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審決分類 |
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1134117 |
審判番号 | 不服2002-10400 |
総通号数 | 77 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-11-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-06-10 |
確定日 | 2006-04-05 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第112559号「スケジューリングする装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年11月29日出願公開、特開平 8-314735〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成8年5月7日(パリ条約による優先権主張1995年5月9日、米国)の出願であって、平成14年3月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月10日に審判請求及び手続補正がなされたが、当審より平成17年4月21日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年10月26日付けで手続補正がなされ、かつ、意見書が提出されたものであり、その請求項1乃至6に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載されたとおりの次のものと認める。 「【請求項1】 複数のイベントを含むイベント群をスケジューリングするためのスケジューリング・システムであって、 スケジュール対象のイベントについて、イベント実行時およびイベント予定時とイベント実行時の間の実行準備時を記録する手段と、 スケジュール対象のイベントについて、イベント予定時に満たされるべき固定条件を記録する手段と、 スケジュール対象のイベントについて、イベント実行準備時に満たされるべき動的条件を記録する手段と、 スケジュール対象のイベントについて、2以上のイベントの間のシーケンシャルな関係を確立するために、当該2以上のイベントを接続するリンクの情報を記録する手段と、 スケジュール対象のイベントの動的条件について、当該動的条件が満たされない場合の調整ルールを記録する手段を備え、 リンクで接続される複数のイベントを含むイベント群に含まれるすべてのイベントについて固定条件が満たされることを条件として、前記イベント群をスケジュールし、 前記イベント群をスケジュールした後に、イベントの実行準備時に動的条件が満たされるかどうかを判定し、前記イベント群に含まれるイベントの動的条件が満たされないと判定されたことに応じて、前記調整ルールに従って当該イベントのスケジュールを自動的に調整する、 スケジューリング・システム。 【請求項2】 前記調整されたイベントの調整の情報を、前記リンク情報を使用して、前記イベント群に含まれる少なくとも1つの後続イベントに伝播させることによって、前記イベント群を再スケジューリングするように、当該他のイベントの少なくとも1つをスケジュール調整する、請求項1に記載のスケジューリング・システム。 【請求項3】 当該イベント群に含まれるイベントの少なくとも1つの動的条件に関する情報として前記イベント群の外部データを指し示すポインタを記録する手段をさらに備え、前記イベントの実行準備時に動的条件が満たされるかどうかの判定が、前記ポインタによって指し示された外部データに基づいて行われる、請求項1に記載のスケジューリング・システム。 【請求項4】 中央処理装置およびメモリを備えるスケジューリング・システムにおいて、複数のイベントを含むイベント群をスケジューリングするための方法であって、 スケジュール対象のイベントについて、実行時および前記イベント予定時と実行時の間の実行準備時を前記メモリに記録するステップと、 スケジュール対象のイベントについて、イベント予定時に満たされるべき固定条件を前記メモリに記録するステップと、 スケジュール対象のイベントについて、イベント実行準備時に満たされるべき動的条件を前記メモリに記録するステップと、 スケジュール対象のイベントについて、2以上のイベントの間のシーケンシャルな関係を確立するために、当該2以上のイベントを接続するリンクの情報を記録する手段と、 スケジュール対象のイベントの動的条件について、当該動的条件が満たされない場合の調整ルールを前記メモリに記録するステップと、 前記中央処理装置が、リンクで接続される複数のイベントを含むイベント群に含まれるすべてのイベントについて前記メモリに記録された固定条件が満たされることを条件として、前記イベント群をスケジュールし、当該スケジュールの情報をメモリに記録するステップと、 前記中央処理装置が、前記イベント群をスケジュールした後に、イベントの実行準備時に動的条件が満たされるかどうかを判定し、前記イベント群に含まれるイベントの動的条件が満たされないと判定されたことに応じて、前記調整ルールに従って当該イベントのスケジュールを自動的に調整するステップと、 を含む方法。 【請求項5】 前記中央処理装置が、前記調整されたイベントの調整の情報を、前記リンク情報を使用して、前記イベント群に含まれる少なくとも1つの後続イベントに伝播させることによって、前記イベント群を再スケジューリングするように、当該他のイベントの少なくとも1つをスケジュール調整する、請求項4に記載の方法。 【請求項6】 当該イベント群に含まれるイベントの少なくとも1つの動的条件に関する情報として前記イベント群の外部データを指し示すポインタを前記メモリに記録するステップをさらに含み、前記中央処理装置が、前記ポインタによって指し示された外部データに基づいて、前記イベントの実行準備時に動的条件が満たされるかどうかを判定する、請求項4に記載の方法。」 2.当審の拒絶理由 当審より平成17年4月21日付けで通知された拒絶理由(以下、単に「拒絶理由」という。)の概要は、請求項1-8、10、11に係る発明と請求項9に係る発明は、特許法第37条各号に規定する要件を満たしていない(理由1)、請求項1-11に係る発明は、特許法第29条第1項柱書の「発明」の要件を満たしていない(理由2)、請求項1-11に係る発明は記載に不備があるので特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない(理由3)、発明の詳細な説明の記載に不備があるので特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない(理由4)、及び、請求項1-11に係る発明は、提示した引用文献に基いて当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていない(理由5)、というものである。 このうち、理由2(特許法第29条第1項柱書)及び理由5(特許法第29条第2項)が解消したかどうかについて検討する。 3.理由2について (1)請求項1について 請求項1に係る発明は、「複数のイベントを含むイベント群をスケジューリングする」ことを目的としたものであって、そのスケジューリングの手法は、「スケジューリング・システム」が、各「記録する手段」に記録された「イベント実行時」、「イベント予定時」、「実行準備時」、「固定条件」、「動的条件」、「リンクの情報」及び「調整ルール」に基づいて、「イベント予定時」に、「固定条件」に基づいてイベント群をスケジュールし、「実行準備時」に、「動的条件」が満たされているかどうかを判定し、満たされていないときに「調整ルール」に従ってイベントのスケジュールを自動的に調整するものと把握できる。 当該スケジューリング手法がスケジューリングの対象とする「イベント」又は「イベント群」はどのようなものであるのかは具体的に特定されておらず、同様に、スケジューリング及びスケジューリングの調整に用いられる「イベント予定時」、「実行準備時」、「リンクの情報」、「固定条件」及び「動的条件」がどのようなデータであり、かつ、どのように決定されるものであるのか具体的に特定されていない。また、常識的に考えれば、イベントをどのようにスケジューリングするかは、スケジューリングの対象や、スケジューリングを行いたい者の事情に合わせて任意に決めることができる事項である。また、上記の如く「固定条件」及び「動的条件」がどのような条件であるのか具体的に特定されていない以上、2種類の条件を用いたスケジューリング及びその調整が、何らかの物理的な因果関係に基づいて行われるものと把握することはできない。 よって、請求項1に係るスケジューリング手法自体は、人為的な取決めのみに基づいたものであって、例えば、所定の機械や製品を具体的に制御するものとも、所定の機械や製品の物理的な性質に基づいた処理を具体的に行うものでもないから、自然法則を利用したものではない。 当該スケジューリング手法の実現にあたり、請求項1に係る発明は、「スケジューリング・システム」、及び、種々の「記録する手段」を用いることが特定されている。 ここで、「記録する手段」は、記録する処理を行う手段(例えばメモリ・ライタのような制御手段)であるのか、記録がなされるメモリ(例えばRAMやディスクなど)であるのか不明であるが、前者については発明の詳細な説明には記載されていないので、後者のメモリであると解釈できる。また、明細書の段落【0013】の記載「コンピュータ装置100には、周知のメモリ記憶装置140を使用できる。イベントを格納するカレンダー・データベース145はメモリ記憶装置140上に位置する。」、段落【0016】の記載「ある好適な実施例では、イベント1(210)は、イベントを説明した17個のフィールド(図3参照)と、それが予定され実行された時満たされる要件を格納する。」からして、各データを格納するための専用のメモリが複数存在するのではなく、一つのメモリの中に複数のデータが格納されていると解釈できるから、請求項1に係る複数の「記録する手段」は実質的には一つのメモリである。 また、請求項1において、「スケジュールし」及び「自動的に調整する」の主体は「スケジューリング・システム」であると把握できるが、該「スケジューリング・システム」のどのハードウェアが行っているのか具体的に特定されていない。しかしながら、明細書の段落【0012】の記載「本発明は、汎用コンピュータ装置で実行することができる。」等からして、前記処理の主体は、「スケジューリング・システム」を実現するためのコンピュータである。 そうすると、請求項1に係る発明は、一つのメモリに複数のデータを記録しておき、コンピュータが、記録されたデータを用いて、スケジューリング及びその調整を行うものと把握できる。しかしながら、処理に必要なデータをメモリに記録しておき、これをコンピュータにより処理をすることは、コンピュータによって自動的に処理を行う上で必然的かつ自明なものであるから、請求項1に係る発明は、人為的な取決めのみに基づき、自然法則を利用していないスケジューリング手法を、コンピュータを自動化のための道具として用いて実行しているに他ならない。すなわち、請求項1に係る発明は、メモリを含むコンピュータを用いてはいるが、当該コンピュータが有するハードウェア資源が前記のスケジューリング手法と協働することにより専用のシステムが具体的に構築されているとはいえないから、全体としてみれば自然法則を利用しているということはできない。 また、人為的な取決めのみに基づいた処理を単にコンピュータで実現したものに対して排他的な権利である特許権を与えることは、実質的に人為的な取決めのみに基づいた処理事態に対して特許権を与えることに等しく、発明の奨励と産業の発展を目的とした特許法第1条の趣旨に反するから、上述のように判断することは違法とはいえない。 したがって、請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 (2)請求項2について 請求項2に記載された「前記調整されたイベントの調整の情報を、前記リンク情報を使用して、前記イベント群に含まれる少なくとも1つの後続イベントに伝播させることによって、前記イベント群を再スケジューリングするように、当該他のイベントの少なくとも1つをスケジュール調整する」ことは、請求項1に記載されたスケジュールの調整を詳細に限定しているが、調整のために使用されるハードウェア資源について限定又は付加するものではない。 したがって、請求項2に係る発明も、全体としてみれば自然法則を利用したものではなく、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 (3)請求項3について 請求項3に記載された「当該イベント群に含まれるイベントの少なくとも1つの動的条件に関する情報として前記イベント群の外部データを指し示すポインタを記録する手段をさらに備え、前記イベントの実行準備時に動的条件が満たされるかどうかの判定が、前記ポインタによって指し示された外部データに基づいて行われる」ことは、メモリ内に記録しておくデータとして「外部データを指し示すポインタ」を付加し、これを動的条件の判定に用いるように限定するものであるが、動的条件の判定を行うために使用されるハードウェア資源について限定又は付加するものではない。 したがって、請求項3に係る発明も、全体としてみれば自然法則を利用したものではなく、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 (4)請求項4について 請求項4に係る発明は、末尾からして方法の発明であるので、各「メモリに記録するステップ」は、その文言からして、「メモリ」に、実行時とイベント予定時、実行準備時、固定条件、動的条件、リンクの情報及び調整ルールを順次記録していくものと解釈できる。しかしながら、これらのデータを順次記録していくことは発明の詳細な説明に記載されていないから、請求項1の記載を照らして考えると、メモリにデータが予め記録されている状態のことを「記録するステップ」と記載していると考えるのが合理的である。 また、請求項4に係る発明は、上記スケジューリング手法を行うスケジューリング・システムを行う手段として、「メモリ」に加え「中央処理装置」を用いているが、当該「中央処理装置」はコンピュータが通常備えている処理の主体であるCPUに他ならず、結局、請求項4に係る発明も、一つのメモリに複数のデータを記録しておき、コンピュータが、記録されたデータを用いて、スケジューリング及びその調整を行うスケジューリング方法である。 よって、請求項4に係る発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 (5)請求項5について 請求項5に記載された「前記中央処理装置が、前記調整されたイベントの調整の情報を、前記リンク情報を使用して、前記イベント群に含まれる少なくとも1つの後続イベントに伝播させることによって、前記イベント群を再スケジューリングするように、当該他のイベントの少なくとも1つをスケジュール調整する」ことは、請求項4に記載されたスケジュールの調整を詳細に限定しているが、調整のために使用されるハードウェア資源について限定又は付加するものではない。 したがって、請求項2に係る発明も、全体としてみれば自然法則を利用したものではなく、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 (6)請求項6について 請求項6に記載された「当該イベント群に含まれるイベントの少なくとも1つの動的条件に関する情報として前記イベント群の外部データを指し示すポインタを記録する手段をさらに備え、前記イベントの実行準備時に動的条件が満たされるかどうかの判定が、前記ポインタによって指し示された外部データに基づいて行われる」ことは、メモリ内に記録しておくデータとして「外部データを指し示すポインタ」を付加し、これを動的条件の判定に用いるように限定するものであるが、動的条件の判定を行うために使用されるハードウェア資源について限定又は付加するものではない。 したがって、請求項6に係る発明も、全体としてみれば自然法則を利用したものではなく、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 (7)理由2についてのむすび したがって、理由2は依然として解消しておらず、請求項1乃至6に係る発明は、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。 4.理由5について (1)引用文献 a)引用文献1 拒絶理由に引用された、本願の優先権主張の日前である平成5年10月29日に頒布された刊行物である特開平5-282164号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、コンピュータの運用自動化装置、より詳細にはジョブ制御文によってジョブの実行と制御が行われる汎用コンピュータの運用自動化装置に関する。」 (イ)「【0011】 【発明が解決しようとする課題】 したがって、本発明の目的は、前記問題点を解決して、オペレーティング・システムに実装されている従来のジョブ管理プログラムを利用しながら、ジョブの起動とその実行順序のスケジューリングをネットを単位として年間を通じて自動的かつ連続的に行うコンピュータ運用自動化装置を提供することにある。本発明の他の目的は、ジョブの実行計画と調整、ジョブの運用、および運用関連文書とが統合的に管理されるコンピュータ運用自動化装置を提供することにある。」 (ウ)「【0018】さらに、本発明の前記処理装置10は、前記ネット・スケジューラの前処理であって、(イ) 前記スケジュールマスターと、前記ジョブマスターと、前記世代マスターと、前記休日マスターと、前記カレンダーファイルと、前記ネットマスターとを登録するための登録システム100と、(ロ) ネットのスケジュールを月単位で調整するためのスケジューリング・サブシステム102と、(ハ) ネットの実行前にユーザ・ジョブのスケジュールとジョブ制御文との照合および調整を行うためのセットアップ・サブシステム104と、を含んだ前処理と、(ニ) 前記ネット・スケジューラを含み、処理当日のネットの自動スケジュールを行うオペレーティング・サブシステム106と、を含んでいる。」 (エ)「【0050】(1) ハードウェア構成 本発明の実施例をハードウェア装置の概略構成図である図3に従って説明する。ハードウェアは、処理装置10と、メモリ12と、一定時間間隔毎に処理装置に割り込みを要求する実時間クロック装置14と、ジョブの状態レジスタ16と、ジョブの起動要求をオペレーティング・システムに通知する先入れ先出しバッファ装置であるインターナル・リーダ18と、日時を記録するカレンダ20と、システム操作卓22と、ディスク装置などの直接アクセス記憶装置24と、磁気テープ装置26と、から構成されている。メモリ12は、ジョブがロードされ実行される他、直接アクセス記憶装置24から読み込まれたデータの一次的ストア、ジョブの中間データの領域などに使用され、オペレーティング・システムのジョブ管理プログラムおよびメモリ管理プログラムによって領域の確保・解放が管理されている。」 (オ)「【0053】(2) 登録システム 第1の処理システムは、各種マスター・ファイルを初期登録するため手段である登録サブシステム100である。登録サブシステム100は、ネット単位に年間のスケジューリング条件を設定するスケジュールマスターと、ジョブ、パターン単位に条件、使用磁気テープなどを登録するジョブマスターと、磁気テープの世代管理登録のための世代マスターと、日祭日、創業記念日など処理をしない定例的な休業日を登録する休日マスターと、ネット内のジョブの実行順序を指定したネットマスターが端末から登録・編集される。 【0054】(3) スケジュールマスター 図10は、スケジュールマスターの登録画面の一例を示したものである。スケジュールマスターは、ネット単位にその年間の処理スケジュールが登録されるマスターファイルで、(1)ネット名を指定するフィールドと、(2)カレンダー種別を指定するフィールドと、(3)処理指定日が休日の場合の処理日の変更を指定するフィールドと、(4)処理のサイクルを示す処理区分フィールドと、(5)起動日の日付指定フィールドと、(6)ネットの起動条件を複数個並列して指定することができる起動条件フィールドとが設けられている。 【0055】さらに、日付指定フィールドには、(1)通常日の日次処理と、営業日の指定と、暦日の指定と、毎週の曜日指定とをそれぞれ指定する起動日の日付サブフィールドと、(2)ユーザ・ジョブの処理の内容を規定するマクロ・パラメータを格納したジョブマスターを検索するためのインデックスであるパターン値が格納されたパターン・サブフィールドと、(3)該ネットの処理日の起動条件フィールドを指定するためのインデックスである条件コード・サブフィールドとが設けられている。」 (注:上記の中で、”(1)”、”(2)”など括弧内に数字が記載されているものは、実際は数字の○囲みの記号である。) (カ)「【0057】図10に示したスケジュールマスターの第2番目の日付指定フィールドの日付サブフィールドはE01、パターン・サブフィールドPは2、条件サブフィールドJは2とあり、E01は第1営業日を意味し、ネットAA100が通常月の第1営業日にはパターン2で、起動条件コード2、即ち、ネットBB100とBB200の先行ネットの終了を条件として起動されることを指定するものである。また、第4番目の日付指定フィールドはR15とされ、これは暦日の15日を意味し、業務の定例的休日が記録された休日マスターと照合され、月の暦日15日にはパターン2で、起動条件コード4、即ち、ホールド解除を指定起動条件としてネットAA100が起動される。日付サブフィールドには、週の曜日による指定も行える。さらに、処理の標準となる通常月に対して特殊処理を行うための月指定フィールドが設けられ、特殊処理月についても日付指定サブフィールドが複数個設けられている。このように処理の年間スケジュールを設定することにより、年間を通じてネットを単位としたコンピュータ業務処理の連続自動運転が可能とされている。」 (キ)「【0058】スケジュールマスターにはネット名単位にカレンダー種別が指定される。スケジュールマスターは、コンピュータ処理の休業日情報が格納されたカレンダーファイルと照合され、カレンダー種別に対応した各月単位の仮マンスリーファイルが作成される。仮マンスリーファイルは後述されるスケジューリング・サブシステムで調整中の予約マンスリーファイルを経てスケジュール確定後、実行マンスリー・ファイルとして出力され、さらに実行マンスリー・ファイルから後述するセットアップサブシステムにより処理当日の起動条件が格納されたデイリーファイルが出力される。 【0059】なお、カレンダーファイルとは、日祭日、創業記念日など定例的な処理の休業日情報が設定された休日マスターを年間のカレンダーを作成するプログラムが照合して作成出力されたファイルであって、業務種別毎あるいは部署毎の処理休業日の相違に対応して作成されることになる。」 (ク)「【0064】(7) スケジューリング・サブシステム ネット・スケジューラがネットの自動運転を実行するために設けられた第2段階の処理システムは、ジョブ運用のスケジュールについてあらかじめ確認と調整を行うためのスケジューリング・サブシステム102である。端末から所望の運用月が入力されると、該システムはスケジュール調整用の予約マンスリーファイルから月間スケジュール表を出力する。運用計画者はスケジュールの調整がなお必要であれば端末から修正入力を行う。 【0065】スケジュール調整は、図14(A)にで示されたような画面で行われる。同図によれば、ネット名AA100の処理月日が10月20日から10月19日に修正されている。また、該ネットについてパターンおよび起動条件の修正等も本画面で行うことができる。図14(B)は、スケジュール・サブシステムによる月間スケジュール表の出力の一例である。月間スケジュール表は、各ネット名について月間の処理日の起動パターン値が出力される。 【0066】(8) セットアップ・サブシステム 第3段階の処理システムは、処理の実行の前週に翌週分のスケジュールとジョブ制御文の確認・調整を行うための前週チェック・システムと、処理の前日に翌日のスケジュールを確定するための前日チェック・システムと、処理の実行当日にオペレーション指示書を操作者用に出力する当日セットアップ・システムとからなるセットアップ・サブシステム104がある。前週チェック・システムと前日チェック・システムは、各種確認表を出力しスケジュールの確認を行う。当日セットアップは端末から日付が入力されると、スケジュールが確定された情報を含んだ実行マンスリーファイルから処理当日のネットに関する起動条件等が格納されたデイリーファイルを出力する。また、処理当日のデイリーファイルから当日のジョブの業務処理指示書と磁気テープマウント手順書を出力する。図15(A)と(B)は、オペレーション指示書と磁気テープの装着手順書の出力例を示している。 【0067】(9) オペレーティング・サブシステム オペレーティング・サブシステムは、前処理システムに続いて、ネットの運用処理当日に起動されるネット・スケジューラを含み、ネット・スケジューラは前処理システムでデイリーファイルに登録された当日のネットについて、起動条件を満たしたネットを自動的に順次起動する。」 (ケ)図2からは、ジョブネットが、2以上のジョブの間のシーケンシャルな関係を確立するために、2以上のジョブを接続するリンクの情報を含むことが見て取れる。 よって、上記(ア)乃至(ケ)からして、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 複数のジョブを含むジョブ群をスケジューリングするためのコンピュータ運用自動化装置であって、 スケジュール対象のジョブについて、ジョブを起動する日付を指定する日付指定フィールドと、 処理指定日が休日の場合の処理日の変更を指定するフィールドと、 処理当日の起動条件が格納されたデイリーファイルと、 スケジュール対象の前記ジョブネットが、2以上のジョブの間のシーケンシャルな関係を確立するために、当該2以上のジョブを接続するリンクの情報を有し、 リンクで接続される複数のジョブを含むジョブ群に含まれるすべてのジョブについて処理日が休日でないことを条件として、前記ジョブ群をスケジュールし、 前記ジョブ群をスケジュールした後に、ジョブの処理当日に起動条件を満たされているかどうかを判別し、満たされていることに応じてジョブを自動的に起動する、 コンピュータ運用自動化装置。 (2)本願発明と引用発明との対比 請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「ジョブ」、「ジョブを起動する日付」、「処理指定日が休日の場合の処理日の変更」、「処理指定日が休日の場合の処理日の変更を指定するフィールド」、「処理当日」、「処理当日の起動条件」及び「デイリーファイル」は、それぞれ本願発明の「イベント」、「イベント実行時」、「固定条件」、「固定条件を記録する手段」、「イベント実行準備時」、「動的条件」及び「動的条件を記録する手段」に対応している。 また、引用発明1の「コンピュータ運用自動化装置」は、イベントのスケジューリングを行うものであるので、本願発明の「スケジューリング・システム」に実質的に対応している。また、引用発明1の「日付指定フィールド」は、少なくとも、イベント実行時を記録する手段である点で、本願発明の「イベント実行時およびイベント予定時とイベント実行時の間の実行準備時を記録する手段」と共通したものである。また、引用発明1において、実際にジョブを実行する前のいずれかのタイミングで、処理指定日が休日である否かを判断してスケジューリングを行っており、そのタイミングは、本願発明の「イベント予定時」に対応する。 よって、両者は、 複数のイベントを含むイベント群をスケジューリングするためのスケジューリング・システムであって、 スケジュール対象のイベントについて、イベント実行時を記録する手段と、 スケジュール対象のイベントについて、イベント予定時に満たされるべき固定条件を記録する手段と、 スケジュール対象のイベントについて、イベント実行準備時に満たされるべき動的条件を記録する手段と、 スケジュール対象のイベントについて、2以上のイベントの間のシーケンシャルな関係を確立するために、当該2以上のイベントを接続するリンクの情報を記録する手段と、 リンクで接続される複数のイベントを含むイベント群に含まれるすべてのイベントについて固定条件が満たされることを条件として、前記イベント群をスケジュールし、 前記イベント群をスケジュールした後に、イベントの実行準備時に動的条件が満たされるかどうかを判定する、 スケジューリング・システム。 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願発明は、イベント実行時に加え、イベント予定時及び実行準備時をも記録するのに対し、引用発明1では、そのような事項は記載されていない点。 [相違点2] 本願発明は、調整ルールを記録する手段を有し、イベントの実行準備時に動的条件が満たされていない場合、当該調整ルールに従ってイベントのスケジュールを自動的に調整するのに対し、引用発明では、該調整ルールについて記載がない点。 (3)当審の判断 上記相違点について、以下検討する。 [相違点1について] イベントをいつスケジューリングするか、及び、いつ、そのスケジュールを見直すかのタイミングは、当業者が適宜設定すべき事項にすぎず、かつ、そのタイミングを予め決定し記録しておくようにすることも、当業者が容易に想到し得たものである。 [相違点2について] 上記(1)(ク)で示した段落【0064】〜【0066】には、一旦作成したスケジュールを、前月、前週、又は前日に出力及び確認し、必要があれば手動で調整することが記載されている。引用文献1には、処理当日についてスケジュールを調整することは明記されていないが、予定されていたイベントが処理当日に起動できない事態が生じた場合は、後続のイベントを含めて再スケジュールしなければならないことは、スケジューリング問題においては常識的な事項である。実際、引用文献1に記載のシステムにおいても、処理当日の起動条件が満たされない場合、翌日、翌週、又は翌月のスケジュールを見直す際に調整すると考えることが合理的である。 また、スケジューリング問題において、作業の実行中に遅れ等の不具合が発生したときに、知識ベースのルールを用いて計画案を修正して調整することは、例えば、拒絶理由でも引用した特開平3-58169号公報(特に、第3頁右下欄第9-14行)に記載されているように周知技術である。この不具合は、事前に検知することができず、実際に作業を開始してから生じるものであるから、本願発明の「動的条件」に相当するものである。 よって、引用発明1において、動的条件が満たされていない場合に調整ルールにより自動的に行うよう構成すること、及び、この調整ルールを記録する手段を付加することは、当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲内のものである。 (4)理由5についてのむすび よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、理由5は依然として解消していない。 5.むすび したがって、本願は、特許法第29条第1項柱書及び第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-11-07 |
結審通知日 | 2005-11-08 |
審決日 | 2005-11-21 |
出願番号 | 特願平8-112559 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
P 1 8・ 14- WZ (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 丹治 彰 |
特許庁審判長 |
吉岡 浩 |
特許庁審判官 |
林 毅 堀江 義隆 |
発明の名称 | スケジューリングする装置及び方法 |
代理人 | 坂口 博 |
代理人 | 渡部 弘道 |
代理人 | 市位 嘉宏 |