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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1135574
審判番号 不服2003-6102  
総通号数 78 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-08-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-10 
確定日 2006-04-28 
事件の表示 平成11年特許願第295082号「長尺印刷を行うための印刷システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月 8日出願公開、特開2000-218890〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成11年10月18日の出願(国内優先権主張 平成10年11月27日)であって、平成15年2月27日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年4月10日付けで本件審判請求がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成17年11月14日付けで明細書に記載不備がある旨の拒絶理由を通知したところ、請求人は平成18年1月23日付けで意見書及び手続補正書を提出した。
上記手続補正後の請求項7の記載は次のとおりである。
「ドット形成要素が副走査方向に所定の間隔で複数配列されたヘッドを備え主走査と副走査とを繰り返し実行して印刷媒体上に画像を印刷する印刷部により該副走査方向に配列された複数ページに亘って入力された画像を印刷するためのデータを生成し、該データを前記印刷部に供給することによって印刷を制御する印刷制御方法であって、
(a) 前記画像の画像データと、前記ページの区切りを指定する区切りデータと、前記画像データの終端を示す終端データとの入力を逐次受け付ける工程と、
(b) 各ページ間に余白を設けない長尺印刷の実行指示を入力する工程と、
(c) 前記印刷部に供給する印刷データを生成する工程とを備え、
該工程(c)は、
(c1) 長尺印刷が指示されたときに、前記各ページ毎に画像が完結するか否かに関わらずインタレース方式による記録を実現する一定周期の送り量で前記副走査が繰り返される送りデータを生成する工程と、
(c2) 前記主走査中における前記ヘッドによるドットの形成状態を特定するラスタデータを前記画像データに基づいて生成する工程とを備え、
該工程(c2)は、
1ページ分の前記画像データに続いて前記区切りデータが入力された場合には、該区切りデータに続くページの画像データの入力を待って、前記区切りデータの前に入力された前記画像データと前記区切りデータに続くページの画像データとを使用して前記ラスタデータを生成し、
1ページ分の前記画像データに続いて前記終端データが入力された場合には、更なる画像データの入力を待つことなく、前記1ページ分の画像データを使用して前記ラスタデータを生成する工程である印刷制御方法。」

第2 当審の判断
1.記載不備
(1)まず、次のことを強調しておく。後記進歩性の判断で述べるように、本願発明と引用発明との主たる相違点は、インターレース方式であるかどうかの点、及びヘッドが複数のページにまたがることの判断基準である(後記相違点2,3がそれに当たる。)。前者の相違点はまったくとるにたらないものであり、進歩性を左右する主たる相違点は後者であるから、判断基準に関係する発明特定事項は、相当程度厳密に規定されなければならない。
当審において通知した拒絶理由では、「請求項1,7,8に「前記区切りデータが入力されたときは、該区切りデータに続くページの画像データの入力を待って前記ラスタデータを生成し」と、請求項9に「ラスタデータの生成は、前記区切りデータが入力されたときは、該区切りデータに続くページの画像データの入力を待って行い」とある。これら記載の「区切りデータが入力されたとき」の意味が不明確である。・・・【図11】の例は「1ページが10ラスタ」であるが、1ページが12ラスタであれば、1ページの最終行である12行目が4番ノズルで印刷されるから、区切りデータが入力されたにもかかわらず、2ページ目のデータは必要ではない。」と指摘した。平成18年1月23日付け手続補正により、「前記区切りデータが入力されたときは、該区切りデータに続くページの画像データの入力を待って」は、「1ページ分の前記画像データに続いて前記区切りデータが入力された場合には、該区切りデータに続くページの画像データの入力を待って」と補正された。
1ページ分の画像データ入力とラスタデータ生成の関係につき、1ページ分の画像データ入力が終了してからラスタデータ生成を行うのか、それとも1ページ分の画像データ入力の途中でラスタデータ生成を行うのか(ラスタデータ生成に1ページ分の画像データが必ずしも必要でないことは明らかである。)まず明らかでない。
発明の詳細な説明には、「長尺モードの場合、・・・ヘッドが複数のページにまたがって位置することがある。例えば、図11の例では、3回目の主走査においてヘッドの1番ノズル〜3番ノズルまでは1ページ目に位置し、4番ノズルは2ページ目に位置している。かかる場合には、2ページ目の画像データの入力を待って4番ノズルに供給すべきラスタを抽出する。」(段落【0061】)とあるとおり、「ヘッドが複数のページにまたがって位置すること」を次ページの画像データの入力を待つ条件として記載しており、この条件は合理的である。そして、ページ途中の場合にはヘッドが複数のページにまたがらないことが普通であることを考慮すると、ヘッドが複数のページにまたがるようなページ終端付近になるまでは、次ページの画像データは入力されないと解するべきである。ここで、1ページ分の画像データ入力が終了してからラスタデータ生成を行うとの解釈を採用すると、ページ終端付近よりも相当以前に1ページ分の画像データ入力が終了している。1ページ分の画像データ入力終了時に、区切りデータが入力されているかどうかも不明確であるところ、入力されているとすれば、ページ終端付近よりも相当以前に次ページの画像データ入力を待たなければならないことになるから、上記段落【0061】の記載に反する。区切りデータが入力されていないとすると、ページ終端付近のラスタデータを生成するときに、次ページの画像データが入力されていないためラスタデータを生成できないことになる。したがって、1ページ分の画像データ入力が終了してからラスタデータ生成を行うとの解釈を採用することはできない。
1ページ分の画像データ入力の途中でラスタデータ生成を行うとの解釈を採用しても不合理である。拒絶理由で述べたとおり、最先端ドット形成要素(【図11】では4番ノズル)が現在印刷中のページの最終ラスタに一致することは当然想定しなければならない。その場合、現在印刷中のページの最終行の画像データが入力された際に、区切りデータが入力されるのかどうかが問題となる。区切りデータが入力されるのであれば、最先端ドット形成要素が現在印刷中のページの最終ラスタに一致するのだから、現在ページの画像データだけでラスタデータを生成することができ、次ページの画像データの入力を待つ必要はない。最終行の画像データが入力された際に区切りデータが入力されないとすると、上記の問題はないものの、最先端ドット形成要素に割り当てる画像データが次ページの画像データである場合(ヘッドが複数のページにまたがる場合)に、いまだ区切りデータが入力されておらず、次ページの画像データ入力もないことになり、最先端ドット形成要素のラスタデータ生成を行えない。すなわち、現在ページの画像データでは最先端ドット形成要素に割り当てられないことを何らかの手段により認識する必要があるところ、何を条件として区切りデータ、ひいては次ページの画像データが入力されるのか不明である。
以上のとおり、1ページ分の画像データ入力とラスタデータ生成の関係、及び画像データ入力と区切りデータ入力の関係は不明であり、これに伴い「区切りデータが入力された場合に」の意味は依然として不明確である。

(2)当審における拒絶理由では、「1ページ目の画像データは、2ページ目の画像データが入力された段階でも破棄することはできないから、複数ページにわたる画像データを保持しなければならない。複数ページにわたる画像データを保持するのであれば、「区切りデータが入力されたとき」(この意味が不明確であることは前項で述べたとおりである。)に至るまでに次ページの画像データを入力すれば、「続くページの画像データの入力を待」つ必要はない。以上のとおり、入力された画像データがどのような形態で保持されているのか不明であり、待つことの技術的意義を理解することはできない」とも指摘した。
この点につき補足すると、後記引用発明では、ページ単位の画像データがページデータ記憶手段に記憶(保持)されているところ、本願発明が引用発明同様に、ページ単位の画像データを保持するのかどうか明らかでなく、保持しないとすれば1ページ目の未印刷画像データ(破棄できないことは拒絶理由で指摘したとおりである。)をどのように保持するのか不明である。ページ単位の画像データを保持するとすれば、2ページ分必要であり、既に次ページの画像データが保持されているのならば、「続くページの画像データの入力を待」つとは一体何のことなのか、その技術的意義を含めて理解できないということである。
平成18年1月23日付け手続補正によって「区切りデータが入力されたとき」は「区切りデータが入力された場合に」と補正されたが、入力された画像データの保持形態及び「続くページの画像データの入力を待」つことの技術的意義等は依然として理解できない。

(3)以上のとおりであるから、平成18年1月23日付け手続補正によって拒絶理由は解消されておらず、当審で通知した拒絶理由は妥当であり、明細書及び図面の記載は平成14年改正前特許法36条4項及び6項に規定する要件を満たしていない。

2.進歩性
以下では、「発明を特定するための事項」という意味で、「構成」との用語を用いることがある。
(1)本願発明の要旨認定
本願の請求項7に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年1月23日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項7】に記載された事項により特定される(【請求項7】の記載は「第1」に摘記したとおりである。)ものと認める。
ただし、工程(c2)の「1ページ分の前記画像データに続いて前記区切りデータが入力された場合には、該区切りデータに続くページの画像データの入力を待って、前記区切りデータの前に入力された前記画像データと前記区切りデータに続くページの画像データとを使用して前記ラスタデータを生成し、」については、1.で述べた記載不備があるため、認定可能な限度で本願発明の進歩性について検討する。

(2)引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-286998号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア〜サの記載が図示とともにある。
ア.「従来より、垂れ幕や横断幕等を作成するために、大きなサイズの紙や布に対して高速で且つ高品質に印刷できる印刷装置が望まれている。この種の印刷装置としては、インクジェット方式の記録ヘッドを走査しながら、ロール紙を搬送することにより印刷を行うものが一般的である。このような構成を有する印刷装置によれば、ロール紙が続く限り、継ぎ目なく長尺サイズの印刷が可能である。」(段落【0002】)
イ.「複数のインクノズルを一列に形成した記録ヘッドを搭載したインクジェット方式の印刷装置によれば、図5に示すように、前記記録ヘッドをページ幅ドット数(用紙幅方向の有効印字長さを、前記記録ヘッドによるドット径で割った値)分だけ左右に走査させた後、ヘッドライン数(前記記録ヘッドの有するノズル数)分ずつ用紙を上方向に搬送することにより印刷を行っている。したがって、1ページあたリ、(ページライン数/ヘッドライン数)で計算される回数にわたって記録ヘッドの走査を行う。このような構成の印刷装置に印刷データが入力されると、用紙を間欠的に搬送しながら、記録ヘッドを走査して1ページ分の印刷データを全て印刷し、1ページ分の印刷が終了したら記録ヘッドを止め、次のページの印刷データの入力を待機し、次のページの印刷データが入力されたら再び印刷を行う一連の処理を繰り返して行っていた。」(段落【0005】)
ウ.「上述した構成を有する従来の印刷装置によれば、1ページ分の印刷データに於ける前記ページライン数が前記ヘッドライン数の整数倍になっている場合は、図7(a)に示すように、複数ページのデータを連結して印字できたが、前記ページライン数が前記ヘッドライン数の整数倍にならない場合は、図7(b)に示すように、隣り合うページデータの印刷の間に隙間が発生する問題があった。」(段落【0006】)
エ.「図7(c)に示すように、1ページ分の印字データのサイズに拘わらず、複数ページの印刷を連結させるためには、1ページ分の印刷が終了したら記録ヘッドを止めて待機し、次のページの印刷データが入力されたら、実際にドット形成が最後に行われた位置まで用紙を逆方向に搬送し、繋ぎ目を合わせてから再び印刷を開始する方法を用いなければならなかったが、用紙を逆方向に搬送するための時間を要することや、繋ぎ目を合わせる機構に高い精度を要求されることから、印刷装置が高価になる問題があった。特に、多色印刷時に、用紙の逆搬送による繋ぎ目部分の色ズレが発生した。」(段落【0007】)
オ.「ページ記述言語等で記述された図形やイメージが分断されないように印刷データを分割することが、印刷時のデータ処理の負担にならず、高速処理のために望ましい。」(段落【0008】)
カ.「外部装置から入力される印刷データを1ページごとに記憶するページデータ記憶手段と、記録素子列を備えた記録ヘッドが用紙面を1回走査して印刷する処理の間に必要とされるサイズのデータを記憶するバンドデータ記憶手段とを備え、前記ページデータ記憶手段に記憶されたデータを順にバンドデータ記憶手段に読み込んで、前記記録ヘッドを走査することにより用紙面上に印刷を行うように構成されたものであって、前記ページデータ記憶手段に於ける一のページデータから前記バンドデータ記憶手段に読み込まれたデータのサイズが、前記バンドデータ記憶手段の容量に満たない場合、前記バンドデータ記憶手段に記憶されたデータのサイズが前記容量に達するまで、前記ページデータ記憶手段に記憶される次のページデータから前記バンドデータ記憶手段に追加してデータ読み込みを行ってから、前記記録ヘッドによる印刷を行うように構成された印刷制御手段を備えた」(段落【0010】)
キ.「ページデータ記憶手段は、外部装置から入力される印刷データを1ページごとに記憶し、バンドデータ記憶手段は、1回の走査で記録ヘッドが処理できるサイズのデータを前記ページデータ記憶手段より読み込み、印刷制御手段は、前記ページデータ記憶手段に於ける一のページデータから前記バンドデータ記憶手段に読み込まれたデータのサイズが、前記バンドデータ記憶手段の容量に満たない場合、前記バンドデータ記憶手段に記憶されたデータのサイズが前記容量に達するまで、前記ページデータ記憶手段に記憶される次のページデータから前記バンドデータ記憶手段に追加してデータ読み込みを行ってから、前記記録ヘッドを制御して印刷を行う。」(段落【0011】)
ク.「判断手段は、前記用紙に対して複数ページ分のデータを連続して印刷させる指示が外部装置から供給されているか否かを判断し、ページデータ記憶手段は、外部装置から入力される印刷データを1ページごとに記憶し、バンドデータ記憶手段は、1回の走査で記録ヘッドが処理できるサイズのデータを前記ページデータ記憶手段より読み込み、印刷制御手段は、前記指示が外部装置から供給されていると前記判断手段が判断した場合であって、且つ前記ページデータ記憶手段に於ける一のページデータから前記バンドデータ記憶手段に読み込まれたデータのサイズが、前記バンドデータ記憶手段の容量に満たない場合、前記バンドデータ記憶手段に記憶されたデータのサイズが前記容量に達するまで、前記ページデータ記憶手段に記憶される次のページデータから前記バンドデータ記憶手段に追加してデータ読み込みを行ってから、前記記録ヘッドを制御して印刷を行う。」(段落【0013】)
ケ.「印刷データを一時記憶し、またワークメモリとして利用されるRAM140」(段落【0018】)
コ.「RAM140には、・・・受信データバッファ141と、・・・生成された印刷イメージを1ページ単位で記憶する、ページデータ記憶手段としてのページメモリ142と、・・・ヘッドのノズル数と前記ページ幅ドット数との積に相当するサイズの印刷データを記憶するための、バンドデータ記憶手段としての印刷ラインデータメモリ143とを備えている。」(段落【0020】)
サ.「印字駆動機構150による用紙上の1回の走査で印刷処理可能なサイズ、すなわち、ヘッドのノズル数と前記ページ幅ドット数との積に相当するサイズの印刷データを記憶するための、バンドデータ記憶手段としての印刷ラインデータメモリ143」(段落【0020】)

(3)引用例記載の発明の認定
引用例の記載クは、記載アのロール紙のような長尺用紙に、記載エ,オのようにデータをページ単位に分割し、記載エのように「ドット形成が最後に行われた位置まで用紙を逆方向に搬送し、繋ぎ目を合わせてから再び印刷を開始する方法を用い」ることなく印刷する際の制御について記載したものである。
印刷に用いる記録ヘッドとしては、記載イのとおり「複数のインクノズルを一列に形成した記録ヘッド」が予定されており、インクノズルの副走査方向(用紙搬送方向)の間隔はページライン間隔と一致しており、記録ヘッドを主走査方向(用紙搬送方向と直交する方向)に走査するとともに、ヘッドライン数(記録ヘッドの有するノズル数)分ずつ用紙を間欠的に搬送することにより記録を行うものである。
したがって、記載クを中心として引用例に記載された印刷制御方法をまとめれば、次のような制御方法と認めることができる。
「複数のインクノズルを副走査方向に一列に形成した記録ヘッドを用い、記録ヘッドを主走査方向に走査するとともに、ヘッドライン数(記録ヘッドの有するノズル数)分ずつ用紙を間欠的に搬送することにより記録を行う印刷制御方法であって、
データをページ単位に分割して外部装置から入力される印刷データを1ページごとにページデータ記憶手段に記憶し、
用紙に対して複数ページ分のデータを連続して印刷させる指示が外部装置から供給されているか否かを判断し、
前記指示が外部装置から供給されていると前記判断手段が判断した場合には、1回の走査で記録ヘッドが処理できるサイズのデータを前記ページデータ記憶手段より読み込み、前記ページデータ記憶手段に於ける一のページデータからバンドデータ記憶手段に読み込まれたデータのサイズが、前記バンドデータ記憶手段の容量に満たない場合、前記バンドデータ記憶手段に記憶されたデータのサイズが前記容量に達するまで、前記ページデータ記憶手段に記憶される次のページデータから前記バンドデータ記憶手段に追加してデータ読み込みを行ってから、前記記録ヘッドを制御して印刷を行う印刷制御方法。」(以下「引用発明」という。)

(4)本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
引用発明の「インクノズル」、「副走査方向に一列に形成」、「記録ヘッド」及び「用紙」は、本願発明の「ドット形成要素」、「副走査方向に所定の間隔で複数配列」、「ヘッド」及び「印刷媒体」にそれぞれ相当する(ただし、後記相違点1で述べるように「所定の間隔」の値自体は異なる。)。引用発明において「記録ヘッドを主走査方向に走査するとともに、ヘッドライン数(記録ヘッドの有するノズル数)分ずつ用紙を間欠的に搬送することにより記録を行う」ことと、本願発明において「主走査と副走査とを繰り返し実行して印刷媒体上に画像を印刷する」ことに相違はない。引用発明のデータはページ単位に分割されているから、「複数ページに亘って入力され」るデータであり、引用発明も「印刷部により該副走査方向に配列された複数ページに亘って入力された画像を印刷するためのデータを生成し、該データを前記印刷部に供給することによって印刷を制御する印刷制御方法」であるといえる。
引用発明の「用紙に対して複数ページ分のデータを連続して印刷させる指示」と本願発明の「各ページ間に余白を設けない長尺印刷の実行指示」に相違はなく、引用発明の「判断手段」は同指示の有無を判断するものであるから、引用発明は「(b) 各ページ間に余白を設けない長尺印刷の実行指示を入力する工程」を備え、引用発明の「前記指示が外部装置から供給されていると前記判断手段が判断した場合」と本願発明の「長尺印刷が指示されたとき」に相違はない。
引用発明では、「バンドデータ記憶手段に記憶されたデータ」がそのまま印刷部に供給されることは明らかであるから、同データが本願発明の「主走査中における前記ヘッドによるドットの形成状態を特定するラスタデータ」に相当する。そうすると、ラスタデータ生成の元となるデータは、引用発明では「ページデータ記憶手段」から読み出されたデータであり、本願発明では「画像の画像データ」であるから、これらデータが相当関係にある。したがって、引用発明は「印刷部に供給する印刷データを生成する工程」及び「主走査中におけるヘッドによるドットの形成状態を特定するラスタデータを画像データに基づいて生成する工程」を備える。
引用発明は、「用紙に対して複数ページ分のデータを連続して印刷させる指示が外部装置から供給されているか否かを判断」しており、同指示が供給されない場合と、された場合では用紙の送り量は異なる(ページ途中では異ならないが、上下端近傍で異なる。)。引用発明の「ヘッドライン数(記録ヘッドの有するノズル数)分」は本願発明の「一定周期の送り量」に相当し、引用発明において「ヘッドライン数(記録ヘッドの有するノズル数)分ずつ用紙を間欠的に搬送」は、「用紙に対して複数ページ分のデータを連続して印刷させる指示」がされた場合に、「各ページ毎に画像が完結するか否かに関わらず」実行されるのに対し、上記指示がない場合には、ページの上下端近傍ではヘッドライン数(記録ヘッドの有するノズル数)分ずつ用紙を搬送するわけではない。したがって、引用発明は「長尺印刷が指示されたときに、前記各ページ毎に画像が完結するか否かに関わらず一定周期の送り量で前記副走査が繰り返される送りデータを生成する工程」を備える。
引用発明において「前記ページデータ記憶手段に於ける一のページデータからバンドデータ記憶手段に読み込まれたデータのサイズが、前記バンドデータ記憶手段の容量に満たない場合、前記バンドデータ記憶手段に記憶されたデータのサイズが前記容量に達するまで、前記ページデータ記憶手段に記憶される次のページデータから前記バンドデータ記憶手段に追加」することと、本願発明において「1ページ分の前記画像データに続いて前記区切りデータが入力された場合には、該区切りデータに続くページの画像データの入力を待って、前記区切りデータの前に入力された前記画像データと前記区切りデータに続くページの画像データとを使用して前記ラスタデータを生成」することとは、ドット形成要素が2ページにまたがって位置する場合に、1ページ分の画像データとそれに続くページの画像データとを使用してラスタデータを生成する点で一致する。
引用例に明記はないものの、引用発明においても画像の終端は当然存在し、終端が所属するページに続くページは存在しないから、終端が所属するページの画像データ(本願発明の「終端データが入力された場合」の「1ページ分の画像データ」に相当する。)を使用してラスタデータを生成するものと認める。当然「更なる画像データの入力を待つ」ことなどしないものと認める。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「ドット形成要素が副走査方向に所定の間隔で複数配列されたヘッドを備え主走査と副走査とを繰り返し実行して印刷媒体上に画像を印刷する印刷部により該副走査方向に配列された複数ページに亘って入力された画像を印刷するためのデータを生成し、該データを前記印刷部に供給することによって印刷を制御する印刷制御方法であって、
(b) 各ページ間に余白を設けない長尺印刷の実行指示を入力する工程と、
(c) 前記印刷部に供給する印刷データを生成する工程とを備え、
該工程(c)は、
(c1) 長尺印刷が指示されたときに、前記各ページ毎に画像が完結するか否かに関わらず一定周期の送り量で前記副走査が繰り返される送りデータを生成する工程と、
(c2) 前記主走査中における前記ヘッドによるドットの形成状態を特定するラスタデータを前記画像データに基づいて生成する工程とを備え、
該工程(c2)は、
前記ドット形成要素が2ページにまたがって位置する場合に、1ページ分の前記画像データとそれに続くページの前記画像データとを使用して前記ラスタデータを生成し、
1ページ分の前記画像データが最終ページの画像データである場合には、更なる画像データの入力を待つことなく、前記1ページ分の画像データを使用して前記ラスタデータを生成する工程である印刷制御方法。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉本願発明が「インタレース方式による記録を実現する」のに対し、引用発明はインタレース方式を採用していない点。この相違点に伴い、ドット形成要素の所定の間隔についても、引用発明が1ラスタ間隔であるのに対し、本願発明が複数ラスタ間隔であることも実質的には相違点となる。ただし、「一定周期の送り量」については、インタレース方式であろうとなかろうと、1ラスタ間隔にドット形成要素数を乗じた送り量であるから、付随する相違点にはならない。
〈相違点2〉本願発明が「(a) 前記画像の画像データと、前記ページの区切りを指定する区切りデータと、前記画像データの終端を示す終端データとの入力を逐次受け付ける工程」を備えるのに対し、引用発明が同工程を備えるかどうか明らかでない点。
〈相違点3〉「ドット形成要素が2ページにまたがって位置する場合に、1ページ分の画像データとそれに続くページの画像データとを使用して前記ラスタデータを生成」するに当たり、本願発明では「1ページ分の前記画像データに続いて前記区切りデータが入力された場合には、該区切りデータに続くページの画像データの入力を待って、前記区切りデータの前に入力された前記画像データと前記区切りデータに続くページの画像データとを使用して前記ラスタデータを生成」(ただし、この構成が不明確であることは、1.で述べたとおりである。)するのに対し、引用発明では「ページデータ記憶手段に於ける一のページデータからバンドデータ記憶手段に読み込まれたデータのサイズが、前記バンドデータ記憶手段の容量に満たない場合、前記バンドデータ記憶手段に記憶されたデータのサイズが前記容量に達するまで、前記ページデータ記憶手段に記憶される次のページデータから前記バンドデータ記憶手段に追加」する点。
〈相違点4〉「1ページ分の前記画像データが最終ページの画像データである場合」との判断を行うために、本願発明では「1ページ分の前記画像データに続いて前記終端データが入力された場合」としているのに対し、引用発明ではいかにして最終ページの画像データと判断するのか不明である点。

(5)相違点についての判断
〈相違点1について〉
本願明細書に「インクジェットプリンタでは、印刷速度を向上するために、副走査方向に多数のノズルが配列されたヘッドを用いることが通常である。かかるヘッドを用いたプリンタにおいて、画質を向上させる記録方式の一つとして、「インタレース方式」と呼ばれる技術がある。」(段落【0004】及び「図16は、インタレース方式の一例を示す説明図である。図16の例では、2ドットのピッチで3個のノズルを用いた例を示した。この例では、1回目の主走査において、2番ノズル、3番ノズルにより各ラスタのドットを形成する。1番ノズルではドットを形成しない。次に、3ラスタ分の紙送りを行った後、2回目の主走査を行いつつ、1番ノズルから3番ノズルまでを用いて各ラスタを形成する。以後、同様に3ラスタ分の紙送りと、主走査によるラスタの形成とを繰り返し実行することにより、画像を記録する。」(段落【0005】)との各記載があるとおり、インタレース方式が公知又は周知であることは請求人も自認するところである。実際、特開平10-129040号公報の【図6】にドット形成要素数を127、その配列ピッチを3ラインとして127ラインずつ一定量送りすることが、同じく【図7】にはドット形成要素数を128、その配列ピッチを3ラインとして128ラインずつ一定量送りすることが記載されており、同文献に従来技術として紹介のある特公平3-56186号公報及び特開平7-242025号公報にもインタレース方式の記載があるから、インタレース方式は周知と認める。
そして、本願明細書の上記記載にあるように、インタレース方式は画質を向上させる記録方式の一つである以上、引用発明においてこれを採用することを妨げる特段の理由がない限り、インタレース方式の採用は設計事項である。
そこで、上記特段の理由の有無について検討する。インタレース方式では、ドット形成要素間隔が複数ラスタ分である(相違点1で述べた「ドット形成要素の所定の間隔」は、インタレース方式採用により、自動的に充足される。)ため、ページ終端付近で必ずドット形成要素が2ページにまたがって位置することになる。これ以外に、インタレース方式採用を躊躇させる要因はない。しかし、引用発明は、ページ終端付近でドット形成要素が2ページにまたがって位置しても、次のページデータからバンドデータ記憶手段に追加することにより、一定送り量で用紙を送ることを可能とした発明であるから、インタレース方式を採用した場合であっても、バンドデータ記憶手段にデータを完全に埋めるまで、必要に応じて次のページデータを使用すればすむことであり、インタレース方式採用の阻害要因にならないことは明らかである。もちろん、インタレース方式不採用の引用発明では、バンドデータ記憶手段にはページデータ記憶手段から、ライン順に読み出したデータを記憶すればよいのに対し、インタレース方式採用の場合には、とびとびのラインのデータを記憶せねばならないという、若干の変更は余儀なくされるけれども、その程度のことは当業者であれば難なく克服できることがらである。
したがって、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは設計事項というべきである。

〈相違点2について〉
本願発明の「画像データ」に相当する引用発明のデータは、ページデータ記憶手段から読み出されたデータであるから、ページデータ記憶手段に記憶し読み出す(読み出すことは、本願発明でいう「入力を受け付ける」に相当し、逐次であることは当然である。)際に、最終ページの最後に終端データを付し、最終以外のページの最後に区切りデータを付すことが、当業者にとって想到容易かどうかを検討すればよい。
まず、終端データについて検討する。引用発明においても、最終ページ印刷時には、最終ページの画像データのみを使用すること、最終以外のページであれば、ページ終端付近で当該ページと次ページの画像データが必要となることは既に述べたとおりである。ところで、一般に、複数ページにわたる画像を印刷する場合には、印刷データ(ページデータ記憶手段に記憶するデータの趣旨ではない。)の最終部分にその旨のデータ(本願発明の「終端データ」に相当する。)を付加し、最終ページ以外のページの最後にはページ終了データ(本願発明の「区切りデータ」に相当する。)を付加することは例をあげるまでもなく周知である。引用発明においても、最終データかどうかの判断(これは最終ページかどうかの判断でもある。)をしなければならないのだから、その判断材料として、上記周知技術同様に、最終ページの最終データに続けて終端データを付与し、これを読み出すことは設計事項というべきである。
引用発明において、最終以外のページについて必要とされることは、最終以外のページであることの判断、及び当該ページの最終データがどれであるかの判断である。前者については、最終ページかどうかの判断が、終端データの有無によってなされるとすれば、最終以外のページの最後に区切りデータを付す必要は必ずしもないかもしれない。後者については、引用発明の「ページデータ記憶手段」が独立したメモリとして構成されており、その容量が1ページ分の画像データに一致しておれば、そのメモリの最終データが当該ページの最終データになるから、区切りデータは不要かもしれない。
しかし、引用発明の「ページデータ記憶手段」を、容量が1ページ分の画像データに一致した独立したメモリであると限定的に解釈しなければならない理由はないし、引用例の記載ケ,コ及び【図1】からは、ワークメモリであるRAM140の領域であってもよいと解される。その場合であっても、1ページ分の画像データのドット数やライン数は定まっていると解されるから、ページデータ記憶手段から読み出した総ドット数又は総ライン数に基づいて、当該ページの最終データの判断をすることが不可能とはいえない。しかしながら、上記周知技術を考慮すれば、引用発明の画像データに対しても、上記周知技術における「印刷データ」と同様に、最終以外のページの最終データであることを判断するために、区切りデータを付加し、それを読み出すことは当業者にとって想到容易というべきである。
すなわち、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

〈相違点3について〉
相違点3に係る本願発明の構成が著しく不明確であることは、1.で述べたとおりであるが、「区切りデータ」が1ページ分の画像データと次ページ分の画像データの境界を示すデータであり(最終ページでないことを示すデータであることを含む。)、次ページの画像データを使用してラスタデータを生成するかどうかの判断基準に用いられるとの限度で、同構成を認定できる。
引用発明では「ページデータ記憶手段に於ける一のページデータからバンドデータ記憶手段に読み込まれたデータのサイズが、前記バンドデータ記憶手段の容量に満たない場合」に「ページデータ記憶手段に記憶される次のページデータから前記バンドデータ記憶手段に追加」するのであるが、「一のページデータ」の最終データであることを認識し、同データをバンドデータ記憶手段に読み込んでこそ、満ちるか満たないかの判断ができる。そして、「区切りデータ」を受け付けることの容易性については上記説示のとおりであるから、上記認識を行うに当たり「区切りデータ」を判断基準に用いることは設計事項というべきである。
請求人は、「ページデータは1ページ単位でページメモリ142に読み込まれ(図2参照)、順次、印刷ラインデータメモリ143に読み込まれて(図3参照)、印刷が実行されます。ページメモリ142に未印刷として残存するデータのライン数(図3におけるPCOUNT)が、印刷ラインデータメモリ143に読み込むべきライン数(RCOUNT)よりも小さくなった場合には、印刷を行わずに次ページのデータをページメモリ142に読み込みます(図3のステップS304,S305,S310,S311)。印刷を行わずに次ページを読み込むか否かの判断基準として引例に開示されているのは、上述の内容のみです。」(平成15年4月30日手続補正書(方式)2頁8〜17行)及び「インタレースを行う場合は、・・・記録ヘッドがページをまたぐ状態になった時、必ずしもPCOUNTがRCOUNTよりも小さくなるとは限りません。」(同書2頁19〜22行)と主張している。引用発明がインタレース方式を採用していないこと、及びインタレース方式であればPCOUNT(ページメモリに未印刷として残存するデータのライン数)がRCOUNT(ラインデータメモリに読み込むべきライン数)よりも小さくなるとは限らないことは請求人主張のとおりである。しかし、インタレース方式不採用の判断基準(PCOUNTとRCOUNTの比較)がインタレース方式採用の場合にそのまま適用できないことはあまりにも当然であり、当業者であれば適宜変更することは当然であって、カウント数の比較という引用例記載の手段がインタレースに採用できるかどうかが問われることになる。本願【図11】に従いドット形成要素数が4でドット形成要素間隔が3ラインの場合を例にとると、最先端ドット形成要素(【図11】の4番ノズル)が現在ページの最終ラインに位置する際の未印刷ライン数を勘定すれば7ラインであるから、PCOUNT(未印刷データライン数)が7未満(6以下)となるときに、記録ヘッドがページをまたぐ状態となる。あるいは、前回走査時に最先端ドット形成要素に割り当てられたラスタ番号が下から4番以降であれば、記録ヘッドがページをまたぐ状態となるから、これを判断基準としてもよい。このように、インタレース方式を採用したからといって、引用発明の判断基準を大幅に変更しなければならない理由はなく、他方「区切りデータ」を判断基準とすることが、現在ページの最終データかどうかの認識以上の何かである(それが何であるかは不明であるが)としても、作用効果において引用発明の判断基準を上回ると認めることはできないから、「区切りデータ」を判断基準とすることは設計事項というべきである。
以上のとおり、相違点2に係る本願発明の構成を採用することを前提とした場合に、相違点3に係る本願発明の構成を採用することは設計事項であるから、相違点3を独立に判断した場合には、当業者にとって想到容易である。

〈相違点4について〉
終端データを受け付ける(終端データが入力される)ことが設計事項であることは既に述べたとおりである。そうである以上、「1ページ分の前記画像データに続いて前記終端データが入力された場合」を「1ページ分の前記画像データが最終ページの画像データである場合」とすることは設計事項にすぎない。
したがって、相違点4に係る本願発明の構成を採用することは設計事項である。

(6)本願発明の進歩性の判断
相違点1〜4に係る本願発明の構成をなすことは、設計事項であるか当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願明細書及び図面の記載は平成14年改正前特許法36条4項及び6項に規定する要件を満たしておらず、本願発明が特許法29条2項の規定により特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-14 
結審通知日 2006-02-21 
審決日 2006-03-07 
出願番号 特願平11-295082
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (B41J)
P 1 8・ 121- WZ (B41J)
P 1 8・ 536- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 湯本 照基  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 藤井 勲
藤本 義仁
発明の名称 長尺印刷を行うための印刷システム  
代理人 特許業務法人明成国際特許事務所  
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