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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1140932 |
審判番号 | 不服2004-17147 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-04-23 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-08-18 |
確定日 | 2006-08-11 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第244884号「経口適用のための服用形」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 4月23日出願公開、特開平 8-104629〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成7年9月22日(パリ条約による優先権主張 1994年9月22日(DE)ドイツ連邦共和国)の出願であって、平成16年5月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月18日に審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成16年8月18日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年8月18日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 上記補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「R-チオクト酸と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、水酸化アンモニウム、塩基性アミノ酸、例えばオルニチン、シスチン、メチオニン、アルギニン及びリジン、式:NR1R2R3[式中、基R1、R2及びR3は同一又は異なるものであり、水素、C1-C4-アルキル又はC1-C4-オキシアルキルを表わす]のアミン、C-原子数2〜6のアルキレン鎖を有するアルキレンジアミン、例えばエチレンジアミンまたはヘキサメチレンテトラミン、ピロリドン、モルホリン;N-メチルグルカミン、クレアチン及びトロメタモールから選択された塩基とから成る固体塩を含有する、経口適用のための服用形。」 と補正された。 上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「R-チオクト酸の固体塩」を、「R-チオクト酸と、アルカリ金属・・・及びトロメタモールから選択された塩基とから成る固体塩」に変更するものであって、特許法17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、上記補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用され、本出願前(優先日前)に頒布された刊行物である引用文献1には、次の事項が記載されている。 <引用文献1> 特開平6-16543号公報 「チオクト酸(α-リポ酸)、メスナまたはフルピルチンマレイン酸塩を含有するタブレット、顆粒またはペレットの形の医薬製剤において、作用物質含有率が45重量%より多いことを特徴とする医薬製剤。」 (請求項1) 「本発明は単にラセミの形だけでなく、むしろ同様に純粋の(R)-ないしは(S)-チオクト酸ならびに(R)および(S)-チオクト酸の任意の組成を有する混合物に関する。」 (段落【0002】) 「現在市販のチオクト酸含有のタブレット調剤は515mgでのタブレットでチオクト酸最大200mgを含有する。患者側の服用を容易にするためかつ受容量向上のためにはより小さな寸法で高濃度のチオクト酸タブレットのための必要が生じる。」 (段落【0003】) 「このような重い単一重量を有するタブレットはその大きさのために単に呑みにくいだけで受容の低下になる。その高配量の固体薬剤形中では助剤成分を減らすことが必要とされる。」 (段落【0006】) これらの記載によれば、引用文献1には、「R-チオクト酸を含有するタブレット、顆粒またはペレットの形の、作用物質含有率が45重量%より多い、患者が服用するための医薬製剤」の発明が記載されているものと認められる。 (3)対比・判断 本願補正発明と引用文献1に記載の発明とを対比すると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 本願補正発明も引用文献1に記載された発明も、ともに、「R-チオクト酸を含有する固体形状の経口適用のための服用形」である点。 <相違点> 有効成分であるR-チオクト酸の化学的形態に関し、本願補正発明では同形態が「R-チオクト酸と、アルカリ金属・・・及びトロメタモールから選択された塩基とから成る固体塩」であるのに対し、引用文献1に記載された発明では同形態が(遊離の)「R-チオクト酸」である点。 そこで、上記相違点について以下に検討する。 薬理作用を有する化学物質を医薬製剤とするにあたり、これを遊離の形で用いるほか、製薬学的に使用可能な塩(トロメタモールをはじめとする各種塩基との塩など)の形で用いることは当業界で広く行われており、R-チオクト酸もその例外でない(必要ならば、特開平3-188021号公報の10頁右下欄8〜16行及び11頁右下欄3行〜12頁左上欄5行、特開平5-213745号公報の段落【0007】及び【0011】、並びに特開平3-169813号公報の特許請求の範囲第1項及び3頁左下欄8行〜右下欄6行を参照)。 このような当業界における技術常識を考慮するならば、引用文献1に記載された固体形状の経口医薬製剤に配合されるR-チオクト酸につき、その安定性や製剤のしやすさ、バイオアベイラビリティー等の観点から製剤に好ましい形態のものを選択し、上記遊離形のみならず各種塩基との塩の形態にすることは、当業者が容易になし得ることと言わざるを得ず、また固体製剤において塩の形態を選択したことにより格別顕著な作用効果を奏するとも言えない。 したがって、本願補正発明は、引用文献1に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、平成16年8月18日付け手続補正書による補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項に規定する要件を満たしていないから、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 3.本件審判の請求について (1)本願発明 平成16年8月18日付け手続補正書による補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年4月28日付け手続補正書により補正された請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「R-チオクト酸の固体塩を含有する服用形。」 (2)引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。 (3)本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明における「R-チオクト酸と、アルカリ金属・・・及びトロメタモールから選択された塩基とから成る固体塩」について、「アルカリ金属・・・及びトロメタモールから選択された塩基」という特定事項を有さないものである。 そうすると、本願発明を特定する事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(3)に記載したとおり、引用文献1に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用文献1に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-03-15 |
結審通知日 | 2005-03-16 |
審決日 | 2005-03-29 |
出願番号 | 特願平7-244884 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加藤 浩、瀬下 浩一 |
特許庁審判長 |
森田 ひとみ |
特許庁審判官 |
弘實 謙二 中野 孝一 |
発明の名称 | 経口適用のための服用形 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | ラインハルト・アインゼル |
代理人 | 久野 琢也 |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 矢野 敏雄 |