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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1137346
審判番号 不服2003-18407  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-11-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-22 
確定日 2006-06-16 
事件の表示 特願2000-150677「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月27日出願公開、特開2001-327678〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成12年5月22日の出願であって、平成14年7月19日付拒絶理由通知に対して平成14年9月20に手続補正書が提出され、さらに平成15年2月14日付最後の拒絶理由に対して平成15年4月8日に手続補正書が提出され、当該平成15年4月8日付手続補正が却下されるとともに拒絶査定されたものであって、これに対して、平成15年9月22日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同日付で手続補正書が提出されたものである。

第二.平成15年9月22日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年9月22日付の手続補正を却下する。
理由
[1].補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「数字や絵などの図柄が変動する変動表示ゲームを開始し、前記図柄が全て停止して所定の数だけ揃うことにより大当りが発生し、前記変動表示ゲーム後に大当り状態に移行する一方、前記図柄が所定の数だけ揃わなければハズレ状態になるとともに、前記変動表示ゲームにおいて高確率で大当りが発生する確率変動状態と低確率の普通確率状態とがある遊技機において、
遊技者が個別情報を入力するデータ入力装置と、
前記個別情報と比較するための基準情報を発生させるとともに、各変動表示ゲームにおいて、大当りを発生させる確率を制御する中央制御部とを具備し、
前記中央制御部は、前記変動表示ゲームの開始時や所定時間経過後などの所定のタイミングにおいて、大当り確率を変動させるサブルーチンに入り、前記個別情報と前記基準情報との差が所定値よりも小さい場合には、前記普通確率状態よりも大当り確率を向上させた確率変動状態にすること、
を特徴とする遊技機。」
と補正された。

[2].本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下検討する。

<1>.特許法第36条の規定の検討
(1).「個別情報」、「基準情報」について検討する。
個人情報、基準情報に関する明細書の記載を参照すると、明細書には以下の記載が認められる。
(i).段落【0039】に、「この入力装置18は、例えば第1特定入賞口10及び第2特定入賞口11にパチンコ球が入賞したことを示す信号を発生する装置または遊技者の個別情報を入力するデータ入力装置などである。遊技者がデータ入力装置から個別情報を入力する一例としては、貸し玉を購入するためのプリペイドカードに記載されたシリアル番号やキャッシュカードなどのID番号を読み取ったり、キーボードなどから直接入力したり、通信を利用して遊技者が所望のデータを送信することにより行う。また、出力装置19は、中央制御部14からの指示に基づいて、変動表示ゲームに連動した各種の音楽を発生させたり、変動表示ゲームの回数を表示したり、大当り確率が向上したことを表示する装置である。」
(ii).段落【0040】に、「中央制御部14は、各変動表示ゲームにおいて、ハズレ、リーチまたは普通図柄や特別図柄での大当りの発生や大当りを発生させる確率(例えば、低確率の通常状態や高確率の確率変動状態)をコントロールする。特に、この中央制御部14は、入力装置18から入力された遊技者個別情報と乱数発生させた基準情報とを比較して、その差が小さい場合に確率変動状態に移行させる。また、中央制御部14は、この基準情報を時々刻々変化させることにより、遊技者個別情報が一定値であっても大当り確率を変動させる。なお、基準情報を変化させるタイミングは、プリペイドカードが抜き取られた場合など、遊技者個別情報が変更したときに行う様にしてもよい。また、他の方法としては、例えば、遊技者個別情報が所定値で割り切れた場合に確率変動状態に移行させることも可能である。当然ながら、この所定値は固定されている訳ではなく、中央制御部14の判断で乱数を発生させて変更するようになっている。
(iii).段落【0055】に、「中央制御部14は、入力装置18から遊技者個別情報を入手すると、所定のタイミング(例えば、ゲーム開始時や所定時間経過後)で、このサブルーチンに入り、ステップS200で記憶する遊技者個別情報を、またステップS201で基準情報を呼び出し、ステップS202でその差を求め、ステップS203に移行する。なお、この遊技者個別情報と基準情報との差は、両データの二乗平均または相関距離によって求めることができる。例えば、遊技者個別情報が「1234」で基準情報が「9311」とすると、各桁の差を求めて二乗(例えば、一の位であれば、(3-1)の二乗=4)し、それらの合計を開平することにより、乗平均が求まる。なお、相関距離については数学的に波形の類似度を求めるもので、その詳細は専門書に譲る。」
(iv).段落【0060】に、「【発明の効果】以上説明した様に、本発明に係る遊技機によれば、入手した遊技者個別情報に基づいて大当り発生確率を変動させるので、遊技者は、単なる偶然に頼るのではなく、能動的に遊技機の大当り確率を変更することが可能となり、勝負結果に納得することができる。」

(2).上記記載事項より、個別情報、及び基準情報の1例として各々、「1234」、「9311」の「数字データ」が挙げられ、さらに、遊技者による「所望のデータ」と記載されていることから、個別情報、及び基準情報等が「数字データ」に限られないものとなる。
すると、遊技者が送信する「所望のデータ」を含む「個別情報」とは如何なるもので、その場合の基準情報とは何を指し、両者の「差」とは如何なるものか不明瞭である。
以上のように、「個別情報」、「基準情報」、両者の「差」の意味するところが不明瞭であり、特許を受けようとする発明が明確でないこととなるから、本願補正発明は、特許法第36条第6項第2号の規定に反するものである。


<2>.特許法第29条第2項の検討
(1).本願補正発明
本願補正発明は、前記のように「個別情報」、「基準情報」の意味が不明瞭であるので、実施例に即して「個別情報」、「基準情報」は「数字データ」を意味するものとする。

(2).刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-319213号公報には以下の事項が記載されている。
(A).特開平11-319213号公報記載事項
(A-1).「【請求項1】 遊技盤面に設けられる図柄表示装置に「大当たり」図柄が確定することにより遊技者に特別の利益が付与されるパチンコ遊技機において、複数の確率図柄から任意の図柄を選択操作する確率図柄選択操作手段と、該確率図柄選択操作手段により選択操作された確率図柄と前記図柄表示装置に表示される確率切換設定用図柄とが一致しているか否かを判定する図柄判定手段と、該図柄判定手段により一致していると判定されれば、前記図柄表示装置の「大当たり」図柄発生の確率変動を切換制御する確率変動制御手段とを備えることを特徴とするパチンコ遊技機。」
(A-2).「【0009】また、請求項2に記載のパチンコ遊技機は、前記確率図柄選択操作手段による複数の確率図柄の表示を「大当たり」による条件装置が作動する以前のタイミングにおいて表示する条件装置作動前表示手段を備えることを要旨とするものである。この発明によれば、確率図柄選択表示手段によって表示される確率図柄は、図柄表示装置に「大当たり」図柄が表示される前の条件装置が作動するまでのタイミングにおいて表示されることから、遊技者は自らの選択によって抽選確率を決定するためのゲームを行うことにより興趣が増し、遊興性の高い遊技機を提供することが可能となる。
【0010】更に請求項3に記載のパチンコ遊技機は、前記確率図柄選択操作手段による複数の確率図柄の表示を「大当たり」発生による条件装置の作動が終了した後のインターバル中に表示する条件装置作動終了後表示手段を備えることを要旨とするものである。
この発明によれば、確率図柄選択操作手段によって表示される複数の確率図柄は、「大当たり」発生に伴う条件装置の作動が終了した後のインターバル中に表示されることから、以後の遊技状況における抽選確率を遊技者自らがゲームで決定でき、新たな興趣が得られることになる。
【0011】そして、前記図柄判定手段により判定の対象とされる確率切換設定用図柄は、請求項4に記載の発明のように、「大当たり」発生後のタイミングにおいて確率変動用乱数から値を選出すると共に、この乱数値が所定値と一致するか否かによって確率変動を行うか否かを設定する確率変動選択手段と、該確率変動選択手段によって確率変動すると選択された場合は前記確率図柄選択操作手段により選択操作された確率図柄と同一確率図柄を表示し、確率変動しないと選択された場合は前記確率図柄選択操作手段により選択された確率図柄とは異なる確率図柄を表示する確率図柄表示制御手段とを備えると良い。これによって抽選確率の変動における制御を効率よく行うことができると共に、今までにない興趣を得られる遊技機を提供できる。」
(A-3).「【0002】【従来の技術】 近年、パチンコ遊技機においては、遊技盤の中央に設けられる特別図柄表示装置や可変表示部に表示される図柄の組合せ等の表示画面によって遊技者に特別な利益を発生させるものが知られている。例えば、特別図柄表示装置の図柄が変動停止した時の図柄の組合せによって「大当り」と称される条件装置が作動し、遊技盤面の下方に設けられる大入賞口が連続して開放され、その間に多数の入賞が得られることから遊技者に大量の賞品球が払出されるというものである。」
(A-4).「【0003】このようなパチンコ遊技機における「大当たり」図柄が表示される抽選確率は、「大当たり」が発生する確率の低い低確率と「大当たり」が発生する確率の高い高確率が設定され、遊技盤面上に設けられる所定のゲートや入賞口等へ遊技球が所定個数落入したり、所定の遊技状況の発生が発生する都度切換わるように設定される。
(A-5).「【0005】更に、従来のパチンコ遊技機における抽選確率の設定は、所定の遊技状況の発生を受けて自動的に設定されることから、遊技者は抽選確率の設定に関与することができず、物足りなさを感じるという問題があった。」
(A-6).「【0006】本発明の解決しようとする課題は、遊技盤面に設けられる図柄表示装置の「大当たり」が発生する抽選確率を遊技者自らが関与することができるようにしたパチンコ遊技機を提供することにある。」
(A-7).「【0039】この特別図柄表示装置50は、「大当たり」図柄が表示される確率が低い低確率(1/337)と、「大当たり」図柄が表示される確率が高い高確率(5/337)の2つの抽選確率を有している。
この抽選確率は、遊技開始による初期設定時には低確率が設定され、その後、遊技者が抽選確率決定用のゲームを行うことによって抽選確率が変動するように構成されている。なお、前記特別図柄表示装置50の抽選確率が低確率から高確率に移行すると、特別図柄表示装置50における図柄変動時間は短縮され、従来の5.8秒から5.0秒へと移行する。」
(A-8).「【0044】図7は、本パチンコ遊技機10に表示される抽選確率を切り換える確率切換設定用図柄の遊技者選択画面である。特別図柄表示装置50に表1に示した「大当たり」図柄の何れかが表示されると「大当たり」が発生し条件装置が作動するが、この「大当たり」が発生してから条件装置が作動するまでの間に、特別図柄表示装置50には遊技者自らが抽選確率を設定するためのゲームが表示された遊技者選択画面が表示される。」
(A-9).「【0070】本発明は、上記した実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、確率切換設定用図柄における遊技者選択画面の表示タイミング及び、その表示図柄や遊技者による選択方法、確率切換設定用図柄の図柄設定方法の変更等は随時可能である。それによって更に遊興性が増し、遊技者の興趣を一層高める効果が得られる。」
(A-10).特別図柄表示装置50は主制御基板100にて制御される点が図4に示されている
(A-11).してみると、刊行物Aには以下の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
すなわち、
「特別別図柄表示装置の図柄が変動し、変動停止した後に表示される図柄の組合せによって「大当り」が発生すると、遊技盤面の下方に設けられている大入賞口が連続して開放され、その間に多数の入賞が得られるパチンコ遊技機において、
従来の大当等の発生確率切換手段である、所定のゲートや入賞口等へ遊技球が所定個数落入したり、所定の遊技状況の発生が発生する都度高確率から低確率、または低確率から高確率にと遊技状況の発生に応じた自動的な切換へに代えて、適宜のタイミング、例えば、ア).遊技者は自らの選択によって抽選確率を決定可能とする、図柄表示装置に「大当たり」図柄が表示される前の条件装置が作動するまでのタイミング、イ).大当り後の遊技状況における抽選確率を遊技者自ら決定可能する、「大当たり」発生に伴う条件装置の作動が終了した後のインターバル中とするタイミング等において、当該確率を切換る確率変動制御手段、例えば、遊技者が選択したコイン図柄の「表」又は「裏」と、予め「表」、「裏」がランダムに設定された確率切換設定用図柄の「表」又は「裏」と一致すれば大当り等の発生確率は高確率に移行し、一致しなければ低確率に移行する制御手段を備えたパチンコ遊技機。」


(3)本願補正発明と引用発明との対比
(a).構成の対応関係
(i).引用発明における、「特別図柄表示装置の図柄が変動し、変動停止した後に表示される図柄の組合せ」は、本願補正発明における「変動表示ゲーム」に相当する。
(ii).引用発明において、大当りが発生する確率が「高確率」、又は「低確率」は、本願補正発明における「確率変動状態」と「普通確率状態」に相当する。
(iii).引用発明において、ゲームを行なう遊技者が選択・入力した「表」又は「裏」、および、当該「表」又は「裏」と比較すべき確率設定用図柄に設定された基準用の「表」又は「裏」は、大当り等の確率を高確率にするか、低確率にするかとの確率変更を行うか否かを判定する為に遊技者が入力する判定情報、及び判定用基準情報の点において、同様に確率変更を行なうか否か判定するための情報である本願補正発明の「個別情報」及び「基準情報」に相当する。
(iv).引用発明における、「選択ボタン」は、判定用基準情報と対比させる判定情報を遊技者が入力する入力装置である点において、本願補正発明における「データ入力装置」に相当する。

(iv).引用発明における「確率変動制御手段」は、確率を切換る作用を行なう確率切換手段として、本願補正発明における、大当りを発生させる確率を制御する「中央制御部」に相当する。

(b).一致点
数字や絵などの図柄が変動する変動表示ゲームを開始し、前記図柄が全て停止して所定の数だけ揃うことにより大当りが発生し、前記変動表示ゲーム後に大当り状態に移行する一方、前記図柄が所定の数だけ揃わなければハズレ状態になるとともに、前記変動表示ゲームにおいて高確率で大当りが発生する確率変動状態と低確率の普通確率状態とがある遊技機において、
遊技者が入力する判定用入力情報の入力装置と、
前記と比較するための基準情報を発生させるとともに、各変動表示ゲームにおいて、大当りを発生させる確率を制御するとを具備し、
前記確率切換手段は、前記変動表示ゲームの所定のタイミングにおいて、大当り確率を変動させる動作に入り、前記判定用入力情報と前記判定用基準情報との比較結果に基づいて前記普通確率状態よりも大当り確率を向上させた確率変動状態にする遊技機。

(c).相違点
(i).大当たり発生の確率を高確率とするか、低確率とするかの判定手段として、本願補正発明の実施例では、個別情報、基準情報を数字データとし、両者の差分の大小により判定しているのに対し、引用発明では図柄の表、裏が比較対照である設定された表、裏と一致するか否かにより判定している点。
(ii).判定用入力情報を入力する入力装置に関して、本願補正発明の実施例では、個別情報を数字データとした「データ入力装置」であるのに対し、引用発明では、「表」「裏」が記載された選択ボタンである点、
(iii).確率切換のタイミングとして、本願補正発明は、「所定」と共に「開始時や所定時間経過後など」が例示されているのに対し、引用発明は「大当り図柄が表示される前」「大当が発生してから条件装置が作動するまでの間」等が例示されると共に、「随時可能」としている点
(iv).確率切換手段として、本願補正発明は、「サブルーチン動作」によるのに対し、引用発明は、「確率変動制御手段」であり、サーブルーチン動作によることは明記されていない点

(d).相違点の検討
(i).相違点(i)について、
判定手段として、数字データを用いることは引用発明にも前記(A-2)に記載されており、さらには、ア).試験における合格基準点以上か以下かによる判定、及び合格基準点からの隔たりによる、「優」、「良」、「可」の判定、 イ).「宝くじ」における、数字データの一致又は不一致による当り、はずれ、及び、特賞から1隔たった、前後賞、ウ).公差のように基準値からの隔たりの大小に基づく判定も、例えば、特開平11-339200号公報、特開平11-179634号公報、特開平7-83851号公報、特開平5ー116056号公報に見られるように周知の事項である。
してみると、数値基準値からの隔たりにより判定する判定手段を、採用することは当業者が適宜為し得る程度の事項であり、当該判定手段を採用することによる効果も予測の範囲内のもので格別のものとは認められない。
(ii).相違点(ii)について、
数字データによる判定手段は前記のように周知であるから、当該判定手段を採用した場合の入力手段は、数字データ入力装置となることは、当業者にとっては自明と言える技術事項である。
したがって、当該相違点は、前記相違点(i)で検討したように数字データを用いた判定手段を採用したことに起因して当然考慮する技術的事項であり、格別のものではない。
(iii).相違点(iii)について、
確率変更のタイミングについて、本願補正発明、引用発明は、各々「所定」、「変更等は随時可能」と記載され両者共実質的に相違するところは認められない。しかも、本願補正発明に例示的に示されている「開始時や所定時間経過後」に当該タイミングを特定することが格別の作用効果を奏するとも、困難であるとも認められない。
したがって、当該相違点は格別のものではない。
(iv).相違点(iv)について、
計算機を用いた制御手段において、制御実行に際して「サブルーチン」を組み込むことは、拒絶査定の理由に引用された刊行物である特開平11-347200号公報にも見られるように周知の技術的事項である。
したがって、当該相違点は実質的には相違点と言えないものである。

(e)まとめ
以上のように、本願補正発明は、引用発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

<3>.むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第三.本願発明について
[1].本願発明
平成15年9月22日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年9月20付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「数字や絵などの図柄が変動する変動表示ゲーム条件装置を開始し、前記図柄が所定の数だけ揃うことにより大当り状態に移行する遊技機において、
遊技者が個別情報を入力するデータ入力装置と、
前記個別情報と比較するための基準情報を発生させるとともに、大当り確率を制御する中央制御部とを具備し、
前記中央制御部は、前記変動表示ゲーム条件装置において、前記個別情報と前記基準情報との差が所定値よりも小さい場合、または、前記個別情報が所定値で割り切れる場合、普通確率状態よりも大当り確率を向上させること、を特徴とする遊技機。」

[2].特許法第36条第6項第2号(特許を受けようとする発明が明確であること)の検討
(1).拒絶査定の理由は、「前記個別情報と前記基準情報との差が所定値よりも小さい場合」、「前記個別情報が所定値で割り切れる場合」について、両者が類似の機能、性質を持つものでないから、特許を受けようとする発明が不明確であるというものである。
(2). 本願発明においても、前記「第二.[2].<1>.」に記載したように、個別情報、基準情報については、数字データを一例と挙げて数字データのみには限定されない所望データとしているので、数字データ以外の、当該所望データを所定値で割り切れる場合とは如何なる場合か不明であり、さらに、当該両情報の「差」とは如何なるものか不明瞭である。
してみると
「個別情報」、「基準情報」の意味が不明確であることとなるので特許を受けようとする発明が明確ではない。
したがって、許法第36条第6項第2号の規定に反するものである。

[3].特許法第29条第2項の検討
<1>.刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、前記「第二.[2]<2>」に記載したとおりである。

<2>.本願発明と引用発明との対比・判断
本願補正発明は、本願発明における「変動表示ゲーム」について、大当たり確率を変動させるタイミング、大当り状態の動作等の記載を付加、限定したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、構成要件の不明な点は実施例を参照して個別情報、基準情報を数字データとし、さらに他の構成要件が限定されたものに相当する本願補正発明が、前記「第二.[2].<2>.(3)」に記載したとおり、引用発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、構成要件の不明な点は実施例を参照して個別情報、基準情報を数字データとしたものであるから、同様の理由により、引用発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

<3>.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第四.まとめ
以上のように、本願発明は特許を受けることができないものであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-06-04 
結審通知日 2004-06-29 
審決日 2004-07-15 
出願番号 特願2000-150677(P2000-150677)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 江塚 政弘  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 渡戸 正義
渡部 葉子
発明の名称 遊技機  

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