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審決分類 審判 全部無効 特123条1項8号訂正、訂正請求の適否 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) E04D
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) E04D
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) E04D
管理番号 1131623
審判番号 無効2003-35521  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-12-21 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-12-24 
確定日 2005-12-13 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2905776号発明「安定駒利用の耐震、耐風瓦工法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2905776号の請求項に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
平成10年 6月 3日 出願
平成11年 3月26日 設定登録
平成11年12月14日 別件異議申立事件(平成11年異議第74703号)
平成12年 7月 7日 訂正請求書
平成13年 3月 2日 異議決定(訂正を認める。請求項1及び2に係る特許を維持する)
平成15年12月24日 本件無効審判請求
平成16年 3月24日 訂正請求書、答弁書
平成16年 4月19日 無効理由通知書
平成16年 5月31日 弁駁書、意見書(請求人)
平成16年 6月14日 訂正請求書、意見書(被請求人)
平成16年 7月21日 訂正拒絶理由通知書
平成16年 8月18日 弁駁書、意見書(請求人)
平成16年 8月20日 意見書(被請求人)

2.請求人の主張の概要
請求人は、下記(イ)ないし(ハ)の無効理由を主張し、甲第1号証ないし甲第7号証を提出している。
(イ)本件訂正特許発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないもので、本件訂正特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
(ロ)本件訂正特許の訂正明細書(平成12年7月7日付け訂正請求書に添付の訂正明細書・・・合議体注)における請求項1、2に係る発明について、訂正明細書中の〔発明の詳細な説明〕には、当業者が実施出来る程度に十分かつ明確に記載されていないので、訂正請求書に添付された訂正明細書は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、本件訂正特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。
(ハ)本件訂正特許の訂正明細書(平成12年7月7日付け訂正請求書に添付の訂正明細書・・・合議体注)における請求項1の訂正が、願書に添付された明細書における特許請求の範囲の減縮を目的とするものではないので、特許法第120条の4第2項第1号に規定する要件を満たしておらず、本件訂正特許は同法第123条第1項第8号に該当し、無効とすべきものである。

甲第1号証 特開平8-302910号公報
甲第2号証 実願昭53-116115号(実開昭55-33325号)のマイクロフィルム
甲第3号証 実願平2-25339号(実開平8-115721号)のマイクロフィルム
甲第4号証 実願昭56-44252号(実開昭57-157616号)のマイクロフィルム
甲第5号証 実用新案登録第2502645号公報
甲第6号証 本件特許に関する特許権侵害差止等請求事件(東京地方裁判所平成15年(ワ)第16706号)における平成15年7月23日付けの被請求人を原告とした訴状
甲第7号証 上記平成15年(ワ)第16706号における平成16年2月20日付けの同原告第4準備書面

3.被請求人の主張の概要
被請求人は、請求人の無効理由を否定し、乙第1号証ないし乙第10号証を提出している。

乙第1号証 特開平8-302910号公報(請求人提出の甲第1号証)第6頁の図面中の図5で枠で囲った図
乙第2号証 甲第1号証の不具合を説明するための図で、(イ)は縦瓦桟が正常の場合、(ロ)は縦瓦桟が朽ちた場合を示す。
乙第3号証 本件発明の異議申立事件(平成11年異議第74703号)における異議の決定
乙第4号証 甲第1号証記載の発明に関する縦棧の高低の例を示した模式図であり、(イ)が所定の高さの縦棧を、(ロ)が低い高さの縦棧を、(ハ)が前記(イ)の釘による緊締を示した例である。
乙第5号証-1 実開昭63-63698号公報
乙第5号証-2 実開昭63-49499号公報
乙第6号証 請求人が裁判(平成15年(ワ)第16706号事件)で提出した資料(証拠説明書と写真)のコピー
乙第7号証 判定請求書(判定2004-60018)の表紙とイ号説明書及び図2
乙第8号証 判定請求書(判定2004-60017)の表紙、8頁及び図2
乙第9号証 本件発明に関する縦棧の高低の例を示した模式図であり、(イ)が所定の高さの縦棧を、(ロ)が低い高さの縦棧の例
乙第10号証 (イ-1)は本件発明の安定駒と縦棧との関係を示した拡大断面模式図で、(イ-2)ないし(イ-4)は本件特許公報の図2(俯瞰図)、図6(正面図)、図7(背面図)であり、また(ロ-1)は甲第2号証の突起と棧木との関係を示した拡大断面模式図で、(ロ-2)は同甲第2号証の第1図の引掛棧瓦と縦棧との関係を示した(裏面)斜視図

4.訂正の可否に対する判断
(4-1)平成12年7月7日付け訂正請求書添付の訂正明細書について(請求人の主張(ハ)について)
この訂正前の「縦棧に安定駒を側面係止する」(特許公報の請求項1参照)を「縦棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接する」と訂正する目的を検討すると、訂正前は「縦桟に安定駒を側面係止する」となっており、この内容での「側面係止」は、安定駒の差込み側のみならず、その反対側の側面(棧山側)も含まれる」との解釈ができるが、「縦桟に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接する」と訂正することにより、「側面係止」を安定駒の差込み側に限定したものといえるから、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
請求人は、訂正前の「縦棧に安定駒を側面係止する」(特許公報請求項1参照)を、「縦棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接する」と訂正することは、例えば、安定駒差込み側の側面を傾斜面とした場合に該側面が縦棧の角部に当接することも含まれることになり、訂正前の「縦桟の側面と安定駒の差込み側の側面が面接触する」ことより上位概念となるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない旨主張する。
確かに、訂正前の明細書(特許公報参照)には、段落番号【0013】4欄43ないし44行に「縦桟の側面に安定駒の差込み側の側面を当接する」とあり、図面の【図4】及び【図7】にも縦桟の側面に安定駒の差込み側の側面を当接するような記載が認められるが、段落番号【0016】5欄25ないし26行に「縦桟2には瓦10の安定駒103の側面103aが当接される」、5欄29ないし30行に「安定駒103の側面103aへの縦桟2への当接」とあるように、必ずしも「縦桟の側面と安定駒の差込み側の側面が面接触する」するものには限られないから、訂正後の発明が上位概念となるという請求人の主張は認められない。
そして、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し変更するものではない。
したがって、平成12年7月7日付け訂正は、平成15年改正前特許法第120条の4第2項第1号に規定する要件を満たしており、請求人の上記主張(ハ)は理由がない。

(4-2)平成16年6月14日付け訂正請求書添付の訂正明細書について
(4-2-1)訂正の内容
この訂正は、本件明細書(平成12年7月7日付け訂正請求書に添付された訂正明細書)を次のように訂正するものである。
(a)「【請求項1】屋根地に多数本の横棧及び縦棧をクロス状に配置する棧の布設工程と、この布設工程で配置された横棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接する屋根瓦の係止工程と、この係止工程において縦棧を安定駒の差込み側の側面に当接する際に、当該安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される安定駒当接工程と、で構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法。」を、「【請求項1】屋根地に多数本の横棧及び縦棧をクロス状に配置する棧の布設工程と、この布設工程で配置された横棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接した際、この縦棧を横棧の表面と屋根瓦の瓦本体の庭側裏面とで形成される空間に設けて浮き上がり防止を図る屋根瓦の係止工程と、この係止工程において縦棧を安定駒の差込み側の側面に当接する際に、当該安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される安定駒当接工程と、で構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法。」と訂正する。
(b)段落番号【0007】の「【請求項1】は、屋根地に多数本の横棧及び縦棧をクロス状に配置する棧の布設工程と、この布設工程で配置された横棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接する屋根瓦の係止工程と、この係止工程において縦棧を安定駒の差込み側の側面に当接する際に、当該安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される安定駒当接工程と、で構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法である。」を、「【請求項1】は、屋根地に多数本の横棧及び縦棧をクロス状に配置する棧の布設工程と、この布設工程で配置された横棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接した際、この縦棧を横棧の表面と屋根瓦の瓦本体の尻側裏面とで形成される空間に設けて浮き上がり防止を図る屋根瓦の係止工程と、この係止工程において縦棧を安定駒の差込み側の側面に当接する際に、当該安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される安定駒当接工程と、で構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法である。」と訂正する。
(c)段落番号【0019】の「【請求項1】の発明は、屋根地に多数本の横・縦棧をクロス状に配置し、この横棧に瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接する際に、安定駒の底面が横に直接当接して安定的に葺工される構成である。・・・」を、「【請求項1】の発明は、屋根地に多数本の横・縦棧をクロス状に配置し、この横棧に瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接した際、この縦棧を横棧の表面と屋根瓦の瓦本体の尻側裏面とで形成される空間に設けて浮き上がり防止を図り安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される構成である。・・・」と訂正する。
(d)段落番号【0019】の「・・・また引掛けの横棧当接部と横棧の表面との確実な当接を図り、屋根瓦の飛散防止、耐震性向上、雨仕舞の向上が図れる特徴がある。」を、「また安定駒の底面と横棧の表面との確実な当接を図り、屋根瓦の浮き上がり防止、換言すると屋根瓦の飛散防止、耐震性向上、雨仕舞の向上が図れる特徴がある。」と訂正する。
(e)段落番号【0003】の「・・・瓦を順次桁法に葺き上げていく・・・」を「・・・瓦を順次桁方向に葺き上げていく・・・」と訂正する。
(f)段落番号【0017】の「・・・換言すると横棧当接部101と横棧1の表面1aとの確実な当接を図り・・・」を「・・・換言すると底面103bと横棧1の表面1aとの確実な当接を図り・・・」と訂正する。

(4-2-2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項(a)は、縦棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接する係止工程が、縦棧を横棧の表面と屋根瓦の瓦本体の庭側裏面とで形成される空間に設けて浮き上がり防止を図るものに限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
上記訂正事項(b)ないし(d)及び(f)は、訂正事項(a)の訂正にともない、特許請求の範囲と発明の詳細な説明との整合を図る明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
上記訂正事項(e)は、誤記の訂正を目的とするものである。
これら訂正事項(a)ないし(f)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
したがって、上記平成16年6月14日に請求された訂正は、平成15年改正前特許法第134条第2項ただし書き、並びに、同法第134条第5項において準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するものである。

5.記載不備に関する判断(請求人主張(ロ)について)
(5-1)請求項1について
請求人は、「隣接瓦間に隙間、ガタが生じない構成」が明細書に記載されていず、当業者であっても本件の請求項1に係る発明を実施することは出来ない旨主張する。
しかしながら、明細書の【0013】は、縦棧に安定駒の差込み側の側面を当接し、安定駒の底面が横棧に当接することにより、隣接瓦間に隙間、ガタが生じない旨の記載と認められ、「発明の詳細な説明」には、当業者が本件の請求項1に係る発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されている。
また、請求人は、引掛けに当接曲面のない瓦における寸法誤差や歪みの対処法も全く明記されておらず、よって当業者であっても本件の請求項1に係る発明を実施することはできない旨主張している。
しかしながら、寸法誤差や歪みの対処は、本件明細書の「発明の詳細な説明」の欄【0008】、【0009】及び【0020】に記載されているように、本件の請求項2に係る発明により対処するものであって、本件の請求項1に係る発明において寸法誤差や歪みへの対処を記載しなければ、本件の請求項1に係る発明を当業者が実施をすることができないということではない。
(5-2)請求項2について
請求人は、「横桟の変形、凹凸、その他の変化」及び「瓦の焼成寸法」以外にある瓦及び屋根地側の不具合の対処法が明細書に何ら記載されていないため、本件の請求項2に係る発明を実施することはできない旨主張する。
しかしながら、上記以外にある瓦及び屋根地側の不具合の対処法が記載されていなくても、本件明細書の「発明の詳細な説明」の欄【0008】、【0009】、【0013】及び【0020】には、当業者が本件の請求項2に係る発明を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されている。

したがって、請求人の特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないとの請求人の上記主張(ロ)は理由がない。

6.本件発明に対する進歩性の判断(請求人主張(イ)について)
(6-1)本件発明
上記のとおり、訂正が認められるから、本件の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」等という。)は、平成16年6月14日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるつぎのとおりのものである。
「【請求項1】
屋根地に多数本の横棧及び縦棧をクロス状に配置する棧の布設工程と、
この布設工程で配置された横棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接した際、この縦棧を横棧の表面と屋根瓦の瓦本体の尻側裏面とで形成される空間に設けて浮き上がり防止を図る屋根瓦の係止工程と、
この係止工程において縦棧を安定駒の差込み側の側面に当接する際に、当該安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される安定駒当接工程と、
で構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法。
【請求項2】
上記の屋根瓦は、瓦本体と、この瓦本体の尻側裏面に平坦形状の横棧当接部と、前記瓦本体の尻側に設けた横棧に係止される当接曲面を有する全体形状が半円弧形状でなる引掛けとで構成されている請求項1に記載の安定駒利用の耐震、耐風瓦工法。」

(6-2)無効理由通知の証拠方法
・甲第1号証 特開平8-302910号公報
・特開平10-140741号公報
以下は、周知技術である
甲第2号証 実願昭53-116115号(実開昭55-33325号)のマイクロフィルム
甲第3号証 実願平2-25339号(実開平3-115721号)のマイクロフィルム
甲第4号証 実願昭56-44252号(実開昭57-157616号)のマイクロフィルム
甲第5号証 実用新案登録第2502645号公報

甲第1号証には、次のことが記載されている。
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、瓦桟木を用いる瓦の葺設工法に関するものである。」、
「【0019】図1〜図3の実施例においては、野地板(1)上に防水層等の屋根下地材を付設してなる屋根面(A)の上に、横方向に延在する横桟木(2)を屋根勾配方向に瓦の登り足寸法に相当する所定間隔毎に配列固定し、これらの横桟木(2)の上に屋根の勾配方向に延在する縦桟木(3)を横方向に瓦割付け寸法に相当する所定間隔毎に配列固定しておき、瓦(10)を、後述するようにこれらの横桟木(2)と縦桟木(3)とに係止させながら葺いて施工する場合を示している。」、
「【0026】図5の実施例は、瓦(10)の裏面後端部の凸部(13)を、その外側に縦桟木(3)を位置させて葺くようにした場合を示している。この実施例の場合においても、縦桟木(3)の上に載接する部分は載接状態を安定させるために平坦部(14)として形成されており、その内側に縦桟木(3)の側面に当接し得る凸部(13)が設けられている。【0027】この実施例の場合も、瓦(10)の裏面後端部に有する係止用凸起(12)を横桟木(2)の後面に係止させるとともに、凸部(13)を縦桟木(3)の一方の側面、すなわち図のように内側面に沿わせるようにして、上記同様に順次縦横に並列状態に載置することにより、縦方向および横方向共にずれなく真直ぐに容易に葺設することができる。しかも少々の寸法誤差や歪みのある瓦をそのまま使用できる。さらに屋根面の側端部等での割付け位置の調整も比較的容易に行なうことができる。」、
「【0036】【発明の効果】上記したように請求項1の発明の瓦の葺設工法によれば、瓦の裏面後部に有する係止用凸起を横桟木に係止させるとともに、凸部を縦桟木の側面に沿わせるようにして葺設することにより、各瓦を、高度な熟練した技術を要することなく容易に、かつ縦方向および横方向共にずれなく真直ぐに葺くことができる。・・・【0038】さらに、こうして葺かれた瓦は、横桟木に係止して勾配方向のずれが規制されるとともに、縦桟木によって横方向のずれも規制でき、また瓦の側端部を縦桟木に載接させることにより揺動やガタつきを規制できることもあって、地震時や強風時にもずれなく安定性のよい葺設状態を保持できる。」。
したがって、甲第1号証には、「屋根面Aに多数本の横棧及び縦棧をクロス状に配置する棧の布設工程と、この布設工程で配置された横桟木2に屋根瓦の尻側裏面に設けた係止用突起12を係止し、縦桟木3に屋根瓦の尻側裏面に設けた凸部13の差込み側の側面を当接する、凸部13利用の瓦工法であって、地震や強風時にもずれなく安定性のよい葺設状態を保持できる」発明が記載されていると認められる。

特開平10-140741号公報には、瓦の尻側に設けた横棧木Bに係止される引掛け3を、当接曲面311を有するものにすること(図6参照)及び全体形状が半円弧形状になるようにすること(図9参照)が記載されている。

甲第2号証及び甲第3号証には、桟瓦において、瓦本体の尻側裏面だけでなく、瓦の尻側裏面であって、瓦の山棧部とは幅方向に反対側の差込み部側に、横棧に直接当接する安定駒を設けることが、記載されている(甲第2号証記載の突起3、3’、凸面10、甲第3号証記載の脚片3等参照)。

甲第4号証及び甲第5号証には、瓦本体の尻側裏面の横棧当接部を、平坦形状とすることが、記載されている(甲第4号証の第3図の平坦部15、甲第5号証の図2の第2安定平面部16参照)。

(6-3)対比・判断
(6-3-1)本件発明1について
本件発明1と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明の「屋根面A」、「横桟木2」、「縦桟木3」、「係止用突起12」、「凸部13」は、本件発明1の「屋根地」、「横棧」、「縦棧」、「引掛け」、「安定駒」にそれぞれ相当し、甲第1号証には、縦桟木に屋根瓦の尻側裏面に設けた凸部13(安定駒)の差込み側を当接した際、平坦部14が存在はするものの、縦棧を横棧の表面と屋根瓦の瓦本体の尻側裏面とで形成される空間に設けることが事実上記載されており、甲第1号証記載の発明は、地震や強風時にもずれなく安定性のよい葺設状態を保持できるものであるから(甲第1号証の段落【0038】参照)、耐震、耐風瓦といえるものであるから、両者は、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
屋根地に多数本の横棧及び縦棧をクロス状に配置する棧の布設工程と、この布設工程で配置された横棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接した際、この縦棧を横棧の表面と屋根瓦の瓦本体の尻側裏面とで形成される空間に設ける屋根瓦の係止工程とで構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法。
(相違点1)
本件発明1が、浮き上がり防止を図る瓦の係止工程であるのに対し、甲第1号証には、そのような記載のない点。
(相違点2)
本件発明1が、係止工程において縦棧を安定駒の差込み側の側面に当接する際に、当該安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される安定駒当接工程を有するのに対し、甲第1号証には、そのような記載のない点。

上記相違点1を検討すると、甲第1号証には、実施例においては瓦の平坦部14を有するものの、縦桟木(縦棧)に屋根瓦の尻側裏面に設けた凸部13(安定駒)の差込み側を当接した際、縦棧を横棧の表面と屋根瓦の瓦本体の尻側裏面とで形成される空間に設けることが記載されており、本件発明1とこの点に関し構成が異ならない以上、甲第1号証記載の発明も本件発明1と同様に浮き上がり(乙9号証(イ)のII矢印方向)防止を図れるものである。したがって、両者に格別の相違はない。

上記相違点2を検討すると、甲第1号証には、凸部13(安定駒)の底面が横桟木2(横棧)に直接当接するとの記載はないが、甲第1号証に記載されているような桟瓦において、瓦の尻側裏面であって、瓦の山棧部とは幅方向に反対側の差込み部側に、横棧に直接当接する安定駒を設けることは、甲第2号証記載の突起3、3’、凸面10や甲第3号証記載の脚片3等にみられるように、周知のことであるから、甲第1号証記載の発明の安定駒に該周知技術を適用して、相違点1の本件発明1に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得ることであるし、これら周知技術は、揺動(乙9号証(イ)のI矢印方向)防止、ずれ(乙9号証(イ)のIII矢印方向)防止という効果を当然奏するものと認められるから、このように構成したことによる格別の作用効果も認められない。

(6-3-2)本件発明2について
本件発明2と甲第1号証記載の発明とを対比すると、両者は、上記一致点及び相違点の他に、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
屋根瓦は、瓦本体と、この瓦本体の尻側裏面に横棧当接部と、前記瓦本体の尻側に設けた横棧に係止される引掛けとで構成されている点。
(相違点3)
本件発明2は、平坦形状の横棧当接部と、当接曲面を有する全体形状が半円弧形状でなる引掛けとで構成されているのに対し、甲第1号証の横棧当接部と引掛けは、そのような形状ではない点。

上記相違点3を検討すると、瓦本体の尻側裏面の横棧当接部を平坦形状とすることは、甲第4号証及び甲第5号証に記載されているように周知であり、また、瓦本体の尻側に設けた横棧に係止される引掛けを、当接曲面を有するものにすること及び全体形状が半円弧形状になるようにすることは、特開平10-140741号公報(図6、図9参照)に記載されているように公知であるから、甲第1号証記載の発明において、相違点3の本件発明2に係る構成とすることは、当業者であれば容易になし得るし、このように構成したことによる格別の作用効果も認められない。

(6-4)被請求人の主張について
(6-4-1)被請求人は、本件発明1は甲第1号証(図5)記載の平坦部14がない旨主張している(平成16年3月24日付け答弁書2頁下4行ないし7頁8行)。
しかしながら、甲第1号証明細書を検討してみると、平坦部14は、実施例として記載されている段落【0021】、【0026】及び段落【0030】のみであり、特許請求の範囲、課題を解決する手段等の段落【0001】ないし【0017】、及び、発明の効果の段落【0036】ないし【0041】の記載を参照しても、甲第1号証の発明は、平坦部14を必須の要件としているわけではなく、凸部13(安定駒)を縦桟木3(縦棧)に当接しさえすれば、平坦部14が無いからといって実施できないものでもないから、甲第1号証記載の発明は平坦部を有しないものも包含しうる。したがって、甲第1号証(図5)に平坦部14があることを根拠にする主張は認められない。

(6-4-2)被請求人は、甲第1号証では、乙第4号証(ロ)の図面によれば、縦棧1001が朽ちた(縦棧1001の低い高さH1の)状態であり、この例では、縦棧1001と瓦1000の差込み側1000aの裏面側に隙間Cが形成される不都合があり、また、甲第1号証では、乙第2号証(ロ)(乙第4号証(ハ))の図面によれば、この縦桟木(3)が、所定寸法より小さい場合、又は朽ちた場合には、瓦の差込側(XI)が(E)方向に下がるとともに、桟山側(X)が(F)方向に上がり、瓦の合わせ目(Y)に隙間Dができる不都合がある旨主張する(平成16年6月14日付け意見書4頁1行ないし5頁1行、答弁書8頁下7行ないし9頁6行)。
しかしながら、本件発明1(乙第9号証(イ))においても、縦棧が低い高さの場合には、甲第1号証の乙第4号証(ロ)と同様に隙間Cができるのであり、また、瓦本体の幅方向の曲面の曲率や、棧山の瓦本体に対する角度等の製作誤差により、甲第1号証の乙第4号証(ハ)と同様に隙間Dが生じ得るのであり、本件発明1も甲第1号証と同じような不都合の発生するおそれはあるから、甲第1号証記載の発明が上記の不都合があるからといって、本件発明1の容易性が否定されるものでもない。

(6-4-3)被請求人は、甲第1号証では、乙第9号証(ロ)のように低い縦棧においては隙間Cが発生し、安定駒が低い縦棧を越えることはきわめて容易であり、甲第1号証記載の発明は、浮き上がり防止(乙第9号証(イ)矢印II)がない旨主張する(平成16年6月14日付け意見書6頁下9行ないし7頁4行)。
しかしながら、甲第1号証(【図5】)記載の発明も、本件発明1と同様に、凸部13(安定駒)を縦桟木3(縦棧)に当接したことが記載され、この構成が甲第1号証にも記載されている以上、上記浮き上がり防止の効果は程度の差はあれ当然奏するものである。また、本件発明1において、安定駒の高低及び縦棧の高低が限定されているものでもなく、本件発明1においても、低い縦棧を採用すれば、安定駒が低い縦棧を越え易くなることは明らかである。

(6-4-4)被請求人は、本件発明(乙第10号証(イ-1))は、安定駒103と縦棧2との当接位置がX部位であり、安定駒103の先端部が縦棧2に当接するが、甲第2号証(乙第10号証(ロ-1))で、本件発明と同じ空間(H)に縦棧を設けた場合には、突起3の先端部は縦棧に当接しない(Y部位で示す)から、本件発明では、この尻側の端部と同等のX部位を固止するので、「浮き上がり防止」の効果が達成できるが、甲第2号証では、Y部位で当接するので、「浮き上がり防止」の効果は到底期待できない旨主張する(平成16年6月14日付け意見書7頁9行ないし下11行、8頁1ないし7行)。
しかしながら、甲第2号証を引用したのは、桟瓦において、「瓦の尻側裏面であって、瓦の山棧部とは幅方向に反対側の差込み部側に、横棧に直接当接する突起3、3’、凸面10(安定駒)を設けることが周知であること」を示したにすぎず、前記相違点1を検討したとおり、浮き上がり防止の点は甲第1号証記載の発明に示されていることが明らかであるから、甲第2号証記載のものの浮き上がり防止を云々しても無意味である。

(6-4-5)被請求人は、乙第10号証(ロ-2)は、第2号証の第1図の引掛棧瓦1と縦棧2との関係を示したものであり、尻側裏面の内側にある突起3が縦棧2に当接した状態が示されており、この当接関係では、本件発明のII矢印方向への浮き上がり防止は期待できないとしている(平成16年6月14日付け意見書7頁下4ないし下1行)。
しかしながら、乙第10号証(ロ-2)では、突起3(安定駒)の下部が桟木4(横棧)の表面に当接しておらず、この図面自体が間違っているから、被請求人の主張は前提において誤りである。そして、甲第2号証の第2図を参照すれば、縦棧を設ける場合は、本件発明1と同様に、縦棧を桟木4(横棧)の表面と屋根瓦の瓦本体の尻側裏面とで形成される空間に設け、突起3(安定駒)を縦棧に当接することは可能であるから、甲第1号証記載の発明に甲第2号証等の周知例を組み合わせることに何ら困難性はない。そもそも、甲第2号証は、本件発明のII矢印方向への浮き上がり防止を図るものとして引用したわけではない。

7.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1は甲第1号証及び周知技術に基いて、本件発明2は甲第1号証及び特開平10-140741号公報に記載された発明並びに周知技術に基いて、それぞれ、当業者が容易に発明することができたものであり、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当する。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
安定駒利用の耐震、耐風瓦工法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】屋根地に多数本の横棧及び縦棧をクロス状に配置する棧の布設工程と、
この布設工程で配置された横棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接した際、この縦棧を横棧の表面と屋根瓦の瓦本体の尻側裏面とで形成される空間に設けて浮き上がり防止を図る屋根瓦の係止工程と、
この係止工程において縦棧を安定駒の差込み側の側面に当接する際に、当該安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される安定駒当接工程と、
で構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法。
【請求項2】上記の屋根瓦は、瓦本体と、この瓦本体の尻側裏面に平坦形状の横棧当接部と、前記瓦本体の尻側に設けた横棧に係止される当接曲面を有する全体形状が半円弧形状でなる引掛けとで構成されている請求項1に記載の安定駒利用の耐震、耐風瓦工法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、安定駒利用の耐震、耐風瓦工法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の瓦葺き工法の一例としては、軒先の屋根瓦(以下、各種の瓦を含む。瓦とする。)を、横棧に屋根瓦の引掛けを係止するようにして桁方向に順次葺設していき、当該軒先を葺き上げる。その後、隅瓦を葺き上げた後、次の瓦を棟方向に順次葺設するに際し、墨付け又は水糸をガイドに瓦を葺き上げていくとともに、各瓦の引掛けをそれぞれ横棧に係止する。以後は、前記と同様に順次葺設されていき屋根全体が葺き上げられる。以上の如く、瓦を棟方向に葺き上げる際に、屋根地に縦棧に相当するガイド部材がないことから、水糸等をガイドに順次葺設する工法であり、手間、熟練を要すること、また水糸では風、人物の接触によりぶれることがあり不安定であること、等の問題が考えられる。
【0003】前記問題点を解決する手段として、次のような技術文献が挙げられる。(1)特開昭62-194352号の瓦の葺設方法(文献1とする。)がある。この発明は、屋根の勾配方向(桁方向)に縦瓦棧を配設し、この縦瓦棧に瓦の裏面に設けた係止突起を係止し、当該縦瓦棧を利用して瓦を順次桁方向に葺き上げていく構成であり、確実かつ簡便な葺設と、美麗で精度のよい葺設を意図する。(2)特開平8-302910号の瓦の敷設工法の発明がある。この発明は、屋根の桁方向に縦瓦棧(縦棧木)を配設し、この縦瓦棧の側面に瓦の裏面に設けた係合部を沿わせ、かつこの係合部を縦瓦棧に載置する構成であり、当該縦瓦棧を利用して瓦を順次桁方向に葺き上げていくことを特徴とする。その効果も文献(1)と略同様であるが、この発明は、係合部を縦瓦棧に載置することにより、裏面が湾曲状を呈する瓦であっても、この縦瓦棧に安定して載置できる。(3)特開平9-177251号の安定駒利用の耐震・耐風瓦葺工法である。この発明は、屋根地に横棧と縦棧をクロス状に設け、当該横棧に瓦の引掛けを係止するとともに、当該瓦の安定駒を縦棧に圧入する構成であり、在来瓦に設けられている安定駒を有効利用し、文献(1)と同様な効果を意図する。
【0004】前記各文献は、共通する特性として、屋根地に設けたクロス状の横棧・縦棧と、瓦の係止手段を利用して、瓦の主として桁方向の葺設の簡便かつ確実化と、葺き上げ精度の向上が図れる。また文献(3)は、在来の安定駒を有効利用できる特徴を有する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、文献(1)、(2)は、瓦に特別な係止手段(係止凹部)を設ける必要があるので、在来の瓦製造に関する機器、作業の有効利用ができないこと、及び係止手段と縦棧の係合関係であり、この係合関係のズレの問題があること、等の課題が考えられる。尚、この文献(2)は、係合部が横瓦棧(横棧木)より離間した状態で葺設されることから、縦瓦棧が朽ちたり、損傷した場合には、瓦のぐらつきが発生し、このぐらつきに基づくトラブルが考えられる。また文献(3)は、縦棧は安定駒を挿入する構成であるので、横棧を兼用することが難かしく、施工前の段取り又は商品管理に幾分の手間を有する課題が考えられる。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、最も簡単な操作により瓦の主として棟方向への葺設の簡便化かつ確実化を図り、かつ葺き上げ精度の向上を図ること、又は原則として縦棧と横棧とを兼用して使用できること、等を目的とする。
【0007】請求項1は、屋根地に多数本の横棧及び縦棧をクロス状に配置する棧の布設工程と、
この布設工程で配置された横棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に屋根瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接した際、この縦棧を横棧の表面と屋根瓦の瓦本体の尻側裏面とで形成される空間に設けて浮き上がり防止を図る屋根瓦の係止工程と、
この係止工程において縦棧を安定駒の差込み側の側面に当接する際に、当該安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される安定駒当接工程と、
で構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法である。
【0008】請求項2の発明は、瓦の焼上り寸法にとらわれることなく、簡便かつ確実に葺き上げることを目的とする。
【0009】請求項2は、屋根瓦は、瓦本体と、この瓦本体の尻側裏面に平坦形状の横棧当接部と、前記瓦本体の尻側に設けた横棧に係止される当接曲面を有する全体形状が半円弧形状でなる引掛けとで構成されている安定駒利用の耐震、耐風瓦工法である。
【0010】
【0011】
【0012】
【発明の実施の形態】屋根地に数本の横棧を取付けた後、軒先の横棧の上面(棟側)に瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、横棧の表面に安定駒の底面を直接当接する。この場合、本発明の当接曲面を利用して、当該横棧の変形、凹凸、その他変化があっても、引掛けと横棧の確実な当接ができる。また平坦形状の横棧当接部があり、一層の安定性が確保される。この葺き方を繰り返すと、軒先全体が葺き上げられる(葺工される)。続いて、この軒先に葺工された瓦を目安として、地割りが決定されるので、この地割りを基準として縦棧を横棧上に設ける。この縦棧の二箇所又は数箇所を釘止め、ネジ止め、又はその他取付けにより固定する。勿論、この固定には、例えば、曲尺、水糸を使用して固定する場合、横棧に予め設ける位置を記した状態で固定する場合、等色々の方法が採用できる。また当該横・縦棧又は縦棧等の取付けと後述する瓦葺工とを併用する場合も有る。
【0013】以上のようにして横・縦棧の取付けが終了した場合、通常前記軒先瓦に続いて次の瓦を葺工するが、この場合、縦棧の側面に安定駒の差込み側の側面を当接する。この際、当該安定駒の底面が横棧に直接当接する構成であり、例えば、隣接瓦間に隙間、ガタが生じない構成とする。これにより在来の横棧のみによる葺工法と同様な施工効果が発揮できる構造にする。また瓦の引掛けを、横棧に引掛ける。その後、当該瓦を釘止めすると、当該瓦は横・縦棧に密着し横棧に強固に緊締され、当該瓦と屋根地とは一体化される。また原則として、縦棧は横棧の一定位置で、かつ屋根地の各所に設けられているので、水糸及び熟練を要さず、各瓦を所定位置に、かつ筋が通った状態で美麗に葺工できることと、この屋根地の各部位で、それぞれ葺工作業が個別にできる等の特徴があり有益である。
【0014】前記のようにして、前記瓦が葺かれた後は、同様な作業及び手順により棟方向に向かって葺工する。以後は桁方向に隣接する瓦を前述と同様な操作及び手順により順次葺工する。その後、順次瓦を葺工することにより、全屋根が葺工される。
【0015】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0016】屋根地Rには釘打ち、スクリュー釘打ち、ネジ釘打ち等の各種取付け手段で数本の横棧1と、縦棧2(木製、金具等でも可能)が設けられる。本発明では原則として横棧1と縦棧2は同じ材料、寸法とする。この横棧1と縦棧2はクロス形状に設けられており、この縦棧2は地割り位置に設けられる。この横棧1には瓦10(各種棧瓦、軒瓦、袖瓦、平板瓦、本葺き瓦等の瓦)の瓦本体10’で、かつこの尻側裏面10aに設けられた横棧当接部101と、瓦10の瓦本体10’で、かつこの尻側10bに設けられた引掛け102の当接曲面102a(図5参照)又は当接平面102a’(図6参照)がそれぞれ係止される。また縦棧2には瓦10の安定駒103の差込み側の側面103aが当接される。また安定駒103の底面103bは横棧1に当接される。この引掛け102の横棧1の上面1bへの当接と、横棧当接部101の横棧1の表面1aへの当接、及び安定駒103の差込み側の側面103aへの縦棧2の当接、並びに安定駒103の底面103bの横棧1への当接とにより、瓦10は地割りの所定位置に葺工される。尚、当接曲面102a又は当接平面102a’は横棧1の上面1bにスライド可能であり、しかも安定駒103の差込み側の側面103aを縦棧2に当接する構成であるので、瓦10を地割りの所定位置への移動の際、この移動できる範囲を広く確保でき、かつ容易な葺工が期待できる。
【0017】前記の如く、縦棧2は、安定駒103の底面103bが横棧1の表面1aに当接した際、表面1aと瓦10の瓦本体10’の尻側裏面10aとで形成される空間Hに設けられる構成であるので、瓦10の浮き上がり防止、換言すると底面103bと横棧1の表面1aとの確実な当接を図り、瓦10の飛散防止、耐震性向上、雨仕舞の向上に利用できる。そして、通常は横棧1と縦棧2との兼用使用を図り、経費節減、管理及び作業の容易化を達成する。
【0018】尚、縦棧2を金具とすることも可能であり、その構成の一例を説明すると、棒状、角柱、平板状等がある。
【0019】
【発明の効果】請求項1の発明は、屋根地に多数本の横・縦棧をクロス状に配置し、この横棧に瓦の尻側裏面に設けた引掛けを係止するとともに、縦棧に瓦の尻側裏面に設けた安定駒の差込み側の側面を当接した際、この縦棧を横棧の表面と屋根瓦の瓦本体の尻側裏面とで形成される空間に設けて浮き上がり防止を図り安定駒の底面が横棧に直接当接して安定的に葺工される構成である。従って、最も簡単な操作により瓦の主として棟方向への葺設の簡便化かつ確実化を図り、かつ葺き上げ精度の向上が図れること、又は原則として縦棧と横棧とを兼用して使用できること、等の特徴がある。また安定駒の底面と横棧当接部と横棧の表面との確実な当接を図り、屋根瓦の浮き上がり防止、換言すると屋根瓦の飛散防止、耐震性向上、雨仕舞の向上が図れる特徴がある。
【0020】請求項2の発明は、屋根瓦は、瓦本体と、平坦形状の横棧当接部と、半円弧形状で当接曲面を有する引掛けとで構成される。従って、瓦の燒成寸法にとらわれることなく、簡便かつ確実に葺き上げ得る特徴がある。
【0021】
【図面の簡単な説明】
【図1】葺工状態を示す俯瞰図である。
【図2】図1の要部の俯瞰図である。
【図3】瓦と縦横棧との関係を示す拡大斜視図である。
【図4】瓦と横棧との関係を示す拡大正面図である。
【図5】瓦と横棧との関係を示す拡大背面図である。
【図6】他の瓦と横棧との関係を示す拡大背面図である。
【図7】他の瓦と横棧との関係を示す拡大正面図である。
【符号の説明】
1 横棧
1a 表面
1b 上面
2 縦棧
10 瓦
10’ 瓦本体
10a 尻側裏面
10b 尻側
101 横棧当接部
102 引掛け
102a 当接曲面
102a’ 当接平面
103 安定駒
103a 差込み側の側面
103b 底面
H 空間
R 屋根地
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2004-09-27 
結審通知日 2004-10-01 
審決日 2004-10-22 
出願番号 特願平10-154909
審決分類 P 1 112・ 831- ZA (E04D)
P 1 112・ 121- ZA (E04D)
P 1 112・ 536- ZA (E04D)
最終処分 成立  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
山田 忠夫
登録日 1999-03-26 
登録番号 特許第2905776号(P2905776)
発明の名称 安定駒利用の耐震、耐風瓦工法  
代理人 竹中 一宣  
代理人 竹中 一宣  
代理人 西山 聞一  
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