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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1133227
審判番号 不服2004-12637  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-08-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-18 
確定日 2006-04-05 
事件の表示 平成11年特許願第231392号「量子コヒーレンスに基づく量子暗号通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月 4日出願公開、特開2000-216775、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年 8月18日(パリ条約による優先権主張 1999年 1月21日 (US)アメリカ合衆国)の出願であって、その請求項1-13に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1-13に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。

2.原査定の理由
原査定の拒絶の理由は、要するに以下のようなものである。

(特許法第36条第4項)
本願の発明の詳細な説明に記載された構成は、検出されることなく盗聴を行うことが可能であって、不確定性原理に基づく秘密保持がなされないものであるから、「量子暗号」を構成するとは認められない。すなわち、本願の発明の詳細な説明には、「量子暗号通信チャネル」が実質的に開示されていない。

(特許法第36条第6項2号)
本願各請求項に係る発明は「量子暗号通信チャネル」に係る発明を請求したものであるが、各請求項に記載された事項は、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、上記36条4項で述べたと同様の理由により、「量子暗号」を構成するものとは認められない。

3.当審の判断
そこでこれらの拒絶理由について検討する。

(特許法第36条第4項の拒絶理由について)
特許法第36条第4項では、「前項第三号の発明の詳細な説明は、経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載しなければならない。」と規定しており、さらに上記経済産業省令に該当する特許法施行規則第24条の2では、「特許法第三十6条第4項の経済産業省令で定めるところによる記載は、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することによりしなければならない。」と規定している。
そこでまず、本願明細書の発明の詳細な説明が、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているかどうかであるが、本願明細書の発明の詳細な説明で示される「量子暗号通信システム」は、原査定で指摘するように盗聴可能なものであったとしても、そのような特性を踏まえた上で当業者が実施する場合において、何らかの困難性があるものとはいえない。
また、本願明細書の発明の詳細な説明全体を参酌すれば、秘密性、安全性について原査定で指摘するような盗聴の可能性があるとしても、通信チャンネルに対する障害によるエラーの発生することのない、通信品質に優れた量子暗号通信チャンネルを提供するという課題と、その解決手段は開示されていると解されるから、発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他のその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されていないとはいえない。
よって、本願明細書の発明の詳細な説明は、特許法第36条第4項に規定される要件を満たしていないとはいえない。

(特許法第36条第6項2号の拒絶理由について)
特許法第36条第6項2号の規定は、「特許を受けようとする発明が明確であること。」というものであり、本願各請求項の記載では、その構成に不明確な点があるとはいえない。
なお、原査定で指摘する盗聴の可能性については、量子暗号の一般的な特徴として、量子力学的に安全性が保証されるというものがあるが、盗聴の可能性があるものは量子暗号通信システムでないというに足りる根拠を見いだすことはできないから、この点をもって、本願各請求項に係る発明が特許法第36条第6項2号に規定される要件を満たしていないとはいえない。

4.むすび
したがって、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2006-03-23 
出願番号 特願平11-231392
審決分類 P 1 8・ 536- WY (H04L)
P 1 8・ 537- WY (H04L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中里 裕正  
特許庁審判長 井関 守三
特許庁審判官 長島 孝志
成瀬 博之
発明の名称 量子コヒーレンスに基づく量子暗号通信システム  
代理人 石橋 政幸  
代理人 宮崎 昭夫  
代理人 緒方 雅昭  

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