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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1142918
審判番号 不服2003-11597  
総通号数 82 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-04-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-06-23 
確定日 2006-09-07 
事件の表示 特願2000-290290「携帯電話を通じた広告方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月19日出願公開、特開2002-118656〕についてされた平成17年8月18日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消の判決[平成17年(行ケ)第10710号、平成18年5月31日判決言渡]があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯 と本願発明
本願は、平成12年9月25日(優先権主張平成12年8月4日)の出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年12月26日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「受信側の携帯電話機の表示画面を広告媒体とし、該表示画面に受信側に対し不特定多数(1:N)または通話時(1:1)に予め依頼された広告を表示するようにするとともに、該広告情報の受信が許可されているかを判断するようにしたことを特徴とする携帯電話を通じた広告方法。」

2.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-69024号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
a.「【0033】この実施の形態においては、携帯無線通信端末1の使用者と、共通サーバ装置2の所有会社との契約が行われると、前述したように、携帯無線通信端末1は会員端末1となる。例えば、会員端末1を使用者が購入することが、共通サーバ装置2に対する契約関係の発生とするようにすることができる。」(第6頁9欄第3〜8行)

b.「【0055】[会員端末1について]次に、会員端末1について説明する。図4は、会員端末1の外観の一例であり、また、図5は、この会員端末1の内部回路構成の一例である。前述もしたように、この例の会員端末1は、PHS電話機能と、ファクシミリ通信および電子メール通信機能と、情報提供サービスを受けるデータ通信機能を備える複合端末の構成を有するものである。」(第7頁12欄第30〜36行)

c.「【0058】そして、会員端末1は、図4(B)に示すように、蓋101を開けた状態のときに現れる本体100側の面に、大型のLCD(液晶ディスプレイ)105を備え、このLCD105の表示面に、通信文、メニュー、受信ファクシミリリストや受信電子メールリストなどを表示することができる。」(第8頁13欄第3〜8行)

d.「【0092】会員端末1において、ファクシミリ機能が選択されているときに、キー釦108のうちのオンライン接続キーK2が押されると、その会員端末1は、共通サーバ装置2と接続するための処理を自動的に行う。すなわち、フラッシュメモリ124のアドレスデータおよび会員識別情報を用いて共通サーバ装置2と接続する要求を会員端末1は送出する。すると、ネットワーク管理サーバであるISPサーバ7Iが当該アクセスしてきた端末が会員端末であるかどうかの認証を前記会員識別情報により行い、会員端末であれば、共通サーバ装置2に接続する処理を行う。
【0093】共通サーバ装置2は、接続された会員端末がいずれの会員端末であるかをマスターサーバ21に格納されている会員識別情報に基づいて認識し、当該会員端末宛てに受信したファクシミリ受信データの一覧リストを作成し、当該会員端末1に送る。したがって、この例では、オンライン接続キーK2は、受信データ一覧リストの要求キーの役割も有する。
【0094】会員端末1は、共通サーバ装置2からの、この一覧リストのデータを受信してDRAM123に一時格納し、その一覧リストをLCD105の画面に表示する。使用者は、ジョグダイヤルキー109やペン107を用いて、この一覧リストから希望するファクシミリ受信データを選択することができる。希望するファクシミリ受信データの選択がなされ、「取り込み」のアイコンが選択されると、会員端末1は、当該受信データの取得の要求を、共通サーバ装置2に送信する。
【0095】この要求を受けると、共通サーバ装置2は、要求されたファクシミリ受信データを抽出して、電子メールのSMTPにより会員端末1に送る。会員端末1は、受け取ったデータをDRAM123に一時格納し、表示データに変換し、LCD105の画面に表示する。したがって、使用者は、自分が必要なファクシミリデータを選んで、LCD105の画面で見ることができる。」(第10頁17欄第34行〜18欄第18行)

e.「【0117】なお、以上の実施の形態では、会員端末間でのファクシミリデータや電子メールデータは、共通サーバ装置2のFAXボックス23Mやメールボックス22Mに格納し、各会員端末からの受信データの取得要求が到来したときに、当該会員端末に受け渡すようにしているので、会員端末1への送信情報についての広告の付加に関しては説明しなかったが、共通サーバ装置2において、広告許可制御情報を前記FAXボックス23Mやメールボックス22Mに、ファクシミリデータやメールデータと共に記憶しておき、会員端末からの受信データの取得要求があったときに、その受信データについての広告許可制御情報を参照して、広告付加許可となっているときには、広告を付加して会員端末に送信するようにしても勿論よい。
【0118】もっとも、会員端末間でのデータの送受においては、送信者が広告を付加することを決定するのではなく、会員が、受信データを取得要求するときに、受信データに広告の付加を許可するか否かを選択できるようにして、受信者である会員が広告の付加の許可を決定するようにすることもできる。」(第12頁21欄第25〜44行)

f.「【0122】また、以上の実施の形態では、携帯無線通信端末は、PHS電話の機能を備える場合として説明したが、電話機能としては、携帯電話であってもよい。その場合には、ネットワークは携帯電話用のネットワークが使用されることになる。」(第12頁22欄第21〜25行)

上記摘記事項a.〜b.及びf.から、「会員端末1」は「携帯電話機」である。
上記摘記事項d.記載の「LCD」は、上記摘記事項c.の記載から、液晶ディスプレイであって、上記摘記事項e.には、会員端末にファクシミリデータに広告が付加されたデータが送信されることと、上記摘記事項d.の【0095】等には、会員端末が受け取ったデータをLCDの画面に表示し、使用者は該LCDの画面で見ることができることとが記載されている。したがって、該液晶ディスプレイ(LCD)の画面は広告も表示することができ、使用者は表示された広告を見ることができるものと解されるから、該液晶ディスプレイの画面は「広告媒体」であるといえる。
広告が付加されたファクシミリデータは、上記摘記事項d.の記載から、1つの共通サーバ装置と1つの会員端末間で通信されるデータであって、該データが表示されるタイミングは、該データを会員端末が受け取った時であるから、広告は「ファクシミリ通信時」に表示されているといえる。

よって、上記摘記事項a.〜f.の記載並びに関連する図面及び技術常識を考慮すると、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用発明」という。)
「受信側の携帯電話機の液晶ディスプレイの画面を広告媒体とし、該液晶ディスプレイの画面に受信側に対しファクシミリ通信時に予め依頼された広告を表示するようにするとともに、該広告情報の受信が許可されているかを判断するようにしたことを特徴とする携帯電話を通じた広告方法。」

(3)対比
引用発明の「液晶ディスプレイの画面」は、「表示画面」である。
したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、両者は、
「受信側の携帯電話機の表示画面を広告媒体とし、該表示画面に受信側に対し予め依頼された広告を表示するようにするとともに、該広告情報の受信が許可されているかを判断するようにしたことを特徴とする携帯電話を通じた広告方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
本願発明は「表示画面に受信側に対し不特定多数(1:N)または通話時(1:1)に予め依頼された広告を表示する」のに対し、引用発明は「表示画面に受信側に対しファクシミリ通信時に予め依頼された広告を表示する」点。

(4)判断
上記相違点のうち、まず、「通話時(1:1)」について検討する。
携帯電話の通話時に使用する通話チャネルは、音声だけでなくデータを送受信するためにも必要なものである(齊藤忠夫、立川敬二編、「移動通信ハンドブック」、(株)オーム社、217〜219頁)から、「通話時に・・・広告を表示する」という場合の「通話時」には、電話モードのほかにデータ通信も含まれ得るものである。
したがって、引用発明の「ファクシミリ通信時」を本願発明のような「通話時(1:1)」とする程度のことは、当業者であれば適宜なし得ることである。

ついで、「不特定多数(1:N)」について検討する。
受信側の携帯電話機の表示画面を広告媒体とし、該表示画面に受信側に対し不特定多数(1:N)に予め依頼された広告を表示することは、特開平8-8859号公報、特開平11-205840号公報、特開平9-281918号公報に開示されているように周知技術であるから、引用発明の「ファクシミリ通信時」を本願発明のような「不特定多数(1:N)」とする程度のことも、当業者であれば適宜なし得ることである。

したがって、引用発明の「表示画面に受信側に対しファクシミリ通信時に予め依頼された広告を表示する」ことを、「表示画面に受信側に対し不特定多数(1:N)または通話時(1:1)に予め依頼された広告を表示する」ことは、当業者が容易になし得ることである。

また、上記相違点に係る構成によってもたらされる効果も、引用発明及び周知技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-27 
結審通知日 2006-07-11 
審決日 2005-08-18 
出願番号 特願2000-290290(P2000-290290)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 戸次 一夫  
特許庁審判長 羽鳥 賢一
特許庁審判官 宮下 誠
浜野 友茂
廣岡 浩平
山本 春樹
発明の名称 携帯電話を通じた広告方法  
代理人 野口 忠夫  
代理人 丹羽 宏之  

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