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審決分類 |
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M |
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管理番号 | 1137375 |
審判番号 | 不服2004-13939 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2004-05-20 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-07-05 |
確定日 | 2006-06-14 |
事件の表示 | 特願2003-208464「通信回線を用いた情報供給システム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月20日出願公開、特開2004-147293〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、2000年5月31日(優先権主張2000年1月26日)に出願した特願2001-542109号の一部を平成15年8月22日に新たな特許出願としたものであって、平成15年11月14日付けで拒絶理由が通知され、平成16年5月28日付けで拒絶の査定がなされたところ、拒絶査定に対して不服の審判が請求され、当審において平成16年10月22日付けで拒絶理由が通知され、その指定された期間内である平成16年12月24日付けで手続補正がなされたものである。 (なお、本件出願の図6ないし図21、及びこれらの図に対応する明細書の記載は、国内優先の基礎となった出願(特願2000-17279号)の明細書又は図面に開示がなく、また、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記国内優先の基礎となった出願の明細書又は図面に開示がない「インターネット」、「中継側である管理コンピュータ側に、利用者IDと、この利用者IDに対応付けられて登録された該利用者が監視したい場所に設置されている監視端末に付与されている・・・アドレスデータと、が登録されている利用者データベース」、「前記アクセスした利用者側と予め契約されて利用者IDに対応付けられて登録されている・・・アドレスデータを用いて、前記管理コンピュータがインターネットや電話網からなる通信回線網を利用して監視端末に働きかける手段」等の事項を発明の構成要素とするものであって、これらの事項は原出願(2001-542109号(平成12年5月31日))のとき、若しくはその後の手続補正によって追加されたものであり、国内優先の基礎となった出願の願書に添付された明細書又は図面に記載された発明とは認められない。 したがって、本願発明は、少なくとも国内優先の利益を享受できないものである。) 第2.本願発明 本願発明は、平成16年12月24日付けで手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】インターネットや電話網からなる通信回線網の中に設置された管理コンピュータに於ける通信回線を用いた情報供給システムであって、 中継側である管理コンピュータ側に、利用者IDと、この利用者IDに対応付けられて登録された該利用者が監視したい場所に設置されている監視端末に付与されている電話番号もしくはアドレスデータと、が登録されている利用者データベースを備え、 インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる利用者の電話番号、ID番号、アドレスデータ、パスワードなどの認証データの内少なくとも一つの特定情報を入手する手段と、 この入手した特定情報が、前記利用者データベースに予め登録された登録情報と一致するか否か検索する手段と、 前記特定情報と登録情報とが一致したとき、前記アクセスした利用者側と予め契約されて利用者IDに対応付けられて登録されている電話番号もしくはアドレスデータを用いて、前記管理コンピュータがインターネットや電話網からなる通信回線網を利用して監視端末に働きかける手段と、 前記監視端末には、中継側である前記管理コンピュータを認証可能な認証データが登録されており,この認証データにより前記管理コンピュータを認定した前記監視端末から、監視手段で捕捉したデータとして送信される情報を入手する手段と、 前記監視端末から入手した情報を、前記管理コンピュータが、インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて、予め契約し登録されている前記アクセスした利用者に供給する手段と、 前記管理コンピュータから前記監視端末の通信端末に接続不能な状態、若しくは監視手段からの情報が前記管理コンピュータに送信されてこない状態が、前記管理コンピュータで確認された時に、所定の異常通知をアクセスした利用者に送信する手段と、 からなる通信回線を用いた情報供給システム。」 第3.先願明細書に記載された発明 1.先願明細書に記載された事項 当審の拒絶理由に引用され、本願の出願の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願2000-120465号(特開2001-309067号)の願書に添付した明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)には、図面とともに次の記載がある。 (1)記載事項 a.「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、モバイル制御・計測システムに関し、特に、携帯端末機からインターネット網を介して遠隔地にある各種装置の状態を監視し操作するモバイル制御・計測システムに関するものである。」(2頁左欄36行ないし39行)、 b.「【0007】本発明は、上記従来の問題を解決して、一般家庭に広く普及しているパソコンや携帯電話を利用して、ユーザが家庭内機器等の遠隔操作などの管理ができる安価で簡易なモバイル制御・計測システムを実現することを目的とする。」(2頁右欄26行ないし30行)。 c.「【0008】【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、本発明では、インターネット網にアクセス可能な携帯端末機と、インターネット網に接続されたWebサーバと、ユーザの家屋内に設置されたWeb端末機と、前記Web端末機に接続されたセンサと、前記Web端末機に接続されたアクチュエータとからなるモバイル制御・計測システムのWebサーバに、携帯端末機からの要求に応じてWeb端末機にコマンドを送信する手段と、Web端末機から受信したセンサ計測値データを携帯端末機に送信する手段とを設け、Web端末機に、Webサーバからのコマンドに従ってセンサとアクチュエータを制御する手段と、センサ計測値データを取得してWebサーバに送信する手段とを設けた構成とした。」(2頁右欄31行ないし44行)。 d.「【0011】(第1の実施の形態)本発明の第1の実施の形態は、インターネットにダイアルアップ接続するWeb端末機に接続されたセンサや各種装置を、iモード携帯電話機を利用して、センターのサーバを介して遠隔制御するモバイル制御・計測システムである。」(3頁左欄2行ないし6行)。 e.「【0012】図1は、本発明の第1の実施の形態におけるモバイル制御・計測システムの概念図である。図1において、iモード携帯電話機1は、インターネット網にアクセス可能な携帯電話機であり、携帯端末機として利用する。Webサーバ2は、モバイル制御・計測サービスセンタに設置され、インターネット網を介してモバイル制御・計測サービスを提供するサーバである。このWebサーバ2は、課金機能も有する。Web端末機3は、ユーザの自宅に設置した制御管理装置である。センサ4は、Web端末機3に接続されたセンサである。アクチュエータ5は、Web端末機3に接続された各種の駆動装置である。」(3頁左欄7行ないし18行)。 f.「【0013】図2は、アクチュエータ5を制御する時の通信の流れと、課金のタイミングを説明する図である。図3は、センサ4からiモード携帯電話機1を自動発呼するときの通信の流れを説明する図である。」(3頁左欄19行ないし22行)。 g.「【0014】上記のように構成された本発明の第1の実施の形態におけるモバイル制御・計測システムの動作を説明する。図1に示すWeb端末機3は、センサ4から定期的あるいは異常等発生時にデータを取得して、Webサーバ2に送信する。Webサーバ2は、Web端末機3から送信されたセンサデータを、ユーザに対応するWebページに書き込む。ユーザは、そのWebページを閲覧することで、いつでもセンサの最新の計測値を知ることができる。」(3頁左欄23行ないし31行)。 h.「【0015】図2を参照して、ユーザがiモード携帯電話機1から自宅の家電機器などを制御する場合を説明する。iモード携帯電話機1のWeb機能を利用して、Webサーバ2のWebページを開き、ユーザIDとパスワードを入力する。ユーザIDの認証が完了しユーザが確認されると、Webサーバ2は、Web端末機3に回線接続要求を出して起動する。」(3頁左欄32行ないし38行)。 i.「【0016】ところで、通常の家庭でのインターネット網への接続環境は、ダイアルアップ接続が一般的である。したがって、Web端末機3は、通常はインターネット網に回線接続されていない。Webサーバ2から接続する場合は、Webサーバ2から公衆電話回線を介してWeb端末機3に通信し、Web端末機3からダイアルアップ接続するように指令を出す。Web端末機3は、Webサーバ2からの回線接続要求に応じて、インターネット網を介してWebサーバ2に接続する。ISDN回線を利用する場合は、Webサーバ2からDチャンネルを利用してWeb端末機3を起動してもよい。」(3頁左欄39行ないし49行)。 j.「【0018】接続確立後、Web端末機3は、Webサーバ2に設定されたアクチュエータ制御用Webページを開く。同時にWebサーバ2は、課金の処理を行なうために、ユーザIDとWebページ使用開始日時を、課金情報としてデータベースに書き込む。」(3頁右欄7行ないし11行)。 k.「【0019】ユーザは、iモード携帯電話機1からWebページを介してアクチュエータ5の制御要求を行なう。例えば、Webページに表示された目的の機器のオン/オフアイコンをクリックする。Webサーバ2は、制御要求に応じてWeb端末機3にコマンドを送信する。Web端末機3は、Webサーバ2からのコマンドに従って、アクチュエータ5を駆動する。」(3頁右欄12行ないし18行)。 l.「【0020】アクチュエータ5の動作が完了すると、Web端末機3は、Webサーバ2のアクチュエータ制御用Webページへ動作結果を書き込む。Webページを更新することによって、アクチュエータ5の制御結果がiモード携帯電話機1に表示される。制御のほかに、家電機器の状態を確認したい場合も、前述と同様に、Webページに表示された目的の機器の状態監視アイコンをクリックすることで確認できる。」(3頁右欄19行ないし26行)。 m.「【0021】回線の切断の場合は、iモード携帯電話機1からWebページを介して回線切断依頼を行なうと、Web端末機3がWebサーバ2との回線切断処理を行なう。このとき、Webサーバ2は、ユーザIDとWebページ使用終了日時をデータベースに書き込む。前述した課金情報と照合を行ない、Webページ使用時間の算出処理を行なう。算出された使用時間に応じてユーザに課金を行なう。このほかに、回線接続サービスとして定額の基本料金をユーザから徴収する。」(3頁右欄27行ないし35行)。 n.「【0022】図3を参照して、異常等発生時に、センサ4の感知した計測値をiモード携帯電話機1へ自動で通報させる場合を説明する。Web端末機3は、センサ4から取得したセンサデータの値が、通報すべき異常な値になったか否かを判断する。異常な値の場合は、Webサーバ2にダイアルアップ接続を行なう。接続が確立されたら、Web端末機3からiモード携帯電話機1へ、異常などの内容を記したメールを送信する。このとき、ユーザがメールを着信できない状況にあった場合でも、Webサーバ2は、日時と異常などの内容を記したメールをデータベース化して記憶しているので、Webサーバ2にアクセスすることにより、即座に履歴を取り出すことができる。メール送信後、Web端末機3は、Webサーバ2との回線切断処理を行なう。」(3頁右欄36行ないし49行)。 o.「【0023】以下、簡易ホームセキュリティのいくつかの具体例について説明する。監視カメラアングルなどの微調整を行なう場合は、iモード携帯電話機に表示されるWebページ上の矢印アイコンをクリックすることで、1度単位で方向を変えることができる。ズームの場合も同様にしてできる。赤外線センサが侵入者を検出した場合に、携帯端末機1を呼び出して監視カメラの映像を送ることができる。アイコン表示でない場合は、対象装置の番号を選択して数値を入力するなどの方法で制御する。」(3頁右欄50行ないし4頁左欄9行)。 p.「【0024】金庫・ショーケースの監視の場合は、iモード携帯電話機に表示されるWebページ上の金庫アイコンをクリックすると、金庫の施錠状態と監視カメラの映像が表示される。施錠したいときは、iモード携帯電話機に表示されるWebページ上の施錠アイコンをクリックすることで施錠できる。」(4頁左欄10行ないし15行)。 q.「【0025】ガレージのシャッタ開閉操作を行なう場合は、iモード携帯電話機に表示されるWebページ上のガレージアイコンをクリックすると、開閉状態が表示されるので、開閉ボタンをクリックすると開閉できる。自家用車に盗難センサとDoPa網を利用する携帯電話機を搭載して、センサ情報をパケット通信でサービスセンタに送信することで、自家用車両の防犯管理を行なうこともできる。」(4頁左欄16行ないし23行)。 r.「【0029】iモード携帯電話機を利用する例で説明したが、これに限らず、インターネット網にアクセスできるモバイル情報端末であれは、同様に利用できる。」(4頁左欄43行ないし45行)。 s.「【0030】上記のように、本発明の第1の実施の形態では、モバイル制御・計測システムを、インターネットにダイアルアップ接続するWeb端末機に接続されたセンサや各種装置を、iモード携帯電話機を利用して、センターのサーバを介して遠隔制御する構成としたので、家庭内に通常備えられている安価で簡易なパソコンや携帯電話などを利用して、ユーザが家庭内機器等の管理と遠隔操作を行なうことができる。」(4頁左欄46行ないし右欄3行)。 (2)記載されているといえる事項 a)先願明細書の図1及び関連する記載を参酌すれば、Webサーバ2は中継側であることは明らかである。 b)先願明細書の段落番号【0016】には「ところで、通常の家庭でのインターネット網への接続環境は、ダイアルアップ接続が一般的である。したがって、Web端末機3は、通常はインターネット網に回線接続されていない。Webサーバ2から接続する場合は、Webサーバ2から公衆電話回線を介してWeb端末機3に通信し、Web端末機3からダイアルアップ接続するように指令を出す。Web端末機3は、Webサーバ2からの回線接続要求に応じて、インターネット網を介してWebサーバ2に接続する。ISDN回線を利用する場合は、Webサーバ2からDチャンネルを利用してWeb端末機3を起動してもよい。」(3頁左欄39行ないし49行)の記載があり、そして、公衆電話回線は電話番号に基づいて働きかけるものであり、インターネットはインターネットのアドレスデータに基づいて働きかけるものであることは明らかであるから、Webサーバ2がWeb端末機3に回線接続要求するために必要なデータは、電話番号もしくはインターネットのアドレスデータであるといえる。 c)先願明細書には、段落番号【0016】の記載に加えて「【0018】接続確立後、Web端末機3は、Webサーバ2に設定されたアクチュエータ制御用Webページを開く。同時にWebサーバ2は、課金の処理を行なうために、ユーザIDとWebページ使用開始日時を、課金情報としてデータベースに書き込む。」(3頁右欄7行ないし11行)、「【0019】ユーザは、iモード携帯電話機1からWebページを介してアクチュエータ5の制御要求を行なう。例えば、Webページに表示された目的の機器のオン/オフアイコンをクリックする。Webサーバ2は、制御要求に応じてWeb端末機3にコマンドを送信する。Web端末機3は、Webサーバ2からのコマンドに従って、アクチュエータ5を駆動する。」(3頁右欄12行ないし18行)、「【0020】アクチュエータ5の動作が完了すると、Web端末機3は、Webサーバ2のアクチュエータ制御用Webページへ動作結果を書き込む。Webページを更新することによって、アクチュエータ5の制御結果がiモード携帯電話機1に表示される。制御のほかに、家電機器の状態を確認したい場合も、前述と同様に、Webページに表示された目的の機器の状態監視アイコンをクリックすることで確認できる。」(3頁右欄19行ないし26行)の記載があることから、中継側であるWebサーバには、ユーザIDと、このユーザIDに対応付けられて登録されたユーザが監視したい場所に設置されているWeb端末機に付与されている電話番号もしくはアドレスデータとが登録されているといえる。 d)加えて、先願明細書の段落番号【0015】には「図2を参照して、ユーザがiモード携帯電話機1から自宅の家電機器などを制御する場合を説明する。iモード携帯電話機1のWeb機能を利用して、Webサーバ2のWebページを開き、ユーザIDとパスワードを入力する。ユーザIDの認証が完了しユーザが確認されると、Webサーバ2は、Web端末機3に回線接続要求を出して起動する。」(3頁左欄32行ないし38行)の記載があり、WebサーバにおいてユーザIDの認証を行い、そして、認証後にWebサーバ2がWeb端末機3に回線接続要求を出すことが認められることから、中継側であるWebサーバには、ユーザIDと、このユーザIDに対応付けられて登録されたユーザが監視したい場所に設置されているWeb端末機に付与されている電話番号もしくはアドレスデータとが登録されている、本願発明でいうところの「利用者データベース」を備えているといえる。 e)Webサーバ2はユーザIDの認証,Web端末機3に回線接続要求することから、Webサーバ2には、ユーザIDの認証するために必要な「ユーザID(特定情報)を入力する手段」、ユーザIDの認証のための「検索する手段」、Web端末機3に回線接続要求するための「Web端末に働きかける手段」を当然備えているといえる。 f)先願明細書には、「【0018】接続確立後、Web端末機3は、Webサーバ2に設定されたアクチュエータ制御用Webページを開く。同時にWebサーバ2は、課金の処理を行なうために、ユーザIDとWebページ使用開始日時を、課金情報としてデータベースに書き込む。」、「【0019】ユーザは、iモード携帯電話機1からWebページを介してアクチュエータ5の制御要求を行なう。例えば、Webページに表示された目的の機器のオン/オフアイコンをクリックする。Webサーバ2は、制御要求に応じてWeb端末機3にコマンドを送信する。Web端末機3は、Webサーバ2からのコマンドに従って、アクチュエータ5を駆動する。」の記載があり、また、iモード等のサービスを受けるためは、アクセスする利用者とサービスを提供する側と予め契約をすると考えられることから、先願明細書に記載された「モバイル制御・計測システム」は、アクセスしたユーザ側と予め契約されてユーザIDに対応されて登録されている電話番号もしくはアドレスデータを用いているものといえる。 2.先願明細書に記載された発明 したがって、先願明細書には、 「インターネットや電話網からなる通信回線網の中に設置されたWebサーバに於ける通信回線を用いたモバイル制御・計測システムであって、 中継側であるWebサーバ側に、ユーザIDと、このユーザIDに対応付けられて登録されたユーザが監視したい場所に設置されているWeb端末機に付与されている電話番号もしくはアドレスデータと、が登録されている利用者データベースを備え、 インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくるユーザのユーザID、パスワードなどの認証データの特定情報を入手する手段と、 この入手した特定情報が、前記利用者データベースに予め登録された登録情報と一致するか否かを検索する手段と、 前記特定情報と登録情報とが一致したとき、前記アクセスしたユーザ側と予め契約されてユーザIDに対応付けられて登録されている電話番号もしくはアドレスデータを用いて、前記Webサーバがインターネットや電話網からなる通信回線網を利用してWeb端末に働きかける手段と、 前記Web端末から、監視手段で捕捉したデータとして送信される情報を入手する手段と、 前記Web端末から入手した情報を、前記Webサーバが、インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて、予め契約し登録されている前記アクセスした利用者に供給する手段と、 からなる通信回線を用いたモバイル制御・計測システム。」の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。 第4.対比 1.対比 本願発明と先願発明とを対比すると、 先願発明の「Webサーバ」、「ユーザ」、「ユーザID」、「Web端末」、「モバイル制御・計測システム」は、それぞれ、本願発明の「管理コンピュータ」、「利用者」、「利用者ID」、「監視端末」、「情報供給システム」に相当することは明らかであるから、両者は以下の点で一致し、一応相違する。 2.一致点 インターネットや電話網からなる通信回線網の中に設置された管理コンピュータに於ける通信回線を用いた情報供給システムであって、 中継側である管理コンピュータ側に、利用者IDと、この利用者IDに対応付けられて登録された該利用者が監視したい場所に設置されている監視端末に付与されている電話番号もしくはアドレスデータと、が登録されている利用者データベースを備え、 インターネットや電話網からなる通信回線網を利用してアクセスしてくる利用者のID番号、パスワードなどの認証データの内少なくとも一つの特定情報を入手する手段と、 この入手した特定情報が、前記利用者データベースに予め登録された登録情報と一致するか否か検索する手段と、 前記特定情報と登録情報とが一致したとき、前記アクセスした利用者側と予め契約されて利用者IDに対応付けられて登録されている電話番号もしくはアドレスデータを用いて、前記管理コンピュータがインターネットや電話網からなる通信回線網を利用して監視端末に働きかける手段と、 前記監視端末から、監視手段で捕捉したデータとして送信される情報を入手する手段と、 前記監視端末から入手した情報を、前記管理コンピュータが、インターネットや電話網からなる通信回線網を用いて、予め契約し登録されている前記アクセスした利用者に供給する手段と、 からなる通信回線を用いた情報供給システム。」 3.相違点 (1)本願発明の監視端末には、中継側である管理コンピュータを認証可能な認証データが登録されており、この認証データにより前記管理コンピュータを認定するのに対して、先願明細書には、そのようなことの明示の記載がない点。 (2)本願発明には、管理コンピュータから監視端末の通信端末に接続不能な状態、若しくは監視手段からの情報が前記管理コンピュータに送信されてこない状態が、前記管理コンピュータで確認された時に、所定の異常通知をアクセスした利用者に送信する手段を備えているのに対して、先願明細書には、そのような手段について明示の記載がない点。 第5.当審の判断 そこで、上記相違点について検討する。 1.はじめに まず、発明が解決しようとする課題に関して、本願明細書には、「そこで、本発明にあっては、通信回線(有線、無線を含む)を利用して、必要な時、また心配になった時に限らず、頻繁に断続的にでも特定領域である例えば自宅内の様子を監視できるようにした通信回線システムを用いた特定領域の監視システムを提供することによって泥棒の侵入の抑止力はもとより、早急な警察絵の通報が可能となり、また異常の有無をリアルタイムに知れることにより、発呼者に安心を与えられる。また寝たきりの老人や子供を残して外出する場合にも外出先から安価にモニターできるようにする通信回線を用いた情報供給システム、および前記情報の一つである監視情報を供給する監視端末を提供することを目的としている。」(【発明が解決しようとする課題】)の記載があり、一方先願明細書には、「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、モバイル制御・計測システムに関し、特に、携帯端末機からインターネット網を介して遠隔地にある各種装置の状態を監視し操作するモバイル制御・計測システムに関するものである。」(2頁左欄35行ないし39行)、「【0020】・・・アクチュエータ5の制御結果がiモード携帯電話機1に表示される。制御のほかに、家電機器の状態を確認したい場合も、前述と同様に、Webページに表示された目的の機器の状態監視アイコンをクリックすることで確認できる。」(3頁右欄19行ないし26行)、「【0022】 図3を参照して、異常等発生時に、センサ4の感知した計測値をiモード携帯電話機1へ自動で通報させる場合を説明する。Web端末機3は、センサ4から取得したセンサデータの値が、通報すべき異常な値になったか否かを判断する。異常な値の場合は、Webサーバ2にダイアルアップ接続を行なう。接続が確立されたら、Web端末機3からiモード携帯電話機1へ、異常などの内容を記したメールを送信する。このとき、ユーザがメールを着信できない状況にあった場合でも、Webサーバ2は、日時と異常などの内容を記したメールをデータベース化して記憶しているので、Webサーバ2にアクセスすることにより、即座に履歴を取り出すことができる。メール送信後、Web端末機3は、Webサーバ2との回線切断処理を行なう。」(3頁右欄36行ないし49行)、「【0023】以下、簡易ホームセキュリティのいくつかの具体例について説明する。監視カメラアングルなどの微調整を行なう場合は、iモード携帯電話機に表示されるWebページ上の矢印アイコンをクリックすることで、1度単位で方向を変えることができる。ズームの場合も同様にしてできる。赤外線センサが侵入者を検出した場合に、携帯端末機1を呼び出して監視カメラの映像を送ることができる。アイコン表示でない場合は、対象装置の番号を選択して数値を入力するなどの方法で制御する。」(3頁右欄50行ないし4頁左欄9行)。「【0024】金庫・ショーケースの監視の場合は、iモード携帯電話機に表示されるWebページ上の金庫アイコンをクリックすると、金庫の施錠状態と監視カメラの映像が表示される。施錠したいときは、iモード携帯電話機に表示されるWebページ上の施錠アイコンをクリックすることで施錠できる。」(4頁左欄10行ないし15行)。「【0025】ガレージのシャッタ開閉操作を行なう場合は、iモード携帯電話機に表示されるWebページ上のガレージアイコンをクリックすると、開閉状態が表示されるので、開閉ボタンをクリックすると開閉できる。自家用車に盗難センサとDoPa網を利用する携帯電話機を搭載して、センサ情報をパケット通信でサービスセンタに送信することで、自家用車両の防犯管理を行なうこともできる。」(4頁左欄16行ないし23行)の記載があるように、本願発明と先願発明とは、同様の課題を解決するものであるといえる。 2.相違点の検討 そこで、相違点(1)について検討するに、ネットワークを通じて通信を行う場合には、他の装置から通信の要求を受けたときに、その装置(発信者装置)と通信をしてよいか判断するために認証を行うのが技術常識であること(特開平6-132954号公報、特開平5-227162号公報、特開平7-170256号公報、特開平10-79732号公報、特開平6-53956号公報、特開平6-268710号公報)、また、先願発明はセキュリティに関する発明を対象としていることを考慮すれば、先願発明のWeb端末(監視端末)には、中継側であるWebサーバ(管理コンピュータ)を認証可能な認証データが登録され、この認証データにより前記Webサーバ(管理コンピュータ)を認定するものを当然備えているとみるのが自然であり技術常識である。したがって、上記相違点(1)の「監視端末には、中継側である管理コンピュータを認証可能な認証データが登録されており、この認証データにより前記管理コンピュータ認定する」ことは、技術常識を参酌すれば課題解決するための具体的手段における微差であるといえる。 次に、相違点(2)について検討するに、通信分野において、接続不能な状態が確認された時に、アクセスした利用者に伝えることは技術常識であること(特開平11-296459号公報、特開平10-190890号公報、特開平6-85884号公報、特開平8-273067号公報、特開平8-172490号公報、特開平2-249397号公報、特開昭63-173436号公報、特開昭63-124194号公報、特開平10-149492号公報)、また、先願発明はセキュリティに関する発明を対象とし、アクセスした利用者に何も伝えなことはセキュリティの意味をなさないことを考慮すれば、先願発明には、Webサーバ(管理コンピュータ)からWeb端末(監視端末)の通信端末に接続不能な状態、若しくはWeb端末(監視手段)からの情報が前記Webサーバ(管理コンピュータ)に送信されてこない状態が、前記Webサーバ(管理コンピュータ)で確認された時に、所定の異常通知をアクセスしたユーザ(利用者)に送信する手段を当然備えているとみるのが自然であり技術常識である。したがって、上記相違点(2)の「管理コンピュータから監視端末の通信端末に接続不能な状態、若しくは監視手段からの情報が前記管理コンピュータに送信されてこない状態が、前記管理コンピュータで確認された時に、所定の異常通知をアクセスした利用者に送信する手段」は、技術常識を参酌すれば課題解決するための具体的手段における微差であるといえる。 2.まとめ 相違点(1)、(2)は、技術常識を参酌すれば課題解決するための具体的手段における微差であるといえるから、本願発明と先願発明とは実質同一であるといえる。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は先願発明と実質的に同一であり、しかも本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり決定する。 |
審理終結日 | 2005-02-07 |
結審通知日 | 2005-02-15 |
審決日 | 2005-03-01 |
出願番号 | 特願2003-208464(P2003-208464) |
審決分類 |
P
1
8・
16-
WZ
(H04M)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 萩原 義則 |
特許庁審判長 |
佐藤 秀一 |
特許庁審判官 |
大日方 和幸 武井 袈裟彦 |
発明の名称 | 通信回線を用いた情報供給システム |
代理人 | 清水 英雄 |
代理人 | 高木 祐一 |
代理人 | 重信 和男 |
代理人 | 渡邉 知子 |
代理人 | 日高 一樹 |
代理人 | 中野 佳直 |