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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) E06B
管理番号 1141414
判定請求番号 判定2005-60080  
総通号数 81 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 1997-07-08 
種別 判定 
判定請求日 2005-11-09 
確定日 2006-08-04 
事件の表示 上記当事者間の特許第2978105号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「伸縮門扉」は、特許第2978105号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1.請求の趣旨
本件判定請求は、イ号物件目録記載の「伸縮門扉」(以下、「イ号物件」という。)が、特許第2978105号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)の技術的範囲に属しない、との判定を求めたものである。

2.本件発明の出願経過
本件判定請求書の「6.請求の理由」の項にも示されているように、本件発明の出願経過等の概略を示すと、次のとおりである。
(1)出願 平成 7年12月26日
(2)出願公開平成 9年 7月 8日
(3)審査請求平成10年 2月 3日
(4)特許査定平成11年 7月30日
(5)特許登録平成11年 9月10日

3.本件発明
本件発明は、願書に添付された明細書及び図面(以下、「特許明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、その構成要件を分説すると、次のとおりである。
A 相反する方向に傾斜させた斜架材が交差する位置をピン結合して扉体を形成し、扉体の一側を門柱等の固定部に定着する伸縮門扉において、
B 扉体の上方部における斜架材のピン軸間距離を扉体の下方部における斜架材のピン軸間距離より小さくしたことを特徴とする
C 伸縮門扉。

4.イ号物件
イ号物件は、判定請求書に添付のイ号物件目録の記載内容からみて、次のa〜cの構成からなるものとするのが相当と認める。
a 吊り元枠と戸当り枠との間に斜架材及び縦格子により構成される伸縮部を有し、前記斜架材は右肩上がりの斜架材と左肩上がりの斜架材とを備えるとともに、これらを貫通するシャフトにより連結して扉体を形成し、吊り元枠は地面に立設固定された吊り元柱に回動自在に装着された伸縮門扉において、
b 扉体の上方部における斜架材のシャフト間距離が315mm若しくは158mmであり、扉体の下方部における斜架材のシャフト間距離が159mm若しくは160mmである
c 伸縮門扉。
(ちなみに、イ号物件については、別件の判定請求2005-60056号事件におけるイ号物件と同一であることを、本件発明の特許権者である本件判定請求における被請求人が認めており、これによれば、イ号物件は、当該別件判定請求における被請求人である新日軽株式会社が販売している「伸縮門扉(品名 ニューエクジスXH型ハンガー式)」である。)

5.対比
両者を対比すると、イ号物件の「右肩上がりの斜架材と左肩上がりの斜架材」は、本件発明の「相反する方向に傾斜させた斜架材」に相当する。同様に、イ号物件の「ピン結合」は、本件発明の「シャフト」による「連結」に、イ号物件の「吊り元柱」に「装着」された「吊り元枠」は、本件発明の「門柱等の固定部」に「定着」する「扉体の一側」に、イ号物件の「シャフト間距離」は、本件発明の「ピン軸間距離」に、それぞれ相当する。そうすると、イ号物件が、本件発明の構成要件A及びCと文言上一致する構成を備えていることが明らかであるから、イ号物件は、本件発明の構成要件A及びCを充足するといえる。また、このことに関して、請求人および被請求人の間に、特段、争いはない。
しかしながら、イ号物件の構成bが、本件発明の構成要件Bを充足するか否かが明らかでない。そこで、前者が後者を充足するかの点について、以下に検討する。

6.イ号物件の構成bが本件発明の構成要件Bを充足するか否かについて
(1)文言上充足するか否かについて
請求人は、本件発明の「扉体の上方部における斜架材のピン軸間距離」、「扉体の下方部における斜架材のピン軸間距離」の各文言は、発明の詳細な説明の実施例の記載等を参酌して、夫夫「扉体の上方部、中間部及び下方部のうち、その上方部のピン軸間距離」、「扉体の上方部、中間部及び下方部のうち、その下方部のピン軸間距離」と解釈すべきであると主張している(判定請求書7頁3〜14行及び14頁18行〜16頁22行)。
しかしながら、本件発明に、特段「中間部」や、それに類する用語が用いられていないことから、発明の詳細な説明の実施例の記載等を参酌するまでもなく、本件発明の「扉体の上方部」は扉体の上下方向の半分より上の部分を意味し、同様に、「扉体の下方部」は扉体の上下方向の半分より下の部分を意味すると解釈できる。また、このように解釈すると、本件特許明細書に記載される実施例において、扉体の中間部に位置する斜架材のピン軸間距離が345mmであって、当該距離が扉体の上方部における斜架材のピン軸間距離よりも大きいものの、(中間部に位置するものを除いた)扉体の上方部における斜架材のピン軸間距離と扉体の下方部における斜架材のピン軸間距離のみの関係において、両者を比較してみれば、170mm若しくは171mmという扉体の上方部における斜架材のピン軸間距離の何れもが、174mm若しくは175mmという扉体の下方部における斜架材のピン軸間距離の何れよりも小さくなっていることから、上記のように解釈した点は、本件発明の実施例の記載内容とも整合するといえる。
そこで、イ号物件における扉体の斜架材のピン軸間距離についてみるに、扉体の上方部における斜架材のピン軸間距離のうち、当該距離が158mmであるものについては、扉体の下方部における斜架材のピン軸間距離である159mm若しくは160mmより小さいといえるが、ピン軸間距離が315mmであるものについては、扉体の下方部における斜架材のピン軸間距離である159mm若しくは160mmより大きいものであって、小さいとはいえないことが明らかである。
そうすると、イ号物件の構成bは、本件発明の構成要件Bを文言上充足しないといわざるを得ない。

ところで、被請求人は、対比すべき斜架材のピン軸間距離は、同等あるいは対応すべき斜架材のピン軸間距離であると主張している(答弁書11頁7〜18行)。
しかしながら、上述したように、本件発明の特許請求の範囲の記載をみれば、「扉体の上方部における斜架材」と「扉体の下方部における斜架材」との間で対比されるべきものは、斜架材の交差位置間の距離ではなく、あくまで「ピン軸間距離」であるから、ピン結合を省略した、すなわち縦格子間の斜架材の交差位置を一つおいた(一つ飛びの)位置に隣接するピン軸が存在する場合であっても、本件発明が、斜架材の交差位置を一つおいて隣接するピン軸間のピン軸間距離を2つのピン軸間距離と対比することや、(一つ飛びでない)斜架材の交差位置を一つのピン軸間距離とみなしたりすることまでをも、本件発明が文言上含むものであると解釈することができない。
そこで、このような被請求人の主張は、いわゆる均等論の適用を実質的に主張しているものと解することもできるので、さらに進んで、イ号物件の構成が、均等論の適用を含めて、本件発明の技術的範囲に属するといえるか否かについて、次に検討する。

(2)均等論の適用の要件について
最高裁平成6年(オ)1083号判決(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁)は、均等論が適用される場合について、次の5つの要件に従って認める旨の判示をしている。

(均等論が適用できるための5つの要件)
「特許請求の範囲に記載された構成中に対象製品等と異なる部分が存在する場合であっても、
・その部分が特許発明の本質的部分ではなく(第一要件)、
・その部分を対象製品等におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達することができ、同一の作用効果を奏するものであって(第二要件)、
・このように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、対象製品等の製造等の時点において容易に想到することができたものであり(第三要件)、
・対象製品等が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれからその出願時に容易に推考できたものではなく(第四要件)、かつ、
・対象製品等が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないとき(第五要件)は、
その対象製品等は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当である。」

(3)第四要件(対象製品の容易推考性)について
最初に、イ号物件が、前記第四要件(対象製品の容易推考性)を満たすか否かについて検討する。
本件判定請求書において、請求人は、先行する発明や技術を多々示しているので、これらを本件特許の出願時の公知技術として参酌する。

(イ)本件特許出願時における公知技術について
本件発明の特許出願前に頒布された刊行物である実願平5-5771(実開平6-58096号)のCD-ROM(以下、「先行文献1」という)には、「伸縮門扉」に関して、図面と共に以下の記載がある。
a.「【0011】【実施例】… 図1乃至図8は本考案の第1実施例を例示する。
図1及び図2は伸縮門扉を示し、1は吊元側支柱、2は戸当り側支柱で、これらの各支柱1,2は逆U字状に構成され、ガレージ等の出入口部の左右両端で地面3に立設されている。
【0012】4は伸縮門扉本体で、吊元側支柱1と戸当り側支柱2との間に、その間口部を開閉するように設けられている。この伸縮門扉本体4は、上下方向に配置された吊元側端枠5及び戸当り側端枠6と、この両端枠5,6間に間口方向に等間隔をおいて上下方向に配置された多数の縦桟7と、各縦桟7間を相互に伸縮自在に連結する上下2列のパンタグラフ機構8とを備えている。
【0013】端枠5,6及び縦桟7は各支柱1,2と略同幅の逆U字状であって、その吊元側端枠5は吊元側支柱1にヒンジ9を介して上下方向の軸心廻りに揺動自在に連結され、また戸当り側端枠6は伸縮門扉本体4の前後方向の両側に開閉操作用の把手10を有すると共に、伸縮門扉本体4を閉状態で戸当り側支柱2に施錠するための施錠装置を有する。
【0014】多数の縦桟7の内、伸縮門扉本体4の伸縮方向の両端の縦桟7は、吊元側端枠5及び戸当り側端枠6に夫々一体形成され、またその中央の縦桟7及び戸当り側端枠6に一体形成された縦桟7には、内外両側にキャスター車輪11が取り付けられている。
【0015】各パンタグラフ機構8は逆U字状の縦桟7内に設けられている。そして、この各パンタグラフ機構8は、各縦桟7に対して上下方向の3箇所で交差するように、斜め方向に傾斜して交差状に配置された上下2本づつの斜め桟12,13 を多数組備えて構成されている。
【0016】各斜め桟12,13 は各縦桟7に対応する上下3箇所の交差部で枢軸14により屈折自在に枢支連結され、また下側の各2本の斜め桟12,13 は隣り合う一対の縦桟7間の交差部で枢軸15により屈折自在に枢支連結されている。
上下3個の枢軸14の内、中央の枢軸14は、各縦桟7のガイド溝16内に固定された帯板状の固定板17に両端面を当接させた状態で固定板17の外側から打ち込まれたリベットにより固定板17に固定され、またその上下両側の枢軸14は縦桟7のガイド溝16により上下動自在に嵌合されている。」
b.段落【0016】によれば、上下各パンタグラフ機構の斜め桟は、下から、順にa枢軸14、b枢軸15、c枢軸14、d枢軸14の4箇所で枢支連結されることによって、3つの間隔が存在しているが(a〜dは便宜のために付したものである)、これを図1によってみると、ab間及びbc間の2つの間隔については斜め材の交差する位置毎に枢軸14及び15が配置され、cd間の間隔については斜め材の交差する位置を一つおいて枢軸14のみが配置されており、cd間の枢軸間距離は、ab間及びbc間の枢軸間距離の約2倍であることが認められる。

上記記載事項ないし図面に示された内容を総合すると、先行文献1には、次の発明(以下、「公知発明」という)が開示されていると認めることができる。
(公知発明)
1 吊元側端枠5及び戸当り側端枠6との間に斜め桟12,13及び縦桟7により構成されるパンタグラフ機構8を有し、前記斜め桟は斜め方向に傾斜して交差状に配置されるとともに、これらを貫通する枢軸14,15により枢支連結され伸縮門扉本体4を形成し、吊元側端枠5は吊元側支柱1にヒンジ9を介して上下方向の軸心廻りに揺動自在に連結された伸縮門扉において、
2 伸縮門扉本体4の上方のパンタグラフ機構における斜め材の枢軸によって3つの間隔が存在し、そのうちの1つの枢軸間距離が他の2つの枢軸間距離の約2倍であり、伸縮門扉本体4の下方のパンタグラフ機構における斜め材の枢軸によって3つの間隔が存在し、そのうちの1つの枢軸間距離が他の2つの枢軸間距離の約2倍である
3 伸縮門扉。
なお、「1」ないし「3」は、分説のために便宜上付した記号である。

同じく、本件発明の特許出願前に頒布された刊行物である実願平5-33621(実開平7-4793号)のCD-ROM(以下、「先行文献2」という)には、「伸縮門扉」に関して、図面と共に以下の記載がある。
c.「【0001】【産業上の利用分野】 本考案は、複数本の縦桟をパンタグラフ状の伸縮リンクで連結して門扉本体を構成し、該門扉本体を左右方向に伸縮開閉し得るようにした伸縮門扉に関するものである。」
d.「【0002】【従来の技術】 この種の伸縮門扉として、従来から図8に示すようなものが知られている。この図8に示す従来の伸縮門扉は、 … 該門扉本体1を左右方向に伸縮開閉し得るようになっている。
【0003】 又、この従来例の伸縮門扉では、 … 又、伸縮リンク3における各縦桟2,2間に位置する上段交差部34と下段交差部35は、それぞれ軸6,6で枢着している(尚、他の従来例では、縦桟2,2間に位置する上段交差部34と下段交差部35のうちのいずれか一方を無軸状態としたものもある)。」
e.「【0005】 本考案は、上記した従来の伸縮門扉の問題点に鑑み、伸縮リンクの右上り斜桟と右下り斜桟とを縦桟に対して上段、中段、下段の3箇所でそれぞれ交差させるようにして組付けた伸縮門扉において、伸縮リンクと各縦桟との組付構造を簡略化して、部品数及び組立工数を削減し得るようにすることを目的とするものである。」
f.「【0016】…尚、この第1実施例では、各縦桟2,2間の上段交差部34を軸6で枢着しているが、この枢着部は上段交差部に変えて下段交差部35に適用することも可能であり、その場合も同様の作用が得られる。又、他の実施例では、各縦桟2,2間の上下各交差部34,35の両方をそれぞれ軸6で枢着することも可能である。…」

同じく、本件発明の特許出願前に頒布された刊行物である実公平6-24558号公報(以下、「先行文献3」という)には、「伸縮門扉」に関して、図面と共に以下の記載がある。
g.「前記上側伸縮リンク4側における右上り傾斜リンク片41又は右下り傾斜リンク片42と相互に隣接する2本の縦桟2,3との2つの連結部(A1とA2又はA2とA3)間の各間隔A・・は、前記下側伸縮リンク5側における右上り傾斜リンク片41又は右下り傾斜リンク片42と同じく相互に隣接する2本の縦桟2,3との2つの連結部(B1とB2又はB2とB3)間の各間隔B・・より、門扉の伸縮作用が阻害されない範囲内において大きくしている(符号Aの間隔と符号Bの間隔との差は、該A又はBの長さによって異なるが、例えば符号Aの間隔が230mmであるときに符号Bの間隔が229mm程度が適当である。)。」(3頁左欄27〜38行)

(ロ)対比・判断
イ号物件と公知発明を対比すると、公知発明の「吊元側端枠5」、「戸当り側端枠6」、「斜め方向に傾斜して交差状に配置」される「斜め桟12,13」、「縦桟7」、「パンタグラフ機構8」、「枢軸14,15」、「伸縮門扉本体4」、及び、「吊元側端枠5」が「揺動自在に連結」される「吊元側支柱1」は、イ号物件の「吊り元枠」、「戸当り枠」、「右肩上がりの斜架材と左肩上がりの斜架材」、「縦格子」、「伸縮部」、「シャフト」、「扉体」、及び、「吊り元枠」が「回動自在に装着」される「吊り元柱」に、それぞれ相当する。

そうすると、両者は、
「吊り元枠と戸当り枠との間に斜架材及び縦格子により構成される伸縮部を有し、前記斜架材は右肩上がりの斜架材と左肩上がりの斜架材とを備えるとともに、これらを貫通するシャフトにより連結して扉体を形成し、吊り元枠は地面に立設固定された吊り元柱に回動自在に装着された伸縮門扉」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
イ号物件では、扉体の上方部における斜架材のシャフト間距離が315mm若しくは158mmであり、扉体の下方部における斜架材のシャフト間距離が159mm若しくは160mmであるのに対して、公知発明では、扉体の上方部における斜架材のシャフト間距離の1つが他の2つのシャフト間距離の約2倍であり、扉体の下方部における斜架材のシャフト間距離の1つが他の2つのシャフト間距離の約2倍であるものの、これらシャフト間距離の具体的数値が不明である点。
[相違点2]
イ号物件では、上方部における斜架材のシャフト間距離と下方部における斜架材のシャフト間距離とにおいて、1〜2mm程度の寸法差が設けられているのに対して、公知発明がそのような構成を具備しない点。

上記各相違点について検討する。
[相違点1]について
イ号物件についてみるに、315mmというシャフト間距離は、158mm、159mm及び160mmというシャフト間距離の約2倍であることが明らかである。また、被請求人が、答弁書において、315mmであるピン軸間距離(シャフト間距離)L1はピン軸を抜いているものである旨、主張している(答弁書11頁2〜10行)ように、315mmというシャフト間距離は、通常であれば158〜160mm程度のシャフト間距離に対して、斜架材の交差位置におけるシャフトを省略した結果により得られた値であると理解することができる。
一方、公知発明において、扉体の上方部及び下方部における斜架材のシャフト間距離の1つが他の2つのシャフト間距離の約2倍であることは、斜め材(斜架材)の交差する位置を一つおいて枢軸14のみが配置されていること、即ち、シャフトによる連結が省略されていることから、結果として、そのような状態になっていると理解することができる。
さらに、先行文献2から、伸縮門扉の伸縮機構において、斜架材の交差位置を無軸状態とすることが従来からの周知技術であったということや(上記「6.」(3)(イ)d.参照)、部品数及び組立工数を削減することが、伸縮門扉という技術分野における従来よりよく知られた課題であり、そのために縦桟間の(斜架材の)交差部の枢着位置を変更したり、(斜架材の)交差部の全部を枢着したり、(斜架材の)交差部の一部の枢着を省略したりすることが普通に行われていたということが(上記「6.」(3)(イ)e.及びf.参照)、理解できる。
そうすると、斜架材の交差部位置における枢着を省略して無軸状態とすることは周知技術であって、部品数を削減するためにシャフトによる連結を省略することや、これとは逆に、例えば、強度が求められるといった事情からシャフトによる連結を省略しないようにすることは、何れも、当業者が必要に応じて適宜なし得ることができる設計事項であるということができるから、扉体の上方部及び下方部の両方でのシャフトによる連結が省略されている公知発明において、下方部についてはシャフトによる連結を省略しない態様を採ることが格別困難であるとはいえない。そして、シャフトによる連結が省略されている部分のシャフト間距離の具体的数値として315mmという値を、シャフトによる連結が省略されていない部分のシャフト間距離の具体的数値として158ないし160mmという値を、それぞれ設定することについても、伸縮門扉全体のサイズや斜架材等の各種部材のサイズに応じて決定することのできる設計事項にすぎない。
[相違点2]について
各シャフト間距離の大きさを僅かに異ならせることについては、例えば、先行文献3に、門扉の伸縮作用が阻害されない範囲において、上方と下方のシャフト間距離を僅かに異ならせるように構成することが示されている。そうすると、相違点2に係るイ号物件の寸法差を設けることは、当業者であれば通常の創作能力を発揮して適宜採用し得たことである。
以上のことから、イ号物件は、公知発明に周知技術を適用することによって、扉体の下方部における斜架材で省略されているシャフトによる連結について、これを省略しないようにするとともに、実際のシャフト間距離として、315mm、158mm、159mm及び160mmという値を設定することによって当業者であれば容易になし得たものということができるから、結局、イ号物件は、公知発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に推考できたものである。

(4)まとめ
以上検討したとおり、最高裁平成6年(オ)1083号判決(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・民集52巻1号113頁)が判示するところの均等論が適用できるための5つの要件の内、少なくとも第四要件(対象製品の容易推考性)を満たすということができないのであるから、本件発明の構成要件Bとイ号物件の構成とが構成上異なる部分につき、均等論の適用ができないというべきである。
したがって、イ号物件の構成は、本件発明の構成要件Bを充足するということができない。

7.むすび
以上検討したとおり、イ号物件は、文言上本件発明の技術的範囲に属さず、また、均等論が適用される余地もないから、イ号物件は、本件発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲
 
判定日 2006-07-25 
出願番号 特願平7-351808
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (E06B)
最終処分 成立  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 宮川 哲伸
柴田 和雄
登録日 1999-09-10 
登録番号 特許第2978105号(P2978105)
発明の名称 伸縮門扉  
代理人 藤本 昇  
代理人 谷藤 孝司  
代理人 岩田 徳哉  
代理人 薬丸 誠一  
代理人 藤本 昇  
代理人 薬丸 誠一  
代理人 岩田 徳哉  
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