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審決分類 審判 判定 審理一般(別表) 属さない(申立て不成立) H04N
管理番号 1132636
判定請求番号 判定2005-60042  
総通号数 76 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2004-04-08 
種別 判定 
判定請求日 2005-06-21 
確定日 2006-03-14 
事件の表示 上記当事者間の特許第3569522号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号書面文献及びその製品カタログに示す「表示装置」は、特許第3569522号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1.請求の趣旨
本件求めは、イ号書面文献及びその製品カタログに示す「黒挿入駆動技術を搭載した型式番号W20-LC3000の液晶テレビ」は、 特許第3569522号の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

2.本件特許発明
本件特許発明(発明の名称「表示装置」、請求項の数:3)は、願書に添付した明細書及び図面(以下、本件特許明細書という。)の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された下記のとおりのものと認める。(なお、請求項1については、便宜上、構成要件に分説して符号A〜Dを付した。)

【請求項1】
A.LCDを備え、
B.前記LCDに異なる画像を順次表示する場合において
C.前記LCDに1フィールドあるいは1フレーム分の映像信号を入力する毎に、前記LCDに全画面黒表示を行わせるための全画面黒信号を入力することを特徴とする
D.表示装置

【請求項2】
前記LCDにおける前記全画面黒信号の入力時の画面走査時の周波数を、前記映像信号のそれよりも高くするようにしたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。

【請求項3】
前記LCDにおいて、前記映像信号の入力と前記全画面黒信号の入力との間に入力信号が無い期間を設けたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。

3.イ号物件
請求人が判定を求めているイ号物件は、判定請求書の記載(4頁1行〜20行)、判定請求書に添付し提出した「製品カタログ」(甲第5号証)、同じく提出した「開放特許の紹介に対する回答書面」(甲第7号証)および同じく提出した「技術発表資料」(甲第8号証)からみて、下記のとおりのものである。(なお、イ号構成については、便宜上、上記構成要件A〜Dに対応して符号a〜dを付した。)

〈イ号製品〉
液晶テレビ(型式番号W20-LC3000)

〈イ号構成〉
a.LCDを備え、
b.前記LCDに動画像を順次表示する場合において
c.前記LCDに1フィールドあるいは1フレーム分の映像信号を入力する毎に、前記LCDの画像の一部に入力された黒信号を移動させて全画面を黒表示にすることを特徴とする
d.表示装置

4.対比
そこで、本件特許発明の構成要件とイ号構成とを対比検討する。
(1)構成要件A
イ号構成a「LCD」は構成要件A「LCD」に対応するところ、イ号構成aは構成要件Aを具えている。

(2)構成要件B
(a)イ号構成b「LCDに動画像を順次表示する場合」は、構成要件B「LCDに異なる画像を順次表示する場合」に対応するところ、LCDに表示する画像につき「動画像」(イ号構成b)と「異なる画像」(構成要件B)という相違点が認められる。イ号構成bにおける「動画像」が、本件特許発明の構成要件Bの「異なる画像」といえるか(に含まれるか)につき検討をする。
「異なる画像」の技術的意義につき広狭二様の解釈が可能であるので、明確を期すため特許明細書の発明の詳細な説明の欄の記載を考慮する。

(b)本件特許明細書
(b1)本件特許明細書には下記の記載が認められる。
記(本件特許明細書の記載)
〈技術分野〉
「本発明は、眼鏡を必要としない立体映像表示装置に関するものである。」(段落0001)
〈背景技術〉
「図32は例えば特開平6-205446号公開に示された従来の立体映像表示装置を上方から見た原理図であり、このものは映像表示装置として背面照射型の液晶表示板(LCD)などの透過型映像表示板を用い、このLCDをはさんで観察者とは反対側に複数の線状光源を配置して構成されている。図において、1は透過型映像表示板、45は複数の線状光源で、透過型映像表示板1に照射して観察者の左眼EYE1、右眼EYE2に選択的に投影するように点燈する線状光源LL1,LL2で構成されている。図33は映像表示領域の時間変化を示すもので、(a)は左眼用および右眼用映像の映像R、L、および映像R、Lをフィールド単位で切り換えた映像入力、(b)、(c)は(a)の映像入力による画面上の映像表示領域の時間変化を示すもので、(b)は映像表示装置がCRTの場合、(c)は映像表示装置がLCDの場合である。」(段落0004)
「以上のように、透過型映像表示板1に表示する左眼用の映像と右眼用の映像、および、線状光源45の左眼用の光源と右眼用の光源を、時分割的に切り換えるようにしたことで、左右両眼にそれぞれ方向像が分離投影され、立体映像として観察できる。また、図32では線状光源が照射する方向数を2とした従来例について説明したが、方向数が3以上の場合は透過型映像表示板1の1画素毎に対応して線状光源44をLL1、LL2、LL3、・・・と複数配置することで、ある時点についての方向像が透過型映像表示板1に表示されたときに、対応する1種類の線状光源のみが点燈することで、3以上の方向像でも分離投影されるので、観察位置を移動すると立体映像の回り込みが表現できる。」(段落0006)
〈発明が解決しようとする課題〉
「図32について説明した従来の立体映像表示装置は、透過型映像表示板に照射する線状光源を、透過型映像表示板に使用するLCDの画素より微細な構造にする必要があるという問題点があった。」(段落0008)
「また、線状光源による照射では、投影する方向像の数を左右にしか増加できないので、観察者が上下、または前後に移動した場合の立体映像の変化を表現できないという問題点があった。」(段落0009)
「また、図33(a)に示すようなフィールド毎に時分割した映像入力による映像は、(b)に示すようにCRTに表示した場合、表示面を走査している瞬間だけ走査点で光るだけなので、どの瞬間をとっても映像Rー1と映像Lー1は時間的に分離しているが、(c)に示すように透過型映像表示板としてLCDに表示した場合、表示面上の画素は次にこの画素が走査されるまで表示を続けるので、斜線領域全てで映像R-1と映像L-1の表示が継続するため時間的に分離されていないという問題点があった。」(段落0016)
〈目的〉
「本発明は前記のような問題点を解消するためになされたもので、その目的は、簡単な構成の光源で、透過型映像表示板が時分割して表示する方向像を観察者の左右両眼に投影することで立体映像を表示する立体映像表示装置を得るものである。」(段落0017)
「また、簡単な構成の光源で、透過型映像表示板が時分割して表示する左右方向に3以上の方向像を投影する立体映像表示装置を得るものである。」(段落0018)
「また、観察者の位置が左右、上下および前後方向に移動しても、観察位置に追従して常に立体映像を表示できる立体映像表示装置を得るものである。」(段落0021)
「また、時分割した方向像を表示する透過型映像表示板にLCDを使用しても、時分割した方向像を時間的に分離して表示することができる立体映像表示装置を得るものである。」(段落0031)
〈課題を解決するための手段〉
「この発明の表示装置は、LCDを備え、前記LCDに異なる画像を順次表示する場合において、前記LCDに1フィールドあるいは1フレーム分の映像信号を入力する毎に、前記LCDに全画面黒表示を行わせるための全画面黒信号を入力する。」(段落0032)
〈発明の効果〉
「この発明の表示装置によれば、どの任意の時間で前後の映像が一部分でも同時に表示されることが無く、前後の映像を時間的に分離して表示することができる。」(段落0033)
〈実施例1〉
「図1は本発明の実施例1における立体映像表示装置を上方から見た原理図である。図において、1は透過型映像表示板、2は透過型映像表示板1の背面に配置した透過型映像表示板1の表示面より大きい凸レンズ板で、oは凸レンズ板中心、FLは焦点である。3は透過型映像表示板1に時分割して表示された2つの方向像を観察者の左右両眼へ選択的に照射して立体映像を表示するために透過型映像表示板1を境に観察者のいる空間から反対側の空間に配置された発光面上の任意の部分領域で発光する分割光源、4は透過型映像表示板1に表示する2つの方向像の信号を出力する左右映像信号源で、4R、4Lはそれぞれ映像R、Lを出力する右眼映像、左眼映像信号源である。5は透過型映像表示板1に表示する左右両眼用の方向像を時間交互に切り換える時分割回路、6は透過型映像表示板1に表示する左右両眼用の方向像の時間交互の切り換えに対応して分割光源3を左右2分割した領域3R、3Lで交互に発光するように制御する分割制御回路である。」(段落0034)
「図2は実施例1の動作を説明するための光路図であり、観察位置における透過型映像表示板1上の各位置を照らすバックライトの光路を示す。」(段落0034)
「次に、図1ないし図2を参照して動作について説明する。・・・すなわち、分割光源3の領域3Lが発光しているとき、凸レンズ板2全面が発光して見える観察位置は、点a、b、c、dの実線で囲まれた線Lを含む斜線範囲内になり、この範囲外では分割光源3の領域3Lから発っする光は見えず、凸レンズ板2は暗い。同様に、分割光源3の領域3Rが発光しているとき、凸レンズ板2全面が発光して見える観察位置は、点線で囲まれた線Rを含む斜線範囲内になる。透過型映像表示板1はそれ自体発光せず透過光を制御して映像を表示するので、バックライトがない状態では画像は見えない。そのため、凸レンズ板2全面が発光して見える状態がバックライトのある状態に対応するので、領域3Lが発光しているときは線Lを含む斜線領域内から見た場合だけ、また領域3Rが発光しているときは線Rを含む斜線領域内ら見た場合だけ透過型映像表示板1の映像を観察することができる。そこで、映像R、Lを時分割回路5で高速に切り換えて透過型映像表示板1に表示して、それに対応して分割制御回路6で分割光源3の左右発光領域3R、3Lを高速に切り換えることで、左眼を線Lを含む斜線領域内のどの位置からでも、また右眼を線Rを含む斜線領域内のどの位置からでも透過型映像表示板1を見れば、映像R、Lを左右眼別々に視差角の異なる方向像として見ることができる。」(段落0035)
〈実施例22〉
「図24は本発明の実施例22における立体映像表示装置を上方から見た原理図であり、いわば、透過型映像表示板1をLCDで構成した場合の入力信号を、映像信号の片フィールド毎に全画面を黒表示するようにしたものを示している。図において、41は全画面黒表示切換回路、42は全画面黒表示信号源である。図25は本発明のこの実施例22の動作を説明する表示領域の時間変化を示す図であり、(a)は映像R、L、および映像R、Lを片フィールド毎に全画面を黒表示させてフレーム単位で切り換えた映像入力、(b)は(a)の映像入力によって画面上に表示された領域の時間変化を示すものである。」(段落0066)
「図24に示すように、映像R、Lは、全画面黒表示切換回路41で片フィールドを全画面黒表示信号源42と切り換え、時分割回路5でフレーム切り換え透過型映像表示板1に入力される。ここで、図25(a)に示すように映像RとLはあらかじめフィールド1とフィールド2が逆にされていて、映像入力は映像R、L両方でフィールド1だけを表示するようにする。このとき画面上に表示された領域は(b)に示すように、1フィールド目に映像R-1が入力されると1ライン目から262.5ライン目まで表示され、次に2フィールド目に全画面黒信号が入力されて1ライン目から262.5ライン目まで映像R-1が消去される。次の3フィールド目に映像L-1のフィールド1が入力されて1ライン目から262.5ライン目まで表示され、次の4フィールド目に全画面黒信号が入力されて1ライン目から262.5ライン目まで映像L-1が消去され、以下これを繰り返す。この結果、透過型映像表示板1の同一画素に次の信号が来るまで表示を継続するLCDを用いても、どの任意の時間で両画面が一部分でも同時に表示されることがなく、映像R、Lの全画面を時間分離することができる。」(段落0067)
〈実施例24〉
「図27は本発明の実施例24の動作を説明する表示領域の時間変化を示す図であり、透過型映像表示板1をLCDで構成した場合の入力信号を、映像信号のフレーム表示毎に全画面を黒表示するようにしている。」(段落0069)

(b2)上記各記載の要点は、以下のとおりである。
(b21)本発明の目的は、透過型映像表示板が時分割して表示する方向像を観察者の左右両眼に投影する立体映像表示装置に関して、左右方向に3以上の方向像を投影することができ、また、観察者の位置が左右、上下および前後方向に移動しても、観察者の位置に追従して常に立体映像を表示することができ、また、透過型映像表示板にLCDを使用しても、時分割した方向像を時間的に分離して表示することができる立体映像表示装置を得ることにあること。(段落0031)
(b22)本発明の表示装置は、LCDに異なる画像を順次表示する場合において、LCDに1フィールドあるいは1フレーム分の映像信号を入力する毎に、LCDに全画面黒表示を行わせるための全画面黒信号を入力すること。(段落0032)
(b23)実施例1(図1)において、1は透過型映像表示板、2は凸レンズ板、oは凸レンズ板中心、FLは焦点、3は透過型映像表示板1を境に観察者のいる空間から反対側の空間に配置された発光面上の任意の部分領域で発光する分割光源であること。
分割光源3の発光領域3Lが発光しているときは線Lを含む斜線領域内から見た場合だけ、また発光領域3Rが発光しているときは線Rを含む斜線領域内から見た場合だけ透過型映像表示板1の映像を観察することができるので、映像R、Lを高速に切り換えて表示し、それに対応して分割光源3の左右発光領域3R、3Lを高速に切り換えることで、左眼を線Lを含む斜線領域内のどの位置からでも、また右眼を線Rを含む斜線領域内のどの位置からでも、映像R、Lを左右眼別々に視差角の異なる方向像として見ることができること。(段落0034、段落0035)
(b24)実施例22(図24)において、4は透過型映像表示板1に表示する2つの方向像の信号を出力する左右映像信号源で、4R、4Lはそれぞれ映像R、Lを出力する右眼映像、左眼映像信号源である。5は透過型映像表示板1に表示する左右両眼用の方向像を時間交互に切り換える時分割回路、6は透過型映像表示板1に表示する左右両眼用の方向像の時間交互の切り換えに対応して分割光源3を左右2分割した領域3R、3Lで交互に発光するように制御する分割制御回路であること。(段落0034)
映像R、L(映像RとLはあらかじめフィールド1とフィールド2が逆にされている)の片フィールドを、全画面黒表示切換回路41で全画面黒表示信号源42と切り換え、時分割回路5でフレーム切り換え透過型映像表示板1に入力すること。このとき、1フィールド目(1ライン目から262.5ライン目まで)に映像R-1のフィールド1が入力され、次に2フィールド目(1ライン目から262.5ライン目まで)に全画面黒信号が入力されて映像R-1が消去され、次に3フィールド目に映像L-1のフィールド1が入力され、次に4フィールド目に全画面黒信号が入力されて映像L-1が消去され、以下これを繰り返すこと。この結果、どの時間をとっても両画面は一部分なりとも同時に表示されることがなく、映像R、Lの全画面を時間分離できること。(段落0067)
(b25)図25には、「右眼用映像R-1」(フィールド)、「黒信号」(フィールド)、「左眼用映像L-1」(フィールド)、黒信号(フィールド)、「右眼用映像R-1」(フィールド)、「黒信号」(フィールド)、「左眼用映像L-1」(フィールド)、・・・の順のように、図27には、「右眼用映像R-1・右眼用映像R-2」(フレーム)、「黒信号」(フレーム)、「左眼用映像L-1・左眼用映像L-2」(フレーム)、「黒信号」(フレーム)、「右眼用映像R-1・右眼用映像R-2」(フレーム)、「黒信号」(フレーム)、「左眼用映像L-1・左眼用映像L-2」(フレーム)の順のように、 それぞれ、黒信号を挟んで右眼用信号(フィールド単位又はフレーム単位)と左眼用信号(フィールド単位又はフレーム単位)が時間的に交互に表示することが見て取れること。

(c)相違点
(c1)上記(b)によれば、本件特許発明は立体映像表示装置に関するものであり、その「異なる画像を順次表示する」とは、右眼用映像信号源4Rと左眼用映像信号源4Lからそれぞれ出力される2つの方向像(右眼用映像Rと左眼用映像L)を、時分割回路5により時間交互に切り換えて透過型映像表示板1に交互に表示することであることが認められる。すなわち、「異なる画像」とは「(異なる映像信号源から出力される方向の)異なる画像」であり、「順次表示する」とはこのような「(方向の)異なる画像」を「時間的に交互に表示する」ことであることが認められる。
これに対して、イ号構成の「動画像を順次表示する」は、甲第5号証からも明らかなように、所定時間間隔(1フレーム、1/60秒)毎に入力される、時間的に順次変化していく一連の画像(動画像)を順次表示するものである。
上記「(異なる映像信号源から出力される方向の)異なる画像」を「時間的に交互に表示する」ことが、経時的に順次変化していく一連の画像を表示することでないことは、明らかである。
(c2)また、本件特許発明では、第1図に示されるような光学的配置の表示装置にこのような「異なる画像を順次表示する」ときは、「異なる画像」を左右眼別々に視差角の異なる方向像として見ることができる。これに対して、イ号構成では、第1図に示される表示装置に「動画像を順次表示(する)」しても、「動画像」を左右眼別々に視差角の異なる方向像として見ることはできない。
(c3)以上によれば、イ号構成bは本件特許発明の構成要件Bを具えない。

(f)請求人の主張
(f1)請求人は、「動画像とは、異なる画像を順次表示させることで動きを表現するものである。一方、両眼視差によって立体視を表現させる場合、静止画像であっても両眼視差を表現するために異なる画像が順次表示される。すなわち異なる画像を順次表示させるとは、動画像を含む上位概念であり、動画像とは、異なる画像を順次表示させることに含まれる下位概念である。したがって、この点は相違点ではない。」と主張する。
(f11)「異なる」の通常の語義に従う限りでは「異なる画像」は「動画像」を含む上位概念であることが認められるが、本件特許明細書においては、「異なる(画像)」が「異なる映像信号源から出力される異なる(画像)」の意味に用いられていることは前記のとおりであるから、主張は認められない。

(f2)請求人は、本件特許発明は原出願の請求項22〜26を分割したものであるところ、原出願の拒絶理由通知書(甲第2号証)において、「請求項22〜26に係わる発明は、LCDを用いた(但し、クレーム中では規定されていない)場合にも、方向像を時間的に分離する発明である。したがって、上記a〜eは、それぞれ発明の主要部及び解決すべき課題が異なる。」との特許庁のご指摘により、「立体表示装置」に限る課題ではなく、面順次走査液晶の画像一般に対する課題である疑似インパルス化技術に関する発明であることを示すため、分割出願時に「立体表示装置」から、表示装置一般が対象となる「表示装置」に名称変更を行い、特許成立している、と主張するが、以下のとおり当たらない。
(f21)本件特許明細書に「4は透過型映像表示板1に表示する2つの方向像の信号を出力する左右映像信号源で、4R、4Lはそれぞれ映像R、Lを出力する右眼映像、左眼映像信号源である。」(段落0034)と記載されていることは前記のとおりである。
これによれば、拒絶理由通知書の記述「方向像を時間的に分離する発明である」における「方向像」は「左右映像信号」であると解すべきである。そうすると、この記述は、原出願の請求項22〜26に係る発明は、立体映像表示装置に係る構成であることを前提とした「左右映像信号を時間的に分離する発明である」との趣旨に解すべきであり、原出願の請求項22〜26に係る発明が、「面順次走査液晶の画像一般に対する課題に関する発明(疑似インパルス化技術)である」ことを示したものではない。
上記記述は、「異なる画像」は「動画」であるとする主張の根拠となるものではない。
(f22)上記拒絶理由通知書は、原出願が特許法第37条の規定に違反している理由(請求項22〜26に係る各発明とその他の請求項に係る各発明について、発明の主要部及び解決すべき課題が異なること)を指摘したのに止まるのであり、分割出願をすれば特許となることを示唆するような記述があるわけではない。
むしろ、本件特許の出願手続における特許メモ(乙第1号証)の「LCDのように・・・表示装置で、左右視差画像等の異なる画像を順次表示する場合において、順次表示される異なる画像を分離して視覚できるように、1フレーム毎に全画面黒画像信号を入力する先行文献は、発見できなかった。」との記述によれば、「異なる画像」が「左右視差画像」(左右映像信号)であることを要件の一つとする発明について特許査定をしたこと(先行文献は発見できなかったこと)が窺えるのであり、面順次走査液晶の画像一般に対して特許されたものと見ることはできない。
(f23)原出願が「立体映像表示装置」に関する出願であることに加え、本件特許も名称については「表示装置」としつつも本件特許明細書には「本発明は、眼鏡を必要としない立体映像表示装置に関するものである。」(段落0001)と記載されている。本件特許が「立体映像表示装置」に関する原出願を出発点とする以上、本件特許発明の技術的意義も原出願の開示の限度において理解すべきである。

(3)構成要件C等
イ号構成bが構成要件Bを具えず以下のとおりイ号物件は本件特許発明の技術的範囲に属するとすることができない以上、これ以上の対比検討を要しない。

(4)請求項2および請求項3に係る発明は請求項1を引用する発明であるので、イ号構成bは、同様に、請求項2および請求項3に係る特許発明の構成要件(構成要件B)を具えない。

(5)以上によれば、本件特許発明の「LCDに異なる画像を順次表示する」との構成要件を具えないイ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属するとすることはできない。

5.むすび
したがって、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2006-03-02 
出願番号 特願2003-344634(P2003-344634)
審決分類 P 1 2・ 0- ZB (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 新宮 佳典
特許庁審判官 原 光明
乾 雅浩
登録日 2004-06-25 
登録番号 特許第3569522号(P3569522)
発明の名称 表示装置  
代理人 作田 康夫  

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