• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20061739 審決 特許
平成9ネ3894 判例 特許

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 その他 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1131675
審判番号 不服2004-4724  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2006-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-03-08 
確定日 2006-03-07 
事件の表示 平成11年特許権存続期間延長登録願第700028号「水溶性ポリペプタイドのマイクロカプセル化」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本件特許及び本件発明
特許第1901277号(以下、「本件特許」という。)は昭和56年11月17日に出願され(特願昭56-184342号、パリ条約に基づく優先権主張1980年11月18日、米国)、平成7年1月27日に特許権の設定登録がされたものであって、その特許発明は特許明細書の特許請求の範囲に記載にされたとおりのものであり、特許請求の範囲第1項及び第25項には次のように記載されている。
「1 通常の一回投与量より多い有効量の少なくとも一種類の、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)又はその類似体である水溶性ポリペプタイド;および生物的に適合性を有し、生物的に分解可能なカプセル化のためのポリ(ラクタイド-コ-グリコライド)共重合体である重合体;よりなるマイクロカプセルで、該共重合体のラクタイドとグリコライドのモル比、該共重合体の分子量、およびマイクロカプセルの直径が、少なくとも1カ月間にわたって有効量の該ポリペプタイドを持続的に放出させるように調節されているマイクロカプセルとして調整された医薬組成物。」
「25 通常の一回投与量より多い有効量の少なくとも一種類の、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)又はその類似体である水溶性ポリペプタイド;および生物的に適合性を有し、生物的に分解可能なカプセル化のためのポリ(ラクタイド-コ-グリコライド)共重合体である重合体;よりなるマイクロカプセルで、該共重合体のラクタイドとグリコライドのモル比、該共重合体の分子量、およびマイクロカプセルの直径が、少なくとも1カ月間にわたって有効量の該ポリペプタイドを持続的に放出させるように調節されているマイクロカプセルとして調整された医薬組成物の製造方法であって;カプセル化に使用する前記重合体を含むハロゲン化有機溶媒中に前記ポリペプタイドを含む水溶液を分散させ、この分散液にコアセルベーション剤を加え、その分散液よりマイクロカプセルを採取することを特徴とする前記製造方法。」

2.本件特許権存続期間の延長登録出願
本件特許権存続期間の延長登録出願(以下、「本件出願」という。)は、平成11年3月24日に出願され、平成15年11月28日付けで拒絶査定がされ、平成16年3月8日に審判請求がされたものである。本件出願の願書には、以下の添付書類がある。

添付書類(1) 医薬品輸入承認書
(承認番号21000AMY00287000)の写し
添付書類(2) 臨床試験依頼書の写し
添付書類(3) 公告公報の写し
添付書類(4) THE MERCK INDEX 第11版(1989)
表紙および229頁の写し
添付書類(5) 登記簿謄本の写し

本件出願は、特許発明の実施について特許法第67条第2項の政令に定める処分を受けることが必要であったとして、3年10月27日の特許権存続期間の延長を求めるものであり、その政令で定める処分として、以下の内容を特定している(以下、「本件処分」という)。

(1)延長登録の理由となる処分
薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る同項の承認及び薬事法第14条第1項に規定する医薬品に係る第23条において準用する第14条1項の承認

(2)処分を特定する番号
承認番号21000AMY00287000号

(3)処分を受けた日
平成10年12月25日

(4)処分の対象となった物
販売名 スプレキュア MP1.8(酢酸ブセレリン徐放性製剤)

(5)処分の対象となった物について特定された用途
子宮内膜症
子宮筋腫の縮小及び子宮筋腫に基づく下記諸症状の改善
過多月経、下腹痛、腰痛、貧血

3.原審の拒絶理由の概要
原審の拒絶の理由は、「この出願に係る特許発明の実施に特許法第67条第2項の政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないから、この出願は、特許法第67条の3第1項第1号に該当する。」というものであり、より具体的には、酢酸ブセレリンについて、子宮内膜症、子宮筋腫の用途に適用することが本件処分前に既に厚生省によって承認されていた旨を指摘し、また、処分の対象となった物につき、願書には「販売名 スプレキュアMP1.8(酢酸ブセレリン徐放性製剤)」と記載されているのに対し、処分に係る医薬品の有効成分は「酢酸ブセレリン」であって、願書の処分の対象となった物の記載と処分を受けた物とが一致していない旨を指摘している。

4.請求人の主張
請求人は、審判請求書において、本件出願に係る今回の「処分の対象となった物は、あくまで、酢酸ブセレリンそのものではなく、酢酸ブセレリンに乳酸・グリセリン等を加えてた新しい医薬品である、酢酸ブセレリン徐放性製剤である。」と述べ、今回の処分の対象となった物は先に承認された酢酸ブセレリンの点鼻薬とは処分の対象になった物が異なり、今回の処分が特許発明の実施に必要であったことを主張している。また、処分の対象になった物は、「販売名 スプレキュア MP1.8(酢酸ブセレリン徐放性製剤)」であるから、今回の処分の対象になった物と願書の記載の不一致はなく、今回の処分は特許発明の実施に必要な処分であった旨主張している。

5.当審の判断
(5-1)延長登録制度における「物」について
延長登録制度における「物」に関し、平成7年行(ケ)155号判決では、「同じ物を同じ用途に使用する以上、その使用形態等の変更のため重ねて政令で定める処分が必要とされる場合であっても、そのことを理由に特許期間の延長は認められず」とした上で、「これをいわゆる医薬特許についてみると、特許法67条3項の規定する政令(特許法施行令1条の3の2号)に基づく薬事法14条1、4項の規定する医薬品の製造、輸入等の承認は、当該医薬品の有効成分、効能・効果のみならず、剤型、用法、用量等を特定した品目単位で行われているが、その記載内容からみて当該医薬品の有効成分、効能・効果以外の剤型、用法、用量等の変更の必要上、再度処分を受ける必要が生じたとしても、後の処分によって特許期間の登録延長を認めることはできないというべきである。」と判示しており、また、平成10年(行ケ)362号判決においても、「特許法第68条の2のみならず、特許法第67条及び67条の3にいう「特許発明の実施」の文言についても、具体的な処分の対象そのもの(品目)を単位としてではなく、処分の対象となった「物」と、その処分において定められた特定の「用途」によって特定される範囲のものすべてを単位として解釈するのが自然かつ合理的である。」と判示している。
これらの判示事項は、薬事法においては品目毎の承認が必要とされるが、一方、存続期間の延長登録制度における発明の実施は、品目を単位としてではなく、有効成分である「物」と効能・効果である「用途」によって特定される範囲を単位として解釈されるものであることを示している。そうすると、特定の品目に係る発明の実施に薬事法上の承認が必要であったとしても、その承認が直ちに特許法第67条第2項に規定する処分に該当するものではなく、延長登録が認められるためには、同じ「物」すなわち「有効成分」と「用途」によって特定される範囲においてすでに別の処分を受け、その実施をすることができるようになっていないことが必要である。

そこで、本件処分の対象となった「物」すなわち「有効成分」について、本件処分の前に、本件処分により特定された「用途」において実施することができるようになっていたかを判断する。

(5-2)本件処分について
本件出願の願書には、本件処分の対象となった物として「販売名 スプレキュア MP1.8(酢酸ブセレリン徐放性製剤)」と記載されているが、これについて、添付資料(1)医薬品製造承認申請書の【成分及び分量又は本質】の最初の成分の項には、「成分名:酢酸ブセレリン」と記載され、また、その配合目的の欄に「有効成分」と記載されている(酢酸ブセレリンは特許明細書に記載されていないが、請求人がLH-RHの類似体の一つであるとする化合物である。)。そうすると、「販売名 スプレキュア MP1.8(酢酸ブセレリン徐放性製剤)」とは、活性成分である酢酸ブセレリンを製剤化した品目のことであって、本件処分における「有効成分」は、酢酸ブセレリンであることが明らかである。そして、(5-1)で述べたように、期間延長登録制度における「物」とは「品目」を単位としてではなく、「有効成分」を単位として考えるのであるから、その観点からみると、処分の対象となった「物」は酢酸ブセレリンであり、また、その「用途」は添付資料(1)医薬品製造承認申請書の【効能又は効果】に記載されたように、子宮内膜症と、子宮筋腫の縮小及び子宮筋腫に基づく過多月経、下腹痛、腰痛、貧血の諸症状の改善である。
一方、平成13年12月27日付け拒絶理由通知書に示された「最近の新薬2000」(2000年6月20日発行)p.241には、酢酸ブセレリン製剤のスプレキュアにつき、「点鼻液の剤型で1988年6月28日に「子宮内膜症」に対し承認され、(中略)1992年3月27日に「子宮筋腫」にそれぞれ適応症追加承認となった。1998年3月に子宮内膜症及び子宮筋腫に対する再審査結果報告がされスプレキュアの有用性が認められた。」と記載されている。また、「最近の新薬40集」(1989年4月12日発行)p.294-297には、酢酸ブセレリン製剤であるスプレキュアが昭和63年6月28日に許可され、昭和63年8月23日に発売されたことが記載されている。
これらの記載によれば、本件処分の前に酢酸ブセレリンを「有効成分」とし、子宮内膜症と、子宮筋腫に対する「用途」を持つ医薬品は、すでに承認され、販売できるようになっていたと認められる。すなわち、本件処分の対象となった「物」である酢酸ブセレリンを「有効成分」として、本件処分において特定されたのと同じ子宮内膜症と、子宮筋腫に対する「用途」に用いることは、本件処分の前にすでに実施できていたということである。このことは、本件出願の添付書類である「医薬品輸入承認申請書」に「備考 医療用医薬品(5)」とあり、本件処分が既承認の医薬品と同じ有効成分、効能・効果に関する剤型変更承認であることからも明らかである。

(5-3)請求人は、「たとえ、本願の製剤が第一の承認の場合と同じ有効成分を含んでいたとしても、本願の製剤は新規であり、さらに、この新規製剤について承認を得なければ、同特許発明を実施することができなかったのである。」、「本願の徐放性製剤は酢酸ブセレリンと乳酸・グリコール酸共重合体とからなる新規組成物であって、この組成物は酢酸ブセレリン単独からなる点鼻薬とは全く異なるものである。第一の承認の点鼻薬は短期の投与に処方され、第二の承認の徐放性製剤は長期投与のために処方されるのである。同一特許に基づいた単なる剤型、用法、容量の違いに過ぎない承認の場合と異なり、本願の場合は新しい画期的な徐放性製剤の特許発明であって、同製剤の承認なくしては同特許発明の実施は完全に不可能であったのである。」、「本願製剤の有効成分である酢酸ブセレリンは長期にわたる治療に必要な疾患(子宮内膜症等)の処置に対する使用が望まれていた。本願の第二の承認に基づく徐放性製剤は一ヶ月以上にわたる長期間患者に投与することが可能である。」と主張している。
薬事法においては品目毎の承認が必要とされているから、特定の品目に係る医薬品については、当該品目に対する承認がされる迄は、その輸入・製造や販売ができないことは、請求人が述べるとおりである。しかし、存続期間の延長登録制度における特許発明の実施とは、品目を単位としてではなく、有効成分である「物」と「用途」によって特定される範囲を単位として解釈されるものであることはすでに述べたとおりであるから、ある品目に係る医薬品について薬事法上の承認が必要であったためにその品目について輸入・製造や販売をすることができなかったとしても、その医薬品の有効成分である「物」と「用途」を同じくする承認がそれ以前にされている場合には、当該品目(例えば、剤型変更)に係る医薬品についての薬事法上の承認は、特許法第67条第2項に規定する特許発明の実施について必要な処分に該当するとはいえない。
請求人の上記主張は、品目毎の承認(例えば、剤型変更に対する承認)に対応して、当該品目に関連する特許(例えば、剤型変更の製剤技術に関する特許)の存続期間の延長を認めるべきであるとするものであって採用できず、本件酢酸ブセレリンの徐放性製剤の処分については、有効成分である「物」と「用途」のいずれも第一の承認と同じである以上、特許法第67条第2項に規定する処分に該当するということはできない。

6.むすび
したがって、本件処分は、本件出願に係る特許発明の実施に必要な処分であったとは認められないから、本件出願は特許法第67条の3第1項第1号の規定に該当し、本件特許権存続期間の延長登録を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-06-17 
結審通知日 2004-06-18 
審決日 2004-06-30 
出願番号 特願平11-700028
審決分類 P 1 8・ 5- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小堀 麻子田村 聖子  
特許庁審判長 竹林 則幸
特許庁審判官 齋藤 恵
深津 弘
発明の名称 水溶性ポリペプタイドのマイクロカプセル化  
代理人 浅村 肇  
代理人 浅村 皓  
代理人 長沼 暉夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ