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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1137580
審判番号 不服2003-15779  
総通号数 79 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-08-14 
確定日 2006-06-08 
事件の表示 特願2000-248357「情報提供システム及び情報提供方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月28日出願公開,特開2002- 63277〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成12年8月18日の出願であって,平成15年2月7日付けで手続補正書が提出されたが,平成15年7月11日に当該補正書について補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定がされ,これに対し,同年8月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年9月16日付で手続補正がなされたものである。

第2 平成15年9月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
1 補正却下の決定の結論
平成15年9月16日付けの手続補正を却下する。

2 理由
平成15年9月16日付手続補正書により特許請求の範囲の請求項1ないし8が補正され,そのうち請求項1は次のとおりである。
「【請求項1】 心身上のバリアをもつ者の行動を支援するための支援情報を,当該者又は当該者の介護者が操作する情報要求元の通信端末に提供するシステムであって,
バリア毎に分類され,選択用ページ画面に形成されている複数のバリア項目のいずれかが選択されることにより,そのバリア項目に関連する詳細ページ画面に遷移する階層構造のページ画面を前記通信端末に提示するページ処理手段と,
支援情報を蓄積する支援情報蓄積手段であって,当該支援情報蓄積手段は,バリアをもつ者を含む特定者が提供対象となる前記支援情報を随時蓄積可能な形態で構築されるものであり,各支援情報は,関連情報のリンク先が埋め込み可能な構造のものである,支援情報蓄積手段と,
それぞれ,情報の構造を所定のバリアを克服することができる表現形態の電子構造に加工する複数種類の情報表現モジュールと,
前記ページ画面の提示に起因する前記通信端末からの情報要求の内容の解析と,提供対象となる情報の電子構造やその情報の内容の解析とを行い,情報要求元のバリアと要求された支援情報の電子構造を特定する情報解析手段と,
表現形態テーブルに定義されているバリアに対応する情報表現の仕方に基づいて,少なくとも1つの前記情報表現モジュールをバリアに応じて起動し,前記電子構造を加工して,加工した情報を前記通信端末から出力させる制御手段と,
前記支援情報の出力履歴を前記情報要求元の識別データと共に記憶する出力履歴記憶手段とを備えてなる,
情報提供システム。」

上記補正は,平成14年9月13日付け補正書における特許請求の範囲の請求項の内容を減縮する補正であり,特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された,特開平11-272574号公報(以下「引用例」という。)には次の事項が記載されている。

(1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ユーザからの情報送信要求を情報配信サーバが受けて,その情報送信要求に基づいた情報をクライアント情報機器に送信する情報配信方法において,前記情報配信サーバは,前記情報送信要求を出しているクライアント情報機器の状況とそれを使用するユーザの状況の少なくとも一方の状況を把握し,その把握内容に基づいてそれに適合した情報をクライアント情報機器に送信することを特徴とする情報配信方法。」

(2) 「【請求項7】 前記ユーザの個人的な状況を示す内容を把握し,その把握結果に基づいてそれに適合した情報を送信する処理は,
ユーザの視力や色弱などの状況に合わせた文字の大きさ,色,画像サイズとして送信することを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の情報配信方法。」

(3) 「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はインターネットやイントラネットなどのネットワーク上の情報を閲覧・利用する際,情報を受け取る側のクライアント情報機器の状況やそれを利用するユーザの個人的な状況を,情報配信サーバ側が把握してユーザ側の状況に適応した情報を送るようにした情報配信方法および情報配信システム並びに情報配信処理プログラムを記録した記録媒体に関する。」

(4) 「【0053】一方,情報配信サーバ2では,クライアント情報機器1から送られてきた情報送信要求と,クライアント情報(ユーザの個人情報とブラウザの状況を示す情報)を受け取ると(ステップs4),情報送信要求に基づいてデータベース部21から情報を取り出すとともに,取り出された情報に対して,送られてきたクライアント情報(ユーザの個人情報とブラウザの状況を示す情報)を解釈し,どのように処理すれば,ユーザにとって見やすい表示となるか,つまり,クライアント情報機器1で見やすい表示が行えるかを判断し,その判断に基づいて情報を選択,作成,さらには再構成などの処理を行う(ステップs5)。具体的には,ユーザ情報(ブラウザの状況を示す情報およびユーザの個人情報)に基づいて次の(a)〜(f)のような処理を施す。
【0054】(a)視力の弱いユーザに対しては,大きめの文字とするために文書を拡大するなどの処理を行う。
【0055】(b)色弱のユーザに対しては,そのユーザが見えにくい色の表示を行わないように情報の中に存在する色を変更する。たとえば,背景の色を変更して文字を見やすくするというような処理を行う。」

(5) 「【0076】そして,情報配信サーバ2では,ユーザ側から送られてきたクライアント情報から,ユーザ個人の様々な状況を判断し,それに適応した情報の選択,作成,さらには,再構成などの処理を行ったのち,クライアント情報機器1側に送信する。これにより,送られてくる情報は,個々のユーザの個人的な様々な状況が考慮されたものとなる。また,無駄な情報は送らないので,クライアント情報機器1の記憶手段の記憶領域を無駄に使うこともなく,さらに,通信伝送路3を無駄に使用したりすることもなくなる。」

(6) 「【0078】また,本発明は以上説明した実施の形態に限定されるものではなく,本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば,前述したようなユーザの個人情報は,クライアント情報機器に登録しておくのではなく,情報配信サーバ側に予め登録しておくようにしてもよい。そして,ユーザがクライアント情報機器から何かの情報を要求使用とするときに,そのユーザを特定する情報を情報配信サーバ側に送ることで,情報配信サーバ側では,そのユーザを特定し,自動的に当該ユーザの個人情報を取り出し,それに対応した処理を行うようにすることもできる。これによれば,クライアント情報機器からユーザ情報をその都度送る必要がなく,手間が省けると共に,クライアント情報機器側にユーザ個人情報を蓄える必要がなくなり,クライアント情報機器の記憶手段の記憶容量を無駄に使用することがなくなる。」

4 対比・判断
(1) 本願補正発明と引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを対比する。
はじめに,インターネット技術は,本願出願時点において既に一般に普及しており,インターネットの技術が本願補正発明においても適用可能であることは当然であり,引用例に表現上表れていない事項も引用例に接する当業者が前提の技術として把握できる事項は,対比において相違点とはしない。
すなわち,インターネット画面には種々のリンク先が埋め込まれており,表示される画面は階層構造をもっており,リンク先にアクセス可能なように構成され,サーバー側には種々の情報が蓄積されるとともに,アクセスの情報も蓄積されることは,自明の事項である。
引用例には「ユーザの視力や色弱などの状況に合わせた文字の大きさ,色,画像サイズとして送信する」とあることから,引用発明は視力の弱い者や色弱の者である心身上のバリアを持つ者を対象として支援していることが理解できる。
そして,引用例の「発明の属する技術分野」の項には,「インターネットやイントラネットなどのネットワーク上の情報を閲覧・利用する際,情報を受け取る側のクライアント情報機器の状況やそれを利用するユーザの個人的な状況を,情報配信サーバ側が把握してユーザ側の状況に適応した情報を送る」と記載されていることから,引用発明では,バリアを持つ者が要求する情報を要求者の状況に合わせて配信していことが認められる。
引用例の段落【0076】には,「情報配信サーバ2では,ユーザ側から送られてきたクライアント情報から,ユーザ個人の様々な状況を判断し,それに適応した情報の選択,作成,さらには,再構成などの処理を行ったのち,クライアント情報機器1側に送信する。」と記載され,この記載とインターネットの情報閲覧が本件出願時点において,当業者に慣用されていることを勘案すると,ユーザーの個人的な状況をユーザー側の端末からサーバ側に送っており,端末での入力の際には,画面が階層構造を持ち入力するページ画面が遷移することは当業者に自明の技術である。
さらに,「個人の様々な状況を判断し,それに適応した情報の選択,作成,さらには,再構成」を行うことは,明記はされていないが,送られてきた個人の情報と適応した情報等との対応付けられたもの,例えばテーブルに基づいて選択,作成又は再構成を行っているとみるのが普通の見方である。
なお,引用発明の再構成は,本願補正発明の「情報の構造を所定のバリアを克服することができる表現形態の電子構造に加工する」ことに相当することは,明らかである。

(2) 一致点,相違点
以上の点及び本願出願時点におけるインターネットの技術常識とを踏まえると,本願補正発明と引用発明とは,次の一致点を有し,後述する相違点を備える。
ア 一致点
心身上のバリアをもつ者の行動を支援するための支援情報を,当該者が操作する情報要求元の通信端末に提供するシステムであって,バリア毎に分類され,選択用ページ画面に形成されている複数のバリア項目のいずれかが選択されることにより,そのバリア項目に関連する詳細ページ画面に遷移する階層構造のページ画面を前記通信端末に提示するページ処理手段と,支援情報を蓄積する支援情報蓄積手段であって,当該支援情報蓄積手段は,バリアをもつ者を含む特定者が提供対象となる前記支援情報を随時蓄積可能な形態で構築されるものであり,各支援情報は,関連情報のリンク先が埋め込み可能な構造のものである,支援情報蓄積手段と,それぞれ,情報の構造を所定のバリアを克服することができる表現形態の電子構造に加工する複数種類の情報表現モジュールと,前記ページ画面の提示に起因する前記通信端末からの情報要求の内容の解析と,提供対象となる情報の電子構造やその情報の内容の解析とを行い,情報要求元のバリアと要求された支援情報の電子構造を特定する情報解析手段と,表現形態テーブルに定義されているバリアに対応する情報表現の仕方に基づいて,少なくとも1つの前記情報表現モジュールをバリアに応じて起動し,前記電子構造を加工して,加工した情報を前記通信端末から出力させる制御手段と,
を備えてなる,情報提供システム。

イ 相違点
本願補正発明が,「支援情報の出力履歴を前記情報要求元の識別データと共に記憶する出力履歴記憶手段」を備えているのに対し,引用発明には,履歴に関連する記載がない点。

(3) 相違点の判断
引用例には,段落【0078】に「ユーザの個人情報は,クライアント情報機器に登録しておくのではなく,情報配信サーバ側に予め登録しておくようにしてもよい。そして,ユーザがクライアント情報機器から何かの情報を要求使用とするときに,そのユーザを特定する情報を情報配信サーバ側に送ることで,情報配信サーバ側では,そのユーザを特定し,自動的に当該ユーザの個人情報を取り出し,それに対応した処理を行う」ことが示され,ユーザの情報が記憶され,後に利用されることから,後に利用する予定がある情報を記憶しておくことは,当業者が容易に類推できる事項であり,ユーザへの支援情報を記憶する本願補正発明の手段を採用することに当業者が格別困難を伴うものとは認められない。
そして,本願補正発明の効果についても当業者が予測し得ない格別顕著な技術的効果は認められない。

(4) むすび
したがって,本願補正発明は,引用例記載の発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたもので,本願は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないので,平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反するものであり,同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 平成15年9月16日付の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成14年9月13日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「【請求項1】 心身上のバリアをもつ者の行動を支援するための支援情報を,当該者又は当該者の介護者が操作する通信端末に提供するシステムであって,
バリア毎に分類され,選択用ページ画面に形成されている複数のバリア項目のいずれかが選択されることにより,そのバリア項目に関連する詳細ページ画面に遷移する階層構造のページ画面を前記通信端末に提示するページ処理手段と,
提供対象となる前記支援情報を,バリアをもつ者を含む特定者からのオンライン入力又はオフライン入力を契機に,前記ページ処理手段により提示される所定層のページ画面とリンクさせて蓄積する支援情報蓄積手段と,
それぞれ,情報の構造を所定のバリアを克服することができる表現形態の電子構造に加工する複数種類の情報表現モジュールと,
前記ページ画面の提示に起因する前記通信端末の操作内容を検出するとともに,検出した操作内容に基づいて情報要求元のバリアと要求された支援情報の電子構造とを特定する情報解析手段と,
この情報解析手段により特定されたバリアに対応する情報表現モジュールを起動して前記特定された支援情報の電子構造を加工し,加工した支援情報を前記通信端末から出力させる制御手段と,
前記支援情報の出力履歴を前記情報要求元の識別データと共に記憶する出力履歴記憶手段とを備えてなる,
情報提供システム。」

2 当審の判断
前記第2の箇所で検討したとおり,本願発明を更に限定した本願補正発明が特許を受けることができないものであるから,限定事項を省いたこととなる本願発明も同様の理由により特許を受けることができない。

3 むすび
以上のとおりであるから,本願発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないので,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-03-22 
結審通知日 2006-04-04 
審決日 2006-04-17 
出願番号 特願2000-248357(P2000-248357)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 和俊  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 大野 弘
岡本俊威
発明の名称 情報提供システム及び情報提供方法  
代理人 鈴木 正剛  

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