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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A01M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01M
管理番号 1138308
審判番号 不服2003-15052  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-04-03 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-30 
確定日 2006-06-12 
事件の表示 平成11年特許願第302854号「ムカデ撃退用壁面カバー粘着用コンクリートブロック」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月 3日出願公開、特開2001- 86923〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年9月17日の出願であって、平成15年5月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年6月30日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年6月30日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年6月30日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項3は、
「本発明の断面図が示すように片方の角の部分の大きく欠けた形状で、そのブロックの横腹に水抜き穴(7)のあることを特徴とするムカデ撃退用壁
面カバー粘着用のブロック」
と補正された。

上記補正は、上記補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ブロック」について、「横腹に水抜き穴(7)のある」点を付加し、さらに、「壁面カバー貼着用のブロック」を「壁面カバー粘着用のブロック」とし、「図1の真横からの図が示すように片方の角(点線で示すAの部分)の欠けた形状」を「本発明の断面図が示すように片方の角の部分の大きく欠けた形状」としたものであって、特許法17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮及び同第3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項3に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用文献に記載された事項
(2-1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である、特開平3-51447号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「ムカデ撃退用壁面カバーの万里の長城方式」の発明に関し、図面の第1図及び第2図とともに次の事項が記載されている。

(イ)「2.特許請求の範囲 一段のコンクリートブロック1で家屋2を囲み、そのブロック1の外面にムカデ撃退用壁面カバー3を貼着して、ムカデを撃退する方法」(第1ページ左下欄第4〜7行)

(ロ)「そのような家屋の場合には、第1図で示すように一段のコンクリートブロック1で家屋全体を“万里の長城”式に囲み、そのブロック1の外面にこのムカデ撃退用壁面カバー3を貼着する-という方法を用いればよい訳である。・・・。家屋の外壁に、両面テープや壁面カバーを直接ベタベタ貼着することに抵抗をお感じの方、又、家屋の壁面が荒くて両面テープのくっつきが思わしくないような場合等にも、この方式を用いた方がよいだろう。」(第1ページ右下欄第14行〜第2ページ左上欄第7行)

(ハ)「この万里の長城の築き方によっては(というより家屋の構造によっては)、その内側に雨水の溜ってしまうようなこともあるだろう。そのような場合には、当然その雨水を抜く“水抜きアナ”も同時にあけておく必要がある。また、その“水抜きアナ”がムカデの侵入口とならないように、完全な方法で細い目のネットのフタをして置くことも忘れてはならない。」
(第2ページ右下欄第16行〜第3ページ左上欄第3行)

そして、上記記載事項(イ)〜(ハ)並びに図面に記載された内容を総合すると、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(引用発明)
「一段のコンクリートブロック1で家屋全体を“万里の長城”式に囲み、そのブロック1の外面にムカデ撃退用壁面カバー3を貼着し、万里の長城の内側に溜ってしまう雨水を抜く“水抜きアナ”をあけておく、ムカデを撃退する方法。」

(2-2)また、同じく原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である、実願昭62-55343号(実開昭63-162073号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、図面の第1図乃至第9図とともに次の事項が記載されている。

(イ)「2.実用新案登録請求の範囲(1)ブロツク塀等の障壁構造物の頂上部に設けられる構造体であつて、該構造体は、前記障壁構造物び構築方向に沿つて延在する猫の足裏が載らない程度の細巾にした頂辺を有すると共に、少くとも猫の侵入側の壁面には前記頂辺から下向き傾斜状に突出する斜面が形成されていることを特徴とした猫の侵入防止用構造体。」
(明細書第1ページ第4〜12行)

(ロ)「該構造体2は、ブロツク塀等と同様にコンクリートやレンガ材を用いたり、プラスチツク材等によつて形成されており、底面2aはブロツク塀等の障壁構造物1の巾とほぼ等しく、敷地側に面する内壁2bは障壁構造物1の内壁面の延長線上に延在する垂直平面を有している。また猫の侵入側に面する外壁は、下向き傾斜状で下録2dが前記障壁構造物1の外壁面より突出された態様の斜面2cを有すると共に、当該下縁2dに隣接して鼠返し状の顎部2eが形成されている。」
(明細書第4ページ第1〜10行)

(ハ)「第4図の構造体4は、顎部を無くして代りに斜面4cの傾斜度を急にしたものであり、」
(明細書第5ページ最終行〜第6ページ第1行)

(ニ)第1図から、構造体2がブロックをなしている態様が認められる。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「コンクリートブロック1」、「水抜きアナ」は、本願補正発明の「ブロック」、「水抜き穴」にそれぞれ相当する。
してみれば、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「ムカデ撃退用壁面カバー着用のブロック。」

(相違点1)
本願補正発明のブロックが「本発明の断面図が示すように片方の角の部分の大きく欠けた形状」であるのに対し、引用発明はその形状が明らかではない点。
(相違点2)
本願補正発明は、ブロックの横腹に水抜き穴があるのに対し、引用発明の「水抜きアナ」は、そのあけられた位置が明らかではない点。
(相違点3)
本願補正発明のブロックは、ムカデ撃退用壁面カバー粘着用のブロックであるのに対し、引用発明のコンクリートブロック1は、ブロック1にムカデ撃退用壁面カバー3を貼着している点。

(4)当審の判断
上記の相違点について検討する。

(相違点1について)
本願補正発明のブロックは「本発明の断面図が示すように片方の角の部分の大きく欠けた形状」であるが、ここでいう「断面図が示す形状」が如何なる形状を示そうとしているのか定かではない。そこで明細書及び図面を参酌すると、明細書【図面の簡単な説明】【図1】には「片方の角の部分の大きく欠けた、本発明ブロックの断面図。」と記載され、図1には、断面図として、略長方形状の図面左上頂点と右下頂点を結び、図面右上の角(点線で示すAの部分)を点線とした態様が認められる。してみれば、本願補正発明の「本発明の断面図が示すように片方の角の部分の大きく欠けた形状」とは、断面が略長方形状の一つの角の部分が大きく欠けた形状を指すものと解される。
一方、引用文献2には、ブロックをなし、垂直平面と、下向き傾斜状で下縁2dが突出された態様の斜面2cを有すると共に、下縁2dに隣接して鼠返し状の顎部2eが形成された構造体2が記載され、さらに構造体4として、顎部を無くして代りに斜面4cの傾斜度を急にした態様が記載されていることから、引用文献2には、ブロックをなし、垂直平面と、下向き傾斜状で下縁が突出された態様の斜面を有すると共に、下縁に顎部を有しない構造体が実質記載されているといえ、上記「ブロックをなし、垂直平面と、下向き傾斜状で下縁が突出された態様の斜面を有すると共に、下縁に顎部を有しない構造体」は、「断面が略長方形状の一つの角の部分が大きく欠けた形状」の「ブロック」に相当するものである。
そして、引用発明と引用文献2記載の「構造体」は、いずれもブロックである点で共通しているから、引用発明のブロックに代えて、引用文献2記載の「構造体」を用いることは、当業者が容易に想到しうることである。

(相違点2について)
引用発明の「水抜きアナ」は、ブロック1で家屋全体を“万里の長城”式に囲み、万里の長城の内側に溜ってしまう雨水を抜くためのものであるが、引用発明のブロック1で囲んだ内側の水を抜こうとすれば、「水抜きアナ」を、ブロックの横腹にあけることは、当業者が普通に行う事項にすぎない。

(相違点3について)
部材を貼着する際に、粘着により貼着を行うことが、例えば両面テープにみられるように従来周知の手法であることを考慮すれば、引用発明の「貼着」を「粘着」による「貼着」とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。ちなみに、引用文献1には、両面テープを用いた貼着が示唆されている(上記(2-1)(ロ)参照)。

そして、本願補正発明が奏する作用・効果を検討してみても、引用文献1並びに2に記載の技術から、当業者が予測しうる範囲のものであって、格別なものとみることはできない。

したがって、本願補正発明は、引用文献1並びに2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、審判請求人は平成15年6月30日付け審判請求書の「請求の理由」において、「発明者の言いたいことは先の「意見書」「上申書」で残らず申し上げてあったつもりですからもうこれ以上何も言うことはありません。・・・今度こそ引用ブロックとの“違い”がどの項目でもはっきり書けたものになっていると思っています。・・・なんでしたら、両方の「見本」を直接持って行ってその違い(メリット・デメリット)をお見せしましょうか……。」と主張する。
しかし、原審において審判請求人に対し面談の案内をし、さらに、面談を通じて補正の方向を示唆することを同請求人に連絡したにもかかわらず、同請求人は面談に応じることはなく、さらに原審において提示した補正案を請求人は受け入れなかった。以上のことをふまえれば、さらに見本を確認する等の面談をすべき特別な事情を見出すことはできない。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条第4項の規定に違反するものであり、同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。


3.本願発明について
平成15年6月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、平成14年11月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「図1の真横からの図が示すように片方の角(点線で示すAの部分)の欠けた形状の、ムカデ撃退用壁面カバー貼着用のブロック」

(1)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献に記載された事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比
引用発明における「コンクリートブロック1」は、本願発明の「ブロック」に相当するので、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「ムカデ撃退用壁面カバー貼着用のブロック」
(相違点)
本願発明のブロックが「図1の真横からの図が示すように片方の角(点線で示すAの部分)の欠けた形状」であるのに対し、引用発明はその形状が明らかではない点。

(3)判断
本願発明のブロックは「図1の真横からの図が示すように片方の角(点線で示すAの部分)の欠けた形状」であるが、ここでいう「図1の真横からの図が示す」形状が如何なる形状を示そうとしているのか定かではない。そこで明細書及び図面を参酌すると、明細書【図面の簡単な説明】【図1】には「片方の角の部分の大きく欠けた、本発明品の真横からの断面図。」と記載され、図1には、真横からの断面図として、略長方形状の図面左上頂点と右下頂点を結び、図面右上の角(点線で示すAの部分)を点線とした態様が認められる。してみれば、本願発明の「図1の真横からの図が示すように片方の角(点線で示すAの部分)の欠けた形状」とは、断面が略長方形状の一つの角の部分が欠けた形状を指すものと解される。
そうすると、本願補正発明中の「本発明の断面図が示すように片方の角の部分の大きく欠けた形状」を、明細書及び図面を参酌して「断面が略長方形状の一つの角の部分が大きく欠けた形状」を指すものと解釈して判断した本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用文献1並びに2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記本願補正発明の解釈から「大きく」という限定を外した解釈をする本願発明も、同様の理由により、引用文献1並びに2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
したがって、本願発明は、引用文献1並びに2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、本願の他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2006-03-23 
結審通知日 2006-03-28 
審決日 2006-04-12 
出願番号 特願平11-302854
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A01M)
P 1 8・ 121- Z (A01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 佳代子郡山 順  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 柴田 和雄
石井 哲
発明の名称 ムカデ撃退用壁面カバー粘着用コンクリートブロック  

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