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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1140779
審判番号 不服2002-9490  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-12-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-27 
確定日 2006-08-03 
事件の表示 特願2000-174746「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月18日出願公開、特開2001-347046〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成12年6月12日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成14年3月28日に手続補正書が提出され、その後、平成14年4月24日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月26日付で手続補正がなされたものである。



第二.平成14年6月26日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成14年6月26日付の手続補正を却下する。

[理由]
[1]補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は以下のように補正された。
「第1電力供給手段と、
該第1電力供給手段の電力供給を監視し、前記電力供給の異常の有無を判断する電力監視手段と、
該電力供給に異常が発生した場合に、補助的電力を発生させる第2電力供給手段と、
前記電力供給に異常が発生した場合に、記憶情報の保持が保証されない第1記憶手段と、
前記電力供給に異常が発生した場合に、前記第2電力供給手段からの補助的電力の供給によって記憶情報の保持が補償される第2記憶手段と、
前記電力供給に異常が発生した場合に、前記第1記憶手段の前記記憶情報を前記第2記憶手段に移管する情報移管手段と、
各々特定の個数の賞球数が定められ、賞球払出の対象となる各入賞口が配設された遊技盤と、
前記各入賞口に対応して設けられて入賞球を検知する入賞球検知部と、
遊技機の制御を司る主制御部と、
前記主制御部に従って作動し、賞球の払い出しに関する制御を行う賞球払出制御部と、
前記賞球払出制御部による賞球の払い出しを検知する払出賞球検知機構と
を備え、
前記主制御部は、
前記入賞球検知部からの入賞球検知信号、および前記特定の個数の賞球数に基づいて払い出すべき賞球個数の情報である賞球個数情報を生成する賞球個数情報生成手段と、
前記入賞球検知部からの入賞球検知信号に基づいて払い出すべき賞球個数を総賞球個数に加算する賞球個数加算手段、および前記払出検知機構からの払出球検知信号に基づいて払い出された賞球個数を前記総賞球個数から減算する賞球個数減算手段を有する賞球払出管理手段と、
を具備し、
前記賞球払出制御部は、前記賞球個数情報に基づいて賞球払出機構に所定数の賞球の払い出しを行わせ、
前記総賞球個数は、第2記憶手段に記憶され、
前記賞球払出制御部は、前記主制御部から送信された前記賞球個数情報が前記特定の個数の賞球数と合致しない払出個数を指定する情報であった場合に、賞球の払い出しを禁止することにより、
入賞球再検知処理の機構を不要とし、
前記電力供給に異常が発生した場合に、前記第1電力供給手段から電源遮断信号を出力させ、電源スイッチのオフにより正常に終了するときは終了信号を発生させて前記電源遮断信号の出力を禁止することを特徴とする遊技機。」


[2].補正要件(目的)の検討
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明に、補正前の請求項3の内容を付加したものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。


[3].補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

<1>.引用刊行物記載事項
原査定の拒絶理由に引用された特開平6-285231号公報、さらに、周知例として原査定にて引用された特開平9-122322号公報、実願平4-89098号(実開平5-91778号)のマイクロフィルム、特開平9-155047号公報及び、当審において周知事項を例示するための特開平4-303225号公報、特開平8-229192号公報には、以下の事項が記載されている。

(A).特開平6-285231号公報(以下「刊行物A」という)
(A-1).「【0002】 【従来の技術】従来の遊技機においては、遊技機の電源がONの場合には、遊技状態や遊技中の各種の情報は、遊技機内の各制御装置内に一時的に記憶・保持されている。
【0003】【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の遊技機においては、遊技機の電源がOFFになると、電源ON時に遊技機内に一時的に記憶保持されていた各種の情報は消滅するような構成となっており、再度電源をONにした場合に、電源OFF前の遊技状態から遊技を再開することはできなかった。そのため、大当たり中あるいは確率が高く変動している期間中に停電が生じたりすると、遊技者にとって有利なその遊技状態に制御している制御情報が消滅し遊技者にとって有利なその遊技状態が消滅してしまう場合があった。また、可変表示装置の可変動作中に停電した場合には、始動記憶数や抽出乱数値が消滅するので、大当たり乱数値を抽出していても無効となってしまい、遊技者に非常に不利となる場合もあった。そして、パチンコホールの閉店間際にラッキーナンバー大当たり(大当たり終了後、次の大当たりが発生する確率が通常より高められる大当たり)が発生した場合でもパチンコホールの閉店時間になれば遊技を終了せざるを得ず、折角の特典を有効に享受できない、という問題点もあった。本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、電源OFF時の遊技状態等を記憶し、電源ON時に電源OFF前の遊技状態等から遊技を再開可能な遊技機を提供することを目的とする。」
(A-2).【0006】【実施例】以下、本発明の実施例を図面にもとづいて説明する。本発明の一実施例であるパチンコ遊技機1の構成を図1に、このパチンコ遊技機1における遊技盤の構成を図2に、背面構成を図3に、それぞれ示す。パチンコ遊技機1は、図に示すように、遊技盤2を備え、遊技盤2の表面にはガイドレール3で囲まれた遊技部2Aが形成され、遊技部2A内の中央上部寄りに特図記憶表示器25Aを含む可変表示装置6が、この可変表示装置6を挟む左右両側には普通図柄ゲート27,27が、可変表示装置6の下方には始動口7Hと普通図柄表示器29と普図記憶表示器25Bとを含む普通電動役物7が、それぞれ配設され、その周囲に適宜一般入賞口4が配設されて構成されている。」
(A-4).「【0012】また、このパチンコ遊技機1には、カードによる球貸しが可能であること(カードを受け付け可能な状態であること)を表示する球貸有効表示器16と、上記のカード挿入孔12に球貸用カードが挿入された場合にその残存度数を表示するカード残高表示器13と、1回のスイッチ操作により所定数の球貸を行わせる球貸制御信号を内蔵する球排出装置19(後述)に発するための球貸スイッチ14と、遊技の終了時等にカードの返却を行うためのカード返却スイッチ24と、球貸しにより球排出装置19(図3)から排出された遊技球あるいは賞球を受けるための上皿9および下皿15と、この上皿9上の遊技球を上記遊技部2Aに向け1個宛発射可能な遊技媒体発射手段である発射装置11(図3)と、遊技者がこの発射装置11を操作するための操作ハンドル10と、が設けられている。
【0013】また、図3に示すように、このパチンコ遊技機1の裏側には、賞球タンク28と、球排出装置19と、上記の可変表示装置6や変動入賞装置8を制御する遊技盤制御装置17と、上記球排出装置19を制御する排出制御装置18と、上記発射装置11を制御する発射制御装置21と、球貸し動作を制御するための球貸制御装置22と、後述する確率設定変更手段である確率設定装置20が設けられている。」
(A-5).「【0021】この割込信号とは、図4における停電検出回路37から役物用CPUに出力される信号で、電源電圧低下信号に相当する。また、停電検出回路37は停電検出手段に相当している。この停電検出回路37には、電源回路36が接続されており、遊技機に供給される外部電源の供給状態を検出して電源供給状態検出信号を上記の停電検出回路37に出力している。この場合、電源回路36は電源供給状態検出手段に相当している。電源供給状態検出信号を受け取った停電検出回路37は、その電源供給状態検出信号に基づいて電源電圧の低下を検出し、電源電圧低下信号である割込信号を出力するのである。
【0022】上記の割込信号が出力された場合、瞬時に、バックアップ処理サブルーチン(ステップS3)では、図6に示すように、処理ナンバーを記憶し(ステップS21)、次いで大当たり処理データを記憶し(ステップS22)、次いで確率変動データを記憶し(ステップS23)、次いで乱数処理データを記憶し(ステップS24)、次いで変動処理データを記憶し(ステップS25)、次いで管理データを記憶し(ステップS26)、次いでベース値を記憶する(ステップS27)。
【0023】上記において、処理ナンバーとは、後述する分岐処理の番号である。また、大当たり処理データとは、大当たり図柄、Vフラグ、入賞球のカウント数、継続回数等である。確率変動データとは、普通図柄のアップカウンタの値、特別図柄のアップカウンタの値等をいう。また、乱数処理データとは、乱数更新値をいう。変動処理データとは、特別図柄や普通図柄の始動記憶数、抽出乱数値等である。また、管理データとは、始動回数、大当たり回数等、遊技店としてのデータとなる値をいう。ベース値とは、発射球100に対する賞球数の割合をいい、遊技店側の営業指標となる値である。これらのデータは、重要なものから順に記憶される。
【0024】これらの各種のデータは、遊技機の電源がONの状態では、図4におけるRAM32に格納されているが、割込信号の発生と同時に、役物用CPU30の指令により、図4におけるEEPROM33に記憶される。EEPROMとは、電気的に書込消去可能なプログラム可能なROMであり、上記の割込信号の出力毎に書き換えられ、情報を記憶・保持することができ、電源がOFFとなっても電源が再度ONとなれば記憶された情報を読み出すことができる。このEEPROM33は、遊技状態記憶保持手段に相当している。」
(A-6).以上の記載事項から、刊行物Aには、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
「表側には、可変表示装置6、始動口7H、普通電動役物7、一般入賞口等が配設された遊技盤2、球排出装置19から排出された遊技球あるいは賞球を受けるための上皿9および下皿15、操作ハンドル10、等が配設され、裏側には、賞球タンク28、球排出装置19、当該可変表示装置6、変動入賞装置8を制御する遊技盤制御装置17、当該球排出装置19を制御する排出制御装置18等が配設されたパチンコ機において、
停電検出回路37を配設し、当該停電検出回路37が停電等の電源電圧の低下を検出したとき、RAM32に格納されている、処理ナンバー、大当たり処理データ、変動処理データ管理データ、ベース値等の遊技状態を、重要なものから順にEEPROM33に記憶して、電源ON時に電源OFF前の遊技状態等から遊技を再開可能な遊技機を提供するパチンコ機」、

(B).特開平9-122322号公報(以下「周知例B」という)
(B-1).「【0024】次に、賞品球の払出の制御例を図11、図12の制御フローを参照して説明する。尚、このフローは処理過程を示すものであって、実際のプログラムは処理時間を考慮して、割り込み処理等を介して行う。電源投入と同時に、第1、第2特定球カウンタを初期化し(S1)、ステップ2で、払出賞品球数が少ないときの出現回数を計数する異常積算カウンタF、及び払出賞品球数の不足の累計数のエラーカウンタEを初期化する。そして、第1特定入賞口114aからのセーフ球5aが有るか否かを特定球検出器115aで検出し、検出したときには、第1特定球カウンタに1をプラスする(S4)。次に、第2入賞口114bからのセーフ球5aを特定球検出器115bで検出し、検出のときには第2特定球カウンタに1をプラスする(S6)。尚、前記ステップ1及びステップ3〜7までは主制御装置で行うと共に、特定カウンタの値は払出球制御装置側にも伝達する。
【0025】次のステップ7では、セーフ球検出器125がセーフ球5aを検知したかを判断して、検出しないときにはセーフ球がない状態であり、賞品球の排出を行わないためステップ3へ戻る。反対に、セーフ球を検出した場合には、賞品球払出装置1を介して払出ができる条件であるか、即ち、待機球検出器11a、11bで払出す賞品球があり、賞品球満杯検出器91で上皿21に賞品球の払出ができる状態であるかを判定し(S7a)、払出不可のときには、その旨を表示して、発射モータを不能としてて遊技を停止する(S7b)。払出し不可能条件が解除された後は、通常状態とする。反対に、払出し可能であるときには、セーフ球排出装置120を介してセーフ球5aの排出を行うため、電磁石128をT1(300mS)時間の間、励磁した後、非励磁としてセーフ球5aを1個を排出する(S8、図10のタイムチャート参照)。その後、セーフ球排出確認検出器134でセーフ球は排出されたかを確認する(S9)。しかしながら、排出の確認がとれないときには、前記電磁石128の励磁を、更に、2回行って、それでもセーフ球排出確認検出器134でセーフ球を検出しないときには、セーフ球排出装置120の異常として、エラー表示器86に「5」の数字を点灯して、遊技を停止する(S10)。
【0026】次に、ステップ11〜17では、セーフ球5aが特定か普通入賞口からのものであるかの判別を行い、払出す賞品球数を決定する。そこで、先ず、第1特定球カウンタがゼロであるかを判定し、ゼロでないときには、第1特定セーフ球として、払出個数をA(13個:球切回転体7a、7bの回転数をNa=3回、Nb=2回)にセットし(S12)、且つ前記第1カウンタの値から1を減算してステップ20へ進む(S13)。一方、第1特定球がゼロのときには、第2特定球が存在するかを判定し(14)、存在しているときには、払出個数をB(15個:球切回転体7a、7bの回転数をNa=3回、Nb=3回)にセットし(S15)、且つ前記第2カウンタの値から1を減算してステップ20へ進む(S16)。尚、第1、2特定カウンタが何れもゼロであるときには、セーフ球は普通入賞口からのものであるから、払出個数をR(5個:球切回転体7a、7bの回転数をNa=1回、Nb=1回)にセットし(S17)、ステップ20へ進む。尚、第2特定球を第1特定球に対して優先させて払出を行ってもよい。その時には、払出数の多い順に賞品球が払い出されることとなり、多くの賞品球が早い時期に払い出されることとなって、遊技者に満足感を与えることができる。前記のように、特定入賞口に対しては各々カウンタを設けてあるが、複数設置の普通入賞口に対してはカウンタを設けてないが、払出す賞品球数の区別が可能であり、カウンタを設けない経済性と制御のし易さの効果を奏する。」

(C).実開平5-91778号公報(以下「周知例C」という)、
(C-1).「【要約】【目的】 遊技機に関し、特に入賞に対して払い出しに時間遅れがあったとしても、入賞数及びこれから先の払い出し遊技球数が遊技客に認識できる。
【構成】 入賞孔4への入賞を検知する入賞検知装置5、遊技球を払い出す払い出し装置6、入賞検知装置5から入賞信号によって加算し、払い出し装置6の作動信号8によって減算して、未払い遊技球数を演算する演算装置9、この演算装置9により演算された未払い遊技球数をデジタル表示する表示装置3とを設けた。」

(D).特開平9-155047号公報(以下「周知例D」という)
(D-1).「【要約】【課題】 入力される制御信号の異常を判別し、異常を判別した場合に、制御信号を無効とするパチンコ機の制御装置を提供すること。
【解決手段】 入力される制御信号(SW2の信号)の異常を判別する異常判別手段と、該異常判別手段が異常を判別した場合に、制御信号を無効にする制御信号無効手段とにより構成された異常信号処理手段を設ける。」
(D-2).「【0002】【従来の技術】本出願人は、先に、特願平7-72434号として、パチンコ遊技機に配備された入賞装置並びに図柄表示装置を駆動制御するパチンコ機の制御装置をマイクロコンピユータにより構成し、マイクロコンピユータが備えたデータ記憶装置内に記憶保持されたパチンコ遊技態様に関するデータが異常データである場合に、異常データを無効とする異常データ無効化手段をマイクロコンピユータが備えた記憶装置に設けたパチンコ機における異常動作防止装置を提案している。
【0003】このものによれば、データ記憶装置内に記憶保持されたパチンコ遊技態様に関するデータが異常データである場合に、異常データを無効とするので、異常データに起因するパチンコ機における異常動作を防止することができる。」

(E).特開平4-303225号公報(以下「周知例E」という) (E-1).「【0001】【発明の詳細な説明】【産業上の利用分野】本発明は、マイクロ・コンピュータを応用した測定器(以下、「電子応用測定器」という。)の電源断監視装置に関するものであって、とくに、主電源の断が、停電(外的要因)によるものか、電子応用測定器の操作者による電源スイッチの切断(人的要因)によるものかを速やかに識別し、電源断の要因ごとに異なる主電源断割込み処理ルーチンの変更を容易にし、割込み処理に許容される時間を引き延ばした、電子応用測定器に組み込まれる電源断監視装置に関する。」
(E-2).「【0003】そのために、主電源が断になったときの測定データや操作箇所の設定状態等所定の情報を測定器内部のメモリ(通常電池でバックアップされている)或は外部記憶装置に瞬時に退避する必要がある。一般に電子応用測定器の場合、人的要因と外的要因とでは退避すべき情報の種類や量が異なる。そのために、主電源の断が人的要因によるものか、外的要因によるものかによって、主電源断後の割込み処理ルーチンを変える必要がある。」、

(F).特開平8-229192号公報(以下「周知例F」という) (F-1).「【0044】この状態で、停電が発生して電源回路54から電力が供給されなくなった場合には、コンデンサ58から所定期間(たとえば10〜60分程度)RAM59に電力が供給され、RAM59の記憶データが消去されないように保持される。」(第6頁右欄第38〜42行)
(F-2).「【0048】図1で説明したパチンコ遊技機は第1種(フィーバータイプ)の機種のパチンコ遊技機である。この第1種のパチンコ遊技機の場合には、前記RAM59に記憶する記憶内容として、たとえば、後述する特別図柄プロセスフラグ値,プロセスタイマ値,大当りフラグ,確変中フラグ,始動入賞記憶値,通過口14を通過した通過玉記憶値,図3,図5に示した各種ランダムカウンタの値(現在値および抽出値),可変入賞球装置10に入賞した入賞玉のカウント値,大当り制御中におけるその大当りが発生したときの可変表示装置4の表示結果,大当り制御中における可変入賞球装置10の繰返し継続制御の実行回数,入賞玉の未処理玉数等である。」(第7頁右欄第9〜20行)

<2>.引用発明と本願補正発明との対比、判断
(1).発明特定事項の対応関係
(i).引用発明における「電源回路」、「停電検出回路」、「RAM」、「遊技盤」、一般入賞口」、「排出制御装置」、「球排出装置」は、本願補正発明における「第1供給手段」、「電力監視手段」、「第1記憶手段」、「遊技盤」、「入賞口」、「賞球払出制御部」、「払出賞球検知機構」に対応する。
(ii).引用発明における「EEPROM」と、本願補正発明における「第2記憶手段」とは、「停電時記憶保持手段」で共通する。
(2).一致点
引用発明に示される様な、入賞口、球排出装置19から排出された賞球、及び、当該賞球を受けるための上皿9および下皿15を備えるパチンコ機においては、払出個数が個別に設定されている入賞口への入賞を検知し、当該検知信号にて、個別の払出個数を加算し、賞球払出手段にて払出した賞球個数を当該加算値から減算して、賞球を払出すこと、及びその為の手段を備えていることは、前記周知例B、Cに示される様に周知の事項であることを勘案して、引用発明と本願補正発明とを比較すると、次の点で一致する。
すなわち、
第1電力供給手段と、
該第1電力供給手段の電力供給を監視し、前記電力供給の異常の有無を判断する電力監視手段と、
前記電力供給に異常が発生した場合に、記憶情報の保持が保証されない第1記憶手段と、
前記電力供給に異常が発生した場合に、記憶情報の保持が補償される停電時記憶保持手段と、
前記電力供給に異常が発生した場合に、前記第1記憶手段の前記記憶情報を停電時記憶保持手段に移管する情報移管手段と、
各々特定の個数の賞球数が定められ、賞球払出の対象となる各入賞口が配設された遊技盤と、
前記各入賞口に対応して設けられて入賞球を検知する入賞球検知部と、
賞球の払い出しに関する制御を行う賞球払出制御部と、
前記賞球払出制御部による賞球の払い出しを検知する払出賞球検知機構と
を備え、
前記入賞球検知部からの入賞球検知信号、および前記特定の個数の賞球数に基づいて払い出すべき賞球個数の情報である賞球個数情報を生成する賞球個数情報生成手段と、
前記入賞球検知部からの入賞球検知信号に基づいて払い出すべき賞球個数を総賞球個数に加算する賞球個数加算手段、および前記払出検知機構からの払出球検知信号に基づいて払い出された賞球個数を前記総賞球個数から減算する賞球個数減算手段を有する賞球払出管理手段と、
を具備し、
前記賞球払出制御部は、前記賞球個数情報に基づいて賞球払出機構に所定数の賞球の払い出しを行わせる遊技機。
(3).相違点
(ア).「停電時記憶保持手段」に関して、本願補正発明は、電力供給に異常が発生した場合に、補助的電力を発生させる第2電力供給手段にて記憶保持される記憶手段であり、しかも、当該記憶対象として総賞球個数であるのに対し、引用発明は、補助電力にて保持されない「EEPROM」であり、記憶対象が遊技状態である点
(イ).遊技制御部に関して、本願補正発明は、主制御部に、賞球個数情報生成手段、賞球個数加算手段、賞球払出管理手段を配設しているのに対し、引用発明は、入賞球検知信号に対応する特定の個数を表す賞球個数を求め、賞球払出に応じて賞球個数を減算する為の手段を具備するものではあるが、当該手段の具体的配設に関しては記載していない点
(ウ).本願補正発明は、賞球払出制御部が受け取った賞球個数信号が特定の個数の賞球数と合致しない場合には、賞球の払い出しを禁止するのに対し、引用発明は、当該賞球の払い出しに関しては記載していない点
(エ).本願補正発明は、電力供給に異常が発生した場合に、前記第1電力供給手段から電源遮断信号を出力させ、電源スイッチのオフにより正常に終了するときは終了信号を発生させて前記電源遮断信号の出力を禁止しているのに対し、引用発明は、電源スイッチのオン、オフと停電などの電力供給異常との関係については記載されていない点、
(4).相違点の検討
(ア).相違点(ア)について、
停電時記憶保持手段に関して、電力供給に異常が発生した場合の記憶保持手段として補助電源によるRAMバックアップ手段、及びその際の記憶対象として、総賞球個数とすることは、周知例Fに示される様にパチンコ遊技機においては周知の停電対策手段であるから、引用発明における停電対策手段としての記憶保持手段であるEEPROMに替えて、当該記憶保持対象として、周知の記憶対対象である総賞球個数とした補助電源によるRAMバックアップ手段を代替採用することは、当業者が適宜為し得る程度の設計的変更である。
したがって、当該相違点は格別のものではない。
(イ).相違点(イ)について、
遊技制御に関する各手段を何処に配設するかは、遊技機が具備する各種装置の配置を考慮して適宜配設可能であり、主制御部に賞球個数情報生成手段、賞球個数加算手段、賞球払出管理手段を配設したことによる格別の作用効果も認められないから、当該相違点は格別のものではない。
(ウ).相違点(ウ)について、
パチンコ機の制御装置において、入力信号が異常である場合に当該信号を無効にすることは、周知例Dに示される様に周知事項であり、しかも、払出制御部に入力される信号が特定の個数の賞球数と相違する場合には異常入力信号であることは明らかであるから、上記周知の異常対応手段を採用することは当業者が容易に想到できることであり、当該異常対応手段を採用することにより、払出が禁止されることとなることも明らかである、
したがって、当該相違点は格別のものではない。
(エ).相違点(エ)について、
電源スイッチのオフによる電源電圧低下の場合と、停電による電源電圧の低下の場合とを識別して、前者の場合と後者の場合とで相違する処理を行わせることは、前記周知例Eに示される様に周知の事項であるから、電源スイッチのオフの場合に、バックアップ処理を行わせない様にすることは当業者が適宜為し得る程度の事であり、しかも、そのための構成も格別な点は認められない。
したがって、当該相違点は格別のものではない。
(5).まとめ
上記相違点を総合的に判断しても格別の作用効果も、構成の困難性も認められないから、本願補正発明は、刊行物Aに記載された発明、及び周知慣用事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。



第三.本願発明について
[1].本願発明
平成14年6月26日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成14年3月28日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 第1電力供給手段と、
該第1電力供給手段の電力供給を監視し、前記電力供給の異常の有無を判断する電力監視手段と、
該電力供給に異常が発生した場合に、補助的電力を発生させる第2電力供給手段と、
前記電力供給に異常が発生した場合に、記憶情報の保持が補償されない第1記憶手段と、
前記電力供給に異常が発生した場合に、前記第2電力供給手段からの補助的電力の供給によって記憶情報の保持が補償される第2記憶手段と、
前記電力供給に異常が発生した場合に、前記第1記憶手段の前記記憶情報を前記第2記憶手段に移管する情報移管手段と、
各々特定の個数の賞球数が定められ、賞球払出の対象となる各入賞口が配設された遊技盤と、
前記各入賞口に対応して設けられて入賞球を検知する入賞球検知部と、
遊技機の制御を司る主制御部と、
前記主制御部に従って作動し、賞球の払い出しに関する制御を行う賞球払出制御部と、
前記賞球払出制御部による賞球の払い出しを検知する払出賞球検知機構と、
を備え、
前記主制御部は、
前記入賞球検知部からの入賞球検知信号、および前記特定の個数の賞球数に基づいて払い出すべき賞球個数の情報である賞球個数情報を生成する賞球個数情報生成手段と、
前記入賞球検知部からの入賞球検知信号に基づいて払い出すべき賞球個数を総賞球個数に加算する賞球個数加算手段、および前記払出検知機構からの払出球検知信号に基づいて払い出された賞球個数を前記総賞球個数から減算する賞球個数減算手段を有する賞球払出管理手段と、
を具備し、
前記賞球払出制御部は、前記賞球個数情報に基づいて賞球払出機構に所定数の賞球の払い出しを行わせ、
前記総賞球個数は、第2記憶手段に記憶され、
前記賞球払出制御部は、前記主制御部から送信された前記賞球個数情報が前記特定の個数の賞球数と合致しない払出個数を指定する情報であった場合に、賞球の払い出しを禁止することにより、
入賞球再検知処理の機構を不要としたことを特徴とする遊技機」


[2].引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物、および、周知事項の記載事項は、前記「第二.[3].<1>」に記載したとおりである。

[3].引用発明と本願発明との対比
本願発明は、前記「第二.[3]」で検討した本願補正発明から「電力供給に異常が発生した場合に、前記第1電力供給手段から電源遮断信号を出力させ、電源スイッチのオフにより正常に終了するときは終了信号を発生させて前記電源遮断信号の出力を禁止する」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.[3].<2>」に記載したとおり、刊行物Aに記載された発明、及び、周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物Aに記載された発明、及び、周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

[4].むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物Aに記載された発明、及び、周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-08 
結審通知日 2006-06-08 
審決日 2006-06-22 
出願番号 特願2000-174746(P2000-174746)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 一宮 誠瀬津 太朗  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 塩崎 進
川島 陵司
発明の名称 遊技機  
代理人 菅原 正倫  

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