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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1133992
審判番号 不服2003-14391  
総通号数 77 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-02-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-25 
確定日 2006-04-07 
事件の表示 平成 3年特許願第298374号「カード付き帳票、該カード付き帳票への印字方法及び印字されたカード付き帳票」拒絶査定不服審判事件〔平成 5年 2月 2日出願公開、特開平 5- 24382〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定

本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成3年10月17日(優先日、平成2年10月22日)の出願であって、平成15年6月23日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年7月25日付けで本件審判請求がされたものである。
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は平成15年5月6日付け手続補正により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の【請求項1】に記載されたとおりの次のものと認める。
「帳票基材表面にカードを剥離可能に設けてなるカード付き帳票において、前記カードは、カード基材表面がマット処理された基材からなり、カード基材裏面には粘着剤を介してフィルム層が設けられ、該フィルム層は、一方のフィルムと接着性を有する擬似接着層を介して、該フィルム層とは相互間に接着性が低い材質の異なる別のフィルム層と剥離可能に設けられ、該別のフィルム層を、粘着剤を介して前記帳票基材表面に貼着し、かつカードの表面にはカード使用者の固有情報印字欄を形成してなるとともに、帳票基材表面のカード非貼着面にはカードの固有情報に対応した情報を同時に印字することができる情報印字欄が設けられていることを特徴とするカード付き帳票。」

第2 当審の判断

1.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された実願平01-036657号(実開平02-126878号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、次のア.〜エ.の記載が図示とともにある。
ア.「シート状基材に透視可能な第1のシートが接着され、この透視可能な第1のシートの前記シート状基材接着面とは反対面側に同じく透視可能な第2のシートが剥離可能に接着され、さらに、前記第2のシートにおける第1のシート接着面とは反対面側にカードが接着されてなるカード用紙。」(実用新案登録請求の範囲)
イ.「第1図及び第2図に示すように、カード用紙1のシート状基材2における表面側右端寄り部分にはカード用紙1の送付先である宛名表示3がなされる一方、表面側左端寄り部分にはカード使用に関する注意文4が表示されている(第4図参照)。」(3頁16〜20行)
ウ.「前記カード用紙1には、前記注意文4表示部分を被覆するように、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなる透明な樹脂シート5が粘着剤6を介して強固に接着されている。また、前記樹脂シート5の上面には、同様な材質の同じく透明な樹脂シート7が、不完全な溶着等の適宜手段により形成された剥離層8を介して、剥離可能に疑似的に接着されている。さらに、前記樹脂シート7の上面側には、粘着剤8(注:8は6の誤記と認める)を介してプラスチック製のカード9が強固に接着されている。このカード9の上面側には、表題10があらかじめエンボス加工等の適宜手段によって表示されるとともに、従業員番号記入欄11、生年月日記入欄12、所属記入欄13、氏名記入欄14の各欄にも同様の手段でカード所持者の該当する所定事項が表示され、また写真貼付欄15には所持者の写真が貼付されている。」(4頁3〜19行)
エ.「宛名人がカード9を捲り上げると、各樹脂シート5,7が剥離層8から分離することにより、前記カード9は前記樹脂シート7を下面側に備えた状態でシート状基材2から剥離される。そして、このシート状基材2から剥離された状態でカード9を使用するものである。なお、本考案は上述した実施例に限定されず、例えばカード9の材質として、合成紙のように筆記性を有するとともに耐久性にも勝れたものを採用すれば、各記入欄11,12,13,14への記入は宛名人が受領後、自分で行うようにしてもよい。」(5頁4〜16行)

2.引用例1記載の発明の認定
記載ア.〜エ.を含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「シート状基材2からカード9が剥離されるカード用紙1において、シート状基材2表面側左端寄り部分に、透視可能な第1の樹脂シート5が粘着剤6を介して接着され、この透視可能な第1の樹脂シート5の前記シート状基材2接着面とは反対面側に同様な材質の透視可能な第2の樹脂シート7が、不完全な溶着等により形成された剥離層8を介して、剥離可能に疑似的に接着され、さらに、前記第2の樹脂シート7の上面側には、粘着剤を介してプラスチック製のカード9が接着されており、さらに、前記カード9の上面側の従業員番号記入欄11、生年月日記入欄12、所属記入欄13、氏名記入欄14の各欄にカード所持者の該当する所定事項が表示され、一方、シート状基材2表面側右端寄り部分にカード用紙1の送付先である宛名表示3がなされてなるカード用紙1。」(以下「引用発明1」という。)

3.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
引用発明1の「シート状基材2」、「カード9」、「カード用紙1」、「第2の樹脂シート7」及び「第1の樹脂シート5」は、
本願発明の「帳票基材」、「カード」、「カード付き帳票」、「フィルム層」及び「別のフィルム層」にそれぞれ相当する。
引用発明1の「剥離層8」と、本願発明の「擬似接着層」は、2つの層が擬似接着する層を、剥離することに着目した呼び方をするか接着することに着目した呼び方をするかの違いにすぎない。
引用発明1の「シート状基材2からカード9が剥離される」は、本願発明の「帳票基材表面にカードを剥離可能に設けてなる」と同意である。
引用発明1において、カード9はシート状基材2表面側左端寄り部分に設けられるているから、引用発明1のカードの設けられていないシート状基材2表面側「右端寄り部分」は、本願発明の帳票基材表面の「カード非貼着面」に相当する。
引用発明1の従業員番号記入欄11、生年月日記入欄12、所属記入欄13、氏名記入欄14の各欄に表示されたカード所持者の該当する所定事項が、本願発明のカード使用者の固有情報であることは明らかであるから、従業員番号記入欄11、生年月日記入欄12、所属記入欄13、氏名記入欄14は、「カード使用者の固有情報欄」に相当する。
引用発明1の「送付先である宛名表示3」が、本願発明の「カードの固有情報に対応した情報」であることは明らかであるから、シート状基材2表面側右端寄り部分に「カードの固有情報に対応した情報欄」があるといえる。
引用発明1の「第2の樹脂シート7の上面側には、粘着剤を介してプラスチック製のカード9が接着され」と、本願発明の「カード基材裏面には粘着剤を介してフィルム層が設けられ」は、第2の樹脂シート7(フィルム層)側からの記載か、カード側からの記載かの違いにすぎず、両者に構成の違いは存在しない。
したがって、本願発明と引用発明1とは、
「帳票基材表面にカードを剥離可能に設けてなるカード付き帳票において、
前記カードは、カード基材裏面には粘着剤を介してフィルム層が設けられ、該フィルム層は、擬似接着層を介して、別のフィルム層と剥離可能に設けられ、該別のフィルム層を、粘着剤を介して前記帳票基材表面に貼着し、かつカードの表面にはカード使用者の固有情報欄を形成してなるとともに、帳票基材表面のカード非貼着面にはカードの固有情報に対応した情報欄が設けられているカード付き帳票。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点1〉カード基材表面が、本願発明では、マット処理された基材からなるのに対して、引用発明1では、カード基材の表面処理については不明である点。
〈相違点2〉擬似接着層を介して剥離可能に設けられるフィルム層が、本願発明では、相互間に接着性が低い材質の異なるフィルム層からなり、擬似接着層が一方のフィルムと接着性を有するのに対して、引用発明1では、同様な材質のフィルム層からなり、擬似接着層が両フィルム層の不完全な溶着等により形成されている点。
〈相違点3〉カード使用者の固有情報欄及びカードの固有情報に対応した情報欄が、本願発明では、それぞれ情報印字欄とされ両情報を同時に印字することができるものとされているのに対して、引用発明1にはそのように規定されていない点。

4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
〈相違点1〉
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭63-67045号(実開平01-169374号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」という。)には、合成樹脂(プラスチック)シート表面に受信者名やその他の一般情報を筆記したり、各種図柄等を印刷したり、物品の説明もしくは宣伝の具に供することができるようにシート体表面をマット処理することが記載されている。(引用例2の「第1図及び第2図に示す第1実施例において、被着体1として葉書を例示しており、シート体2として該葉書と略同形同大のフィルム状合成樹脂シートを例示している。...シート体2は、図例では略全体に不透明な不透明部5を形成しており、この不透明部5は、シート体2の表面を粗面化したマット部6を兼ねている。マット部6の形成方法としては...このようなマット部6には受信者名やその他の一般情報を筆記することが可能であり、及び/又は、各種図柄等を印刷して意匠効果を向上させ又は物品の説明もしくは宣伝の具に供することができる。」(6頁7行〜7頁15行)の記載参照)。なお、印字適性を高める目的でカード基材表面をマット処理することは、従来から周知である(必要ならば、特開昭63-120696号公報の2頁左下欄10〜19行、特開昭63-120695号公報の2頁左上欄7行〜左下欄3行の記載参照。)。
引用発明1においても、カード基材表面には、従業員番号等の所定事項の表示がされ、表示とは筆記、印刷等によるものであるから、引用例2記載の事項を適用して、プラスチック製のカード基材表面をマット処理し情報欄の筆記、印刷適性向上を図ることは、当業者が容易に想到し得ることである。
この点に関し請求人は、「文献2におけるマット部の形成は透明樹脂シートを隠蔽用シートとして使用した場合、不透明化するために行われる手段であって、本発明のカード基材表面のマット処理とは目的が異なる。」(審判請求書の手続補正書4頁下から6〜8行)と主張しているが、引用例2の「不透明とした合成樹脂シート体2にマット部6を形成しても良く」(7頁7〜8行)の記載にみられるようにマット部の形成は必ずしも透明樹脂シートを不透明化するために行われる手段ではなく、樹脂シートを筆記や印刷に適したものにするための手段と認められるので、請求人の両者のマット部の形成目的が相違するとの主張は採用できない。
〈相違点2〉
フィルム層と、相互間に接着性が低い材質の異なる別フィルムを、一方のフィルムと接着性を有する擬似接着層を介して剥離可能に設ける事は従来から周知である(例えば実願昭63-82567号(実開平2-9572号)のマイクロフィルムの「粘着シート14は、透明な合成樹脂材料、例えばポリエチレンの第一シート16および透明な合成樹脂、例えばポリエチレンテレフタレートの第二シート18を有する。第一シート16および第二シート18の間には、一方のシート、例えば第一シートの材料と同じ材料のポリエチレンを通常の溶融温度よりも低い温度(例えば約280°)で熱押し、溶融固化した結合層20が設けられている。この結合層20によって第一シート16および第二シート18はいわゆる疑似接着されている。なお「疑似接着」の詳細は前述の実願昭第61-261660号及び実開昭第62-9280号公報を参照されたい。」(7頁1〜12行)との記載又は、実願昭61-99670号(実開昭63-6870号)のマイクロフィルムの「ラミネートされたカバーシートと熱可塑樹脂の保護フィルムとの間にたとえばラミネートと同系の熱可塑性樹脂を熱押出等によって融解して流し込み固化させると、固化した結合層は同系のラミネート側とは相溶して強固に一体化され、一方保護フィルム側とは単に融解後の「濡れ」によっていわゆる「疑似接着」のみによって結合される。」(6頁6〜12行)との記載を参照。)。したがって、擬似接着層を介して剥離可能に設けるフィルム層として上記周知の「相互間の接着性が低い材質の異なるフィルム層からなり一方のフィルム層が擬似接着層と接着性を有するもの」を用いた点は単なる設計事項にすぎない。そして、「剥離時にいずれか一方のフィルム側に擬似接着層が接着され易く、剥離時に容易に剥離しやすい効果を奏する。」(審判請求書の手続補正書4頁20〜21行)点も前記フィルム層を採用したことに伴い必然的に生じることが知られている効果である。
〈相違点3〉
本願発明はカード付き帳票に係るものであるから、請求項1に記載された「カードの表面にはカード使用者の固有情報印字欄を形成してなるとともに、帳票基材表面のカード非貼着面にはカードの固有情報に対応した情報を同時に印字することができる情報印字欄が設けられている」の記載から把握できる各情報印字欄の構成は、カード表面のカード使用者の固有情報を印字するだけのスペース(空白)、及び、帳票基材表面のカードの固有情報に対応した情報を印字するだけのスペース(空白)と認められる。請求人は、「本願発明は「同時に印字すること」を本願発明の必須要件とする」(審判請求書の手続補正書5頁40〜41行)と主張しているが、印字を何時するかは、物の発明である本願発明の構成に欠くことができない事項ではない。つまり、相違点3に係る本願発明の構成は、本願発明にはカードの表面にカード使用者の固有情報を印字するだけのスペース(空白)が、帳票基材表面にはカードの固有情報に対応した情報を印字するだけのスペース(空白)が存在することである。そのためにカード付き帳票作成後に同時印字が可能である。
一方、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭62-049910号(実開昭63-156782号)のマイクロフィルム(以下「引用例3」という。)には、カード表面と帳票基材表面に情報を印字するためのスペース(空白)を設け、カード表面のカード使用者の固有情報と帳票基材表面のカードの固有情報に対応した情報とを同時に印字し、照合の手間を省くことが記載されている(「本考案は、銀行、デパート、病院、ホテル等で使用される照合カード...特に上記カードをダイレクトメールのように郵便で送る場合に、その手間の軽減が図れかつ郵送先の誤送を確実に防止できるカード郵送用シートに関するものである。」(2頁7〜13行)、「第11図に示すように、宛名欄(b)を設けた台紙(c)に...適宜接着剤を用いて台紙(c)に貼着し、次いでこの台紙(c)を開口窓の設けられた封筒に封入し郵送する方法が採られている。しかしながら従来の方法においては、郵送用の台紙(c)とカード(a)とが別体となっているため氏名や住所の記入は別々に行う必要があり、かつ台紙(c)の記入欄とカード(a)の記入欄とを各々照合しながら封筒に封入する必要があって手間がかかる問題点があり、しかも上記照合を誤って異なる台紙(c)とカード(a)を一緒に封入する場合があって郵送先を誤り易い問題点があった。」(3頁7行〜4頁2行)、「第4図に示すように長尺のシート(9)上にミシン目等を介し複数のカード郵送用シート(10)を連設して設けることにより、コンピュータの端末プリンタ等により複数の宛名欄(2)〜(2)とカード基材(3)〜(3)への記録操作を同時にかつ連続して行えるようになるため、郵送前の手間を著しく簡略化することが可能となる。」(9頁16行〜10頁2行)の記載参照)。引用例1には「カード9の上面側には、表題10があらかじめエンボス加工等の適宜手段によって表示されるとともに、従業員番号記入欄11、生年月日記入欄12、所属記入欄13、氏名記入欄14の各欄にも同様の手段でカード所持者の該当する所定事項が表示され」と記載されているが、カード付き帳票に固有情報が表示されればよいのだから、他に表示を可能とする手段があれば、あらかじめ表示する必要がないことは明らかである。
引用発明1及び引用例3に接した当業者であれば、引用発明1においてもカード表面のカード使用者の固有情報と帳票基材表面のカードの固有情報に対応した情報とをカード付き帳票作成後同時に印字し、照合の手間を省こうとして、情報を表示すべき空白の場所を設けておくことは容易に考え付くことである。
請求人は、引用例3について、「ベースシートとカード基材とは同一のシートで構成されており...使用に際して、ベースシート...からカード基材を切り離して...使用するように構成したものであり...本発明の...カード基材を帳票から剥離して使用する形式のものとは基本的に異なる。」(審判請求書の手続補正書5頁14〜22行)と主張するが、引用例3は、カード使用者の固有情報とカードの固有情報に対応した情報とを同時に印字し照合の手間を省くことが公知であることを立証するために引用したものであって、カードが切り離して使用されるもの云々は引用の趣旨とは関係ない。

以上のとおり、相違点1ないし3に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これらの構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1、引用例2、引用例3及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび

本願発明が特許を受けることができないから、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-07 
結審通知日 2006-02-08 
審決日 2006-02-21 
出願番号 特願平3-298374
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 聡子  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 藤井 靖子
國田 正久
発明の名称 カード付き帳票、該カード付き帳票への印字方法及び印字されたカード付き帳票  
代理人 細井 勇  

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