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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H |
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管理番号 | 1135548 |
審判番号 | 不服2003-20706 |
総通号数 | 78 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-10-24 |
確定日 | 2006-04-27 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第144938号「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月24日出願公開、特開平 8-337347〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成7年6月12日の出願であって、平成15年9月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月24日付けに拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月19日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成15年11月19日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年11月19日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1乃至3は、 「【請求項1】 用紙に画像情報を形成する作像部と、当該作像部を内包する装置筐体と、当該装置筐体の上方に空間を隔てて配設されており、オリジナル画像情報を読み取り当該情報を電気信号に変換して前記作像部に供給するスキャナ部と、当該スキャナ部を装置筐体上方に空間を隔てて支持する支持部とを備えてなる画像形成装置において、 前記装置筐体上面に、排紙方向とほぼ直交する方向に移動可能な排紙トレイが設けられ、前記支持部は、装置正面を除く三方が装置筐体の一部を形成する壁面によって前記装置筐体上面を取り囲むようになっており、さらに、前記壁面の両側壁内側には、前記排紙トレイの裏面両端側を移動可能に案内する案内レールが設けられることを特徴とする画像形成装置。 【請求項2】 前記装置筐体に連続的に形成された支持部の内部に紙搬送路が形成され、当該支持部に連結し且つ装置筐体とスキャナ部の間の空間に位置する少なくとも1つのビントレイが設けられ、当該ビントレイ又は装置筐体上面に用紙ジョガーが付設されたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。 【請求項3】 装置筐体上面の用紙取り出し側が少なくとも部分的に隆起していることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。」と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「支持部」について、 「装置正面を除く三方が装置筐体の一部を形成する壁面によって前記装置筐体上面を取り囲むようになっており、さらに、前記壁面の両側壁内側には、前記排紙トレイの裏面両端側を移動可能に案内する案内レールが設けられること」との限定を付加するものであって、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-135615号 公報(以下、引用例1という。)には、図面と共に下記の事項が記載されている。 a.「【産業上の利用分野】本発明は、電子複写機、熱転写式複写機など、またはそれらとファクシミリ、プリンター等の機能を併せもつデジタル画像形成装置に関するものである。」(【産業上の利用分野】) b.「【0015】 【実 施 例】本発明の実施例を図2以下に基づいて説明する。画像形成装置1は画像読取り部2と記録紙作成部3とを上下に重ねた状態の装置として構成されており、両部2,3の間に空間を構成してこの部分に記録紙排出部4が形成してあり、この記録紙排出部4の一側部に上記記録紙作成部3に連なる記録紙排出口5が開口されている。 【0016】上記画像読取り部2では一般の画像読取り部と同様に、装置本体の上部に原稿をセットして原稿の画像を走査する機構を設けており」(【0015】乃至【0016】) c.「【0018】上記構成の画像形成装置1は図4に示すように、記録紙作成部3の内部に配置される画像形成部では、一般のレーザープリンタの場合と同様に、感光体ドラム9に対して書き込み装置10を配置し、画像読取り部2から入力されるデジタル信号により、レーザービームを出力させ、そのレーザービームを感光体ドラム9に照射して、画像の書き込みを行うようにしている。また上記感光体ドラム9の周囲には電子写真方式を用いた画像形成機構の場合と同様に帯電器や現像装置11、及びクリーニング装置12、転写コロトロン13が配置されている。そして感光体ドラム9を帯電器により一様に帯電させ、書き込み装置10により書き込みを行って静電潜像を形成し、その静電潜像に対して現像装置11からトナーを供給して、トナー画像を形成し、そのトナー画像を転写コロトロン13の放電により用紙に転写させるようになっている。14は排出ローラである。」(【0018】) d.「【0021】図2において、20は記録紙排出部4に、これの記録紙排出口5に向けて設けられた排出トレイである。・・・そしてこの排出トレイ20は記録紙排出部4に対して抜き差し可能になっている。」(【0021】) e.「【0023】この構成によれば、図6に示すように、記録紙排出口5より排出される各サイズの記録紙8は手前側がレジストレーションされて排出され、それぞれの奥側の端縁がそれぞれに対応するストッパ22に当接案内されて整然と排出される。」(【0023】) f.「【0026】排出トレイ20上に排出されてきた記録紙8は図12に示すように、その奥側端縁がストッパ22に案内されて整然と堆積される。そしてこの記録紙8は記録紙排出部4よりまとめて取出される。このとき、排出トレイ20が、記録紙排出部4の上面より離間されていることにより、この排出トレイ20上からの記録紙8の取出しが容易に行われる。」(【0026】) g.【図2】には、本発明の実施例を示す斜視図が示されている。 h.【図4】には、本発明に係る複写機の内部構造を示す構成説明図が示されている。 i.【図6】には、排出トレイを示す平面図が示されている。 j.【図12】には、記録紙排出部より記録紙を取り出す状態を示す説明図である。上下両部ユニット及び内部排紙収納部と補助排紙収納部の構成を概略的に示す説明図が示されている。 これらa〜jの記載によれば、引用例1には、 「デジタル画像形成装置に関するものであって、 図2に基づいて説明すると、画像形成装置1は画像読取り部2と記録紙作成部3とを上下に重ねた状態の装置として構成されており、両部2,3の間に空間を構成してこの部分に記録紙排出部4が形成してあり、 上記画像読取り部2では、装置本体の上部に原稿の画像を走査する機構を設けており、 図4に示すように、記録紙作成部3の内部に配置される画像形成部では、画像読取り部2から入力されるデジタル信号により、トナー画像を形成し、そのトナー画像を、用紙に転写させるようになっており、 記録紙排出部4に、これの記録紙排出口5に向けて設けられた排出トレイがあり、 排出トレイ20は記録紙排出部4に対して抜き差し可能になっており、 図6に示すように、記録紙排出口5より排出される記録紙8は整然と排出され、 排出トレイ20上に排出されてきた記録紙8は図12に示すように、堆積され、排出トレイ20が、記録紙排出部4の上面より離間され、 図4には、装置本体が、記録紙作成部を内包することが示され、画像読取り部を装置本体上部に空間を構成して支持する支持する部分が示され、 図4、図6及び図12には、排紙トレイが抜き差し可能な方向が排紙方向と方向とほぼ直交する方向であることが示され、 図2、図4及び図12には、支持する部分が示され、その支持する部分は、装置正面を除く三方が装置本体の一部を形成する壁面によって前記装置本体の記録紙排出部の上面を取り囲むようになっていることが示された、画像形成装置。」が記載されているものと認められる。 ここで、引用例1には、「原稿の画像をデジタル信号に変換」することについて、明示的記載はない。 しかし、画像形成装置の技術分野において、原稿の画像をデジタル信号に変換することは、引用例1の出願の出願時における技術常識であるから、 「原稿の画像をデジタル信号に変換」することは、b及びcの記載から、上記技術常識を参酌することにより導き出せるものであって、引用例1に記載されているに等しい事項である。 そうすると、引用例1には、以下の発明が開示されているものと認められる。 「用紙に画像を転写する記録紙作成部と、当該記録紙作成部を内包する装置本体と、当該装置本体の上部に空間を構成して形成されており、原稿の画像を走査し当該原稿の画像をデジタル信号に変換して前記記録紙作成部に入力する画像読取り部と、当該画像読取り部を装置本体上部に空間を構成して支持する支持する部分とを備えてなる画像形成装置において、 前記装置本体上面に、排紙方向とほぼ直交する方向に抜き差し可能な排紙トレイが設けられ、前記支持する部分は、装置正面を除く三方が装置本体の一部を形成する壁面によって前記装置本体上面を取り囲むようになっていることを特徴とする画像形成装置。」(以下「引用例1発明」という) (3)対比 そこで、本願補正発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「用紙に画像を転写する」、「記録紙作成部」、「装置本体」、「上部」、「空間を構成して形成されており」、「原稿の画像」、「走査し」、「デジタル信号」、「入力する」、「画像読取り部」、「空間を構成して」、「支持する部分」及び「抜き差し可能な」は、 それぞれ、本願補正発明の「用紙に画像情報を形成する」、「作像部」、「装置筐体」、「上方」、「空間を隔てて配設されており」、「オリジナル画像情報」、「読み取り」、「電気信号」「供給する」、「スキャナ部」、「空間を隔てて」、「支持部」及び「移動可能な」に相当する。 そうすると両者は、 「用紙に画像情報を形成する作像部と、当該作像部を内包する装置筐体と、当該装置筐体の上方に空間を隔てて配設されており、オリジナル画像情報を読み取り当該情報を電気信号に変換して前記作像部に供給するスキャナ部と、当該スキャナ部を装置筐体上方に空間を隔てて支持する支持部とを備えてなる画像形成装置において、 前記装置筐体上面に、排紙方向とほぼ直交する方向に移動可能な排紙トレイが設けられ、前記支持部は、装置正面を除く三方が装置筐体の一部を形成する壁面によって前記装置筐体上面を取り囲むようになっている画像形成装置。」の点で一致し、下記の点で相違する。 [相違点] 本願補正発明は、さらに、前記壁面の両側壁内側には、前記排紙トレイの裏面両端側を移動可能に案内する案内レールが設けられているのに対して、 引用例1発明は、そのような案内レールは設けられていない点。 (4)判断 [相違点]について 画像形成装置の技術分野において、壁面の両側壁内側に、排紙トレイの裏面両端側を移動可能に案内する案内レールを設けることは、本願出願前周知の技術(例えば、実願平01-149286号(実開平03-089053号)のマイクロフィルムなど)であるから、 引用例1発明における画像形成装置に、本願出願前周知の技術を適用して、 引用例1発明の画像形成装置において、案内レールを設けるようにして、 [相違点]に係る本願補正発明のような構成となすことは、当業者が容易に想到し得たものである。 そして、[相違点]に基づく、本願補正発明と、引用例1発明及び本願出願前周知の技術との作用効果上の差異は、引用例1発明及び本願出願前周知の技術から当業者が十分予測し得たものに過ぎない。 したがって、本願補正発明は、引用例1発明及び本願出願前周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)以上のとおり、本件補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成15年法律第47号)附則第2条第7項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成15年11月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件補正前の本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年8月8日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 用紙に画像情報を形成する作像部と、当該作像部を内包する装置筐体と、当該装置筐体の上方に空間を隔てて配設されており、オリジナル画像情報を読み取り当該情報を電気信号に変換して前記作像部に供給するスキャナ部と、当該スキャナ部を装置筐体上方に空間を隔てて支持する支持部とを備えてなる画像形成装置において、 前記装置筐体上面に、排紙方向とほぼ直交する方向に移動可能な排紙トレイを設け、この排紙トレイの移動のために前記装置筐体の上方空間に案内レールを配することを特徴とする画像形成装置。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び本願出願前周知の技術並びにその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「支持部」の限定事項である「装置正面を除く三方が装置筐体の一部を形成する壁面によって前記装置筐体上面を取り囲むようになっており、さらに、前記壁面の両側壁内側には、前記排紙トレイの裏面両端側を移動可能に案内する案内レールが設けられること」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含む本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1発明及び本願出願前周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明及び本願出願前周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1発明及び本願出願前周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 それゆえ、本願は、他の請求項に係る発明について判断するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-02-21 |
結審通知日 | 2006-02-28 |
審決日 | 2006-03-16 |
出願番号 | 特願平7-144938 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 柳 五三、杉野 裕幸 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
種子 浩明 西村 綾子 |
発明の名称 | 画像形成装置 |
代理人 | 藤田 アキラ |