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審決分類 審判 全部無効 4項(134条6項)独立特許用件  D02G
審判 全部無効 (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  D02G
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  D02G
審判 全部無効 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  D02G
審判 全部無効 2項進歩性  D02G
管理番号 1140523
審判番号 無効2004-80164  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-04-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-09-24 
確定日 2006-07-26 
事件の表示 上記当事者間の特許第3448526号「セルロースレーヨン繊維糸及びこれを用いた布帛」の特許無効審判事件についてされた平成17年 3月30日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の決定(平成17年(行ヶ)第10456号平成17年 9月27日決定言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第3448526号の請求項1ないし9に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 2.訂正請求の適否について
2-1.訂正の内容
平成17年10月25日付け訂正請求により被請求人が求める訂正の内容は、以下のとおりである。

訂正事項
(a1)特許第3448526号明細書特許請求の範囲において、請求項1中、「竹を原料とするセルロースレーヨン繊維を含む糸であって、」との記載を、
「竹を原料とするセルロースレーヨン繊維を含む紡績糸であって、」と訂正する。
(a2)特許第3448526号明細書の特許請求の範囲において、請求項1中、「前記糸は単繊維の繊度が0.5〜20デニール」との記載を、
「前記紡績糸は単繊維の繊度が0.5〜20デニール、」
(a3)特許第3448526号明細書の特許請求の範囲において、請求項1中、
「の範囲の紡績糸であり、」との記載を、
「単繊維の繊維長が30〜200mmの範囲であり、」と訂正する。
(a4)特許第3448526号明細書の特許請求の範囲において、請求項1中、
「400〜1500T/m(ただしTは撚の回数)の範囲の実撚が付与されている」との記載を、
「400〜1500T/m(ただしTは撚の回数)の範囲の実撚が付与されており、」と訂正する。
(a5)特許第3448526号明細書の特許請求の範囲において、請求項1中、
「ことを特徴とするセルロースレーヨン繊維糸。」との記載を、
「前記セルロースレーヨン繊維はビスコースレーヨン繊維であり、前記繊維の断面は凹凸面を有する変形異形断面でありかつくびれにより外気に通じる空洞を有し、 従来の木材パルプのレーヨン繊維に比較して張り及び腰に優れ、麻のような乾いた感触があることを特徴とする
竹セルロースレーヨン繊維紡績糸。」と訂正する。

(b)特許第3448526号明細書の特許請求の範囲において、請求項2を削除する。
(c)特許第3448526号明細書の特許請求の範囲において、請求項3を削除する。
(d)特許第3448526号明細書の特許請求の範囲において、請求項4の、
「【請求項4】単繊維の繊度が1.5〜10デニールの範囲である請求項1に記載のセルロースレーヨン繊維糸。」との記載を、
「【請求項2】
単繊維の繊度が1.5〜10デニールの範囲である請求項1に記載の竹セルロースレーヨン繊維紡績糸。」と訂正する。
(e)特許第3448526号明細書の特許請求の範囲において、請求項5の、
「【請求項5】紡績糸が、梳毛紡績糸である請求項1に記載のセルロースレーヨン繊維糸。」との記載を、
「【請求項3】紡績糸が、梳毛紡績糸である請求項1に記載の竹セルロースレーヨン繊維紡績糸。」と訂正する。
(f)特許第3448526号明細書の特許請求の範囲において、請求項6を削除する。
(g)特許第3448526号明細書の特許請求の範囲において、請求項7の、
「【請求項7】実撚の範囲が500〜1200T/mである請求項1に記載のセルロースレーヨン繊維糸。」との記載を、
「【請求項4】実撚の範囲が500〜1200T/mである請求項1に記載の竹セルロースレーヨン繊維紡績糸。」と訂正する.
(h)特許第3448526号明細書の特許請求の範囲において、請求項8の、
「【請求項8】竹を原料とするセルロースレーヨン繊維に、天然繊維、竹以外を原料とする再生繊維及び合成繊維を混合した請求項1に記載のセルロースレーヨン繊維糸。」との記載を、
「【請求項5】竹を原料とするセルロースレーヨン繊維に、天然繊維、竹以外を原料とする再生繊維及び合成繊維を混合した請求項1に記載の竹セルロースレーヨン繊維紡績糸。」と訂正する。
(i)特許第3448526号明細書の特許請求の範囲において、請求項9の、
「【請求項9】請求項1〜8のいずれか1項に記載のセルロースレーヨン繊維糸を用いた織物又は編み物であることを特徴とする布帛。」との記載を、
「【請求項6】請求項1〜5のいずれか1項に記載の竹セルロースレーヨン繊維紡績糸を用いた織物又は編み物であることを特徴とする布帛。」と訂正する。
(j)特許第3448526号明細書中の発明の名称の欄の、
「セルロースレーヨン繊維糸及びこれを用いた布帛」との記載を、
「竹セルロースレーヨン繊維紡績糸及びこれを用いた布帛」と訂正する。
(k)特許第3448526号明細書中の発明の詳細な説明の欄の段落【0004】の、
「【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明のセルロースレーヨン繊維糸は、竹を原料とするセルロースレーヨン繊維を含む糸であって、前記糸は単繊維の繊度が0.5〜20デニールの範囲の紡績糸であり、400〜1500T/m(ただしTは撚の回数)の範囲の実撚が付与されていることを特徴とする。竹を原料とするセルロースレーヨン繊維は、驚くほどに張り及び腰がある。これは多分に、天然の竹が本来的にもつ分子配向性の高さ及び分子長が長いことに起因していると思われる。前記糸においては、竹を原料とするセルロースレーヨン繊維が、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、アセテート、トリアセテート及び精製セルロースから選ばれる少なくとも一種の繊維であることが好ましい。」との記載を、
「【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明の竹セルロースレーヨン繊維紡績糸は、竹を原料とするセルロースレーヨン繊維を含む紡績糸であって、前記紡績糸は単繊維の繊度が0.5〜20デニール、単繊維の繊維長が30〜200mmの範囲の紡績糸であり、400〜1500T/m(ただしTは撚の回数)の範囲の実撚が付与されており、前記セルロースレーヨン繊維はビスコースレーヨン繊維であり、前記繊維の断面は凹凸面を有する変形異形断面でありかつくびれにより外気に通じる空洞を有し、従来の木材パルプのレーヨン繊維に比較して張り及び腰に優れ、麻のような乾いた感触があることを特徴とする。竹を原料とするセルロースレーヨン繊維は、驚くほどに張り及び腰がある。これは多分に、天然の竹が本来的にもつ分子配向性の高さ及び分子長が長いことに起因していると思われる。」と訂正する。
(l)特許第3448526号明細書中の発明の詳細な説明の欄の段落【0005】の、
「また前記糸においては、セルロースレーヨン繊維の断面が、凹凸面を有する変形異形断面であることが好ましい。このような断面形状であると、麻繊維のような乾いた感触があるうえ、空洞も有するので、吸湿性、放湿性にも優れる。」との記載を、
「また前記糸においては、セルロースレーヨン繊維の断面が、凹凸面を有する変形異形断面である。このような断面形状であると、麻繊維のような乾いた感触があるうえ、空洞も有するので、吸湿性、放湿性にも優れる。」と訂正する。
(m)特許第3448526号明細書中の発明の詳細な説明の欄の段落【0012】の、
「【発明の実施の形態】
竹を原料とするセルロースレーヨン繊維は、一般のレーヨン繊維と同様な処理により製造することができる。例えばビスコースレーヨンの場合は、竹を原料とするパルプをアルカリ及び二硫化炭素と反応させ、アルカリリザンテートとして苛性ソーダに溶解して紡糸し、セルロースを凝固・再生することにより製造する。前記ビスコースレーヨンの製造方法も含めて、銅アンモニアレーヨン、アセテート、トリアセテート及び精製セルロースの詳細は、繊維学会編、「繊維便覧第2版」、丸善、1994年3月25日発行の92〜99に記載されており、本発明においてもこれを適用できる。」との記載を、
「【発明の実施の形態】
竹を原料とするセルロースレーヨン繊維は、一般のレーヨン繊維と同様な処理により製造することができる。例えばビスコースレーヨンの場合は、竹を原料とするパルプをアルカリ及び二硫化炭素と反応させ、アルカリリザンテートとして苛性ソーダに溶解して紡糸し、セルロースを凝固・再生することにより製造する。前記ビスコースレーヨンの製造方法の詳細は、繊維学会編、「繊維便覧第2版」、丸善、1994年3月25日発行の92〜99頁に記載されており、本発明においてもこれを適用できる。」と訂正する。
(n)特許第3448526号明細書中の発明の詳細な説明の欄の段落【0020】の、
「【実施例3】
紡紡績工程において、補強繊維として水溶性ビニロン(ポリビニルアルコール)繊維(繊度:2デニール、繊維長:120mm)を20重量%用いた以外は、実施例1と同様に梳毛式長紡紡績工程により43番手、撚数が1020T/mの梳毛紡績糸(長紡紡績糸)を得た。」との記載を、
「【実施例3】
紡績工程において、補強繊維として水溶性ビニロン(ポリビニルアルコール)繊維(繊度:2デニール、繊維長:120mm)を20重量%用いた以外は、実施例1と同様に梳毛式長紡紡績工程により43番手、撚数が1020T/mの梳毛紡績糸(長紡紡績糸)を得た。」と訂正する。

2-2.訂正の適否
2-2-1.訂正拒絶理由の概要
訂正拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。
すなわち、訂正の内容については、「平成17年10月25日付の訂正請求の趣旨は、『特許第3448526号の明細書を訂正明細書の通り訂正することを求める。』というものであり、訂正請求書に添付された訂正明細書、及び訂正請求書の『訂正事項(訂正の要旨)』の項の記載によれば、以下の訂正事項AないしDを含むものと認められる。」と、訂正事項Aないし訂正事項Dを次のように認定した。
「 訂正事項A:
被請求人は、請求項1の記載について、下記訂正事項(a1)ないし訂正事項(a5)に係る訂正を求めている。
訂正事項(a1)特許第3448526号(以下「本件特許」という。)の請求項1中、「竹を原料とするセルロースレーヨン繊維を含む糸であって、」と記載されているのを、「竹を原料とするセルロースレーヨン繊維を含む紡績糸であって、」と訂正する。
訂正事項(a2)特許第3448526号明細書の特許請求の範囲において、請求項1中、「前記糸は単繊維の繊度が0.5〜20デニール」と記載されているのを、
「前記紡績糸は単繊維の繊度が0.5〜20デニール、」と訂正する。
訂正事項(a3)特許第3448526号明細書の特許請求の範囲において、請求項1中、「の範囲の紡績糸であり、」と記載されているのを、「単繊維の繊維長が30〜200mmの範囲であり、」と訂正する。
訂正事項(a4)特許第3448526号明細書の特許請求の範囲において、請求項1中、「400〜1500T/m(ただしTは撚の回数)の範囲の実撚が付与されている」と記載されているのを、
「400〜1500T/m(ただしTは撚の回数)の範囲の実撚が付与されており、」と訂正する。
訂正事項(a5)特許第3448526号明細書の特許請求の範囲において、請求項1中、「ことを特徴とするセルロースレーヨン繊維糸。」と記載されているのを、
「前記セルロースレーヨン繊維はビスコースレーヨン繊維であり、前記繊維の断面は凹凸面を有する変形異形断面でありかつくびれにより外気に通じる空洞を有し、
従来の木材パルプのレーヨン繊維に比較して張り及び腰に優れ、麻のような乾いた感触があることを特徴とする竹セルロースレーヨン繊維紡績糸。」と訂正する。
すなわち、
特許第3448526号明細書の特許請求の範囲において、請求項1の記載を、
「【請求項1】
竹を原料とするセルロースレーヨン繊維を含む紡績糸であって、前記紡績糸は単繊維の繊度が0.5〜20デニール、単繊維の繊維長が30〜200mmの範囲の紡績糸であり、400〜1500T/m(ただしTは撚の回数)の範囲の実撚が付与されており、前記セルロースレーヨン繊維はビスコースレーヨン繊維であり、前記繊維の断面は凹凸面を有する変形異形断面でありかつくびれにより外気に通じる空洞を有し、従来の木材パルプのレーヨン繊維に比較して張り及び腰に優れ、麻のような乾いた感触があることを特徴とする竹セルロースレーヨン繊維紡績糸。」と訂正するというものである。
訂正事項B:
被請求人は、訂正事項(e)、(g)〜(i)として、請求項5,7〜9の「セルロースレーヨン繊維糸」との記載を「竹セルロースレーヨン繊維紡績糸」と訂正するとともに、請求項7〜9の請求項の項番を、それぞれ、請求項4〜6と繰り上げる訂正をするものである。
訂正事項C:
特許第3448526号明細書中の発明の詳細な説明の欄の段落番号【0004】に、
「【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明のセルロースレーヨン繊維糸は、竹を原料とするセルロースレーヨン繊維を含む糸であって、前記糸は単繊維の繊度が0.5〜20デニールの範囲の紡績糸であり、400〜1500T/m(ただしTは撚の回数)の範囲の実撚が付与されていることを特徴とする。竹を原料とするセルロースレーヨン繊維は、驚くほどに張り及び腰がある。これは多分に、天然の竹が本来的にもつ分子配向性の高さ及び分子長が長いことに起因していると思われる。 前記糸においては、竹を原料とするセルロースレーヨン繊維が、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、アセテート、トリアセテート及び精製セルロースから選ばれる少なくとも一種の繊維であることが好ましい。」との記載を
「【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明の竹セルロースレーヨン繊維紡績糸は、竹を原料とするセルロースレーヨン繊維を含む紡績糸であって、前記紡績糸は単繊維の繊度が0.5〜20デニール、単繊維の繊維長が30〜200mmの範囲の紡績糸であり、400〜1500T/m(ただしTは撚の回数)の範囲の実撚が付与されており、前記セルロースレーヨン繊維はビスコースレーヨン繊維であり、前記繊維の断面は凹凸面を有する変形異形断面でありかつくびれにより外気に通じる空洞を有し、従来の木材パルプのレーヨン繊維に比較して張り及び腰に優れ麻のような乾いた感触があることを特徴とする。竹を原料とするセルロースレーヨン繊維は、驚くほどに張り及び腰がある。これは多分に、天然の竹が本来的にもつ分子配向性の高さ及び分子長が長いことに起因していると思われる。」と訂正する。
訂正事項D:
特許第3448526号明細書中の発明の詳細な説明の欄の段落番号【0012】に、
「【発明の実施の形態】
竹を原料とするセルロースレーヨン繊維は、一般のレーヨン繊維と同様な処理により製造することができる。例えばビスコースレーヨンの場合は、竹を原料とするパルプをアルカリ及び二硫化炭素と反応させ、アルカリリザンテートとして苛性ソーダに溶解して紡糸し、セルロースを凝固・再生することにより製造する。前記ビスコースレーヨンの製造方法も含めて、銅アンモニアレーヨン、アセテート、トリアセテート及び精製セルロースの詳細は、繊維学会編、「繊維便覧第2版」、丸善、1994年3月25日発行の92〜99に記載されており、本発明においてもこれを適用できる。」との記載を、
「【発明の実施の形態】
竹を原料とするセルロースレーヨン繊維は、一般のレーヨン繊維と同様な処理により製造することができる。例えばビスコースレーヨンの場合は、竹を原料とするパルプをアルカリ及び二硫化炭素と反応させ、アルカリリザンテートとして苛性ソーダに溶解して紡糸し、セルロースを凝固・再生することにより製造する。前記ビスコースレーヨンの製造方法の詳細は、繊維学会編、「繊維便覧第2版」、丸善、1994年3月25日発行の92〜99頁に記載されており、本発明においてもこれを適用できる。」と訂正するというものである。 」

そして、当審の判断において、「当該訂正事項Aに関する訂正事項(a5)に係る訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書に規定する、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれの目的にも該当しない、又は、当該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものとも認められなから、特許法第134条の2第1項だだし書きの規定及び特許法第134条の2第5項において準用する特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。」との主旨の訂正拒絶の理由を通知した。

(なお、平成17年12月 6日付けで行った願書に添付した明細書又は図面の訂正の請求に対する、当審による訂正拒絶の理由の根拠条文が、訂正審判に関する条文(126条)を誤って用いて記載したことは明らかであり、しかも、被請求人及び請求人ともに、訂正拒絶の理由に対して適正に応答を行っていることから、訂正拒絶の理由は被請求人及び請求人に適正な根拠条文の内容どおりに伝わっているものと認められるので、訂正拒絶の理由に示した根拠条文を上記のとおり適正な条文に書きあらためて表記した。)

2-2-2.訂正請求に係る被請求人の主張
(1)訂正請求書提出時の主張の概要
通常実施権者の承諾書を添えて平成17年10月25日付けで提出された訂正請求書の請求の原因のなかで、下記証拠方法を示しつつ、訂正が法条文に適合するもので、本件訂正発明が、その発明の各構成要件を有機的に組み合わせることは、各刊行物及び周知慣用技術には記載も示唆もされていないので、本件訂正発明には構成の困難性があり、進歩性があると主張している。
検乙第1号証: 本件訂正発明の竹を原料とするビスコースレーヨン織物
検乙第2号証: 本件訂正発明の竹を原料とするビスコースレーヨン織物
検乙第3号証: 従来の木材パルプを原料とするビスコースレーヨン織物
参考資料1 本宮達也外編「繊維の百科事典」、平成14年3月25日、1009〜1010頁、丸善株式会社
参考資料2 文化出版局編「服飾辞典」、1996年1月19日、274〜275頁、956頁、文化出版局
参考資料3 吉藤幸朔著「特許法概説 第12版」、1997年12月20日、125〜126頁、有斐閣
参考資料4 無効審判請求人のインターネットホームページの印刷出力複写物

(2)訂正拒絶理由に対する意見書提出時の主張の概要
訂正拒絶理由に対し、下記証拠方法を提出し、概略、認定には誤解がある、記載は誰にでも理解できる語句である、あるいは繊維同士で比較しているのは誤りではない旨主張するとともに、訂正請求に係る訂正を補正し、補正により記載不備は解消された旨主張し、訂正請求は、特許法第134条の2第1項だだし書の規定及び特許法第134条の2第5項において準用する特許法第126条第3項の規定に適合するとの主旨の主張をしている。

検乙第4号証: 本件訂正発明の竹を原料とするビスコースレーヨン繊維使いの紡績糸
検乙第5号証: 本件訂正発明の竹を原料とするビスコースレーヨン繊維使いの紡績糸
検乙第6証: 木材を原料とするビスコースレーヨン繊維使いの紡績糸
参考資料15 新村出著「広辞苑」、1988年10月11日、256頁、668頁、695頁、1876頁、岩波書店

2-2-3.訂正請求に対する補正の適否についての判断
被請求人は、上記「2-2-1.訂正拒絶理由の概要」に記載した訂正拒絶の理由に対し、平成18年 1月10日付け手続補正書を提出して、平成17年10月25日付け訂正請求に係る訂正事項を補正しようとしている。
そこで、当該手続補正による訂正請求に対する補正の適否について検討する。
当該手続補正による訂正請求に対する補正の内容は、次の事項を含むものである。
「6請求の理由」の「(3)訂正事項」の特許請求の範囲の請求項に関する「(a5)の7〜9行」、「(d)の5〜7行」、「(e)の5〜6行」、「(g)の5〜6行」、「(h)の6〜8行」、「(i)の5〜6行」及び「(j)の4行」に記載の「竹セルロースレーヨン繊維紡績糸」との記載を「竹を原料とするセルロースレーヨン繊維を含む紡績糸」、「(a5)の「従来の木材パルプのレーヨン繊維に比較して」との記載を「従来の木材パルプのレーヨン繊維紡績糸に比較して」と補正するもの及び発明の詳細な説明の「(k)の14〜24行」の「竹セルロースレーヨン繊維紡績糸」との記載を「竹を原料とするセルロースレーヨン繊維を含む紡績糸」と補正をするもの、「20デニール」の後に「、単繊維の繊維長が30〜200mm」を挿入する補正をするもの並びに「糸」を「紡績糸」と補正をするものである。
しかし、訂正請求に係る訂正の内容を手続補正により上記のとおり補正することは、訂正請求に係る訂正事項を削除して、訂正請求前の特許明細書の記載に戻すように補正するものではなく、訂正請求に係る訂正の内容と異なる新たな訂正の内容に補正するもので、訂正事項の削除及び単なる誤記の訂正のいずれにも当たらず、訂正事項の内容の変更を伴うものであって、訂正請求書の要旨を変更するものである。
したがって、上記訂正請求書の補正は、「訂正を申し立てている事項」の内容を実質的に変更するものと認められるから、訂正請求書の要旨を変更するものであり、特許法第134条の2第5項で準用する同法第131条の2第1項の規定に適合しないので、当該補正は認められない。

2-2-4.訂正の適否についての判断
上記「2-2-3.訂正請求に対する訂正の適否についての判断」に記載したとおり、訂正請求書の補正は認めることができないので、本件特許に対する訂正請求に係る訂正は、上記「2-1.訂正の内容」において記載した、平成17年10月25日付け訂正請求に係る訂正のとおりのものである。
当該訂正請求に係る訂正は、上記「2-2-1.訂正拒絶理由の概要」において記載した主旨の訂正拒絶の理由が通知されていることから、当該訂正拒絶の理由が妥当なものか、検討したところ、下記(1)の点で訂正拒絶の理由は妥当なものと認められるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書及び同条第5項において準用する同法第126条第3項の規定に適合しないので、本件訂正は認めることができない。

(1)訂正の目的の適否及び新規事項の追加について

(1-1)訂正事項Aについて
上記訂正事項Aは、以下の訂正事項(a5)に係る訂正を含むものである。
前記訂正事項(a5)は、請求項1の末尾に記載の「セルロースレーヨン繊維糸」の前に、
(ア)「前記セルロースレーヨン繊維がビスコースレーヨン繊維であり、前記繊維の断面は凹凸面を有する変形異形断面でありかつくびれにより外気に通じる空洞を有し、」という事項、及び
(イ)「従来の木材パルプのレーヨン繊維に比較して張り及び腰に優れ、麻のような乾いた感触がある」という事項を挿入し、
(ウ)請求項1の末尾に記載の「セルロースレーヨン繊維糸」を「竹セルロースレーヨン繊維紡績糸」とするものであって、当該訂正事項(a5)に係る訂正は、下記の理由により特許法第134条の2第1項ただし書に規定する要件、すなわち、特許請求の範囲の減縮、誤記又は誤訳の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれの目的にも該当しない、又は、当該訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものともいえないので、本件訂正は特許法第134条の2第5項において準用する特許法第126条第3項の規定に適合しない。

(1-1-1)(ア)の事項について
「繊維の断面は・・・でありかつくびれにより外気に通じる空洞を有し、」との記載について、当該記載によれば、「繊維の断面」は、構文的に「くびれにより外気に通じる空洞を有」することとなるが、発明の詳細な説明には「くびれ」についての記載が全くなく、また、「繊維の断面」と「くびれ」との関係についても何ら記載がないところであり、発明の詳細な説明をみても「くびれ」が如何なることを意味し、何を指しているのか不明であるから、当該記載は特許請求の範囲の記載を明りょうでないものとするもので、特許請求の範囲を減縮するものといえないし、明りょうでない記載の釈明とも、誤記又は誤訳の訂正ともいえない。
さらに、願書に添付した明細書には、文言上「くびれにより外気に通じる」との記載がなく、かつ、図面に関して触れている記載にもそのような記載がないところであり、図面(写真)を参酌しても「くびれにより外気に通じる空洞」というような技術思想は読み取ることはできない。また、「くびれ」は、文言上「両端がふくれて中が細い」、「中ほどが細くせばまっていること」ということであり、「空洞」については、願書に添付した明細書では、「繊維の長さ方向に空洞を有するもの」との記載と図面(写真)から、繊維の長さ方向に繋がる空洞のものがあると解されるものであったが、「くびれにより外気に通じる空洞」との記載により、空洞である空胞が、くびれという狭窄部を有する通路により外気と通じているという意味を含むものとなったと解される。
してみると、「くびれにより外気に通じる」との記載は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではない。
以上のことから、当該(ア)の事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとも、明りょうでない記載の釈明を目的とするものとも、さらには、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものともいえないし、また、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではない。

(1-1-2)(イ)の事項について
前記(イ)の事項に係る訂正事項は、イ1.「従来の木材パルプのレーヨン繊維に比較して張り及び腰に優れ」、イ2.「麻のような乾いた感触がある」という性質を記載するものである。
イ1-1.(イ)の事項の「従来の木材パルプのレーヨン繊維に比較して」について、
段落【0005】によれば、「前記糸においては」との記載があるように、糸として用いたときの作用効果として記載されたものであり、当該訂正事項の「レーヨン繊維に比較して」というようにレーヨン繊維と比較したものではない。また、木材パルプには各種原材料の木材パルプがあり、各種木材パルプを原料にして各種のレーヨン繊維の製造方法があることから、如何なる木材を原料にした如何なる製造方法により製造された如何なるレーヨン繊維と比較しているのか不明である。
イ1-2.(イ)の事項の「張り及び腰に優れ」について、
「張り」及び「腰」は、一般的には、布帛についての評価として用いられるものであり、また、本件特許明細書中の実施例においても布帛についての評価として記載しているところである。また、願書に添付した明細書又は図面において「竹を原料とするセルロースレーヨン繊維を含む糸」、「竹を原料とするセルロース繊維」などの記載はあるが、「竹セルロースレーヨン繊維紡績糸」という記載は、願書に添付した明細書又は図面に記載されておらず、また、「竹セルロースレーヨン繊維紡績糸」を定義する記載もない。
してみると、「張り及び腰に優れた」竹セルロースレーヨン繊維紡績糸という記載は、布帛ではない当該セルロースレーヨン繊維紡績糸の「張り」とは如何なるものか、どの程度の張りなのか、どの程度だと優れたと比較できるのかという点で、紡績糸の「張り」、比較における評価基準が明りょうでなく、記載自体が明りょうでなく、また、当該訂正事項は願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではない。
イ2.(イ)の事項の「麻のような乾いた感触がある」という点について
麻には各種あり、それぞれで感触も異なるから、「麻のような乾いた感触」とはどのような感触なのか、及びどの程度で麻のような乾いた感触があるといえるのかその評価基準が明りょうでなく、記載自体が明りょうでない。
以上のとおりであるから、前記(イ)の事項に係る訂正事項は、訂正後の請求項1に係る発明を明りょうでないものとする。
当該(イ)の事項を含む訂正事項(a5)は、訂正後の請求項1に係る発明を明りょうでないものとするもので、当該訂正事項(a5)は、特許請求の範囲の記載の減縮を目的とするものでもなければ、明りょうでない記載の釈明を目的とするものではない。
また、前記(イ)の事項を含む訂正事項(a5)は、明らかに誤記又は誤訳の訂正を目的とするものでもない。

よって、前記(ア)ないし(イ)の事項を含む訂正事項(a5)に係る訂正は、訂正の目的のいずれにも当たらないことから、訂正事項(a5)を含む訂正事項Aに係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとも、明りょうでない記載の釈明を目的とするものとも、さらには、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものとも認められない。

また、仮に、(ア)「くびれにより外気に通じる」との記載事項及び(イ)「張り及び腰に優れ」との記載事項に係る訂正事項が訂正の目的に違反していないとしても、上記のとおり「くびれにより外気に通じる」、「張り及び腰に優れた竹セルロースレーヨン繊維紡績糸」なるものは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項ではないから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではない。

(1-2)訂正事項Bについて
この訂正事項Bに係る訂正において、「セルロースレーヨン繊維糸」との記載を「竹セルロースレーヨン繊維紡績糸」とする訂正は、上記(1-1-3)(ウ)の訂正に関連して詳述したとおりの理由により、願書に添付した明細書又は図面に記載の「セルロースレーヨン繊維糸」との記載であっても訂正後の願書に添付した明細書又は図面に記載の「竹セルロースレーヨン繊維紡績糸」との記載であっても、実質的に記載されている事項を簡略的に表記したものと解することができ、特許請求の範囲を減縮するものとはいえないし、誤記又は誤訳の訂正ともいえない。さらに、訂正前後の願書に添付した明細書又は図面に記載のどちらが、明りょうに表記しているともいえるものではない。
訂正事項Bの「竹セルロースレーヨン繊維紡績糸」とする訂正は、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものでなければ、明りょうでない記載の釈明を目的とするものではないし、また、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものでもない。

(1-3)訂正事項Dについて
この訂正事項Dに係る訂正は、発明の詳細な説明の段落【0012】に「前記ビスコースレーヨンの製造方法も含めて、銅アンモニアレーヨン、アセテート、トリアセテート及び精製セルロースの詳細は、繊維学会編、「繊維便覧第2版」、丸善、1994年3月25日発行の92〜99に記載されており、本発明においてもこれを適用できる。」と記載され、レーヨン繊維の各種製造方法について説明する文献の該当箇所を記載していたのを、「ビスコースレーヨンの製造方法の詳細は、」と製造方法を特定のものに限定して説明する記載とするものであり、特許請求の範囲を減縮するものではないことは明らかであり、訂正前の記載自体に明りょうでないところも誤記又は誤訳もなく、当該訂正は、訂正の目的のいずれにも該当しない。
また、「ビスコースレーヨンの製造方法の詳細は、」とビスコースレーヨンの製造方法に特定した、説明する記載にすると、その製造方法を説明する「繊維便覧第2版」における記載頁は、92〜99頁の範囲ではなくなり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項ではなく、かつ明らかに記載が一致しないことから、訂正後の記載内容が誤っており、明りょうでない記載の釈明をするものとも認められない。
そして、訂正事項Dは、特許請求の範囲の減縮をするものでも、誤記又は誤訳の訂正をするものでもないことは明らかである。
したがって、前記訂正事項Dに係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとも、明りょうでない記載の釈明を目的とするものとも、さらには、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものとも認められない。

(1-4)むすび
以上のとおりであるから、本件無効審判で請求する訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書及び同条第5項で準用する同法第126条第3項ないし第5項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

(2)被請求人の主張について
(2-1)訂正拒絶理由に対して、被請求人は、「『くびれ』とは、図1を見れば当業者でなくても誰にでも理解できる語句である。」、「図1の説明を見れば、『くびれにより外気に通じる』があるのは明らかである。」、「断面から見て『くびれにより外気に通じる空洞を有』するのである。」などと主張するが、被請求人の主張は、単に「くびれ」は図から読み取れるというだけで、特許明細書の記載又は図面に基いて「くびれ」という概念が記載されていること或いは自明であることを何ら明らかにするものでもなく、読み取れるとする根拠もない。さらに、「くびれにより外気に通じる」ということに到っては、図1の説明図を見れば明らかというのみで全く根拠を示していない。
次に、「繊維の断面は」、「くびれにより外気に通じる空洞を有し」との記載について、「断面から見てくびれにより外気に通じる空洞を有」するのである。すなわち、繊維の長さ方向に連続した溝状に繋がる空洞のものがあることと同じ意味である」旨主張しているが、「繊維の断面は」であって「断面から見て」との条件記載はなく、また、繊維の断面という切り口、すなわち、平面を見て「くびれ」という上記したような「中ほどが細くせばまっていること」、「両端がふくれて中が細い」という形態を認識できるためには、くびれにより外気に通じると記載があるように通路のように認識される導通部があり、その導通部が一部で狭くなっているという部分が認識されることが必要であるところ、明細書に記載がない以上、図から認識される必要があるが、被請求人が略図等で示している箇所はそのように認識し得るものではない。何故なら、被請求人の主張は繊維の長さ方向に延びる表面の2つのひだとにより繊維の断面に空洞部が形成されることを指してこのように表現したものであるから、くびれと認識できるものではなく、繊維の断面に見える空洞と外気とを通じる狭窄部をくびれと表現することは自明なものではなく、「くびれ」という記載に被請求人の恣意的な解釈を加えたものであるといえる。
訂正拒絶の理由では、上記訂正事項の記載から把握されるところの解釈として、繊維の断面は空洞と認識される空間部があり、その空間部は空胞も含むものとしたのは、当該訂正事項に係る記載から、その空洞と認識されるものはくびれと表現される狭窄部を有する通路を介して外気に通じている構造を有していると文言上、解釈されるものであるからであり、ここにいう空洞は、独立した空胞をも包含するものと解するのが妥当であり、先の解釈に誤りはない。

(2-2)被請求人は、「木材パルプのレーヨン繊維と比較して」の比較対象が適当でないとの指摘に対し、「繊維であれ、紡績糸であれ、織物であれ、編物であれ、当業者であれば手で触って感触を確かめれば、張り及び腰は評価できる。したがって、繊維同士で比較しているのは誤りではないから、記載不備には該当しない。」と主張するが、明細書中では織物、編物といった布帛の形態として評価しており、被請求人が主張するとおり、繊維、紡績糸の形態で評価できるものであるとする根拠が明細書に記載も示唆もされておらず、また、評価する仕方が技術常識であるともいえず、被請求人の当該主張は明細書の記載又は技術常識に基づかない主張にすぎない。
(2-3)被請求人は、評価基準が明りょうでなく、記載しているところが明りょうでないとの指摘に対し、概略、「如何なる木材パルプを原料としたレーヨンと比較してもという意味であり、「張り及び腰」は風合いという特性であり数値によって必ずしも明りょうかできない値である。しかし、張り及び腰が優れているかいないかは、触ってみればわかることである。」などと主張する。
しかしながら、特許明細書の記載には、繊維、糸を織物にして、着用試験により評価している記載はあるが、繊維、糸そのものを評価する記載はない。
また、比較対象のレーヨンについて「如何なる木材パルプを原料としたレーヨンと比較しても」ということであり、比較は「触ってみればわかる」と主張するが、「触ってみればわかる」ということ自体が曖昧で、明りょうでなく、また、感触であるにしろ、比較の評価基準が特定して記載されていないことは明らかである。
さらに、評価が風合いとか感触といった感覚的な評価であったとしても、比較対象として「従来の木材パルプを原料としたレーヨン」と記載するのみで、特許明細書中に比較対象の木材パルプの種類、レーヨン繊維の種類及び紡績糸が特定されておらず、ましてや、張り及び腰に影響すると認識している、レーヨン繊維の繊度、従来のレーヨン繊維糸の実撚の範囲、番手などについて特定しておらず、比較対象の張り及び腰が定まらないし、特に、セルロースレーヨン繊維糸の「張り」とはどのようなものか不明であり、比較対象の「張り」はどの程度のものか、どの程度だと優れていると評価するのか、評価基準が明りょうではなく、訂正により特許請求の範囲の記載自体が曖昧で明りょうでないものとなるため、請求項に係る発明が明確でないから、記載しているところが明りょうでないとの判断は妥当なものといえる。
また、糸における「張り及び腰」は触ってみればわかると主張して、その根拠として段落【0009】及び段落【0035】の記載を引用しているが、「張り及び腰の性質を引き出しやすい。」あるいは「糸を用いることにより、張り及び腰に優れ、シワにもなりにくく」と記載されているだけであり、被請求人の主張を裏付ける根拠といえる記載とはいえない。
以上のとおりであり、被請求人の主張は、採用できない。

(2-4)被請求人は、検乙第1、第2号証として平成17年10月25日付け訂正請求書の第24頁19行〜第25頁10行に記載の特定の繊維、特定の撚り、番手を有する紡績糸を用い、特定の織物組織を有する竹を原料とするビスコースレーヨン100%織物を提出し、かつ従来の木材パルプを原料とするビスコースレーヨン100%織物例として同書第25頁11〜20行に記載の特定の糸使い紡績糸で織り上げたものを提示して手で触って風合いを確かめると効果が確認できる旨及び、検乙第4、第5号証として平成18年 1月10日付け意見書の第6頁4〜15行に記載の竹を原料とするビスコースレーヨン繊維使いの紡績糸を訂正発明のものとして提出し、張り及び腰に優れ、シワにもなりにくく、かつ麻繊維のような乾いた感触があるうえ、吸湿性、放湿性にも優れていることを立証する旨を主張する。
しかしならが、比較対象とする本件発明として提出した検乙第1、2、4、5号証は織物及び紡績糸であって、訂正明細書の特許請求の範囲に記載の比較対象は「従来の木材パルプのレーヨン繊維」であり、「織物及び紡績糸」と「レーヨン繊維」の比較であるから、明らかに比較しているものが異なるものである。
また、比較している従来のレーヨン繊維にしろ訂正発明のものにしろ、検証物として提出されたものは、上記訂正請求書又は意見書に記載のあるような特定のものにおいて、比較しているだけであり、比較しているものは本件訂正発明において規定されている繊度、繊維長、実撚の範囲のほんの一部を満たすだけの紡績糸であって、紡績糸が有するその他の条件、例えば、請求項に係る発明では番手が規定されていない以上、如何なる番手のものでも優れているといえることを明らかにすることが必要であるところ、そのようなことを示すものではないから、被請求人が主張するように比較し、その結果、訂正発明のものが主張するような性質、手触りあるいは風合いというものを具えていると言い得るだけの裏付ける証拠も根拠も示されていない。
以上のとおり、被請求人が主張するように、比較し、立証できるものではない。

3.本件発明
上記「2.訂正の適否について」において詳述したとおり、平成17年10月25日付け訂正請求に係る訂正は、認められないから、上記本件特許第3448526号の請求項に係る発明は、本件特許明細書及び図面からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項9に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求頃1】 竹を原料とするセルロースレーヨン繊維を含む糸であって、前記糸は単繊維の繊度が0.5〜20デニールの範囲の紡績糸であり、400〜1500T/m(ただしTは撚の回数)の範囲の実撚が付与されていることを特徴とするセルロースレーヨン繊維糸。
【請求項2】 竹を原料とするセルロースレーヨン繊維が、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、アセテート、トリアセテート及び精製セルロースから選ばれる少なくとも一種の繊維である請求項1に記載のセルロースレーヨン繊維糸。
【請求項3】 セルロースレーヨン繊維の断面が、凹凸面を有する変形異形断面である請求項1に記載のセルロースレーヨン繊維糸。
【請求項4】 単繊維の繊度が1.5〜10デニールの範囲である請求項1に記載のセルロースレーヨン繊維糸。
【請求項5】 紡績糸が、梳毛紡績糸である請求項1に記載のセルロースレーヨン繊維糸。
【請求項6】 繊維長が、30〜200mmの範囲である請求項1に記載のセルロースレーヨン繊維糸。
【請求項7】 実撚の範囲が500〜1200T/mである請求項1に記載のセルロースレーヨン繊維糸。
【請求項8】 竹を原料とするセルロースレーヨン繊維に、天然繊維、竹以外を原料とする再生繊維及び合成繊維を混合した請求項1に記載のセルロースレーヨン繊維糸。
【請求項9】 請求項1〜8のいずれか1項に記載のセルロースレーヨン繊維糸を用いた織物又は編み物であることを特徴とする布帛。」

4.特許無効審判請求について
4-1.特許無効審判請求人の主張
請求人は、「本件特許第3448526号の請求項1ないし請求項9に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として下記甲第1ないし第14号証を提出し、その理由として、本件発明1ないし本件発明9は、甲第1〜第4号証に記載の発明(竹のレーヨン)を甲第5号証〜甲第8号証に記載の発明に適用し、適宜、甲第9〜第14号証により当該技術分野において公知、周知の技術的事項を考慮することにより、当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明の特許は同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきである旨主張している。



証拠方法
甲第1号証の1 「東南アジアの竹資源の活用 -竹パルプ工業の推進について- 」、昭和43年4月1日、科学技術庁資源局資源統計課発行(昭和43年7月3日国会図書館受入れ) 第140〜149頁
甲第1号証の2 国立国会図書館の甲第1号証の1に関する書誌情報
甲第2号証の1 上田弘一郎著、「竹」、昭和43年7月30日、毎日新聞社発行、巻頭写真頁、第71〜77頁、第192〜193頁、第198〜203頁、奥付き
甲第2号証の2 国立国会図書館の甲第2号証の1に関する書誌情報
甲第3号証 「ニュースタンダードエンサイクロペディア(New Standard Encyclopedia VOLUME ONE )」、1977年の著作権表示、米国シカゴのスタンダードエデュケーショナルコーポレイション発行、B-59〜B-60頁、R-101〜R-104頁
甲第4号証 「17 世界大百科事典」、1988年4月28日 初版発行、平凡社、第17巻、第235〜237頁
甲第5号証 安田昭信著「紡績法大意 (改訂版)」、昭和31年11月25日、産業図書株式会社、第114〜119頁
甲第6号証 特公平2-38698号公報
甲第7号証 特許第2752319号公報
甲第8号証 特開平10-140429号公報
甲第9号証 「国民百科事典 7」、1962年7月1日、株式会社平凡社、第7巻、第544頁
甲第10号証 中村耀著「繊維の実際知識」、昭和54年7月10日、東洋経済新報社、第53〜62頁
甲第11号証 繊維学会編「第2版 繊維便覧」、平成6年3月25日、丸善株式会社、第32〜33頁、第92〜99頁
甲第12号証の1 祖父江寛訳「レーヨン・スフの紡織仕上」、昭和25年10月20日、株式会社コロナ社、目次、第36〜45頁、第166〜173頁
甲第12号証の2 国立国会図書館の甲第12号証の1に関する書誌情報
甲第13号証 井本稔著「化学繊維」、昭和41年10月10日、株式会社岩波書店、第64頁
甲第14号証 繊維学会編「図説 繊維の形態」、1982年11月20日、株式会社朝倉書店、第146〜153頁

5.被請求人の主張
一方、被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、下記の証拠を提出し、「被請求人も従来から竹のレーヨン繊維が存在していたことは認める。しかし、甲1の1及び甲2の1には、紡績糸であることも、単繊維の繊度がいくらかであることも、撚り数がいくつかであるかということも、一切の記載もないし示唆もされていない。加えて、竹のレーヨン繊維糸にとって、前記糸は単繊維の繊度が0.5〜20デニールの範囲及び400〜1500T/m(ただしTは撚の回数)の範囲の実撚が付与されていることが、張り及び腰に優れ、シワにもなりにくく、かつ麻繊維のような乾いた感触があるうえ、吸湿性、放湿性にも優れているセルロースレーヨン繊維糸及びこれを用いた布帛を提供することができる。という本件発明の効果に結びつく選択発明を示唆する記載はない。」から、本件発明1ないし本件発明9は、甲第1ないし第14号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるということはできない旨主張している。

証拠方法
乙第1号証 : 2004年5月20 日付け繊研新聞第8面
乙第2号証 : 2004年6月17日付け繊研新聞第5面
乙第3号証 : 2004年12月6日、特許第3448526号ライセンス先リスト

6.無効理由に対する当審の判断
6-1.甲各号証の記載事項
(a)刊行物1:甲第5号証(「紡績法大意」)
(a-1)第5編 ステープル・ファイバー糸紡績において、「ステープル・ファイバーは・・・繊維素から製造した羊毛、棉花に類似の短繊維であって、原料や製造工程の大部分が、ほとんど人造絹糸と同様であるが、人造絹糸は糸として、製造されるのに対して、ステープル・ファイバーはある一定の長さの紡績原料として製造される」(第115頁第5〜9行参照)。
(a-2)「B.ステープル・ファイバーの製法
人造絹糸は・・・主なものは植物性原料を使用したものである。・・・その製法によつて・・・酸化銅アンモニヤ繊維素絹、ビスコース絹、醋酸繊維素絹等の種類がある。・・・現今人絹糸の大部分を占めているものはビスコース絹であつて、ステープル・ファイバーもまた現在多くこの方法によつて製造されているのである。」(第115頁10行〜第116頁2行)
(a-3)第2章 紡績法には、「現在行われているものに次の3式がある。・・・
A.綿紡式紡績法 ・・・普通長さ40mm内外、太さ2〜2.5デニールの繊維を原料とし、・・・
B.絹紡式紡績法 ・・・1〜1.5デニールで140〜200mm程度の比較的長い繊維を原料とし、・・・
C.毛紡式紡績法 ・・・羊毛との混紡が多い。主として梳毛糸紡績の方法に準じて紡績するもので、長さ140mm内外で、3〜4デニール程度の太い原料を用い、・・・梳毛糸 50〜90’s 程度の糸を造るに適している。」(第117頁第6〜23行)
(a-4)第6編 撚糸法には、人絹の撚糸の種類として、「第1節 撚糸の種類 A.撚の強弱による種類
120/m以下 極甘撚 650〜1,800/m 強 撚
200〜400/m 甘 撚 1,800〜3,000/m 極強撚
400〜650/m 中 撚
絹糸の撚糸は普通1m間の撚数で表わす。」(第119頁)

(b)刊行物2:甲第1号証の1(「東南アジアの竹資源の活用-竹パルプ工業の推進について-」)の記載事項
(b-1)c)東パキスタンの欄には、「さらに日産10トンの竹レーヨンパルプおよびレーヨン工場が最近、(1966年)稼働に入ったと伝えられる。」(第142頁第9〜10行)と記載されている。

(c)刊行物3:甲第2号証の1(上田弘一郎著「竹」)の記載事項
(c-1)巻頭には、上段には「『竹のレーヨン』を巻き取ったケーク状のもの」と「『織物』(布帛)の写真が掲載され、写真の下には「竹のレーヨンとその織物 東パキスタン産の竹でつくられたもの」との説明があり、同下段には、建物の写真が掲載され「東パキスタン・チャンドラゴーナーにある竹の製紙工場 となりに竹のレーヨン工場もある」との説明が記載されている。
(c-2)「竹の紙・レーヨン」の章には、「『竹からほんとうに紙ができるか』とか、『竹からレ一ヨンが作れるとはおどろきである』などのこえをときどききく。今では竹の製紙工場や竹のレーヨン工場が工業的にうごき、これからもどしどしつくりだされるであろう。」(第71頁第1〜4行)
(c-3)「さらに画期的なのは、竹のレーヨン工場である。これは東パキスタンのチャンドラゴーナーにあり、日本の技術援助のもとに、年産五千余トンの規模で一九六七年春からうごき始め、待望の良質のレーヨンがつくりだされている。
以上は東南アジア地方の竹の紙と竹のレーヨンつくりの現況である。」(第74頁第1〜4行)
(c-4)竹と木のセンイの長さと幅の表には、「種類 センイの長さ(ミリ)の項として、日本産 マダケ、モウソウチク、熱帯産 竹類、日本産 アカマツ、ブナについて、それぞれ、一・五七、一・三七、一・八九〜三・〇九、一・九八、〇・八五と記載されている。また、「なお竹のセンイ(繊維)が木に劣らないことを知るために、大野一月博士の分析値を前表にのせておいた。」との記載がある(第74頁表、第75頁第1行)
(c-5)「パキスタン
昭和三六年(一九六一)六月一四日に羽田をたって・・・同国の政府と竹レーヨン作りについて話しあった。・・・木でつくったレーヨンにくらべて、日本から持参の竹のレーヨン(見本)のすぐれているのをみてよろこび、自国産の竹でレーヨンのできることを大いに期待された。」(第199頁第1〜6行)
(c-6)「画期的な竹のレーヨンつくりには、日本が協力して三カ年あまりかかって待望の工場が立てられ、昭和四二年三月からうごきだし、日産三〇トンをめどとしているが、今日では良質の竹のレーヨン(日産一〇トン)と竹のセロファン(日産五トン)がつくりだされている。場所は東パキスタン、チャンドラゴーナーのカルナフリである。・・・ここには、すでに竹を原料とした製紙工場(年産三万トン)がある。そのそばには竹のレーヨン工場が建てられたのであり、今後の発展が期待されている。」(第201頁第16行〜第202頁第5行)

(d)刊行物4 :甲第6号証(特公平2-38698号公報)の記載事項
(d-1)実施例として、「常圧可染性ポリエステル繊維のステープル繊維〔織度0.7デニール、平均繊維長32mm(等長カット)〕とポリノジック繊維のステープル繊維〔繊度1.0デニール、平均繊維長38mm(等長カット)〕とを重量%で65:35の割合でスライバー混紡を行なって280ゲレン/6ydsの混紡スライバーをつくり、次いで粗紡機、精紡機に通して60′sの混紡糸を製造した(撚係数はインチ方式で3.3であった)。この混紡糸を経、緯に用いて経密度169本/in、緯密度90本/inでローンを製織した。この織物は、絹様の光沢にすぐれ、ソフトでしかも吸湿性にすぐれた高品位のものであった。」(第5欄末行〜第6欄第12行)

(e)刊行物5 :甲第7号証(特許第2752319号公報)の記載事項
(e-1)「【請求項1】 重量比30〜60%の羊毛繊維と重量比60〜30%のレーヨン繊維との混紡糸を用いて製織した織物であって、
前記羊毛繊維は繊度が24μ以下,平均繊維長が60mm以上であり、前記レーヨン繊維は繊度が2デニール以下,平均繊維長が60mm以上のトウ・ステープルであり、前記混紡糸の撚係数が80〜150である羊毛/レーヨン混紡織物。」(特許請求の範囲請求項1)
(e-2)「実施例1 織度が22μ,平均繊維長が78mmのメリノウール65%と、繊度が1.5デニール、平均繊維長が81mmのレーヨン・トウ・ステープル35%とを混紡して、糸番手が1/46Nm(メートル番手)、撚数がZ1100T/mの羊毛/レーヨン混紡リング精紡糸を得た。」(段落【0022】抜粋」)
(e-3)「実施例7 繊度が22μ、平均繊維長が78mmのメリノウール65%と、繊度が1.5デニール、平均繊維長が81mmのレーヨン・トウ・ステープル35%を混紡して糸番手が1/48Nm、撚数がZ570T/mの混紡精紡糸を得た。」(段落【0041】抜粋)
(e-4)「実施例8 繊度が20μ、平均繊維長が73mmのメリノウール65%と、繊度が1.5デニール、平均繊維長が81mmのレーヨン・トウ・ステープルを混紡して糸番手が1/60Nm、撚数がZ660T/mの混紡精紡糸を得た。」(段落【0043】抜粋)

(f)刊行物6 :甲第8号証(特開平10-140429号公報)の記載事項
(f-1)「【請求項1】 異形断面の平均重合度400以上の再生繊維のステープルと1デニール以下のポリエステルステープルとが均一に混紡されてなることを特徴とする混紡糸。」(特許請求の範囲の請求項1)
(f-2)「この異形断面は、張り、腰を与え、ヌメリ感を解消し、ドライタッチの風合いを与えるためである。」(段落【0006】抜粋)
(f-3)「また、前記再生繊維は、繊度として0.7〜3デニールが好ましく、1〜3デニールがさらに好ましく、1.2〜2.5デニールが特に好ましい。他方、平均繊維長としては28〜72mm、さらには32〜51mmが好ましい。」(段落【0011】)
(f-4)「なお、前記再生繊維としては、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、ポリノジック繊維などが挙げられるが、ポリノジック繊維が吸湿性の点から好ましい」(段落【0013】)
(f-5)「前記異形断面の再生繊維ステープルとポリエステル繊維のステープルとは均一に混紡されてなるが、加えられる実撚は撚係数(インチ方式)で2.5〜4.5の範囲にあるのが好ましい。2、5未満であるとしなやかさが得られるものの集束性が低下するために絹様の光沢が得られにくくなり、他方、4.5をこえると粗硬感が出てきて、ドライタッチの風合し、が低下して好ましくない。
混紡糸の太さは、英式綿番手で40〜200’Sの範囲にあるのが好ましい。40’S未満になると絹様の光沢が得られにくくなり、他方200’Sをこえるとドライタッチの風合し、が損なわれやすくなり好ましくない。」(段落【0017】〜段落【0018】)

(g)刊行物7 :甲第9号証「国民百科事典」第7巻第544頁の「レーヨン」欄の記載事項
レーヨンの製法として、ビスコース法と銅アンモニア法があること、レーヨンには、レーヨンフィラメント糸と、ステープルファイバー(スフ)とよばれるレーヨンステープルの2種類があること、レーヨンステープルを紡績して得た糸をスパンレーヨンということ、レーヨンステープルは木綿、羊毛さらに各種合成繊維との混紡に用いられることなどが記載されている。

(h)刊行物8 :甲第10号証「繊維の実際知識」第53〜62頁の記載事項
(h-1)「だいたい従来の慣習上人造繊維といえば、天然の繊維素をいったん溶かしてこれを人工的に繊維の形に再生(regenerate)したもの,つまり従来の人絹糸とスフとをさしている」(第53頁8〜11行)
(h-2)「1.9.2 人絹糸の種類」の項には、銅アンモニア人絹,ビスコース人絹,酢酸繊維素人絹などがあることが記載されている。
(h-3)「1.9.3 各種人絹糸の現状と製造法の概要」の「(1)ビスコース人絹(Viscose Rayon) c)紡糸口金」の項に、1つの孔から出た太さ4D、「同 d)凝固浴」の項に、添加する薬品の種類および分量などによってでき上がる人絹糸の横断面の形にいろいろの特色が現われること、図1.27人絹糸の横断面の一例として異形断面のもの(第55頁)が記載されている。
「(2)銅アンモニア人絹(Cupammonium Rayon)、 b)紡糸法」の項に、でき上がる糸の直径は0.01mm(太さ1.0〜1.3D)ぐらいという繭繊維より細いものがつくられること(第57頁)が記載されている。
「(3)酢酸繊維素人絹(Acetate) b)紡糸法」の項に、紡糸される単繊維の太さは3〜4Dとなること(第58頁)が記載されている。
(h-4)「1.10 ステープル・ファイバー(Staple Fiber)」の項に、ステープル・ファイバーは人絹糸を短く切断したもので,通称スフまたはスフ綿(わた)と呼ばれること、スフは繊維をつくるまでは人絹糸とまったく同じであるから,種類にもビスコース・スフ,キュプラ・スフ,アセテート・スフなどがあること、スフの太さはだいたい1.5,2.0,3.0Dが主であること、切断する長さは用途に応じ,混紡するものの繊維の長さに相応して切断することなどが記載されている。

(i)刊行物9 :甲第11号証「繊維便覧」の記載事項
図1.29 アセテート繊維(b)の断面バリエーション例として断面は凹凸を有する変形異形断面のもの、第92〜99頁には、ビスコースレーヨンの製造方法も含めて、銅アンモニアレーヨン、アセテート、トリアセテートの詳細、及び第94頁の「(iii)セルロース繊維の技術動向」欄には、ビスコースレーヨンはその製造工程で二硫化炭素をはじめとする有害物を使用するため、環境,排水などの問題がクローズアップされ、解決する技術の一つとして新規溶媒によるレーヨン製造法の開発が行われ、イギリスコートルズ社、オーストリアレンチング社のNMMO法があることなどが記載されている。

(j)刊行物10 :甲第12号証の1「レーヨン・スフの紡織仕上」の記載事項
(j-1)綿紡式によるレーヨン・ステープルの紡績、梳毛式によるレーヨン・ステープルの紡績、紡紡式によるレーヨン・ステープルの紡績等について目次表示がある(目次)。
(j-2)第38頁の表には、ビスコース繊維のデニールと羊毛の等級とを対比したものが示されている。この表には、羊毛の等級80S〜36Sに相当するビスコース繊維のデニールとして「3.9〜17.3デニール」が挙げられている。
(j-3)「一般に紡織工場の梳毛部門で用いる最も細いものは3.0デニールである。併し一番よく用いられるのは5.5デニールである。種々の等級の羊毛にまぜて何か面白い特性が得られるかどうかを知るために8.0デニールを用いることが実験的に試験されている。」(第38頁下から6〜3行)
(j-4)「長さ 梳糸紡績に於てはフランス式は11/2-4inの範囲の長さのものを取扱うのに最も適している。ブラッドフォードでは最短4inであって、レーヨンは8inまで、時には9inの長さのものが用いられている。」(第40頁末行〜第41頁第3行)
(j-5)第168頁〜第172頁には、スフ織物、雑織物、紡毛織物と区分し、各種用途の実例が記載されている。

(k)刊行物11 :甲第13号証「化学繊維」の記載事項
第64頁の第19図にはレーヨンの切口が示され、切り口は紡糸するときの酸の液の組成でいろいろに変ること(第64頁8〜9行)、レーヨンは第19図のように、切口はいろんな形をしている(第64末行〜第65頁1行)と記載されている。

(l)刊行物12 :甲第14号証「図説繊維の形態」の記載事項
第147頁 写真13aにビスコースレーヨン未乾燥糸の横断面、写真13bにスキン部の横断面、第149頁 写真14にビスコースレーヨン未乾燥糸が示されてる。紡出されたビスコース原液は、凝固再生浴と接触界面において凝固再生が急速に進み水和セルロースの皮膜が形成される.このような表面の形成が写真13aやbにみるようなビスコースレーヨンが特有の複雑な断面形態をつくる原因であると同時に,極端な異形断面繊維を比較的容易に製造することができる理由の一つになっていることが記載されている(第148頁第13〜15行参照)。
写真13cには凝固再生時のガス発生による空胞が見られるが、これもビスコースレーヨンの特徴の一つといえる。」との説明とともに、第149頁写真13cに空胞が示されている。(第148頁第26〜27行参照)。
第153頁 写真18にジアセテートレーヨン糸を凍結割断した写真が示されており、アセテートレーヨンの断面は,いわゆるクローバ状で非常に複雑な形態をしていること(第152頁13行)が記載されている。

6-2.特許法第29条第2項違反についての判断
6-2-1.本件発明1について
刊行物1(甲第5号証)には、上記摘示(a-1)〜(a-3)の記載「レーヨンステープルファイバー紡績糸において、綿紡式紡績法、絹紡式紡績法及び毛紡式紡績法の各紡績方式により製造されるレーヨンステープルファイバー紡績糸」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。
本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「レーヨンステープルファイバー紡績糸」は、本件発明1の「セルロースレーヨン繊維糸」に相当するから、
両者は、「セルロースレーヨン繊維を含む糸であって、糸の単繊維の繊度が1〜1.5デニール、2〜2.5デニール、又は3〜4デニールの範囲であるセルロースレーヨン繊維糸」で一致し、下記の点で相違している。
相違点1;セルロースレーヨン繊維糸が、本件発明1では「竹を原料とするセルロースレーヨン繊維(以下、「竹セルロースレーヨン繊維」という。)を含む紡績糸」であるのに対し、刊行物1発明では「植物性原料」、具体的には、木材繊維を原料とするセルロースレーヨンステープル繊維を紡績してなる糸である点、
相違点2;本件発明1では、竹セルロースレーヨン繊維を含む糸の単繊維の繊度が、「0.5〜20デニールの範囲」であるのに対し、刊行物1発明では、「綿紡式紡績法、絹紡式紡績法及び毛紡式紡績法の各紡績方式により、それぞれ、糸の単繊維の繊度が1〜1.5デニール、2〜2.5デニール、又は3〜4デニールの範囲」のものが用いられてる点、
相違点3;本件発明1では、竹セルロースレーヨン繊維を含む糸の撚が、「400〜1500T/m(ただしTは撚の回数)の範囲の実撚りが付与されているのに対し、刊行物1発明では、セルロースレーヨン繊維を含む紡績糸の撚りについて、特に、明記されていない点、
で相違している。

(1)相違点1について
本件発明1における、竹セルロースレーヨン繊維は、従来のセルロースレーヨン繊維と同じように竹の繊維素を原料とした再生繊維としたもの(本件特許明細書段落【0012】)であるが、刊行物2、3に記載があるように、従来のセルロースレーヨン繊維にあっては原料として木材のパルプを繊維素とするセルロース繊維から製造したレーヨン繊維が通常であるところ、原料の確保、各国天然資源の活用や木材との代替などの観点から、竹の繊維素を原料セルロース繊維としてレーヨン繊維を製造する試みがなされ、実際に、良質な竹セルロースレーヨン繊維が製造されていることが明記されていることに照らしても、竹セルロースレーヨン繊維自体は、本出願前周知の繊維である(摘示記載(b-1)、(c-1)〜(c-6))。なお、被請求人もこの点について自認しているところである(答弁書第4頁2行)
そして、再生繊維及び合成繊維などの繊維にあっては、フィラメントとステープル・ファイバーの形態があり、レーヨン繊維においても、フィラメントとステープル・ファイバーとがあり、ステープルファイバーを紡績糸として利用することの方がレーヨンフィラメントとして利用することより一般的であり、例えば、甲第6号証に記載の実施例では、ポリエステル繊維とポリノジック繊維とを混紡しており;甲第7号証の実施例1、7および8では、メリノウールとレーヨンとを混紡しており;甲第9号証には、レーヨンステープルは木綿、羊毛、さらに各種合成繊維との混紡に用いられることが記載されていることに照らしても、レーヨン繊維紡績糸ではレーヨン繊維と他の繊維とを混繊し、紡績して糸として使用することは、当該分野における技術常識であるから、従来のレーヨン繊維に代えて周知の竹セルロースレーヨン繊維を採用し、竹セルロースレーヨン繊維を含む紡績糸とすることに何ら格別の創意も困難性もなく、当業者が容易に想到し得ることである。

(2)相違点2について
レーヨンステープル繊維は羊毛、綿花、絹等に代わる紡績原料として開発されてきた経緯から、レーヨン繊維紡績糸の製造法として、綿紡式、絹紡式、毛紡式及び梳毛式などの天然繊維における従来周知の紡績法に準じて紡績されていることは技術常識であり(摘示記載(a-3))、紡績に際し、レーヨンステープル繊維の繊度、繊維長についても、自ずとそれぞれの紡績法に適合するものが採用されているところであり、具体的には、刊行物1には、綿紡式紡績法、絹紡式紡績法及び毛紡式紡績法の各紡績方式により、それぞれ、糸の単繊維の繊度が1〜1.5デニール、2〜2.5デニール、又は3〜4デニールの範囲のものを用い、製造されていること(摘示記載(a-3))、レーヨンステープル繊維の繊度として1デニールから15デニールのものが知られていること、刊行物10(摘示記載(j-1)ないし(j-4))には、レーヨン・ステープルのビスコース繊維のデニールとして3.9〜17.3デニールのものが挙げられていること、そして、刊行物2、3に記載の竹セルロースレーヨン繊維が、従来のレーヨン繊維の原料の代替として開発され、かつ良質な竹セルロースレーヨン繊維が製造されたとの記載に照らして、当該竹セルロースレーヨン繊維の性質、物性等が従来のレーヨン繊維の代替となる性質、物性等を発揮すると解することができること、及び糸の繊度が小さ過ぎると高い張りおよび腰を得られなくなる傾向となり、逆に繊度が大き過ぎると粗硬感が発現して衣料用途には不向きなものとなることは当業者に自明であることから、竹セルロースレーヨン繊維を含む糸となすとき、相違点2のように、竹セルロースレーヨン繊維の単繊維の繊度として0.5〜20デニールとすることは、当然に設定し、採用する単繊維の繊度であって、格別の困難性もなく、当業者が容易に発明することができたものである。

(3)相違点3について
レーヨンのステープル・ファイバーの紡績糸においては、中撚の場合、400〜650/m、強撚の場合、650〜1800/mの範囲の撚が付与されることは周知のこと(摘示記載(a-4))であり、また、一般に、甘撚の糸は腰がなく、撚数が多い程腰があり、糸の張りおよび腰の性質を引き出すためには、中撚ないし強撚を掛けることが好ましいこと、及び紡績糸における撚りは実撚として付与されることは当業者であれば自明なことであるから、竹セルロースレーヨン繊維を含む糸において、当該レーヨン繊維紡績糸における撚りに関する周知の事項を考慮することは、当然のことである。また、刊行物2、3の記載によれば、従来の木材を原料とするセルロースレーヨン繊維の代替の原料として竹を原料とするセルロースレーヨン繊維が開発され、実際に工場が稼働し、竹セルロースレーヨン繊維が製造されていること、及び摘示(c-4)の記載によれば、竹セルロースレーヨン繊維の原料である竹の繊維素の長さは、通常のレーヨンの原料である木材の繊維素の長さと同程度もしくは長いものもあることからすれば、竹セルロースレーヨン繊維が、当然、木材を原料とするセルロースレーヨン繊維と同程度に撚りを付与することができる物性等の性状を発揮し得ることは明らかである。
してみると、竹セルロースレーヨン繊維を含む糸となすとき、相違点3のように、竹セルロースレーヨン繊維を含む糸に400〜1500T/mの範囲の実撚を付与することは、当業者が容易に想到し、なし得ることである。
以上、上記(1)ないし(3)において、相違点1ないし3について詳述したように、本件発明1は、竹セルロースレーヨンの繊度として従来周知の木材を原料の繊維素としたセルロースレーヨンステープルにおいて周知慣用されている範囲の単繊維の繊度に規定するとともに、セルロースレーヨン紡績糸において周知慣用されている範囲の撚の回数のものに規定したものにすぎず、セルロースレーヨン紡績糸において、木材を原料としたセルロースレーヨンに代えて竹セルロースレーヨン繊維を採用する際、上記相違点のような単繊維の繊度、撚の回数のものとなすことは、先ず考慮することであって、しかも、竹の繊維素の長さは木材の繊維素の長さと同程度もしくは長いものもあることからすれば、それら繊度、撚の回数が、竹の繊維を原料とするセルロースレーヨンにおいて採用できないとする根拠はないから、当該竹セルロースレーヨン繊維糸において、本件発明のような、単繊維の繊度、撚の回数を組み合わせた竹セルロースレーヨン繊維糸とすることは当業者が容易に発明することができたものである。
そして、本件発明は、「張り及び腰に優れ、シワにもなりにくく、かつ麻繊維のような乾いた感触があるうえ、吸湿性、放湿性にも優れているセルロースレーヨン繊維糸及びこれを用いた布帛を提供することができる。」という明細書に記載のとおりの優れた作用・効果を発揮するとしているが、本件特許明細書段落【0016】、段落【0019】、段落【0022】記載されているような効果は、従来周知の竹セルロースレーヨン繊維自体が当然に有する効果あるいは竹セルロースレーヨン繊維を含む糸とすることにより当然に奏する効果を記載したにすぎない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲第5号証に記載の発明及び甲第1、第2号証、甲第6ないし第8号証に記載された発明並びに当該技術分野における周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

6-2-2.本件発明2について:
本件発明2は、本件発明1において、竹を原料とするセルロースレーヨン繊維が、ビスコースレーヨン、鋼アンモニアレーヨン、アセテート、トリアセテート及び精製セルロースから選ばれる少なくとも一種の繊維であることを発明を特定する事項(以下、「発明特定事項」という。)とするものであるが、本件特許の出願前に頒布された刊行物7ないし刊行物9からも明らかなように、「セルロースレーヨン繊維」には、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、アセテート、トリアセテート及び精製セルロース等のセルロース(繊維素)を用いた繊維が含まれることは技術常識である。
すなわち、刊行物7(摘示記載(g))には、レーヨンの製法として、ビスコース法と銅アンモニア法があることが記載され、刊行物8(摘示記載(h-2)、ないし(h-4))には、人絹糸(レーヨン)には銅アンモニア人絹、ビスコース人絹、酢酸繊維素人絹などがあることが開示され、刊行物9(摘示記載(i))には、セルロースレーヨン繊維としてビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、アセテート、トリアセテートおよび精製セルロースについての記載がある。従来の木材を原料とするセルロースに替えて、竹を原料とするセルロースを採用し、レーヨン繊維を製造する際に、本件発明2に限定されている繊維となすことに、何ら格別の創意も困難性もない。
してみれば、本件発明2は、本件発明1において、レーヨン繊維において当業者にとって技術的に極めて当たり前の技術的事項を特定したにすぎず、上記6-2-1.において記載したと同様の理由により当業者が容易に発明することができたものである。

6-2-3.本件発明3について:
本件発明3は、本件発明1において、「セルロースレーヨン繊維の断面が、凹凸面を有する変形異形断面である」ことを発明特定事項とするものであるが、セルロースレーヨン繊維の断面が、凹凸面を有する変形異形断面であることは、当業者に周知の技術的事項である。
すなわち、刊行物6(摘示記載(f-1)、(f-4))には、異形断面の再生繊維、刊行物8(摘示記載(h-3))には、ビスコース人絹が所謂異形断面を有すること、刊行物9(摘示記載(i))には、アセテート繊維の顕微鏡写真が載っており、アセテート繊維が凹凸を有する変形異形断面であること、また、刊行物11(摘示記載(k))には、紡糸するときの酸の液の組成でいろいろに変るレーヨンの切口、更に、刊行物12(摘示記載(l))には、特有の複雑な断面形態(第148頁第13〜15行、26〜27行参照)をつくるビスコースレーヨン未乾燥糸およびスキン部の横断面の写真、ビスコースレーヨンの特徴といえる凝固再生時のガス発生による空胞が見られる写真、クローバ状で非常に複雑な形状(第152頁第12〜13行)をしているジアセテートレーヨン糸を凍結割断した写真が示されている。
してみれば、本件発明3は、本件発明1において、セルロースレーヨン繊維の断面が凹凸面を有する変形異形断面であるという周知の事項を特定したにすぎず、上記6-2-1.において記載したと同様の理由により当業者が容易に発明することができたものである。

6-2-4.本件発明4について:
本件発明4は、本件発明1において、単繊維の繊度が1.5〜10デニールの範囲であることを発明特定事項とするものであるが、当該発明特定事項は、上記6-2-1.(2)において記載したと同様の理由により当業者が容易に発明することができたものである。

6-2-5.本件発明5について:
本件発明5は、本件発明1において、紡績糸が、梳毛紡績糸であることを発明特定事項とするものであるが、レーヨン・ステープルの紡績において梳毛式による紡績法及び梳毛紡績糸からなるレーヨン紡績糸は、当業者に周知の技術的事項にすぎない(摘示記載(j-2)、(j-3))。
してみれば、竹を原料とするセルロースレーヨン繊維を含む糸である紡績糸を、従来周知の梳毛紡績糸とすることに格別の困難性はなく、当業者が何ら発明力を要することなく、容易に想到できたものであるから、本件発明5は、上記6-2-1.において記載したと同様の理由により当業者が容易に発明することができたものである。

6-2-6.本件発明6について:
本件発明6は、本件発明1において、繊維長が30〜200mmの範囲であることを発明特定事項とするものであるが、刊行物1(摘示記載(a-3))には、綿紡式紡績法では長さ40mm内外の繊維を用いること、絹紡式紡績法では140〜200mm程度の比較的長い繊維を用いること、そして毛紡式紡績法では140mm内外であること、また、刊行物10(摘示記載(j-3)、(j-4))には、レーヨン・ステープルの紡績に関し、フランス式は11/2-4in(38〜100mm)の範囲の長さのものを取扱うこと、プラッドフォードでは最短4in(100mm)であって、レーヨンは8in(200mm)まで、時には9in(225mm)の長さのものが用いられるていること、さらには、刊行物4(摘示記載(d-1))、刊行物5(摘示記載(e-2)ないし(e-4))及び刊行物6(摘示記載(f-2))には、それぞれ、繊維長が38mm、81mm、および28〜72mmのレーヨンの紡績糸の実施例が記載されていることなどを勘案すると、紡績に用いるセルロースレーヨンステープルファイバーの繊維長が30〜200mmの範囲のものは、レーヨンの紡績において通常に用いられている範囲のものである。
してみれば、竹を原料とするセルロースレーヨン繊維を含む糸の単繊維に「繊維長が30〜200mmの範囲である」との限定を付すことは、レーヨン繊維において当業者にとって技術的に極めて当たり前の技術的事項を特定したにすぎず、格別のことではなく、本件発明6は、上記6-2-1.において記載したと同様の理由により当業者が容易に発明することができたものである。

6-2-7.本件発明7について:
本件発明7は、本件発明1において、実撚の範囲が500〜1200T/mとすることを発明特定事項とするものであるが、セルロースレーヨン繊維の紡績糸において、撚数を500〜1200T/mの範囲のものとすることは、上記6-2-1.(3)において記載したように本出願前通常に採用されている範囲のものである。
してみれば、竹を原料とするセルロースレーヨン繊維を含む糸の実撚の範囲として、500〜1200T/mとの限定を付すことは、格別のことではなく、本件発明7は、上記6-2-1.(3)において記載したのと同様の理由により当業者が容易に発明することができたものである。

6-2-8.本件発明8について:
本件発明8は、本件発明1において、竹を原料とするセルロースレーヨン繊維に、天然繊維、竹以外を原料とする再生繊維及び合成繊維を混合したものであることを発明特定事項とするものであるが、従来からレーヨン繊維は、天然繊維、他の再生繊維及び合成繊維と混紡することは、上記6-2-1.(1)において記載したように、当該分野における技術常識であるから、レーヨン繊維を竹セルロースレーヨン繊維とし、竹セルロースレーヨン繊維を含む紡績糸とすることに何ら格別の創意も困難性もなく、当業者が容易に想到し得ることである。
してみれば、レーヨン繊維である竹を原料とするセルロースレーヨン繊維に、天然繊維、竹以外を原料とする再生繊維及び合成繊維を混合(混紡)するようなことは、当業者が通常に行うことであり、本件発明8は、上記6-2-1.において記載したのと同様の理由により当業者が容易に発明することができたものである。

6-2-9.本件発明9について:
本件発明9は、請求項1〜8のいずれか1項に記載のセルロースレーヨン繊維糸を用いた織物又は編み物であることを発明特定事項とするものであるが、紡績糸を用いて織物、編み物などの布帛とすることは通常に行うことにすぎない。
そして、上記6-2-1.ないし6-2-8.に記載したように、本件発明1ないし8の竹セルロースレーヨン繊維糸はいずれも当業者が容易に発明できたものであるから、本件発明1ないし8に記載の竹セルロースレーヨン繊維糸を用いて織物または編み物とした本件発明9は、上記6-2-1.ないし6-2-8.において記載したのと同様の理由により当業者が容易に発明することができたものである。

7.むすび
以上のとおり、本件発明1ないし9は、甲第5号証、甲第1,第2、第6ないし第14号証の本件特許の特許出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件発明の特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-07 
結審通知日 2005-03-08 
審決日 2006-06-14 
出願番号 特願平11-290156
審決分類 P 1 113・ 856- ZB (D02G)
P 1 113・ 537- ZB (D02G)
P 1 113・ 121- ZB (D02G)
P 1 113・ 841- ZB (D02G)
P 1 113・ 832- ZB (D02G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 平井 裕彰  
特許庁審判長 石井 淑久
特許庁審判官 澤村 茂実
鈴木 由紀夫
登録日 2003-07-04 
登録番号 特許第3448526号(P3448526)
発明の名称 竹セルロースレーヨン繊維紡績糸及びこれを用いた布帛  
代理人 三中 英治  
代理人 三中 菊枝  
代理人 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ  
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