• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1131932
審判番号 不服2003-6409  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-16 
確定日 2006-02-23 
事件の表示 特願2000-357395「L-アラビノースを含有する飲料」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月28日出願公開、特開2002-153245〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年11月24日の出願であって、平成15年3月7日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年4月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年5月15日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年5月15日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年5月15日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
上記補正により、特許請求の範囲の請求項1は、「高甘味度甘味料とともに、小腸内におけるショ糖吸収抑制に有効な量のL-アラビノースを含有する体重減少促進用ダイエットサポート飲料。」と補正された。
上記補正は、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ダイエットサポート用飲料」を「体重減少促進用ダイエットサポート飲料」に限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2、4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2、5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された「特開平6-65080号公報」(以下、「引用例」という。)には、(a)「L-アラビノ-ス、L-フコ-ス、2-デオキシ-D-ガラクト-ス、D-キシロ-ス、L-キシロ-ス、D-リボ-ス、D-タガト-ス、D-リブロ-ス、D-リキソ-ス、およびD-キシルロ-スよりなる群より選ばれた、1ないし2以上の成分を、これら以外の糖質に対し2.0%以上含有することを特徴する、肥満防止用保健食。」(特許請求の範囲の請求項2)、(b)「その結果、L-アラビノ-スを初めとする前記ペント-スおよびヘキソ-スに、強いスクラ-ゼ阻害作用およびマルタ-ゼ阻害作用のあることを見いだし、糖質負荷後の血糖上昇抑制に、著しく有効であること知り、本発明を完成するに到った。」(2頁1欄最下行〜2欄5行)、(c)「L-アラビノ-ス、・・・は、チュ-インガム、キャラメル、クッキ-、パン、ビスケット、チョコレ-ト、ゼリ-、ジュ-スその他の飲料へ、有効成分として添加することは、容易であり、実効性のある保健食の提供が可能となる。」(2頁2欄16〜23行)、(d)「スクロ-スまたはマルト-スを基質とし、ウサギ小腸粘膜ホモジネ-トによる分解活性に対する阻害作用を調べた実験の結果、本発明で使用するL-アラビノ-ス、・・・が、スクロ-スおよびマルト-スの加水分解を、強く抑制することが確認された。またこれらの物質は、マウスを用いた給餌実験において、スクロ-スまたはスタ-チを経口負荷した場合に起こる血糖上昇を、顕著に抑制することも確認できた。」(2頁2欄36〜46行)、及び(e)「実施例3(マウスの体重増加抑制作用)実験には、生後5週令のICR系雄マウスを、1群10匹として使用した。・・・L-アラビノ-スをそれぞれ 0.5%(A1群)、1.0%(A2群), および2.0%(A3群)添加した、栄養的に不足する成分がない飼料(同上製:「マウス・ラット用オリエンタル配合飼料」の糖質の30%を、グラニュー糖で置換した飼料をベースにした、ペレット状特注品)を自由に摂取させた。対照群のマウスには、L-アラビノ-スが無添加である以外は実験群と同一の飼料を、自由に摂取させた。投与開始から 10日、20日、30日, および60日目に体重を測定し、初期体重からの増加量を求め、群毎に平均値を算出した。また、摂餌量と摂水量も同時に測定した。実験期間中、実験動物の一般的健康状態および行動に、異状はみられず、死亡例も皆無であった。表5に示したように、L-アラビノ-ス添加飼料群では、対照群に比較して、体重増加量が少なく、この効果は用量依存的であった。また、摂餌量および摂水量には、有意な差異は認められなかった。」(6頁9欄30行〜10欄40行)と記載されている。
上記摘示事項(d)の「ウサギ小腸粘膜ホモジネ-トによる分解活性に対する阻害作用を調べた実験の結果、本発明で使用するL-アラビノ-ス、・・・が、スクロ-スおよびマルト-スの加水分解を、強く抑制することが確認された。」ということは、小腸内においてショ糖の吸収が抑制されることであり、同(c)には、肥満防止用保健食の態様として「飲料」が示されているから、引用例には、「小腸内におけるショ糖吸収抑制に有効な量のL-アラビノースを含有する肥満防止用飲料」が記載されているといえる。

(3)対比
本願補正発明と引用例に記載された発明とを対比すると、両者は、「小腸内におけるショ糖吸収抑制に有効な量のL-アラビノースを含有する飲料」である点で一致し、ただ、(A)前者が高甘味度甘味料を含有するのに対し、後者ではそれが明らかでない点、及び、(B)飲料が、前者では「体重減少促進用ダイエットサポート飲料」であるのに対して、後者では「肥満防止用飲料」である点で、両者は相違している。

(4)判断
相違点(A)について検討するに、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願補正発明に係る「高甘味度甘味料」について定義する記載はないが、本願補正発明に係る飲料が「体重減少促進用ダイエットサポート飲料」であることを考えると、上記「高甘味度甘味料」は、アスパルテーム、ステビオサイド、サッカリン・ナトリウム等の甘味度の高い甘味料を包含しているものと解されるが、アスパルテーム、ステビオサイド及びサッカリン・ナトリウムは、低カロリー或いはノンカロリーな高甘味度甘味料として本願出願前に周知であったものであり(必要なら、藤巻正生外4名編「食料工業」株式会社恒星社厚生閣、1985年9月25日発行、1189頁〜1193頁参照。)、且つ、これらを甘味料として飲料に加えることも本願出願前に極く普通に実施されていた(必要なら、藤巻正生外4名編「食料工業」株式会社恒星社厚生閣、1985年9月25日発行、364頁参照。)ことから、引用例に記載の飲料にアスパルテーム、ステビオサイド或いはサッカリン・ナトリウム等の高甘味度甘味料を加えることは、当業者が容易に想到し得ることである。
次に相違点(B)について検討するに、引用例の同(e)には、生後5週令という若いICR系雄マウスに関し、「L-アラビノ-ス添加飼料群では、対照群に比較して、体重増加量が少なく、この効果は用量依存的であった。」との記載がある。この記載によると、生育途上の若いマウスのL-アラビノ-ス添加飼料群は、対照群に比較して体重が少ないということであるから、この知見に接した当業者であれば、成獣マウスに対しL-アラビノースを摂取させると、体重の減少が見られることは容易に予想できることである。
そうすると、引用例に記載の「L-アラビノースを含有する肥満防止用飲料」を「体重減少促進用ダイエットサポート飲料」としての用途に用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願補正発明に係る効果も、引用例に記載の事項から予測されるところを超えて優れているとはいえない。
してみれば、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)むすび
したがって、本件補正は、平成15年改正前特許法17条の2,5項において準用する同法126条4項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成15年5月15日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「高甘味度甘味料とともに、小腸内におけるショ糖吸収抑制に有効な量のL-アラビノースを含有するダイエットサポート用飲料。」
(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりであるから、引用例には、「小腸内におけるショ糖吸収抑制に有効な量のL-アラビノースを含有する肥満防止用飲料」という発明が記載されているといえる。
(2)対比・判断
本願発明と引用例に記載された発明とを対比すると、両者は、「小腸内におけるショ糖吸収抑制に有効な量のL-アラビノースを含有する飲料」である点で一致し、ただ、(A)前者が「高甘味度甘味料とともに」使用するのに対し、後者ではそれが明らかでない点、及び、(B)飲料が、前者では「ダイエットサポート用飲料」であるのに対して、後者では「肥満防止用飲料」である点で相違している。
相違点(A)についての判断は、「2.(4)」に記載したとおりの理由により、引用例に記載の飲料にアスパルテーム、ステビオサイド或いはサッカリン・ナトリウム等の高甘味度甘味料を加えることは、当業者が容易に想到し得ることである。
相違点(B)について検討するに、「肥満防止」ということは、「ダイエット」という概念に包含されることは明らかであるから、「肥満防止用飲料」は、「ダイエットサポート用飲料」の一種であると解することができ、相違点(B)は、両者の実質的な相違点とはいえない。
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本出願に係る他の請求項について検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-12-19 
結審通知日 2005-12-20 
審決日 2006-01-10 
出願番号 特願2000-357395(P2000-357395)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A23L)
P 1 8・ 121- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 恵理子  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 冨永 みどり
長井 啓子
発明の名称 L-アラビノースを含有する飲料  
代理人 正林 真之  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ