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審決分類 審判 訂正 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 訂正する D04H
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する D04H
審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する D04H
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する D04H
管理番号 1138278
審判番号 訂正2005-39175  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-11-02 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2005-09-30 
確定日 2006-04-27 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3416527号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3416527号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3416527号は、平成10年4月20日に特許出願され、平成15年4月4日にその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人 高橋美穂により特許異議の申立て(異議2003-73022号)があり、その後、取消理由通知がされ、その指定期間内に意見書及び訂正請求書が提出された後、訂正拒絶理由の通知がなされ、その指定期間内に意見書及び上記訂正請求書を補正する手続補正書が提出され、平成17年7月27日付けで、本件請求項1ないし8に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたことを理由として、「特許第3416527号の請求項1ないし8に係る特許を取り消す。」旨の異議の決定がされた。
その後、平成17年9月13日付けで当該取消決定の取消を求める訴えが、知的財産高等裁判所に提起され(平成17年(行ケ)第10687号)、該取消訴訟が提起された日から起算して90日以内である平成17年9月30日付け審判請求書により本件訂正審判が請求され、その後、手続補正指令がされ、その指定期間内の平成18年3月6日付けで手続補正書(方式)が提出されたものである。

2.訂正の内容
本件訂正は、平成18年3月6日付け手続補正書(方式)により適法に補正された平成17年9月30日付けの審判請求書の記載からみて、下記の訂正事項からなるものである。

訂正事項a
特許請求の範囲請求項1を
「【請求項1】 第1繊維層と、第2繊維層と、前記第1及び第2繊維層の間に介在する第3繊維層とから成る衛生用伸縮性不織布であって、
前記第1及び第2繊維層が、それぞれ、繊維長3〜60mm、繊度0.5〜6d、坪量10〜50g/m2の熱可塑性合成繊維を含み、
前記第3繊維層が、前記繊度以下の繊度、坪量10〜50g/m2のメルトブロンによる伸縮性・熱可塑性合成繊維から成り、
前記第1、第2及び第3繊維層が、繊維交絡によって不織布形態を維持するとともに、繊維分配によって縦横及び斜め方向に互いに独立する、径0.5〜3.0mm、開孔率30〜70%の多数の開孔を有することを特徴とする前記不織布。」と訂正する。

訂正事項b
特許請求の範囲請求項2を
「【請求項2】 繊維長3〜60mm、繊度0.5〜6d、坪量10〜50g/m2の熱可塑性合成繊維を含む第1及び第2繊維層のそれぞれから成るウェブの間に、前記繊度以下の繊度、坪量10〜50g/m2のメルトブロンによる伸縮性・熱可塑性合成繊維で形成された第3繊維層から成るウェブを介在させた複合繊維ウェブを、開孔形成要素を有する支持体上に導き、前記複合繊維ウェブをその上方から高速水流で処理して繊維交絡させるとともに、前記開孔形成要素によって繊維を分配させて前記複合繊維ウェブの縦横及び斜め方向へ互いに独立する、径0.5〜3.0mm、開孔率30〜70%の多数の開孔を形成することを特徴とする衛生用伸縮性不織布の製造方法。」と訂正する。

訂正事項c
特許請求の範囲請求項3,4,5,6,7を削除し、それに伴い訂正前の請求項8を繰り上げて請求項3とする。

訂正事項d
明細書段落【0005】中の、
「前記第1、第2及び第3繊維層が、繊維交絡によって不織布形態を維持するとともに、繊維分配によって縦横及び斜め方向に互いに独立する多数の開孔を有している」を、
「前記第1、第2及び第3繊維層が、繊維交絡によって不織布形態を維持するとともに、繊維分配によって縦横及び斜め方向に互いに独立する、径0.5〜3.0mm、開孔率30〜70%の多数の開孔を有している」と訂正する。

訂正事項e
明細書段落【0006】中の、
「前記開孔形成要素によって繊維を分配させて前記複合繊維ウェブの縦横及び斜め方向へ互いに独立する多数の開孔を形成する」を、
「前記開孔形成要素によって繊維を分配させて前記複合繊維ウェブの縦横及び斜め方向へ互いに独立する、径0.5〜3.0mm、開孔率30〜70%の多数の開孔を形成する」と訂正する。

訂正事項f
明細書段落【0007】の記載を削除する。

訂正事項g
明細書段落【0008】第1行の「W」を削除する。


3.当審の判断
3-1.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項a及びbについて
訂正事項a及びbは、ともに訂正前の請求項1及び2における「多数の開孔」に対し、「径0.5〜3.0mm、開孔率30〜70%の」という発明特定事項を付加したものだから、ともに特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、これは願書に添付した明細書の段落【0010】中の「不織布10は、その縦横及び斜め方向に互いに独立する多数の開孔11を有する。開孔11は、径0.5〜3.0mm、開孔率30〜70%であることが好ましい。」との記載に基づくから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

訂正事項cについて
訂正事項cは、請求項を削除するとともに、それに伴い訂正前の請求項8を繰り上げて請求項3としたものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項dないしfについて
訂正事項dないしfは、上記訂正事項aないしcに係る特許請求の範囲の訂正に伴い、発明の詳細な説明中の記載を、特許請求の範囲の記載に整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。

訂正事項gについて
訂正前は「W前記不織布〜」と記載されているが、「前記不織布〜」という表現で後続する文の文意は明りょうであり、「W」という記載に何ら意味があるとは認められず、誤って記載したことは明らかである。そうすると、訂正事項gは誤記の訂正を目的とするものである。

そして、上記した訂正事項cないしgに係る訂正は、いずれも願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3-2.独立特許要件の判断
本件特許に対する先の特許異議の申立てにおいて、特許異議申立人は概略すると下記の主張をするものである。
(1)特許査定時の請求項1ないし8に係る発明は、当業者が下記の甲第1ないし6号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、これらの発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

甲第1号証:特開平7-70902号公報
甲第2号証:特開昭63-182460号公報
甲第3号証:特開平6-126871号公報
甲第4号証:日本繊維機械学会不織布研究会 編集「不織布の基礎と応用」,社団法人 日本繊維機械学会,平成5年8月25日,第118-119頁
甲第5号証:特開平7-216707号公報
甲第6号証:特開平4-257363号公報

(2)特許査定時の請求項3ないし7に係る発明は明確ではないから、本件特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

しかし、特許査定時の請求項3ないし7は訂正により削除されたから、これらの請求項についての申立ての理由(2)は、検討するまでもなく存在しない。
一方、上記訂正事項に係る請求項1及び2の訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするから、訂正後の請求項1、2、及び請求項2を引用する請求項3に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

3-2-1.訂正後の特許請求の範囲に係る発明
訂正後の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件訂正発明1ないし3」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定された次のとおりのものである。

【請求項1】 第1繊維層と、第2繊維層と、前記第1及び第2繊維層の間に介在する第3繊維層とから成る衛生用伸縮性不織布であって、
前記第1及び第2繊維層が、それぞれ、繊維長3〜60mm、繊度0.5〜6d、坪量10〜50g/m2の熱可塑性合成繊維を含み、
前記第3繊維層が、前記繊度以下の繊度、坪量10〜50g/m2のメルトブロンによる伸縮性・熱可塑性合成繊維から成り、
前記第1、第2及び第3繊維層が、繊維交絡によって不織布形態を維持するとともに、繊維分配によって縦横及び斜め方向に互いに独立する、径0.5〜3.0mm、開孔率30〜70%の多数の開孔を有することを特徴とする前記不織布。
【請求項2】 繊維長3〜60mm、繊度0.5〜6d、坪量10〜50g/m2の熱可塑性合成繊維を含む第1及び第2繊維層のそれぞれから成るウェブの間に、前記繊度以下の繊度、坪量10〜50g/m2のメルトブロンによる伸縮性・熱可塑性合成繊維で形成された第3繊維層から成るウェブを介在させた複合繊維ウェブを、開孔形成要素を有する支持体上に導き、前記複合繊維ウェブをその上方から高速水流で処理して繊維交絡させるとともに、前記開孔形成要素によって繊維を分配させて前記複合繊維ウェブの縦横及び斜め方向へ互いに独立する、径0.5〜3.0mm、開孔率30〜70%の多数の開孔を形成することを特徴とする衛生用伸縮性不織布の製造方法。
【請求項3】 前記第1及び第2繊維層から成るウェブに熱収縮性合成繊維を含ませ、前記複合繊維ウェブを高速水流によって処理して乾燥させた後、さらに該複合・繊維ウェブを加熱処理して前記熱収縮性合成繊維を収縮させる工程を含む請求項2に記載の不織布の製造方法。

3-2-2.各刊行物の記載事項
甲第1ないし6号証(以下、「刊行物1ないし6」という。)には、以下の事項が記載されている。

刊行物1(特開平7-70902号公報)の記載事項
(i-1)「【請求項1】 第1層が短繊維ウエッブ、第2層がエラストマーからなる伸縮性不織布、第3層が短繊維ウエッブであり、第1層と第3層の繊維は第2層を貫通し部分的に交絡しており、第1層及び/又は第3層の単繊維間が接着剤及び/又は熱融着で繊維間が部分的にドット接着され、伸縮性を少なくとも1方向で保持していることを特徴とする伸縮性不織布。
……
【請求項3】 第1層と第3層の短繊維が高捲縮性繊維及び/又はエラストマー繊維であることを特徴とする請求項1および2記載の伸縮性不織布。」(特許請求の範囲)
(i-2)
「本発明は伸縮性不織布、例えばおむつ、湿布剤等に用いる不織布に関する。」(段落【0001】)
(i-3)
「 本発明に用いる第2層のエラストマー不織布は例えば特開平4-257363号公報に記載されているポリウレタンや、天然及び合成ゴム、例えばポリエチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールのブロックコポリマーであるポリエステル系エラストマー等の繊維からなる不織布があり、特に限定はしない。必要な強力、伸縮率、耐熱性、耐光性、耐薬品性等により、選択すればよい。一般的にはメルトブロー法による不織布が多く用いられるが、他にもスパンボンド法による不織布でもよく、カード式の不織布等特に限定はしない。」(段落【0009】)
(i-4)
「また、本発明の第1層、及び第3層に用いる短繊維ウエッブは一般的な短繊維ウエッブでよく、第1層と第3層が同じウエッブでも異なるウエッブでもよい。例えばポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、レーヨン、ウレタン、コットン等があり、これに限定するものではない。中では捲縮の強いものがウエッブ自体に伸縮性が付与され好ましい。さらには捲縮が熱等により発現するコンジュゲート繊維等が好ましい。例えばポリエステル高捲縮繊維としては鐘紡(株)の製品番号「C81」があり、ポリプロピレン高捲縮繊維としては鐘紡(株)の製品番号「UP81」がある。」(段落【0010】)
(i-5)
「この短繊維のカット長は一般的な不織布に適する長さであれば特に限定しない。32〜64mmの長さがよく用いられる。デニールも特に限定はしない。一般的な不織布に適するデニールであればよい。すなわち、製品の風合い等により、デニール、混綿、目付け等、適宜選択すればよい。」(段落【0011】第1〜7行)
(i-6)
「短繊維の捲縮を発現させるためには熱風により発現させることが出来るが、3層を積層した後でも、前でもよい。」(段落【0011】第7〜9行)
(i-7)
「第1層の短繊維ウエッブを第2層のエラストマー不織布に貫通させ、交絡する方法は機械的な方法、例えばニードルパンチング、スパンレース法等でよい。短繊維ウエッブは第1層と第3層と異なる形で積層してもよく、第1層の短繊維が第2層を多く貫通するように針の伸度等を調節し、第3層を形成させてもよい。」(段落【0017】)
(i-8)
「本発明の不織布は第1層の短繊維ウエッブが第2層のエラストマー不織布から剥離し難く、摩擦により毛抜けもし難い。」(段落【0021】)
(i-9)
「 実施例1
第2層にポリウレタン不織布、鐘紡(株)製「エスパンシオーネ」UHO50を用い、第1層と第3層の短繊維に鐘紡(株)製「エスパンディ」UP81、2デニール、51mmを用いた。」(段落【0023】第1〜5行)
(i-10)
「通常のカーディングによりUP81の50g/m2の短繊維ウエッブを作成し、UHO50の上に積層し、針密度50本/cm2で均一針間隔で軽くニードリングした。針先が1cmだけUHO50を貫通するようにし、上に置いたUP81がUHO50の下に出て、第3層を形成させた。」(段落【0024】)

刊行物2(特開昭63-182460号公報)の記載事項
(ii-1)
「(1)繊維交絡でシート状形態を維持し、繊維集合領域で区切られた多数の開孔を有する不織布であって、前記多数の開孔は、大きさ・形状が種々様々で不規則的に混在していることを特徴とする開孔不織布。
……
(4)噴射水流の影響下に繊維が移動しうる繊維材料層を、規則的に配列した多数の開孔形成用構造を有する支持体上において噴射水流で繊維の再配列処理をなすことにより、多数の開孔を形成する開孔不織布の製造方法であって、前記処理が、つぎの工程を含むことを特徴とする前記不織布の製造方法。
a.比較的に大きい開孔形成用構造を有する第1の支持体上で前記処理をなすことにより、該構造に対応する大きい開孔を形成する工程。
b.前記工程ののち、比較的に小さい開孔形成用構造を有する第2の支持体上において前記処理をなすことにより、該構造に対応する小さい開孔を前記大きい開孔が存在しない繊維集合領域に形成すると同時に、前記大きい開孔内の多方向へ横切らせ架け渡すことにより、前記大きい開孔を種々様々の形状を有する複数の小さい開孔に分割する工程。
(5)前記第1の支持体としてシリンダー上に開孔形成用突起と排水孔とを有するものを、かつ、前記第2の支持体としてメッシュスクリーンを、それぞれ用いる特許請求の範囲第4項記載の不織布の製造方法。」(特許請求の範囲)
(ii-2)
「本発明にかかる不織布は、包帯・ガーゼ・パフ等の衛生・化粧材、衣料・履きもの等の芯材、雑巾材、保温材、電気絶縁材等に広く利用することかできる。」(第2頁左上欄第7〜10行)
(ii-3)
「第1図を参照すると、繊維材料層lを第1の支持体2上に導き、該支持体の所要周域上に所要間隔で配列した複数のノズル3からの噴射水流で繊維を再配列処理したのち、該支持体の長さ方向の所要域に配列した複数のノズル5からの噴射水流で繊維をさらに再配列処理する。これらの処理中においては、繊維材料層lに作用し終った水流を第1,第2の支持体1,2の下側にそれぞれ配置したサクション6,7で強制的に排出する。処理を終えた繊維材料層lは、絞りロール8を経て、図示してないが、つぎの乾燥工程、巻取工程へ移送する。
第2図、第3図に示すように、第1の支持体2としては、シンダーの周面に所要間隔で多数の突起9と排水孔10とを規則的に配列したものを用いるのが好ましい。この第1の支持体2を用いると、突起9上に位置する繊維材料層1の繊維は、噴射水流の影響下に該突起間の平面域に分配されながら再配列する。したがって、繊維材料層1には、突起9の配列に対応した規則的な開孔が形成される。この再配列は、繊維材料層1の繊維が充分に交絡していない場合には、該繊維を交絡させてシート状形態を賦与することをも意味する。繊維材料層1としては、繊維が噴射水流の影響下で移動しうるものであれば、既に形成された不織布であっても、単に繊維を緩く集合させた、たとえばカードウェブであってもよいが、本発明の不織布を経済的にうるうえでは、後者が好ましい。」(第3頁右上欄第4行〜同頁左下欄第11行)
(ii-4)
「繊維材料層1の構成繊維としては、従来一般に不織布や織布のそれとして用いられているものを用い、かつ、一般的には、繊維長、デニールは、それぞれ20〜100mm、0.5〜15dのものを用いる。また、繊維材料層1の目付は、一般的には、10〜150g/m2のもを用いる。」(公報第4頁左上欄第13〜18行)
(ii-5)
「実施例1
レーヨン繊維1.5d X 44mmで30g/m2のカードウエを第1図に示す装置に導いて、第2図に示す第1の支持体2上で、その下側から吸引排水しながら、背圧70kg/cm2の柱状流を1.3 l/m2て噴射することにより、第4図に示すように、該支持体の突起に対応する大きい開孔が規則的に配列した開孔不織布をえた。」(第4頁右上欄第12〜19行)
(ii-6)
第1図には、本発明方法を実施するための装置の概略側面図が、第2図には、前記装置中に配置した第1の支持体の斜視図が、第3図には、第1の支持体の突起で繊維が分配された状態の部分断面図が、第4図には、第1の支持体で大きい開孔を形成した不織布の組織を示す等倍率の複写平面図が、記載されている。

刊行物3(特開平6-126871号公報)の記載事項
(iii-1)
「【請求項1】 坪量が30g/m2 以下である主として熱可塑性樹脂繊維からなる不織布であって、熱により繊維間が接着している接着部(又はポイント接着部)が点在する繊維集束部と、繊維がより分けられて形成された該不織布の全域或いは一部に点在する孔部とからなり、
上記接着部が6〜46個/cm2 の密度で点在し、且つ上記繊維集束部での接着部全体の接着面積率が10〜30%であることを特徴とする不織布。
【請求項2】 上記孔部は、見掛け上の円換算での径が0.5〜2mmであり、且つ点在する孔部同士の中心間隔は、5mm未満であることを特徴とする請求項1記載の不織布。
……
【請求項5】 上記請求項第1項記載の不織布の製造方法であって、上記熱可塑性樹脂を熱接着して上記繊維集束部を形成する工程と、穿孔を形成するための凸状の穿孔形成部を有した穿孔用支持体に該不織布を載置して、該載置面で高速流体により上記孔部を穿設する工程とを有することを特徴とする不織布の製造方法。」(特許請求の範囲)
(iii-2)
「本発明は、紙おむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品の表面材に好適な不織布及びその製造方法に関するものであり、詳しくは、液透過性、風合い、柔軟性、及び寸法安定性に優れた不織布及びその製造方法に関する。」(段落【0001】)
(iii-3)
「不織布は、接着部を有する繊維集束部と繊維をより分けた孔部とから構成されており、繊維をより分けて孔部で液透過機能を発現し、…」(段落【0006】第3〜5行)
(iii-4)
「不織布の熱可塑性樹脂繊維は3d以下で、繊維をよりわけた孔部が見かけ上、円換算でφ0.5mm〜φ2mmの実質的な孔で、その中心間隔が5mm未満であることが好ましい。より好ましくは構成する熱可塑性繊維が2d以下で、孔部が円換算でφ0.7〜φ1.5mmの実質的孔で、中心間隔が4mm以下で有る方が風合い、液透過性、視覚的に好ましい。しかも、実質的な孔であるので粘性の高い液の透過も可能である。孔がφ0.5mmより小さいと液透過性が悪くなる。同様に孔がφ2mmよりも大きくても肌触りが低下する上、吸収体から液戻りが多くなる。前記、孔の開孔面積率は5〜25%の範囲になるのが液透過性、物理特性、肌触り、外観等のバランス上望ましい。」(段落【0008】第1〜13行)
(iii-5)
「本発明の好適な製造方法は、ウェブ(不織布)をポイント熱接着し、次いで穿孔用支持体に載置し、高速流体を該ウェブに当て、開孔処理を行なうことである。」(段落【0009】第1〜4行)
(iii-6)
「不織布1は、一層構造でも、2層以上の層に分かれていても良い。」(段落【0014】第5〜6行)
(iii-7)
「次に、穿孔用支持体5上にポイント熱接着したウエブ3を搬送させる。穿孔用支持体5は、無端状で、全体又は図5に示すように所望の領域に凸状の穿孔形成部5aが形成された搬送ベルトになっている。図4においては、支持体5は全体に凸状の穿孔形成部5aが形成されおり、ウエブ3は、上方の高流速流体噴射ノズル6で高速流体が所望の流速で所望の領域に当てられるようになっている。ウェブ3は高速流体により支持体5に押し当てられ、更に穿孔形成部5aの凸状部で穿たれて搬送され、ポイント接着部1cは支持体5の低部ベーズにズレ落ちる。即ち、非接着面の繊維が支持体5の穿孔形成部5aの凸部により押しわけられ開孔する。」(段落【0021】第1〜12行)
(iii-8)
「続いて、ウェブ3を熱処理乾燥装置8で乾燥し、」(段落【0023】第3行)
(iii-9)
図1には、不織布の一実施例を概念的に示す部分斜視図が示されている。
(iii-10)
図3及び4には、不織布の製造方法を実施するための製造装置が示されている。

刊行物4(日本繊維機械学会不織布研究会 編集「不織布の基礎と応用」,社団法人 日本繊維機械学会,平成5年8月25日,第118-119頁
)の記載事項
(iv-1)
第118頁「表3・4紡糸直結型不織布の物性」の「メルトブロー」の「繊維・単糸太さ・繊度」の欄には「0.01〜0.03d」であることが記載されている。

刊行物5(特開平7-216707号公報)の記載事項
(v-1)
「【請求項1】 目付20〜60g/m2 の伸縮弾性に富んだメルトブロー不織布の片面に、繊維方向を長さ方向に配向してなる目付20〜100g/m2 のステープルファイバー不織布が高圧柱状水流によって長さ方向に筋状に接合されてなり、幅方向の伸度が長さ方向の伸度の2倍以上であり、幅方向に100%伸長させた後の幅方向の伸長回復率が70〜90%であることを特徴とする伸縮性複合不織布。」(特許請求の範囲請求項1)
(v-2)
「本発明は、特に使い捨ておむつのカバー部分や衣料等における人体の腰部あるいは太股部への弾性緊迫部分用、さらには包帯やパップ剤用の基布などに好適な伸縮性複合不織布に関するものである。」(段落【0001】)

刊行物6(特開平4-257363号公報)の記載事項
(vi-1)
「実施例1
まず、ポリウレタン弾性長繊維を集積してなる、目付50g/m2,厚さ0.5mmの長繊維フリース(鐘紡株式会社製、商品名「エスパンシオーネ」)を準備した。」(段落【0018】第1〜4行)

3-2-3.対比・判断
3-2-3-1.本件訂正発明1についての判断
刊行物1には、上記摘示(i-1)〜(i-10)からみて、
「第1層が短繊維ウエッブ、第2層がエラストマーからなるメルトブロー法による不織布、第3層が短繊維ウエッブであり、第1層と第3層の繊維は第2層を貫通して部分的に交絡しており、第1層及び/又は第3層の単繊維間が接着剤及び/又は熱融着で繊維間が部分的にドット接着されている、おむつ等に用いる伸縮性不織布」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されていると認められる。
本件訂正発明1と刊行物1発明とを対比する。
後者の「第1層」、「第3層」、「第2層」が、それぞれ前者の「第1繊維層」、「第2繊維層」、「第3繊維層」に相当する。後者の「おむつ等に用いる伸縮性不織布」の「おむつ」とは、衛生用の物品に含まれることは明らかといえるから、これは前者の「衛生用伸縮性不織布」に相当するものである。また、後者の短繊維ウェッブを形成する短繊維は、摘示(i-4)によると、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ウレタン等からなるから、前者の「熱可塑性合成繊維」に相当し、後者の「エラストマーからなるメルトブロー法による不織布」は、前者の「メルトブロンによる伸縮性・熱可塑性合成繊維」に相当すると認められる。そして、後者の「第1層と第3層の繊維は第2層を貫通して部分的に交絡」していることは、前者の「第1、第2及び第3繊維層が、繊維交絡によって不織布形態を維持している」に相当するものである。
そうすると両者は、
「第1繊維層と、第2繊維層と、前記第1及び第2繊維層の間に介在する第3繊維層とから成る衛生用伸縮性不織布であって、前記第1及び第2繊維層が、それぞれ、熱可塑性合成繊維を含み、前記第3繊維層が、メルトブロンによる伸縮性・熱可塑性合成繊維から成り、前記第1、第2及び第3繊維層が、繊維交絡によって不織布形態を維持している前記不織布」
である点で一致するが、以下の点で相違する。
相違点A:前者は第1及び第2繊維層のそれぞれの熱可塑性合成繊維が、繊維長3〜60mm、繊度0.5〜6d、坪量10〜50g/m2であると特定されているが、後者では不明な点。
相違点B:前者では第3繊維層の伸縮性・熱可塑性合成繊維が、第1及び第2繊維層の繊維の繊度以下であると特定されているが、後者は不明な点。
相違点C:前者は第3繊維層の伸縮性・熱可塑性合成繊維が、坪量10〜50g/m2であると特定されているが、後者では不明な点。
相違点D:前者には、第1、第2及び第3繊維層が、繊維分配によって縦横及び斜め方向に互いに独立する径0.5〜3.0mm、開孔率30〜70%の多数の開孔を有すると特定されているが、後者では特定されていない点。

(相違点Aについての検討)
刊行物1には、摘示(i-9)、(i-10)によると、繊維長51mm、繊度2デニール、坪量50g/m2である第1及び第2層の短繊維が記載されており、刊行物1発明において通常採用される程度の短繊維は、相違点Aに係る要件を満たすものを含むと認められる。そうすると相違点Aは実質的な相違点とはいえない。
(相違点Bについての検討)
刊行物1には、第3繊維層のメルトブローによる伸縮性繊維の繊度は明示されていないが、摘示(iv-1)によるとメルトブロー法による不織布において、不織布を構成する繊維の繊度は、一般的に極細繊維(マイクロファイバー)と呼ばれる0.01〜0.03dの繊度の小さいものはごく普通であり、この範囲の繊度は第1及び第2層の短繊維の繊度より小さいことは明らかであり、刊行物1発明において通常採用される程度のメルトブロー不織布は、相違点Bに係る要件を満たすものを含むと認められるから、相違点Bは実質的なものではない。
(相違点Cについての検討)
刊行物1には、メルトブローによる伸縮性繊維の坪量は記載されていないが、上記摘示(v-1)、(vi-1)からみて、メルトブロー法による不織布において坪量10〜50g/m2の範囲内のものはごく一般的な坪量であり、刊行物1発明において通常採用される程度のメルトブロー不織布は、相違点Cに係る要件を満たすものを含むと認められるから、相違点Cは実質的なものではない。
(相違点Dについての検討)
刊行物1には、上記摘示(i-7)によると、第1、第2及び第3繊維層を繊維交絡させる手法の例として、スパンレース法が記載されており、このスパンレース法が典型的には高速水流処理であることは技術常識といえる。一方で、刊行物2及び3には、摘示(ii-7)〜(ii-8)及び(iii-1)〜(iii-10)によると衛生用、おむつ等を用途とする不織布を高速水流処理によって開孔不織布とすることが開示され、開孔不織布とすべく多数の開孔形成用構造を有する支持体上において高速水流処理を行えば、繊維層が、繊維分配によって縦横及び斜め方向に互いに独立する多数の開孔を有するものとなることは自明な事項であるといえる。
しかしながら、刊行物2には開孔の径や開孔率の記載はなく、開孔を設ける技術的意義について記載されていない。また、刊行物3は、摘示(iii-4)によると開孔の径は一致するが、本件訂正発明1に係る開孔率に相当する値である開孔面積率は5〜25%の範囲が望ましいとするから、本件訂正発明1における開孔率の範囲とは相違する。さらに不織布に開孔を形成する技術的意義も、液透過性、物理特性、肌触り、外観等であり、開孔によって、第1及び第2繊維層が伸縮性繊維を含んでいなくとも、縦横及び斜め方向へ実質的に均等に伸縮するということの記載はなく、それを示唆するものでもない。そして他の刊行物をみても、上記相違点Dに相当する記載はない。
そうすると、本件訂正発明1は、当業者が刊行物1ないし6に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、他に本件訂正発明1が、独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。

3-2-3-2.本件訂正発明2についての判断
刊行物2には、摘示(ii-1)、(ii-2)からみて、「繊維材料層を、規則的に配列した多数の開孔形成用構造を有する支持体上において噴射水流で繊維の再配列処理をなすことにより、多数の開孔を形成する衛生・化粧材用不織布の製造方法。」の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されていると認められる。
本件訂正発明2と刊行物2発明とを対比すると、後者の「開孔形成用構造を有する支持体」、「噴射水流」、「衛生・化粧材用不織布」は、それぞれ前者の「開孔形成要素を有する支持体」、「高速水流」、「衛生用伸縮性不織布」に相当する。そして、後者の「噴射水流で繊維の再配列処理をなすことにより、多数の開孔が形成される」とは、前者の「繊維を分配させて複合繊維ウェブの縦横及び斜め方向に互いに独立する多数の開孔を形成する」ことに相当すると認められる。
そうすると両者は、
「繊維ウェブを、開孔形成要素を有する支持体上に導き、前記繊維ウェブをその上方から高速水流で処理して繊維交絡させるとともに、前記開孔形成要素によって繊維を分配させて前記繊維ウェブの縦横及び斜め方向へ互いに独立する多数の開孔を形成することを特徴とする衛生用伸縮性不織布の製造方法」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点E:前者では、繊維ウェブが、a)繊維長3〜60mm、繊度0.5〜6d、坪量10〜50g/m2の熱可塑性合成繊維を含む第1及び第2繊維層のそれぞれから成るウェブの間に、b)前記繊度以下の繊度、c)坪量10〜50g/m2のメルトブロンによる伸縮性・熱可塑性合成繊維で形成された第3繊維層から成るウェブを介在させた複合繊維ウェブであるのに対して、後者には繊維ウェブの特定のない点。
相違点F:前者では開孔が、径0.5〜3.0mm、開孔率30〜70%であるのに対して、後者には開孔の径、開孔率について特定されていない点。

(相違点Eについての検討)
刊行物1には、上記3-2-3-1.にて記載したように刊行物1発明、即ち、「第1層が短繊維ウエッブ、第2層がエラストマーからなるメルトブロー法による不織布、第3層が短繊維ウエッブであり、第1層と第3層の繊維は第2層を貫通して部分的に交絡しており、第1層及び/又は第3層の単繊維間が接着剤及び/又は熱融着で繊維間が部分的にドット接着されている、おむつ等に用いる伸縮性不織布。」が記載されており、上記3-2-3-1.において本件訂正発明1に係る相違点Dについて検討したように、刊行物1発明の繊維交絡を形成するに当たっては、その第1〜3層を重ねた複合繊維ウェブがスパンレース法、即ち高速水流処理に供されることが示唆されているものと解される。
そこで、刊行物2発明において高速水流処理される繊維ウェブとして、刊行物1発明に係る第1〜3層を重ねた複合繊維ウェブを適用することについて検討する。両者はおむつ等の衛生用不織布に係る発明としてその属する分野が共通しており、上記摘示(ii-3)、(ii-4)によれば、刊行物2における繊維ウェブとしての繊維材料層1は、既に形成された不織布やカードウェブ等のいずれでもよく、その形態について限定的とされたものではなく、その構成繊維についても特に限定的としたものではないから、当業者であれば、両者を組み合わせ上記適用をすることに困難性はないと認められる。
してみれば、上記適用による発明と本件訂正発明2との相違点は、上記相違点Eのa)〜c)の各要素が一応の相違点として存在することになるが、a)〜c)については、本件訂正発明1について上記3-2-3-1.で検討した相違点AないしCにそれぞれ対応するものであって、刊行物1発明に係る第1〜3層を重ねた複合繊維ウェブを、上記適用した際には、実質的な相違点となるものではない。
次に相違点Fについて検討すると、刊行物1には不織布に開孔を設けることは記載されておらず、そのことを示唆する記載もない。また、上記3-2-3-1.で検討したのと同様に、刊行物2に記載された不織布は、開孔の径は一致するものの、その開孔面積率の数値範囲は、本件訂正発明2の数値範囲とは相違するものであり、さらに開孔によって、縦横及び斜め方向へ実質的に均等に伸縮するということの記載も示唆もないものである。
そうすると、本件訂正発明2は、刊行物1ないし6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、他に本件訂正発明2が、独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。

3-2-3-3.本件訂正発明3についての判断
本件訂正発明3は、本件訂正発明2である請求項2を引用して記載された発明であるから、本件訂正発明2の発明特定事項を全て含み、さらに技術的に限定を付加した発明である。本件訂正発明2は、上記3-2-3-2.で検討したように刊行物1ないし6に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件訂正発明3も同様に当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。そして、他に本件訂正発明3が、独立して特許を受けることができないとする理由を発見しない。

3-2-4.独立特許要件についてのまとめ
上記3-2-3.にて検討したように、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、特許出願の際独立して特許できるものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件審判請求は、特許法第126条第1項ただし書第1ないし3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3ないし5項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
衛生用伸縮性不織布およびその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】第1繊維層と、第2繊維層と、前記第1及び第2繊維層の間に介在する第3繊維層とから成る衛生用伸縮性不織布であって、
前記第1及び第2繊維層が、それぞれ、繊維長3〜60mm、繊度0.5〜6d、坪量10〜50g/m2の熱可塑性合成繊維を含み、
前記第3繊維層が、前記繊度以下の繊度、坪量10〜50g/m2のメルトブロンによる伸縮性・熱可塑性合成繊維から成り、
前記第1、第2及び第3繊維層が、繊維交絡によって不織布形態を維持するとともに、繊維分配によって縦横及び斜め方向に互いに独立する、径0.5〜3.0mm、開孔率30〜70%の多数の開孔を有する
ことを特徴とする前記不織布。
【請求項2】繊維長3〜60mm、繊度0.5〜6d、坪量10〜50g/m2の熱可塑性合成繊維を含む第1及び第2繊維層のそれぞれから成るウェブの間に、前記繊度以下の繊度、坪量10〜50g/m2のメルトブロンによる伸縮性・熱可塑性合成繊維で形成された第3繊維層から成るウェブを介在させた複合繊維ウェブを、開孔形成要素を有する支持体上に導き、前記複合繊維ウェブをその上方から高速水流で処理して繊維交絡させるとともに、前記開孔形成要素によって繊維を分配させて前記複合繊維ウェブの縦横及び斜め方向へ互いに独立する、径0.5〜3.0mm、開孔率30〜70%の多数の開孔を形成することを特徴とする衛生用伸縮性不織布の製造方法。
【請求項3】前記第1及び第2繊維層から成るウェブに熱収縮性合成繊維を含ませ、前記複合繊維ウェブを高速水流によって処理して乾燥させた後、さらに該複合・繊維ウェブを加熱処理して前記熱収縮性合成繊維を収縮させる工程を含む請求項2に記載の不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、衛生用伸縮性不織布及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、使い捨ておむつや、生理用ナプキンの構成部材などとして利用するのに好適な衛生用伸縮性不織布及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平7-216707において、メルトブロンによる伸縮性不織布の片面に、縦方向に配向した繊維ウェブを重ね合せ、高速水流処理によって横方向の間隔3〜15mmをおいて縦方向に筋状に繊維交絡させて接合することで縦方向の伸度を抑制し、横方向の伸度を縦方向の伸度の2倍以上になし、横方向に伸ばした後の歪を10〜30%とした伸縮性不織布が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記公知不織布を使い捨ておむつや、生理用ナプキンなどの衛生用品の構成部材として用いた場合、メルトブロン不織布が露出しているため、身体などとの摺接によって容易に毛羽立し易いばかりでなく、前記部材として引っ張り強度において劣り、しかも繊維交絡による各筋状部分とそれら間部分との間に比較的大きい密度差及び伸縮度差が生じているため、身体に均一に密着し難いといった問題がある。
【0004】
この発明は、前記問題を有しない前記衛生用品の構成部材として好適な伸縮性不織布及びその製造方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、第1繊維層と、第2繊維層と、前記第1及び第2繊維層の間に介在する第3繊維層とから成る衛生用伸縮性不織布であって、前記第1及び第2繊維層が、それぞれ、繊維長3〜60mm、繊度0.5〜6d、坪量10〜50g/m2の熱可塑性合成繊維を含み、前記第3繊維層が、前記繊度以下、坪量10〜50g/m2のメルトブロンによる伸縮性・熱可塑性合成繊維から成り、前記第1、第2及び第3繊維層が、繊維交絡によって不織布形態を維持するとともに、繊維分配によって縦横及び斜め方向に互いに独立する、径0.5〜3.0mm、開孔率30〜70%の多数の開孔を有していることを特徴とする。
【0006】
この発明はまた、前記不織布の製造方法であって、繊維長3〜60mm、繊度0.5〜6d、坪量10〜50g/m2の熱可塑性合成繊維を含む第1及び第2繊維層のそれぞれから成るウェブの間に、前記繊度以下の繊度、坪量10〜50g/m2のメルトブロンによる伸縮性・熱可塑性合成繊維で形成された第3繊維層から成るウェブを介在させた複合繊維ウェブを、開孔形成要素を有する支持体上に導き、前記複合繊維ウェブをその上方から高速水流で処理して繊維交絡させるとともに、前記開孔形成要素によって繊維を分配させて前記複合繊維ウェブの縦横及び斜め方向へ互いに独立する、径0.5〜3.0mm、開孔率30〜70%の多数の開孔を形成することを特徴とする。
【0007】
(削除)
【0008】
前記不織布の製造方法の実施形態においては、前記第1及び第2繊維ウェブに熱収縮性合成繊維を含ませ、前記複合繊維ウェブを高速水流によって処理して乾燥させた後、該複合繊維ウェブを加熱処理して前記熱収縮性合成繊維を収縮させる工程を含む。
【0009】
【発明の実施の形態】
図面を参照して、この発明に係る衛生用伸縮性不織布及びその製造方法の実施の形態について説明すると、以下のとおりである。
【0010】
図1及び2において、不織布10は、第1繊維層12と、第2繊維層13と、これら間に位置する第3繊維層14とから成る。第1及び第2繊維層12,13は、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系及びアクリル系などの熱可塑性合成繊維の少なくとも1種から成る。これら繊維は、繊維長3〜60mm、繊度0.5〜6d、坪量10〜50g/m2を含む。第1及び第2繊維層12,13は、少なくともその一方が、不織布の用途によっては、レーヨン、パルプなどの親水性繊維の適宜量を含んでいてもよい。また、第1及び第2繊維層12,13は、後記製造方法で言及するように、高融点樹脂と低融点樹脂とから成る複合繊維の適宜量を含むことが、加熱処理によって不織布の伸縮性及び嵩高性を向上させるうえで好ましい。第3繊維層14は、第1及び第2繊維層12,13の繊度よりも繊度の小さいポリウレタン系及びスチレン系の少なくとも1種のいわゆる極細繊維であるメルトブロン繊維であって、坪量10〜50g/m2の伸縮性・熱可塑性であるものから成る。第1及び第2繊維12,13と第3繊維14とは、繊維が機械的に交絡することで不織繊維シート、すなわち、不織布10の形態を維持しているとともに、不織布10は、その縦横及び斜め方向に互いに独立する多数の開孔11を有する。開孔11は、径0.5〜3.0mm、開孔率30〜70%であることが好ましい。
【0011】
不織布10は、例えば、次のようにして製造される。すなわち、第3繊維層14である連続メルトブロン不織布の一方の面に第1繊維層12に対応する連続繊維ウェブを、かつ、他方の面に第2繊維層13に対応する連続繊維ウェブを重ね合せて連続複合繊維ウェブを構成する。この複合繊維ウェブを円周面に多数の排水孔と開孔形成要素としての多数の幾何学的に配列する突起を有する支持体としての回動シリンダー又は開孔形成要素となり得る多数の幾何学的に配列するナックル部を有する支持体としての無端送行スクリーン上に導き、複合繊維ウェブの上部に位置し、微細な多数のオリフィスを有する噴射手段から柱状の高速水流を複合繊維ウェブに噴射させる。この高速水流の処理により、第1及び第2繊維ウェブの構成繊維と第3繊維ウェブであるメルトブロン不織布の構成繊維とを再配列・交絡させるとともに、開孔形成要素によって繊維を分配させて開孔を形成する。
【0012】
第1及び第2繊維ウェブに熱収縮性合成繊維を含ませてある場合には、前記繊維交絡により開孔を形成した不織布を乾燥工程へ移送して乾燥した後、加熱工程へ移送し、構成繊維が互いに融着しない程度に加熱処理することにより、熱収縮性合成繊維を収縮させる。この再、構成繊維が互いに融着すると、完成不織布の伸縮性及び風合が阻害され好ましくない。
【0013】
【発明の効果】
この発明によれば、不織布は、繊維交絡によってその形態を維持しているうえ多数の開孔を有するから、通気性に優れるとともに第1及び第2繊維層が伸縮性繊維を含んでいなくとも、縦横及び斜め方向へ実質的に均等に伸縮するから着用者の身体に対する柔かい密着性に優れる。第1及び第2繊維層が伸縮性繊維を含んでいる場合は、伸縮性及び嵩高性が向上することはいうまでもない。不織布は、その伸縮性付与のためメルトブロン伸縮性不織布を含んでいるが、そして後者の不織布は、毛羽立ち易くて引っ張り強度に劣るという問題を有するが、その両表面が繊維交絡する第1及び第2繊維層によって実質的に完全に被覆されているから、前者の不織布は、前記問題を有しておらず、使い捨ておむつや、生理用ナプキンなどの衛生用着用物品の構成部材として実用に供し極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この発明に係る不織布の部分斜視図。
【図2】
前記不織布の部分拡大断面図。
【符号の説明】
10 不織布
11 開孔
12 第1繊維層
13 第2繊維層
14 第3繊維層
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-03-31 
結審通知日 2006-04-04 
審決日 2006-04-17 
出願番号 特願平10-146470
審決分類 P 1 41・ 856- Y (D04H)
P 1 41・ 852- Y (D04H)
P 1 41・ 851- Y (D04H)
P 1 41・ 853- Y (D04H)
最終処分 成立  
特許庁審判長 松井 佳章
特許庁審判官 野村 康秀
澤村 茂実
登録日 2003-04-04 
登録番号 特許第3416527号(P3416527)
発明の名称 衛生用伸縮性不織布及びその製造方法  
代理人 白浜 吉治  
代理人 白浜 秀二  
代理人 白浜 吉治  
代理人 白濱 秀ニ  

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