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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1142202
審判番号 不服2003-22939  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-09-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-26 
確定日 2006-08-17 
事件の表示 平成11年特許願第 44864号「計測装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月 8日出願公開、特開2000-241120〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成11年2月23日の出願であって、平成15年9月30日付け(発送日;同年10月28日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月22日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年12月22日付けの手続補正について
(1)補正の内容
本件補正は、補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】 カメラ手段と画像処理装置と前記カメラ手段のキャリブレーションを行なうキャリブレーション手段を有し、教示時に前記カメラ手段により得られた対象物の基準画像と、前記カメラ手段により得られた被検対象物の被検対象物画像とに基づいて前記被検対象物を検出し、その位置、形状または寸法を計測する計測装置において、
前記画像処理装置は、
前記基準画像に対して、前記キャリブレーションの結果に基づいてレンズ歪みまたは斜めから撮像したことによる歪みの補正を施した補正基準画像を作成する補正基準画像作成手段と、
前記被検対象物画像に対して、前記キャリブレーションの結果に基づいてレンズ歪みまたは斜めから撮像したことによる歪みの補正を施した補正被検対象物画像を作成する補正被検対象物画像作成手段とを備え、
前記補正基準画像と前記補正被検対象物画像とに基づいて前記計測を行なう前記計測装置。
【請求項2】 前記画像処理装置は、前記補正基準画像に準拠して被検対象物検出のための検出パラメータを設定する手段を備え、該設定された検出パラメータを用いて被検対象物の検出を行なう、請求項1に記載の記計測装置。」
を、
「【請求項1】 カメラ手段と画像処理装置と前記カメラ手段のキャリブレーションを行なうキャリブレーション手段を有し、教示時に前記カメラ手段により得られた対象物の基準画像と、前記カメラ手段により得られた被検対象物の被検対象物画像とに基づいて前記被検対象物を検出し、その位置、形状または寸法を計測する計測装置において、
前記画像処理装置は、
前記基準画像に対して、前記キャリブレーションの結果に基づいてレンズ歪みまたは斜めから撮像したことによる歪みの補正を施した補正基準画像を作成する補正基準画像作成手段と、
前記被検対象物画像に対して、前記キャリブレーションの結果に基づいてレンズ歪みまたは斜めから撮像したことによる歪みの補正を施した補正被検対象物画像を作成する補正被検対象物画像作成手段とを備え、
前記補正基準画像と前記補正被検対象物画像とに基づいて前記検出を行なうことを特徴とする前記計測装置。
【請求項2】 前記画像処理装置は、前記補正基準画像に準拠して被検対象物検出のための検出パラメータを設定する手段を備え、該設定された検出パラメータを用いて被検対象物の検出を行なう、請求項1に記載の前記計測装置。」
と補正する補正事項を含むものである。
なお、下線は補正箇所を明示するために付したものである。

(2)補正の目的の適合性
上記補正は、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内でなされたものであって、請求項1に記載された「対象物の基準画像と、前記カメラ手段により得られた被検対象物の被検対象物画像とに基づいて前記被検対象物を検出」との記載との適合を図るためのものであり、実質的に拒絶の理由に示す事項についてするものと認められるから、上記手続補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成15年法律第47号)附則第2条第7項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法第17条の2第4項第4号の(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする)明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

3.本願発明について
平成15年12月22日付けの手続補正は、上記のとおり適法になされたものと認められるので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成11年11月16日付け、平成14年12月16日付け、及び、平成15年12月22日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められる(「2.(1)」の補正後の特許請求の範囲参照。以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。

4.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-201021号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
1a.「【請求項1】 キャリブレーション方法であって、レンズを有する撮像手段により、基準教示点を有するキャリブレーションプレートを撮像し、前記撮像手段の撮像手段座標系、該撮像手段のスクリーン上のスクリーン座標系、該撮像手段により得られた画像の画面座標系、および世界座標系における前記教示点の座標の対応関係に基づいて、前記レンズの歪みを考慮して前記撮像手段の撮像手段パラメータおよび/または前記レンズの歪パラメータを算出することを特徴とするキャリブレーション方法。
【請求項2】 前記撮像手段パラメータおよび前記歪パラメータの算出を、該撮像手段パラメータおよび該歪パラメータの初期値を設定し、該初期値に基づいて、前記画面座標系における前記画像の前記レンズによる歪を補正し、該歪が補正された画像における前記教示点の座標値を算出し、該算出された教示点の座標値および前記世界座標系における前記教示点の対応関係に基づいて行うことを特徴とする請求項1記載のキャリブレーション方法。
【請求項3】 前記各パラメータの算出により得られた前記撮像手段パラメータおよび前記歪パラメータに基づいて前記画面座標系における前記画像の前記レンズによる歪を補正し、該歪が補正された画像における前記教示点の座標値を算出し、該算出された教示点の座標値および前記世界座標系における前記教示点の対応関係に基づいて前記撮像手段パラメータおよび前記歪パラメータを算出し、該算出された各パラメータが所定の値に収束するまで前記補正、前記座標値の算出および前記撮像手段パラメータおよび前記歪パラメータの算出を繰り返し行うことを特徴とする請求項2記載のキャリブレーション方法。
【請求項4】 前記撮像手段パラメータが、前記教示点の前記世界座標系から前記撮像手段座標系への変換を表す回転行列と平行移動ベクトル、前記スクリーン座標系と前記画面座標系との原点位置のずれ、および前記スクリーン座標系と前記画面座標系との関係を表すスケールファクタと前記撮像手段の焦点距離との積であることを特徴とする請求項1、2または3記載のキャリブレーション方法。
【請求項5】 前記レンズによる歪の補正を、式
xd ′=xd +(g1 +g3 )xd 2 +g4 xd yd +g1 yd 2
+k1 xd (xd 2 +yd 2 )
yd ′=yd +g2 xd 2 +g3 xd yd +(g2 +g4 )yd 2
+k1 yd (xd 2 +yd 2 )
xd =u-u0 , xd ′=u′-u0
yd =v-v0 , yd ′=v′-v0
但し、g1 〜g4 ,k1 :歪パラメータ
u,v:レンズによる歪を補正した後の画面座標系における前記教示点の座標
u′,v′:レンズによる歪を補正する前の画面座標系における前記教示点の座標
u0 ,v0 :スクリーン座標系と画面座標系との原点位置のずれ
により行うことを特徴とする請求項2、3または4記載のキャリブレーション方法。」(「特許請求の範囲」)
1b.「【0003】このような視覚装置のキャリブレーションは、世界座標系内に置かれた座標値が既知の複数の教示点を撮像手段で撮像して教示点画像を生成し、各教示点の世界座標値と教示点の画像座標値とを用いて所定のアルゴリズムに基づいて演算を行うことにより行われる。
【0004】このようなカメラ等の撮像手段で撮像した画像を処理して物体の位置を計測する場合、カメラのキャリブレーション(校正)が必要不可欠である。カメラキャリブレーションとは、世界座標系(絶対座標系)に対するカメラの位置と向き、カメラの焦点距離・画像中心等のカメラパラメータを求めることである(特開平6-137840号参照)。
【0005】ここで、三次元空間中の点Pi をカメラで撮像したとき、この点Pi は画面中の点pi に投影されるものとする。そして、例えば図2に示すような、整列した複数の円形の教示点マーク3Aが描かれているキャリブレーションプレート3を用いてカメラキャリブレーションを行う場合、点Pi の座標(Xi ,Yi ,Zi ))と点pi の座標(xi ,yi )が既知である必要がある。点Pi として、例えばキャリブレーションプレート3に描かれている円形の教示点マーク3Aの中を用い、このキャリブレーションプレート3を距離dずつ正確に移動させることにより、座標が既知である点Pi (Xi ,Yi ,Zi )を用意できる。そして、このキャリブレーションプレート3をカメラで撮像し、画像を処理して円形の教示点マーク3Aの中心を算出することにより、画面中の点pi の座標(xi ,yi )を求めることができる。
【0006】また、キャリブレーションに必要な教示点の世界座標系における座標値と、画面座標系における座標値との対応付けを行うことにより、キャリブレーションを行う方法が公知であるが、この方法においてキャリブレーションを簡易かつ高精度に行う方法が提案されている(特開平6-137840号)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平6-137840号に記載されている方法であっても、キャリブレーションを高精度に行うことはできない。すなわち、キャリブレーションを行うための教示点はカメラなどの撮像手段を用いて撮像するものであるが、この撮像手段の構成要素としてレンズが含まれているため、このレンズの歪みにより、撮像手段に入力される画像が歪んでしまい、世界座標系における教示点の座標値と、画面座標系における座標値との対応付けを正確に行うことができず、この結果キャリブレーションを高精度に行うことができないものであった。
【0008】本発明は上記事情に鑑み、撮像手段におけるレンズの歪みの影響を受けることなく、撮像手段のキャリブレーションを高精度に行うことができるキャリブレーション方法を提供することを目的とするものである。」
1c.「【0018】図1は本発明によるキャリブレーション方法を実施するための装置の概略を表す図である。図1に示すように、本発明によるキャリブレーション方法を実施するための装置1は、撮像手段であるカメラ2の視野内にキャリブレーションプレート3が入るように配置し、画像処理手段4によりキャリブレーションプレート3の画像を撮像する。撮像された画像は演算手段5に入力され、この演算手段5においてキャリブレーションプレート3上の教示点から教示点の位置および方向を検出する。そして検出された位置および方向と、データ入力手段6により予め入力された教示点の配列情報に基づいて、演算手段5において画像中の画面座標系における各教示点の座標値と世界座標系における座標値との対応付けを行う。次いで、各教示点の画像および世界座標系の座標値の組から同様に演算手段5において、カメラ2のレンズの歪を考慮してキャリブレーション演算を行い、カメラパラメータとレンズの歪パラメータを算出する。このようにして得られたカメラパラメータおよび歪パラメータはデータ出力手段7により他の装置に入力されて後の処理に用いられる。」
1d.「【0071】このカメラによる撮影は以下のように行う。すなわち、例えば、ステレオ計測により物体の三次元位置を計測する場合は、まず2つのカメラを用いて、各カメラから画像を入力する。そして上述した式(5) によりレンズの歪みパラメータを使い、入力画像を補正する。次いで、補正画像から計測したい特徴部を抽出し、画面中における特徴部の座標を求める。最後に左右画面における特徴部の座標、左右カメラのカメラパラメータより、特徴部の三次元座標を計算する。そしてこれにより、物体の位置を正確に求めることができる。
・・・
【0073】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によるキャリブレーション方法は、カメラパラメータのみならずカメラのレンズの歪を考慮してレンズの歪パラメータをも求めてキャリブレーションを行うようにしたため、撮像手段のレンズの歪の影響を除去することができ、常に正確なキャリブレーションを行うことができる。」

5.対比・判断
・上記「4.」の「1b.」の「【0004】このようなカメラ等の撮像手段で撮像した画像を処理して物体の位置を計測する場合、カメラのキャリブレーション(校正)が必要不可欠である。カメラキャリブレーションとは、世界座標系(絶対座標系)に対するカメラの位置と向き、カメラの焦点距離・画像中心等のカメラパラメータを求めることである(特開平6-137840号参照)。」等の記載からみて、キャリブレーションに当たっては、カメラの位置と向きもカメラパラメータとして考慮されること。
・上記「4.」の「1c.」の記載から、キャリブレーションを実施するための装置として、カメラ2、キャリブレーションプレート3、画像処理手段4,演算手段5が用いられること。
・上記「4.」の「1c.」の「このようにして得られたカメラパラメータおよび歪パラメータはデータ出力手段7により他の装置に入力されて後の処理に用いられる。」との記載、及び、「1d.」の記載から、演算手段5のキャリブレーション演算結果を用いて、入力したカメラの画像の歪み補正を行い、それに基づいて計測したい特徴部を抽出する計測装置が記載されているものと認められること。
したがって、引用刊行物には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「レンズを有する撮像手段であるカメラ2と、カメラ2により撮像された基準教示点を有するキャリブレーションプレート3の画像を入力し、前記撮像手段の撮像手段座標系、該撮像手段のスクリーン上のスクリーン座標系、該撮像手段により得られた画像の画面座標系、および世界座標系における前記教示点の座標の対応関係に基づいて、前記撮像手段の撮像手段パラメータおよび前記レンズの歪パラメータを算出し、カメラの位置と向き、前記レンズの歪みを考慮してキャリブレーション演算を行う演算手段5とを有し、前記キャリブレーション演算結果を用いてカメラ2の入力画像を補正し、歪みの補正された画像に基づいて計測したい特徴部を抽出する計測装置。」

本願発明(前者)と上記引用発明(後者)とを対比する。
・後者の「撮像手段であるカメラ2」、「演算手段5」は、前者の「カメラ手段」、「キャリブレーション手段」に相当する。
・後者の「演算手段5のキャリブレーション演算結果を用いてカメラ2の入力画像を補正し、補正された画像に基づいて計測したい特徴部を抽出する計測装置」と、前者の「教示時に前記カメラ手段により得られた対象物の基準画像と、前記カメラ手段により得られた被検対象物の被検対象物画像とに基づいて前記被検対象物を検出し、その位置、形状または寸法を計測する計測装置であって、該計測装置に含まれる画像処理装置が、前記基準画像に対して、前記キャリブレーションの結果に基づいてレンズ歪みまたは斜めから撮像したことによる歪みの補正を施した補正基準画像を作成する補正基準画像作成手段と、前記被検対象物画像に対して、前記キャリブレーションの結果に基づいてレンズ歪みまたは斜めから撮像したことによる歪みの補正を施した補正被検対象物画像を作成する補正被検対象物画像作成手段とを備え、前記補正基準画像と前記補正被検対象物画像とに基づいて前記検出を行なうことを特徴とする前記計測装置」とは、ともに、「被検対象物画像に対して、キャリブレーションの結果に基づいてレンズ歪みまたは斜めから撮像したことによる歪みの補正を施した補正被検対象物画像を作成し、補正被検対象物画像を計測する計測装置」である点で共通する。
したがって、両者は、
「カメラ手段と前記カメラ手段のキャリブレーションを行なうキャリブレーション手段を有し、前記カメラ手段により得られた被検対象物の被検対象物画像に基づいて前記被検対象物を計測する計測装置において、前記被検対象物画像に対して、前記キャリブレーションの結果に基づいてレンズ歪みまたは斜めから撮像したことによる歪みの補正を施した補正被検対象物画像を作成し、前記補正被検対象物画像を計測する前記計測装置。」
の点の構成で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
前者が、教示時に前記カメラ手段により得られた対象物の基準画像と、前記カメラ手段により得られた被検対象物の被検対象物画像とに基づいて前記被検対象物を検出し、その位置、形状または寸法を計測する計測装置であり、画像処理装置により基準画像及び被検対象物画像の歪みを補正した補正基準画像及び補正被検対象物画像に基づいて検出を行っているのに対し、後者は、カメラの入力画像に前者と同様の歪み補正を行い、補正された画像に基づいて計測する計測装置ではあるものの、カメラ手段から得られた基準画像とカメラ手段により得られた被検対象物の被検対象物画像とに基づいて前記被検対象物を検出する構成を有していない点。

そこで、上記相違点について検討する。
本願明細書には、「【0002】
【従来の技術】近年、工業製品やその部品等を取り扱う作業現場において、それら対象物の位置計測、形状判定、寸法計測等を行なうためにカメラ手段を含む視覚センサを装備したシステムが多用されている。これらシステムにおける視覚センサは、カメラ手段が取得した画像中から対象物に対応する画像領域(以下、「対象物画像」と言う)を検出し、検出された対象物画像の解析結果から対象物の位置計測、形状判定、寸法計測等を行なう。
【0003】対象物画像を検出するために、視覚センサには対象物に関する情報が与えられる必要があるが、そのために従来より用いられている手法は次のようなものである。
【0004】先ず、前以て基準となる対象物(例:同種の部品を代表する標準部品。以下、
「基準対象物」と言う)の画像(以下、「基準画像」と言う)をカメラ手段を用いて取得して視覚センサに教示しておく。
【0005】そして、本作業においてカメラ手段が取得した画像について、教示画像を利用した解析が行なわれ、被検対象物(被検対象物の対象物画像。以下、「被検対象物画像」と言う)が検出される。検出された被検対象物画像は更に解析され、被検対象物の位置計測、形状判定、寸法計測等が行なわれる。
【0006】教示画像を用いて被検対象物画像を検出する具体的な手法としては、教示画像に含まれる幾何学的特徴(直線、円など)を用いる特徴検出、教示画像の一部(または全部)をテンプレートとして用いて被対象物画像と比較するテンプレートマッチング、教示画像と被対象物画像を2値化するなどして抽出した画像について面積等の特徴量を比較する特徴量検出などが利用されている。
【0007】上記従来技術の一つの問題点は、実際の作業において被検対象物とされる工業製品、部品等の正確な位置決めされていない場合が多いために、カメラとの相対位置関係にばらつきが生じ、それに起因した一種の画像歪みが避けられないことである。このような画像歪みは、当然、それに基づく諸計測の精度を低下させる要因となる。」等、従来の技術及びその問題点について記載されている。
上記の本願明細書の【従来の技術】に記載された、教示時に前記カメラ手段により得られた対象物の基準画像と、前記カメラ手段により得られた被検対象物の被検対象物画像とに基づいて前記被検対象物を検出するパターンマッチング技術は、従来周知のものと認められ(例えば、特開平5-34126号公報参照。)、また、従来の技術の問題点とされる画像歪みの点に関しても、被検対象物の画像に対して、キャリブレーション等により取得したカメラパラメータに基づいた演算を行って、モデル画像と同一の観測面に透視変換した画像を得、両画像を対比することにより、カメラの位置・向き等に依存して発生する画像歪みを補償することは従来周知である(例えば、特開平5-314389号公報、特開平10-55446号公報参照。特開平10-55446号公報には、明細書の段落【0021】にマッチング結果により位置計測等を行うことも記載されている。)。
したがって、上記のような従来周知のパターンマッチング技術を勘案すれば、カメラの位置と向きの補正に加え、レンズの歪みをも考慮した補正を行う引用発明を、上記のような周知のパターンマッチング技術と組み合わせ、レンズの歪みをも考慮した補正を行うパターンマッチング技術として本願発明のように構成することは、当業者が格別の推考力を要することとは認められない。
そして、本願発明による効果も、引用刊行物の記載及び周知事項から当業者が予測しうる範囲内のものにすぎない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-06-14 
結審通知日 2006-06-20 
審決日 2006-07-03 
出願番号 特願平11-44864
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 雅人  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 下中 義之
後藤 時男
発明の名称 計測装置  
代理人 魚住 高博  
代理人 杉山 秀雄  
代理人 竹本 松司  
代理人 湯田 浩一  

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