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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03M
管理番号 1135429
審判番号 不服2002-7490  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-11-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-04-30 
確定日 2006-04-27 
事件の表示 平成11年特許願第550314号「チャネル符号化/復号装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月14日国際公開、WO99/52216、平成12年11月21日国内公表、特表2000-515715〕についてされた平成15年4月15日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決[平成15(行ヶ)第396号、平成16年10月26日判決言渡し]があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
(1)本願は、平成11年4月6日を国際出願日(パリ条約による優先権主張1998年4月4日、優先権主張国 大韓民国)とする特許出願(平成11年特許願第550314号)であって、同年12月3日に特許法184条の5第1項の規定による書面が提出され、平成13年5月31日付けの拒絶理由が通知され、平成13年12月3日付けで手続補正がなされ、平成14年1月18日付けで拒絶の査定がなされた。
(2)これを不服として平成14年4月30日に拒絶査定不服の審判請求がなされ、平成15年4月15日付けで審判請求は成り立たないとの審決がなされたが、この審決を不服として、平成15年9月8日に東京高等裁判所に出訴され、平成16年10月26日に同審決を取り消す旨の判決の言渡しがあったものである。

第2.本願発明
本願の請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成13年12月3日付けの手続補正によって補正された明細書又は図面の記載からみて、特許請求の範囲第3項に記載された次のとおりのものである。
「3.移動通信システムのチャネル符号化装置において、
伝送するデータが32Kbps/10ms以上のデータレートか又は320ビット以上のフレームサイズであるデータサービスの場合はターボ符号器を選択し、該条件以外のデータサービス及び音声サービスの場合は畳み込み符号器を選択する制御器と、
前記制御器の制御下でデータを畳み込み符号化する畳み込み符号器と、
前記制御器の制御下でデータをターボ符号化するターボ符号器と、を備えることを特徴とするチャネル符号化装置。」

第3.引用例
1998年1月21日に頒布され、原査定の拒絶の理由において引用された欧州特許公開第820159号明細書(以下、「引用例」いう。)には、図2の記載とともに以下の記載がある。
(a)「本発明は、例えば並列連結テイルバイティング畳み込み符号および並列連結再帰的系統的畳み込み符号(いわゆる”ターボ符号”)を含む並列連結符号化技術、並びにそれらの復号を利用するVSAT衛星通信システムである。」(2頁46〜48行の訳)
(b)「一実施態様では、パケット伝送、クレジットカード処理および音声圧縮通信で典型的である短いデータ・ブロックの場合、この様な並列連結符号化方式におけるコンポーネント符号として非再帰的系統的テイルバイティング畳み込み符号が使用される。ファイル伝送で典型的である長いデータ・ブロックの場合、VSATおよびネットワーク基地局は再帰的系統的畳み込み符号を有する並列連結符号化を利用する。」(2頁54行〜3頁1行の訳)
(c)「図2に示す送信器チャネル処理装置は、情報源から受信したデータ・ビットのブロックに並列連結符号を適用する符号器80、データ・パケット(符号器80からの1つ以上の符号ワードを有する)と同期化ビット・パターンと制御信号ビットとを作成するパケット・フォーマッタ82、および変調器84を有する。」(3頁57行〜4頁1行の訳)
(d)「符号器および復号器は、スイッチを介して複数の符号化オプションを選択可能であるプログラマブル符号器/復号器システムを構成する。符号化/復号オプションとして、(1)並列連結符号化、(2)内部並列連結符号と直列連結した外部符号、(3)外部符号器および内部単一コンポーネント符号器を有する直列連結符号化、(4)ただ1つのコンポーネント符号器が利用されるような単一符号が含まれる。」(4頁14〜24行の訳)
これらの記載によれば、引用例には、
「VSAT衛星通信システムのチャネル処理装置において、符号器として、伝送するデータが長いデータ・ブロックであるファイル伝送の場合はターボ符号器を利用し、短いデータ・ブロックであるパケット伝送、クレジットカード処理及び音声圧縮通信の場合は並列連結テイルバイティング畳み込み符号器を利用する、チャネル処理装置。」の発明(以下、「引用発明」)が開示されているものと認められる。

第4.対比
1.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
ア)引用発明の「チャネル処理装置」、「データ・ブロック」は、それぞれ本願発明の「チャネル符号化装置」、「フレーム」に相当し、引用発明の「VSAT衛星通信システムのチャネル処理装置」と本願発明の「移動通信システムのチャネル符号化装置」とは、共に「通信システムのチャネル符号化装置」である点で一致することは明らかである。
イ)本願発明では、「伝送するデータ」が「320ビット以上のフレームサイズであるデータサービスの場合はターボ符号器を選択し、該条件以外のデータサービス及び音声サービスの場合は畳み込み符号器を選択」していることから、320ビットを境として「長いフレームサイズ」、「短いフレームサイズ」ということができる。
したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

2.一致点
「通信システムのチャネル符号化装置において、伝送するデータが長いフレームサイズの場合はターボ符号器を利用し、短いフレームサイズのデータサービス及び音声サービスの場合は畳み込み符号器を利用する、チャンネル符号化装置。」

3.相違点
ア 「通信システムのチャネル符号化装置」に関して、本願発明は「移動通信システム」の「チャネル符号化装置」であるのに対して、引用発明は「VSAT衛星通信システム」の「チャネル符号化装置」である点。(以下、「相違点(1)」という。)
イ 本願発明は、伝送するデータが32Kbps/10ms以上のデータレートか又は320ビット以上のフレームサイズであるデータサービスの場合はターボ符号器を選択し、該条件以外のデータサービス及び音声サービスの場合は畳み込み符号器を選択する制御器を備えているの対して、引用発明は、そのような制御器を備えていない点。(以下、「相違点(2)」という。)
ウ 本願発明は、制御器の制御下でデータを畳み込み符号化する畳み込み符号器と、前記制御器の制御下でデータをターボ符号化するターボ符号器とを備えているのに対して、引用発明は、伝送するデータブロックの長さに対応させて、「ターボ符号器」と「畳み込み符号器」のどちらか一方を利用する点。(以下、「相違点(3)」という。)

第5.当審の判断
ア 相違点(1)について
引用発明の「VSAT衛星通信システムのチャネル処理装置」と本願発明の「移動通信システムのチャネル符号化装置」とは、共に「通信システム」の「チャネル符号化装置」といえるものであり、「VSAT通信システム」におけるチャネル符号化の技術を「移動通信システム」の「チャネル符号化装置」に適用することを妨げる格別の理由もないことから、VSAT通信システムにおけるチャネル符号化の技術を移動通信システムに適用して「移動通信システムのチャネル符号化装置」とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
イ 相違点(2)、(3)について
通信の分野において、符号器を複数個備え、制御器の制御下において入力データに応じて最適の符号器を選択する技術は周知(特開平8-237146号公報、特開昭62-123843号公報、特開平7-212320号公報、特開平5-37674号公報)であることを考慮すると、引用発明において、「制御器の制御下でデータを畳み込み符号化する畳み込み符号器と、前記制御器の制御下でデータをターボ符号化するターボ符号器とを備える」ようにするとともに、「伝送するデータ」が所定以上のデータレート又はフレームサイズであるデータサービスの場合はターボ符号器を選択し、該条件以外のデータサービス及び音声サービスの場合は畳み込み符号器を選択する制御器を備えるようにすることに格別の困難性はなく、また、符号器を入力データに応じて選択するための条件についても、「伝送するデータが32Kbps/10ms以上のデータレートか又は320ビット以上のフレームサイズ」とすることの技術的(又は臨界的)意義が本件特許出願の明細書又は図面に開示されておらず適宜実施し得る設計事項にすぎないものと考えられることから、引用発明において「伝送するデータが32Kbps/10ms以上のデータレートか又は320ビット以上のフレームサイズであるデータサービスの場合はターボ符号器を選択し、該条件以外のデータサービス及び音声サービスの場合は畳み込み符号器を選択する制御器と、前記制御器の制御下でデータを畳み込み符号化する畳み込み符号器と、前記制御器の制御下でデータをターボ符号化するターボ符号器と、を備える」ようにすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

第6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2004-11-24 
結審通知日 2003-04-01 
審決日 2004-12-21 
出願番号 特願平11-550314
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H03M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 聡  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 望月 章俊
武井 袈裟彦
衣鳩 文彦
長島 孝志
発明の名称 チャネル符号化/復号装置及び方法  
代理人 志賀 正武  

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