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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1138615
審判番号 不服2003-18067  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-01-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-09-18 
確定日 2006-06-22 
事件の表示 平成 9年特許願第 17524号「テープ印刷装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 1月 6日出願公開、特開平10- 818〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成9年1月14日の出願(国内優先権主張 平成8年4月15日)であって、平成15年8月15日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年9月18日付けで本件審判請求がされるとともに、同年10月9日付けで明細書についての手続補正(平成14年改正前特許法17条の2第1項3号の規定に基づく手続補正であり、以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成15年10月9日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正内容及び補正目的
本件補正前後の特許請求の範囲を比較すると、本件補正後の請求項1は本件補正前の請求項8に対応し(補正前請求項1〜7は削除)、「入力手段」について「縦型横書フォームが選択された場合に、キャラクタ列の各行を前記テープ幅に合わせて入力可能な文字数以下に規制すると共に、行数を前記入力可能な文字数を超える数に規制可能な手段を有し」と限定する(下線部が限定内容)ものであるから、特許請求の範囲の減縮(特許法17条の2第4項2号該当)を補正目的に含んでいる。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。

2.補正発明の認定
補正発明は、本件補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されるものと認める。
「複数種類の印刷フォームから指定印刷フォームとして1種類の印刷フォームを選択する印刷フォーム指定手段と、
入力されたキャラクタを並べてキャラクタ列を作成する入力手段と、
前記指定印刷フォームに基づいて、前記キャラクタ列を編集し印刷画像データを作成する印刷画像作成手段と、
前記印刷画像データに基づいて、走行するテープ状の記録媒体に印刷を行う印刷手段と、
を備えたテープ印刷装置であって、
前記複数種類の印刷フォームには、前記キャラクタ列の各キャラクタの横方向を前記記録媒体のテープ幅方向と一致させ、前記各キャラクタをテープ長さ方向に並べたキャラクタ列を印刷する縦書フォーム、および、前記各キャラクタの横方向を前記テープ幅方向と一致させ、前記各キャラクタをテープ幅方向に並べたキャラクタ列を、各行として印刷する縦型横書フォームが含まれ、
前記入力手段は、前記縦型横書フォームが選択された場合に、キャラクタ列の各行を前記テープ幅に合わせて入力可能な文字数以下に規制すると共に、行数を前記入力可能な文字数を超える数に規制可能な手段を有し、
前記印刷画像作成手段は、
前記指定印刷フォームとして、前記縦型横書フォームが選択された場合に、
前記キャラクタ列の各キャラクタに相当する各キャラクタ画像データの横方向を、前記記録媒体のテープ幅方向に相当する方向と一致させて、
前記各キャラクタ画像データを、前記テープ幅方向に相当する方向に並べて配置した、
前記印刷画像データを作成することを特徴とするテープ印刷装置。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-156497号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア〜セの記載が図示とともにある。
ア.「複数種類の定型フォーマットを記憶する定型フォーマット記憶手段と、
前記定型フォーマット記憶手段に記憶された前記複数種類の定型フォーマットの中から任意のものを選択する選択手段と、
被印刷データを入力する入力手段と、
前記入力手段により入力された被印刷データを前記選択手段により選択された前記定型フォーマットに挿入する挿入手段とを備えることを特徴とするプリンタ装置。」(【請求項1】)
イ.「前記挿入手段により得られた結果を印刷する印刷手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のプリンタ装置。」(【請求項2】)
ウ.「従来のラベルプリンタにおいては、操作者は、印刷したい文字を入力すると共に、テープ長(ラベルの長さ)、ラベル幅、縦書/横書の別、ブロック単位の書式、文字サイズ等のフォーマットの細かい設定を逐一行ってラベルを作成して、印刷する必要があった。」(段落【0002】)
エ.「定型フォーマット記憶手段に記憶された定型フォーマットの中から任意のものを選択手段により選択し、被印刷データを入力すると、挿入手段が入力された被印刷データを選択された定型フォーマットに挿入する。例えば、定型フォーマットとして、入力された文字の配置、文字サイズ、印刷方向(縦書/横書)、文字の種類(強調文字、斜体文字、中ぬき文字)、文字飾り(網掛け、アンダーライン)、テープの長さ等を設定しておけば、その定型フォーマットに従って自動的に文字の配置やサイズを調整・設定し、フレーム(存在する場合)と合成する。従って、これを印刷すれば、煩雑な書式、テープ長やテープ幅の設定等を行わなくても、凝ったあるいは印象深い印刷を行うことができる。」(段落【0007】)
オ.「図2(A)に示す定型フォーマットの領域1は、フレーム(枠)F1内に印刷する文字を挿入する領域であり、書式データとして、縦書きであること、テープ長が0.8cmであること、文字サイズが1(縦)×1(横)であること、中ぬき文字であること、改行位置等が属性データとして設定されている。該定型フォーマットの領域2には、書式として、例えば、横書きであること、テープ長が8cmであること、文字サイズが3×3であること等が属性データとして設定されている。さらに、領域3は、フレーム(アンダーライン)F2上に印刷する文字を挿入する領域であり、例えば、横書きであること、テープ長が6cmであること、文字サイズが1×1であること、改行位置等が属性データとして予め設定されている。」(段落【0015】)
カ.「図2(C)に示すVHS-ビデオテープ用のラベルを作成する例を参照して、この実施例に係るラベルプリンタの動作を具体的に説明する。」(段落【0018】)
キ.「操作者は、キー入力部13を操作して、表示された定型フォーマットの中から、適当なものを選択する(ステップS5)。この例では、操作者は上側の定型フォーマトを選択する。」(段落【0021】)
ク.「制御部11は、選択された定型フォーマットに対応し、文字入力を案内するメッセージをメニューROM31から読み出し、順次、表示部15に表示し、操作者は案内に従って文字を入力する。即ち、制御部11は、メニューROM31から、領域1用のメッセージ「分類を8文字以内で入力してください」を読み出し、図5(E)に示すように表示する。操作者は表示に従い、「ハードアクション」と入力する。文字の入力の手順、仮名漢字変換の手順等は従来のラベルプリンタと同一である。」(段落【0022】)
ケ.「8文字分の入力が終了するか又はリターンキーを操作すると、制御部11はメニューROM31から領域2に対応するメッセージ「タイトルを8文字以内で入力してください」を読み出し、図5(F)に示すように表示部15に表示する。操作者が表示メニューに従い、「羽村市の対決」と入力する。タイトルの入力が終了すると、制御部11はメニューROM31から領域3に対応するメッセージ「備考を入力してください」を読み出し、表示部15に表示する。操作者は表示メニューに従い、「93.3. TV ON AIR 改行キー 1時間 標準モード 改行キー MASTER TAPE」を入力する。」(段落【0023】)
コ.「文字の入力が終了すると、制御部11は、RAM25のワークエリアに記憶された文字データを書式データに従い、定型フォーマットに挿入して合成データを生成し、表示する(ステップS7)。」(段落【0024】)
サ.「図2(A)の定型フォーマットに入力文字を挿入した時の表示は、例えば、図2(D)に示すようになる。なお、領域1に関しては、「ハードアクション」と入力された文字列を、第1行の文字列「アン」、第2行の文字列「ドョ」、第3行の文字列「ーシ」、第4行の文字列「ハク」に切り分けて、定型フォーマットに差し込み、合成データを作成する。」(段落【0025】)
シ.「なお、図2(A)ないし(D)、図3(A)ないし(C)に示す定型フォーマット及びその印刷パターンは一例にすぎず、これらに限定されるものではない。」(段落【0030】)
ス.「定型フォーマットの選択条件として、ラベルテープの幅、縦書/横書の別、行数、等を例示したが、他の選択条件を設定してもよい。」(段落【0031】)
セ.「定型フォーマットに文字データを挿入しただけでは、実際に印刷されるイメージが感得できないので、出力イメージ(図2(C)、図3(C))を表示部15に表示し、表示内容に満足した場合に、印刷を開始するようにしてもよい。」(段落【0033】)

3.引用例記載の発明の認定
引用例の記載エ,オによれば、「定型フォーマット」は複数の領域毎に「文字の配置、文字サイズ、印刷方向(縦書/横書)、文字の種類(強調文字、斜体文字、中ぬき文字)、文字飾り(網掛け、アンダーライン)、テープの長さ等を設定」したものである。以下では、複数の領域毎の設定を「書式」ということにする。引用例には随所に「テープ」との文言が記載されており、印刷対象となる記録媒体がテープであることは明らかである。
記載オ,ク及び【図2】によれば、図2(A)の領域1については、操作者が「ハードアクション」と入力したもののうち、4番目と8番目の文字(ア,ン)が【図2】(B)に「F1」で示される範囲内の右側に縦書きで印刷され、その左側に3番目と7番目の文字(ド,ョ)が縦書きで印刷され、その左側に2番目と6番目の文字(ー,シ)が縦書きで印刷され、F1の最左側に1番目と5番目の文字(ハ,ク)が縦書きで印刷される仕組みになっている。そして、【図2】(A)及び(D)には、領域1に該当する部分に、4つの四角形が図示され、その四角形内に、4番目と8番目の文字、3番目と7番目の文字、2番目と6番目の文字及び1番目と5番目の文字が割り当てられているから、四角形の個数は各行の最大入力文字数(この場合は4文字)を意味し、各四角形に2文字割り当てられることは、行数を最大2行と定めたことを意味する。すなわち、記載クの「8文字以内」というのは、1行が4文字以内、行数が2以内と定めたことにほかならない。
また、【図2】(C)から明らかなように、各文字の横方向とテープ幅方向とは一致しており、文字列はテープ幅方向に並んで印刷される。以下、【図2】領域1の書式を「第1書式」という。
図2(A)の領域2については、【図2】(C)からみて、各文字の横方向とテープ幅方向が一致、文字列はテープ長さ方向に並んでいる。これは、通常「縦書き」と称するものであり、記載オに「領域2には、書式として、例えば、横書きであること」と記載されているものの、「横書き」は「縦書き」の誤記と解するべきである。なお、「横書き」と「縦書き」の書き間違いについては、本件補正前の請求項9の「縦書の印刷フォーム」を本件補正により、請求項2において「横書フォーム」と補正した(これは自明な誤記の訂正と認める。)ことからも、ありがちな誤記と解される。以下、【図2】領域2の書式を「第2書式」という。
したがって、引用例には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「複数種類の定型フォーマットを記憶する定型フォーマット記憶手段と、
前記定型フォーマット記憶手段に記憶された前記複数種類の定型フォーマットの中から任意のものを選択する選択手段と、
被印刷データを入力する入力手段と、
前記入力手段により入力された被印刷データを前記選択手段により選択された前記定型フォーマットに挿入する挿入手段と、
前記挿入手段により得られた結果をテープに印刷する印刷手段を備えるプリンタ装置であって、
前記定型フォーマットは複数の領域毎に書式が定められたものであり、
前記書式には、各文字の横方向とテープ幅方向が一致し、文字列はテープ幅方向に並んで印刷される第1書式、及び各文字の横方向とテープ幅方向が一致し、文字列はテープ長さ方向に並んで印刷される第2書式が含まれ、
第1書式においては、各行の最大文字数と最大行数が定められているプリンタ装置。」(以下「引用発明」という。)

4.補正発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
以下、本審決では「発明を特定するための事項」という意味で、「構成」との用語を用いることがある。
引用発明の「書式」、「文字」及び「テープ」は、補正発明の「印刷フォーム」、「キャラクタ」及び「走行するテープ状の記録媒体」に相当するから、引用発明を「テープ印刷装置」ということができる。
引用発明の「被印刷データを入力する入力手段」と補正発明の「入力されたキャラクタを並べてキャラクタ列を作成する入力手段」に相違はなく、引用発明が「印刷フォームに基づいて、前記キャラクタ列を編集し印刷画像データを作成する印刷画像作成手段」を有することは明らかである。
引用発明の「第2書式」と補正発明の「縦書フォーム」を比較すると、「前記キャラクタ列の各キャラクタの横方向を前記記録媒体のテープ幅方向と一致させ、前記各キャラクタをテープ長さ方向に並べたキャラクタ列を印刷する」点で一致するから、これらは同一の「印刷フォーム」である。
引用発明の「第1書式」と補正発明の「縦型横書フォーム」を比較すると、「前記各キャラクタの横方向を前記テープ幅方向と一致させ、前記各キャラクタをテープ幅方向に並べたキャラクタ列」の点で一致し、引用発明においても「各行として印刷する」ことは明らかであるから、引用発明の「第1書式」と補正発明の「縦型横書フォーム」に相違はない。さらに、印刷フォームが縦型横書フォームである場合の入力手段につき、「キャラクタ列の各行を最大文字数以下に規制する」手段を有する点、及び「行数を規制可能な手段」を有する点でも一致する。つけ加えると、テープに印刷する場合、通常テープ幅よりもテープ長さが長くなることを考慮すると、補正発明の「縦型横書フォーム」とは、記録用紙を縦長に配置して横書きする印刷フォームにほかならず、印刷フォームとして極めてありふれたフォームというよりなく、複数種類の印刷フォームに「縦型横書フォーム」が含まれることにより進歩性が生じるなどということはあり得ない。
引用発明の「第1書式」と補正発明の「縦型横書フォーム」に相違がない以上、印刷フォームが縦型横書フォームである場合に、「印刷画像作成手段」が「前記各キャラクタ画像データを、前記テープ幅方向に相当する方向に並べて配置した、前記印刷画像データを作成する」点でも補正発明と引用発明は一致する。
したがって、補正発明と引用発明とは、
「入力されたキャラクタを並べてキャラクタ列を作成する入力手段と、
複数種類の印刷フォームの1つに基づいて、前記キャラクタ列を編集し印刷画像データを作成する印刷画像作成手段と、
前記印刷画像データに基づいて、走行するテープ状の記録媒体に印刷を行う印刷手段と、
を備えたテープ印刷装置であって、
前記複数種類の印刷フォームには、前記キャラクタ列の各キャラクタの横方向を前記記録媒体のテープ幅方向と一致させ、前記各キャラクタをテープ長さ方向に並べたキャラクタ列を印刷する縦書フォーム、および、前記各キャラクタの横方向を前記テープ幅方向と一致させ、前記各キャラクタをテープ幅方向に並べたキャラクタ列を、各行として印刷する縦型横書フォームが含まれ、
前記入力手段は、前記印刷フォームが縦型横書フォームである場合に、キャラクタ列の各行を最大文字数以下に規制すると共に、行数を規制可能な手段を有し、
前記印刷画像作成手段は、
前記印刷フォームが前記縦型横書フォームである場合に、
前記キャラクタ列の各キャラクタに相当する各キャラクタ画像データの横方向を、前記記録媒体のテープ幅方向に相当する方向と一致させて、
前記各キャラクタ画像データを、前記テープ幅方向に相当する方向に並べて配置した、
前記印刷画像データを作成するテープ印刷装置。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉補正発明が「複数種類の印刷フォームから指定印刷フォームとして1種類の印刷フォームを選択する印刷フォーム指定手段」を有するのに対し、引用発明では個々の領域に書式(印刷フォーム)が定められた「定型フォーマット」を選択し、その「定型フォーマット」の領域として「縦書フォーム」の領域や「縦型横書フォーム」の領域がある点。なお、「入力手段」及び「印刷画像作成手段」につき、補正発明が「前記縦型横書フォームが選択された場合に、」としている点は、前記相違点1に付随する事項にすぎないから、別途独立した相違点とはしない。
〈相違点2〉印刷フォームが縦型横書フォームである場合に、補正発明の「入力手段」が「キャラクタ列の各行を前記テープ幅に合わせて入力可能な文字数以下に規制すると共に、行数を前記入力可能な文字数を超える数に規制可能な手段」を有するのに対し、補正発明の「入力手段」は、各行文字数や行数を規制しているものの、補正発明の前記構成を有するとまではいえない点。

5.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断
(1)相違点1について
引用発明では、1つの「定型フォーマット」を選択すれば、複数の領域の印刷フォームが定まるのであるから、印刷フォームが混在したラベルを印刷する上では便利であるが、印刷フォームの混在様式が多様になれば、記憶しておくべき「定型フォーマット」が多くなりすぎ、かえって操作者にとって「定型フォーマット」の選択が面倒になる。また、ラベルによっては、印刷フォームが混在する必要のないものも多数ある。
どのようなフォーマットのラベルが好ましいかは、印刷物の見やすさや操作の簡便性等を総合考慮した上で検討すべきであり、単一の印刷フォームとすることは設計事項というべきである。
そればかりか、操作者の選択対象を、複数の領域の印刷フォームを含む定型フォーマットから、単一の印刷フォームに変更したとしても、印刷・作成すべきラベルを単一印刷フォームとしなければならないわけではない。作成すべきラベルを操作者自身が適宜の領域に分割し、分割された領域毎に印刷フォームを定めても、印刷フォームが混在したラベルが作成可能なことは明らかである。
そうである以上、引用発明において操作者が選択又は指定する対象を個々の領域に書式(印刷フォーム)が定められた定型フォーマットから、個々の書式(印刷フォーム)に変更すること、すなわち相違点1に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易といわざるを得ない。

(2)相違点2について
テープ印刷装置における記録媒体(テープ)の幅は通常狭いため、テープ幅内に印刷できる文字数に限りがあることは明らかである。引用発明においても、各行の文字数には制限を設けており(実施例では4文字以下)、文字数制限を「テープ幅に合わせて」とすることは設計事項である。なお、補正発明は「入力可能な文字数以下に規制」としているところ、この記載を、入力が行単位で行われ、自然改行を許さない(次の行を入力するには操作者が改行処理しなければならない。)との趣旨に限定して解することはできないが、仮にその趣旨であるとすると、引用発明との別途の相違点になるので念のため検討を加えておく。引用発明の実施例では、領域1の総文字数を8文字以内としているのであるが、7文字以内の場合、1行目に4文字割り当てない方が見栄えがよい場合があることは十分予測できる。また、引用例に「操作者は表示メニューに従い、「93.3. TV ON AIR 改行キー 1時間 標準モード 改行キー MASTER TAPE」を入力する。」(記載ケ)と記載されているとおり、実施例における【図2】の領域3では強制改行により改行処理が行われている。領域1においても、改行処理を強制改行により行うことが技術的に困難であると理解しなければならない理由はないから、上記のとおり限定解釈をするとしても、設計事項の域をでない。
次に、各行文字数や行数と行数の関係について検討する。補正発明は「行数を前記入力可能な文字数を超える数に規制可能な手段」を有するのであって、「行数を前記入力可能な文字数を超える数に規制する手段」を有するのではない。引用発明の実施例では、【図2】(A)及び(D)に図示される四角形に割り当てられる文字数が行数に当たることは3.で述べたとおりである。各四角形により多くの文字数(実施例であれば、各行文字数が4だから、5以上)を割り当てられないと解することは著しく困難である。また、引用発明の実施例では、縦型横書印刷されるものが、テープの分類に当たる「ハードアクション」という8文字であり、分類の場合には行数が比較的少ない場合が多いと予測できるが、縦型横書フォームとは4.で説示したとおり、縦長記録媒体に横書きする印刷フォームであり、記録媒体がテープである場合はいざ知らず、通常の記録用紙であれば広く採用されているフォームであって、通常の縦長記録用紙に横書きする場合には、用紙長の関係から行数が各行文字数を超えることが多い。そして、引用発明における第1の書式(縦型横書フォーム)を分類以外に用いてはならない理由はなく、分類以外であれば、行数が各行文字数を超えることがあることはたやすく予測できる。とりわけ、記録媒体がテープである以上、各行文字数にはテープ幅で定まる制限があるため、縦型横書フォームで印刷する総文字数を多くすれば、行数が各行文字数を超える結果とならざるを得ない。そうである以上、「行数を前記入力可能な文字数を超える数に規制可能な手段」を有する構成とすることは設計事項というべきである。
以上のとおり、相違点2に係る補正発明の構成を採用することは設計事項である。

(3)補正発明の独立特許要件の判断
相違点1,2に係る補正発明の構成を採用することは設計事項であるか、当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[補正の却下の決定のむすび]
補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができない以上、本件補正は平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反しており、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により本件補正は却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたので、本願の請求項8に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成14年10月21日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲【請求項8】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「複数種類の印刷フォームから指定印刷フォームとして1種類の印刷フォームを選択する印刷フォーム指定手段と、
入力されたキャラクタを並べてキャラクタ列を作成する入力手段と、
前記指定印刷フォームに基づいて、前記キャラクタ列を編集した印刷画像データを作成する印刷画像作成手段と、
前記印刷画像データに基づいて、走行するテープ状の記録媒体に印刷を行う印刷手段と、
を備えたテープ印刷装置であって、
前記複数種類の印刷フォームには、前記キャラクタ列の各キャラクタの横方向を前記記録媒体のテープ幅方向と一致させ、前記各キャラクタをテープ長さ方向に並べたキャラクタ列を印刷する縦書の印刷フォーム、および、前記各キャラクタの横方向を前記テープ幅方向と一致させ、前記各キャラクタをテープ幅方向に並べたキャラクタ列を、各行として印刷する縦型横書フォームが含まれ、前記テープ幅方向に合わせて前記各行に入力可能な文字数が規定されており、
前記入力手段は、キャラクタ列の各行を前記入力可能な文字数以下に規制する手段を有し、
前記印刷画像作成手段は、
前記指定印刷フォームとして、前記縦型横書フォームが選択された場合に、
前記キャラクタ列の各キャラクタに相当する各キャラクタ画像データの横方向を、前記記録媒体のテープ幅方向に相当する方向と一致させて、
前記各キャラクタ画像データを、前記テープ幅方向に相当する方向に並べて配置した、前記印刷画像データを作成することを特徴とするテープ印刷装置。」

2.本願発明の進歩性の判断
本願発明の「縦書の印刷フォーム」と補正発明の「縦書フォーム」が同義であることは明らかである。
本願発明と補正発明を比較すると、「前記テープ幅方向に合わせて前記各行に入力可能な文字数が規定されており、」(本願発明)との限定が補正発明にはないが、「前記テープ幅方向に合わせて前記各行に入力可能」との文言があることから、縦型横書フォームが選択された場合の限定事項と解するのが相当である。そして、補正発明には「前記入力手段は、前記縦型横書フォームが選択された場合に、キャラクタ列の各行を前記テープ幅に合わせて入力可能な文字数以下に規制する」との限定があるため、上記文言があることにより本願発明が補正発明に何らかの限定を加えるわけではない。
そして、相違点2に係る補正発明の構成は、本願発明に限定されていない構成であるから、本願発明と引用発明とは、「第2[理由]4」で認定した一致点において一致し、相違点1において相違する(「補正発明」を「本願発明」と読み替える。)。なお、「各行に入力可能な文字数が規定」と文言が、強制改行により改行処理を意味するとすると、別途の相違点になるが、「第2[理由]5(2)で述べたとおり設計事項でしかない。
相違点1に係る本願発明の構成を採用することが当業者にとって想到容易であること、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることができないことも「第2[理由]5」で述べたとおりである(「補正発明」を「本願発明」と読み替える。)。
したがって、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-21 
結審通知日 2006-04-25 
審決日 2006-05-10 
出願番号 特願平9-17524
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
P 1 8・ 575- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 康司畑井 順一  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 島▲崎▼ 純一
國田 正久
発明の名称 テープ印刷装置  
代理人 落合 稔  
代理人 落合 稔  

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