• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1137569
審判番号 不服2003-10933  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-13 
確定日 2006-06-08 
事件の表示 平成9年特許願第78404号「液晶装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年8月7日出願公開、特開平10-207438号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、平成8年11月21日にされた特許出願(平成8年特許願第311065号)に基づく優先権を主張して平成9年3月28日にされた特許出願(平成9年特許願第78404号。以下「本件出願」という。)につき、平成15年5月6日付けで拒絶査定がされたところ、同年6月13日にこの拒絶査定に対する審判が請求され、同年7月10日に明細書を補正対象とする手続補正書が提出されたものである。(以下、この手続補正書による補正を「平成15年7月10日付け補正」という。)

第2 平成15年7月10日付け補正についての補正の却下の決定
1 補正の却下の決定の結論
平成15年7月10日付け補正を却下する。
2 補正の却下の決定の理由
(1)平成15年7月10日付け補正の内容
上記補正は、本件出願の明細書の特許請求の範囲を次のとおり補正するものである。
ア 上記補正前
上記補正前の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】 第一の表示部と第二の表示部が液晶パネルに設けられた液晶表示装置において、
通常動作モードでは、前記第一の表示部と前記第二の表示部に情報を表示し、 前記第一の表示部には情報が表示されない省電力動作モードでは、前記第一の表示部を構成する全ての走査電極に同一の走査信号が印加されることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】 第一の表示部と第二の表示部が液晶パネルに設けられた液晶表示装置において、
通常動作モードでは、前記第一の表示部と前記第二の表示部とに情報が表示され、
前記第一の表示部には情報が表示されない省電力動作モードでは、前記第一の表示部を構成する複数の走査電極が一つの走査電極として駆動されることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】 前記第一の表示部と前記第二の表示部を構成するそれぞれの走査電極に、前記省電力動作モードにおいて、ロジック系の電源電圧と同一の電位のみで構成された駆動波形が印加されることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】 前記省電力動作モード時に、前記液晶パネルに印加する実効電圧を調整するために、前記駆動波形の1フレーム内でグラウンド電位が供給される時間を変えた波形が印加されることを特徴とする請求項3に記載の液晶表示装置。」
イ 上記補正後
上記補正後の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】 走査電極群と信号電極群により構成されるドットマトリクス部からなる第一の表示部と、前記第一の表示部の走査電極とは共通しない第二の走査電極と前記信号電極群の少なくとも一つの信号電極により構成される第二の表示部とを有する液晶パネルを時分割駆動により駆動して表示する液晶表示装置であって、
前記液晶パネルは、前記第一の表示部と前記第二の表示部に情報を表示する通常動作モードと、前記第二の表示部のみに情報を表示する省電力動作モードで表示され、前記省電力動作モードでは、前記ドットマトリクス部を構成する全ての走査電極に同一の走査信号が印加されることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】 走査電極群と信号電極群により構成されたドットマトリクス部からなる第一の表示部と、第二の表示部とを有する単純マトリクス型の液晶パネルが時分割駆動により駆動される液晶表示装置であって、
通常動作モードでは、前記第一の表示部と前記第二の表示部に情報を表示し、
前記第一の表示部には情報が表示されない省電力動作モードでは、前記第一の表示部を構成する複数の走査電極が一つの走査電極として駆動されるとともに、前記第一の表示部と前記第二の表示部を構成するそれぞれの走査電極に、ロジック系の電源電圧と同一の電位のみで構成された駆動波形が印加されることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項3】 前記省電力動作モード時に、前記液晶パネルに印加する実効電圧を調整するために、グラウンド電位が供給される時間を前記駆動波形の1フレーム内で変えた波形が印加されることを特徴とする請求項2に記載の液晶表示装置。」
(2)上記補正の適否について
上記補正は、請求項1について、「第一の表示部」に「走査電極群と信号電極群により構成されるドットマトリクス部からなる」との限定を付加し、同じく「第二の表示部」に「前記第一の表示部の走査電極とは共通しない第二の走査電極と前記信号電極群の少なくとも一つの信号電極により構成される」との限定を付加し、また、請求項2を削除して同項を引用していた請求項3を独立形式とするとともに請求項の番号を整理することを含むものであって、特許法17条の2第4項の請求項の削除及び特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。
そこで、上記補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか検討する。
ア 刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の一部である特開平8-184687号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに、「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、電池などの直流電源によって駆動される携帯型あるいは机上据置き型の小型電子機器に関し、特に表示部において時刻の表示が可能な小型電子機器に関する。」、「【0009】本発明の目的は、低コストで、かつ小型である時刻表示可能な電子機器を提供することである。」、「【0010】【課題を解決するための手段】本発明は、データおよび実行すべき処理を入力する入力手段と、入力されたデータに対して入力された処理を実行し、処理結果を出力する処理手段と、時刻を出力する時計手段と、入力データおよび処理結果を表示するための主表示部と、時刻を表示するための時刻表示部とを有する表示手段と、入力手段および処理手段の出力に基づいて、入力データおよび処理結果を主表示部に表示する第1の駆動手段と、時計手段の出力に基づいて、時刻を前記時刻表示部に表示する第2の駆動手段と、第1および第2駆動手段を選択的に制御し、表示手段の表示態様を切換える制御手段とを含むことを特徴とする時刻表示機能を備えた電子機器である。また本発明は、前記第1の駆動手段に電力を供給する第1の電源手段と、前記第2の駆動手段に電力を供給する第2の電源手段とを含み、前記制御手段は、表示態様に応じて第1および第2の電源手段による電力の供給および遮断を制御することを特徴とする。また本発明は、表示態様の切換えを指示する切換指示手段を含み、前記制御手段は、切換指示手段の出力に応答して表示態様を切換えることを特徴とする。また本発明は、前記制御手段は、予め定められた条件に基づいて表示態様を切換えることを特徴とする。また本発明は、表示態様の切換えを指示する切換指示手段と、表示態様の切換えを、前記切換指示手段の出力に基づいて行うか、予め定められた条件に基づいて行うかを選択する選択手段とを含み、前記制御手段は、選択手段の出力に基づいて、切換指示手段の出力に応答して、または予め定められた条件に基づいて表示態様を切換えることを特徴とする。」、「【0016】【実施例】図1は、本発明の一実施例である電子機器51の構成を示すブロック図であり、図2は電子機器51の斜視図である。電子機器51は、CPU52と、入力キー群53と、液晶表示パネル54と、RAM57a,57b,…と、ROM58と、電源59とを含んで構成される。【0017】CPU52は、常に計時動作を実行して時刻データを出力する時計回路61と、各駆動回路に駆動電圧を供給するブリーダ回路62と、後述するドット表示部81を駆動するための第1駆動回路66と、後述する記号表示部83を駆動するための第2駆動回路67と、後述する時刻表示部82を駆動するための第3駆動回路68とを含んで構成される。時計回路61から供給される時刻データは、時刻、年月日、および曜日の情報を含んでおり、電子機器51において実行される所定のプログラムにおいて利用される。ブリーダ回路62は、主表示部であるドット表示部81および記号表示部83に駆動電圧を供給する第1ブリーダ回路63と、時刻表示部82に駆動電圧を供給する第2ブリーダ回路64とを含んで構成される。【0018】CPU52には電子機器51の各構成要素が接続され、CPU52は各構成要素の制御を行う。CPU52は、電源59から供給される電力によって動作し、ROM58に格納されているプログラムに従って入力キー群53からの入力に応答した処理を行い、行われた処理の結果などがRAM57に一時的に格納される。第3駆動回路68は、時計回路61から供給される時刻データに従って、第2ブリーダ回路64から供給される各駆動電圧を選択的に時刻表示部82の各電極に印加する。第1駆動回路66および第2駆動回路67は、CPU52で行われた処理によるデータに従って、第1ブリーダ回路63から供給される各駆動電圧を選択的にドット表示部81および記号表示部83の各電極に印加する。【0019】上述のように構成される電子機器51は、ROM58に、たとえば住所録などの複数のプログラムが予め格納されており、使用者は所望するプログラムを入力キー群53を用いて指示し、CPU52に実行させ、プログラムに従った表示がドット表示部81に行われる。使用者は、実行中のプログラムの要求に対して入力キー群53を用いてデータを入力し、入力されたデータおよびデータに対する処理の結果などがRAM57に格納されるとともにドット表示部81に表示される。【0020】図2に示される電子機器51において、図1に示す各構成要素は筺体71内に格納される。筺体71の一方表面71aに、液晶表示パネル54と入力キー群53とが設けられている。入力キー群53は、モード切換キー73、選択キー74、電源スイッチ75、数字および記号キーなどを含んで構成される。電源スイッチ75によって電子機器51のON,OFFが行われる。切換指示手段であるモード切換キー73は、ブリーダ回路62におけるトランジスタT3,T6の導通、遮断を制御する。選択手段である選択キー74によって、モード切換キー73を用いてモードの切換えを行うか、あるいは予め条件を定め当該条件を満たしたときにモードを切換えるかを選択することができる。【0021】図3は、ブリーダ回路62と電源59とを示した回路図である。ブリーダ回路62において、第1ブリーダ回路63と第2ブリーダ回路64とは並列に接続される。電源59は電位Vccを供給する。ドット表示部81および記号表示部83に各レベルの駆動電圧を供給する回路である第1ブリーダ回路63は、抵抗r1a,r2a,r3a,r4aおよびトランジスタT1,T2,T3によって構成される。各抵抗r1a〜r4aは、電位Vcc側から順番に直列に接続される。抵抗r1aと並列にトランジスタT1が接続され、抵抗r4aと並列にトランジスタT2が接続される。また、トランジスタT3は抵抗r4aとグランド電位との間に接続され、第1ブリーダ回路63の導通、遮断を制御する。トランジスタT1,T2をON,OFFすることによって抵抗r1aあるいは抵抗r4aをショートさせ、ドット表示部81および記号表示部83に供給する駆動電圧のレベルを切換える。第1ブリーダ回路63から電位VAa,VBa,VCa,Vcc、およびグランド電位(GND)が供給される。【0022】時刻表示部82に各レベルの駆動電圧を供給する回路である第2ブリーダ回路64は、抵抗r1b,r2b,r3b,r4bおよびトランジスタT4,T5,T6によって構成される。第2ブリーダ回路64の各抵抗r1b〜r4bは、第1ブリーダ回路63における各抵抗r1a〜r4aと同様に、電位Vcc側から順番に直列に接続される。r1a《r1b,r2a《r2b,r3a《r3b,r4a《r4bとなるように各抵抗値が定められるので、第2ブリーダ回路64から供給される電流は、第1ブリーダ回路63から供給される電流よりも非常に小さい。なお、第1ブリーダ回路63と第2ブリーダ回路64とにおいて、抵抗r1a〜r4aのそれぞれの比率と、抵抗r1b〜r4bのそれぞれの比率とはそれぞれ等しくなるように定められる。抵抗r1bと並列にトランジスタT4が接続され、抵抗r4bと並列にトランジスタT5が接続される。また、トランジスタT6は抵抗r4bとグランド電位との間に接続され、第2ブリーダ回路64の導通、遮断を制御する。トランジスタT4,T5をON,OFFすることによって抵抗r1bあるいは抵抗r4bをショートさせ、時刻表示部82に供給する駆動電圧のレベルを切換える。第2ブリーダ回路64から電位VAb,VBb,VCb,Vcc、およびグランド電位(GND)が供給される。【0023】ブリーダ回路62において、トランジスタT3およびトランジスタT6を選択的に導通、遮断することで液晶表示パネル54に供給する電流の量を制御することができる。トランジスタT3,T6が導通しているモードでは、ドット表示部81および記号表示部83と時刻表示部82とに表示が行われ、トランジスタT3が遮断され、トランジスタT6が導通しているモードでは、ドット表示部81および記号表示部83は消灯され、時刻表示部82には表示が行われる。また、トランジスタT3,T6がともに遮断されているモードでは、各表示部において表示が行われない。【0024】前述のそれぞれのモードの設定は、前記モード切換キー73を押圧することによって変更することができる。また、予め定めた条件を満足したときに表示態様が切換わるように設定することもできる。たとえば、トランジスタT3,T6の導通、遮断を制御するコントロール信号を、CPU52に含まれるタイマ回路と連動させることで、自動的に表示態様を変更することができる。前記モード切換キー73を用いて切換える場合と、予め定めた条件を満足したときに切換わる場合とは、選択手段である選択キー74によって選ぶことができる。前記予め定めた条件としては、たとえばタイマ回路に設定した電源投入後の経過時間およびキー入力が行われない時間などがある。なお、本実施例においては、時刻表示部82のみを消灯するモードについては述べていないが、トランジスタT3,T6を制御することによって、前述の各モードと同様に設定することが可能である。【0025】図4は、電子機器51における液晶表示パネル54の拡大平面図であり、図5は時刻表示部82に設けられる各電極の配線図である。図4に示される電子機器51における液晶表示パネル54は、主表示部であるドット表示部81および記号表示部83と時刻表示部82とによって構成される。ドット表示部81は、ドットマトリクス方式によって駆動され、時刻表示部82はセグメント方式によって駆動される。また、記号表示部83は、たとえば「電話」「計算」などと表示できるように予め用意された電極全体に、駆動電圧を印加することによってそれぞれの記号が表示される。時刻表示部82においては、時刻を表示するために必要な表示要素である時刻表示部用セグメント電極TS1,TS2,…,TS25(総称するときは参照符TSを用いる)および時刻表示部用コモン電極TC1,TC2,…,TC25(総称するときは参照符TCを用いる)が、セグメント電極用信号線SL1,SL2,…,SL10およびコモン電極用信号線CL1,CL2,CL3とそれぞれ接続される。図5において、時刻表示部用セグメント電極TSと時刻表示部用コモン電極TCとは共通に示されているが、後述するように液晶層をはさんで時刻表示部用セグメント電極TSと時刻表示部用コモン電極TCとが形成される。各信号線を介してそれぞれの電極に駆動電圧が印加されることによって、時刻が表示される。」、「【0030】図9は、本実施例における他の構成例である電子機器92の構成を示すブロック図である。電子機器92では、液晶表示パネル94を構成する電極数が多いために、液晶表示パネル94における各電極を駆動するための回路を、CPU52の外部に設けている。コモンドライバ96a,96bは、コモン電極Cを駆動する。コモンドライバ96bには、時刻表示部用コモンドライバ97が含まれ、時刻表示部用コモン電極TCを駆動する。また、セグメントドライバ98a,98b,98cは、セグメント電極Sを駆動する。セグメントドライバ98aには、時刻表示部用セグメントドライバ99が含まれ、時刻表示部用セグメント電極TSを駆動する。」、「【0035】【発明の効果】以上のように本発明によれば、表示手段における主表示部と時刻表示部とを第1の駆動手段および第2の駆動手段によって別々に駆動し、各駆動手段を制御手段によって選択的に制御することで表示手段の表示態様を切換えているので、表示手段における主表示部および時刻表示部のいずれか一方のみに表示を行うことができる。【0036】また本発明によれば、第1および第2駆動手段にそれぞれ対応させて設けられた第1および第2電源手段は、表示手段の表示態様に応じて制御手段によって電力の供給および遮断が制御されるので、主表示部および時刻表示部のいずれか一方のみが表示を行う場合、各表示部を駆動するそれぞれの駆動手段に対応付けられた電源手段のみが動作し、電力を供給するため各表示部いずれか一方のみに表示を行う場合、無駄な電力を消費することはない。【0037】さらに本発明によれば、前記制御手段は切換指示手段による表示態様の切換えの指示に応じて表示態様を切換えるので、使用者が切換指示手段に指示することで表示手段の表示態様を所望する表示態様に切換えることができ、主表示部の表示を行わないときには消費電力を節約することができる。【0038】またさらに本発明によれば、予め制御手段に条件を与えておくことで、使用者が指示しなくても予め定めた条件を満たしたときに制御手段によって表示態様が切換わるので、その度指示を出さなくても表示態様が切換わり、使用者の手間を省くことができる。【0039】またさらに本発明によれば、表示手段の表示態様の切換えを、切換指示手段の出力によって切換えるか、もしくは予め定められた条件に基づいて切換えるかを選択手段によって選択することによって行っているので、使用者は表示態様の切換えを直接指示するか予め設定しておく条件によって表示態様を切換えるかを選択することができ、電子機器の使用される状況などによって表示態様の切換方法を選択することができる。また、選択手段によって使用者の所望する表示態様に確実に切換えることができ、かつ使用者の手間を省くことができる。」等の記載がされている。
イ 当審の判断
本願補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された複数のコモン電極、複数のセグメント電極、ドット表示部81は、それぞれ本願補正発明の「走査電極群」、「信号電極群」、「ドットマトリクス部からなる第一の表示部」に相当する。刊行物1に記載された時刻表示部82は、ドット表示部81とは別の表示部である点で、本願補正発明の「第二の表示部」に相当する。刊行物1に記載された液晶表示パネル54は、二つの表示部を有する液晶パネルである点で、本願補正発明の「液晶パネル」に相当する。刊行物1に記載された電子機器51は、液晶表示パネル54を有して液晶表示を行う点で、本願補正発明の「液晶表示装置」に相当する。また、刊行物1に記載された、トランジスタT3、T6が導通しているモードは、ドット表示部81及び時刻表示部82に情報を表示するモードであるから、本願補正発明の「通常動作モード」に相当し、刊行物1に記載された、トランジスタT3が遮断され、トランジスタT6が導通しているモードは、時刻表示部82のみに情報を表示するモードであるから、本願補正発明の「省電力動作モード」に相当する。
そうすると、本願補正発明と刊行物1に記載された発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点1及び2で相違する。
一致点 本願補正発明と刊行物1に記載された発明とが「走査電極群と信号電極群により構成されるドットマトリクス部からなる第一の表示部」と、「第二の表示部」とを有する「液晶パネルを時分割駆動により駆動して表示する液晶表示装置であって、前記液晶パネルは、前記第一の表示部と前記第二の表示部に情報を表示する通常動作モードと、前記第二の表示部のみに情報を表示する省電力動作モードで表示され」る「液晶表示装置」である点。
相違点1 本願補正発明では第二の表示部が「前記第一の表示部の走査電極とは共通しない第二の走査電極と前記信号電極群の少なくとも一つの信号電極により構成される」のに対し、刊行物1にはこのような記載がない点。
相違点2 本願補正発明では「前記省電力動作モードでは、前記ドットマトリクス部を構成する全ての走査電極に同一の走査信号が印加される」のに対して、刊行物1にはこのような記載がない点。
相違点1について検討すると、マトリクス形表示部とセグメント形表示部のような複数の表示部を有する場合に、セグメント形表示部のような第二の表示部について、その走査電極をマトリクス形表示部のような第一の表示部の走査電極とは共通しないものとし、その信号電極を第一の表示部の信号電極とすることは、本件出願明細書にも従来の技術として記載され、また、例えば実願昭61-98691号(実開昭63-4590号)のマイクロフィルムにも示され、周知であり、刊行物1に記載された発明にこのような周知の技術手段を適用し、相違点1のようにすることは当業者が適宜に行いうることである。
相違点2について検討すると、表示を行わないドットマトリクス部を構成する全ての走査電極に同一の走査信号が印加されるようにすることは、例えば特開昭57-49993号公報、特開平4-78823号公報、特開平4-165329号公報にも記載され、周知であり、刊行物1に記載された発明における表示を行わないドット表示部にこのような周知の技術手段を適用し、相違点2のようにすることは当業者が適宜に行いうることである。
本願補正発明の効果についてみても、刊行物1に記載された発明及び周知の技術手段から予測しうるものであって、格別のものではない。
したがって、本願補正発明は、当業者が刊行物1に記載された発明及び周知の技術手段に基いて容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
以上のとおりであるから、上記補正は、平成15年法律第47号による改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項の規定に違反するものであり、同法159条1項において準用する同法53条の規定により却下しなければならないものである。

第3 本件出願に係る発明
平成15年7月10日付け補正は上記のとおり却下したので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記補正前の、平成15年3月17日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された上記のとおりのものである。

第4 引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の一部及びその記載事項は、上記のとおりである。

第5 当審の判断
本願発明を限定したものである本願補正発明が、前示のとおり、当業者が刊行物1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が刊行物1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものである。

第6 まとめ
以上のとおりであるから、本件出願の請求項1に係る発明である本願発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その余の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本件出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-05 
結審通知日 2006-04-11 
審決日 2006-04-24 
出願番号 特願平9-78404
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴野 幹夫  
特許庁審判長 瀧 廣往
特許庁審判官 山口 敦司
山川 雅也
発明の名称 液晶装置  
代理人 松下 義治  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ