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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1140396
審判番号 不服2005-15512  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-06-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-11 
確定日 2006-07-20 
事件の表示 特願2000-367494「半導体発光装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月14日出願公開、特開2002-170998〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
(1)本願は、平成12年12月1日に出願された特許出願であって、原審において平成16年6月10日付で拒絶理由が通知され、同年8月5日に手続補正がなされたところ、平成17年1月20日付で最後の拒絶理由が通知され、これに対し、同年3月17日に特許法第17条の2第1項第2号の規定による手続補正がなされたところ、同年6月24日付で拒絶査定がなされるとともに、上記特許法第17条の2第1項第2号の規定による手続補正が却下された。
(2)これに対し、同年8月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で同法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされ、次いで、同号で規定する法定期間内である同年9月2日に再度手続補正がなされたものである。

2.平成17年9月2日付手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年9月2日付手続補正を却下する。
[理由]
(1)理由1(特許法17条の2第3項違反について)
平成17年9月2日付の手続補正(以下、「1792補正」という。)のうち、請求項1および2、段落【0014】および【0037】についての補正を摘記すると以下のとおりである。

「【請求項1】 基板上に一組の電極部を平行に配置し、第1電極部上に第1発光素子チップを搭載し、第2電極部上に第2発光素子チップを搭載し、第1発光素子チップを金属線を用いて上記第2電極部にワイヤボンディングし、第2発光素子チップを金属線を用いて上記第1電極部にワイヤボンディングすることにより第1発光素子チップおよび第2発光素子チップを互い違いに配置する工程と、
第1発光素子チップおよび第2発光素子チップを覆う1つの透明樹脂部をスクリーン印刷方式によりドーム形状に形成する工程と、
光透過性樹脂部表面を覆う遮光性および反射性を有する樹脂部を形成する工程と、
隣り合う第1発光素子チップと第2発光素子チップとの対称線となる位置で切断して透明樹脂部を2分割し、該切断面を発光面とする工程とからなる半導体発光装置の製造方法。
【請求項2】 基板上に一組の電極部を平行に配置し、第1電極部上に第1発光素子チップを搭載し、第2電極部上に第2発光素子チップを搭載し、第1発光素子チップを金属線を用いて上記第2電極部にワイヤボンディングし、第2発光素子チップを金属線を用いて上記第1電極部にワイヤボンディングすることにより第1発光素子チップおよび第2発光素子チップを互い違いに配置する工程と、
第1発光素子チップおよび第2発光素子チップを覆う1つの透明樹脂部をポッティング方式によりドーム形状に形成する工程と、
光透過性樹脂部表面を覆う遮光性および反射性を有する樹脂部を形成する工程と、
隣り合う第1発光素子チップと第2発光素子チップとの対称線となる位置で切断して透明樹脂部を2分割し、該切断面を発光面とする工程とからなる半導体発光装置の製造方法。」
「【0014】 【課題を解決するための手段】
本発明の半導体発光装置の製造方法は、基板上に一組の電極部を平行に配置し、第1電極部上に第1発光素子チップを搭載し、第2電極部上に第2発光素子チップを搭載し、第1発光素子チップを金属線を用いて上記第2電極部にワイヤボンディングし、第2発光素子チップを金属線を用いて上記第1電極部にワイヤボンディングすることにより第1発光素子チップおよび第2発光素子チップを互い違いに配置する工程と、第1発光素子チップおよび第2発光素子チップを覆う1つの透明樹脂部をスクリーン印刷方式またはポッティング方式によりドーム形状に形成する工程と、光透過性樹脂部表面を覆う遮光性および反射性を有する樹脂部を形成する工程と、隣り合う第1発光素子チップと第2発光素子チップとの対称線となる位置で切断して透明樹脂部を2分割し、該切断面を発光面とする工程とからなるものである。」
「【0037】 まず、図1(a)および図2(a)に示すように、基板1上に金属配線2a,2bを設け、この金属配線2aの電極部2a1,2a2のうちの一方の電極部2a1上に発光素子チップとしての第1LEDチップ3aを搭載し、同時に、この金属配線2bの電極部2b1,2b2のうちの一方の電極部2b1上に第2LEDチップ3bを搭載する。そして、第1LEDチップ3aをAu線4aを用いて他方の電極部2b2にワイヤボンディングし、同時に、第2LEDチップ3bをAu線4bを用いて他方の電極部2a2にワイヤボンディングして、第1LEDチップ3aと他方の電極部2b2との間および第2LEDチップ3bと他方の電極部2a2との間に電気的接続をもたせる。すなわち、基板1上に一組の金属配線2a,2bの電極部2a1,2a2を平行に配置し、電極部2a1上に第1LEDチップ3aを搭載し、電極部2b1上に第2LEDチップ3bを搭載することにより、第1LEDチップ3aおよび第2LEDチップ3bを互い違いに配置する。」

上記のうち下線を付した事項、すなわち、
(イ)「一組の電極部を平行に配置」、(ロ)「第1発光素子チップおよび第2発光素子チップを互い違いに配置」、(ハ)「一組の金属配線2a,2bの電極部2a1,2a2を平行に配置」、(ニ)「第1LEDチップ3aおよび第2LEDチップ3bを互い違いに配置」
は、明らかに補正前の明細書等に記載されていない事項を補充したものである。
そこで、上記補充に係る事項が、実質的に特許法第17条の2第3項で規定する、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてする補正であるか否か以下に検討する。

当初明細書等には、上記(イ)〜(ニ)に関する明示の記載は見当たらないが、請求人は、平成17年9月2日付手続補正書(方式)において、「また、新請求項1及び新請求項2の『平行に配置し』及び『ことにより第1発光素子チップおよび第2発光素子チップを互い違いに配置する』との補正は、主に図1の記載内容に基づいています。」と主張しているので、図1の記載内容から上記(イ)〜(ニ)が見て取れるかについて検討する。
上記(イ)、(ハ)について
図1には発光素子チップが各々搭載される一組の電極2a,2bが描かれており、その形状は、略長方形の部分と、その長方形部分の長辺から直交する方向に分岐した二つの部分(2a1、2a2ないしは2b1、2b2)であって、各々半円の一部と直線との組み合せからなる形状を有する二つの部分とからなる複雑な形状であること、および、電極2aと2bとは合同な形状であって互いに点対称に配置されていることが図1から見て取ることができる。
しかしながら、電極2a,2bは上記したように複雑な形状を呈し、「一組の電極部を平行に配置」といったところで、電極のどの部分とどの部分とを指して上記(イ)、(ハ)でいう平行に配置なのか一概には特定し得ず、また、明らかに点対称に配置されているのであるから、これが(イ)「一組の電極部を平行に配置」、(ハ)「一組の金属配線2a,2bの電極部2a1,2a2を平行に配置」であるとは、図1の記載からは直接看取することができないものという外はない。
また、上記(ハ)は、「一組の金属配線2a,2b」と前置きしながら、一方の電極の分岐部同士である「電極部2a1,2a2を平行に配置」すると記述しており、明らかに内容に整合性がみられず、意味内容が不明である。
上記(ロ)、(ニ)について
広辞苑(第四版)によれば、「互い違い」とは、「両方から入れちがうさま。かわるがわる。交互。」を意味する。したがって、1792補正において(ロ)「第1発光素子チップおよび第2発光素子チップを互い違いに配置」ないしは(ニ)「第1LEDチップ3aおよび第2LEDチップ3bを互い違いに配置」というのであれば、チップ同士が「両方から入れちがうさま。かわるがわる。交互。」に配置されていると解するのが相当である。
しかしながら、図1からは、ワイヤボンディングが互い違いになされていること、および、チップ同士が互いに整列配置されていることは看取できるものの、上記(ロ)、(ニ)にあるようにチップ同士が互い違いに配置されている点については見て取ることができない。

よって、1792補正の請求項1および2、段落【0014】および【0037】についてした上記(イ)〜(ニ)を補充する補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(2)理由2(特許法17条の2第4項違反について)
1792補正により、特許請求の範囲の請求項の数は、平成17年8月11日付手続補正時に1であったものが6に増えた。
特許法17条の2第1項第4号の規定により拒絶査定に対する審判請求のときに特許請求の範囲についてする補正は、同条第4項第1〜4号の規定に掲げる事項を目的にするものに限られるところ、特許請求の範囲の請求項の数を増やす補正は、その何れにも該当しないことは明らかであるから、1792補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。

(3)むすび
以上のとおり、平成17年9月2日付手続補正は、特許法第17条の2第3項および第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.平成17年8月11日付手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年8月11日付手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
平成17年8月11日付手続補正(以下、「17811補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 基板上に一組の電極部を設け、第1電極部上に第1発光素子チップを搭載し、第2電極部上に第2発光素子チップを搭載し、第1発光素子チップを金属線を用いて上記第2電極部にワイヤボンディングし、第2発光素子チップを金属線を用いて上記第1電極部にワイヤボンディングする工程と、
第1発光素子チップおよび第2発光素子チップを覆う1つの透明樹脂部をスクリーン印刷方式によりドーム形状に形成する工程と、
光透過性樹脂部表面を覆う遮光性および反射性を有する樹脂部を形成する工程と、
隣り合う第1発光素子チップと第2発光素子チップとの対称線となる位置で切断して透明樹脂部を2分割し、該切断面を発光面とする工程とからなる半導体発光装置の製造方法。」
と補正された。
上記17811補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項について、技術的限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、17811補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原審の拒絶の理由に引用された特開平11-67799号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電子部品の製造方法、詳しくは孔版印刷手段を適用して半導体パッケージやチップ部品などのような電子部品を製造する方法に関する。」
b.「【0031】図15〜28は本発明の第2実施形態を示し、本発明製造法を側面発光型LEDチップの製造に適用した場合が示されている。
【0032】本実施形態に於いては、図15,16に示すように、多数個取りの配線基板1上にLEDチップの電子部品素子2が左右一対を一組として多数の組2Aが配置搭載され、左右一対の素子2,2の相互間及び各組2Aの相互間に多数個取りに必要な間隔が形成されている。」
c.「【0033】配線基板1上に配置搭載された素子2は図17,18に示すように各組2Aごとに、個別に透明樹脂内層17により封止される。
【0034】透明樹脂内層17の形成状況が図19に示され、透明樹脂内層17は第3孔版18の適用により孔版印刷手段を適用して形成される。
【0035】第3孔版18は電子部品素子2を各組2Aごとに収納できる通孔部19を備え、該通孔部19内にそれぞれ素子の各組2Aを収納した状態でスキージ12の作動をして液状の透明封止用樹脂131を通孔部19内に押し込み充填した後に、該孔版18を退去させることにより透明樹脂内層17を形成することができる。このような孔版印刷手段による樹脂封止技術そのものは例えば本出願人提案の特公平6-95594号公報から公知である。
【0036】透明封止用樹脂としては、例えばNLD-60、EL-110(商品名 日本レック社製)を使用でき、これら封止樹脂を用いることにより、例えば0.5〜1.0mmの高さのレンズ状の透明樹脂内層17を孔版印刷手段を適用して安定確実に形成することができる。」
d.「【0039】ダム部4を形成した後は、図23,24に示すように、ダム部4で囲まれた領域内の全体に亘って封止用の遮光性樹脂外層20が形成される。
【0040】樹脂外層20の形成状況が図25に示され、該樹脂外層20の形成は、先の実施形態と同様に第2孔版9を適用し、封止樹脂として遮光性樹脂21を用い、スキージ12の作動により行えばよい。
【0041】樹脂外層20はLED素子の光が周囲に漏れるのを防止するためのものであり、特に、内壁での反射による発光効率を高めるために白色がよい。このような遮光性樹脂としては、NPR-780,783,785(商品名 日本レック社製)の白色タイプのものがよい。」
e.「【0042】樹脂外層20を形成した後は、ダム部4が未硬化の場合には該ダム部4と共に上記樹脂外層20を加熱硬化させ、しかる後に、図26に示すように、印刷手段を適用して、樹脂外層20の表面にマーキング14を形成する。マーキング14として図26には電極の陰極側をマークした場合が示されている。
【0043】マーキングを終えた後は、図27に示すように、切断ライン16に沿い配線基板1並びに樹脂内外層17,20を切断し各素子2ごとに分割することにより、図28に示すように、上面部が平らで側面部が垂直且つ直線の側面発光型LEDチップBが得られる。
【0044】上記LEDチップBによれば、切断面に透明樹脂内層17が露出し、側面から発光できる。」

同じく、原審の拒絶の理由に引用された特開平5-315651号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

f.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、側面を発光するようにした発光ダイオード又は半導体レーザ等の半導体発光素子を製造する方法に関するものである。」
g.「【0009】また、前記基板用素材板Aには、縦横に並べた各基板2のコーナーの部分に、貫通孔A1が穿設されている。更にまた、符号A2は、各基板2を縦方向に区分する縦切断線を、符号A3は、各基板2を横方向に区分する横切断線を示す。そして、この基板用素材板Aの表面には、各基板2の箇所の各々に、図7及び図8に示すように、リード電極パターン3,4を形成すると共に、その各貫通孔A1の内面に、接続用端子9,10を構成するためにスルーホール状の電極膜11を形成する。
【0010】次いで、図9及び図10に示すように、前記各一方のリード電極パターン3の各々に対して半導体発光チップ5をマウントしたのち、この各半導体発光チップ5と他方のリード電極パターン4との各々間を、金属線6にてワイヤーボンディングする。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用例1に記載されたものとを比較する。

ア.引用例1の「配線基板1」、「左右一対の素子2,2」、「透明樹脂内層17」、「孔版印刷手段」、および「白色タイプの遮光性樹脂外層20」は、各々本願補正発明の「基板」、「第1および第2発光素子チップ」、「透明樹脂部」、「スクリーン印刷方式」、および「遮光性および反射性を有する樹脂部」に相当する。

イ.引用例1に記載されたものは、「多数個取りの配線基板1上にLEDチップの電子部品素子2が左右一対を一組として多数の組2Aが配置搭載され、左右一対の素子2,2の相互間及び各組2Aの相互間に多数個取りに必要な間隔が形成されている。」(上記b)の事項を有するから、「基板上に、第1発光素子チップ、第2発光素子チップを搭載し」の点で本願補正発明と一致する。

ウ.引用例1の「第3孔版18は電子部品素子2を各組2Aごとに収納できる通孔部19を備え、該通孔部19内にそれぞれ素子の各組2Aを収納した状態でスキージ12の作動をして液状の透明封止用樹脂131を通孔部19内に押し込み充填した後に、該孔版18を退去させることにより透明樹脂内層17を形成することができる。・・・これら封止樹脂を用いることにより、例えば0.5〜1.0mmの高さのレンズ状の透明樹脂内層17を孔版印刷手段を適用して安定確実に形成することができる。」(上記c)なる構成からみて、引用例1に記載のものは、本願補正発明の「第1発光素子チップおよび第2発光素子チップを覆う1つの透明樹脂部をスクリーン印刷方式によりドーム形状に形成する工程」なる技術事項を有する。

エ.引用例1の「ダム部4で囲まれた領域内の全体に亘って封止用の遮光性樹脂外層20が形成される。・・・該樹脂外層20の形成は、先の実施形態と同様に第2孔版9を適用し、封止樹脂として遮光性樹脂21を用い、スキージ12の作動により行えばよい。樹脂外層20はLED素子の光が周囲に漏れるのを防止するためのものであり、特に、内壁での反射による発光効率を高めるために白色がよい。」(上記d)なる構成からみて、引用例1に記載のものは、本願補正発明の「光透過性樹脂部表面を覆う遮光性および反射性を有する樹脂部を形成する工程」なる技術事項を有する。

オ.引用例1の「切断ライン16に沿い配線基板1並びに樹脂内外層17,20を切断し各素子2ごとに分割することにより、図28に示すように、上面部が平らで側面部が垂直且つ直線の側面発光型LEDチップBが得られる。上記LEDチップBによれば、切断面に透明樹脂内層17が露出し、側面から発光できる。」(上記e)なる構成からみて、引用例1に記載のものは、本願補正発明の「隣り合う第1発光素子チップと第2発光素子チップとの対称線となる位置で切断して透明樹脂部を2分割し、該切断面を発光面とする工程」なる技術事項を有する。

したがって、上記ア〜オによれば、引用例1に記載のものは、本願補正発明の
「基板上に、第1発光素子チップ、第2発光素子チップを搭載する工程と、第1発光素子チップおよび第2発光素子チップを覆う1つの透明樹脂部をスクリーン印刷方式によりドーム形状に形成する工程と、光透過性樹脂部表面を覆う遮光性および反射性を有する樹脂部を形成する工程と、隣り合う第1発光素子チップと第2発光素子チップとの対称線となる位置で切断して透明樹脂部を2分割し、該切断面を発光面とする工程とからなる半導体発光装置の製造方法。」
なる技術事項を有するから、両者は上記の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点]本願補正発明は、「基板上に一組の電極部を設け、第1電極部上に第1発光素子チップを搭載し、第2電極部上に第2発光素子チップを搭載し、第1発光素子チップを金属線を用いて上記第2電極部にワイヤボンディングし、第2発光素子チップを金属線を用いて上記第1電極部にワイヤボンディングする工程」を有するのに対して、引用例1に記載されたものは、「基板上に、第1発光素子チップ、第2発光素子チップを搭載する工程」を有するものの、電極部およびワイヤボンディングに関する開示がない点。

(4)判断
引用例2には、上記gにあるように、「基板用素材板Aの表面には、各基板2の箇所の各々に、図7及び図8に示すように、リード電極パターン3,4を形成する・・・次いで、図9及び図10に示すように、前記各一方のリード電極パターン3の各々に対して半導体発光チップ5をマウントしたのち、この各半導体発光チップ5と他方のリード電極パターン4との各々間を、金属線6にてワイヤーボンディングする。」が、記載されている。
上記事項において「基板用素材板A」、「リード電極パターン3,4」、「半導体発光チップ5」、「ワイヤーボンディング」は、それぞれ本願補正発明の「基板」、「第1、第2電極部」、「第1、第2発光素子チップ」、「ワイヤボンディング」に相当するから、引用例2には、上記相違点における本願補正発明の構成がすべて記載されているといえる。
そして、上記引用例2に記載された事項を引用例1に記載されたものに組み合わせることに格別困難な要因も見当たらない。

したがって、本願補正発明は、引用例1および引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、平成17年8月11日付手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

4.本願発明について
平成17年9月2日付手続補正および平成17年8月11日付手続補正は上記のとおり却下された。また、平成17年3月17日付手続補正は既に原審において同年6月24日付で却下されているので、本願の請求項に係る発明は、平成16年8月5日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1〜7に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、次のものである。
「【請求項1】 基板上に一組の電極部を設け、第1電極部上に第1発光素子チップを搭載し、第2電極部上に第2発光素子チップを搭載し、第1発光素子チップを金属線を用いて上記第2電極部にワイヤボンディングし、第2発光素子チップを金属線を用いて上記第1電極部にワイヤボンディングする工程と、
第1発光素子チップおよび第2発光素子チップを覆う1つの透明樹脂部を形成する工程と、
光透過性樹脂部表面を覆う遮光性および反射性を有する樹脂部を形成する工程と、
隣り合う第1発光素子チップと第2発光素子チップとの対称線となる位置で切断して透明樹脂部を2分割する工程とからなる半導体発光装置の製造方法。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1,2及びその記載事項は、前記「3.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記3.で検討した本願補正発明から「スクリーン印刷方式によりドーム形状に」および「し、該切断面を発光面と」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「3.(4)」に記載したとおり、引用例1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-16 
結審通知日 2006-05-23 
審決日 2006-06-07 
出願番号 特願2000-367494(P2000-367494)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 561- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高椋 健司土屋 知久道祖土 新吾  
特許庁審判長 向後 晋一
特許庁審判官 平井 良憲
吉野 三寛
発明の名称 半導体発光装置の製造方法  
代理人 倉内 義朗  

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