ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 特174条1項 B05D |
---|---|
管理番号 | 1136193 |
異議申立番号 | 異議2003-72365 |
総通号数 | 78 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-09-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-09-24 |
確定日 | 2006-02-15 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3389360号「光干渉材及びそれを含有する塗料」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3389360号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第3389360号は、平成7年1月17日(優先権主張 平成6年1月18日)の出願であって、平成15年1月17日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対して特許異議申立人 増田昭雄、及び特許異議申立人 鈴木福二から特許異議の申立てがなされ、平成17年3月30日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年6月6日に、特許異議意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年9月14日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年11月22日に訂正請求書の手続補正書及び意見書が提出されたものである。 II.訂正の適否についての判断 1.訂正請求に対する補正の適否について 当該訂正請求に対する補正は、訂正請求書第3頁18行〜第4頁9行記載の(3)訂正の要旨の5)訂正事項e及び6)訂正事項f(決定注:丸付き数字5、6を、それぞれ、5)、6)として記載した。以下同様。)、並びに訂正請求書第6頁20行〜第9頁5行記載の(4)請求の原因の5)及び6)の項を削除するものであり、訂正請求書の要旨を変更するものでなく、特許法第131条第2項の規定に適合するので、これを認める。 2.訂正の内容 本件訂正は、平成17年11月22日付け手続補正書によって補正された、平成17年6月6日付け訂正請求書の記載からみて、以下の訂正事項からなるものと認める。 訂正事項a:特許請求の範囲の請求項1の記載を次のように訂正する。 「基材に高屈折率材層と低屈折率材層とを交互に積層して、各々の膜厚dを、 d=〔(2m+1)λ〕/4n(ただし、λ:光の波長、n:屈折率材層の屈折率、m:0,1,2,3…)の式を満足するような設定干渉光の略1/4波長の奇数倍の光学的厚さとなし、m=0とする奇数倍1の膜厚は高屈折率材層と低屈折率材層とのいずれか一方だけとし、 上記基材は、この直上に高屈折率材層が積層されているときには、低屈折率材によって形成され、直上に低屈折率材層が積層されているときには、高屈折率材によって形成されたものである、 ことを特徴とする光干渉材。」 訂正事項b:特許請求の範囲の請求項2の記載を次のように訂正する。 「請求項1に記載の光干渉材において、基材及びこの直上の屈折率材層間の界面と、交互に積層される高屈折率材層及び低屈折率材層の各界面と、空気及び最表面の屈折率材層間の界面との界面トータルでの光線反射率が90%以上であることを特徴とする光干渉材。」 訂正事項c:特許明細書段落【0010】の記載「上記基材は、その屈折率が、この直上に積層される屈折率材層の屈折率とは高低が反対のものである構成とした」を、「上記基材は、この直上に高屈折率材層が積層されているときには、低屈折率材によって形成され、直上に低屈折率材層が積層されているときには、高屈折率材によって形成されたものである構成とした」と訂正する。 訂正事項d:特許明細書段落【0011】の記載「好ましくはトータルの反射率が90%以上の干渉発色材とする」を、「好ましくは、基材及びこの直上の屈折率材層間の界面と、交互に積層される高屈折率材層及び低屈折率材層の各界面と、空気及び最表面の屈折率材層間の界面との界面トータルでの光線反射率が90%以上の干渉発色材とする」と訂正する。 3.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 3-1.訂正事項aについて 訂正事項aは、訂正前の請求項1の記載「上記基材は、その屈折率が、この直上に積層される屈折率材層の屈折率とは高低が反対のものである」において、「高低が反対」という表現が不明りょうなものであったところ、これを明りょうにする訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであって、訂正前の上記記載は、願書に添付した明細書段落【0047】の記載「上記実施例では、ガラスフレーク(屈折率n=1.5)から成る基材1上に高屈折率材層2として二酸化チタンTiO2 (屈折率n=2.7)を、低屈折率材層3としてシリカSiO2 (屈折率n=1.5)を順次積層したが、他の公知の材料を使用することもできる。」から、基材の屈折率が、この直上に積層される層が高屈折率材層の場合には低屈折率であり、この直上に積層される層が低屈折率材層の場合には高屈折率であるという意であることが読み取れるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3-2.訂正事項bについて 訂正事項bは、訂正前の請求項2の記載「トータルの反射率が90%以上である」において、「トータルの反射率」の意味が明確でなく、上記記載が不明りょうなものであったところ、「基材及びこの直上の屈折率材層間の界面と、交互に積層される高屈折率材層及び低屈折率材層の各界面と、空気及び最表面の屈折率材層間の界面との界面トータルでの光線反射率」と明確なものに訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであって、訂正前の明細書の段落【0018】〜【0020】には、「干渉発色材としての形態から説明するに、請求項1,2においては、例えば図2に示す5層の場合、1)入射光のうち基材1及びその直上の高屈折率層2間の界面で反射する光aと、低屈折率材層3及び高屈折率材層2との界面で反射する光bとの干渉作用や、2)高屈折率材層2及び低屈折率材層3間の界面で反射する光cと、低屈折率材層3及び高屈折率材層2間の界面で反射する光dとの干渉作用や、3)高屈折率材層2及び低屈折率材層3間の界面で反射する光eと、空気及び高屈折率材層2間の界面で反射する光fとの干渉作用が生ずる。 即ち、従来の二酸化チタン一層の場合には光線反射率が43%以下となっていたため、見た目の色が非常に薄くなっていたが、上記積層構造により、トータルの光線反射率を簡単な構成により有効に高めることができ、結果、濃い干渉光を発色できる。また、二酸化チタンの膜厚が1/4波長の奇数倍になっているため、狙った色以外の光が混ざらない鮮やかな発色が得られる。 特に請求項2では反射率が90%以上であるので、顕著な効果が得られる。」と「トータルの反射率」について記載されているから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3-3.訂正事項c、dについて 訂正事項c、dは、上記訂正事項a、bにより訂正された請求項1、2の記載と、特許明細書段落【0010】、【0011】の記載の整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであって、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 4.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 III.特許異議の申立てについての判断 1.通知された取消理由の概略 平成17年3月30日付けの取消理由通知書に示された取消理由[1]及び[2]は、概略、以下のとおりである。 『[1]本件特許は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 [2]本件特許は、特許法第17条第2項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。 記 [1]特許法第36条第5項及び第6項違反について ・・・・ [2]特許法第17条第2項違反について 平成14年9月17日付け手続補正書による補正で、請求項1において、「m=0とする奇数倍1の膜厚は高屈折率材層と低屈折率材層とのいずれか一方だけとし、」という記載が追加された。 願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、上記記載についての直接的な記載はない。 ・・・・ したがって、上記補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものではない。』 2.当審の判断 以下、平成17年3月30日付けで通知された上記取消理由[2]について、判断する。 特許権者は、上記取消理由[2]に対して、平成17年6月6日付け特許異議意見書及び同年11月22日付け意見書において、本件願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の段落【0052】〜【0054】、【0056】、【0057】及び図10の記載を根拠にして、上記取消理由[2]は妥当でない旨を主張しているものと認められ、当初明細書等の上記記載を考慮して検討する。 2-1.本件当初明細書等の記載 「【0052】 ところで、上記実施例では、交互に積層される高屈折率材層と低屈折率材層の各々を設定干渉光の略1/4波長としたが、かかる膜厚は非常に薄いため実際上の製造に困難を伴うことがある。例えば、湿式法の場合、一度のコーティングで付く膜厚が1/4波長を越えることが多く、膜厚が合わせ難い。」 「【0053】 そこで、図9に示すように、交互に積層される高屈折率材層2と低屈折率材層3の各々の膜厚dを、次式を満足するような略1/4波長膜の奇数倍(設定干渉発色光の略1/4波長の光学的厚さの奇数倍)とする。」 「【0054】 d=〔(2m+1)λ〕/4n …(2) ただし、λ:光の波長 n:屈折率材層の屈折率 m:0,1,2,3… これによれば、各屈折率材層の膜厚dが1/(4n)波長の奇数倍(設定干渉発色光の略1/4波長の光学的厚さの奇数倍)であれば良い、という緩やかな条件になるので、その膜厚を合わせ易くなり、製造が容易となるという利点がある。ただしm=0とした場合は、上記の全てを略1/4波長膜とした場合と同じ結果に帰する。なお、図9では屈折率が上から順に小、大、小の場合について示しているが、屈折率が上から順に大、小、小の場合であっても結果は同じである。」 「【0056】 例えば図10に示すように、高屈折率材層2と低屈折率材層3とを交互に積層した場合において、それらの積層膜厚dを、上から順にd1=λ/( 4n1)(m=0),d2=3λ/( 4n2)(m=1),d3=7λ/( 4n1)(m=3),d4=5λ/( 4n2)(m=2)というように変えることができる。」、及び本発明の光干渉材の構成例を示す断面図である図10 「【0057】 しかし、交互に積層される高屈折率材層2と低屈折率材層3の一方のみ、上記膜厚dの(2)式を満足させてもよい。この場合、高屈折率材層と低屈折率材層のどちらを1/(4n)波長の奇数倍という条件に合致させるかについては全く自由であるが、製造上、その膜厚の整合は湿式法よりも乾式法による方が容易であり、また乾式法は一般に高屈折率材のものを扱うので、高屈折率材層の側で膜厚を整合させるとよい。ただし乾式法であれば膜厚を合わせ易いことから、低屈折率材層の方で合わせるようにしても良い。いずれにしても、湿式又は乾式によるコーティングの膜厚コントロールのし易さに差がある場合、そのコーティングの膜厚コントロールの容易な方の屈折率材を調整対象とすることにより、膜厚が合わせ易くなる。」 2-2.平成14年9月17日付け補正により追加された、請求項1における記載「m=0とする奇数倍1の膜厚は高屈折率材層と低屈折率材層とのいずれか一方だけとし、」について 上記取消理由[2]で述べたように、当初明細書等には、記載「m=0とする奇数倍1の膜厚は高屈折率材層と低屈折率材層とのいずれか一方だけと」することについての直接的な記載はない。 段落【0052】〜【0054】の記載からは、膜厚を設定干渉光の略1/4波長とすることは製造上困難な場合があるので、膜厚を設定干渉光の略1/4波長の奇数倍とすることは読み取れるものの、「m=0とする奇数倍1の膜厚は高屈折率材層と低屈折率材層とのいずれか一方だけと」することは読み取れない。 また、段落【0056】及び図10には、「必ずしも高屈折率材層2と低屈折率材層3の一方又は全てが同じ膜厚、即ちmが同じである必要はない(ただし、m=整数とする)」(段落【0055】)という具体例について記載されており、具体的には上からm=0(高屈折率材層)、m=1(低屈折率材層)、m=3(高)、m=2(低)とすることが記載されているが、これらの記載から「m=0とする奇数倍1の膜厚は高屈折率材層と低屈折率材層とのいずれか一方だけと」することを導き出すことは到底できない。 段落【0057】には、「交互に積層される高屈折率材層2と低屈折率材層3の一方のみ、上記膜厚dの(2)式を満足させてもよい。この場合、高屈折率材層と低屈折率材層のどちらを1/(4n)波長の奇数倍という条件に合致させるかについては全く自由である」と記載され、この記載からは、高屈折率材層2と低屈折率材層3の一方のみを段落【0054】の膜厚dの(2)式(m=0を含む)を満足させ、もう一方は(2)式を満足しないようにしてもよいということが、読み取れるものの、やはり「m=0とする奇数倍1の膜厚は高屈折率材層と低屈折率材層とのいずれか一方だけと」することを導き出すことはできない。 したがって、平成14年9月17日付け手続補正書による補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものではない。 3.まとめ 以上のとおりであるから、本件請求項1〜6に係る特許は、特許法第17条第2項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであり、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 光干渉材及びそれを含有する塗料 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】基材に高屈折率材層と低屈折率材層とを交互に積層して、各々の膜厚dを、 d=〔(2m+1)λ〕/4n(ただし、λ:光の波長、n:屈折率材層の屈折率、m:0,1,2,3…)の式を満足するような設定干渉光の略1/4波長の奇数倍の光学的厚さとなし、m=0とする奇数倍1の膜厚は高屈折率材層と低屈折率材層とのいずれか一方だけとし、 上記基材は、この直上に高屈折率材層が積層されているときには、低屈折率材によって形成され、直上に低屈折率材層が積層されているときには、高屈折率材によって形成されたものである、 ことを特徴とする光干渉材。 【請求項2】請求項1に記載の光干渉材において、基材及びこの直上の屈折率材層間の界面と、交互に積層される高屈折率材層及び低屈折率材層の各界面と、空気及び最表面の屈折率材層間の界面との界面トータルでの光線反射率が90%以上であることを特徴とする光干渉材。 【請求項3】請求項1または2に記載の光干渉材において、設定干渉光が赤外線であり、該赤外線を反射するものであることを特徴とする光干渉材。 【請求項4】請求項1に記載の光干渉材をベース塗料樹脂中に混ぜたことを特徴とする塗料。 【請求項5】請求項2に記載の光干渉材をベース塗料樹脂中に混ぜたことを特徴とする塗料。 【請求項6】請求項3に記載の光干渉材をベース塗料樹脂中に混ぜたことを特徴とする塗料。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、干渉発色材や熱線反射材として作用する光干渉材及びそれを含有する塗料に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 最近、塗装外観の意匠性の多様化の要求に応じて、ベース塗料中に、微薄片状のアルミニウム片(アルミフレーク)と比較的透明性の高い顔料とを含めるメタリック塗装や、ベース塗料中に、微薄片状の雲母(マイカフレーク)に二酸化チタン(TiO2)をコーティングした干渉マイカフレークと比較的透明性の高い顔料とを含めるパールマイカ塗装が多用されて来ている。 【0003】 後者のパールマイカ塗装においてベース塗料中に含められる干渉マイカフレークは、図13に示すように、微薄片状の雲母から成るマイカフレーク20(屈折率n=1.5〜2.0)の表面に、屈折率が少し高い二酸化チタン膜21(屈折率n=2.7)を、狙いの色の波長の1/4の膜厚(4分の1波長膜)でコーティングしたものである。図14に示すように、酸化チタン層とマイカとの界面からの反射光22と、コーティングされた酸化チタン層表面からの反射光23との干渉により、ある波長だけを強調させて干渉発色させるものであり、光の干渉を利用する発色材として注目される。 【0004】 現在自動車用に使用されている顔料を配合したマイカベース塗料については、例えば特開昭63-319087号公報に指摘がある。 【0005】 また、特開昭5-8342号公報には、マイカフレークの表面に二酸化チタンを均一に被覆させ、これを一度還元して二酸化チタンの一部を黒色の低次酸化チタンとした後、再度その表面に二酸化チタンを再被覆して得た干渉マイカフレーク、及びこれを透明樹脂中に分散させて意匠性を高めたプラスチックシートについての開示がある。 【0006】 これらの干渉マイカフレークは、例えば黒色の低次酸化チタンと二酸化チタンの膜厚を調整することによって、理論上無限の色いわゆるインフィニットカラーを作り出すことができることから、光の干渉を利用する発色材として注目される。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、従来の干渉マイカフレークは、いろんな色相の発色が可能なものの、発色それ自体は非常に色が薄いものである。即ち、二酸化チタンが一層のため、光線反射率が43%以下となり、見た目の色が薄く、発色材であるとは称し難いものとなる。 【0008】 そこで、干渉マイカフレーク単一だけでは色が出ないという欠点を補うため、実際には、他に顔料を混ぜて使用しているのが現状である。このため、狙った色以外の光が混ざり鮮やかに見えないことにもなっていた。 【0009】 本発明の目的は、上記課題を解決し、顔料を使わずに単体だけで発色材と称するに値する強さで鮮やかに発色ができ又は熱線が反射できる光干渉材及びそれを含有する塗料を提供することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するため、本発明の光干渉材は、基材に高屈折率材層と低屈折率材層とを交互に積層して、各々の膜厚dを、d=〔(2m+1)λ〕/4n(ただし、λ:光の波長、n:屈折率材層の屈折率、m:0,1,2,3…)の式を満足するような設定干渉光の略1/4波長の奇数倍の光学的厚さとなし、m=0とする奇数倍1の膜厚は高屈折率材層と低屈折率材層とのいずれか一方だけとし、上記基材は、この直上に高屈折率材層が積層されているときには、低屈折率材によって形成され、直上に低屈折率材層が積層されているときには、高屈折率材によって形成されたものである構成とした(請求項1)。 【0011】 また、これらの光干渉材において、好ましくは、基材及びこの直上の屈折率材層間の界面と、交互に積層される高屈折率材層及び低屈折率材層の各界面と、空気及び最表面の屈折率材層間の界面との界面トータルでの光線反射率が90%以上の干渉発色材とする(請求項2)。 【0012】 請求項1または2に記載の光干渉材において、設定干渉光が赤外線であり、該赤外線を反射するものとする(請求項3)。 【0013】 一方、本発明の塗料は、請求項1に記載の光干渉材を、つまり基材に高屈折率材層と低屈折率材層とを交互に、各々、設定干渉光の略1/4波長の奇数倍の光学的厚さで積層したものを、ベース塗料樹脂中に混ぜた構成のものである(請求項4)。 【0014】 請求項2に記載の光干渉材又は請求項3に記載の光干渉材をベース塗料樹脂中に混ぜて塗料とすることもできる(請求項5,6)。 【0015】 【作用】 図12に示すように、高屈折率材層(屈折率n1)と低屈折率材層(屈折率n2)とが交互に、密、疎、密、疎で積層されている場合、光が密から疎に行くときに反射する光a,cについては光の位相は変化しないが、疎から密に行くときに反射する光bについては光の位相が半波長変化する。そこで、これらの位相を揃えてやれば、例えばaとbの光は干渉する。ここで、aとbの光の位相のずれを考えるに、屈折率n2の低屈折率材層の厚さをxとすると、bの光学的距離については2x・n2となるが、光bは反射した際に位相が半波長変化しているので、実際には(2x+(1/2)λ)・n2になる。一方、aの光部分は位相が変化していないので、bの光は、 (2x+(1/2)λ)・n2=mλ(m=1,2,3…) のとき、aの光と強め合う。これをxについて解くと、 x=(2m-1)λ/(4n2)(m=1,2,3…) となり、bの光は、低屈折率材層(屈折率n2)がλ/(4n2)の奇数倍の厚さのときに光aと強め合う。 【0016】 本発明は、このような原理を応用したものである。 【0017】 請求項1は、設定干渉光が可視光であって、光干渉材が干渉発色材として得られる場合と、設定干渉光が熱線(赤外線)であって熱線反射材として得られる場合の2つの形態を含んでいる。 【0018】 干渉発色材としての形態から説明するに、請求項1,2においては、例えば図2に示す5層の場合、▲1▼入射光のうち基材1及びその直上の高屈折率層2間の界面で反射する光aと、低屈折率材層3及び高屈折率材層2との界面で反射する光bとの干渉作用や、▲2▼高屈折率材層2及び低屈折率材層3間の界面で反射する光cと、低屈折率材層3及び高屈折率材層2間の界面で反射する光dとの干渉作用や、▲3▼高屈折率材層2及び低屈折率材層3間の界面で反射する光eと、空気及び高屈折率材層2間の界面で反射する光fとの干渉作用が生ずる。 【0019】 即ち、従来の二酸化チタン一層の場合には光線反射率が43%以下となっていたため、見た目の色が非常に薄くなっていたが、上記積層構造により、トータルの光線反射率を簡単な構成により有効に高めることができ、結果、濃い干渉光を発色できる。また、二酸化チタンの膜厚が1/4波長の奇数倍になっているため、狙った色以外の光が混ざらない鮮やかな発色が得られる。 【0020】 特に請求項2では反射率が90%以上であるので、顕著な効果が得られる。 【0021】 請求項4,5,6の塗料は、上記のような発色材を混入させたものである。光干渉材それ自体は透明であるが、屈折率材の積層によってある波長の色だけを十分に色濃く干渉発色させ得るものであるため、顔料なしで所望の塗料を得ることができる。 【0022】 また、請求項3は光干渉材を、上記原理により赤外線を反射させる熱線反射材とするものであり、従って、例えば自動車の基体自体が吸収する熱量を減少させて自動車の温度上昇を抑えるといった用途に適しており、上記請求項1〜2の光干渉材に対応する熱線反射材及びそれを含有する上記請求項4〜6に対応する塗料として構成される。 【0023】 【実施例】 以下、本発明の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。図1は本発明の干渉発色材たる干渉フレーク10の断面を示したものであり、そのA部を拡大して示した図2から解るように、微薄片状の基材1に高屈折率材層2と低屈折率材層3とを交互に、各々、設定干渉発色光の略1/4波長の光学的厚さ(幾何学的厚さ×屈折率)で積層し、反射率を90%以上としたものである。 【0024】 ここでは、微薄片状の基材1としてガラスフレーク(屈折率n=1.5)を用いている。この基材1は、ベースとなる材料であれば何でも良いが、実際ここを平滑にして湾曲を揃えることが好ましいため、ここではガラスフレークを使っている。また、この基材1上に積層する高屈折率材層2として二酸化チタンTiO2(屈折率n=2.7)を、そして、その上に積層する低屈折率材層3としてシリカSiO2(屈折率n=1.5)を使っている。これらの材料は比較的安価であり、高屈折率材2と低屈折率材3との屈折率差が比較的大きいことから選定したものであり、他の公知の材料を使用することもできる。 【0025】 このように、表面が平滑なガラスフレークの上に高屈折率の材料、低屈折率の材料を積層すると、一層ずつで干渉が起き、透過光もまた干渉するため、反射率を容易に90%以上にもって行くことができる。そして反射率が90%以上になると「非常に鮮やかな色」と視認されるようになる。図8はこの関係を示したもので、横軸は反射率(%)を、縦軸は目視により判断される色濃度を示す。「色濃度1」は色が付いたと感じないで透けが完全に分る場合、「色濃度2」は色が若干付いたと感じて透けが良く分る場合、「色濃度3」は色が少し付いたと感じて透けが分る場合、「色濃度4」は色がかなり付いたと感じ、透けは若干分るが期にならない場合、そして「色濃度5」は色が完全に付いたと感じて透けば感じない場合である。反射率が90%以上になると「色濃度4」以上になり、「非常に鮮やかな色」と視認されるようになる。 【0026】 このような発色が生ずる理由は次のように説明できる。例えば図2に示すように5層に積層した場合、▲1▼入射光のうち基材1及びその直上の高屈折率層2間の界面で反射する光aと、低屈折率材層3及び高屈折率材層2との界面で反射する光bとの干渉作用、▲2▼高屈折率材層2及び低屈折率材層3間の界面で反射する光cと、低屈折率材層3及び高屈折率材層2間の界面で反射する光dとの干渉作用、▲3▼高屈折率材層2及び低屈折率材層3間の界面で反射する光eと、空気及び高屈折率材層2間の界面で反射する光fとの干渉作用が生じ、反射率が約92%となって、上記の90%以上という条件を満たす状態となる。 【0027】 ここで反射率Rは基板1上に積層する膜層の数2P+1(但しP=1,2,…)により異なり、次式で表される。 【0028】 【数1】 従って、反射率Rは、基板1上に5層に積層した場合、R=約92%、9層を積層した場合、R=約99%となる。 【0029】 ちなみに、従来の二酸化チタンTiO2一層だけの場合は、下に透過する光があるので当該層だけで強められ取り出せる光の量は僅かであり、高くても反射率43%ぐらいである。この値は、人間が見るとまだ十分色が付いているとは感じない強さである。しかし、上記のように反射率Rが90%以上になると「非常に鮮やかな色」と感じられるようになるので、そのものは色が付いていないものであるが、この干渉フレーク10だけで有効な発色材となり得る。 【0030】 次に、上記干渉フレーク10及びそれを含有する塗料の製造方法について、乾式法と湿式法とに分けて説明する。 【0031】 [乾式法] 図3は乾式法による場合を示している。 【0032】 ▲1▼まず、薄ガラス板に二酸化チタンTiO2とシリカSiO2とを1/4波長膜厚で交互にスパッタリング又は蒸着する。ガラス板に対して、TiO2,SiO2,TiO2,SiO2,TiO2の順に行う。 薄ガラスは、その材質にSiO2を用い、膜厚10μmとする。スパッタリング又は蒸着するTiO2とSiO2の膜厚は、波長480nmの青色が目的の色相である場合、次のようになる。 TiO2の膜厚…1/4×480nm÷2.7(屈折率)=44.4nm SiO2の膜厚…1/4×480nm÷1.5(屈折率)=80.0nm 【0033】 ▲2▼上記のように薄いガラスに一旦蒸着したものを、ローラにより屈折破断する。普通はボールミル等で粉砕することになるが、それでは表面を砕いてしまわずに粉砕することは難しい。そこで図4に示すような曲げ破断機により、ローラによる屈折破断する。破断されて得られた小片を図5に示す。 【0034】 ▲3▼次に、この破断小片11を、必要な大きさ(約20μm以下)にふるい分けして、必要な大きさの干渉フレーク分だけを取る。 【0035】 ▲4▼最後に、この干渉フレークをベース塗料樹脂中に混ぜる。干渉フレークは破砕されているため混ぜる前は白く見えるが、屈折率がベース塗料樹脂とほぼ同じであるため、ベース塗料樹脂中に混ぜてしまえばもう判別できなくなる。即ち、後から塗料として塗ってしまうと白の部分は消えてしまう。図6は、母材12の上に上記構成の塗料13を塗り、更にクリア層14を設けた塗装形態を示している。 【0036】 [湿式法] 図7に湿式法による製造方法を示す。これは最初にガラスフレークを作るものである。 【0037】 ▲1▼原料として、耐蝕性に優れるCガラスを用意する。このCガラスの組成は、通常、SiO2(65%)、ZnO(4%)、B2O3(5%)、その他から成る。 【0038】 ▲2▼成形、粉砕、分級。 最初に薄いガラスを作らなければならないので、(1)上記Cガラスを約1,000°Cで溶融し、(2)空気で風船状にして冷却することにより、一定の厚みに整形する。なお、冷却すると自然に粉砕(一次粉砕)される。(3)この一次粉砕されたものをボールミル(スチール)により更に細かく粉砕する。(4)風で飛ばして、軽いものは遠くに、重いものは近くに落下することを利用して、分級する。 【0039】 ▲3▼二酸化チタンをコーティングする。 【0040】 (1)ガラスフレークを水に分散させる。(2)チタン塩とスズ塩を加えて、加水分解し、生成する酸化チタン水和物をガラスフレーク表面に沈着させる。この付ける時間により膜厚をコントロールする。(3)生成物を水洗いし乾燥させる。 (4)800°C〜1,000°Cで焼成し、酸化チタンとする。 【0041】 ▲4▼シリカをコーティングする。 (1)ガラスフレークを水に分散させる。(2)テトラエトキシシランSi(OC2H5)4、塩酸HCl,エタノールC2H5OHを加えて、加水分解させて、水和物を生成させる。続いて重縮合反応が起こり、次式によりシリカSiO2がフレーク表面に沈着する。 nSi(OC2H5)4+4nH2O→nSi(OH)4+4nC2H5OH nSi(OH)4→nSiO2+2nH2O (3)生成物を水洗いし乾燥させる。(4)400°C〜500°Cで加熱する。 【0042】 ▲5▼上記ステップ▲3▼と同様にして二酸化チタンをコーティングする。 【0043】 ▲6▼上記ステップ▲4▼と同様にしてシリカをコーティングする。 【0044】 ▲7▼上記ステップ▲3▼と同様にして二酸化チタンをコーティングする。 【0045】 ▲8▼最後に、ベース塗料樹脂に混ぜて吹き付け可能な塗料化を図る。 【0046】 上記乾式法及び湿式法の塗料化工程において、下地のベース塗料樹脂としては顔料を混ぜたものを用いることもできるが、下地のベース塗料樹脂としては光を吸収する色又は同色系の色を用いることが好ましい。狙った色とあまりに異なる色相系の色が入ると、他の色に変わる可能性が強くなるからである。 【0047】 上記実施例では、ガラスフレーク(屈折率n=1.5)から成る基材1上に高屈折率材層2として二酸化チタンTiO2(屈折率n=2.7)を、低屈折率材層3としてシリカSiO2(屈折率n=1.5)を順次積層したが、他の公知の材料を使用することもできる。 【0048】 干渉発色材の他の材料としては、無機物として、例えば低屈折率材層にフッ化マグネシウムMgF2(屈折率n=1.37)、高屈折率材層に硫化亜鉛ZnS(屈折率n=2.37)があり、スパッタリングによる9層膜において、反射率R=98.6%を得ることができた。 【0049】 また、有機物の干渉発色材としては、例えば低屈折率材層にフルオロオレフィン-アルキルビニルエーテル共重合体(屈折率n=1.49)、高屈折率材層にアクリル共重合体(屈折率n=1.59)があり、ディッピング法による49層膜において、反射率R=90.5%を得た。これから分るように有機物では屈折率差があまり大きとれない。 【0050】 その他、使用し得る無機物としては、低屈折率材層にAl2O3(屈折率n=1.765)、高屈折率材層にSnO2(屈折率n=1.997),ZnO(屈折率n=2.0〜2.02)がある。 【0051】 いずれにせよ、上記のように、表面が平滑なガラスフレークの上に高屈折率の材料、低屈折率の材料を積層すると、一層ずつで干渉が起き、透過光もまた干渉するため、反射率を容易に90%以上にもって行くことができる。そして反射率が90%以上になると「非常に鮮やかな色」と視認されるようになる。 【0052】 ところで、上記実施例では、交互に積層される高屈折率材層と低屈折率材層の各々を設定干渉光の略1/4波長としたが、かかる膜厚は非常に薄いため実際上の製造に困難を伴うことがある。例えば、湿式法の場合、一度のコーティングで付く膜厚が1/4波長を越えることが多く、膜厚が合わせ難い。 【0053】 そこで、図9に示すように、交互に積層される高屈折率材層2と低屈折率材層3の各々の膜厚dを、次式を満足するような略1/4波長膜の奇数倍(設定干渉発色光の略1/4波長の光学的厚さの奇数倍)とする。 【0054】 d=〔(2m+1)λ〕/4n …(2) ただし、λ:光の波長 n:屈折率材層の屈折率 m:0,1,2,3… これによれば、各屈折率材層の膜厚dが1/(4n)波長の奇数倍(設定干渉発色光の略1/4波長の光学的厚さの奇数倍)であれば良い、という緩やかな条件になるので、その膜厚を合わせ易くなり、製造が容易となるという利点がある。ただしm=0とした場合は、上記の全てを略1/4波長膜とした場合と同じ結果に帰する。従って、製造上の面からは、奇数倍が1となるm=0の膜厚の屈折率材層はできるだけ少ない方が望ましい。なお、図9では屈折率が上から順に小、大、小の場合について示しているが、屈折率が上から順に大、小、小の場合であっても結果は同じである。 【0055】 このように、交互に積層される高屈折率材層2と低屈折率材層3の厚さを、設定干渉光の略1/4n波長(n:屈折率材層の屈折率)の奇数倍とするが、この場合、積層膜厚dが上記式を満足すれば良いだけであって、必ずしも高屈折率材層2と低屈折率材層3の一方又は全てが同じ膜厚、即ちmが同じである必要はない(ただし、m=整数とする)。 【0056】 例えば図10に示すように、高屈折率材層2と低屈折率材層3とを交互に積層した場合において、それらの積層膜厚dを、上から順にd1=λ/(4n1)(m=0),d2=3λ/(4n2)(m=1),d3=7λ/(4n1)(m=3),d4=5λ/(4n2)(m=2)というように変えることができる。すなわち、製造を容易にするという観点からすれば、m=0である奇数倍1の膜厚は、高屈折率材層2と低屈折率材層3とのいずれか一方だけとするのが良い。 【0057】 しかし、交互に積層される高屈折率材層2と低屈折率材層3の一方のみ、上記膜厚dの(2)式を満足させてもよい。この場合、高屈折率材層と低屈折率材層のどちらを1/(4n)波長の奇数倍という条件に合致させるかについては全く自由であるが、製造上、その膜厚の整合は湿式法よりも乾式法による方が容易であり、また乾式法は一般に高屈折率材のものを扱うので、高屈折率材層の側で膜厚を整合させるとよい。ただし乾式法であれば膜厚を合わせ易いことから、低屈折率材層の方で合わせるようにしても良い。いずれにしても、湿式又は乾式によるコーティングの膜厚コントロールのし易さに差がある場合、そのコーティングの膜厚コントロールの容易な方の屈折率材を調整対象とすることにより、膜厚が合わせ易くなる。 【0058】 上記では、干渉発色材としての光干渉材、つまり可視光の場合について述べてきたが、上記光干渉材は赤外線を反射する熱線反射材及びそれを含有する塗料として構成することもできる。 【0059】 この熱線反射材の目的は、例えば、黒色塗料の車は太陽光によりエネルギーが熱に変換されやすく車内の温度が上昇しやすいので、それを透明な熱線反射フレークを混入することで防止するものである。 【0060】 熱線である赤外線の波長は770nm〜1mmであり、この光に対する異なる屈折率の材料を上記(2)式を満足する膜厚で、ガラス、マイカ等の透明材料から成る基材に交互に積層し、反射率を上げた透明フレークつまり光干渉材たる熱線反射材を得る。この赤外線の波長に対して異なる屈折率を示す材料の積層は、各層毎に上記(2)式を満足する膜厚としてもよいし、事情によっては高屈折率材層と低屈折率材層の一方を、設定干渉光の略1/4n波長(n:屈折率材層の屈折率)の奇数倍の厚さとしてもよい。いずれにしても、このような透明フレークつまり光干渉材たる熱線反射材を、塗膜中へ混入させることにより、目視では濃色系の塗料に見えても、淡色系と同様の温度上昇に抑えることのできる塗料を得ることができる。 【0061】 ここでは、赤外線波長が広範囲に亘ることを考慮し、その熱線波長全域をカバーするため、膜厚(波長を決定する)が様々な干渉フレークを複数種類作り、それらを塗料中に混合して用いた。即ち、波長800〜850nm用、1000〜1100nm用、2000〜2100nm用、5000〜5100nm用、10000〜10100nm用、20000〜20100nm用の計6種の波長用の熱線反射材たる干渉フレーク10を作製した。各干渉フレーク10は、図11に示すように、ガラスから成る微薄片状の基材1に、TiO2から成る高屈折率材層2とSiO2から成る低屈折率材層3とを交互に9層積層し、その反射率を90%以上としたものである。この6種の熱線反射材たるフレークを、黒色塗料に20w%添加して混合し、鋼板に塗布し太陽光を照射して、温度差を測定した。その結果、通常の黒色塗料の場合は、塗料温度が70°Cまで塗面温度が上がるのに対し、上記熱線反射材たるフレークを20w%添加した塗料の場合には、塗面温度が58°Cぐらいに抑えられた。即ち、目視では濃色系の塗料に見えても、淡色系と同様の温度上昇に抑えることができた。 【0062】 【発明の効果】 以上要するに本発明によれば、次のような優れた効果が得られる。 1)請求項1,2,3の光干渉材によれば、トータルの光線反射率を簡単な構成により有効に高めることができ、結果として、濃い干渉光を発色させ又は熱線を反射させることができる。また、膜厚が1/4波長の奇数倍になっているため、狙った色以外の光が混ざらない鮮やかな発色が得られると共に、製造しやすい膜厚で積層させることができる。 2)特に請求項2の光干渉材では反射率が90%以上であるので、実用的な強さの鮮やかな発色が得られる。 3)請求項4,5,6によれば、上記の発色材が混入され、これがある波長の色だけに十分に色濃く干渉発色し或いは熱線反射するため、顔料なしで所望の鮮やかな色を発現する塗料や熱線による温度上昇を抑える塗料を得ることができる。 4)本発明によって得られた光干渉材ないし塗料は、車輌用塗料(乗用車・オートバイ・自転車)をはじめ、各種塗料・各種プラスチックへの練り込み、建材、壁装材、印刷インキ、合成皮革、スポーツ用品、家具、絵具、捺染、漆器、ボタン、文房具、アクセサリー等々の用途に幅広く使用することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の光干渉材たる干渉フレークを示す断面図である。 【図2】 図1のA部の拡大断面図である。 【図3】 本発明の光干渉材の製造方法を示す概要図である。 【図4】 図3の製造方法で用いる曲げ破断機を示した図である。 【図5】 図4の破断機で得られた破断小片を示す断面図である。 【図6】 本発明の塗料を用いた塗装構造を例示した図である。 【図7】 本発明の他の光干渉材の製造方法を示す概要図である。 【図8】 本発明の他の光干渉材の反射率と目視による色濃度との関係を示す図である。 【図9】 本発明の光干渉材の作用を示す概念図である。 【図10】 本発明の光干渉材の構成例を示す断面図である。 【図11】 本発明の熱線反射材としての光干渉材を示したもので、(a)はその干渉フレークを、(b)はそのA部の拡大断面を示す図である。 【図12】 本発明の原理作用の説明に供する図である。 【図13】 従来の干渉マイカを示した断面図である。 【図14】 図13のB部の拡大断面図である。 【符号の説明】 1 微薄片状の基材 2 高屈折率材層 3 低屈折率材層 10 光干渉材たる干渉フレーク |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-12-13 |
出願番号 | 特願平7-4850 |
審決分類 |
P
1
651・
55-
ZA
(B05D)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 村山 禎恒 |
特許庁審判長 |
鈴木 由紀夫 |
特許庁審判官 |
芦原 ゆりか 川端 康之 |
登録日 | 2003-01-17 |
登録番号 | 特許第3389360号(P3389360) |
権利者 | マツダ株式会社 |
発明の名称 | 光干渉材及びそれを含有する塗料 |
代理人 | 二宮 克也 |
代理人 | 米田 圭啓 |
代理人 | 藤田 篤史 |
代理人 | 嶋田 高久 |
代理人 | 井関 勝守 |
代理人 | 今江 克実 |
代理人 | 二宮 克也 |
代理人 | 小山 廣毅 |
代理人 | 前田 弘 |
代理人 | 井関 勝守 |
代理人 | 竹内 宏 |
代理人 | 原田 智雄 |
代理人 | 竹内 祐二 |
代理人 | 関 啓 |
代理人 | 杉浦 靖也 |
代理人 | 今江 克実 |
代理人 | 関 啓 |
代理人 | 藤田 篤史 |
代理人 | 竹内 宏 |
代理人 | 前田 弘 |
代理人 | 小山 廣毅 |
代理人 | 原田 智雄 |
代理人 | 嶋田 高久 |
代理人 | 竹内 祐二 |
代理人 | 米田 圭啓 |
代理人 | 杉浦 靖也 |