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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A41B
管理番号 1132419
審判番号 不服2003-24471  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-18 
確定日 2006-03-08 
事件の表示 特願2001-217665「紙おむつ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月28日出願公開、特開2003- 24380〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年7月18日の出願であって、平成15年10月22日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年1月19日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年1月19日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年1月19日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 脇部を接合したパンツ型に成形した紙おむつであって、おむつ本体(1)の外面(2,3)から視認できる前面又は/背面の開口縁に形成された弾性部材の下方位置に、特定の観念を想起させ且つ異なる複数個の図柄(4a,4b)を表示した図形(4)と、前記各図柄(4a,4b)からの観念にそれぞれ関連して知育効果を付与できる複数の知育表示(5,5)とをそれぞれ設けたことを特徴とする紙おむつ。」と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「紙おむつ」について、「脇部を接合したパンツ型に成形した」との限定を付加し、
請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「図形」について、「外面(2,3)から視認できる前面又は/背面の開口縁に形成された弾性部材の下方位置」に設けたとの限定を付加し、
請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「知育表示」について、「各図柄(4a,4b)からの観念にそれぞれ関連して知育効果を付与できる」との限定を付加するものであって、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、それぞれ、「本願補正発明1」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-54536号 公報(以下、引用例1という。)には、図面とともに下記の事項が記載されている。
a.「【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施の形態としてパンツ型の使い捨ておむつを示す斜視図」(3頁右欄46〜47行)
b.「【0023】前面部2Aの横方向の側部4Aと、後面部2Cの横方向の側部4Cとが互いに接合される。その結果、前面部2Aのウェスト端部3Aと後面部2Cのウエスト端部3Cとでウエスト開口部5が形成される。さらに、前面部2A、中間部2B、後面部2Cにかけて、左右にレッグ開口部6が形成される。
【0024】前記ウエスト端部3Aと3Cには横方向に弾性部材(弾性バンド)7が取付けられ」(3頁左欄8〜15行)
c.「外装シート11と防水シート12との間に、四角形片状の模様シート15が挟まれている。」(4頁左欄29〜31行)
d.「【0031】前記外装シート11は、不織布であり、前記模様17を透視して目視で確認できる程度の光線透過率を有するものであり」(4頁右欄29〜31行)
e.「外面側には、動物の顔、キャラクタ、植物などの図形、あるいは記号、文字などの模様17が印刷されている。図の実施の形態では、1枚の模様シート15にワンポイントの模様17が印刷されている。また前記図形、記号、文字のいずれかの組み合わせが模様17として印刷されていてもよい。」(3頁右欄8〜13行)
f.「図7(B)に示すものでは、後面部2Cにおいて、異なる模様が印刷された2つの模様シート15が左右に分かれてバランスのよい位置に取付けられている。
【0052】このように、本発明では、模様17をおむつ1の任意の位置に、また任意の数で付すことができ、設計の自由度を高めることができる。」(5頁右欄46〜6頁左欄2行)
g.【図1】には、一実施の形態としてパンツ型おむつを示す斜視図が示されている。

これらの記載によれば、引用例1には、
「側部を接合したパンツ型に成形したおむつであって、おむつ本体の外面から視認できる前面又は/後面のウェスト端部に形成された弾性部材の下方位置に、特定の観念を想起させ且つ異なる複数個の図形を表示した模様を設けたことを特徴とするおむつ。」に関する発明(以下「引用例1発明1」という。)が開示されている。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭58-176170号(実開昭60-84968号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに下記の事項が記載されている。
h.「本考案は幼児の仮名文字の学習に好適する知育絵本に関する。
従来から平仮名文字等と絵を組み合わせて幼児に仮名文字を学習させるようにした知育絵本は各種のものが提案されている。」(1頁13〜17行)
i.「各文字シール(12a)、(12b)…(12b)には文字(15a)、(15b)…(15n)と共にこの文字(15a)(15b)…(15n)で始まる語句に対応する絵、例えば文字「あ」に対応して「あひる」の絵(16a)、文字「た」に対応して「たこ」の絵(16)が表示にある。」(4頁13〜18行)
j.第4図は文字シールを備えた第3シートの平面図が示されている。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-323149号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに下記の事項が記載されている。
k.「【産業上の利用分野】本発明は知育玩具、詳しくは遊びながら知能を高めるとともに、知識を豊かにすることができる知育玩具に関する。」(2頁左欄17〜19行)
l.「【0024】上述のように知育玩具1によれば、磁気ボ-ド2と複数のカード部材3との組み合わせから構成されるとともに、複数のカード部材3を組替えることによってその表面に統一の図形14を形成することができる。また、上記カード部材3内には外部から視認できないようにシート状の磁石16によって上記図形14と一致する単語の文字15が形成されているから、上記カード部材3を磁気ボ-ド2に設けた表示部7上に配置することでその磁気作用によって上記磁気ボ-ド2の表示部7の下部に設けた多数の小室8内の磁性粉10を浮上させ表面板11側に吸引し、上記磁性粉10によって上記図形14と一致する単語の文字15を表面板11に表示させることができる。したがって、遊びながら知能を高めるとともに、知識を豊かにすることができる。」(3頁右欄9〜22行)
m.「【0026】また、表面板に表示されるものを単語の文字の代りに、図形又は単語と図形との結合にしてもよい。例えば、漫画のサザエさんのお父さんとカツオ君とイクラちゃんの図形を描いた3枚のカード部材を年令順に並べたときに、表示部上には3枚のカード部材にわたって連続したサザエさんの文字と図形が表われようにする例が考えられる。」(3頁右欄29〜35行)
n.【図1】には、知育玩具の使用状態を示す説明図が示されている。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された登録実用新案第3038405号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに下記の事項が記載されている。
o.「【請求項1】文字または記号が画かれた方形の文字用マグネットシート(1)と、模様が画かれた同じ大きさの図柄用マグネットシート(2)を表裏の関係になるように張り合わせて1枚のカードとするマグネットカード(3)複数枚から成り、それぞれのマグネットカード(3)の表裏に画かれた文字や模様はすべて異なり、そのマグネットカード(3)の模様の面が1枚で、もしくは数枚並べることで1つの意味のある図柄を構成するとき、それらのマグネットカード(3)の裏面では同様に並べることでその図柄を意味する言葉や記号が構成されるという特徴を有する文字学習用知育玩具。」(2頁左欄1〜12行)
p.【図1】には、本考案の請求項1におけるマグネットカード(3)の1つを表と裏から見た斜視図が示されている。

これらh〜pの記載によれば、知育玩具又は絵本の技術分野において、「特定の観念を想起させ且つ異なる複数個の図柄を表示した図形と、前記各図柄からの観念にそれぞれ関連して知育効果を付与できる複数の知育表示を設けた知育玩具又は絵本」は、本願出願前周知の技術である。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「側部」、「後面」、「ウェスト端部」、「図形」及び「模様」は、それぞれ、本願補正発明1の「脇部」、「背面」、「開口縁」、「図柄」及び「図形」に相当する。
そうすると両者は、
「脇部を接合したパンツ型に成形したおむつであって、おむつ本体の外面から視認できる前面又は/背面の開口縁に形成された弾性部材の下方位置に、特定の観念を想起させ且つ異なる複数個の図柄を表示した図形を設けたことを特徴とするおむつ。」の点で一致し、下記の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明は、紙おむつに図形を設けているのに対して、
引用例1発明は、紙おむつと特定されていないおむつに、図形を設けている点。
[相違点2]
本願補正発明は、弾性部材の下方位置に、特定の観念を想起させ且つ異なる複数個の図柄を表示した図形と、前記各図柄からの観念にそれぞれ関連して知育効果を付与できる複数の知育表示とをそれぞれ設けたのに対して、
引用例1発明では、弾性部材の下方位置に、特定の観念を想起させ且つ異なる複数個の図柄を表示した図形を設けただけで、各図柄からの観念にそれぞれ関連して知育効果を付与できる複数の知育表示を設けていない点。
(4)判断
[相違点1]について
「おむつ」の技術分野において、紙おむつに図形を設けることは、本願出願前周知の技術(実願昭61-016605号(実開昭62-129005号)のマイクロフィルム及び特開平07-313549号 公報)であるから、
引用例1発明のおむつを、紙おむつとして、これに図形を設け、相違点1に係る本願補正発明のような構成となすことは、当業者ならば容易に想到し得たものである。
[相違点2]について
引用例1発明の技術分野である「おむつ」と、技術分野の関連性を有し、「おむつ」も含まれる技術分野である「幼児用衣類」の技術分野において、
保護者が、図形と知育表示を用いて、幼児の知育効果を高めるようにすることは、本願出願前周知の課題(国際公開パンフレットWO00/076442号、特開2000-314020号 公報)である。
そして、「知育玩具又は絵本」の技術分野において、「特定の観念を想起させ且つ異なる複数個の図柄を表示した図形と、前記各図柄からの観念にそれぞれ関連して知育効果を付与できる複数の知育表示を設けた知育玩具又は絵本」は、本願出願前周知の技術(引用例2、引用例3及び引用例4)である。
ここで、引用例1発明の技術分野は、「おむつ」であり、本願出願前周知の技術の技術分野は、「知育玩具又は絵本」の技術分野であるから、両者の間に、技術分野の関連性はない。
よって、技術分野の関連性は、引用例1発明において、本願出願前周知の課題を見出し、その課題解決のために、引用例1発明に本願出願前周知の技術の適用しようとする動機付けには、ならない。
しかし、引用例1発明の「特定の観念を想起させ且つ異なる複数個の図柄を表示した図形」と、本願出願前周知の技術における「特定の観念を想起させ且つ異なる複数個の図柄を表示した図形」との間には、機能・作用の共通性があるから、これを動機付けとして、
引用例1発明において、本願出願前周知の課題を見出し、その課題解決のために、引用例1発明に本願出願前周知の技術の適用して、相違点2に係る本願補正発明のような構成となすことは、当業者ならば容易に想到し得たものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1発明並びに本願出願前周知の課題及び本願出願前周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)以上のとおり、本件補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成15年法第律47号)附則第2条第7項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年1月19日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本件補正前の本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年9月19日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 おむつ本体(1)の外面(2,3)の適所に、特定の観念を想起させ且つ異なる複数個の図柄(4a,4b)を表示した図形(4)と、前記各図柄(4a,4b)にそれぞれ関連して知育効果を付与できる複数の知育表示(5,5)とをそれぞれ設けたことを特徴とする紙おむつ。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1乃至引用例4並びにその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「紙おむつ」の限定事項である「脇部を接合したパンツ型に成形した」との構成と、「図形」の限定事項である「外面(2,3)から視認できる前面又は/背面の開口縁に形成された弾性部材の下方位置」との構成と、「知育表示」の限定である「各図柄(4a,4b)からの観念にそれぞれ関連して知育効果を付与できる」との構成とを省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含む本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1発明並びに本願出願前周知の課題及び本願出願前周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明並びに本願出願前周知の課題及び本願出願前周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明並びに本願出願前周知の課題及び本願出願前周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それゆえ、本願は、他の請求項に係る発明について判断するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-11-21 
結審通知日 2005-12-13 
審決日 2005-12-27 
出願番号 特願2001-217665(P2001-217665)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A41B)
P 1 8・ 575- Z (A41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹下 和志  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 種子 浩明
豊永 茂弘
発明の名称 紙おむつ  
代理人 大浜 博  

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