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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) A47L
審判 全部無効 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 無効とする。(申立て全部成立) A47L
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 無効とする。(申立て全部成立) A47L
管理番号 1142446
審判番号 無効2003-35374  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-10-17 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-09-05 
確定日 2006-09-12 
事件の表示 上記当事者間の特許第2560208号発明「電気掃除機用ごみ収納袋」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2560208号の請求項1、2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 [1]本件特許及び本件無効審判事件の手続の経緯
本件特許は、昭和62年5月1日に意匠出願として出願された意願昭62-17549号(以下、「原々出願」という。)の一部を、平成5年6月28日に新たな意匠出願である意願平5-19956号として出願したものを、さらに、平成7年4月7日に特許出願として変更出願したものであって、本件特許第2560208号(以下「本件特許」という。)及び本件審判事件に係る手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
1)本件特許の出願日:昭和62年5月1日(原々出願の出願日)
2)特許権の設定登録:平成8年9月19日
3)本件無効審判の請求:平成15年9月5日
4)審判事件答弁書の提出:平成15年12月5日
5)上申書(審判請求人)の提出:平成16年1月27日
6)審判事件弁駁書の提出:平成16年2月20日

[2]当事者の主張
1.審判請求人の主張
本件審判事件は、審判請求人が「第2560208号特許はこれを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」(請求の趣旨)ものであって、審判請求人は、下記の証拠及び理由から、請求項1及び請求項2に係る発明の本件特許は特許法123条第1項第2号または第4号により無効にすべきものであると主張する。
(理由1)本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明は、本件特許の出願前に公然実施された検甲第1号証の紙パック(以下、「出願前物件1」という。)または検甲第2号証の紙パック(以下、「出願前物件2」という。)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
(理由2)本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明または甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明または甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
(理由3)請求項2に係る発明は、甲第1号証及び甲第9号証に記載された発明または甲第2号証及び甲第9号証に記載された発明または甲第3号証及び甲第9号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
(理由4)本件特許の請求項1に記載された「前記取付孔の位置が前記導入口を中心にして前記ミシン目から右90°の位置である」点はその意味が不明りょうであり、また、当該記載中の「右90°」の起点が発明の詳細な説明にも明確に記載されていないから、本件特許は、昭和60年改正特許法第36条第3項または第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものである。

(証拠)
甲第1号証:掃除機カタログ 松下電器産業(株)発行
甲第1号証-1:昭和57年11月現在のカタログ
甲第1号証-2:昭和58年7月現在のカタログ
甲第2号証:掃除機カタログ 松下電器産業(株)発行
甲第2号証-1:昭和60年9月現在のカタログ
甲第2号証-2:昭和62年1月現在のカタログ
甲第3号証:「月刊消費者」、NO.306、2月号、(財)日本消費者協会発行(発行日:昭和60年2月1日)
甲第4号証:「たしかな目」、37号、国民生活センター発行 (発行日:1987年4月1日)
甲第5号証:紙パック図面 松下電器産業(株)作成
甲第5号証-1:図番 C16KT5200 改訂9版(作成日:昭和58年8月3日)
甲第5号証-2:図番 C16KT5200 改訂10版(作成日:昭和58年9月7日)
甲第5号証-3:図番 C16KT5200 改訂11版(作成日:昭和59年2月3日)
甲第5号証-4:図番 C16KT5200 改訂13版(作成日:昭和59年7月19日)
甲第5号証-5:図番 C16KT5300 改訂14版(作成日:昭和59年10月頃)
甲第6号証:紙パック図面 松下電器産業(株)作成
甲第6号証-1:図番 C16K1M100(作成日:昭和60年8月2日)
甲第6号証-2:図番 C16K1D500(作成日:昭和62年12月2日)
甲第7号証:包装材図面 松下電器産業(株)作成
甲第7号証-1:図番 C17KT5300(作成日:昭和59年3月23日)
甲第7号証-2:図番 C17KT5400(作成日:昭和59年10月26日)
甲第8号証:指示書
甲第8号証-1:松下電器産業(株)作成の指示書 昭和58年12月7日
甲第8号証-2:淀川産業作成の見積指示書 昭和59年2月7日
甲第8号証-3:淀川産業作成の指示書 昭和59年11月12日
甲第8号証-4:松下電器産業(株)作成の指示書 昭和59年11月12日
甲第9号証:特開昭58-155830号公報
甲第10号証:実開昭60-36846号公報
甲第11号証:大阪地裁・平成15年(ヨ)第20038号特許権侵害禁止仮処分命令申立事件決定書
甲第12号証:上記申立事件の乙第25号証
甲第13号証:同じく、上記申立事件の乙第26号証の1ないし6
甲第14号証:同じく、上記申立事件の乙第27号証
甲第15号証:同じく、上記申立事件の乙第37号証

(検証物)
・検甲第1号証:松下電器産業(株)掃除機 紙パック 凹部なしタイプ
・検甲第2号証:松下電器産業(株)掃除機 紙パック 凹部ありタイプ
・検甲第3号証:松下電器産業(株)掃除機 紙パック用包装箱
・検甲第4号証:松下電器産業(株)掃除機 紙パック用包装袋

2.一方、被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め」(答弁の趣旨)、次のように主張する。
(1)請求人の主張する理由(1)〜(3)について
出願前物件1の「切れ目22、23」または出願前物件2の「切れ目62、63」が設けられている目的が不明であり、当該切れ目らを切り取りのために使用される甲第10号証のミシン目に変更することは、当業者が容易になし得ることではない。
(2)請求人の主張する理由(4)について
本件特許の請求項1に記載された「ミシン目から右90°」における「ミシン目」は、本件特許の明細書における発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌すれば、「口紙3の一端から対向する他端まで延びる直線状のミシン目である」と理解できるから、同上「90°」の起点の位置は理解できる。

[3]本件特許に係る発明
本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載されたとおりの次のものである。
(請求項1)
「塵埃を導入する導入口を有する口紙と袋本体とを接着一体化してなるごみ収納袋であって、前記口紙に取付孔および折り取って種々の電気掃除機の集塵部の形状に適合させるためのミシン目が設けられており、前記口紙の袋本体が設けられていない面において、前記取付孔の位置が前記導入口を中心にして前記ミシン目から右90°の位置であることを特徴とする電気掃除機用ごみ収納袋。」
(請求項2)
「前記口紙の袋本体が設けられた面において、前記取付孔が設けられた側の辺から一定間隔をあけて袋本体が接着された特許請求の範囲第1項記載の電気掃除機用ごみ収納袋。」

[4]当審の判断
1.無効の理由1(出願前物件1または出願前物件2から容易であるか否か)について
(1)出願前物件1または出願前物件2が本件特許の出願日前に公然実施されたものであるといえるか否かについて
被請求人は、平成15年12月5日付け審判事件答弁書によると、出願前物件1または出願前物件2が本件特許の出願日前に公然実施されたものであることにつき、争っていないと解される。
そして、甲第1号証の1、2によれば、出願前物件1は、本件特許発明の特許出願前の昭和57年11月発行の松下作成の電気掃除機のカタログに掲載されていることから、同月当時、松下の電気掃除機用ごみ収納袋として製造販売されていたことが推認できる。
また、甲第2号証の1、2によれば、出願前物件2は、本件特許発明の特許出願前の昭和60年9月発行の松下作成の電気掃除機のカタログに掲載されていることから、同月当時、松下の電気掃除機用ごみ収納袋として製造販売されていたことが推認できる。
さらに、上記公然実施されたものと推認した点は、昭和58年11月25日に松下電器産業株式会社より出願された電気掃除機に関する発明の出願(本件特許の出願日前である昭和60年6月20日に公開された特開昭60-114229号公報参照)の明細書及び図面(特に、第2図参照)中に、出願前物件1と同じ構成を備えた電気掃除機用のろ過袋が例示されているという事実とも整合する。
以上のことから、出願前物件1及び出願前物件2は、本件特許の出願日前に公然実施されたものであるということができる。

(2)本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明は、出願前物件1または出願前物件2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえるか否かについて
(2-1)本件特許の請求項1に係る発明について
(イ)本件特許の請求項1に係る発明と出願前物件1の備える構成との対比
出願前物件1は、塵埃を導入する導入口(21)を有する口紙(20)と袋本体を接着一体化してなる電気掃除機用ごみ収納袋であることは明らかである。
ところで、本件特許発明における「取付孔」の技術的意義は、特許請求の範囲の記載からは一義的に明らかでない。
そこで、特許明細書の記載を参酌すると、段落【0015】に「取付孔4は、前記掃除機の集塵部に装着する際の位置決めとなる凸部などが設けられているものにも、適合させることができるようにするために設けられている。」と記載されており、また、図面の図1には、長方形状の口紙3におけるミシン目5が上方に位置する方向を基準として導入口2の中心を通る右90°の線上(いいかえれば、導入口2の中心から一辺に対して垂直な方向に引かれた線上)の位置に配置されていて、該導入口2の口径と比較して極めて小さな口径を備えた孔が、取付孔4として例示されている。
そして、本件特許発明の解決しようとする課題が「種々の機種の電気掃除機の集塵部に適合させることができる電気掃除機用ごみ収納袋を提供」することにあることは明らかであるから、本件特許発明における「取付孔」は、種々の機種の電気掃除機の集塵部に適合させるために設けられたものであって、その導入口の中心から口紙の一辺に対して垂直な方向に引かれた線上の所定の位置に設けられた小孔を意味するものと理解される。
一方、出願前物件1を見ると、当該出願前物件1には、その導入口の中心から口紙の一辺に対して垂直な方向に引かれた線上の位置に、該導入口の口径に比較して極めて小さな口径の小孔が設けられている。
さらに、甲第12号証及び甲第13号証によれば、本件特許の出願前後の各電気メーカーのカタログに掲載されていたと推認される当該電気メーカーのオリジナルの掃除機用紙パックには、出願前物件1の上記導入口と上記小孔とに相当するものが略同じ位置関係であって同程度の径寸法を有するものとして設けられていた事実が認められる(なお、甲第12号証に写されたものは出願前物件2であるものの、出願前物件2は、口紙の一辺を電気掃除機の集塵部の形状に適合させるための凹部(68)が設けられている点で出願前物件1と異なるが、その他は、形状、寸法が出願前物件1と同一であるから、上記導入口と上記小孔との構成に関しても、出願前物件1は出願前物件2と同じである)。
してみると、出願前物件1は、上記各電機メーカー間で共通する位置と大きさの導入口と小孔とを備えている、いいかえれば、種々の機種の電気掃除機の集塵部に適合させることができる導入口と小孔とを備えているということができるから、本件特許発明の「取付孔」に相当するものを備えているということができる。
さらにまた、検甲第1号証及び同上甲第12号証によれば、出願前物件1の上記導入口及び小孔を、他のメーカーの電気掃除機用ごみ収納袋の口紙の上記導入口及び小孔に相当するものの位置に重ね合わせた場合を想定すると、出願前物件1の切れ目(22、23)(注:括弧内の符号は、審判請求書に添付され、右上に「検甲第1号証」と表示された出願前物件を複写した書類に付された符号である。以下、同様に表記した。)は、上記他のメーカーの電気掃除機用ごみ収納袋の左側の一辺が設けられた位置と略同じ位置に設けられており、また、小孔の中心位置から右側の一辺までの距離は略49mm程度に設定され、他のメーカーのものと共通の構成を備えているという事実が認められる。
以上のことを踏まえて、本件特許の請求項1に係る発明と出願前物件1の備える構成とを対比すると、前者が「取付孔の位置が前記導入口を中心にして前記ミシン目から右90°の位置」となる位置に「折り取って種々の電気掃除機の集塵部の形状に適合させるためのミシン目」を備えているのに対して、後者が同位置に切れ目(22、23)を備えている点でのみ相違し、その他の構成については両者は一致するということができる。

(ロ)相違点の判断
甲第15号証の陳述書によると、出願前物件1の切れ目(22、23)は、松下の電気掃除機用ごみ収納袋である出願前物件1を松下以外のメーカーの電気掃除機に使用する場合に切り落とす場所の目印として設けられていたものであり、当該切れ目(22、23)を結んだ線をミシン目にすると、松下の電気掃除機の使用者が誤ってそのミシン目に沿って口紙を切り落としてしまい、出願前物件1を松下の電気掃除機に使用できなくなるという不都合が生じるおそれがあったので、そのような不都合が生じるのを避けるため、切れ目(22、23)を結んだ線はミシン目とはされず、切れ目(22、23)を設けるにとどめられたことが推認されるところ、このことは、上述したように、出願前物件1は、上記各電機メーカー間で共通する位置と大きさの導入口と小孔とを備えているばかりでなく、出願前物件1の切れ目が他のメーカーの電気掃除機用ごみ収納袋の一辺が設けられた位置と略同じ位置に設けられているという事実と整合するものである。
そして、甲第3号証は、財団法人日本消費者協会発行の一般消費者向けの雑誌「月刊消費者」の1985年(昭和60年)2月号(同月1日発行)であるところ、メーカー6社(日立、松下、シャープ、サンヨー、東芝、三菱)の電気掃除機を比較したテスト結果の記事が掲載されている。その記事を見ると、電気掃除機用ごみ収納袋について、「紙袋は、銘柄間に互換性があると大変便利ですが、三菱は他社に先駆けてフリーサイズホルダーというものを付けていました。これは他社の紙袋を使用するときに用いるもので、今回テストに使った紙袋で調べてみたところ、ナショナルを除きすべてそのままで使用することができました。ナショナルのものは、台紙の部分を形に合わせて切り取れば使用することができます。」との記載があるとともに、その記載の傍らに、三菱のフリーサイズホルダーに日立のごみ収納袋をセットしたものと、サンヨーのごみ収納袋、出願前物件1とを並べて撮影した写真が掲載されている。
一般消費者向けの雑誌にもこのような記載があることからすると、当業者においては、昭和60年2月当時、口紙を集塵部の形等に合わせて切り取ることにより他社製の電気掃除機用ごみ収納袋でも使用することができるということが、周知であったものと推認できる。
さらにまた、甲第10号証である実開昭60-36846号公報にも、ミシン目に沿って厚紙等を切り離すことが示されているように、電気掃除用ごみ収納袋の技術分野において、厚紙等の切れ目となる線にミシン目を設けることは、本件特許発明の特許出願前において公知又は慣用の技術であったといえる。
以上のことを総合すれば、出願前物件1における他のメーカーの電気掃除機用ごみ収納袋の一辺が設けられた位置と略同じ位置の切れ目(22、23)を結んだ線上の位置に、他社製の電気掃除機用ごみ収納袋でも使用することができるための切り取り用としてミシン目を設けたものと変更することは、本件特許発明の特許出願前に、当業者により容易に想到することができた設計上の変更であるといえる。
なお、被請求人は、平成16年4月15日付け審判事件答弁書において、甲第12号証、甲第15号証らはその内容が信用できない旨を主張している。
しかしながら、甲第12号証に写された出願前物件2の形状・寸法は検甲第2号証と一致するものであって、特に改竄等がされた様子も窺えないし、また、甲第15号証の陳述内容についても、上述したように、出願前物件1の切れ目が他のメーカーの電気掃除機用ごみ収納袋の一辺が設けられた位置と略同じ位置に設けられているという事実と整合するものであるし、さらにまた、これら証拠の内容が事実に反することを裏付けるに足る証拠も見出せないことから、上記被請求人の主張は採用できない。

(ハ)まとめ
以上のことから、本件特許の請求項1に係る発明は、特許出願前に公然実施をされていた出願前物件1に係る発明に基いて容易に発明をすることができたものといえる。

(2-2)本件特許の請求項2に係る発明について
本件特許の請求項2に係る発明は、本件特許の請求項1に係る発明を引用する発明であって、「前記口紙の袋本体が設けられた面において、前記取付孔が設けられた側の辺から一定間隔をあけて袋本体が接着された」という限定事項をさらに加えたものである。
そして、出願前物件1が上記限定事項の構成を併せて備えていることは明らかである。
してみると、本件特許の請求項1に係る発明について説示したのと同様に、本件特許の請求項2に係る発明は、本件特許の出願前に公然実施をされていた出願前物件1に係る発明に基いて容易に発明をすることができたものといえる。

(3)本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明は、出願前物件2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえるか否かについて
ところで、出願前物件2を出願前物件1と比較すると、上述したように、出願前物件2は、口紙の一辺を電気掃除機の集塵部の形状に適合させるための凹部(68)が設けられている点で出願前物件1と異なるが、その他は、形状、寸法が出願前物件1と同一であるといえる。
そうとすると、出願前物件2と本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明とを対比した場合の共通点、相違点は、出願前物件1と同様であるといえる。
したがって、出願前物件1について説示したのと同様に、本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明は、本件特許の出願前に公然実施をされていた出願前物件2に係る発明に基いて容易に発明をすることができたものといえる。

(4)まとめ
以上のことから、本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明は、本件特許の出願前に公然実施された出願前物件1または出願前物件2に係る発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるといえる。

2.無効の理由4(特許法第36条第3項または第4項に規定する要件を満たしているか否か)について
上記[4](2-1)(イ)で指摘したように、本件特許の特許明細書及び図面には、長方形状の口紙3におけるミシン目5が上方に位置する方向を基準として導入口2の中心を通る右90°の線上の位置に取付孔4が配置されることが示されており、また、本件特許の請求項1に記載された「前記取付孔の位置が前記導入口を中心にして前記ミシン目から右90°の位置である」点は、当該導入口を中心とし、ミシン目の位置する方向を基準にして右90°の位置を意味することが明らかであるといえるから、その記載が不明りょうであるとはいえない。
したがって、本件特許は、昭和60年改正特許法第36条第3項または第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対して特許されたものであるということはできない。

[5]むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるといえるから、その他の無効の理由2及び3を検討するまでもなく、請求項1及び請求項2に係る発明の本件特許は、特許法123条第1項第2号により無効にすべきものである。
また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-05-26 
結審通知日 2004-05-27 
審決日 2004-06-16 
出願番号 特願平7-108293
審決分類 P 1 112・ 121- Z (A47L)
P 1 112・ 531- Z (A47L)
P 1 112・ 532- Z (A47L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鍋田 和宣藤 正明阿部 寛生亀 照恵  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 藤原 直欣
岡田 孝博
登録日 1996-09-19 
登録番号 特許第2560208号(P2560208)
発明の名称 電気掃除機用ごみ収納袋  
代理人 中嶋 勝規  
代理人 柳井 則子  
代理人 稲岡 耕作  
代理人 志賀 正武  
代理人 高橋 詔男  
代理人 中島 清治  
代理人 川崎 実夫  
代理人 坂野 史子  

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