• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1140214
審判番号 不服2003-8751  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2006-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-15 
確定日 2006-08-04 
事件の表示 平成11年特許願第513020号「グローバル通信ネットワークを用いて加入者装置と通信する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 2月25日国際公開、WO99/09716〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年8月14日(優先権主張 平成9年8月19日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成15年4月9日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年5月15日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年5月15日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
平成13年11月20日付で手続補正された
「所定の通話用加入者装置からの回線を交換局の入力側で分岐点を介してグローバル通信ネットワーク側に接続する通信システムにおいて、上記所定の通話用加入者装置と通話するための通信方法であって、
上記所定の通話用加入者装置の加入者識別子をグローバルIPアドレスに変換するステップと、
上記グローバルIPアドレスを用いて上記所定の通話用加入者装置を発呼するための発呼パケットをルーティングするステップと、
上記グローバルIPアドレスを用いて着呼側の通話用加入者装置への通話パケットをルーティングするステップとを有することを特徴とする通信方法。」(以下、「本願発明」という。)が、
「交換局に回線を介して接続されるとともに上記回線の上記交換局の入力側の分岐点を介してグローバル通信ネットワーク側に接続される着呼側通話用加入者装置と通話するための通信方法であって、
発呼側通話用加入者装置から入力される、上記着呼側通話用加入者装置の加入者識別子を、グローバルIPアドレスに変換するステップと、
上記グローバルIPアドレスを用いて上記着呼側通話用加入者装置を発呼するための発呼パケットを、上記グローバル通信ネットワーク、上記分岐点および上記回線を介して上記着呼側通話用加入者装置にルーティングするステップと、
上記グローバルIPアドレスを用いて上記着呼側通話用加入者装置への通話パケットを、上記グローバル通信ネットワーク、上記分岐点および上記回線を介して上記着呼側通話用加入者装置にルーティングするステップとを有することを特徴とする通信方法。」(以下、「本願補正発明」という。)と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「通話用加入者装置」に「着呼側」との限定を付加し、前記「(着呼側)通話用加入者装置」は「交換局に回線を介して接続される」と、また「(着呼側)通話用加入者装置の加入者識別子」を「発呼側通話用加入者装置から入力される」と、また「発呼パケット」及び「通話パケット」の「ルーティング」は「グローバル通信ネットワーク、上記分岐点および上記回線を介して上記着呼側通話用加入者装置」に至るとの、限定したものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-168174号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電話網の加入者線(2線式電話回線)を、局用交換機を経由せずに、直接インターネット等のネットワークに接続し、コネクションレスサービスへのアクセスを可能にする回線切替装置に関するものである。」(段落番号【0001】)、
「【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、電話局に設置された回線切替装置1、局用交換機2等を示すとともに、2線式電話回線を介して接続される加入者端末装置20a、20b、20cの構成を示す概念ブロック図である。
【0016】加入者端末装置20aは電話機21a、パーソナルコンピュータ(以下「パソコン」と略す。)22aを備える。パソコン22aは、9.6-28.8kbpsのロースピードの通信速度のもので、NCUモデムを内蔵するタイプを想定している。加入者端末装置20bは電話機21b、パソコン22bを備える。パソコン22bには、64-128kbpsのハイスピードの通信速度の帯域圧縮付の専用モデム23bが付属している。
【0017】加入者端末装置20cは電話機21c、ワークステーション22cを備える。ワークステーション22cには、128k-1.5Mbpsのさらにハイスピードの通信速度を実現するため、2線式電話回線2W-2を複数本(最大12本)使用する専用多重装置23c、DSU24cが付属している。専用多重装置23cは、2線式電話回線の伝送速度を超える速度の信号を、それぞれが2線式電話回線の伝送速度に収まるように複数に分割する、ISDNルータといわれる装置を用いることができる。このように複数に分割し、後に1つに束ねることによって、128kbps以上のデータ通信が可能になる。
【0018】図2は、回線切替装置1の内部構成を示す図である。回線切替装置1は、電話局の、局用交換機2と加入者につながる2線式電話回線との配線を行う配線盤(MDF)を利用して設置される。配線盤の加入者配線は、回線切替装置1の信号識別回路1aに接続される。信号識別回路1aは、加入者からのダイヤル信号(例えばPB信号、DP信号、トーン信号がある。)に含まれる内容から、インターネットを始めとするコネクションレスサービスへのアクセス信号であるか否かを判定する回路である。」(段落番号【0015】〜【0018】)、
「【0023】局内LAN5は、端末としてルータ6を有し、このルータ6から、インターネット等の商用ネットワークにつながっている。なお、商用ネットワークへの切替え中に、加入者へ着信した場合は、加入者へ着信を通知するとともに、発信者へ2線式電話回線が使用中であることを応答することが望ましい。
【0024】図3は、この回線切替装置1が備えられた電話局同士を結ぶ回線図であり、電話局A、B間は、局用交換機2を経由して電話回線で結ばれるとともに、ルータ6を経由して商用ネットワークで結ばれる。以上のような構成であるから、加入者が、インターネットを始めとする商用ネットワークへのアクセスを希望するときは、その内容を含む信号を加入者端末から送信すると、回線切替装置1は、加入者を確認した上で、回線を切り替える。この結果、加入者は、局用交換機2をバイパスして、ルータ6から直接ネットワークに接続し、コネクションレスサービスへのアクセスをすることができる。」(段落番号【0023】【0024】)、
「【0036】以上の構成により、回線切替装置11は、周波数を基準にして音声回線、データ回線を選択し、データ回線が選択されたときは、加入者の2線式電話回線をFDM多重装置3dを通して自動的に、インターネットを始めとする商用ネットワークにつなぐ。この結果、加入者は、局用交換機2をバイパスして、ルータ6から直接ネットワークに接続し、コネクションレスサービスへのアクセスをすることができる。」(段落番号【0036】)と記載されている。
引用例記載中の「電話局」には「局用交換機」があるから、全体として交換局であり、同記載中の「加入者端末装置」には「電話機」が付いていて、通話するものであり、また、通話を開始するに際しては、当然加入者番号を入力するから、上記摘記した記載を総合すると、
引用例には、
「交換局に回線を介して接続されるとともに上記回線の上記交換局の入力側の回線切替装置を介してインターネット側に接続される着呼側の電話機付の加入者端末装置と通話するための通信方法であって、
発呼側の電話機付の加入者端末装置から入力される、上記着呼側の電話機付の加入者端末装置の加入者番号で、上記着呼側の電話機付の加入者端末装置を発呼するステップと、
上記着呼側の電話機付の加入者端末装置と通話するステップを有する通信方法。」との発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを比較する。
引用発明中の「回線切替装置」は分岐点であり、「インターネット」はグローバル通信ネットワークであり、「電話機付の加入者端末装置」は全体として通話用加入者装置であり、「加入者番号」は加入者識別子であり、一方、本願補正発明も、グローバルIPアドレスに変換するステップがあるものの、着呼側通話用加入者装置へ発呼するために、着呼側通話用加入者装置の加入者識別子を利用しており、また、「通話パケット」を用いているものの、両者は「着呼側通話用加入者装置と通話」しているから、
両者は、
「交換局に回線を介して接続されるとともに上記回線の上記交換局の入力側の分岐点を介してグローバル通信ネットワーク側に接続される着呼側通話用加入者装置と通話するための通信方法であって、
発呼側通話用加入者装置から入力される、上記着呼側通話用加入者装置の加入者識別子を利用して、上記着呼側通話用加入者装置を発呼するステップと、
上記着呼側通話用加入者装置と通話するステップを有する通信方法。」
の点で一致し、以下の3点で相違している。
[相違点1]本願補正発明は、発呼側通話用加入者装置から入力される、着呼側通話用加入者装置の加入者識別子を、「グローバルIPアドレスに変換するステップ」を有しているが、引用発明にはこの構成はない。
[相違点2]本願補正発明は、「グローバルIPアドレスを用いて上記着呼側通話用加入者装置を発呼するための発呼パケットを、上記グローバル通信ネットワーク、上記分岐点および上記回線を介して上記着呼側通話用加入者装置にルーティングするステップ」を有しているが、引用発明にはこの構成がない。
[相違点3]本願補正発明は、「グローバルIPアドレスを用いて上記着呼側通話用加入者装置への通話パケットを、上記グローバル通信ネットワーク、上記分岐点および上記回線を介して上記着呼側通話用加入者装置にルーティングするステップ」を有しているが、引用発明にはこの構成がない。

(4)判断
グローバル通信ネットワーク上で、グローバルIPアドレスを用いて通話する通信方法は、例えば、拒絶理由通知で引用した周知例である「日経コミュニケーション、NO.233(1996.11.4)日経BP社、pp.106〜110」に示されているように周知(以下、「周知技術1」という。)である。
また、通信ネットワーク上で通話パケットを用いて通話する場合に、着呼側通話用加入者装置の加入者識別子、例えば加入者の電話番号を、IPアドレスに変換すること(相違点1に関して)、IPアドレスを用いて着呼側通話用加入者装置を発呼するための発呼パケットを、通信ネットワークを介して着呼側通話用加入者装置にルーティングすること(相違点2に関して)、及び、IPアドレスを用いて着呼側通話用加入者装置への通話パケットを、通信ネットワークを介して上記着呼側通話用加入者装置にルーティングすること(相違点3に関して)は、パケットを用いて、通話するための通信方法として、特に目新しいものではなく、例えば、特開平7-170288号公報の図18、図13、図15及び関係記載に見られるように、周知(以下、「周知技術2」という。)といえるものである。
してみると、本願補正発明は、引用発明中の、グローバル通信ネットワークであるところのインターネットを利用して、周知技術1にあるような、通話を実施するに際し、発呼及び通話するための通信方法の具体的手法として周知技術2を採用し、その際、IPアドレスをグローバルIPアドレスにし、分岐点および回線を介すようにしたものということができるが、IPアドレスをグローバルIPアドレスとしなくてはならないことは技術的自明事項であり、分岐点および回線を介すようにすることも当然の事項にすぎないから、[相違点1]〜[相違点3]に係る本願補正発明の構成に、格別の創意工夫を認めることはできない。
そして、本願補正発明に関する作用・効果も、引用発明、及び、周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年5月15日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成13年11月20日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記「2.(1)」の冒頭に記載した本願発明のとおりのものである。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から、「着呼側通話用加入者装置」の「着呼側」との限定、前記「着呼側通話用加入者装置」に関して「交換局に回線を介して接続される」との限定、「着呼側通話用加入者装置の加入者識別子」に関し「発呼側通話用加入者装置から入力される」との各限定を省き、また、「発呼パケット」及び「通話パケット」の「ルーティング」に関し「グローバル通信ネットワーク、上記分岐点および上記回線を介して上記着呼側通話用加入者装置」に至るとの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明について特許を受けることができないものである以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-08-08 
結審通知日 2005-08-09 
審決日 2005-09-02 
出願番号 特願平11-513020
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04L)
P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 江嶋 清仁  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 野元 久道
衣鳩 文彦
発明の名称 グローバル通信ネットワークを用いて加入者装置と通信する方法  
代理人 山田 英治  
代理人 澤田 俊夫  
代理人 宮田 正昭  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ