬出口扉を開く方向に外力が加わらない限り、継続的に当接した状態を維持し施蓋状態を保つほどのものとし、搬出口扉と当接する当り部を商品搬出口の前縁に設けなくても、商品搬出口を塞ぐことができ、外扉の奥行き寸法を小さくすることについては、明確に記載されておらず、示唆するところもない。
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明であるとは云えず、刊行物1に記載された発明又は刊行物1〜刊行物4に記載された発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも云えない。
また、本件発明2〜4は、本件発明1に新たな構成を付加し、限定するものであるから、本件発明1と同様に、刊行物1〜4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると云えない。

なお、当審が通知した平成16年1月5日付けの取消しの理由で引用した実願昭55-151458号[実開昭57-73778号]のマイクロフィルム(以下、「刊行物5」という。)には、「内部蓋12」の構造について、第2図から、「内部蓋12」の上部が枢支されていることと、商品取出口側が凸となるような屈曲部が形成されていることがうかがわれるだけであり、他に、「内部蓋12」の構造について、刊行物5には具体的な記載は見当たらず、また、「内部蓋12」がどのような手段によって施蓋状態を保つような構成となっているか明らかでない。
そうすると、刊行物1と同様に、刊行物5から把握できるのは、「内部蓋12」が回動自在で、商品取出口に当接しているということであって、本件発明1のように、搬出口扉の重心位置によって生じるモーメントの作用のみによって、搬出口扉が商品搬出口の前縁に当接し、かつ、商品収納口6内を循環する冷気又は暖気によって開くことはなく、搬出口扉を開く方向に外力が加わらない限り、継続的に当接した状態を維持し施蓋状態を保つような構成となっているとは認められない。(平成17(行ケ)第10011号判決24頁参照)
したがって、本件発明1〜4は、刊行物5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであると云えない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件発明1〜4についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜4についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1〜4についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
自動販売機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】内部に商品収納室が形成されている断熱構造の本体と、
前記本体の前部に設けられると共に下部前面に商品取出口が設けられている外扉と、
前記外扉に対向配置されると共に前記本体の前面開口を開閉する内扉と、
前記内扉の下部に前記商品取出口に対応するように設けられ、前記商品収納室内に設けられた商品シュートを滑落する商品を前記商品取出口へ搬出するための商品搬出口と、
前記商品搬出口に上端が軸支され、重心位置を前記商品取出口側に寄せるとともに前記商品シュートを滑落してきた商品が内壁面に沿って滑落できるように前記商品取出口側に湾曲して形成された前壁を有し、該重心位置を前記商品取出口側に寄せることによって生じるモーメントの作用により、商品の通過後に前記商品搬出口の前縁部に当接して該商品搬出口を塞ぐ搬出口扉と
を備えたことを特徴とする自動販売機。
【請求項2】前記搬出口扉を透明な部材にて形成したことを特徴とする請求項1記載の自動販売機。
【請求項3】前記搬出口扉の前壁の内壁面に縦方向のリブを多数形成したことを特徴とす請求項1記載の自動販売機。
【請求項4】前記搬出口扉の前壁の下部に横方向のリブを複数形成したことを特徴とする請求項1記載の自動販売機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、内扉を有する自動販売機に関し、特に内扉の下部に形成された商品搬出口を開閉する搬出口扉の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の自動販売機においては、内部に商品収納室が形成されている断熱構造の本体の前部に外扉を設けると共に、この外扉の下部前面に商品取出口を設ける一方、外扉に対向配置されると共に本体の前面開口を開閉する内扉の下部に商品取出口に対応するように商品搬出口を設けるようにしている。これにより、商品収納室内に設けられた商品シュートを滑落してくる商品は、商品搬出口を通過した後、商品取出口に搬出されるようになっている。
【0003】
なお、この商品搬出口には、特開平2-8987号公報に示されるもののように平板状の搬出口扉が上端を軸支された状態で設けられており、通常この搬出口扉は商品搬出口を閉鎖して商品収納室内への外気の侵入を阻止し、商品搬出時には商品シュートを滑落してくる商品に当って押し開かれる構成となっている。
【0004】
ところで、商品搬出口扉を平板状に形成すると、扉の重心は軸部の垂直下方に位置するようになり、このように重心位置が軸部の垂直下方にある場合には、商品搬出口扉には商品搬出口の前縁に当接する方向の力は生じないことから商品搬出口扉が商品収納室内を循環する冷気又は暖気にて開くことがある。
【0005】
そこで、従来は、図5に示すように商品搬出口1の前縁部に後方に傾斜した枠状の当接部2を突設し、この当接部2に商品搬出口扉3を当接させて商品搬出口扉3を傾斜させ、これにより商品搬出口扉3の重心位置を軸部3aの垂直下方よりも外扉4の商品取出口5側に寄せるようにしている。
【0006】
そして、このように重心位置を商品取出口5側に寄せることにより、商品搬出口扉3に商品搬出口1に向かう方向の力(モーメント)を生じさせることができ、これにより商品搬出口扉3を商品搬出口1に密着させることができると共に、商品収納室6内を循環する冷気又は暖気にて商品搬出口扉3が開くのを防ぐことができるようになっている。なお、同図において、7は商品搬出口1から落下してくる商品を受ける商品受け部、8は商品受け部7の上方に軸支されている盗防板、9は内扉である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、商品搬出時、商品を確実に搬出できるようにするためには商品により押し開かれる商品搬出口扉の先端と、商品搬出口の下端部からの距離が商品が確実に通過できる所定距離だけ離れる位置まで商品搬出口扉を上方回動させるだけの前後方向の幅を有した空間を商品搬出口と商品取出口との間に形成する必要がある。
【0008】
そして、このような空間を形成するため、外扉は所定の奥行き寸法を有さなければならないが、既述したような従来の自動販売機においては、商品搬出口扉が当接部2に当接しているため、商品搬出口扉の先端は、同図に示すように当接部2の下端部の奥行き寸法(d1)分だけ外扉4に近づくようになる。
【0009】
このため、所定距離(L)を確保するためには商品搬出口扉3の先端が外扉4に近い分だけ商品搬出口扉3をより上方まで回動させなければならず、その分外扉4の奥行き寸法(D1)も大きくなり、自動販売機の薄型化という市場要求に答えることができないという問題点があった。
【0010】
本発明は、外扉の奥行き寸法を小さくすることのできる自動販売機を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、内部に商品収納室が形成されている断熱構造の本体と、前記本体の前部に設けられると共に下部前面に商品取出口が設けられている外扉と、前記外扉に対向配置されると共に前記本体の前面開口を開閉する内扉と、前記内扉の下部に前記商品取出口に対応するように設けられ、前記商品収納室内に設けられた商品シュートを滑落する商品を前記商品取出口へ搬出するための商品搬出口と、前記商品搬出口に上端が軸支され、重心位置を前記商品取出口側に寄せるとともに前記商品シュートを滑落してきた商品が内壁面に沿って滑落できるように前記商品取出口側に湾曲して形成された前壁を有し、該重心位置を前記商品取出口側に寄せることによって生じるモーメントの作用により、商品の通過後に前記商品搬出口の前縁部に当接して該商品搬出口を塞ぐ搬出口扉とを備えたものである。
【0012】
請求項2の発明は、前記搬出口扉を透明な部材にて形成したものである。
【0013】
請求項3の発明は、前記搬出口扉の前壁の内壁面に縦方向のリブを多数形成したものである。
【0014】
請求項4の発明は、前記搬出口扉の前壁の下部に横方向のリブを複数形成したものである。
【0015】
【作用】
請求項1の発明では、断熱構造の本体の前部に設けられている外扉の下部前面に商品取出口を設ける一方、外扉に対向配置されると共に本体の前面開口を開閉する内扉の下部に商品取出口に対応するように商品搬出口を設け、商品収納室内に設けられた商品シュートを滑落する商品を、商品搬出口を通過させた後、商品取出口へ搬送するようにする。また、商品搬出口に上端が軸支される搬出口扉の前壁を、重心位置を前記商品取出口側に寄せるとともに前記商品シュートを滑落してきた商品が内壁面に沿って滑落できるように前記商品取出口側に湾曲して形成することにより、搬出口扉に両側壁の後端を商品搬出口の前縁に当接させる方向の力を生じさせるとともに、商品搬出口での商品詰まりを防止する。
【0016】
請求項2の発明では、搬出口扉を透明な部材にて形成することにより、商品搬出口から搬出される商品を視認できるようにする。
【0017】
請求項3の発明では、搬出口扉の前壁の内壁面に縦方向のリブを多数形成することにより、搬出口扉の前壁が滑落商品によりキズ付き等を起こさないようにする。
【0018】
請求項4の発明では、搬出口扉の前壁の下部に横方向のリブを複数形成することにより、搬出口扉が横方向に捩じれないようにする。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施例に係る自動販売機の要部側面断面図である。同図において、図5と同一符号は同一又は相当部分を示している。
【0021】
同図において、10は自動販売機本体、10aは商品取出口5に設けられた透明な商品取出口扉、11は商品搬出口扉である。ここで、この商品搬出口扉11は、商品取出口5側に湾曲して形成された商品の当たる前壁11aと、この前壁11aの左右両側に形成されて後端が商品搬出口1の前縁部に当接する両側板11bとからなるものである。
【0022】
ところで、このように商品搬出口扉11の前壁11aを商品取出口5側に湾曲して形成することにより、図2に示すように商品搬出口扉11の重心(G)の位置を軸部11cの垂直下方よりd2だけ商品取出口5側に寄せることができ、このように重心位置を商品取出口5側に寄せることにより商品搬出口扉11に商品搬出口1の前縁部に当接する方向の力(モーメント)を生じさせることができるようになっている。
【0023】
そして、このように商品搬出口扉11に商品搬出口1の前縁部に当接する方向の力を生じさせることにより、従来のように枠状の当接部2(図5参照)を商品搬出口1の前縁部に突設しなくとも商品搬出口扉11を商品搬出口1の前縁部に当接させることができるので、商品搬出口扉11の先端が外扉4に近づく距離は同図に示すように商品搬出口1の枠部1aの厚さ寸法(d3)のみとなる。
【0024】
ここで、この枠部1aの厚さ寸法(d3)は、従来の商品搬出口1に突設された当接部2の下端部の奥行き寸法(d1)よりも小さいので、その差の分だけ商品搬出口扉11の外扉4に近づく距離が短くなるようになる。このため、商品搬出口扉3をそれほど上方まで回動させなくとも、所定距離(L)を確保することができるようになり、その分図3に示すように外扉4の奥行き寸法(D2)も小さくすることができるようになる。
【0025】
ところで、同図において、12は商品受け部7の上方に設けられたストッパであり、このストッパ12に前壁11aの中央部分が当って商品搬出口扉11の上方回動が規制されるようになっている。ところで、このように商品搬出口扉11がストッパ12に当る位置まで回動すると、湾曲した前壁11aの下部部分にて商品取出口5が塞がれるようになっている。
【0026】
したがって、このように前壁11aを湾曲形成すると共に、ストッパ12にて商品搬出口扉11を前壁11aが商品取出口5を塞ぐ位置まで回動可能とすることにより、従来のような盗防板8(図5参照)を設けることなく、商品搬出口11の不正開放を防ぐことができるようになっている。また、このように盗防板8を設けないようにすることにより、盗防板8に邪魔されることなく商品を取り出すことができるようになる。
【0027】
一方、本実施例においては、商品搬出口扉11は透明な樹脂にて形成されるようになっている。そして、記述したように盗防板を設けないようにすると共に、このように商品搬出口扉11を透明な樹脂にて形成することにより、商品搬出口1から搬出される商品を視認することができ、例えば商品搬出口1に商品が引っ掛った場合でも、商品を簡単に取り出すことができる。
【0028】
さらに、商品搬出口扉11の前壁11aを商品取出口5側に湾曲して形成することにより、図示しない商品シュートを滑落してくる商品を前壁11aの湾曲した内壁面に沿って滑らせながら落下させることができるので商品搬出口1での商品のつまりを防ぐことができる。
【0029】
一方、本実施例において、前壁11a内壁面には同図及び図4に示すように縦方向のリブ13が多数形成されており、これらのリブ13により商品が前壁11aに直接当るのを防ぐことができ、商品搬出口扉11がキズ付き等を起こすことがないようになっている。
【0030】
さらに本実施例においては、前壁11aの外正面下部には図4に示すように横方向のリブ14が複数形成されており、これらの横方向のリブ14により商品取出口5を塞ぐ位置又は商品搬出口1を塞いだ状態の商品搬出口扉11が横方向に捩じられて商品が不正に取り出されるのを防ぐことができるようにしている。また、このようにリブ14を前壁11aの外正面下部に設けることにより、リブ14が錘としての役割を果たすようになるので商品搬出口扉11はより確実に商品搬出口1の前縁部に当接することができるようになる。なお、同図において、15は商品搬出口扉11の軸部11cを保持するための保持部材である。
【0031】
そして、このように構成された搬出口扉を備えた自動販売機において、商品販売時には、商品はまず商品シュートを滑落して商品搬出口扉11の前壁11aの縦方向のリブ13に当たって商品搬出口扉11を外扉4側に押し開きながら、かつ先端を湾曲した前壁11aの内壁面に沿って滑らせながら商品搬出口1を通過し、商品受け部7に落下してゆく。なお、このように商品が前壁11aの縦方向のリブ13に当たることにより、前壁11aの内壁面にはキズ付き等は起こらない。
【0032】
この後、客は商品取出口5に設けられた商品取出口扉10aを開いて商品を取り出すようになる。なお、商品が何らかの理由で商品搬出口1付近に引っ掛かった場合でも、商品取出口扉10a及び商品搬出口扉11は透明であることから商品を視認することができるので取り出しは簡単である。
【0033】
一方、商品にて押し開かれた商品搬出口扉11は商品が通過した後、下方回動し、重心位置を商品取出口5側に寄せるようにした前壁11aにより生じた両側壁11bの後端を商品搬出口1の前縁に当接させる方向の力により商品搬出口1を塞ぐようになる。
【0034】
なお、この状態で不正に商品を取り出そうとして、例えば商品搬出口扉11を外扉4側に開こうとしても商品搬出口扉11がストッパ12に当たるようになって商品搬出口扉11を開くことはできない。また、ストッパ12に当る位置では商品搬出口扉11が商品取出口5を塞ぐようになるので商品取出口5を開放することもできない。さらに、商品取出口5をこじ開けようとして捩じろうとしても横方向のリブ14により捩じることができない。したがって、商品を不正に取り出すことはできない。
【0035】
このように、搬出口扉の前壁11aを商品取出口5側に湾曲して形成して重心位置を商品取出口5側に寄せることにより、搬出口扉11に両側壁11bの後端を商品搬出口1の前縁に当接させる方向の力を生じさせることができる。
【0036】
なお、これまでの説明においては、商品搬出口扉11は前壁11aと、両側板11bとからなるものとして述べてきたが、本発明はこれに限らず、例えば商品搬出口扉11を前壁11aのみとする一方、商品搬出口1の枠部1aの両側部分を前方に突出させると共に、その前端を湾曲形状し、この湾曲した枠部1aの両側部分に搬出口扉11の前壁11aを当接させて商品搬出口1を塞ぐ構成としてもよい。
【0037】
また、これまでの説明においては、横方向のリブ14を前壁11aの外正面下部に形成するものとして述べてきたが、本発明はこれに限らず、横方向のリブ14を前壁11aの内壁面に形成するようにしても良い。なお、このように横方向のリブ14を形成する場合は、このリブ14に商品がひっかかることのないようリブ14の高さは縦方向のリブ13よりも低くなるように形成する必要がある。
【0038】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、搬出口扉と当接する当り部を商品搬出口の前縁に設けなくても、商品搬出口を塞ぐことができるので、外扉の奥行き寸法を小さくすることができる。また、商品は湾曲した内壁面に沿って滑落するので商品搬出口での商品詰まりを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例に係る自動販売機の要部側面断面図。
【図2】
上記自動販売機品の内扉の下部側面断面図。
【図3】
上記自動販売機の要部側面拡大側面断面図。
【図4】
上記自動販売機品の内扉の下部正面図。
【図5】
従来の自動販売機の要部側面断面図。
【符号の説明】
1 商品搬出口
3,11 商品搬出口扉
4 外扉
5 商品取出口
6 商品収納室
9 内扉
11a 前壁
11b 両側板
13 縦方向のリブ
14 横方向のリブ
G 重心
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2002-11-13 
出願番号 特願平6-223689
審決分類 P 1 651・ 121- YA (G07F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岡崎 克彦  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 柳 五三
北川 清伸
登録日 2001-06-22 
登録番号 特許第3203134号(P3203134)
権利者 富士電機リテイルシステムズ株式会社
発明の名称 自動販売機  
代理人 宮田 英毅  
代理人 宮田 英毅  
代理人 酒井 宏明  
代理人 酒井 宏明  

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