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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L |
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管理番号 | 1141400 |
異議申立番号 | 異議2003-72470 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-11-01 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-10-07 |
確定日 | 2006-05-26 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3393955号「薄板状ワーク搬送用ハンド」の請求項1〜5に係る発明についての特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3393955号の請求項1〜5に係る発明についての特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件特許第3393955号の請求項1〜5に係る発明についての出願は、平成7年4月18日に特許出願され、平成15年1月31日にそれらの発明について特許権の設定登録がなされた。 これに対して、平成15年10月7日に申立人東谷満より請求項1〜5に係る発明についての特許に対して特許異議の申立てがなされ、平成16年4月13日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年6月21日に意見書の提出及び訂正請求がなされた。 2.訂正の適否 (1)訂正の内容 〈訂正事項1〉 設定登録時の願書に添付した明細書又は図面(以下、「本件特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1に記載される、 「【請求項1】 薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを水平方向に移動して前記薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ワーク搬送用ハンドにおいて、 薄板状ではあるが主として水平面積が大で重量がある薄板状ワークの搬送に使用する薄板状ハンドであって、 前記薄板状ハンドをカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成して前記薄板状ハンドの材質の比重を小にし軽量にすると共に、前記熱硬化性部材を加圧・圧締成形方法を使用して加工歪みのない平面状態に形成することによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置しないときの薄板状ハンドの両先端部の自重による撓み量を小にし、 次に、前記自重による撓み量を小にした 薄板状ハンドの長手方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数よりも大にして、前記長手方向の機械的強度を大にすることによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置したときの薄板状ハンド先端の撓み量を十分に小にする薄板状ワーク搬送用ハンド。」を、 「【請求項1】 薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを水平方向に移動して前記薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ワーク搬送用ハンドにおいて、 薄板状ではあるが主として水平面積が大で重量がある薄板状ワークの搬送に使用する薄板状ハンドであって、 前記薄板状ハンドをカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成して前記薄板状ハンドの材質の比重を小にすると共に、前記熱硬化性部材を加圧・圧締成形方法を使用して加工歪みのない平面状態に形成することによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置しないときの薄板状ハンドの両先端部の自重による撓み量を小にし、 次に、前記自重による撓み量を小にしたハンドの長手方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材よりも多く使用して、薄板状ハンドの長手方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数よりも大にして、前記長手方向の機械的強度を大にすることによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置したときの薄板状ハンド先端の撓み量を十分に小にする薄板状ワーク搬送用ハンド。」と訂正する。 〈訂正事項2〉 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載される、 「【請求項2】 薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを水平方向に移動して前記薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ワーク搬送用ハンドにおいて、 上下間隔が狭く多数の上下方向に多段に棚を設けた棚状のカセットに対して水平方向に接近および離間して、薄板状ではあるが主として水平面積が大で重量がある薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ハンドであって、 前記薄板状ハンドをカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成して前記薄板状ハンドの材質の比重を小にし軽量にすると共に、前記熱硬化性部材を加圧・圧締成形方法を使用して加工歪みのない平面状態に形成することによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置しないときの薄板状ハンドの両先端部の自重による撓み量を小にし、 次に、前記自重による撓み量を小にした 薄板状ハンドの長手方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数よりも大にして、前記長手方向の機械的強度を大にすることによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置したときの薄板状ハンド先端の撓み量を十分に小にする薄板状ワーク搬送用ハンド。」を、 「【請求項2】 薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを水平方向に移動して前記薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ワーク搬送用ハンドにおいて、 上下間隔が狭く多数の上下方向に多段に棚を設けた棚状のカセットに対して水平方向に接近および離間して、薄板状ではあるが主として水平面積が大で重量がある薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ハンドであって、 前記薄板状ハンドをカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成して前記薄板状ハンドの材質の比重を小にすると共に、前記熱硬化性部材を加圧・圧締成形方法を使用して加工歪みのない平面状態に形成することによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置しないときの薄板状ハンドの両先端部の自重による撓み量を小にし、 次に、前記自重による撓み量を小にしたハンドの長手方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材よりも多く使用して、薄板状ハンドの長手方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数よりも大にして、前記長手方向の機械的強度を大にすることによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置したときの薄板状ハンド先端の撓み量を十分に小にする薄板状ワーク搬送用ハンド。」と訂正する。 〈訂正事項3〉 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項3に記載される、 「【請求項3】 薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを水平方向に移動して前記薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ワーク搬送用ハンドにおいて、 薄板状ではあるが主として水平面積が大で重量がある薄板状ワークの搬送に使用する薄板状ハンドであって、 前記薄板状ハンドをカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成して前記薄板状ハンドの材質の比重を小にし軽量にすると共に、前記熱硬化性部材を加圧・圧締成形方法を使用して加工歪みのない平面状態に形成することによって、前記薄板状ハンド先端から基部側に平面中央部が切欠かれてU字状に形成された薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置しないときの前記U字状に形成された薄板状ハンドの両先端部の自重による撓み量を小にし、 次に、前記自重による撓み量を小にした 薄板状ハンドの長手方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数よりも大にして、前記長手方向の機械的強度を大にすることによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置したときの薄板状ハンド先端の撓み量を十分に小にする薄板状ワーク搬送用ハンド。」を、 「【請求項3】 薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを水平方向に移動して前記薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ワーク搬送用ハンドにおいて、 薄板状ではあるが主として水平面積が大で重量がある薄板状ワークの搬送に使用する薄板状ハンドであって、 前記薄板状ハンドをカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成して前記薄板状ハンドの材質の比重を小にすると共に、前記熱硬化性部材を加圧・圧締成形方法を使用して加工歪みのない平面状態に形成することによって、前記薄板状ハンド先端から基部側に平面中央部が切欠かれてU字状に形成された薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置しないときの前記U字状に形成された薄板状ハンドの両先端部の自重による撓み量を小にし、 次に、前記自重による撓み量を小にしたハンドの長手方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材よりも多く使用して、薄板状ハンドの長手方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数よりも大にして、前記長手方向の機械的強度を大にすることによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置したときの薄板状ハンド先端の撓み量を十分に小にする薄板状ワーク搬送用ハンド。」と訂正する。 〈訂正事項4〉 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項4に記載される、 「【請求項4】 薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを水平方向に移動して前記薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ワーク搬送用ハンドにおいて、 上下間隔が狭く多数の上下方向に多段に棚を設けた棚状のカセットに対して水平方向に接近および離間して、薄板状ではあるが主として水平面積が大で重量がある薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ハンドであって、 前記薄板状ハンドをカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成して前記薄板状ハンドの材質の比重を小にし軽量にすると共に、前記熱硬化性部材を加圧・圧締成形方法を使用して加工歪みのない平面状態に形成することによって、前記薄板状ハンド先端から基部側に平面中央部が切欠かれてU字状に形成された薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置しないときの前記U字状に形成された薄板状ハンドの両先端部の自重による撓み量を小にし、 次に、前記自重による撓み量を小にした 薄板状ハンドの長手方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数よりも大にして、前記長手方向の機械的強度を大にすることによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置したときの薄板状ハンド先端の撓み量を十分に小にする薄板状ワーク搬送用ハンド。」を、 「【請求項4】 薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを水平方向に移動して前記薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ワーク搬送用ハンドにおいて、 上下間隔が狭く多数の上下方向に多段に棚を設けた棚状のカセットに対して水平方向に接近および離間して、薄板状ではあるが主として水平面積が大で重量がある薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ハンドであって、 前記薄板状ハンドをカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成して前記薄板状ハンドの材質の比重を小にすると共に、前記熱硬化性部材を加圧・圧締成形方法を使用して加工歪みのない平面状態に形成することによって、前記薄板状ハンド先端から基部側に平面中央部が切欠かれてU字状に形成された薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置しないときの前記U字状に形成された薄板状ハンドの両先端部の自重による撓み量を小にし、 次に、前記自重による撓み量を小にしたハンドの長手方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材よりも多く使用して、薄板状ハンドの長手方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数よりも大にして、前記長手方向の機械的強度を大にすることによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置したときの薄板状ハンド先端の撓み量を十分に小にする薄板状ワーク搬送用ハンド。」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項1〜4の「薄板状ハンドの材質の比重を小にし軽量にする」を「薄板状ハンドの材質の比重を小にする」との訂正は、「薄板状ハンドの材質の比重を小」にすれば、自ずと、薄板状ハンドを「軽量にする」ことになるから、当該訂正は、明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当する。また、訂正事項1〜4の「ハンドの長手方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材よりも多く使用して、」との事項を追加する訂正は、「薄板状ハンドの長手方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数よりも大に」する手法を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする明細書の訂正に該当する。 そして、上記の訂正事項は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)本件発明 上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1〜5に係る発明(以下それぞれを、「本件発明1」等という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜5に記載された次のとおりのものと認められる。 「【請求項1】 薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを水平方向に移動して前記薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ワーク搬送用ハンドにおいて、 薄板状ではあるが主として水平面積が大で重量がある薄板状ワークの搬送に使用する薄板状ハンドであって、 前記薄板状ハンドをカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成して前記薄板状ハンドの材質の比重を小にすると共に、前記熱硬化性部材を加圧・圧締成形方法を使用して加工歪みのない平面状態に形成することによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置しないときの薄板状ハンドの両先端部の自重による撓み量を小にし、 次に、前記自重による撓み量を小にしたハンドの長手方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材よりも多く使用して、薄板状ハンドの長手方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数よりも大にして、前記長手方向の機械的強度を大にすることによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置したときの薄板状ハンド先端の撓み量を十分に小にする薄板状ワーク搬送用ハンド。 【請求項2】 薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを水平方向に移動して前記薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ワーク搬送用ハンドにおいて、 上下間隔が狭く多数の上下方向に多段に棚を設けた棚状のカセットに対して水平方向に接近および離間して、薄板状ではあるが主として水平面積が大で重量がある薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ハンドであって、 前記薄板状ハンドをカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成して前記薄板状ハンドの材質の比重を小にすると共に、前記熱硬化性部材を加圧・圧締成形方法を使用して加工歪みのない平面状態に形成することによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置しないときの薄板状ハンドの両先端部の自重による撓み量を小にし、 次に、前記自重による撓み量を小にしたハンドの長手方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材よりも多く使用して、薄板状ハンドの長手方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数よりも大にして、前記長手方向の機械的強度を大にすることによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置したときの薄板状ハンド先端の撓み量を十分に小にする薄板状ワーク搬送用ハンド。 【請求項3】 薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを水平方向に移動して前記薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ワーク搬送用ハンドにおいて、 薄板状ではあるが主として水平面積が大で重量がある薄板状ワークの搬送に使用する薄板状ハンドであって、 前記薄板状ハンドをカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成して前記薄板状ハンドの材質の比重を小にすると共に、前記熱硬化性部材を加圧・圧締成形方法を使用して加工歪みのない平面状態に形成することによって、前記薄板状ハンド先端から基部側に平面中央部が切欠かれてU字状に形成された薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置しないときの前記U字状に形成された薄板状ハンドの両先端部の自重による撓み量を小にし、 次に、前記自重による撓み量を小にしたハンドの長手方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材よりも多く使用して、薄板状ハンドの長手方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数よりも大にして、前記長手方向の機械的強度を大にすることによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置したときの薄板状ハンド先端の撓み量を十分に小にする薄板状ワーク搬送用ハンド。 【請求項4】 薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを水平方向に移動して前記薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ワーク搬送用ハンドにおいて、 上下間隔が狭く多数の上下方向に多段に棚を設けた棚状のカセットに対して水平方向に接近および離間して、薄板状ではあるが主として水平面積が大で重量がある薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ハンドであって、 前記薄板状ハンドをカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成して前記薄板状ハンドの材質の比重を小にすると共に、前記熱硬化性部材を加圧・圧締成形方法を使用して加工歪みのない平面状態に形成することによって、前記薄板状ハンド先端から基部側に平面中央部が切欠かれてU字状に形成された薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置しないときの前記U字状に形成された薄板状ハンドの両先端部の自重による撓み量を小にし、 次に、前記自重による撓み量を小にしたハンドの長手方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材よりも多く使用して、薄板状ハンドの長手方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数よりも大にして、前記長手方向の機械的強度を大にすることによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置したときの薄板状ハンド先端の撓み量を十分に小にする薄板状ワーク搬送用ハンド。 【請求項5】 搬送用ハンドにワーク吸着機構を付設した請求項1から請求項4のいずれかに記載の搬送用ハンド。 (2)刊行物記載の発明(事項)及び周知事項 (i)刊行物1記載の発明 当審が通知した取消しの理由に引用され、本件出願の出願前に国内で頒布された刊行物である特開平7-99225号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。 (イ)段落【0001】 「【産業上の利用分野】 この発明は、半導体製造装置や液晶基板製造装置などの基板処理装置において、半導体ウエハや液晶用ガラス角型基板などの基板(以下、単に「基板」という)を複数の単位処理部の間で搬送する基板搬送装置に関する。」 (ロ)段落【0004】〜【0007】 「【発明が解決しようとする課題】 ところで、近年、基板の大型化に伴って、基板重量の増大によるハンドの撓みが問題となっている。すなわち、大型基板の重力により片持ち状態にあるハンドが下方に撓み、基板を水平状態に保つことができなくなる。そのため、例えば基板を多段状態の収納棚に収納する基板カセットでは、その収納棚ピッチを大きくしなければならず、その結果基板処理装置の大型化を招くといった問題が生じる。 撓みの解消という観点から考えれば、例えばハンドの厚みを厚くしてハンドを曲げ剛性の大きくするという方法が考えられるが、撓み量は少なくなるが、ハンドの厚みの増大に伴って収納棚ピッチなどを大きくする必要があり、基板処理装置の大型化を防止することができず、しかもハンド自体の重量も増大してしまう。 さらに、ハンドを横弾性係数の大きな材料(例えば超硬合金)で構成することにより、ハンドの厚みおよび重量を増大させることなく、ハンドの曲げ剛性を高めることが可能であるが、この種の構造材は一般に高価であり、基板搬送装置のコスト増大という問題を引きおこす。」 (ハ)図5から、 「ハンド150a,150bは、その先端から基部側に平面中央部が切欠かれてU字状に形成されていること」が看取し得る。 上記(イ)〜(ロ)の記載事項からみて、 刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 「半導体ウエハや液晶用ガラス角型基板などの大型基板を載置し、水平方向に移動して前記基板を積み降ろしするハンドにおいて、 収納棚ピッチを大きくしない多段状態の基板カセットに対して水平方向に接近および離間して、基板を積み降ろしするハンドであって、 前記ハンドを超硬合金で構成して、ハンドの厚みおよび重量を増大させることなく、ハンドの曲げ剛性を高めること。」 (ii)刊行物2記載の事項 当審が通知した取消しの理由で引用され、本願の出願前に国内で頒布された刊行物である「機械エンジニアリング・プロジェクト開発事業報告書 昭和57年度 生産技術高度化に関する調査研究(機械材料軽量化)」、社団法人日本機械工業連合会、社団法人機械技術協会、昭和58年7月、第1〜3頁、第29〜43頁、第127頁(以下、「刊行物2」という。)には、次のとおり記載されている。 (イ)第1頁22行〜28行 「産業用ロボット界では,アームの軽量化にFRPを利用することが,一二のメーカーで試みられているが,その効用については賛否半ばしている。 ここでは塗装ロボットの水平アーム・・・を対象とし,FRP・・・による軽量化を検討してみた。FRPとしてはCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)がすぐれていることは自明である・・・」 (ロ)第31頁15行〜第32頁19行 「ロボットアームの軽量化の事例 ・・・材料軽量化に対してはアームを中心に検討が進められているので,以降はロボットアームの軽量化について述べることとする。・・・ 現在ではさらにFRP,とくにCFRPを採用する動きが1982年あたりから徐々に盛り上がりを見せている。CFRPが軽量化に抜群の威力を発揮することは,既に航空機やゴルフクラブのブラックシャフトで実証済みである。・・・ CFRP化の最大の狙いはアーム軽量化とそれに伴なう駆動用モータの小型化にあり,住友電気工業が試作した6関節のアームを持つ知能ロボットへの採用例を図2.3.3に示す。この事例では,アームの部材のほとんどにアルミ合金の代わりにCFRPを採用しており,・・・。 CFRPとしてはPAN系炭素繊維とエポキシ樹脂を組合わせたものを用いている(表2.3.2)同材料は比強度,比弾性率ともアルミや鋼を大きくしのぐ(図2.3.4)。」 上記(イ)〜(ロ)の記載事項からみて、刊行物2には次の事項(以下、「刊行物2記載の事項」という。)が記載されていると認められる。 「CFRPが軽量化、比強度の点で優れていること、及び、住友電工がロボットアームに採用したCFRPは、PAN系炭素繊維とエポキシ樹脂を組合わせたものであること。」 (iii)刊行物3記載の事項 当審が通知した取消しの理由で引用され、本願の出願前に国内で頒布された刊行物である特開平4-345148号公報(以下、「刊行物3」という。)には、次のとおり記載されている。 (イ)【特許請求の範囲】 「【請求項1】 炭素繊維を一方向に配向し、上記炭素繊維にマトリックス樹脂を含浸させてプリプレグシートを製作し、 複数の上記プリプレグシートを積層し、 上記プリプレグシートの積層体の少なくとも一方の面に、遮光性及び/又は潤滑性を有する塗料が塗布された樹脂フィルムを積層し、上記積層された樹脂フィルムおよびプリプレグシートを同時に加熱、加圧することを特徴とするカメラ用遮光羽根の製造方法。 【請求項2】 上記積層されたプリプレグシートのうち、表面層のプリプレグシートは、上記炭素繊維がピッチ系炭素繊維であるとともにその配向方向が羽根の長手方向であり、上記表面層間に挟まれる中間層のプリプレグシートは、上記炭素繊維がPAN系炭素繊維であるとともにその配向方向が羽根の幅方向であることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用遮光羽根の製造方法。」 (ロ)段落【0010】 「中間層となるプリプレグシート3は、弾性に劣るが比重が小さくて安価なPAN系の炭素繊維7を一方向に揃えて薄板状に並べ、これに表面層の場合と同様に、例えばエポキシ,不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂等からなるマトリックス樹脂8を含浸して、例えば30μmの厚さのBステージ状態のシートとして形成する。中間層の炭素繊維7は羽根の幅方向に配向されて同方向の剛性を強化するものであり、同方向の剛性は同長手方向の剛性に比して、小さくて済むため、PAN系の炭素繊維でも十分である。」 (iv)周知事項 同じく当審が通知した取消しの理由で周知例として引用した特開平4-164592号公報(以下、「周知例1」という。)、「実用プラスチック事典 材料編」、株式会社産業調査会、初版第1刷1993年5月1日、初版第3刷1996年4月20日発行、第594〜595頁(以下、「周知例2」という。)、特開昭62-199439号公報(以下、「周知例3」という。)、特開昭52-137304号公報(以下、「周知例4」という。)には、次のとおり記載されている。 (イ)周知例1第4頁左上欄1行〜2行 「上記ロボットアーム15はFRP(炭素繊維強化エポキシ複合材料)からなる」 (ロ)周知例1第4頁左上欄18行〜同頁右上欄3行 「上記ロボットアーム15の製法は、マンドレル上に、それぞれ繊維角度がα2、β2となるように裁断した半周長さのプリプレグシートを、上記部分15c、15dにおいて順に積層した後にラッピングテープを螺旋状に巻付けて加圧し、その後、オーブンでキュアリングして製造している。」 (ハ)周知例2第595頁左欄1行〜6行 「ゴルフクラブ、釣竿はプリプレグシートを金属製のマンドレルにまき、上からPETフィルムテープを巻いて締め付け、熱処理炉中で120〜130℃に加熱して硬化する方法が用いられている。プリプレグシートとは、炭素繊維糸を一方向に引き揃え、エポキシ樹脂を含浸した成形材料である。」 (ニ)周知例2第595頁左欄37行〜41行 「ロール、自動車のプロペラシャフト、遠心分離機胴などは連続的に炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸し、金属製のマンドレルに巻き付けて賦型し、加熱して硬化するフィラメントワインド法が採られている。」 (ホ)周知例3第2頁左上欄18行〜同頁右上欄5行 「このものは、熱硬化性樹脂を母材とし炭素繊維目付が小さく一方向に配向したプリプレグシート複数枚を面対称に積層し加熱、加圧硬化させることにより縦、横方向の強度の差が小さく、割れ難いCFRP製の極薄板が得られる。しかし、炭素繊維の配向が0°/90°/0°の如く面対称となっているため、その成形板には反りがなく、平面度が優れた材料である。」 (ヘ)周知例4第2頁左上欄7行〜同頁右上欄2行 「熱硬化性樹脂が含浸せられた無機繊維布帛が,単層,あるいは積層されており・・・本発明に用い得る無機繊維布帛としては,・・・炭素繊維などの無機繊維を製織する。・・・本発明の製法にあつては,布帛に熱硬化性樹脂を含浸させて,これにホットプレスすると表面精度が1μ〜0.5μ程度まで向上する。」 以上の記載、特に下線部の記載からみて、 「CFRPの成形方法として加圧・圧締成形方法を使用すること、及び、そのことによって加工歪みのない平面状態に形成すること」は、従来周知の事項であると認める(当該事項を、以下「周知事項1」という。)。 同じく当審が通知した取消しの理由で周知例として引用した特開平7-69445号公報(以下、「周知例5」という。)の 「【産業上の利用分野】 本発明は、基板を任意の方向に傾斜させて搬送する基板搬送装置のアーム機構に関するものである。」(段落【0001】、) 「アーム機構13は、薄い板状のアーム21と、このアーム21先端側に設けられたガラス基板11を配置するアームヘッド部22と、アーム21をその手前側の下部で支持するアーム支持部23等とからなる。・・・ディスク28表面には、その上に配置されるガラス基板11を吸着するための小さい孔30がディスク28周辺側に4か所形成され、これら孔30に連通するよう細い柔軟なパイプ31が溝21a内を通って配管され、アーム支持部23側に設けられた図示しない吸引ポンプに接続されている。・・・」(段落【0011】)等の記載からみて、 「基板搬送用ハンドに基板吸着機構を付設すること」は、従来周知の事項であると認める(当該事項を、以下「周知事項2」という。)。 (3)対比・判断 (i)本件発明4について 本件発明4と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「半導体ウエハや液晶用ガラス角型基板などの大型基板」が前者の「薄板状ではあるが主として水平面積が大で重量がある薄板状ワーク」に、後者の「ハンド」が前者の「薄板状ワーク搬送用ハンド」に、後者の「収納棚ピッチを大きくしない多段状態の基板カセット」が前者の「上下間隔が狭く多数の上下方向に多段に棚を設けた棚状のカセット」に、それぞれ相当する。 そうすると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。 〈一致点〉「薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを水平方向に移動して前記薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ワーク搬送用ハンドにおいて、上下間隔が狭く多数の上下方向に多段に棚を設けた棚状のカセットに対して水平方向に接近および離間して、薄板状ではあるが主として水平面積が大で重量がある薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ハンドであ」る点。 〈相違点1〉前者は、薄板状ハンドが、「前記薄板状ハンド先端から基部側に平面中央部が切欠かれてU字状に形成された」ものであるのに対して、後者は、薄板状ハンドがそのような形状のものであるとは特定していない点。 〈相違点2〉前者は、薄板状ハンドが、「カーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成して前記薄板状ハンドの材質の比重を小にすると共に、前記熱硬化性部材を加圧・圧締成形方法を使用して加工歪みのない平面状態に形成することによって、薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置しないときの前記薄板状ハンドの両先端部の自重による撓み量を小に」するものであるのに対して、後者は、薄板状ハンドが超硬合金から構成されるものである点。 〈相違点3〉前者は、薄板状ハンドが、「ハンドの長手方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材よりも多く使用して、薄板状ハンドの長手方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数よりも大にして、前記長手方向の機械的強度を大にすることによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置したときの薄板状ハンド先端の撓み量を十分に小にする」ものであるのに対して、後者は、後者は、薄板状ハンドが超硬合金から構成されるものである点。 上記相違点1〜3等について検討する。 〈相違点1について〉 薄板状ワーク搬送技術分野において、薄板状ハンドが前記薄板状ハンド先端から基部側に平面中央部が切欠かれてU字状に形成されたものであることは、刊行物1の摘記事項(ハ)にも示されているように、従来周知の事項である。 したがって、刊行物1記載の発明の薄板状ハンドを、前記薄板状ハンド先端から基部側に平面中央部が切欠かれてU字状に形成されたものとすることは、当業者が容易になし得ることである。 〈相違点2について〉 カーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成したCFRPが軽量化、比強度の点で優れていることは刊行物2に示されている。 そして、刊行物1には、「ハンドの厚みおよび重量を増大させることなく、ハンドの曲げ剛性を高める」との課題が示唆されており(刊行物1の摘記事項(ロ)を参照)、そうすると、上記課題がある刊行物1記載の発明のハンドに、課題を共通にする上記刊行物2記載の事項を適用して、ハンドの材質をカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成したCFRPとし、材質の比重を小、すなわち、ハンド先端部の自重による撓み量を小にすることは、当業者が容易に想到し得ることである。そして、CFRPの成形方法として加圧・圧締成形方法を使用すること、及び、そのことによって表面精度のよいCFRPを得ることは、従来周知の事項である(「周知事項1」を参照。)。 してみると、刊行物1記載の発明の相違点2に係る構成を、刊行物2記載の事項及び従来周知の事項を組み合わせて本件発明4のようにすることは、当業者が容易になし得ることである。 〈相違点3について〉 刊行物1記載の発明のハンドのような片持ち構造の部材において、長手方向の強度が幅方向の強度よりもより必要であることは、当業者にとって自明である。 ところで、刊行物3には、刊行物1発明のハンドと同様に片持ち構造の部材であるカメラ用遮光羽根において、部材長手方向の繊維方向の炭素繊維成分を有する熱硬化性部材と、その長手方向に直交する部材幅方向の繊維方向の炭素繊維成分を有する熱硬化性部材とを積層し加熱加圧して、部材長手方向の剛性を、その長手方向に直交する部材幅方向の剛性に比して大にすることが示されている(刊行物3の摘記事項(イ)、(ロ)を参照)。当該記載事項において、部材長手方向の繊維方向の成分を有する熱硬化性部材を、部材幅方向の繊維方向の成分を有する熱硬化性部材よりも多く使用していることは、長手方向及び幅方向の剛性の関係から明らかである。 そうすると、刊行物1記載の発明のハンドの材質を、上述したように、カーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成したCFRPとするに際して、併せて上記刊行物3記載の事項を適用し、刊行物1記載の発明の相違点3に係る構成を本件発明4のようにすることは、当業者が容易になし得ることである。 〈作用効果について〉 そして、本件発明4の作用効果は、刊行物1記載の発明、刊行物2、3記載の事項及び従来周知の事項から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。 したがって、本件発明4は、刊行物1記載の発明、刊行物2、3記載の事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (ii)本件発明1〜3について 本件発明1〜3は、本件発明4の構成に欠くことができない事項のうち、薄板状ハンドが、「上下間隔が狭く多数の上下方向に多段に棚を設けた棚状のカセットに対して水平方向に接近および離間して、」薄板状ワークを積み降ろしするものであるとの事項、及び/又は、「薄板状ハンド先端から基部側に平面中央部が切欠かれてU字状に形成された」ものであるとの事項を削除したものである。 そうすると、本件発明1〜3も、上記の本件発明4と同様の理由によって、刊行物1記載の発明、刊行物2、3記載の事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (iii)本件発明5について 本件発明5は、本件発明1〜4の構成に欠くことができない事項すべてに加えて、さらに「搬送用ハンドにワーク吸着機構を付設した」との事項を、その発明の構成に欠くことができない事項とするものである。 ところで、上記の追加された事項は、薄板状ワーク搬送用ハンドの技術分野において、従来周知の事項である(上記の周知事項2を参照)。 そして、本件発明5の作用効果は、刊行物1記載の発明、刊行物2、3記載の事項及び従来周知の事項から当業者が予測可能な範囲内のものであって、格別のものではない。 したがって、本件発明5は、刊行物1記載の発明、刊行物2、3記載の事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本件発明1〜5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件発明1〜5についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 薄板状ワーク搬送用ハンド (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを水平方向に移動して前記薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ワーク搬送用ハンドにおいて、 薄板状ではあるが主として水平面積が大で重量がある薄板状ワークの搬送に使用する薄板状ハンドであって、 前記薄板状ハンドをカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成して前記薄板状ハンドの材質の比重を小にすると共に、前記熱硬化性部材を加圧・圧締成形方法を使用して加工歪みのない平面状態に形成することによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置しないときの薄板状ハンドの両先端部の自重による撓み量を小にし、 次に、前記自重による撓み量を小にしたハンドの長手方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材よりも多く使用して、薄板状ハンドの長手方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数よりも大にして、前記長手方向の機械的強度を大にすることによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置したときの薄板状ハンド先端の撓み量を十分に小にする薄板状ワーク搬送用ハンド。 【請求項2】薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを水平方向に移動して前記薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ワーク搬送用ハンドにおいて、 上下間隔が狭く多数の上下方向に多段に棚を設けた棚状のカセットに対して水平方向に接近および離間して、薄板状ではあるが主として水平面積が大で重量がある薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ハンドであって、 前記薄板状ハンドをカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成して前記薄板状ハンドの材質の比重を小にすると共に、前記熱硬化性部材を加圧・圧締成形方法を使用して加工歪みのない平面状態に形成することによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置しないときの薄板状ハンドの両先端部の自重による撓み量を小にし、 次に、前記自重による撓み量を小にしたハンドの長手方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材よりも多く使用して、薄板状ハンドの長手方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数よりも大にして、前記長手方向の機械的強度を大にすることによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置したときの薄板状ハンド先端の撓み量を十分に小にする薄板状ワーク搬送用ハンド。 【請求項3】薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを水平方向に移動して前記薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ワーク搬送用ハンドにおいて、 薄板状ではあるが主として水平面積が大で重量がある薄板状ワークの搬送に使用する薄板状ハンドであって、 前記薄板状ハンドをカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成して前記薄板状ハンドの材質の比重を小にすると共に、前記熱硬化性部材を加圧・圧締成形方法を使用して加工歪みのない平面状態に形成することによって、前記薄板状ハンド先端から基部側に平面中央部が切欠かれてU字状に形成された薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置しないときの前記U字状に形成された薄板状ハンドの両先端部の自重による撓み量を小にし、 次に、前記自重による撓み量を小にしたハンドの長手方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材よりも多く使用して、薄板状ハンドの長手方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数よりも大にして、前記長手方向の機械的強度を大にすることによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置したときの薄板状ハンド先端の撓み量を十分に小にする薄板状ワーク搬送用ハンド。 【請求項4】薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを水平方向に移動して前記薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ワーク搬送用ハンドにおいて、 上下間隔が狭く多数の上下方向に多段に棚を設けた棚状のカセットに対して水平方向に接近および離間して、薄板状ではあるが主として水平面積が大で重量がある薄板状ワークを積み降ろしする薄板状ハンドであって、 前記薄板状ハンドをカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成して前記薄板状ハンドの材質の比重を小にすると共に、前記熱硬化性部材を加圧・圧締成形方法を使用して加工歪みのない平面状態に形成することによって、前記薄板状ハンド先端から基部側に平面中央部が切欠かれてU字状に形成された薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置しないときの前記U字状に形成された薄板状ハンドの両先端部の自重による撓み量を小にし、 次に、前記自重による撓み量を小にしたハンドの長手方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の繊維方向の成分を有する前記熱硬化性部材よりも多く使用して、薄板状ハンドの長手方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数を、その長手方向に直交するハンドの幅方向の前記熱硬化性部材の縦弾性係数よりも大にして、前記長手方向の機械的強度を大にすることによって、前記薄板状ハンドに前記薄板状ワークを載置したときの薄板状ハンド先端の撓み量を十分に小にする薄板状ワーク搬送用ハンド。 【請求項5】搬送用ハンドにワーク吸着機構を付設した請求項1から請求項4のいずれかに記載の搬送用ハンド。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、自動搬送装置に用いられる搬送用ハンドに関する。例えば、液晶基板やプリント基板等の薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを棚状のカセットに対して水平方向に接近および離間して、薄板状ワークを積み、下しする自動搬送装置の先端に取付けられる薄板状ワーク搬送用ハンドに関する。 【0002】 【従来の技術】 例えば、薄板状ワークを棚状のカセットに水平多段に収納し、このカセットから薄板状ワークを1枚ずつ取扱って、カセット位置と各種処理作業位置とに薄板状ワークを搬送し、結果としてカセットに対して薄板状ワークを積み、下しする自動搬送装置として、水平移動部・回転部・昇降部を持ち、また、薄板状ワークを載置するハンドを持ち、マイクロコンピュータにより自動制御される自動搬送装置が使用されている。 【0003】 図7に示されるごとく、薄板状ワーク30は棚状のカセット40に所定のピッチP1で上下方向に多段に収納される。このカセット40のピッチP1を大きくすると、一定高さのカセットに収納される薄板状ワーク30の数量が少なくなり、作業能率が低下するため、極力カセット40のピッチP1を小さくすることが嘱望されている。 【0004】 地方、処理作業能率を向上させるため、一枚の薄板状ワーク30の寸法を大きくする傾向にある。 【0005】 ところで、図6に示されるごとく、従来の搬送用ハンド50はアルミニウム材あるいはアルミニウム合金材により形成されている。勿論、例えば液晶基板のような薄板状ワーク30は水平方向に変形しやすいため、薄板状ワーク30の寸法、特に長手方向の寸法が大きくなるに伴って、アルミニウムよりなる搬送用ハンド50の長さを長くする必要がある。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 上記従来技術において、搬送用ハンド50を長くすると、搬送用ハンド50は重力により、例えば図8に示される状態に撓むこととなる。 【0007】 例えば、搬送用ハンド50の板厚をt1,板幅をB1、および長さをL1としたときのハンド50の上下方向の撓みをδ1とした場合、搬送用ハンド50をカセット40の薄板状ワーク30間に挿入時の搬送用ハンド50と上下の薄板状ワーク30,30との夫々の間隔を△hとし、薄板状ワーク30の板厚をt0および薄板状ワーク30を収納するカセット40の上下のピッチをP1とすると、 【0008】 P1=t1+δ1+2△h+t0…………(1) 【0009】 に制限される。 すなわち、搬送用ハンド50を上記寸法とした場合、自重による搬送用ハンド50の撓み量δ1がカセット40のピッチPの基準となるため、カセット40のピッチを一義的に小さく設定することができなかった。 【0010】 さらに、搬送用ハンド50は板幅B1および長さL1に対して板厚t1が小さい値であるため、搬送用ハンド50をアルミニウムで形成すると、応々にして加工歪みが残存して、平面状態を所望の状態に保てないという問題があった。 【0011】 すなわち、搬送用ハンド50を所望の水平面の状態に保てない場合、即ち、歪んでいる場合、この歪が重力による搬送用ハンドの撓み量δ1に付加されるため、カセットのピッチPを大きくする要因となっていた。 【0012】 勿論、上記事態を解消するため、製作後に所望の水平面の状態に形成されていない搬送用ハンドを不良品として破棄することが考えられるが、搬送用ハンドの製作費が高価であるため得策でない。 【0013】 本発明の目的は、加工歪のない所望の平面状態とすることができ、かつ重力による撓みの小さい搬送用ハンドを提供することにある。 【0014】 【課題を解決するための手段】 第1の発明は、薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを棚状のカセットに対して水平方向に接近および離間して、薄板状ワークを積み、下しする自動搬送装置の先端に取付けられる薄板状ワーク搬送用ハンドに適用される。 その特徴とするところは、薄板状ワーク搬送用ハンドが、カーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成されたことである。 【0015】 第2の発明は、第1の発明において、棚状のカセットに対して接近・離間するハンドの長手方向と、該長手方向と直交するハンドの幅方向との夫々の縦弾性係数ELおよびEWがEL=EWであることを特徴としている。 【0016】 第3の発明は、第1の発明において、棚状のカセットに対して接近・離間するハンドの長手方向と、該長手方向と直交するハンドの幅方向との夫々の縦弾性係数ELおよびEWがEL>EWであることを特徴としている。 【0017】 第4の発明は、第1の発明において、棚状のカセットに対して接近・離間するハンドの長手方向と、該長手方向と直交するハンドの幅方向との夫々の縦弾性係数ELおよびEWがEL=2.6EWであることを特徴としている。 【0018】 第5の発明は、薄板状ワークを載置する搬送用ハンドを棚状のカセットに対して水平方向に接近および離間して、薄板状ワークを積み、下しする自動搬送装置の先端に取付けられる薄板状ワーク搬送用ハンドに適用される。 その特徴とするところは、薄板状ワーク搬送用ハンドが、カーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成され、かつハンド先端から基部側に平面中央部が切欠かれてU字状に形成されたことである。 【0019】 第6の発明は、第5の発明において、柵状のカセットに対して接近・離間するハンドの長手方向と、該長手方向と直交するハンドの幅方向との夫々の縦弾性係数ELおよびEWがEL=EWであることを特徴としている。 【0020】 第7の発明は、第5の発明において、柵状のカセットに対して接近・離間するハンドの長手方向と、該長手方向と直交するハンドの幅方向との夫々の縦弾性係数ELおよびEWがEL>EWであることを特徴としている。 【0021】 第8の発明は、第5の発明において、棚状のカセットに対して接近・離間するハンドの長手方向と、該長手方向と直交するハンドの幅方向との夫々の縦弾性係数ELおよびEWがEL=2.6EWであることを特徴としている。 【0022】 【作用】 本発明においては、薄板状ワーク搬送用ハンドは、カーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成されているため、加工歪のない所望の平面状態とすることができ、かつ軽量で機械的強度が大であって重力による撓みの小さい搬送用ハンドを確実に実現することができる。 【0023】 勿論、カーボンを含む可撓性繊維質材を重ね合わす際に、繊維質材の繊維方向を適宜に選定することにより、搬送用ハンドの長手方向と、長手方向と直交する搬送用ハンドの幅方向との夫々の縦弾性係数EL,EWを自在に設定することができ、用途に対応させることができる。 【0024】 このため、結果としてカセットの薄板状ワークの多段積みのピッチを可及的に小さくして、カセットに収納された薄板状ワークの処理作業能率の向上に寄与することができる。 【0025】 さらに、薄板状ワーク搬送用ハンドが、カーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成され、かつハンド先端から基部側に平面中央部が切欠かれてU字状に形成されていれば、上記作用・効果に加えて、平面U字状部が幅方向に離間した位置で薄板状ワークを安定して支持することとなる。このため、薄板状ワークが広幅で極端に薄い、例えば、液晶基板の場合に特に有効である。 【0026】 この場合、搬送用ハンドは平面中央部が切欠かれたU字状に形成されるが、従来のごとくアルミニウムによりU字状のハンドを形成しようとすると、薄い肉厚で、しかも平面U字状に切欠かれているため、大半のハンドが歪んで所望の平面状態となし得ない。 【0027】 しかし、本発明に係る搬送用ハンドは、適宜に積層されるカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材が、加圧・圧締されて形成されるため、歪のない所望の平面状態のものが確実に得られる。 【0028】 勿論、搬送用ハンドは歪のない所望の平面状態に形成されるため、従来のごとくの搬送時における搬送用ハンドの歪み量の考察は無用となる。 【0029】 【実施例】 以下、本発明を図示の実施例により詳細に説明する。 図1は、先端に薄板状ワーク搬送用ハンドを取付けたロボットにより、カセット40内の薄板状ワーク30を搬出する状態を説明するための、本発明の対象とする自動搬送装置の概略図である。 【0030】 ロボット1は、例えば、PTP制御やCP制御などにより、適宜に制御される。例えば、円筒座標系の、いわゆる水平多関節形のロボットであり、関節腕2の屈伸によりハンド10を直線Xに沿って動かす。また、肩3を昇降することによってハンド10を直線Zと平行に動かす。直線Xと直線Zは直交している。ロボット1は、肩3(円筒座標の中心)を中心として旋回することによって、肩3とハンド10との距離を半径とした円周方向に沿ってハンド10を動かす。 【0031】 カセット40は、正面からのみ薄板状ワーク30の出し入れが可能であり、正面はロボット1側に向いており、正面と直線Xとは垂直となるように設置し、かつ、各々の薄板状ワーク30群の中心を結ぶ線Z1は、直線Xと直交するように設置するとともに、薄板状ワーク30とハンド10とは平行となるように配置されている。 【0032】 ロボット1が適宜に制御されて、ハンド10がX1方向に移動され、ステーションST1において、カセット40に多段に収納された薄板状ワーク30,30間に挿入される。ついで、ハンド10が所望量上昇されて、薄板状ワーク30が搬送用ハンド10上に載置され、この後、搬送用ハンド10がX2方向に移動される。この後、ロボット1が適宜に制御されて、ハンド10上に載置された薄板状ワーク30が所望の処理作業位置(=ステーションST2)に搬送される。 【0033】 例えば、処理作業後、ロボット1が適宜に制御されて、ハンド10に載置された薄板状ワーク30がカセット40の所望の位置に搬入されて収納される。すなわち薄板状ワーク30がST2からST1へと搬送される。 【0034】 図2乃至図4は、本発明の第1の実施例を示す図であって、搬送用ハンド10の詳細図を示している。搬送用ハンド10は、カーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により平板状に形成され、かつハンド先端から基部側に、即ち、X2方向側に平面中央部101が切欠かれてU字状に形成されている。カーボンを含む可撓性繊維質材としては、カーボン繊維質材が最適であるが、カーボン繊維質材と、合成繊維質材、ガラス繊維質材又は植物繊維質材等との組合せとすることができる。熱硬化性樹脂としては、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂又はフェノール樹脂等が適宜に選定される。 【0035】 図4に示されるごとく、上記カーボンを含む可撓性繊維材質は、繊維方向がX方向の材料CF1と、繊維方向がY方向の成分を有する材料CF2とが適宜に積層されて構成される。カーボンを含む可撓性繊維材質は、繊維方向の機械的強度が大きいため、繊維方向がX方向の材料CF1を上記CF2よりも多く使用すると、通常X方向の機械的強度を重視する搬送用ハンドとして好適である。 【0036】 本発明に係る搬送用ハンド10は、適宜に積層されるカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材が、加圧・圧締されて形成されるため、歪のない所望の平面状態のものが確実に得られる。この歪のない硬化された平板をU字状に切断して搬送用ハンド10が形成される。このため、結果として歪のない所望の平面状態のU字状の搬送用ハンド10を確実に得ることができる。 【0037】 図2および図3に示されるごとく、搬送用ハンド10のY方向に離間する指部102,103は夫々同一形状であって、指部102,103が、夫々例えば肉厚をt1,指幅をB1/2および長さをL1としているが、今仮に、搬送用ハンド10が肉厚;t1,板幅;B1および長さ;L1の単一の平板であるものとし、搬送用ハンド10の基部がロボット1に確実に支持されているとした場合、単一の平板によりなる搬送用ハンド10の重力による上下方向の撓みδ2は次式で表わされる。 【0038】 δ2=(W2/E2)×(L1/3I)………(2) 【0039】 ただし、W2;ハンド10の長さL1に相当する重量 I;ハンド10の断面2次モーメント E2;熱硬化性部材よりなるハンド10のX方向の縦弾性係数 【0040】 一方、上記と同寸法のハンドをアルミニウムにより形成したときの撓みδ1は次式で表わされる 【0041】 δ1=(W1/E1)×(L1/3I)………(3) 【0042】 ただし、W1;アルミニウムよりなるハンドの長さL1に相当する重量 E1;アルミニウムよりなるハンドの縦弾性係数 【0043】 上記(2)式および(3)式より下式が成立つ。 【0044】 δ2=(W2/E2)×(E1/W1)×δ1 =(E1/E2)×(W2/W1)×δ1………(4) 【0045】 さらに、夫々のハンドの断面積および長さは同一であるため、熱硬化性部材よりなるハンドの比重をγ2およびアルミニウムよりなるハンドの比重をγ1とすれば(4)式は下式で表わされる。 【0046】 δ2=(E1/E2)×(γ2/γ1)×δ1………(5) 【0047】 上記熱硬化性部材は複数に積層されるカーボンを含む可撓性繊維質材において、繊維方向の異なる上記CF1とCF2との夫々の積層数により数値が異なるが、例えば熱硬化性部材よりなるハンドの比重γ2=1.5および縦弾性係数E2=11000Kg/mm2のものを作成することができる。 【0048】 一方、アルミニウムはγ1=2.7,E1=7500Kg/mm2であるから、上記の夫々の数値を(5)式に代入すれば下式となる。 【0049】 δ2=(7500/11000)×(1.5/2.7)×δ1 =0.38δ1………………………………………(6) 【0050】 上記のごとく、複数に積層されるカーボンを含む可撓性繊維質材の配置を適宜に選定した熱硬化性部材によりハンド10を形成すれば、例えば(6)式で表わされるようにアルミニウムにより形成したハンド50に対して、上下方向の撓み量は約4割に減少されることとなる。 【0051】 なお、上記の計算式においては、搬送用ハンド10が肉厚;t1,板幅;B1および長さ;L1の単一の平板であるとしたが、図2および図3に示されるごとく肉厚;t1,長さ;L1,および板幅;B1/2の2個の指部102,103とした場合、例えば指部102の重力による撓みδ3は次式で表わされる。 【0052】 δ3=(W3/E2)×(L1/3I3)………(7) 【0053】 ただし、W3;指部102の長さL1に相当する重量 I3;指部102の断面2次モーメント E2;熱硬化性部材よりなる指部のX方向の縦弾性係数 【0054】 ところで(2)式の対象となるハンドの板幅を1/2にしたものが(7)式であり、W3=W2/2およびI3=I/2の関係にあるため、これらの値を(7)式に代入すると下式となる。 【0055】 δ3=(W2/E2)×(L1/3I) 【0056】 従って、夫々(2)式と(7)式とで表わされる撓みδ2とδ3とは同一であることが判る。 このため、2個の指部102,103としても、上記(6)式が成立つ。 【0057】 本発明にかかる搬送用ハンド10を用いた場合、搬送用ハンド10の撓みδ2に伴なうカセット40の上下のピッチP2は(1)式と同様に考えて下式で表わされる。なお搬送用ハンド10をカセット40に挿入する時の模式拡大図を図5に示す。 【0058】 P2=t1+0.38δ1+2△h+t0………(8) 【0059】 (1)式および(8)式の個々の数値を特定しないとP1とP2との数値比較をすることができないが、個々の値はミリ単位の値であるため、搬送用ハンドの撓みを従来の約4割に押えられることは、搬送装置としてメリットが大である。 【0060】 勿論、本発明に係る搬送用ハンドは、歪のない所望の平面状態に形成されるため、従来のごとく搬送用ハンドの撓み量に歪み量を付加して考慮しなければならないという事態は皆無となる。 【0061】 さらに、図2に示されるごとく、搬送用ハンドは、平面U字状部により、Y方向に離間する指部102,103により安定して薄板状ワーク30を載置するため、広幅で極端に薄い薄板状ワーク,例えば液晶基板の場合に特に有効である。 【0062】 なお、上記したごとく繊維方向の異なるCF1とCF2とを適宜に選定した熱硬化性部材により搬送用ハンド10を形成するが、搬送用ハンド10の長手方向、すなわちX方向の縦弾性係数をEL,および幅方向,すなわちY方向の縦弾性係数をEWとしたとき、表1に示される熱硬化性部材により搬送用ハンドを形成することができる。 【0063】 【表1】 【0064】 表1における番号▲1▼乃至▲3▼の比重;γ2はγ2=1.5であった。 従来のアルミニウムの値、すなわちγ1=2.7およびE1=7500Kg/mm2と表1における番号▲1▼および▲2▼の値を夫々(5)式に代入して、表1における番号▲1▼および▲2▼の夫々の撓みをδ21およびδ22とすれば下式が得られる。 【0065】 δ21=0.73δ1、δ22=0.52δ1 【0066】 なお表1における番号▲3▼の撓み;δ23は(6)式で表わされるものと同一である。 δ23=δ2=0.38δ1 【0067】 表1における番号▲1▼乃至▲3▼のものを搬送用ハンドとして用いることができるが、縦弾性係数ELが大きいほど、搬送用ハンドの上下方向の撓み量が小さく、カセットに対する薄板状ワークの積み、下し時に有利であり、従って番号▲3▼のものが搬送用ハンドとして最適である。 【0068】 さらに、上記ELとEWとに着目した場合、EL=EWとすれば幅の広いワークに適用することができる。 【0069】 勿論、本発明の狙いとするワークはX方向に長いワークであるからEL>EWとすれば好適である。 【0070】 さらに、上記した熱硬化性部材により形成される搬送用ハンドにおいて、幅方向の機械的強度がある程度必要であるが、X方向の機械的強度を極力大きくするよう繰返し搬送用ハンドを作成して、表1における番号▲3▼のものを得た。 すなわち、EL=2.6EW、EL=11000Kg/mm2のものが搬送用ハンドとして最適である。 【0071】 なお、上記搬送用ハンドのELの最大値は搬送用ハンドの肉厚を大きくしても殆んど変化が見られなかった。 【0072】 さらに、図4(A)において、繊維方向がY方向の成分を有する材料CF2としては、繊維方向がX方向の材料CF1を90度反転させて使用したり、或いは繊維方向がX方向とY方向とに格子状に配置した材料とすることができる。 【0073】 さらにまた、上記した熱硬化性部材により形成される搬送用ハンドは、図6に示されるごとく単一の平板とすることができる。 【0074】 さらに、本発明に係る搬送用ハンドに、ワークを載置するハンドの上面に開口する、いわゆるワーク吸着機構を付設すれば、ワークを安定して搬送できることは勿論である。 【0075】 【発明の効果】 以上の説明で明らかなように、本発明に係る薄板状ワーク搬送用ハンドは、カーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成されているため、加工歪のない所望の平面状態とすることができ、かつ軽量で機械的強度が大であって重力による撓みの小さい搬送用ハンドを確実に実現することができる。 【0076】 勿論、カーボンを含む可撓性繊維質材を重ね合わす際に、繊維質材の繊維方向を適宜に選定することにより、搬送用ハンドの長手方向と、長手方向と直交する搬送用ハンドの幅方向との夫々の縦弾性係数EL,EWを自在に設定することができ、用途に対応させることができる。 このため、結果としてカセットの薄板状ワークの多段積みのピッチを可及的に小さくして、カセットに収納された薄板状ワークの処理作業能率の向上に寄与することができる。 【0077】 さらに、薄板状ワーク搬送用ハンドが、カーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材により形成され、かつハンド先端から基部側に平面中央部が切欠かれてU字状に形成されていれば、上記作用・効果に加えて、平面U字状部が幅方向に離間した位置で薄板状ワークを安定して支持することとなる。このため、薄板状ワークが広幅で極端に薄い、例えば、液晶基板の場合に特に有効である。 【0078】 この場合、搬送用ハンドは平面中央部が切欠かれたU字状に形成されるが、従来のごとくアルミニウムによりU字状のハンドを形成しようとすると、薄い肉厚で、しかも平面U字状に切欠かれているため、大半のハンドが歪んで所望の平面状態となし得ない。 しかし、本発明に係る搬送用ハンドは、適宜に積層されるカーボンを含む可撓性繊維質材と熱硬化性樹脂とからなる熱硬化性部材が、加圧・圧締されて形成されるため、歪のない所望の平面状態のものが確実に得られる。 【0079】 勿論、搬送用ハンドは歪のない所望の平面状態に形成されるため、従来のごとくの搬送時における搬送用ハンドの歪み量の考察は無用となる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の対象とする自動搬送装置の概略斜視図 【図2】 本発明の実施例を示す斜視図 【図3】 図2のIII-III線断面図 【図4】 搬送用ハンド10の詳細説明図 【図5】 図2に示される搬送用ハンド10をカセット40に挿入する時の模式拡大図 【図6】 従来の搬送用ハンド50を示す斜視図 【図7】 図6に示される搬送用ハンド50とカセット40との関係を示す図であって、図3に相当する図 【図8】 図6に示される搬送用ハンド50をカセット40に挿入する時の模式拡大図 【符号の説明】 1 自動搬送装置 2 ロボット関節腕 3 ロボット肩 10 薄板状ワーク搬送用ハンド 101 搬送用ハンドの先端からの平面中央部のU字状の切欠き 102 搬送用ハンドの幅方向の指部 103 搬送用ハンドの幅方向の指部 30 薄板状ワーク 40 カセット EL 搬送用ハンドの長手方向の縦弾性係数 EW 搬送用ハンドの長手方向と直交する幅方向の縦弾性係数 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-04-20 |
出願番号 | 特願平7-117956 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(H01L)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 中島 昭浩 |
特許庁審判長 |
西川 恵雄 |
特許庁審判官 |
豊原 邦雄 岡野 卓也 |
登録日 | 2003-01-31 |
登録番号 | 特許第3393955号(P3393955) |
権利者 | 株式会社ダイヘン |
発明の名称 | 薄板状ワーク搬送用ハンド |
代理人 | 堀井 豊 |
代理人 | 森田 俊雄 |
代理人 | 仲村 義平 |
代理人 | 深見 久郎 |
代理人 | 酒井 將行 |
代理人 | 森田 俊雄 |
代理人 | 野田 久登 |
代理人 | 中井 宏 |
代理人 | 中井 宏 |
代理人 | 仲村 義平 |
代理人 | 深見 久郎 |
代理人 | 野田 久登 |
代理人 | 堀井 豊 |
代理人 | 酒井 將行 |