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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
管理番号 1140537
審判番号 不服2002-16495  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-29 
確定日 2006-07-27 
事件の表示 平成11年特許願第 7264号「黒糯米の焙煎超微粉末製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月25日出願公開、特開2000-201638〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年1月14日の出願であって、平成14年7月30日に拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年8月29日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、平成14年9月30日付で手続補正がされたものである。

2.平成14年9月30日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年9月30日付の手続補正を却下する。
[理由]
上記補正により、特許請求の範囲の請求項1は、「含水させた黒糯米の玄米を焙煎した後に超微粉末に粉砕して飲食品用素材にする黒糯米の焙煎微粉末製造方法であって、前記黒糯米の玄米を酵素温水に浸漬して含水させ、発芽寸前に取り出して焙煎することを特徴とした黒糯米の焙煎超微粉末製造方法。」から、「含水させた黒糯米の玄米を焙煎した後に超微粉末に粉砕して飲食品用素材にする黒糯米の焙煎微粉末製造方法であって、前記黒糯米の玄米を玄米酵素入りの酵素温水に浸漬して含水させ、発芽寸前に取り出して余剰水を水切りした後に、遠赤外線を照射しながら撹拌させて焙煎し、常温に戻して非加熱手段で粉砕して超微粉末にすることを特徴とした黒糯米の焙煎超微粉末製造方法。」と補正された。
上記補正は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「酵素温水」及び「焙煎し、」を、それぞれ「玄米酵素入りの酵素温水」及び「遠赤外線を照射しながら撹拌させて焙煎し、」と限定すると共に、「余剰水を水切りした後に」及び「常温に戻して非加熱手段で粉砕して超微粉末にする」という発明特定事項を直列的に付加するものであるが、前記「余剰水を水切りした後に」及び「常温に戻して」は、補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項を限定したものとはいえないので、上記補正は、特許法17条の2、4項2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当しない。
したがって、本件補正は、平成15年改正前特許法17条の2,4項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
なお、本件補正は、上記した理由により却下すべきものであるが、仮に却下されない場合に、本件補正が、特許法17条の2、4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法17条の2、5項において準用する同法126条4項の規定に適合するか)について念のため以下に検討する。
(独立特許要件について)
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明特定事項のうち、「玄米酵素入りの酵素温水」については、明細書の発明の詳細な説明の項に「前記黒糯米の玄米を酵素温水に浸漬して含水させ、・・・」(段落0005)、「また焙煎する黒糯米は、酵素温水中で含水させて発芽寸前の活性化状態にしたので、・・・」(段落0007)、「特に、酵素温水中に浸漬して含水させたことによって・・・」(段落0007)、「前記酵素温水としては、黒糯米と同種に属する玄米酵素入りの温水を用いることが望ましく・・・」(段落0009)、「水洗して水切りした黒糯米を、酵素を添加した温水に浸漬して・・・この酵素温水に対する浸漬は、・・・」(段落0015)、「酵素を添加した温水に浸漬して・・・この添加される酵素としては黒糯米に対して酵素作用を与え得る既存する各種の酵素の使用が可能であるが、黒糯米が有する本質的な性状を代えないためには、同種の玄米酵素の使用が最も望ましい。」(段落0018)、「酵素温水に浸漬して膨潤化した発芽寸前にある黒糯米・・・」(段落0019)、及び「この焙煎工程は、酵素温水による浸漬で活性化状態にした黒糯米・・・」(段落0020)との記載はあるものの、「玄米酵素入りの酵素温水」については具体的に開示されておらず不明である。
すなわち、玄米酵素とは、どのような玄米を、どのように処理して得られる酵素であるのか、明細書の発明の詳細な説明には具体的に何も記載されていない。
「玄米酵素」について、請求人は平成17年5月16日付意見書において、「『玄米酵素』は玄米を麹菌で発酵させたものであって、カルシウムその他を添加して最近では栄養補助食品として販売されております・・・」と主張している。
しかし、「玄米酵素」に関して、例えば、「『玄米酵素』は、玄米を麹菌によって発酵させ、大豆、カルシウムを加えたバランスの良い栄養補助食品です。」(株式会社玄米酵素HPhttp://www.genmaikoso.co.jp/index.html)、「『玄米酵素』とは、玄米の90%以上の栄養素が含まれている、米ぬかと胚芽にコウジ菌を加え、培養・発酵させて作られる、玄米発酵食品です。」(有限会社万成食品HP http://www.genmaikoso.jp/genmai.htm)、或いは「代謝機能の促進と玄米の栄養を吸収しやすくした『玄米酵素』は、玄米の栄養素である発芽と糖に純粋ハチミツを加え、麹菌を使用し発酵させ、体に必要な酵素を積極的に培養強化しました」(桜本舗HP http://www.k3.dion.ne.jp/~sakura_h/genmaikouso.htm)等と定義されているように、原料について、少なくとも「玄米」、「米ぬかと胚芽」或いは「発芽、糖、純水ハチミツ」と3種のものが挙げられており、本願補正発明に係る「玄米酵素」が、上記のどれに該当するのか、或いは上記のどれにも該当せず、別の意味に定義されるのか
不明である。(この点について、当審において合議体は、請求人に対して平成17年6月28日付で「『玄米酵素』という技術用語が、本願の出願時に当業者において広く使用されており、かつ『玄米酵素』という記載から本願の出願時に当業者が具体的な物を想定できることを裏付ける文献、資料等を提出することが必要である。」との審尋を通知したが、請求人からは何らの応答もなかった。)
そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本願補正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえず、或いは本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の「玄米酵素」との記載は明確であるとはいえないので、本願は、特許法36条4項或いは6項2号に規定する要件を満たしていない。
したがって、仮に本件補正が、特許法17条の2、4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとしても、本件補正は、特許法17条の2、5項において準用する同法126条4項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

3.本件明細書
平成14年9月30日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本件明細書は、出願当初の明細書(以下、「本件明細書」という。)であり、その特許請求の範囲の請求項1は次のとおり記載されている。
「含水させた黒糯米の玄米を焙煎した後に超微粉末に粉砕して飲食品用素材にする黒糯米の焙煎微粉末製造方法であって、前記黒糯米の玄米を酵素温水に浸漬して含水させ、発芽寸前に取り出して焙煎することを特徴とした黒糯米の焙煎超微粉末製造方法。」(以下、「本件発明」という。)

4.当審の拒絶理由
当審において平成17年3月7日付けで通知された特許法36条4項及び6項2号違反に関する拒絶理由のうち、「酵素」に関する記載不備の理由は次のとおりである。
「1.請求人は、平成14年9月30日付手続補正書にて、特許請求の範囲の請求項1に係る「酵素温水」を「玄米酵素入りの酵素温水」と補正してきた。しかるに、本願明細書には、「玄米酵素入りの酵素温水」に関し、段落【0008】、【0009】、【0015】ないし【0018】に記載はあるものの、玄米酵素入り酵素温水については具体的に開示されておらず不明である。すなわち、本願明細書には、温水温度及び浸漬時間について具体的に記載されているだけであって、どのような玄米を、どのように処理して得られる、どのような酵素であるのか、また、温水にどれくらいの量を添加するのかについて具体的に記載されていない。
そうすると、本願発明1及び2について、本願明細書には当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない、或いは、特許請求の範囲の記載は明確であるとはいえないので、特許法36条4項或いは6項2号の規定に違反している。」

5.判断
上記拒絶理由について検討する。
本件明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載の発明特定事項のうち、「酵素温水」に関しては、本件明細書の発明の詳細な説明の項に上記「2.」の「(独立特許要件)」の項に摘記したとおりの記載があるものの、「酵素温水」について当業者が容易に実施できる程度に記載されていない。
すなわち、本件明細書の発明の詳細な説明の項には、玄米の発芽を促進することができる酵素として唯1つ「玄米酵素」が例示されているが、該「玄米酵素」とは、どのような玄米を、どのように処理して得られる酵素であるのか具体的に何も記載されておらず、また、玄米の発芽作用を促進させることができる酵素として「玄米酵素」以外にどのような酵素が使用できるのか具体的に何も記載されていない。
「玄米酵素」については、例えば、「『玄米酵素』は、玄米を麹菌によって発酵させ、大豆、カルシウムを加えたバランスの良い栄養補助食品です。」(株式会社玄米酵素HPhttp://www.genmaikoso.co.jp/index.html)、「『玄米酵素』とは、玄米の90%以上の栄養素が含まれている、米ぬかと胚芽にコウジ菌を加え、培養・発酵させて作られる、玄米発酵食品です。」(有限会社万成食品HP http://www.genmaikoso.jp/genmai.htm)、或いは「代謝機能の促進と玄米の栄養を吸収しやすくした『玄米酵素』は、玄米の栄養素である発芽と糖に純粋ハチミツを加え、麹菌を使用し発酵させ、体に必要な酵素を積極的に培養強化しました」(桜本舗HP http://www.k3.dion.ne.jp/~sakura_h/genmaikouso.htm)等と定義されているように、原料について、少なくとも「玄米」、「米ぬかと胚芽」或いは「発芽、糖、純水ハチミツ」と3種のものが挙げられており、本願発明に係る「玄米酵素」が、上記のどれに該当するのか、或いは上記のどれにも該当せず、別の方法で調製された酵素であるのか不明である。(この点について、当審において合議体は、請求人に対して平成17年6月28日付で「『玄米酵素』という技術用語が、本願の出願時に当業者において広く使用されており、かつ『玄米酵素』という記載から本願の出願時に当業者が具体的な物を想定できることを裏付ける文献、資料等を提出することが必要である。」との審尋を通知したが、請求人からは何らの応答もなかった。)
してみると、出願時の技術常識を考慮したとしても、当業者は「玄米酵素」という記載から具体的な物を想定することができず、また、玄米の発芽作用を促進させることができる酵素として「玄米酵素」以外にどのような酵素が使用できるのか当業者は理解することができないので、本願明細書の発明の詳細な説明には、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。

6.むすび
したがって、本願は、特許法36条4項に規定する要件を満たしていない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-05-24 
結審通知日 2006-05-30 
審決日 2006-06-13 
出願番号 特願平11-7264
審決分類 P 1 8・ 575- WZ (A23L)
P 1 8・ 537- WZ (A23L)
P 1 8・ 536- WZ (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 俊生北村 弘樹  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 長井 啓子
河野 直樹
発明の名称 黒糯米の焙煎超微粉末製造方法  
代理人 大島 陽一  

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