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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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判定200060165 | 審決 | 特許 |
判定200260110 | 審決 | 特許 |
判定200560030 | 審決 | 特許 |
判定200360077 | 審決 | 特許 |
判定200260108 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て成立) B65D |
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管理番号 | 1130886 |
判定請求番号 | 判定2005-60073 |
総通号数 | 75 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 1999-08-03 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2005-10-04 |
確定日 | 2006-01-30 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3599307号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「提げ手」は、特許第3599307号の請求項1に係る発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
1 請求の趣旨 本件判定の趣旨は、平成17年11月7日付け手続補正書により補正された判定請求書(以下、「判定請求書」という。)によれば、イ号説明書、イ号図面及びイ号図面の説明書に記載する「提げ手」(以下、「イ号物件」という。)は、特許第3599307号の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。 2 本件特許発明 本件特許発明は、明細書または図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、その発明を構成要件に分節すると、次のとおりである。 「(A)シート状取付片の幅の2倍の幅を有する長尺シートに、2本の帯紐状部材を、取付位置を長尺シートの長さ方向にずらせてそれぞれクランク状に蛇行させながら連続的に取り付け、該2本の帯紐状部材が長尺シートの長さ方向と平行になる部分では該長尺シートから同じ長さ突出させ、2本の帯紐状部材が平行状態で長尺シートに対して直角方向に取り付けられる部分を1単位として長尺シートを切断するとともに、長尺シートの中央を長さ方向にそって切断して、2本の帯紐状部材で繋がった各切断片をシート状取付片とすることにより製造される運搬用の収納箱や収納袋その他に取り付ける提げ手で、 収納箱等の対向する両側面にそれぞれ貼付するポリプロピレン樹脂を主原料とした二軸延伸フィルムによる長方形の1対のシート状の取付片と、 この取付片間に、クロスさせた状態で取り付けた把手となる2本のポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂低発泡体または合成樹脂で発泡しない材質のもので形成する帯紐状部材とを前記取付片の一方の面に接着剤を均一に塗布し、この接着剤により前記帯紐状部材を取付片に接着し、該2本の帯紐状部材を挟むようにして取付片に貼付した離型紙とで構成したもので、 (B)該2本の帯紐状部材の取付片への取付部は平行に配置したこと (C)を特徴とする提げ手。」 3 イ号 判定請求書に添付された「イ号説明書」及び「イ号図面の説明書」には、次のとおり記載されている。 「【イ号説明書】 「イ号提げ手」の技術的構成を、本件特許に係る請求項1に記載された特許発明の構成要件の表現に可能な限り対応させて以下に説明する。 「イ号提げ手」は、 「作業台表面に長方形の短辺及び対角線にそれぞれ相当する各2本の直線を引いて提げ手の製造用のガイド線とし、該短辺よりも長い所望の長さと、所望幅寸法を有し、片面に接着剤が塗布され、離型紙で被覆されてなる、一個の提げ手用として準備された長方形の合成樹脂フィルム(シートの概念に属する厚みのものも含む)製シート状取付片を、接着剤面を上にして各短辺に沿って仮固定し、続いて同様に一個の提げ手用として準備された2本の帯紐状部材(シートの概念に属する厚みのものも含むフィルム)を各対角線に沿ってクロスさせて作業台上に仮固定し、帯紐状部材の各先端の取付部をシート状取付片の接着剤と離型紙との間に、且つシート状取付片に対して所望の角度を以って挟んで接着剤面に接着して製造される運搬用の収納箱や収納袋などに取り付ける提げ手であり、シート状取付片としてはポリプロピレン系樹脂を主原料とする、長さ方向に一軸延伸されたフィルム、又は再生ポリエチレンテレフタレート系樹脂を主原料とする無延伸フィルムが使用され、帯紐状部材としては一軸延伸ポリプロピレン系樹脂製フィルムのものが使用されている提げ手。」である。 【イ号図面の説明書】 … (1)図1はイ号提げ手の平面図を示す。 イ号提げ手は、一個の該提げ手用として予め準備された同一幅、同一長さの2枚のシート状取付片が、運搬用収納袋等の対向する両側面に取り付けられる位置を考慮した所望間隔をおいて、しかも図3で説明している長方形の相対する2辺を形成する位置に配置され、クロスした2本の帯紐状部材の各端部の取付部を介して連結されている。 (2)図2は図1のW-W線切断端面図である。 シート状取付片用シート上には接着剤が塗布され、端部に近い位置に帯紐状部材の取付部があるが、該取付部の表面及び該取付部が接着されている部分以外の接着剤の表面は離型紙で被覆されている。 (3)図3はイ号提げ手を製造する際の作業台、長方形、短辺、対角線、各部材の配置関係を説明するための平面図である。 作業台の表面に長方形ABCDの短辺に相当する直線ABとCD及び該長方形の各対角線に相当する直線ACとBDをそれぞれ引き、イ号提げ手製造用のガイド線としている。 先ず、短辺の長さよりも長い所望長さ、及び所望幅寸法を有する、一個の提げ用として予め準備された長方形の合成樹脂フィルム(…ポリプロピレン系樹脂を主原材料とする、上記長さ方向に一軸延伸されたもの、又は再生ポリエチレンテレフタレート系樹脂を主原料とする無延伸のもの)製シート状取付片を各短辺AB、CDに沿ってその外方に、しかも両中心位置を揃えて仮固定する。この場合、予め接着剤…が一面に塗布してなり、その表面が離型紙で被覆されてなるシート状取付片を、その接着剤面を上面に仮固定される。 続いて、長方形の対角線AC、BDよりもシート状取付片の幅寸法だけ長い、所望幅を有する2本の帯紐状部材(ポリプロピレン系樹脂を原材料とする一軸延伸フィルム)が使用される。…この帯紐状部材を各対角線に沿ってクロスさせ、しかも各対角線の両端A、C、B及びDからそれぞれ外方に同一長さだけ延びさせて位置せしめ、該外方に延びている部分を帯紐状部材の取付部として作業台上に仮固定する。 … (4)図4は、前述の位置決めとその仮固定に続くシート状取付片と帯紐状部材との接着、連結方法を示すものであり、… この場合、シート状取付片への各取付部の取り付け角度は、搬送物の形状、大きさ、重量等に対応させて所望の角度に種々変化させることができ、例えば帯紐状部材間のクロス角度を変える方法の他、各取付部のみを「平行型」又は種々の角度の「ハの字型」に曲げる方法もとりうる。 (5)図5は前記連結後に各離型紙の両端を元の位置に返し、帯紐状部材の取付部を除く接着剤面を被覆させるとともに、シート状取付片と帯紐状部材とを連結してイ号提げ手が作業台上で製造した状態の平面図である。」 上記イ号説明書の記載及びイ号図面の説明書の記載からみて、イ号物件の「提げ手」は、次のとおりのものと認める(本件特許発明に即して、符号を付し分節して示す。)。 「(a)作業台表面に長方形の短辺及び対角線にそれぞれ相当する各2本の直線を引いて提げ手の製造用のガイド線とし、該短辺よりも長い所望の長さと、所望幅寸法を有し、片面に接着剤が塗布され、離型紙で被覆されてなる、一個の提げ手用として準備された長方形の合成樹脂フィルム製シート状取付片を、接着剤面を上にして各短辺に沿って仮固定し、続いて同様に一個の提げ手用として準備された2本の帯紐状部材を各対角線に沿ってクロスさせて作業台上に仮固定し、帯紐状部材の各先端の取付部をシート状取付片の接着剤と離型紙との間に、且つシート状取付片に対して所望の角度を以って挟んで接着剤面に接着して製造される運搬用の収納箱や収納袋などに取り付ける提げ手であり、 ポリプロピレン系樹脂を主原料とする、長さ方向に一軸延伸されたフィルム、又は再生ポリエチレンテレフタレート系樹脂を主原料とする無延伸フィルムが使用される1対のシート状取付片と、 この取付片間に、クロスさせた状態で取り付けた2本の一軸延伸ポリプロピレン系樹脂製フィルムのものが使用されている帯状部材の各先端の取付部を前記取付片に塗布された接着剤により前記取付片に接着し、該2本の帯紐状部材を挟むようにして取付片に貼付した離型紙とで構成したもので、 (b)該2本の帯紐状部材の取付片への取付部は所望の角度を以って配置した (c)提げ手。 4 対比 4-1 構成要件(A)について 本件特許発明の構成要件(A)の「シート状取付片」は、「シート状取付片の幅の2倍の幅を有する長尺シート」を用意して、この用意された長尺シートに「2本の帯紐状部材を、取付位置を長尺シートの長さ方向にずらせてそれぞれクランク状に蛇行させながら連続的に取り付け、該2本の帯紐状部材が長尺シートの長さ方向と平行になる部分では該長尺シートから同じ長さ突出させ、2本の帯紐状部材が平行状態で長尺シートに対して直角方向に取り付けられる部分を1単位として長尺シートを切断するとともに、長尺シートの中央を長さ方向にそって切断して」形成されるものである。 一方、イ号物件の構成(a)の「シート状取付片」は、本件特許発明の構成要件(A)の如く、「シート状取付片」を形成するために「シート状取付片の幅の2倍の幅を有する長尺シート」を用意することなく、事前に所定形状に切断した一個の提げ手用として予めに準備されたものであって、そのような取付片に一個の提げ手用として準備された2本の帯紐状部材を取り付けるものであるから、「シート状取付片」及び「帯紐状部材」の材質を検討するまでもなく、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(A)を充足しない。 なお、判定被請求人は平成17年12月12日付け答弁書において、本件特許発明の構成要件(A)とイ号物件の構成(a)とは対比して比較されるものではない旨主張(第9頁第1行)し、その理由として、「請求人はイ号提げ手は、バッチ式提げ手の製造方法及び該製造方法であると主張する。…この主張内容において、調整済みの材料が使用されているというが、その調製方法を請求人は説明していない。例えば、イ号提げ手のシート状取付片や帯紐状部材が長尺または幅広のものを裁断して得られるのであれば、その裁断のタイミングによっては本件発明と何等変わりないものとなる。イ号提げ手の製造がバッチ式であり、本件発明の提げ手が連続的であることを持って両者の相違を主張するならば、バッチ式の意味(例えば手作業であるとか、)を明確にすべきであり、また、どのような形状のものから部材としてどのような形状のシート状取付片や帯紐状部材を得るのかを説明すべきである。イ号説明書はこれを欠き、よって、本件発明と対比するに足りうるものとは言えない。」(第9頁第2行〜第22行)と述べている。 しかしながら、上記した如く、イ号物件の構成(a)の「シート状取付片」は、本件特許発明の構成要件(A)の如く、「シート状取付片」を形成するために「シート状取付片の幅の2倍の幅を有する長尺シート」を用意することなく、事前に所定形状に切断した一個の提げ手用として予めに準備されたものであって、そのような取付片に一個の提げ手用として準備された2本の帯紐状部材を取り付けられるものである したがって、イ号説明書には、シート状取付片及び帯紐状部材がどのように得られるかは明確に説明されているから、本件特許発明の構成要件(A)とイ号物件の構成(a)とは対比して比較されるものではないとすることはできない。 4-2 構成要件(B)について 本件特許発明の構成要件(B)は、「該2本の帯紐状部材の取付片への取付部は平行に配置したこと」である。 一方、イ号物件の構成(b)は、「該2本の帯紐状部材の取付片への取付部は所望の角度を以って配置した」であって、この「所望の角度」とは、上記【イ号図面の説明書】によれば、「シート状取付片への各取付部の取り付け角度は、…各取付部のみを「平行型」…に曲げる方法もとりうる。」とのことであるので、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(B)を充足する。 4-3 構成要件(C)について 本件特許発明の構成要件(C)は「提げ手」であり、イ号物件の構成(c)も「提げ手」であるので、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(C)を充足する。 以上を整理すると、イ号物件は、本件特許発明の構成要件(A)を充足しない。 5 均等の判断 ここで、本件特許発明の構成要件(A)について、均等論の適用可否について検討する。 ところで、最高裁平成6年(オ)第1083号(平成10年2月24日)判決は、均等の要件について、次のように述べている。 「特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存する場合であっても、(1)右部分が特許発明の本質的部分ではなく、(2)右部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって、(3)右のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり、(4)対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから右出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、(5)対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、右対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である。」 また、上記(5)の条件でいう、「特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情」について、同判決は、「(四)また、特許出願手続において出願人が特許請求の範囲から意識的に除外したなど、特許権者の側においていったん特許発明の技術的範囲に属しないことを承認するか、又は外形的にそのように解されるような行動をとったものについて、特許権者が後にこれと反する主張をすることは、禁反言の法理に照らし許されない」と述べている。 そこで、これらの要件に基づいて、イ号物件と本件発明の構成要件(A)との異なる部分が均等なものとなりえるかを、(1)の条件からまず検討する。 均等要件(1)(本質的部分)について 本件特許発明では、「シート状取付片の幅の2倍の幅を有する長尺シートに、2本の帯紐状部材を、取付位置を長尺シートの長さ方向にずらせてそれぞれクランク状に蛇行させながら連続的に取り付け、該2本の帯紐状部材が長尺シートの長さ方向と平行になる部分では該長尺シートから同じ長さ突出させ、2本の帯紐状部材が平行状態で長尺シートに対して直角方向に取り付けられる部分を1単位として長尺シートを切断するとともに、長尺シートの中央を長さ方向にそって切断して、2本の帯紐状部材で繋がった各切断片をシート状取付片とすることにより製造される運搬用の収納箱や収納袋その他に取り付ける提げ手」であるから、「長さ方向に隣接する2片の切断片で2本の帯紐状部材がクロスして繋がった一対のシート状取付片が得られるから、1本の長尺シートと2本の帯紐状部材を使用してこれらが一体となったものを最終工程で同時に切断するだけで2本の帯紐状部材でつながった1対の取付片が得られ、製造工程を簡略化できるものである。」(本件公報段落番号【0039】)との本件明細書に記載された本件特許発明による作用効果が得られ、本件特許発明の目的が達成できるものである。 したがって、構成要件(A)に関する上記相違は、発明の本質的部分における相違であるといえ、構成要件(A)は、本件特許発明の本質的部分であるとするのが相当である。 均等要件(5)(意識的除外等の特段の事情)について 判定被請求人は、本件特許出願手続における平成13年12月18日付け審判請求書において、「提げ手の製造方法として、シート状取付片の幅の2倍の幅を有する長尺シートに、2本の帯紐状部材を、取付位置を長尺シートの長さ方向にずらせて…長尺シートの中央を長さ方向にそって切断して、2本の帯紐状部材で繋がった各切断片をシート状取付片とすることは、刊行物1〜3には全くない事項である。」(第6頁第21行〜第28行)と主張し、さらに、平成16年7月23日付け拒絶理由において、「請求項1において、提げ手の具体的な構成が不めいりょうである。」との特許法第36条第6項違反の通知に対して、上記審判請求書で主張した提げ手の製造方法である構成要件(A)を請求項1に付加したものである。 してみると、判定被請求人は、本件特許発明の構成要件(A)によって、本件特許発明には特許性がある旨主張しているのであるから、この構成要件(A)を備えないものは、本件特許発明には属さないものとして、意識的にこれを排除しているものと認められる。 そして、イ号物件の構成(a)の「シート状取付片」は、本件特許発明の構成要件(A)の如く、「シート状取付片」を形成するために「シート状取付片の幅の2倍の幅を有する長尺シート」を用意することなく、事前に所定形状に切断した一個の提げ手用として予めに準備されたものであって、そのような取付片に一個の提げ手用として準備された2本の帯紐状部材を取り付けられるものである。 そうすると、イ号物件は、本件特許発明から意識的に除外されたものにあたると認められるので、イ号物件は、均等の要件(5)を満たさないものとするのが相当である。 したがって、イ号物件は、前記均等の要件(1)及び(5)を充足しないので、均等論適用の要件を欠いている。 6 むすび したがって、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。 |
別掲 |
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判定日 | 2006-01-18 |
出願番号 | 特願平10-16905 |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZA
(B65D)
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最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
粟津 憲一 |
特許庁審判官 |
一ノ瀬 覚 溝渕 良一 |
登録日 | 2004-09-24 |
登録番号 | 特許第3599307号(P3599307) |
発明の名称 | 提げ手およびその製造方法 |
代理人 | 久保 司 |
代理人 | 久保 司 |