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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J
管理番号 1139268
審判番号 不服2003-21036  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-11-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-10-30 
確定日 2006-07-06 
事件の表示 特願2000-358111「電子源基板および該電子源基板を用いた画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月16日出願公開、特開2001-319567〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成12年11月24日(優先権主張;平成12年2月28日)の出願であって、平成15年9月25日付け(発送日;同月30日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月1日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年12月1日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年12月1日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】 基板上の1対の素子電極間に導電性薄膜を構成する材料を含有する溶液の液滴を噴射ヘッドによって付与し、該導電性薄膜による表面伝導型電子放出素子群が形成された電子源基板を製造する電子源基板製造装置において、該電子源基板製造装置は、前記基板と前記噴射ヘッドとが前記導電性薄膜の形成面に平行に相対的な移動を行うように構成され、使用する基板は200mm×200mm〜4000mm×4000mmの大きさとされ、前記導電性薄膜の形成面と前記噴射ヘッドの溶液噴射口面とが一定の距離を保持し、その変動幅を5mm以下として、前記相対的な移動を行うとともに、該相対的な移動を止めることなく順次液滴噴射を行う電子源基板製造装置であって、前記液滴の噴射付与領域が、前記表面伝導型電子放出素子群が形成される領域よりも広いことを特徴とする電子源基板製造装置。
【請求項2】 前記電子源基板製造装置は、前記基板を保持する基板保持手段と、前記基板に相対する位置に配置され前記溶液を噴射する噴射ヘッドと、該噴射ヘッドに液滴付与情報を入力する情報入力手段を有するとともに、入力された前記液滴付与情報に基づいて前記噴射ヘッドから前記溶液を噴射させる電子源基板製造装置であって、前記基板は、前記基板保持手段により保持位置を決められて、もしくは保持位置を調整して決められて保持されるとともに、前記基板の導電性薄膜が形成される領域と前記噴射ヘッドの溶液噴射口面とは、一定の距離をおいて配置され、前記基板と前記噴射ヘッドとは前記基板面に対して平行、かつ互いに直交する2方向に相対移動を行うことを特徴とする請求項1に記載の電子源基板製造装置。
【請求項3】 前記電子源基板製造装置は、前記基板を保持する基板保持手段と、前記基板に相対する位置に配置され前記溶液を噴射する噴射ヘッドと、該噴射ヘッドに液滴付与情報を入力する情報入力手段を有するとともに、入力された前記液滴付与情報に基づいて前記噴射ヘッドから前記溶液を噴射させる電子源基板製造装置であって、前記噴射ヘッドは、前記基板に対向する領域で移動可能なキャリッジ上に搭載されるとともに、前記噴射ヘッドの溶液噴射口面と前記基板の導電性薄膜が形成される領域とが、一定の距離を保ちつつ、前記キャリッジによる走査を行って、前記溶液の液滴付与を行う電子源基板の製造装置において、該電子源基板の製造装置を使用して製作される電子源基板の厚さを4mm以上、15mm以下とするとともに、前記基板保持手段は、前記基板の前記溶液の液滴が付与される面を上向きにして前記基板をほぼ水平に保持することを特徴とする請求項1に記載の電子源基板製造装置。
【請求項4】 前記基板保持手段による保持位置決めは、角度調整を含むことを特徴とする請求項2に記載の電子源基板製造装置。
【請求項5】 前記基板は、該基板を保持する基板保持手段によってほぼ水平に保持されるとともに、前記噴射ヘッドは前記基板の上方に位置し、前記基板の上を一定の距離をおいてキャリッジ走査され、前記噴射ヘッドから前記溶液がほぼ下向きに噴射することにより液滴を前記基板に付与し、前記一定の距離を0.1mm〜10mmの範囲にすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1に記載の電子源基板製造装置。
【請求項6】 前記溶液の噴射速度は、前記基板と前記噴射ヘッドの相対移動速度より速いことを特徴とする請求項2または4記載の電子源基板製造装置。
【請求項7】 前記溶液の噴射速度は、前記キャリッジ走査速度より速いことを特徴とする請求項3または5記載の電子源基板製造装置。
【請求項8】 前記液滴は、マルチノズル型の液滴噴射ヘッドから噴射されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1に記載の電子源基板製造装置。
【請求項9】 前記液滴の噴射速度は3〜10m/sであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1に記載の電子源基板製造装置。
【請求項10】 基板上の1対の素子電極間に、導電性薄膜を構成する材料を含有する溶液の液滴が噴射付与され、該導電性薄膜を形成することにより表面伝導型電子放出素子群が形成された電子源基板において、前記基板は直交する2方向の辺を有するとともに、前記表面伝導型電子放出素子群をマトリックス状に配列し、該マトリックスの互いに直交する2方向が前記辺の直交する2方向と平行である電子源基板であって、前記直交する2方向の辺と前記表面伝導型電子放出素子群の間にスペースを設けたことを特徴とする電子源基板。
【請求項11】 基板上の1対の素子電極間に、導電性薄膜を構成する材料を含有する溶液の液滴が噴射付与され、該導電性薄膜を形成することにより表面伝導型電子放出素子群が形成された電子源基板において、前記表面伝導型電子放出素子群をマトリックス状に配列し、該マトリックスの互いに直交する2方向のそれぞれまたは一方に平行な帯状パターンを前記電子源基板に設けたことを特徴とする電子源基板。
【請求項12】 前記基板の前記表面伝導型電子放出素子群を形成する面より裏面の表面粗さを粗くしたことを特徴とする請求項10もしくは11に記載の電子源基板。
【請求項13】 前記表面伝導型電子放出素子群が形成される面の表面粗さを0.5s以下としたことを特徴とする請求項12に記載の電子源基板。
【請求項14】 前記裏面の表面粗さを1s以上としたことを特徴とする請求項12または13記載の電子源基板。
【請求項15】 前記表面伝導型電子放出素子群が形成されている領域の面の裏面に物理的な線状形状部を設けたことを特徴とする請求項10もしくは11に記載の電子源基板。
【請求項16】 前記線状形状部は、前記裏面の平面部に対して落ち込んだ形状を有するとともに、前記線状形状部は、前記基板の端部まで設けられていることを特徴とする請求項15に記載の電子源基板。
【請求項17】 前記線状形状部は、前記裏面の平面部に対して突き出した形状を有することを特徴とする請求項15に記載の電子源基板。
【請求項18】 前記線状形状部は、複数設けられていることを特徴とする請求項15ないし17のいずれか1に記載の電子源基板。
【請求項19】 前記裏面平面に対して落ち込んだ形状である線状形状の落ち込み深さは、前記基板の厚さの50分の1〜5分の1にしたことを特徴とする請求項16または18に記載の電子源基板。
【請求項20】 前記基板の形状を矩形にするとともに、該基板の4角を機械製図において指定されるC1あるいはR1以上、もしくは該C1またはR1と同等の面取りを施したことを特徴とする請求項10もしくは11に記載の電子源基板。
【請求項21】 前記基板形状を矩形にするとともに、該基板の4角のうち少なくとも1つの角の形状を他の角と識別できる程度に他の角と異ならせたことを特徴とする請求項10もしくは11に記載の電子源基板。
【請求項22】 前記基板形状を矩形にするとともに、該基板の4辺のうち少なくとも1つの辺に切り欠き部を設けたことを特徴とする請求項10もしくは11に記載の電子源基板。
【請求項23】 前記表面伝導型電子放出素子群が形成されている領域の面と該面に垂直方向の厚さ方向の面とが交差する稜線領域に面取りを施したことを特徴とする請求項10もしくは11に記載の電子源基板。
【請求項24】 前記表面伝導型電子放出素子群が形成されている領域の裏面と該裏面に垂直方向の厚さ方向の面とが交差する稜線領域に面取りを施したことを特徴とする請求項10もしくは11に記載の電子源基板。
【請求項25】 前記面取りによりあらたに形成された面が面取りにより形成された他の面と直角に接する稜線領域にさらに面取りを施したことを特徴とする請求項23または24記載の電子源基板。
【請求項26】 前記面取り部の表面粗さは、前記表面伝導型電子放出素子群が形成されている領域の面の表面粗さより粗いことを特徴とする請求項23ないし25のいずれか1に記載の電子源基板。
【請求項27】 前記表面伝導型電子放出素子群の1素子は、複数個の液滴を基板上に付着させたドットイメージにより形成されることを特徴とする請求項10もしくは11に記載の電子源基板。
【請求項28】 前記複数個の液滴によるドットイメージは、直交する2方向の隣接ドットが互いに重なり合うようにするとともに、該隣接ドットの前記直交する2方向の中心間距離を前記ドットの直径の1/√2以内としたことを特徴とする請求項27に記載の電子源基板。
【請求項29】 請求項10ないし28のいずれか1の電子源基板と、該電子源基板に対向して配置され、蛍光体を搭載したフェースプレートとを有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項30】 前記フェースプレートに用いるガラスの厚さは、前記電子源基板より厚いことを特徴とする請求項29に記載の画像表示装置。
【請求項31】 前記フェースプレートは強化ガラスであることを特徴とする請求項30に記載の画像表示装置。
【請求項32】 前記フェースプレートは、基板の表面と該表面に垂直方向の厚さ方向の面とが交差する稜線領域に面取りを施したガラス基板であることを特徴とする請求項29ないし31のいずれか1に記載の画像表示装置。
【請求項33】 前記フェースプレートは、基板の裏面と該裏面に垂直方向の厚さ方向の面とが交差する稜線領域に面取りを施したガラス基板であることを特徴とする請求項29ないし31のいずれか1に記載の画像表示装置。
【請求項34】 前記フェースプレートは、面取りによりあらたに形成された面が面取りにより形成された他の面と直角に接する稜線領域にさらに面取りを施したガラス基板であることを特徴とする請求項32または33に記載の画像表示装置。
【請求項35】 前記面取りにより形成された面の表面粗さは、前記ガラス基板の表裏面の表面粗さより粗いことを特徴とする請求項32ないし34のいずか1に記載の画像表示装置。」
を、
「【請求項1】 溶液が吸収されず表面に残る性質を有する基板上の1対の素子電極間に導電性薄膜を構成する材料を含有する溶液の液滴を噴射ヘッドによって付与し、該導電性薄膜による表面伝導型電子放出素子群が形成された電子源基板を製造する電子源基板製造装置において、該電子源基板製造装置は、前記基板と前記噴射ヘッドとが前記導電性薄膜の形成面に平行に相対的な移動を行うように構成され、使用する基板は200mm×200mm〜4000mm×4000mmの大きさとされ、前記導電性薄膜の形成面と前記噴射ヘッドの溶液噴射口面とが0.1mm〜10mmの範囲の距離を保持し、その変動幅を5mm以下として、前記相対的な移動を行うとともに、該相対的な移動を止めることなく順次液滴噴射を行い、その噴射付与領域が、前記表面伝導型電子放出素子群が形成される領域よりも広い電子源基板製造装置であって、前記液滴噴射速度を3m/s〜10m/sとしたことを特徴とする電子源基板製造装置。
【請求項2】 前記電子源基板製造装置は、前記基板を保持する基板保持手段と、前記基板に相対する位置に配置され前記溶液を噴射する噴射ヘッドと、該噴射ヘッドに液滴付与情報を入力する情報入力手段を有するとともに、入力された前記液滴付与情報に基づいて前記噴射ヘッドから前記溶液を噴射させる電子源基板製造装置であって、前記基板は、前記基板保持手段により保持位置を決められて、もしくは保持位置を調整して決められて保持されるとともに、前記基板の導電性薄膜が形成される領域と前記噴射ヘッドの溶液噴射口面とは、一定の距離をおいて配置され、前記基板と前記噴射ヘッドとは前記基板面に対して平行、かつ互いに直交する2方向に相対移動を行うことを特徴とする請求項1に記載の電子源基板製造装置。
【請求項3】 前記電子源基板製造装置は、前記基板を保持する基板保持手段と、前記基板に相対する位置に配置され前記溶液を噴射する噴射ヘッドと、該噴射ヘッドに液滴付与情報を入力する情報入力手段を有するとともに、入力された前記液滴付与情報に基づいて前記噴射ヘッドから前記溶液を噴射させる電子源基板製造装置であって、前記噴射ヘッドは、前記基板に対向する領域で移動可能なキャリッジ上に搭載されるとともに、前記噴射ヘッドの溶液噴射口面と前記基板の導電性薄膜が形成される領域とが、一定の距離を保ちつつ、前記キャリッジによる走査を行って、前記溶液の液滴付与を行う電子源基板の製造装置において、該電子源基板の製造装置を使用して製作される電子源基板の厚さを4mm以上、15mm以下とするとともに、前記基板保持手段は、前記基板の前記溶液の液滴が付与される面を上向きにして前記基板をほぼ水平に保持することを特徴とする請求項1に記載の電子源基板製造装置。
【請求項4】 前記基板保持手段による保持位置決めは、角度調整を含むことを特徴とする請求項2に記載の電子源基板製造装置。
【請求項5】 前記溶液の噴射速度は、前記基板と前記噴射ヘッドの相対移動速度より速いことを特徴とする請求項2または4記載の電子源基板製造装置。
【請求項6】 前記溶液の噴射速度は、前記キャリッジ走査速度より速いことを特徴とする請求項3記載の電子源基板製造装置。
【請求項7】 前記液滴は、マルチノズル型の液滴噴射ヘッドから噴射されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1に記載の電子源基板製造装置。」
と補正する内容を含むものである。

(2)補正の目的の適否
上記補正は、補正前の請求項10乃至35を削除するとともに、補正前の請求項1を直接又は間接に引用する請求項2乃至9について、請求項5及び9の内容を補正前の請求項1に取り込んで、補正後の請求項1とするとともに、補正前の請求項5及び9を削除し、請求項の番号を繰り上げて補正後の請求項2乃至7としたものである。
したがって、上記手続補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成15年法律第47号)附則第2条第7項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法(以下、「平成15年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第1号及び第2号に規定される請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(3)独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下検討する。
(3-1)引用刊行物
(3-1-1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平11-339642号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
1a.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 一対の電極からなる電極対を複数の行及び列に沿って配置させ、複数の電極対を設けた基板を搭載するステージ及び、前記複数の電極対の各電極対毎に、前記一対の電極間への印加電界により電子流を生じる薄膜部材を構成する構成成分を含む液体からなる液滴を、前記基板又はステージに対して相対的に移動させて、付与する液滴付与手段を有する電子薄膜基板の製造装置。
【請求項2】 前記液滴付与手段は、インクジェット方式の液滴吐出ノズルを備えた手段である請求項1記載の電子薄膜基板の製造装置。
【請求項3】 前記液滴付与手段は、インクジェット方式の液滴吐出ノズルを備え、該吐出ノズルがマルチアレイである請求項1記載の電子薄膜基板の製造装置。
【請求項4】 前記製造装置は、前記基板又はステージの移動を固定し、前記液滴付与手段を移動させる移動手段を有する請求項1記載の電子薄膜基板の製造装置。
【請求項5】 前記製造装置は、前記液滴付与手段の移動を固定し、前記基板又はステージを移動させる移動手段を有する請求項1記載の電子薄膜基板の製造装置。
【請求項6】 前記製造装置は、前記液滴付与手段及び前記基板又はステージの両方を移動させる移動手段を有する請求項1記載の電子薄膜基板の製造装置。
【請求項7】 前記液滴付与手段は、インクジェット方式を用いた手段である請求項1又は2記載の電子薄膜基板の製造装置。
【請求項8】 前記液滴は、有機金属化合物を含有した溶液よりなる液滴である請求項1記載の電子薄膜基板の製造装置。」

1b.「【0008】従来、これらの表面伝導型電子放出素子においては、電子放出を行なう前に導電性薄膜4を予め通電フォーミングと呼ばれる通電処理によって電子放出部5を形成するのが一般的であった。すなわち、通電フォーミングとは前記の導電性薄膜4の両端に直流電圧あるいは非常にゆっくりした昇電圧例えば1V/分程度を印加通電し、導電性薄膜を局所的に破壊、変形もしくは変質せしめ、電気的に高抵抗な状態にした電子放出部5を形成することである。なお、電子放出部5は導電性薄膜4の一部に亀裂が発生し、その亀裂付近から電子放出が行なわれる。前記通電フォーミング処理を行なった表面伝導型電子放出素子は、導電性薄膜4に電圧を印加し、素子に電流を流すことによって、上述の電子放出部5より電子を放出せしめるものである。
【0009】上述の表面伝導型電子放出素子は、構造が単純で製造も容易であることから、大面積で多数の素子を配列形成できる利点がある。そこで、その特徴を生かせるような色々な応用が研究されている。例としては、荷電ビーム源、画像表示装置等の表示装置が挙げられる。
【0010】本出願人は、表面伝導型電子放出素子に着目しており、特開平2-56822号公報において、新規な電子放出素子の製造方法を提案した。図38に当該公報に開示された素子を示す。同図において、1は基板、2および3は素子電極、4は導電性薄膜、5は電子放出部である。この電子放出素子の製造方法は、例えば基板1に一般的な真空蒸着技術、フォトリソグラフィ技術により素子電極2および3を形成する。次いで、導電性薄膜4は、分散塗布法などによって導電性材料を基板上に塗布した後、パターニングにより形成する。その後、素子電極2および3に電圧を印加し通電処理を施すことによって、電子放出部5を形成する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来例による製造方法では、半導体プロセスを主とする方法で製造するものであるために、現行の技術では大面積にわたって多数の電子放出素子を形成することは困難であり、しかも特殊で高価な製造装置を必要とする。さらに、パターニングに伴う複数の工程が必要とされることから、これらの工程の簡略化が望まれているところである。すなわち、現在のところ、基板上に大面積にわたって多数の電子放出素子を形成する場合、生産コストが高くなってしまうというのが実状である。
【0012】本発明は上述したような技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、例えば上記の電子放出素子などを低コストで基板上に多数形成し得る電子薄膜基板の製造装置を提供することにある。」

1c.「【0028】・・・基板1としては石英ガラス、Na等の不純物含有量の少ないガラス、青板ガラス、SiO2を表面に形成したガラス基板およびアルミナ等のセラミックス基板が用いられる。」

1d.「【0054】また、インクジェット噴射装置とステージの移動・搬送においては、ステージのみ、もしくはインクジェット噴射装置のみ、もしくはその両方など、どのような組み合せで、X、Y、θの移動・搬送を行ってもよい。
【0055】また、液滴付与工程中、インクジェット噴射装置またはステージは、移動、搬送または停止のどちらの状態であっても構わないが、移動、搬送の状態で液滴を付与する場合、液滴の着弾位置がずれない程度の移動・搬送が好ましい。」

1e.「【0059】また、これらの図においては、情報検出の対象となる液滴が素子電極間のギャップに形成される場合について示されているが、本発明の方法および装置においては、情報検出のためのダミー液滴を素子電極間以外の箇所に予備吐出し、その検出結果に基づいて吐出条件を適正なものに設定してから素子電極間への液滴吐出を行うという形態であってもよい。」

1f.「【0193】さらに、素子数を増やした大面積基板(例えば、図12)を用いて、10×10基板と同様に図40の吐出制御方法で、ピエゾジェット式のインクジェット噴射装置等により、各セルにわたって液滴を塗布した。これを350℃、30分の条件で焼成し、PdOの微粒子薄膜を全セルに形成できた。素子電極間の抵抗を測定したところ、1回目の吐出で異常を示したセルにおいても、3kΩ程度の正常な抵抗値を示した。次に、素子電極間に順次電圧を印加し、薄膜を通電処理(フォーミング処理)することにより、各セルの素子電極ギャップ中央部に電子放出部を形成した。
【0194】こうして形成された電子源基板を用いて、図7を用いて前述したようにフェースプレート1086、支持枠1082、リアプレート1081とで外囲器1088を形成し、封止を行ない表示パネル、さらには図9に示すようなNTSC方式のテレビ信号に基づきテレビジョン表示を行なうための駆動回路を有する画像形成装置を作成した。そうしたところ、異常な吐出回数を示したセルを含め全ての素子が電子放出し、特性は均一であった。これにより、輝度バラツキのない良好なTV画像を形成することができた。」

1g.「【0199】変位制御機構1803を予め設定された座標情報に従って駆動し、吐出ノズル先端をユニット内の素子電極2・3間ギャップ中心上5mmの位置にセットする。予め決められた駆動条件に従って吐出を開始すると同時に、電気物性測定系1808によって素子電極間ギャップ内の液滴情報の検出が開始される。」

1h.「【0258】(実施例32)以上、これまで述べてきた全ての電子放出素子の製造手順は、基板上に素子電極(あるいは素子電極および配線電極の両者)を作製した後に液滴を付与し、それを焼成して導電性薄膜を形成するという順序であったが、まず最初に液滴を付与・焼成し導電性薄膜を形成した後に、素子電極(あるいは素子電極および配線電極の両者)を形成しても一向に構わない。この素子電極の形成に先だって、液滴を付与・焼成により導電性薄膜を形成する手法においては、液滴の素子電極への吸い込みを防止することができるため、制御性良く導電性薄膜を形成することができる。この製造手順による実施例を以下に説明する。
【0259】図35は、単素子の製造方法を示す図である。
【0260】この絶縁性の基板としての石英基板1を用い、これを有機溶剤により十分に洗浄した。この基板上ほぼ中央に圧電素子によるインクジェット噴射装置7より酢酸パラジウムの0.05wt%水溶液24を1滴付与した(図35(a1)、(a2))(この場合、1滴であるが、所望の膜が得られるよう複数滴でもよい)。」

(3-1-2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平9-27270号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
2a.「【0020】又、上記目的を達成するための本発明の他の構成は、複数の行方向配線と該複数の行方向配線にほぼ直交して配される複数の列方向配線に接続して形成された複数の薄膜に電子放出部を形成するフォーミング方法であって、前記複数の行方向配線の夫々において、その表示領域に接続された複数の第1薄膜と、前記第1薄膜のいずれよりも高い抵抗値を有し前記表示領域外に接続された1つ又は複数の第2薄膜とを含む薄膜群を形成する形成工程と、前記複数の行方向配線及び列方向配線を介して前記薄膜群毎に通電処理を行う通電工程と、少なくとも前記薄膜群に含まれる第2薄膜の1つに電子放出部が形成されるまで当該薄膜群への前記通電処理を実行する制御工程とを備えることを特徴とする。
【0021】上記構成によれば、各第1薄膜に形成された電子放出部への通電時間のばらつきが実効的に低減する。又、行方向、列方向配線によるマトリクスが形成されるので画像表示装置への適用が容易である。更に、第1薄膜を画像表示装置を形成した際の表示領域に、第2薄膜をそれ以外の領域に配置することで、第2薄膜の表示への影響が防止される。
【0022】又、好ましくは、前記形成工程において、前記第2薄膜が形成される表示領域外の領域が、前記複数の行方向配線の夫々における両端の領域の少なくともいずれかである。」

2b.「【0064】この事を利用して、画像の有効表示部分の冷陰極電子源の抵抗値のばらつきよりも大きな抵抗値を持った電子放出部形成用薄膜を非発光部にダミー薄膜として形成する。このダミー薄膜の抵抗値をRnとして、
Rn=r+ΔR (但しΔR>Δr)
なる関係を持つとすると、該抵抗値Rnを持ったダミー薄膜が最も大きな抵抗値を有することとなり、一番最後にフォーミングを開始することになる。
【0065】このように、最後にフォーミングを開始させるべき素子(画像の有効表示部分の外にある素子、即ちダミー薄膜)の抵抗値Rnの値を、画像の有効表示部分の表面伝導型電子放出素子の抵抗値よりも大きくする事で本実施態様の構成が実現される。」

2c.図面の図1及び図2から、ダミー薄膜が非発光部に配置されていることがみてとれる。

(3-2)対比・判断
刊行物1には、上記(3-1-1)の「1a.」乃至「1h.」の記載から、以下の事項が読み取れる。
・「1a.」の記載から、基板とインクジェット方式の液滴吐出ノズルとは相対的に移動すること。また、「1d.」の記載から、移動には、X、Yの移動、即ち、基板と液滴吐出ノズルとが平行に移動することが含まれ、移動しながら液滴付与を行うことも可能であり、移動状態で液滴を付与する場合、液滴の着弾位置がずれない程度の移動が好ましいこと。
・「1b.」の記載から、表面伝導型電子放出素子を基板上に形成するための電子薄膜基板の製造装置であり、基板上に大面積にわたって多数の電子放出素子を形成することを解決しようとする課題の1つとするものであること。「1c.」の記載から、基板として、ガラス基板およびアルミナ等のセラミックス基板が用いられること。また、「1f.」の記載から、素子数を増やした大面積基板に対しても、インクジェット方式の電子薄膜形成が適用可能であること。
・「1e.」の記載から、ダミー液滴を素子電極間以外の箇所に予備吐出すること。
・「1g.」の記載から、インクジェット方式の液滴吐出ノズルの先端と基板の電子薄膜形成面との距離が5mmと解されること。
したがって、刊行物1には、以下の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。
「基板上の一対の素子電極間に、電子薄膜を構成する構成成分を含む液体からなる液滴をインクジェット方式の液滴吐出ノズルで付与し、多数の表面伝導型電子放出素子を基板上に形成するための電子薄膜基板の製造装置であって、該製造装置は、前記基板と前記液滴吐出ノズルとが平行に相対的に移動し、前記基板は、ガラス基板やアルミナ等のセラミックス基板であるとともに多数の電子放出素子を形成することが可能な大面積基板であり、前記液滴吐出ノズルの先端と前記基板の電子薄膜形成面との距離が5mmであり、前記相対的な移動を行いながら液滴付与を行い、ダミー液滴を素子電極間以外の箇所に予備吐出し、移動状態で液滴を付与する場合、液滴の着弾位置がずれない程度の移動を行うもの。」

本願補正発明(前者)と上記刊行物1記載の発明(後者)とを対比する。
・後者の、「基板」、「素子電極」、「電子薄膜」、「電子薄膜を構成する構成成分を含む液体からなる液滴」、「インクジェット方式の液滴吐出ノズル」、「多数の表面伝導型電子放出素子を基板上に形成するための電子薄膜基板の製造装置」、「前記基板と前記液滴吐出ノズルとが平行に相対的に移動し」は、それぞれ、前者の、「基板」、「素子電極」、「導電性薄膜」、「導電性薄膜を構成する材料を含有する溶液の液滴」、「噴射ヘッド」、「導電性薄膜による表面伝導型電子放出素子群が形成された電子源基板を製造する電子源基板製造装置」、「前記基板と前記噴射ヘッドとが前記導電性薄膜の形成面に平行に相対的な移動を行う」に相当する。
・後者の「多数の電子放出素子を形成することが可能な大面積基板」と前者の「200mm×200mm〜4000mm×4000mmの大きさの基板」とは、ともに「大面積基板」である点で共通する。
・後者の「液滴吐出ノズルの先端と前記基板の電子薄膜形成面との距離が5mm」であることは、上記相当関係を勘案すれば、前者の「導電性薄膜の形成面と前記噴射ヘッドの溶液噴射口面とが0.1mm〜10mmの範囲の距離を保持」との条件を満たすものである。
・後者の「相対的な移動を行いながら液滴付与を行い」は、前者の「相対的な移動を止めることなく順次液滴噴射を行い」に相当する。
・後者の「ダミー液滴を素子電極間以外の箇所に予備吐出」する点と前者の「噴射付与領域が、前記表面伝導型電子放出素子群が形成される領域よりも広い」点とは、上記相当関係を勘案すれば、ともに「噴射付与箇所が、表面伝導型電子放出素子群が形成される箇所以外にも存在する」点で共通する。
・後者の「移動状態で液滴を付与する場合、液滴の着弾位置がずれない程度の移動を行う」点と前者の「液滴噴射速度を3m/s〜10m/sとした」点とは、ともに「移動状態で液滴を付与する場合に基板に良好な液滴付着を行うようにする」点で共通する。
したがって、両者は、
「基板上の1対の素子電極間に導電性薄膜を構成する材料を含有する溶液の液滴を噴射ヘッドによって付与し、該導電性薄膜による表面伝導型電子放出素子群が形成された電子源基板を製造する電子源基板製造装置において、該電子源基板製造装置は、前記基板と前記噴射ヘッドとが前記導電性薄膜の形成面に平行に相対的な移動を行うように構成され、使用する基板は大面積基板とされ、前記導電性薄膜の形成面と前記噴射ヘッドの溶液噴射口面とが5mmの距離を保持し、前記相対的な移動を行うとともに、該相対的な移動を止めることなく順次液滴噴射を行い、その噴射付与箇所が、表面伝導型電子放出素子群が形成される箇所以外にも存在する電子源基板製造装置であって、移動状態で液滴を付与する場合に基板に良好な液滴付着を行うようにすることを特徴とする電子源基板製造装置。
の点の構成で一致し、以下の各点で相違する。
[相違点1]
基板について、前者が、「溶液が吸収されず表面に残る性質を有する基板」であり、また、基板の大きさを「200mm×200mm〜4000mm×4000mm」としているのに対し、後者は、基板としてガラス基板やアルミナ等のセラミックス基板を用いてはいるものの、基板の性質及び大きさの数値範囲の記載がない点。
[相違点2]
導電性薄膜の形成面と前記噴射ヘッドの溶液噴射口面との距離の変動幅について、前者が5mm以下としているのに対し、後者にはこの点の明示がない点。
[相違点3]
前者が、噴射付与領域を、前記表面伝導型電子放出素子群が形成される領域よりも広いとしているのに対し、後者は、ダミー液滴を素子電極間以外の箇所に予備吐出するものではあるものの、噴射付与領域についての明示がない点。
[相違点4]
前者が、液滴噴射速度を3m/s〜10m/sとしているのに対し、後者には、液滴噴射速度に関する記載がない点。

上記各相違点について検討する。
[相違点1]について
「溶液が吸収されず表面に残る性質を有する基板」に関して、本願明細書には、「【0154】一般にインクジェットプリンタは、紙にインクを液滴として噴射付与し画像を得るが、紙の上に形成されるインク液滴のドットは、インク液滴が紙に付着すると同時に、紙の繊維中に速やかに吸収される。あるいは紙の表面に炭酸カルシウム等を主成分としたインク吸収部材がコートされているため、インク液滴が紙に付着すると同時にこのインク吸収部材に速やかに吸収されるようになっている。よって、先に形成されたドットに後続のドットが付着衝突しても、先のドットのインクはすでに紙に吸収されているので、衝突による微小インクの飛び散りはほとんど問題になることなく、また良好な丸いドットが得られ、高画質な印字品質が得られる。
【0155】一方、本発明はインクジェットの原理で液滴を噴射付与するが、紙に液滴を付与するのではなく、ガラス基板やアルミナ等のセラミックス基板に液滴を付与する。よって付与された液滴は、インクジェットプリンタで紙に印字される場合と異なり、液滴が基板に衝突後瞬時に基板に吸収されるわけではなく、基板面に半球状(よりややフラットな形状ではあるが)に残っており、これに後続のドットが付着衝突することにより、微小液滴の飛散,飛び散りが発生し、良好な電子放出部形成を阻害することがある。ここがインクジェットプリンタと本発明の違いである。
【0156】つまり本発明のように、ガラス基板やアルミナ等のセラミックス基板に液滴を付与する場合は、インクジェットプリンタによって紙にインク滴を噴射付与する場合と違い、条件を選ばないと液滴は基板面に衝突した場合に、微小液滴に飛散し良好な丸いドットが得られない場合があり、電子放出部を得ることができないことがある。」等記載されている。これらの記載によれば、前者の「溶液が吸収されず表面に残る性質を有する基板」とは、ガラス基板やアルミナ等のセラミックス基板等を指すものと認められるところ、後者も、基板として「ガラス基板やアルミナ等のセラミックス基板」が用いるものであるから、この点は「溶液が吸収されず表面に残る」との性質を明示したか否かの差異にすぎず、実質的な相違ではない。なお、このような基板が溶液を吸収しない性質があることは、刊行物1の「1h.」の記載にも示唆されているものと認められる。
また、基板の大きさの数値範囲に関しても、例えば、特開平11-25852号公報にインクジェット方式の電子源の製造装置が示され、その明細書【0084】段落に「まず、絶縁基板としてガラス基板1を用いた。・・・電極幅200μm、電極ギャップ間隔20μmの一対の素子電極2,3を列方向500μm間隔、行方向700μm間隔で500行1500列計750000個形成し、」との記載があり、この記載によれば、電子源基板は、少なくとも約1650mm×650mmの大きさを持ったものと解されるから、前者のように基板の大きさの範囲を200mm×200mm〜4000mm×4000mmとする点も格別のものとは認められない。

[相違点2]について
後者は、吐出ノズル先端と基板との距離を5mmとするものであるから、吐出ノズル先端と基板との距離の変動幅が5mmを超えたのでは、吐出ノズル先端と基板とが移動時に衝突する可能性もあることから、その吐出ノズル先端と基板との距離の変動幅が5mm以内のものとなっていることは明らかであり、後者も、前者と同様の変動幅の範囲を有するものと認められるから、この点も実質的な相違ではない

[相違点3]について
刊行物2には、薄膜に電子放出部を形成する電子源の製造に当たり、画像の有効表示部分の外の非発光部にダミー薄膜を形成することが示されており、また、後者も、ダミー液滴を素子電極間以外の箇所に予備吐出することからみて、ダミー液滴の形成箇所を画像の有効表示部分の外の領域とすることは、当業者が格別の推考力を要することとは認められない。そして、その場合には、噴射付与領域が、表面伝導型電子放出素子群が形成される領域よりも広くなることから、この点にも格別のものは認められない。

[相違点4]について
刊行物1にも、「移動、搬送の状態で液滴を付与する場合、液滴の着弾位置がずれない程度の移動・搬送が好ましい。」(「1d.」の記載参照。)と記載されており、基板に良好な液滴付着を行うために、基板と噴射ヘッドとの相対移動速度や噴射速度を適宜設定し、付着溶液の基板上での位置ズレや流れ等を防止することは、当業者であれば容易に想到し得るところと認められる。したがって、噴射速度を前者のような数値範囲とする点は、当業者が適宜設定し得るものと認められるから、この点にも格別のものは認められない。

以上のことから、刊行物1記載の発明に刊行物2に記載された事項及び周知事項を適用して本願補正発明のように構成することは、当業者が格別の推考力を要することなくなし得る程度のことと認められる。
そして、本願補正発明による効果も、刊行物1及び2の記載並びに周知事項から当業者が予測しうる範囲内のものにすぎない。
したがって、本願補正発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2に記載された事項並びに周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、上記手続補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成15年12月1日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至35に係る発明は、平成15年7月11日付け及び平成15年9月10日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至35に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められる(「2.(1)」の補正前の特許請求範囲参照。以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。

4.引用刊行物
原査定の拒絶の理由で引用された引用刊行物、及び、その記載事項は前記「2.(3-1)」に記載したとおりのものである。

5.対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明から、構成要件についての限定を省いたものである。そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3-2)」に記載したとおり、刊行物1記載の発明及び刊行物2に記載された事項並びに周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明及び刊行物2に記載された事項並びに周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が、上記のように特許を受けることができないものであるから、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-08 
結審通知日 2006-05-09 
審決日 2006-05-23 
出願番号 特願2000-358111(P2000-358111)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01J)
P 1 8・ 575- Z (H01J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村田 尚英  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 山川 雅也
山口 敦司
発明の名称 電子源基板および該電子源基板を用いた画像表示装置  
代理人 高野 明近  

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