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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G02F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02F |
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管理番号 | 1137644 |
審判番号 | 不服2003-4545 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-06-02 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-03-20 |
確定日 | 2006-06-09 |
事件の表示 | 平成10年特許願第223924号「バックライト装置及び液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 6月 2日出願公開、特開平11-149074〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年8月7日(優先権主張平成9年8月27日)に出願された特許出願であって、原審において平成14年6月17日付けで通知された拒絶理由通知書に対して、同年8月21日付けで手続補正書が提出された後、平成15年2月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年3月20日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月18日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成15年4月18付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年4月18日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「光源と、表面、裏面及び側端面を備えた略板状体であって、一側端面から入射する前記光源からの光を前記表面である出光面から拡散光として出射する導光体と、この導光体の出光面から出射する拡散光を一方の面で受光し、反対側の、前記拡散光を受光する面よりも粗面とされ、且つ、ヘーズ値が10%以上とされた出光面から、拡散光の最大強度方向を該出光面の法線方向にシフトさせて出光する、少なくとも一枚の光拡散シートと、この光拡散シートの出光面からの光を受光して、該光中の一方の偏光成分を透過し、他方の偏光成分を反射する偏光分離シートと、前記導光体の裏面に配置され、光を該導光体内に反射する光反射シートと、を有してなるバックライト装置であって、前記光拡散シートによって拡散光の最大角度方向を、前記偏光分離シートにおける偏光分離作用が最大となる光線入射角に近くすることを特徴とするバックライト装置。」と補正された。 上記補正は、「光拡散シート」の機能を「拡散光の最大角度方向を、前記偏光分離シートにおける偏光分離作用が最大となる光線入射角に近くする」と規定する補正であり、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第4項の規定による特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。 (2)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である、特開平7-36032号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 (a)「【0028】図2は本発明の他の実施例を示し、端面導光型バックライト光源に本発明を適用したものである。前記端面導光型バックライト光源は、端面側より光を入射可能とした導光板20と、該導光板20の端面側に配置した発光体10と、前記導光板20の一方の面に光学的に密着して設けた光散乱性を有する拡散反射板21と、導光板20の他方の面側に配置されプレーナ配向したコレステリック液晶層40と、導光板20と液晶層40との間に配置した透光性拡散板22と、前記液晶層40の反導光板側(光透過側)に配置した1/4波長板50と、から構成されている。蛍光管から成る発光体10、透光性拡散板22、CH液晶層40、1/4波長板50の構造は、図1の実施例と同様である。」(段落【0028】) (b)「【0033】図2の実施例のバックライト光源によれば、端面側より光を入射可能とした導光板20を使用し、導光板20の一方の面に光学的に密着するように光散乱性を有する拡散反射板21を設けたので、発光体10から導光板20に導かれた光は拡散反射板21により内部で拡散し、導光板20の外部に出射し、透光性拡散板22を透過する際に拡散した透過光100はCH液晶層40に導かれ、このCH液晶層40では右(又は左)円偏光成分101が透過する。一方、CH液晶層40で反射された左(又は右)円偏光成分102は、拡散反射板21を光散乱性としたので、拡散反射板21で反射する際に乱反射するとともに一部偏光を解消する。拡散反射板21で乱反射した反射光103´は部分偏光であるが、その右(又は左)円偏光成分104がCH液晶層40を透過可能となる。そして、CH液晶層40を透過した光は、1/4波長板50により直線偏光105に変換され、液晶表示装置の液晶セル70に導かれる。従って、拡散反射板21での反射により完全に偏光解消するならば、反射光の半分がCH液晶層40を透過可能となり、CH液晶層40で反射することなくCH液晶層40を透過する光を考慮すると、発光体10を発した光の75%がCH液晶層40を透過して液晶セル70に導かれることになり、図5の従来例(発光体10を発した光の50%が液晶セル70に導かれる)に比較して輝度の向上を図ることができる。また、拡散反射板21での反射光は乱反射であり、透光性拡散板22においても光が拡散するので、液晶セル70における輝度の均一性を図ることができる。」(段落【0033】) (c)図2から、発光体10、端面側より光を入射可能とした導光板20、透光性拡散板22、コレステリック液晶層40、1/4波長板50、及び拡散反射板21が配置された構成が見てとれる。 したがって、上記(a)〜(c)の記載事項からみて、引用例には以下の発明が記載されていると認める。 「発光体10と、端面から入射する発光体10からの光を表面から拡散光として出射する導光板20と、導光板20の出射光を受光する透光性拡散板22と、透光性拡散板22からの光を受光して、その右(又は左)円偏光成分101を透過し、左(又は右)円偏光成分102を反射するプレーナ配向したコレステリック液晶層40と、導光板20の裏面に配置され、光を導光板20内に反射する拡散反射板21と、を有してなるバックライト光源。」 (3)対比 次に、本願補正発明と引用例に記載された発明とを対比すると、 (a)引用例に記載された発明における「発光体10」,「導光板20」,「透光性拡散板22」,「右(又は左)円偏光成分101」,「左(又は右)円偏光成分102」,「プレーナ配向したコレステリック液晶層40」及び「拡散反射板21」は、それぞれ、本願補正発明における「光源」,「導光体」,「光拡散シート」,「一方の偏光成分」,「他方の偏光成分」,「偏光分離シート」及び「光反射シート」に相当する。 (b)導光板20が、表面、裏面及び側端面を備えた略板状体であることは明らかである。 (c)透光性拡散板22の出光面が拡散光を受光する面よりも粗面とされている構成は引用例の図2から見てとれる。 (d)引用例の図2における導光板20からの出射光の最大強度方向が導光板20の法線方向に対して角度を持つことは周知な事実であり、導光板20の光出射側に配置された透光性拡散板22により出射光の最大強度方向が透光性拡散板22の出光面の法線方向にシフトしていることは、透光性拡散板22の拡散板としての機能に鑑みれば自明な事項である(例えば、特開平7-72477号公報段落【0004】-【0006】及び図6-7、特開平9-159810号公報参照)。 そして、コレステリック液晶層40がプレーナ配向していることから、コレステリック液晶層40のヘリカル軸は透光性拡散板22の出光面の法線方向にほぼ一致していることは明らかであり、プレーナ配向したコレステリック液晶層40の偏光分離作用が最大となる光線入射方向は透光性拡散板22の出光面の法線方向にほぼ一致していることとなる。 よって、上記の構成により、透光性拡散板22によって導光板20からの出射光の最大角度方向はプレーナ配向したコレステリック液晶層40における偏光分離作用が最大となる光線入射角に近くなっていることとなり、引用例に記載された発明における「透光性拡散板22」と本願補正発明における「光拡散シート」とは、その機能面からみても実質的に相違はない。 したがって、本願補正発明と引用例に記載された発明とは、 「光源と、表面、裏面及び側端面を備えた略板状体であって、一側端面から入射する前記光源からの光を前記表面である出光面から拡散光として出射する導光体と、この導光体の出光面から出射する拡散光を一方の面で受光し、反対側の、前記拡散光を受光する面よりも粗面とされた出光面から、拡散光の最大強度方向を該出光面の法線方向にシフトさせて出光する光拡散シートと、この光拡散シートの出光面からの光を受光して、該光中の一方の偏光成分を透過し、他方の偏光成分を反射する偏光分離シートと、前記導光体の裏面に配置され、光を該導光体内に反射する光反射シートと、を有してなるバックライト装置であって、前記光拡散シートによって拡散光の最大角度方向を、前記偏光分離シートにおける偏光分離作用が最大となる光線入射角に近くするバックライト装置」である点で一致し、次の点で一応相違する。 [相違点] 本願補正発明では、光拡散シートのヘーズ値が10%以上と規定されているのに対して、引用例に記載された発明では、光拡散シートのヘーズ値は不明である点。 (4)判断 以下、上記相違点について検討する。 拡散シートのヘーズ値は所望の拡散程度に応じて適宜設定される値であって、バックライト装置に用いられる導光体の出光面に配置される光拡散シートのヘーズ値が10%以上であることは、光拡散シートが光の指向性を緩和して輝度むらを低減し法線方向への光量を増加させるために配置されていることに鑑みても通常の値であり、引用例に記載された発明において配置されている光拡散シートが導光体からの光の指向性を緩和して輝度むらを低減し法線方向への光量を増加させるために配置されていることは明らかであるから、引用例に記載された発明の光拡散シートのヘーズ値が本願補正発明のものと異なると認めることはできず、両者が上記相違点において相違するとは認められないので、本願補正発明と引用例に記載された発明とは実質同一である。 したがって、本願補正発明は引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成15年法第律47号)附則第2条第7項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成15年4月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成14年8月21日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明は、以下のものである。 「光源と、表面、裏面及び側端面を備えた略板状体であって、一側端面から入射する前記光源からの光を前記表面である出光面から拡散光として出射する導光体と、この導光体の出光面から出射する拡散光を一方の面で受光し、反対側の、前記拡散光を受光する面よりも粗面とされ、且つ、ヘーズ値が10%以上とされた出光面から、拡散光の最大強度方向を該出光面の法線方向にシフトさせて出光する、少なくとも一枚の光拡散シートと、この光拡散シートの出光面からの光を受光して、該光中の一方の偏光成分を透過し、他方の偏光成分を反射する偏光分離シートと、前記導光体の裏面に配置され、光を該導光体内に反射する光反射シートと、を有してなるバックライト装置。」(以下、「本願発明」という。) (1)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、上記「2.」で検討した本願補正発明から「光拡散シート」の限定事項である「拡散光の最大角度方向を、前記偏光分離シートにおける偏光分離作用が最大となる光線入射角に近くする」との規定を省いたものである。 したがって、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を限定したものに相当する本願補正発明が、上記「2.(4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明と実質的に同一であるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明と実質的に同一である。 なお、原査定の拒絶理由は、特許法第29条第1項第3号に該当するというものではないが、審判請求人は、平成15年4月18日付け手続補正書において、本件発明と刊行物3(上記引用例と同じ)とを対比する上で、刊行物3の開示内容に関し言及しているから、容易性のみならず、同一性についても検討していることは明らかである。 (なお、請求人は平成17年8月8日付け上申書において、光拡散シートを「空気層を介して重ねた複数枚の光拡散シート」と限定する用意がある旨上申しているが、光拡散シートを複数枚重ねて用いることは慣用手段(例えば、特開平6-160635号公報、特開平4-267222号公報、特開平3-191328号公報参照)であり、当業者が必要に応じてなし得る設計事項に過ぎないから、上記の限定によっても審決の結論は変わらない。) (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-03-24 |
結審通知日 | 2006-03-29 |
審決日 | 2006-04-24 |
出願番号 | 特願平10-223924 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G02F)
P 1 8・ 113- Z (G02F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井口 猶二 |
特許庁審判長 |
稲積 義登 |
特許庁審判官 |
吉野 三寛 吉田 禎治 |
発明の名称 | バックライト装置及び液晶表示装置 |
代理人 | 米澤 明 |
代理人 | 内田 亘彦 |
代理人 | 青木 健二 |
代理人 | 韮澤 弘 |
代理人 | 阿部 龍吉 |
代理人 | 蛭川 昌信 |
代理人 | 菅井 英雄 |