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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B |
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管理番号 | 1137664 |
審判番号 | 不服2004-19368 |
総通号数 | 79 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2002-07-12 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-09-17 |
確定日 | 2006-06-09 |
事件の表示 | 特願2001-375734「ナビゲーション装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月12日出願公開、特開2002-196668〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明の認定 本願は、平成5年12月27日に出願された特願平5-332823号の一部を特許法44条1項の規定により新たな特許出願としたものであって、平成16年8月11日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年9月17日付けで本件審判請求がされるとともに、同年10月18日付けで明細書についての手続補正がされたものである。 したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年10月18日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載されたとおりの次のものと認める。 「地図データと位置座標に対応させた電話番号とを予め記憶する第1の記憶手段と、 書き込み可能な第2の記憶手段と、 地図を表示する表示手段と、 地図上の任意の地点を設定する地点設定手段と、 電話番号を入力する電話番号入力手段と、 前記電話番号入力手段により入力された電話番号と前記第1の記憶手段及び第2の記憶手段に記憶されたデータから前記入力された電話番号に対応する位置座標を検索する検索手段と、 前記地点設定手段により設定された地点の位置座標と前記電話番号入力手段により入力された電話番号とを対応付けて前記第2の記憶手段に書き込み記憶する処理手段と を備え、前記検索手段により、前記電話番号入力手段により入力された電話番号が前記第1の記憶手段及び第2の記憶手段に記憶されていると判断された場合に、前記入力された電話番号に対応する位置座標から地図を表示し、前記電話番号入力手段により入力された電話番号が前記第1の記憶手段及び第2の記憶手段に記憶されていないと判断された場合に、前記入力された電話番号の局番の代表点に対応する地図を表示し、該表示された地図から任意の地点を設定すると共に、該設定された地点の位置座標と前記電話番号入力手段により入力された電話番号とを対応付けて前記第2の記憶手段に記憶することを特徴とするナビゲーション装置。」 第2 当審の判断 1.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-187898号公報(以下「引用例」という。)には、次のア〜キの記載が図示とともにある。 ア.「本発明は、指定された出発地と目的地を基に走行ルートを設定し、走行案内を行うナビゲーション装置において、複数の位置に関する情報からなる位置データ及び該位置データの格納情報と電話番号とを対応させるリストを有し、出発地や目的地を指定するデータとして電話番号を入力することにより位置データを読み出し可能にしたことを特徴とするものであり、さらには、リストに特定の情報を有し、入力された電話番号が登録されていない場合には特定の情報を与えるようにしたことを特徴とするものである。」(3頁左上欄6〜16行) イ.「リストに特定の情報を有し、入力された電話番号が登録されていない場合には特定の情報を与えるので、リストに登録されていない電話番号が入力されても、特定の情報として電話番号の市内局番から特定される地域の代表的な位置情報を与えるようにすることができる。」(3頁右上欄9〜14行) ウ.「第1図は本発明に係るナビゲーション装置の位置入力方式の1実施例を示す図であり、1は表示部、2は表示制御部、3は入力部、4は入力モード認識部、5は処理部、6は記憶部、7は電話番号リスト、8は位置データ、9はルート探索部、10はコードリストを示す。」(3頁右上欄19行〜左下欄4行) エ.「記憶部6は、電話番号リスト7や位置データ8を格納したものであり、電話番号リスト7は、電話番号(TEL No.)毎に、位置データ8のブロック番号(ブロックNo.)、位置データ8の位置番号(位置No.)からなる情報を有し、位置データ8は、位置番号(位置No.)毎に名称や位置等の具体的な位置情報を有する。」(3頁右下欄1〜7行) オ.「記憶部6は、必要なデータを格納する例えばCD(コンパクトディスク)等で構成し、必要に応じて処理部5の内部メモリに読み込んで保持し、処理することにより処理速度の向上と内部メモリサイズの小容量化を図っている。」(3頁右下欄18行〜4頁左上欄2行) カ.「第10図は現在位置入力の処理ルーチンを示す図である。・・・交差点データ、道路データ、ノード列データから交差点の方位、交差点形状、交差点名、交差点の目印等を認識して第10図(a)に示すように画面に交差点名や交差点の特徴、進行方向を描画、表示する(S31、S32)。」(8頁右上欄14行〜左下欄1行) キ.「上記の実施例では、電話番号リスト7を、TELNo.、ブロックNo.、位置No.からなる構成としたが、位置データに関する情報としてはポインタを用いてもよいし、位置No.を設けず電話番号をアドレスとしてもよい。この場合、全ての電話番号を登録し、位置データに実情報を持たないものについては、局番で限定される地域の代表位置の情報、その他特定の情報を持つようにしてもよいし、その地域の地図情報を持ち地図を画面に表示してもよい。このようにすると、その地図上で座標により位置が入力できる。また、電話番号リストにない電話番号が入力された場合にも同様に代表位置の情報や地図情報を用いるようにしてもよい。」(17頁右下欄15行〜18頁左上欄8行) 2.引用例記載の発明の認定 引用例の記載エ,キによれば、「電話番号リスト」とは電話番号とその所在地の位置データを対応づけたリストである。 記載キの「その地域の地図情報を持ち地図を画面に表示」及び「地図上で座標により位置が入力」は、「電話番号リストにない電話番号が入力された場合」にも当てはまることが明らかである。 記載カ,キによれば、「記憶部6」は「電話番号リスト」に加えて「地図情報」をも記憶しており、記載ア,ウの「ナビゲーション装置」は地図を表示する装置でもある。 したがって、引用例には次のような「ナビゲーション装置」が記載されていると認めることができる。 「表示部、表示制御部、入力部、入力モード認識部、処理部、記憶部及びルート探索部を備え、地図を表示するナビゲーション装置であって、 前記記憶部には地図情報及び電話番号とその所在地の位置データを対応づけた電話番号リストが記憶されており、 前記入力部には電話番号を入力することができ、入力された電話番号が前記電話番号リストに登録されている場合には、登録された位置データを読み出し、 入力された電話番号が前記電話番号リストに登録されていない場合には、電話番号の市内局番で限定される地域の代表位置の情報を読み出し、その地域の地図を画面に表示するとともに、その地図上で座標により位置を入力できるように構成したナビゲーション装置。」(以下「引用発明」という。) 3.本願発明と引用発明との一致点及び相違点の認定 引用発明の「位置データ」は、電話番号の所在地の位置を特定するデータである点で本願発明の「位置座標」と異ならない。以下では「位置データ」と「位置座標」に相違はないものとして扱うが、仮に「位置座標」とはいえない「位置データ」があるとしても(それは疑問であるが)、「位置データ」として「位置座標」を採用することは設計事項にすぎなから進歩性の判断を左右するほどのものではない。また、引用発明の「地図情報」と本願発明の「地図データ」にも相違はない。 引用発明の「表示部」、「入力部」及び「記憶部」は、本願発明の「地図を表示する表示手段」、「電話番号を入力する電話番号入力手段」及び「地図データと位置座標に対応させた電話番号とを予め記憶する第1の記憶手段」に相当する。 引用発明では、入力された電話番号が前記電話番号リストに登録されているかどうか判断し、その判断結果により、登録された位置データを読み出したり、電話番号の市内局番で限定される地域の代表位置の情報を読み出したるするのだから、引用発明は本願発明の「前記電話番号入力手段により入力された電話番号と前記第1の記憶手段及び第2の記憶手段に記憶されたデータから前記入力された電話番号に対応する位置座標を検索する検索手段」を備えている。 本願発明では「前記検索手段により、前記電話番号入力手段により入力された電話番号が前記第1の記憶手段及び第2の記憶手段に記憶されていると判断された場合に、前記入力された電話番号に対応する位置座標から地図を表示」するのであるが、その前提として「入力された電話番号に対応する位置座標」を読み出す点で、引用発明と一致する。 引用発明では、「入力された電話番号が前記電話番号リストに登録されていない場合には、電話番号の市内局番で限定される地域の代表位置の情報を読み出し、その地域の地図を画面に表示するとともに、その地図上で座標により位置を入力できる」のだから、本願発明の「地図上の任意の地点を設定する地点設定手段」を備え、「前記電話番号入力手段により入力された電話番号が記憶手段に記憶されていないと判断された場合に、前記入力された電話番号の局番の代表点に対応する地図を表示し、該表示された地図から任意の地点を設定する」点で、本願発明と引用発明は一致する。 したがって、本願発明と引用発明とは、 「地図データと位置座標に対応させた電話番号とを予め記憶する記憶手段と、 地図を表示する表示手段と、 地図上の任意の地点を設定する地点設定手段と、 電話番号を入力する電話番号入力手段と、 前記電話番号入力手段により入力された電話番号と前記記憶手段に記憶されたデータから前記入力された電話番号に対応する位置座標を検索する検索手段と、 を備え、前記検索手段により、前記電話番号入力手段により入力された電話番号が前記記憶手段に記憶されていると判断された場合に、前記入力された電話番号に対応する位置座標を読み出し、前記電話番号入力手段により入力された電話番号が前記記憶手段に記憶されていないと判断された場合に、前記入力された電話番号の局番の代表点に対応する地図を表示し、該表示された地図から任意の地点を設定するナビゲーション装置。」である点で一致し、以下の各点で相違する。 〈相違点1〉電話番号入力手段により入力された電話番号が記憶手段に記憶されていると判断された場合の処理として、本願発明では電話番号に対応する位置座標を読み出すだけではなく、「位置座標から地図を表示」するのに対し、引用発明では同地図を表示するかどうか明らかでない点。 〈相違点2〉本願発明の「記憶手段」には「書き込み可能な第2の記憶手段」が含まれ、本願発明が「前記地点設定手段により設定された地点の位置座標と前記電話番号入力手段により入力された電話番号とを対応付けて前記第2の記憶手段に書き込み記憶する処理手段」を備え、電話番号入力手段により入力された電話番号が記憶手段に記憶されていないと判断された場合の処理として、「設定された地点の位置座標と前記電話番号入力手段により入力された電話番号とを対応付けて前記第2の記憶手段に記憶する」としているのに対し、引用発明が同構成を有するとはいえない点。なお、「検索手段」における検索対象を「前記第1の記憶手段及び第2の記憶手段」とした点は、「記憶手段」が「書き込み可能な第2の記憶手段」を含むことの結果にすぎないから、別途独立な相違点ではない。 4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断 (1)相違点1について ナビゲーション装置を含む地図表示装置にあっては、目的地等を入力し適宜手段により検索した後、目的地等を含む地図を表示することは周知である(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-19684号公報又は特開昭64-10383号公報にも記載されているとおりである。)。しかも、引用発明は「入力された電話番号が前記電話番号リストに登録されていない場合には、電話番号の市内局番で限定される地域の代表位置の情報を読み出し、その地域の地図を画面に表示する」ことができるのだから、位置データ(位置座標)から地図を表示する機能自体は既に引用発明に備わっている。 したがって、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは設計事項というよりない。 (2)相違点2について 引用発明の電話番号リストにはすべての電話番号が登録されていない。そして、引用例の記載オによれば、電話番号リストはCD等に記憶することが予定されており、記憶媒体がCDであれば、ナビゲーション装置の製造業者が選んだ電話番号だけが登録されていると解するべきである。しかし、個々のユーザーにとっては、目的地等とする地点がナビゲーション装置製造業者が選んだ地点と合致しない可能性が高いことは当然である。そのため、引用発明では「入力された電話番号が前記電話番号リストに登録されていない場合には、電話番号の市内局番で限定される地域の代表位置の情報を読み出し、その地域の地図を画面に表示するとともに、その地図上で座標により位置を入力できるように構成」したのであるが、「その地域の地図を画面に表示するとともに、その地図上で座標により位置を入力」などせずとも、電話番号入力のみで目的地等の設定ができれば、利便性が向上することは何人の目にも明らかである。そして、電話番号入力のみで目的地等の設定ができることの必要かつ十分条件は、ユーザーが現実に入力した電話番号が、その位置座標と対応づけて電話番号リストに登録されていることである。 原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-303328号公報には「システム上での位置把握は全て座標データによってなされているため、ユーザーが所望の位置情報を登録したいときは、例えば表示されている地図上の位置を指定することによってその座標データが記憶される。・・・登録されるのが座標データのみでは、方向や距離を知りたい際のユーザーの実際の使用(目的地の選択)に不適であるので、この座標データにはユーザーによって名称が付され、座標データとともに登録される。以降ユーザーはその名称を頼りに目的地(即ち座標データ)を読み出させて、その目的地までのナビゲーション表示を実行させる。」(段落【0003】〜【0004】)と、本願出願前に頒布された特開平3-296790号公報には「表示中の地図上の所定の地点を識別表示すべき地点情報信号を前記表示情報信号として供給する手段と、前記地点に固有の地点名情報を入力する手段と、地点設定指令に応答して前記地点を示す地点データが属する地図データ群が記憶された記憶媒体の識別情報及びその地図データ群の記憶媒体上の記憶位置を示す地図識別情報を前記地点の表示画面上の座標データと共に前記地点名情報と対応させて各地点毎に記憶保持する記憶手段」(2頁左下欄13行〜右下欄2行)とそれぞれ記載があり、地図上の地点を指定又は設定した上で位置座標と指定又は設定した地点名称を対応づけて登録することは本願出願当時周知技術であると認める。 上記周知技術では、位置座標と対応づけて記憶されるものが地点名称であって、引用発明の電話番号は地点名称とはいえないけれども、地点を特定する情報である点では一致する。また、位置座標と対応づけて登録するデータについて、地点名称を電話番号に変えることが技術的に困難であると認めることもできない。 前記のとおり、ユーザーが現実に入力した電話番号が、その位置座標と対応づけて電話番号リストに登録されれば利便性が向上することは明らかであるのだから、上記周知技術同様、地図上の地点を指定又は設定した上で位置座標と電話番号を対応づけて登録することは当業者にとって想到容易である。ここで、引用発明では、「入力された電話番号が前記電話番号リストに登録されていない場合には、電話番号の市内局番で限定される地域の代表位置の情報を読み出し、その地域の地図を画面に表示するとともに、その地図上で座標により位置を入力」、すなわち、地図上で地図上の地点を指定又は設定するのだから、その際に地点の位置座標と電話番号を登録することは当然である。 また、本願発明は記憶手段につき「第1の記憶手段」及び「第2の記憶手段」を有しているが、これら2つの記憶手段が同一記憶手段であっても、個別の記憶手段であってもよいことは、請求項1を引用する請求項2及び請求項3の記載から明らかである。また、「第2の記憶手段」については「書き込み可能」との限定もあるが、「設定された地点の位置座標と前記電話番号入力手段により入力された電話番号とを対応付けて前記第2の記憶手段に記憶する」以上、「書き込み可能」かどうかは別途論ずるまでもない。 そうすると、相違点2に係る本願発明の構成とは、入力した電話番号が位置座標と対応づけて記憶手段に記憶されていないと判断された場合に、電話番号と位置座標と対応づけて記憶する(そのための記憶手段及び処理手段を備える。)ことに尽き、そのような構成は前示のとおり当業者にとって想到容易、すなわち相違点2に係る本願発明の構成に至ることは当業者にとって容易である。 そればかりか、引用発明の電話番号リストは製造業者が作成したリストであるが、製造業者が作成したリストにユーザーが個人用のものを追加することは、例えば日本語入力装置における辞書(かなと漢字の対応リストである。)に個人用辞書を追加することが広く行われているように、極めてありふれた手法であり、同手法を引用発明に採用して相違点2に係る本願発明の構成に至ることは当業者にとって想到容易である。 (3)本願発明の進歩性の判断 相違点1,2に係る本願発明の構成を採用することは設計事項であるか当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、本願発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第3 むすび 本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-04-03 |
結審通知日 | 2006-04-05 |
審決日 | 2006-04-18 |
出願番号 | 特願2001-375734(P2001-375734) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松川 直樹 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 藤井 勲 |
発明の名称 | ナビゲーション装置 |
代理人 | 内田 亘彦 |
代理人 | 青木 健二 |
代理人 | 韮澤 弘 |
代理人 | 菅井 英雄 |
代理人 | 阿部 龍吉 |
代理人 | 米澤 明 |
代理人 | 蛭川 昌信 |