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審決分類 |
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する B63B 審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する B63B 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する B63B |
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管理番号 | 1131614 |
審判番号 | 訂正2005-39178 |
総通号数 | 76 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-12-14 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2005-10-03 |
確定日 | 2005-12-16 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3125141号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3125141号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
第1.請求の趣旨 本件審判の請求の要旨は、特許第3125141号発明(平成10年 5月29日出願、平成12年11月 2日設定登録)の願書に添付した明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、下記のとおり訂正することを求めるものである。 【特許請求の範囲】の【請求項1】について、 「船体の両舷に設定した一対の少なくとも2つのウイングタンク(12a,12b)と、これらウイングタンクの底部を連結して液体(17)を左右方向へ移動させる液体通路(13)と、前記の両ウイングタンク上部間に設けられる液体(17)の制動を目的とした遠隔駆動式のバルブ(15)等の手段を介して連通させる空気ダクト(14)或いは、各々のウイングタンク(12a,12b)の上部附近に設けられる大気へ開放可能とする遠隔駆動式のバルブ(15)付き空気ダクト(14)とを有し、更に、操舵輪部(1)からでる舵角指令情報を検知するポテンショメ-タ(4)等の手段から出力される情報と、船速情報を取り入れ、これらの内容を解読すると共に制御信号を出力するコントロ-ル部(2)と、コントロ-ル部(2)からの制御信号を基に前記バルブ(15)を遠隔駆動させる開閉機器装置部(3)とを具備した液体(17)の移動または停止操作を自動的に成し得る船舶の動揺軽減装置の制御方法に於いて、船が急旋回行動をする時点の舵角指令と船速情報が、予め設定してある条件を満たす場合は、液体(17)を停止させない状況下に生じる液体移動による船体傾斜の増長を事前に防止し得るよう、舵圧により船体が旋回中心外側方向へ傾斜を起こす前に、バルブ(15)を強制的に閉じて移動用液体(17)を停止させる制動を、自動的に制御させることを特徴とする船舶の動揺軽減装置の制御方法。」 とあるのを、 「船体の両舷に設定した一対の少なくとも2つのウイングタンク(12a,12b)と、これらウイングタンクの底部を連結して液体(17)を左右方向へ移動させる液体通路(13)と、前記の両ウイングタンク上部間に設けられる液体(17)の制動を目的とした遠隔駆動式のバルブ(15)等の手段を介して連通させる空気ダクト(14)或いは、各々のウイングタンク(12a,12b)の上部附近に設けられる大気へ開放可能とする遠隔駆動式のバルブ(15)付き空気ダクト(14)とを有し、更に、操舵輪部(1)からでる舵角指令情報を検知するポテンショメ-タ(4)等の手段から出力される情報と、船速情報を取り入れ、これらの内容を解読すると共に制御信号を出力するコントロ-ル部(2)と、コントロ-ル部(2)からの制御信号を基に前記バルブ(15)を遠隔駆動させる開閉機器装置部(3)とを具備した液体(17)の移動または停止操作を自動的に成し得る船舶の動揺軽減装置の制御方法に於いて、船が急旋回行動をする時点の舵角指令と船速情報が、予め設定してある条件を満たす場合は、液体(17)を停止させない状況下に生じる液体移動による船体傾斜の増長を事前に防止し得るよう、舵圧により船体が旋回中心内側方向へ傾斜した後であって遠心力により旋回中心外側方向へ傾斜を起こす前に、バルブ(15)を強制的に閉じて移動用液体(17)を停止させる制動を、自動的に制御させることを特徴とする船舶の動揺軽減装置の制御方法。」(以下、「本件訂正発明」という。) と訂正する。 第2.当審の判断 1.訂正の目的の適否、新規事項の有無、拡張・変更の存否について (1)まず、上記の訂正は、特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項である、バルブ(15)を強制的に閉じて移動用液体(17)を停止させる制動について、バルブ(15)を強制的に閉じるタイミングを、「舵圧により船体が旋回中心内側方向へ傾斜した後であって」と具体的に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 次に、上記の訂正は、また、「舵圧により船体が旋回中心外側方向へ傾斜を起こす」とある記載を「遠心力により旋回中心外側方向へ傾斜を起こす」と訂正するものであるが、「舵圧により船体が旋回中心外側方向へ傾斜を起こす」ことが誤記であり、正しくは「遠心力により旋回中心外側方向へ傾斜を起こす」ことであることは、本件特許明細書の段落【0027】の記載に照らしても一見して明らかなことである(このことは、後記の文献2,3によっても明らかである)。したがって、上記の訂正は誤記の訂正を目的とするものである。 (2)そして、上記訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 2.独立特許要件について (1)そこで、本件訂正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かを下記の文献との対比によって検討する。 [対比する文献] 文献1:「減揺水槽取扱い説明書」、p.1-5(海上保安庁にARTを搭載した大型巡視船「くだか」が納入された際に、平成6年9月28日付で交付) 文献2:大串雅信著、「理論船舶工学(下巻)」第五版、海文堂出版株式会社、昭和44年5月1日発行、p.262-263 文献3:橋本進・矢吹英雄共著、「操船の基礎」初版、海文堂出版株式会社、昭和63年4月25日発行、p.12-17 文献4:特公昭58-30196号公報 文献5:特開平8-133182号公報 文献6:社団法人日本深海技術協会会報、通巻17号、平成10年4月1日発行、p.1-17 文献7:船舶操縦性能計測システムAStep-1 LT紹介ホームページ(p.1に「平成4年度受託第2号」の記載あり) 文献8:AStep-1MII 取扱説明書、株式会社アカサカテック、平成8年3月6日発行、p.1-14 (2)文献1との対比について検討するに、そもそも、文献1に開示されている技術は、「7)減揺水槽の性質として急速旋回をする場合、船の傾斜角が大きくなりますのでエアーバルブを閉じて下さい。」とあるように、船舶を急速旋回する場合には、事前にエアーバルブを閉じることにより、減揺水槽(ART)を非作動状態にすることを前提とするものと認められる。すなわち、文献1記載の船舶は、船舶を急速旋回する際に「揺れが大きくなる」という減揺水槽(ART)の欠点を解消するために、事前にバルブを閉止しているものと考えられ、該船舶を急速旋回する航行においては、文献2及び文献3に開示されているような減揺水槽を有しない船舶の船体運動特性にしたがって航行するものと解される。 (3)それに対して、本件訂正発明は、発明特定事項として「舵圧により船体が旋回中心内側方向へ傾斜した後であって遠心力により旋回中心外側方向へ傾斜を起こす前に、バルブ(15)を強制的に閉じて移動用液体(17)を停止させる制動を、自動的に制御させる」点を包含するものである。 そして、本件特許明細書の段落【0026】〜【0029】には、 「【0026】 【発明の効果】以上の説明からも明らかなように本発明によれば、舵に与える舵角情報を船の旋回前に把握することで、舵角指令と船が舵角を確保する時間差をうまく利用できるから、空気ダクトのバルブを人手を煩わすことなく自動的に、しかも数秒間で閉じることができる。 【0027】本発明を実施した船舶に於いて、急旋回をするため舵角を操舵輪を操作して操舵ユニットへ指示をすると、 (1)舵は少しずつ舵角を取り、船は旋回を始める。 (2)この時、船は舵圧により旋回中心内側方向へヒールをする。 (3)タンク内の液体は、少し遅れてヒールした方向へ移動する。 (4)舵が指令された舵角を取り続けると、旋回による遠心力(遠心力は旋回中心外側方向に働く)が発生し、舵圧より勝ってくるから復原力となって、ヒールを元の状態へ戻すことになる。 (5)この間にバルブ15を閉じると、タンク内の液体は、旋回中心内側の片寄った状態で停止する。 (6)指令された舵角を舵が確保すると、遠心力は最大となり旋回中心外側方向にヒールする。 (7)ARTに於いては、液体が旋回中心の内側へ片寄った時にバルブ15を閉じてあるから、その傾斜モーメントが遠心力とは逆の方向へ働くためヒール角度を減少させる働きがある。 当然のこと、この時のタンク内の液体は、遠心力方向(ヒール方向)へ移動する事ができない。 【0028】このように、タンク内の液体を遠心力とは逆の方向へ片寄らせて停止させることが可能である。・・・ 【0029】このことはARTの宿命的とも言える欠点、即ち、急旋回時に於けるヒール角の増長というARTによる逆効果を容易に解消することができる。・・・従って、衝突回避や取締遂行中に於いて、突発的な緊急旋回をする時でも、ARTの欠点を気にすること無く繰船を可能となし、常に安定した減揺効果が得られる・・・」(ただし、アンダーラインは、当審で附加。) との記載が認められる。 (4)ここで、上記文献2ないし8の記載事項を検討するに、これらの文献には、船舶の旋回行動中、所定のタイミングで減揺水槽(ART)のバルブを強制的に閉じることにより、該減揺水槽(ART)内の液体を旋回中心内側の片寄った状態で停止させ、もって船舶の傾斜モーメントを遠心力とは逆の方向へ働かせるための構成に関する記載も示唆も認められない。 (5)そうすると、仮に、文献2ないし8の記載事項から、(イ)船体運動学の分野において,船舶が旋回するときに,最初に内側に傾斜し,旋回が進むに従って外方に傾斜すること,並びに外方傾斜の大きさには速度の高低及び旋回半径の大小が影響すること、(ロ)ARTの制御方法に係る技術分野において,ARTの空気ダクトに遠隔駆動式のバルブを取り付け,電気信号を入力しバルブの開閉判断を行うコントロール部が出力する制御信号を基に,バルブを遠隔駆動させる開閉器機装置部を有する構成とする技術、(ハ)舵角の指令をポテンショメータを介して電気情報として取り入れ,舵の操作以外の目的に利用すること、等がいずれも周知技術であるとしても、上記文献1ないし8のいずれにも「タンク内の液体を遠心力とは逆の方向へ片寄らせて停止させる」ことを可能とする点が開示されていない以上、上記訂正事項に係る構成を有する本件訂正発明は、上記文献1ないし8の記載事項に基づいて当業者が容易に想到できたものとは認められない。 (6)そして、本件訂正発明は、上記訂正事項に係る、「舵圧により船体が旋回中心内側方向へ傾斜した後であって遠心力により旋回中心外側方向へ傾斜を起こす前に、バルブ(15)を強制的に閉じ」るとの構成を有するが故に本件特許明細書の段落【0027】に記載された上記(1)〜(7)の船体運動特性を有する等の作用効果を奏するものと認められる。 (7)以上のとおり、本件訂正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明ということはできない。 第3.むすび したがって、上記訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項、第4項及び第5項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 船舶の動揺軽減装置の制御方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 船体の両舷に設定した一対の少なくとも2つのウイングタンク(12a,12b)と、これらウイングタンクの底部を連結して液体(17)を左右方向へ移動させる液体通路(13)と、前記の両ウイングタンク上部間に設けられる液体(17)の制動を目的とした遠隔駆動式のバルブ(15)等の手段を介して連通させる空気ダクト(14)或いは、各々のウイングタンク(12a,12b)の上部附近に設けられる大気へ開放可能とする遠隔駆動式のバルブ(15)付き空気ダクト(14)とを有し、更に、操舵輪部(1)からでる舵角指令情報を検知するポテンショメ-タ(4)等の手段から出力される情報と、船速情報を取り入れ、これらの内容を解読すると共に制御信号を出力するコントロ-ル部(2)と、コントロ-ル部(2)からの制御信号を基に前記バルブ(15)を遠隔駆動させる開閉機器装置部(3)とを具備した液体(17)の移動または停止操作を自動的に成し得る船舶の動揺軽減装置の制御方法に於いて、船が急旋回行動をする時点の舵角指令と船速情報が、予め設定してある条件を満たす場合は、液体(17)を停止させない状況下に生じる液体移動による船体傾斜の増長を事前に防止し得るよう、舵圧により船体が旋回中心内側方向へ傾斜した後であって遠心力により旋回中心外側方向へ傾斜を起こす前に、バルブ(15)を強制的に閉じて移動用液体(17)を停止させる制動を、自動的に制御させることを特徴とする船舶の動揺軽減装置の制御方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、減揺水槽内の液体制動の創案に係わり、減揺水槽を装備した船舶に於いて、該船舶が航行中に他船との衝突回避あるいは、取締任務遂行中に急旋回行動を余儀なくされた時、減揺水槽の液体による船体傾斜の増長という逆効果を、事前に防止し得るよう自動的に制御する制御方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より船舶の横揺れを軽減する装置として、U字管型の受動減揺水槽(以下ARTとも言う)が知られている。その作動原理を簡単に述べる。船が最も大きく揺れる状況は、船の横揺固有周期と同じ出会周期の波を繰り返し受ける時である。これと同じ状況は、例えば、平穏な海面に於いて、人を船の動揺よりワンテンポ早く左右方向に繰り返し移動させると、船は次第に同調横揺れを起こし横揺れ角度は大きくなる。この方法は、一般的に小型船の動揺試験時における動揺誘起の手段として用いられている。また、この時、人をワンテンポ遅くなるように移動させると、逆に揺れなくなる事も知られている。 【0003】ARTは、この人を液体に置き換え、液体移送用のポンプ等を用いず、タンク内の液体が高い方から低い方へ流れる自然の法則をうまく利用して、液体の動く最適な速さ(時間)と移動モーメント(減揺モーメント)を得て、船の横揺れを軽減させようとするもので、波などの外力により繰り返し横揺れが続く状況に於いて、タンク内の液体は共振を行い、最適な位相遅れを生じさせた時に減揺効果が得られる。また、ARTの設置場所が船の重心より上方にあればある程、移動モーメント(減揺モーメント)の値は大きくなり、高い減揺効果が得られるものである。 【0004】 【発明が解決する課題】ARTは、作動原理が示すように、タンク内の液体がある一定の速さを以て、左右を繰り返し移動する状況に於いて、有効な減揺モーメントが得られるものである。しかし乍、次のように船が旋回をする時に生じる定常横傾斜(以下、船体横傾斜をヒールとも言う)状態では、減揺モーメントを得るための液体が逆にヒールを生じさせるモーメントに変わると言う欠点を有している。 【0005】船が旋回する時の機構を述べる。一般的には、操舵室に設置した操舵輪を介して、旋回に必要な舵角指令を電気信号などで、船尾の舵機室に配した駆動ユニットへ送信し、舵を駆動させながら、指令通りの舵角を確保している。 【0006】次に、旋回時に於ける船体横傾斜の状況を説明する。操舵輪の指令により舵が舵角を取り始める旋回初期には、舵圧の作用により旋回中心方向(内側)へ小傾斜するが、しだいに舵角が大きくなるにしたがって、旋回による遠心力が旋回中心の外側方向へ働き、内側にヒールしている状態を元に戻そうとする復原力となって船体は水平状態に戻る。さらに旋回を続けると、その遠心力によって逆に旋回中心の外側方向へ、持続的にヒールすることが知られている。 【0007】この場合、同じ舵角に於いて、(イ)船速が早い程、遠心力は大きくなる。 (ロ)舵輪操作から舵が指令された舵角を確保するまでの所要時間が短い程、遠心力は大きくなる。 (ハ)過大な遠心力は、ヒール角を増加させ転覆に至る危険性を有している。このため、操船上の安全性を確保すべく操舵輪の操作開始から舵角確保に至る所要時間を、意図的にある一定の範囲内に治まるよう手段を講じさせるとともに、海上公試運転では、操舵試験や旋回試験を義務づけ、その内容を確認している。 【0008】このように、旋回中の船体は、旋回時の船速や舵角の状況にもよるが、必ず、旋回中心外側方向の定常ヒール状態になるので、ARTを作動していると、タンク内の液体は、高い方(旋回中心側)から低い方(旋回中心外側方向)へ移動し片寄りの状態となる。言い換えれば、繰り返す船体動揺があることで、得られる液体の移動モーメント(減揺モーメント)が、定常ヒールという状況では、更に船体を傾斜させようとする傾斜モーメントに変わる。 【0009】従って、旋回中は、遠心力と液体の傾斜モーメントが同じ方向に加わるため、ヒール角度を更に大きくするという重大な問題点が確認された。また、高い減揺効果を求め、ARTの設置場所を船体の重心より上方に計画する傾向にあったが、船体の重心より上方にある程、定常ヒール状態では、傾斜モーメントとして逆に作用するから、設置場所の問題点も指摘されるようになった。 【0010】従来技術のARTを搭載した船では、前述した問題点を有しているため、衝突回避行動を取る場合や取締任務の遂行中などで、急旋回をしなければならない緊急時においても、船速を落とし、しかも、舵角を考慮しながら旋回半径を大きく取らざるを得ないという、操船上の対応に難点があった。 【0011】 【目的】急旋回中に発生する遠心力で船が定常ヒール状態に至るとき、ARTの移動液体によって発生する傾斜モーメントが、更に、ヒール角度を大きくするというARTの欠点を解消せしめる自動制御方法を提供することを目的とする。 【0012】 【課題を解決するための手段】本件の発明は、舵角指令から舵が舵角を確保するまでの間に時間差があることと、操舵輪の指令により舵が舵角を取り始める旋回初期には、舵圧の作用によって船体が旋回中心方向(内側)へ、ヒールすると言うことに着目しなされたものである。 【0013】上記の目的を達成するために、操舵輪部にポテンショメータを取り付け、旋回に必要な舵角の指令を検知した時、その指令の内容が急旋回なのか、あるいは通常の旋回なのか等を解読させるコントロール部と空気ダクトのバルブを閉じる開閉機器装置の手段を施し、急旋回をすると判断した場合は、旋回による外側方向へのヒールが生じる前に、空気ダクトのバルブを強制的に閉じて、タンク内の液体を制動させるものである。 【0014】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を実施例にもとづき図面を参照して説明する。前述の目的を達成するための基本的なARTの構成自体は、図2に示すように、船体の両舷に設定した一対の少なくとも2つのウイングタンク12a,12bとこれらウイングタンク12a,12bの底部に液体17を左右方向へ移動させる液体ダクト13で連結すると共に、同じくウイングタンク12a,12b上部にバルブ15を介して連通させる空気ダクト14と、図示していないが注排水管、測深管、空気抜き管など水槽として必要な艤装を施す。ART本体16は、前記の注排水管、測深管、空気抜き管など外部に通じる全ての管に閉鎖手段を施し密閉状態を可能とする。 【0015】バルブ15の開閉は自動制御のための遠隔操作を可能とする動力駆動式を採用し、図1に示すようなバルブ開閉操作の制御機構を施す。 【0016】制御装置機構1は、大きく分けて舵角指令を出す操舵輪部1と数値演算や制御信号等を司るコントロール部2およびバルブ15を遠隔駆動させる開閉機器装置部3からなる。 【0017】操舵輪部1には、指令舵角を検知するためポテンショメータ4を取り付け、その舵角を電気信号にてコントロール部2へ送信する。 【0018】コントロール部2は、ポテンショメータ4から送信された舵角指令の状況を受信し、その内容を解読する演算解読回路5と、解読された値を基に予め設定して有るバルブを閉めるか、あるいは、開けるかを制御する制御回路6から、制御実行回路18を経て制御信号を開閉機器装置部3へ送信する。また、各機器の作動状況は、機器作動状況確認回路19を介して逐一情報処理回路7で把握し、制御回路6で確認すると共に、その情報はICメモリーにて保存する。 【0019】空気ダクト14のバルブ15をバルブ用開閉装置10を介して閉じた場合、タンク内の空気の流通を遮断するから、ARTは非作動状態となるので、その非作動であることを知らせる警報(ブザー等)を発すると同時に図示していないがコントロールパネルに表示することもできる。 【0020】演算解読回路5は、ポテンショメータ4から送信されたデータを、次の事項等から急旋回か否かを判断させる。 (1)指令された舵角情報の所要時間。 (2)指令された舵角のみの情報。 (3)大きい舵角指令を検知したときでも、操舵輪を遅く回す時の情報。 (4)舵角と船速の関係。 (5)与えられた舵角指示と航海速力によって生じる傾斜モーメント。 【0021】開閉機器装置部3は、駆動源8、電磁弁9、バルブ15、バルブ用開閉装置10、リミットスイッチ11等で構成する。 【0022】舵角指令を検知しバルブを閉じるまでの開閉機器装置部3の作動は、コントロール部2の制御回路6から送信された制御信号は、制御実行回路18を経て駆動源8を始動→電磁弁9→バルブ用開閉装置10→バルブ15→リミットスイッチ11→駆動源8を停止する行程で制御終了となる。 【0023】行程に要する所要時間は、船の大きさにもよるが実験の結果、約2〜3秒位が最適であるが、特に束縛するものではない。 【0024】機構によっては駆動源8を必要としない場合がある。例えば、駆動源を他の供給源から受けられる場合は、ここで言う駆動源8の始動および、停止の行程は省略できる。 【0025】本実施例は、駆動方式として、油圧駆動を想定した構成であるが、空圧式あるいは電動式を用いた場合、その方式によって開閉機器装置の内で省略できるものは省略しても良い。また、空気ダクト14は連結した方式とした例であるが、図3に示すように、空気ダクト14を左右連結せず、各々、単独に大気に開放する方式として、各々にバルブ15を設けるか、あるいは、片舷1つにバルブ15を設けても同じ効果が得られる。 【0026】 【発明の効果】以上の説明からも明らかなように本発明によれば、舵に与える舵角情報を船の旋回前に把握することで、舵角指令と船が舵角を確保する時間差をうまく利用できるから、空気ダクトのバルブを人手を煩わすことなく自動的に、しかも数秒間で閉じることができる。 【0027】本発明を実施した船舶に於いて、急旋回をするため舵角を操舵輪を操作して操舵ユニットへ指示をすると、(1)舵は少しずつ舵角を取り、船は旋回を始める。 (2)この時、船は舵圧により旋回中心内側方向へヒールをする。 (3)タンク内の液体は、少し遅れてヒールした方向へ移動する。 (4)舵が指令された舵角を取り続けると、旋回による遠心力(遠心力は旋回中心外側方向に働く)が発生し、舵圧より勝ってくるから復原力となって、ヒールを元の状態へ戻すことになる。 (5)この間にバルブ15を閉じると、タンク内の液体は、旋回中心内側の片寄った状態で停止する。 (6)指令された舵角を舵が確保すると、遠心力は最大となり旋回中心外側方向にヒールする。 (7)ARTに於いては、液体が旋回中心の内側へ片寄った時にバルブ15を閉じてあるから、その傾斜モーメントが遠心力とは逆の方向へ働くためヒール角度を減少させる働きがある。当然のこと、この時のタンク内の液体は、遠心力方向(ヒール方向)へ移動する事ができない。 【0028】このように、タンク内の液体を遠心力とは逆の方向へ片寄らせて停止させることが可能である。また、旋回を中止すべく舵角を元の位置に戻す指令を検知した時、その状況をコントロール部で判断し、空気ダクトのバルブを開け、ARTは自動的に作動を開始する。 【0029】このことはARTの宿命的とも言える欠点、即ち、急旋回時に於けるヒール角の増長というARTによる逆効果を容易に解消することができる。また、船体の重心より上方へARTを設置することも可能となり、高い減揺モーメントが得られる。従って、衝突回避や取締遂行中に於いて、突発的な緊急旋回をする時でも、ARTの欠点を気にすること無く繰船を可能となし、常に安定した減揺効果が得られると言う作用効果を有しており、その効果の大きい発明である。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明によるバルブ開閉操作の制御機構構成関係を示したブロック図 【図2】ARTの概略構成を示す全体構成図 【図3】ARTの概略構成を示す全体構成図 【符号の説明】 1・・・操舵輪部 2・・・コントロール部 3・・・開閉機器装置部 4・・・ポテンショメータ 5・・・演算解読回路 6・・・制御回路 7・・・情報処理回路 8・・・駆動源 9・・・電磁弁 10・・・バルブ用開閉装置 11・・・リミットスイッチ 12a、12b・・・ウイングタンク(タンク) 13・・・液体通路(液体ダクト) 14・・・空気ダクト 15・・・バルブ 16・・・減揺水槽(ART本体) 17・・・移動用液体 18・・・制御実行回路 19・・・機器作動状況確認回路 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2005-12-06 |
出願番号 | 特願平10-186767 |
審決分類 |
P
1
41・
851-
Y
(B63B)
P 1 41・ 856- Y (B63B) P 1 41・ 852- Y (B63B) |
最終処分 | 成立 |
特許庁審判長 |
大野 覚美 |
特許庁審判官 |
鈴木 久雄 永安 真 |
登録日 | 2000-11-02 |
登録番号 | 特許第3125141号(P3125141) |
発明の名称 | 船舶の動揺軽減装置の制御方法 |
代理人 | 窪田 英一郎 |
代理人 | 相原 正 |
代理人 | 窪田 英一郎 |
代理人 | 相原 正 |