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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A23L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A23L
管理番号 1136926
審判番号 不服2003-6932  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-24 
確定日 2006-05-18 
事件の表示 平成11年特許願第352248号「食材に内在する分解酵素の活性化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月29日出願公開、特開2000-232857〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年12月10日(優先権主張平成10年12月15日)の出願であって、平成15年3月25日に拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年4月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年5月21日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年5月21日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年5月21日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
上記補正により、特許請求の範囲の請求項1は、「分解酵素を内在する食材を有隔膜電解にて生成される電解生成酸性水に接触させて同分解酵素を活性化する方法であり、前記電解生成酸性水として、前記食材との接触後にpHが5.0〜6.0となる電解生成酸性水を採用して、20〜70℃の温度範囲にある同電解生成酸性水に前記食材を接触させることを特徴とする食材に内在する分解酵素の活性化方法。」と補正された。
上記補正は、本願明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である2箇所の「電解生成酸性水」に、それぞれ「有隔膜電解にて生成される」及び「前記食材との接触後にpHが5.0〜6.0となる」という限定を付加するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2、4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2、5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された「特開平8-89398号公報」(以下、「引用例」という。)には、炊飯方法に関し、(a)「米粒中には、デンプンを分解して糖へと分解する酵素がもともとふくまれており、その例としては、アミラーゼがある。炊飯過程においては、アミラーゼによるでんぷんの糖への分解の程度が食味を左右する。では、糖の生成量はどの程度違うのか。我々の実験の結果を図10に示す。これは、各温度において粉末状の米を水と混合し、一定温度で、30分保持した場合の糖生成量をグラフにしたものである。アミラーゼ活性は温度に依存し、60℃から70℃で最大となり、その生成量は、100℃のものの1.5倍に達する。また、実験から、米に内在するアミラーゼは100℃では10分程度で働かなくなることがわかった。」(段落【0068】)、及び(b)「なお、上記構成に加え、電気分解等により生成されるイオン水などによりpHをコントロールすることも効果を増大する。たとえば、pHを5から6程度にすることで、糖生成量は1.2倍程度になる。」(段落【0070】)が記載されている。
上記摘示事項(b)の「イオン水」は、後続の「pHを5から6程度にする」という記載を踏まえれば、「酸性水」であると理解でき、また、同(a)によると、米粒中には澱粉を分解する酵素のアミラーゼが元々内在しており、アミラーゼ活性は温度に依存し60℃から70℃の温度で最大になることから、引用例には、「澱粉分解酵素であるアミラーゼを内在する米を、電気分解により生成される酸性水と60℃から70℃で接触させて、pH5〜6で米に内在するアミラーゼを活性化する方法」という発明が記載されているといえる。

(3)対比
本願補正発明と引用例に記載された発明とを対比すると、後者の「アミラーゼ」及び「米」は、前者の「分解酵素」及び「食材」に相当することから、両者は、「分解酵素を内在する食材を電気分解により生成される酸性水に接触させて同分解酵素を活性化する方法であり、60〜70℃の温度範囲にある同酸性水に前記食材を接触させることを特徴とする食材に内在する分解酵素の活性化方法」で一致し、ただ、(i)電気分解により生成される酸性水が、前者では「有隔膜電解」にて生成されるのに対し、後者では有隔膜電解であるのか不明である点、及び(ii)pHが5.0〜6.0になるのが、前者では「食材との接触後」になるのに対して、後者ではどの時点なのか明らかでない点で相違している。

(4)判断
相違点(i)について
水を有隔膜電解装置により電気分解して酸性水を生成することは、本願出願前に周知であった(必要なら、例えば特開平7-289178号公報、特開平10-262580号公報を参照されたい。)ことから、電気分解により生成される酸性水として、有隔膜電解にて生成される電解生成酸性水を使用することは、当業者にとって格別困難なことではない。
相違点(ii)について
引用例には「電気分解等により生成されるイオン水などによりpHをコントロールすることも効果を増大する。たとえば、pHを5から6程度にすることで、糖生成量は1.2倍程度になる。」(摘示事項(b))との記載があるところ、上記「イオン水」は、「それによりpHをコントロールすることも効果を増大する。」のであるから、文脈上、該「pH」は、イオン水自体のpHを表わすのではなく、イオン水を米に接触させた後のpHを示すと解するのが相当である。そうすると、これに続く「たとえば、pHを5から6程度にすることで、・・・」の文章における「pH」は、イオン水自体のpHではなく、米に接触させた後のpHであると理解できる。
そうすると、引用例においても、pHが5から6程度を呈するのは酸性水を米と接触させた後であるといえるので、上記相違点(ii)は、両者の実質的な相違点とはならない。
そして、本願補正発明に係る効果も、引用例及び周知の事項から予測されるところを超えて優れているとはいえない。
してみれば、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたといえる。

(5)むすび
したがって、本件補正は、平成15年改正前特許法17条の2,5項において読み替えて準用する同法126条4項の規定に違反するものであり、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成15年5月21日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし8に係る発明は、平成15年2月24日付手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下の事項により特定されるとおりのものである。
「分解酵素を内在する食材を電解生成水に接触させて同分解酵素を活性化する方法であり、前記電解生成水として有隔膜電解にて生成される電解生成水を採用して、20〜70℃の温度範囲にある同電解生成水に前記食材を接触させることを特徴とする食材に内在する分解酵素の活性化方法。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりであるから、引用例には、「澱粉分解酵素であるアミラーゼを内在する米を、電気分解により生成される酸性水と60℃から70℃で接触させて、pH5〜6で米に内在するアミラーゼを活性化する方法」という発明が記載されているといえる。

(2)対比・判断
本願発明と引用例に記載された発明とを対比すると、後者の「アミラーゼ」及び「米」は、前者の「分解酵素」及び「食材」に相当し、また、後者の「電気分解により生成される酸性水」は、前者の「電解生成水」に相当することから、両者は、「分解酵素を内在する食材を電解生成水に接触させて同分解酵素を活性化する方法であり、60〜70℃の温度範囲にある電解生成水に前記食材を接触させることを特徴とする食材に内在する分解酵素の活性化方法」で一致し、ただ、電解生成水が、前者では「有隔膜電解にて生成される電解生成水」であるのに対し、後者では有隔膜電解により生成されたものであるのか不明である点で、両者は相違する。
この相違点について検討するに、引用例に係る電気分解により生成される酸性水は、電解生成水の一種であるところ、水を有隔膜電解装置により電気分解して酸性水を生成することは、本願出願前に周知であった(必要ならば、例えば特開平7-289178号公報、特開平10-262580号公報を参照されたい。)ことから、電解生成水として、有隔膜電解にて生成される電解生成水を使用することは、当業者であれば、容易に想到し得ることである。
そして、本願発明に係る効果も、引用例及び周知の事項から予測されるところを超えて優れているとはいえない。
そうすると、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたといえる。

(3)むすび
してみれば、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本出願に係る他の請求項について検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-01 
結審通知日 2006-03-07 
審決日 2006-03-31 
出願番号 特願平11-352248
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A23L)
P 1 8・ 575- Z (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 弘樹  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 阪野 誠司
河野 直樹
発明の名称 食材に内在する分解酵素の活性化方法  
代理人 長谷 照一  
代理人 高木 幹夫  

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