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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 A45C 審判 全部申し立て 2項進歩性 A45C 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 A45C |
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管理番号 | 1143205 |
異議申立番号 | 異議2003-73831 |
総通号数 | 82 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-10-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-26 |
確定日 | 2005-11-10 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3464260号「視力矯正レンズ用パッケージ」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3464260号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3464260号の請求項1、2に係る発明についての出願は、平成5年12月20日(パリ条約による優先権主張1992年12月21日、米国)になされ、平成15年8月22日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後特許異議申立人長尾由佳より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成17年9月5日に意見書及び訂正請求書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 ア.訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1の記載において、 「視力矯正用レンズを含み前記レンズの検査、処理、保管用のパッケージにおいて、実質的に平坦な第1の表面と、前記表面に形成し、前記レンズを中心に置くのに充分に小さく内部に置くレンズの曲率半径よりは大きな曲率半径を有する凹面状の受け皿と、前記受け皿が内部に入れる前記レンズの直径より小さい深さを有することと、前記受け皿が透光性で前記受け皿を透過する光が実質的に等方性であり、光源に実質的な非均一性を付加しないことと、前記第1の平坦な表面と前記凹面状の受け皿の円環状の境界部分の辺縁の封止領域と、前記第1の平坦な表面と実質的に平行に前記凹面状の受け皿を被覆することで内部に入れたレンズを封入する空洞を形成し前記封止領域に沿って密封的に封止する封止シートを含むことを特徴とするパッケージ。」とあるのを、 「視力矯正用レンズを含み前記レンズの検査、処理、保管用のパッケージにおいて、実質的に平坦な第1の表面と、前記表面に形成し、前記レンズを中心に置くのに充分に小さく内部に置くレンズの曲率半径よりは大きな曲率半径を有する凹面状の受け皿と、前記受け皿が内部に入れる前記レンズの直径より小さい深さを有することと、前記受け皿が透光性であり、前記受け皿を透過する光が実質的に等方であってその光に実質的な非均一性を付加しない特性の無気泡核ポリマーで形成されていることと、前記第1の平坦な表面と前記凹面状の受け皿の円環状の境界部分の辺縁の封止領域と、前記第1の平坦な表面と実質的に平行に前記凹面状の受け皿を被覆することで内部に入れたレンズを封入する空洞を形成し前記封止領域に沿って密封的に封止する封止シートを含むことを特徴とするパッケージ。」と訂正する。 イ.訂正事項b 特許請求の範囲の請求項2の記載において、 「視力矯正用レンズの保管および供給のためのパッケージにおいて、実質的に平坦な第1の表面と、前記表面に形成し、内部表面が800グリット以下の粗さを有し、指で取り出すために前記レンズを前記内部表面に対して滑らせることができ、かつ包装工程において水の排出中に前記レンズを保持でき、前記レンズを中心に据えるのに充分に小さいが内部に入れる前記レンズの曲率半径より大きい曲率半径と前記レンズの直径より小さい深さを有する凹面状の受け皿と、前記第1の平坦な表面と前記凹面状の受け皿の環状の境界の周辺部の封止領域と、前記第1の平坦な表面と実質的に平行で前記凹面状の受け皿を被覆し、これによって内部に入れた前記レンズを封入する空洞を形成しまた前記封止領域に沿って密封的に封止する封止シートを含むことを特徴とするパッケージ。」とあるのを 「視力矯正用レンズの保管および供給のためのパッケージにおいて、実質的に平坦な第1の表面と、前記表面に形成し、内部表面が200グリットと800グリットの間の粗さを有し、指で取り出すために前記レンズを前記内部表面に対して滑らせることができ、かつ包装工程において水の排出中に前記レンズを保持でき、前記レンズを中心に据えるのに充分に小さいが内部に入れる前記レンズの曲率半径より大きい曲率半径と前記レンズの直径より小さい深さを有する凹面状の受け皿と、前記第1の平坦な表面の端部から下方に延出する第2の平坦な表面と、前記第1の平坦な表面と前記凹面状の受け皿の環状の境界の周辺部の封止領域と、前記第1の平坦な表面と実質的に平行で前記凹面状の受け皿を被覆し、これによって内部に入れた前記レンズを封入する空洞を形成しまた前記封止領域に沿って密封的に封止する封止シートを含み、前記受け皿と前記第2の平坦な表面の間の距離が第2のパッケージの凹面状の受け皿を重ね合わせるのに十分な大きさであることを特徴とするパッケージ。」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項aは、請求項1に記載された「受け皿」について、当審における取消理由の指摘に基づき、「透過する光が実質的に等方性であり、その光源に実質的な非均一性を付加しない」とあるのを、「透過する光が実質的に等方であってその光に実質的な非均一性を付加しない」と訂正し、かつ、その材料を発明の詳細な説明に記載された、「(付加しない)特性の無気泡核ポリマーで形成されている」と限定するものであるから、不明りょうな記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 上記訂正事項bは、発明の詳細な説明の記載に基づき、請求項2に記載された「凹面状の受け皿」の「内部表面」について、「800グリット以下」とあるのを、「200グリットと800グリットの間」と限定し、また、「前記第1の平坦な表面の端部から下方に延出する第2の平坦な表面」を構成として付加し、「前記受け皿と前記第2の平坦な表面の間の距離が第2のパッケージの凹面状の受け皿を重ね合わせるのに十分な大きさである」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 (3)むすび したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.取消理由通知の概要 当審において通知した取消理由通知の概要は、 「(1)刊行物1(特開昭64-74525号公報)には、コンタクトレンズを保存する容器をポリプロピレン等の透光性の材料で作成し、該容器は、平坦な表面と、凹面状の受け皿を有し、該受け皿の深さを内部に入れるレンズの直径より小さくし、平坦な表面及び前記凹面状の受け皿の円環状の境界部分の辺縁をアルミニウム箔で封止したものが記載されている。 また、刊行物2(実公昭51-31027号公報)には、コンタクトレンズ容器において、コンタクトレンズ収容筺の底面の曲率半径を収納するレンズの曲率半径よりも大きくする技術手段が示されている。本件の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された技術手段を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (2)本件は、明細書及び図面の記載が不備で、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしておらず特許を受けることができない。」というものである。 4.特許異議の申立てについての判断 上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」、「本件発明2」という。)は 、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりのものである。 (1)本件発明1について a.刊行物等 当審の取消理由通知に引用した刊行物1には、図面と共に、 「以下、図面を参照して、本発明を具体的に説明する。 第1図は、本発明の一実施例に係るソフトコンタクトレンズ簡易保存容器の上面図、第2図はそのA-A断面図である。第1図および第2図において、容器本体1は、合成樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等からなり、左眼用レンズ収容部2と右眼用レンズ収容部3とを具備する。それぞれの収容部2,3には、保存液4が満たされている。保存液は、通常、生理的食塩水、即ち0.9%食塩水である。保存液の量は、通常5mlである。 容器本体1は、レンズの収容および取り出しのために上方に開口しており、その開口部5は、アルミニウム箔6により密封されている。アルミニウム箔6の裏面周縁部には、合成樹脂層、例えばポリエチレンがコ-ティングされていて、この合成樹脂層を介してアルミニウム箔6が容器本体1の開口部に熱封着され、それによって保存容器は密封される。 保存液を収容する保存容器は、殺菌した状態で製造され、販売され、使用に供される。使用に際しては、アルミニウム箔6を容器本体1から剥離した後、左眼用レンズ収容部2に左眼用レンズ7を、右眼用レンズ収容部3に右眼用レンズ8をそれぞれ収容する。」(2頁右上欄9行〜左下欄7行)と記載され、 第2図には、容器本体1の凹状のレンズ収容部2,3にレンズ7,8が収容され、レンズ7,8の直径は収容部2,3の深さより大きいこと、及び、容器本体1は収容部2,3の周囲と、収容部2,3の間に平坦な部分を備え、そこにアルミニウム箔6が接触している様子が図示されている。 上記記載事項及び図示内容から、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「ポリプロピレン等の合成樹脂からなる容器本体1は、レンズの直径よりも小さな深さの凹状のレンズ収容部2、3を具備して、上方に開口しており、容器本体1の、レンズ収容部2,3の周囲には、平坦な部分を備え、該平坦な部分にアルミニウム箔6を接触させて、アルミニウム箔6が容器本体1の開口部に熱封着され、それによって保存容器は密封され、内部にレンズが収容される保存容器。」 同じく、刊行物2には、図面と共に、 「9及び10は容器主体1及び2に夫々螺合せしめた蓋体で、コンタクトレンズ11及び12を収容するための収容筺13及び14を装備してある。15及び16は貫通孔17及び18を穿った収容筺13及び14の副蓋体、19及び20は液体で貫通孔17及び18を通して移動しコンタクトレンズ11及び12を浸漬せしめる。」(第2欄7〜14行)と記載され、 第1図には、収容筺14の凹状の収容部に、該収容部の曲率半径よりも曲率半径の小さなコンタクトレンズ12が収容されて、収容部の中心にコンタクトレンズ12が置かれる様子が図示されている。 b.対比・判断 本件発明1と、引用発明とを対比すると、後者の「保存容器」、「凹状のレンズ収容部」、「平坦な部分」、「アルミニウム箔6」、「合成樹脂」は、その機能・構造からみて、それぞれ、前者の「パッケージ」、「凹面状の受け皿」、「実質的に平坦な第1の表面」及び「凹面状の受け皿の円環状の境界部分の辺縁の封止領域」、「封止シート」、「ポリマー」に相当する。 そして、引用発明における「ポリプロピレン等の合成樹脂」は透光性であり、かつ均質で、「透過する光が実質的に等方であってその光に実質的な非均一性を付加しない特性」であることは明らかであり、「アルミニウム箔6」は、平坦な部分と実質的に平行にレンズ収容部を被覆することで内部に入れたレンズを封入する空洞を形成しており、また、レンズを「保存」することは「保管」することに相当し、レンズの検査・処理と保管を共通の容器で行うことも周知の事項であるから、両者は、 「視力矯正用レンズを含み前記レンズの検査、処理、保管用のパッケージにおいて、実質的に平坦な第1の表面と、前記表面に形成した凹面状の受け皿と、前記受け皿が内部に入れる前記レンズの直径より小さい深さを有することと、前記受け皿が透光性であり、前記受け皿を透過する光が実質的に等方であってその光に実質的な非均一性を付加しない特性のポリマーで形成されていることと、前記第1の平坦な表面と前記凹面状の受け皿の円環状の境界部分の辺縁の封止領域と、前記第1の平坦な表面と実質的に平行に前記凹面状の受け皿を被覆することで内部に入れたレンズを封入する空洞を形成し前記封止領域に沿って密封的に封止する封止シートを含むパッケージ。」である点で一致しており、次の点で相違する。 相違点:「凹面状の受け皿」が、本件発明1においては、「前記レンズを中心に置くのに充分に小さく内部に置くレンズの曲率半径よりは大きな曲率半径を有する」ものであり、「無気泡核ポリマーで形成されている」のに対し、引用発明においては、曲率半径がどのようになっているか不明であり、その材料について、「無気泡核ポリマー」と限定されていない点。 上記相違点について検討すると、コンタクトレンズの収容筺の凹状の収容部の曲率半径よりもそこに収容されるレンズの曲率半径を小さくすることは上記刊行物2により公知であり、また、レンズが収容部の中心に位置するようにするために、凹状の収容部の曲率半径をレンズを中心に置くのに充分に小さく、かつレンズの曲率半径より大きくする技術思想も知られており(必要ならば、特開平4-227643号公報11欄2〜12行参照)、さらに、本件発明1の「無気泡核ポリマー」として挙げられている「ポリプロピレン」で受け皿を形成することは刊行物1に併せて記載されているところであり、検査のためには気泡を生じないようにしなければならないことは当然の事項であるから、上記相違点に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得るものである。 また、それによる効果も当業者が予測しうる範囲のものである。 c.むすび 以上のとおりであるから、本件発明1は、上記刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件発明2について 請求項2には、「内部表面が200グリットと800グリットの間の粗さを有し」と記載されている。ところで、「グリット」は、通常紙ヤスリ等の粗さを示す単位であり、表面粗さを規定するものではない。そして、本件明細書において、紙ヤスリ等の粗さと表面粗さにどのような関係があるかについて何ら記載はなく、「内部表面が200グリットと800グリットの間の粗さを有し」がどのような構成を示しているのか不明であるから、本件明細書には本件発明2を容易に実施できる程度に技術の開示がなされておらず、また、本件発明2は構成が不明確である。 5.むすび 以上のとおりであるから、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、また、本件発明2については、本件出願は、特許法第36条第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない。 したがって、特許異議申立ての他の理由を検討するまでもなく、本件発明1、2についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 視力矯正レンズ用パッケージ (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】視力矯正用レンズを含み前記レンズの検査、処理、保管用のパッケージにおいて、実質的に平坦な第1の表面と、前記表面に形成し、前記レンズを中心に置くのに充分に小さく内部に置くレンズの曲率半径よりは大きな曲率半径を有する凹面状の受け皿と、前記受け皿が内部に入れる前記レンズの直径より小さい深さを有することと、前記受け皿が透光性であり、前記受け皿を透過する光が実質的に等方であってその光に実質的な非均一性を付加しない特性の無気泡核ポリマーで形成されていることと、前記第1の平坦な表面と前記凹面状の受け皿の円環状の境界部分の辺縁の封止領域と、前記第1の平坦な表面と実質的に平行に前記凹面状の受け皿を被覆することで内部に入れたレンズを封入する空洞を形成し前記封止領域に沿って密封的に封止する封止シートを含むことを特徴とするパッケージ。 【請求項2】視力矯正用レンズの保管および供給のためのパッケージにおいて、実質的に平坦な第1の表面と、前記表面に形成し、内部表面が200グリットと800グリットの間の粗さを有し、指で取り出すために前記レンズを前記内部表面に対して滑らせることができ、かつ包装工程において水の排出中に前記レンズを保持でき、前記レンズを中心に据えるのに充分に小さいが内部に入れる前記レンズの曲率半径より大きい曲率半径と前記レンズの直径より小さい深さを有する凹面状の受け皿と、前記第1の平坦な表面の端部から下方に延出する第2の平坦な表面と、前記第1の平坦な表面と前記凹面状の受け皿の環状の境界の周辺部の封止領域と、前記第1の平坦な表面と実質的に平行で前記凹面状の受け皿を被覆し、これによって内部に入れた前記レンズを封入する空洞を形成しまた前記封止領域に沿って密封的に封止する封止シートを含み、前記受け皿と前記第2の平坦な表面の間の距離が第2のパッケージの凹面状の受け皿を重ね合わせるのに十分な大きさであることを特徴とするパッケージ。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は視力矯正用レンズの貯蔵ならびに供給用およびこれの検査に効率の良いパッゲージに関し、より特定すれば実質的部分が水よりなる構造の水性ゲルコンタクトレンズなどの視力矯正レンズに関するものである。しかし本パッケージは水晶体内レンズなどその他の小型高精度視力矯正用レンズの検査にも好適である。 【0002】 【技術的背景】 視力矯正レンズ工業が成長するにつれ、このようなパッケージ化は、特に定期的かつ頻繁にレンズを交換するように提供されているコンタクトレンズにおいて、物質的経済的資源の多大な支出となっている。そのため製造しまたパッケージ化しなければならないレンズの個数は劇的に増大した。 【0003】 さらに製造するレンズ個数が増大しこれを検査する必要があるため、検査に供するレンズをパッケージ化して、レンズを特殊な検査用担体へさらにパッケージへ移し替えることに関連する余分な手順、費用、繁雑さ、および装置類を排除できるような検査用担体としても使用可能な視力矯正レンズ・パッケージが望ましい。 【0004】 従来技術の視力矯正レンズ用パッケージでは、基準として、パッケージの寸法またはパッケージ内のレンズを検査する能力に特に注意を払うことなく取り扱える簡便さを有している。特に、マルティネス(Martinez)の米国特許第4,691,820号に開示されたパッケージにおいては、外周部分のつばで囲まれた空洞を有する基底部分と該空洞を封止するために該つばを密閉するカバーシートよりなる一体成形ブリスター・パッケージが説明されている。空洞の側壁部分の一部は傾斜しレンズを傾斜した表面に沿って空洞内から滑り出させることでレンズを容易に取り出せるようにつばまでの傾斜路を形成している。 【0005】 同様な設計はそれぞれマルティネス(Martinez)とラムら(Lamb et al.)に譲受された米国意匠特許第299,085号および第305,478号に図示してある。 【0006】 これの目的には好適でありまた便利ではあるが、従来技術のパッケージでは、使用する材料の量を最小限に抑えパッケージの高速充填および封入を可能とし、最終消費者による容易な取り扱いと開封を実現し、所望すれば過切な光源と観察装置を用いてレンズのパッケージ内での検査を可能とするための要件には適合していない。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】 よって本発明の目的はパッケージ内への視力矯正レンズおよび処理水の容易な充填と処理水の排出ならびに適切な水溶液の追加を可能とし迅速かつ容易に封止可能なパッケージを提供することである。よって該パッケージの受け皿はレンズを被覆するだけの充分な水溶液を含むに足るだけの深さでなければ成らない。 【0008】 本発明の別の目的は最終消費者による容易な取り扱いおよび開封である。該パッケージの受け皿はこの要件のため、指を受け皿内に挿入してレンズを引き出せるだけの充分な広さがなげれば成らない。パッケージはさらに消費者がレンズ取り出し中に開封および取り扱いが容易でなければ成らない。 【0009】 本発明のさらなる目的はレンズのパッケージ内検査を所望ならば行ない得るような視力矯正レンズ用パッケージを提供することである。該パッケージの受け皿はこの目的を可能と成すために水を充填したパッケージの焦点距離を最大限に延長するのに充分なだけ薄くなければ成らない。 【0010】 本発明のさらに別の目的はパッケージ内検査を可能と成すようにパッケージ中央部分に定常的にレンズが位置するようなパッケージを提供することである。 【0011】 本発明の最後の目的は所望の取り扱いの特性を保持しつつ最小限の材料の使用で上記を実現することである。 【0012】 【課題を解決するための手段】 上述のおよびその他の目的は、凹面状の受け皿を内部に形成し実質的に平坦な第1の表面を有する視力矯正レンズ用パッケージであって、該受け皿がレンズを中心におくため充分に小さいが該受け皿内部に配置したレンズの半径よりは大きい曲率半径を有し、レンズを中心におき該受け皿の中央部で安定させられるようなパッケージの使用により実現されるものである。該受け皿の周囲には環状の封止領域があり、前記第1の平坦な表面および凹面状の受け皿の円環状の境界部周囲で前記凹面状の受け皿から離れ前記第1の平坦な表面より突出している平坦な円環をなすのが望ましい。前記パッケージは封止領域に沿って実質的に前記第1の平坦な表面と平行に封入シートを用いて密封的に封止し、前記凹面状の受け皿を被覆する。本発明の好適実施例においては、前記パッケージを水平に保てるように、前記第1の平坦な表面から前記凹面状の受け皿とほぼ等しい距離にあって前記第1の平坦な表面の辺縁から0°以外の角度をなす第2の平坦な表面を有する。パッケージは無気泡核ポリマーから構成し、受け皿内に水を入れたときにポリマー表面が充分に濡れ中心部の水のメニスカス(陥凹)を実質的に平坦にし、これによって関連の光学的収差を排除し、歪みの無いパッケージ内検査を可能とする。本発明のパッケージは充分に平滑な表面(#2番SPI-SPE研磨の800グリットまたはそれ以上の粗さ)としてレンズの均一な照明を可能とし、また処理水を排出する最にもレンズを保持し得るに充分な静摩擦計数を提供する。 【0013】 【実施例】 図1を参照すると、実質的に平坦な第1の表面10を有する視力矯正レンズ用パッケージが図示してある。この平坦な第1の表面内に形成した受け皿12はパッケージ上面から観察した場合に凹面状を成す。受け皿12内部には複数のリブ13が設けてある。このリブは受け皿の中心付近でしかも中心を外して配置してある。それぞれのリブ13は長さ0.5mm幅0.025mmである。リブはパッケージの中心から3.0mm、同一線上の対のリブの端部から6.0mmの位置に配置してある。 【0014】 図2を参照すると、図面上で「r」として球状の受け皿の半径を示してあり、受け皿の曲率半径がその中に入れる視力矯正レンズの曲率半径より大きくなるように成してある。 【0015】 視力矯正レンズは視力補正量によって7.0mmから11.0mmの間の前面の曲率半径を有する、一般的には8.50mmを標準値とする水性コンタクトレンズである。この場合、受け皿が8.50mmより大きく、重力によりレンズを適切に中心へ配置するため12mm以下で充分に小さい曲率半径を有するのが望ましい。 【0016】 本実施例において、パッケージの受け皿の好適曲率半径は9.5mmである。9.5mmないし12.0mmのパッケージを用い毎秒75mmで移動させた30回の試行では、この寸法のパッケージが、CCDビデオカメラで測定すると中心からのレンズの偏りについて最も小さい標準偏差を有していた。この結果を次の表で示す。 【0017】 【0018】 受け皿の曲率半径は内部に入れるコンタクトレンズの曲率半径より大きくなければ成らないが、一点で受け皿とレンズが接触し、レンズと受け皿の間が線または面接触してレンズと受け皿間で余分な摩擦を生成しないようにまたレンズが受け皿の中心から移動するのを防止しなければならない。 【0019】 さらなる制約として、受け皿の曲率半径が12mmより大幅に大きい場合には、コンタクトレンズは自由に移動して厳密に点接触するという上記の基準には適合するが受け皿の平たさのために受け皿内部で中心にこなくなる。 【0020】 さらに、受け皿の内部表面が適切な粗さ、望ましくは800グリット以下を有する必要がある。この粗さを充分に制限して、レンズが水中で受け皿の中心に落ち込むようにまたレンズを指で取り出す際に内部表面と滑ることが出来るようにする。 【0021】 パッケージは受け皿の中心付近に突出しているリブ13を含む。パッケージ内のレンズの中心合わせの間はレンズがリブの上を浮遊するが、中心に位置した場合にはこれらのリブと接触せず、パッケージの中心と一点で接触するようになる。リブは包装工程における脱イオン水の排出中にレンズを保持する。 【0022】 もう一度図1を参照すると、封止領域14が第1の平坦な表面10と凹面状の受け皿12の円形の境界部の周辺に位置するように設けてある。この封止領域は凹面状の受け皿から離れる方向に第1の平坦な表面より突出する部材14として図示してある平坦な円環と成すのが望ましい。 【0023】 さらにスイス・ジュネーブのアルスイス社(Alusuisse)製造の2枚のポリエステル・シートの間にアルミニウム箔を積層したシートなどの封止シート(図示していない)を用いる。この封止シートは第1の平坦な表面と実質的に平行に配置して凹面状の受け皿を覆い、これによってレンズならびに受け皿内に入れる液体を封入する空洞を形成する。 【0024】 突出した円環状の平坦な表面14は制御された表面領域にプラスチック被覆金属箔を熱封止するための領域を提供し、これにより密封的封止が確実になり最終消費者による容易な開封を提供する。 【0025】 好適実施例において、パッケージはさらに第1の平坦な表面10の辺縁から凹面状の受け皿12の方向に0°以外の角度で延在する第2の平坦な表面16を含む。第2の表面は第1の表面から凹面状の受け血の尖端が延在するのと実質的に同じ距離hだけ延出し、パッケージを平坦な面においた場合に、パッケージの水平面が水平のまま維持され、傾いたり内容をこぼしたりしないのが望ましい。受け皿の深さhは内部に入っているレンズの直径より小さく、受け皿と被覆の間に入れることでレンズの反転を防止するように成してある。 【0026】 封止シート(図示していない)を除去する際に簡単に掴めるように成すには、第1の平坦な表面と第2の平坦な表面の一部を削除して切り欠き部分18を形成する。この切り欠きにより最終消費者は突出した円環状の封止領域14に対して封止した領域まで金属箔を簡単に捲り返してその間の密封的封止を破ることが出来るようになる。 【0027】 パッケージはまた第1の平坦な表面から辺縁付近にあって実質的に直角方向の複数の突起20を含みパッケージを開封する際の把持のさらなる補助を提供するように成してもよい。 【0028】 パッケージはまた第1の平坦な表面内に製造工程におけるパッケージの存在および位置を示すための手段たとえば切り欠き22を含んでもよい。この切り欠きは光源およびフォトダイオードなどの位置特定手段と組み合わせて使用することで製造工程に沿ってレンズが特定の位置に移動したことを正確に指示することが出来る。 【0029】 パレットなどのなんらかの方式の製造工程搬送手段に注意深くパッケージを配置するのも望ましい。これには配置タブ24を用い、その1つを図1に図示してある。図示したタブに対向する別のタブは本図で第1の平坦な表面10の裏側にあり見えない。製造工程に沿って移動するパレット内で視力矯正レンズパッケージを固定するためにタブを使用する方法は当業者には明らかであろう。また、切り欠き22をパッケージの存在ならびに位置を示すための手段として用いる以外にも、切り欠き22を単独でまたは位置決めタブ24と組み合わせて、パレットなどの製造工程搬送手段にパッケージを固定的に配置することも可能である。 【0030】 照明系を有するレンズ搬送系システムおよびパレット系システムの好適実施例は本出願と同時出願中の米国特許出願994249号および994242号(各々1992年12月21日出願)に詳細に説明してある。 【0031】 前述のとおり本発明の主要な目的の1つは、所望の場合に内部に含まれる視力矯正レンズのパッケージ内検査を出来るように成すことである。検査は封止シートを受け皿12の上に配置する前に行なうのが望ましい。 【0032】 カメラによってレンズ画像を取り込み、画像がカメラから取り込まれデジタルデータに変換されてレンズが合格品かどうかを決定する方法については本出願と同時出願中の米国特許出願993756号(1992年12月21日出願)に詳細に説明してある。 【0033】 よって好適実施例において、受け皿12と望ましくはパッケージ全体をエクソン(Exxon)PP1105ポリプロピレンなどの無気泡核ポリマーで作成する。この材料は気泡核を作らない性状であるため、充分に濡れ、収容区画の中心において水によるメニスカス(陥凹)が実質的に平坦になる。受け皿12内部に含まれる水の表面が有意なメニスカスを形成せず、その結果として実質的に平坦であるため、水の上部表面に由来する光学的収差は存在しない。 【0034】 本発明において使用する上であらゆる他の材料より好適なこの材料は、透光性または充分透明に製造し、最小限の表面または粒状性による拡散、吸収、収束で光が受け皿を透過しうるように成しておく。 【0035】 適切な光源を用いれば、透光性のパッケージは適切な観察装置と組み合わせてレンズを検査でき、パッケージにより持込まれる光源の細部および変化が検査に影響しないことは当業者には理解されよう。 【0036】 照明系の好適実施例の詳細な説明は本出願と同時出願中の米国特許出願994388号(1992年12月21日出願)に説明してある。 【0037】 もう一度図2を参照すると、本発明のさらに望ましい特性が図示してある。本図において、パッケージはレンズの処理および検査を行なった後で図示してある。図1に図示した参照番号と同様の番号を有する部材に加え、パッケージはプラスチック被覆の金属箔26を突出した円環状の封止領域14に溶着して熱封止した状態を図示してあり、密封的封止を提供している。図示したように、本発明の2個のパッケージを背中合わせに組み合わせることが出来る。これは受け皿12と第2の平坦な表面16の間の距離を第2のパッケージの受け皿と組み合わせるのに充分に保つことで実現している。 【0038】 パッケージの対のこの形式の組み合わせ方により最小限の容積量で2次的容器内部で多数のパッケージの保存が可能となる--定期的交換方式コンタクトレンズにとっては非常に望ましい特徴である。 【0039】 本発明の実施態様は以下の通りである。 (1)前記封止領域が前記凹面状の受け皿から離れる方向に前記第1の平坦な表面から突出した平坦な円環を成すことを特徴とする請求項1に記載のパッケージ。 【0040】 (2)前記第1の平坦な表面の端部から0°以上の角度で前記凹面状の受け皿の方向に延出する第2の平坦な表面をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のパッケージ。 【0041】 (3)前記第2の平坦な表面が前記凹面状の受け皿の尖端までと実質的に同じ距離だけ前記第1の平坦な表面から延出し平坦かつ水平で安定した表面に置いた場合に該パッケージが水平を保つように成してあることを特徴とする実施態様(2)に記載のパッケージ。 【0042】 (4)切り欠き部分をさらに含み、前記切り欠きは前記第1の平坦な表面の一部と、前記第2の平坦な表面の一部と、これらの間の境界部分を含み前記封止シートを開封するために把持するのに充分に成してあることを特徴とする実施態様(2)に記載のパッケージ。 【0043】 (5)前記第1の平坦な表面からこれの辺縁付近で実質的に直角の方向に開封時に該パッケージを把持するための複数の突起をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のパッケージ。 【0044】 (6)前記受け皿が無気泡核ポリマーから製造され前記受け皿内に水を入れた場合に前記ポリマー表面は水表面の陥凹およびこれによる光学的収差を実質的に平坦化するのに充分なだけ濡れるように成してあることを特徴とする請求項1に記載のパッケージ。 【0045】 (7)前記凹面状の受け皿から前記第2の平坦な表面までの距離および前記第1と第2の平坦な表面の間の前記0°以外の角度が第2のパッケージの前記受け皿と組み合わせるのに充分と成すことを特徴とする実施態様(2)に記載のパッケージ。 【0046】 (8)前記第1の平坦な表面において製造工程中の前記パッケージの存在および位置を示すための手段をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のパッケージ。 【0047】 (9)製造工程の搬送手段に前記パッケージを装置するための手段をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のパッケージ。 【0048】 (10)製造工程の搬送手段に前記パッケージを装置するための前記手段は製造工程における前記パッケージの存在および位置を示すためにも用いられることを特徴とする実施態様(9)に記載のパッケージ。 【0049】 (11)前記受け皿の内部表面は200グリットないし800グリットの間の粗さを有し、水中において前記受け皿の中心にレンズが落下でき指で取り出すために前記内部表面に対してレンズを滑らせられるだけの充分な平滑さながら包装工程において水の排出中に前記レンズを保持し得るだけの充分な粗さを成すことを特徴とする請求項1に記載のパッケージ。 【0050】 (12)前記受け皿の曲率半径は8.50mm以上また12.0mm以下と成すことを特徴とする請求項1に記載のパッケージ。 【0051】 (13)前記受け皿が前記受け皿の中心を避けて配置した複数の突出したリブを含むことを特徴とする請求項1に記載のパッケージ。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明のパッケージの実質的に上部部分を示す等角図である。 【図2】 本発明による2つのパッケージの側面図で、2個のパッケージを相互に重ねる様子を示す。 【符号の説明】 10 第1の表面 12 受け皿 13 突起 14 封止傾城 16 第2の表面 18 切り欠き 22 切り欠き 24 配置タブ |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-09-21 |
出願番号 | 特願平5-344801 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(A45C)
P 1 651・ 534- ZA (A45C) P 1 651・ 531- ZA (A45C) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 冨岡 和人 |
特許庁審判長 |
大元 修二 |
特許庁審判官 |
一色 貞好 北川 清伸 |
登録日 | 2003-08-22 |
登録番号 | 特許第3464260号(P3464260) |
権利者 | ジョンソン・アンド・ジョンソン・ビジョン・ケア・インコーポレイテッド |
発明の名称 | 視力矯正レンズ用パッケージ |
代理人 | 加藤 公延 |
代理人 | 田澤 博昭 |
代理人 | 田澤 博昭 |
代理人 | 加藤 公延 |