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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01M |
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管理番号 | 1143211 |
異議申立番号 | 異議2003-73608 |
総通号数 | 82 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-09-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-12-26 |
確定日 | 2006-02-22 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3422496号「電池用セパレータの製造方法」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3422496号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3422496号の請求項1〜6に係る発明についての出願は、平成4年1月17日(優先権主張平成3年12月20日)に特許出願され、平成15年4月25日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、池上祥子により特許異議の申立てがなされ、取消理由(平成16年12月3日付け)が通知され、その指定期間に加えて請求された延長期間内である平成17年6月14日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 2-1.訂正の内容 (1)訂正事項a 請求項1の「b)」に係る記載における「該第二ポリマー組成物は、上記変換温度を越える少なくとも10℃に渡ってその超高粘度を維持し、」を、「該第二ポリマー組成物は、上記変換温度を越える少なくとも10℃に渡ってその超高粘度を維持し、該第二ポリマー組成物が、超高分子量のポリオレフィン、または他のポリオレフィン類、ポリスルホン類、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリジ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体、ポリアミド類、ポリフェニレンオキサイド-ポリスチレン共重合体、およびポリカーボネート類のうちの少なくとも一のポリマーと、超高分子量のポリオレフィンとの混合物であり、」に訂正する。 2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無および拡張・変更の存否 訂正事項aは、訂正前の請求項1に、「該第二ポリマー組成物が、超高分子量のポリオレフィン、または他のポリオレフィン類、ポリスルホン類、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリジ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体、ポリアミド類、ポリフェニレンオキサイド-ポリスチレン共重合体、およびポリカーボネート類のうちの少なくとも一のポリマーと、超高分子量のポリオレフィンとの混合物であり」という事項を付加して、第二ポリマー組成物をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。 そして、上記訂正事項aの根拠は、明細書の段落【0024】の「例えば、ポリマー類は、ポリオレフィン類、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-メタアクリレート共重合体など、およびそれらの混合物から選択され得る。・・・好適には、該第二ポリマーは、超高(約2,000,000以上)分子量のポリオレフィン(例えばポリエチレン)を含む、より高い重量平均分子量を有するものとする。」という記載によると、第二ポリマー組成物は、「超高分子量のポリオレフィン、または、超高分子量のポリオレフィンと他のポリマー類との混合物」が好適であるといえること、及び、同段落【0023】の「本発明の多層シート状製品の各々の層を形成させるに有益なポリマー状組成物は、・・・例えばポリオレフィン類、ポリスルホン類、例えばポリアリールエーテルスルホン類など、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリジ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体、ポリアミド類、ポリフェニレンオキサイド-ポリスチレン共重合体、ポリカーボネート類など、から選択され得る。」という記載によると、他のポリマー類は、「ポリオレフィン類、ポリスルホン類、例えばポリアリールエーテルスルホン類など、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリジ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体、ポリアミド類、ポリフェニレンオキサイド-ポリスチレン共重合体、ポリカーボネート類のうちの少なくとも一つのポリマー」であるといえることに基づくものであるから、上記訂正事項aは、願書に添付した明細書の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 2-3.むすび したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2、3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立についての判断 3-1.取消理由の概要 当審の取消理由の概要は、次のとおりである。 理由1:請求項1、2、6に係る発明は、下記の刊行物1に記載された発明であるか、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2、6に係る発明の特許は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。 理由2:請求項1〜6に係る発明は、下記の刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1〜6に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 理由3:請求項1、2に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその先願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、本件請求項1、2に係る特許は、特許法第29の2の規定に違反してされたものである。 理由4:本件請求項1、2、4〜6に係る発明は、その出願と同日に出願された同一出願人による下記の出願(以下、「同日出願)という。)に係る発明と同一であるから、本件請求項1、2、4〜6に係る発明の特許は、特許法第39条第2項の規定に違反してなされたものである。 引用文献等: (1)刊行物1:特開平2-77108号公報(異議申立人の提出した甲第1号証と同じ) (2)刊行物2:特開昭62-10857号公報(同甲第2号証と同じ) (3)刊行物3:特開平2-129238号公報(同甲第3号証と同じ) (4)刊行物4:特開平2-75151号公報(同甲第4号証と同じ) (5)刊行物5:特開昭56-20035号公報(同参考文献1と同じ) (6)先願:特願平2-309571号(特開平4-181651号公報(同甲第5号証と同じ)参照) (7)同日出願:特願平4-25844号(特許第3235669号公報(同甲第6号証と同じ)参照) 3-2.本件発明 上記2で示したとおり、上記訂正が認められるから、本件の請求項1〜6に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明6」という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 1)予め決められた長さおよび幅そして0.025cm未満の厚さを有し、そしてこのシートの少なくとも20容積%を占めるところの、直径が0.005〜50ミクロンから成る平均孔サイズの孔を有する微孔性シート(このシートは、本質的に充填されていない第一ポリマー組成物から成る)の形態の少なくとも1つの第一層と、 2)予め決められた長さおよび幅そして0.025cmの厚さを有し、そしてこのシートの少なくとも20容積%を占めるところの、直径が0.005〜50ミクロンから成る平均孔サイズの孔を有する微孔性シート(このシートは、本質的に充填されていない第二ポリマー組成物から成る)の形態の少なくとも1つの第二層とを含む少なくとも2つの層を有する微孔性多層シート状製品の製造方法であって、 a)第一ポリマー組成物と第二ポリマー組成物とを共押出しし、上記組成物の各々は、このシート状製品が用いられる電池環境に対して本質的に不活性な成分から成り、 b)該第一ポリマー組成物から成る少なくとも1つの第一層と、該第二ポリマー組成物から成る少なくとも1つの第二層とを有する初期シート状製品を生じさせ、ここで、上記第一層および上記第二層の各々を一緒に結合させ、そして上記第一ポリマー組成物は、その粘度が超高であり、そして80℃以下の温度で、該第二ポリマー組成物のそれと本質的に同じであるような粘度プロファイルを示し、そして80℃〜150℃の範囲の変換温度で流れを示す粘度減少を有する一方、該第二ポリマー組成物は、上記変換温度を越える少なくとも10℃に渡ってその超高粘度を維持し、該第二ポリマー組成物が、超高分子量のポリオレフィン、または他のポリオレフィン類、ポリスルホン類、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリジ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体、ポリアミド類、ポリフェニレンオキサイド-ポリスチレン共重合体、およびポリカーボネート類のうちの少なくとも一のポリマーと、超高分子量のポリオレフィンとの混合物であり、 c)上記初期シートに引き伸ばしおよび焼きなましを受けさせることによって、該初期シートに多孔性を与え、そして d)最終的シート状製品を回収することを含む微孔性多層シート状製品の製造方法。 【請求項2】 該第二ポリマーの二次転移温度と該第一ポリマーの溶融温度との間の温度で該初期シート状製品を引き伸ばした後、引き伸ばし状態を維持しながら、該初期シート状製品の熱焼きなましを行うことにより、該初期シート状製品に多孔性を与える請求項1の方法。 【請求項3】 -198℃〜-70℃の低温で、初期シート状製品の大きさを基準にして1〜200%、該初期シート状製品を一軸引き伸ばしした後、引き伸ばした状態を維持しながら、この引き伸ばしたシートを、第一ポリマーの溶融温度よりも5〜60℃低い温度に加熱することにより、該初期シート状製品に多孔性を与える請求項1の方法。 【請求項4】 該第一および第二ポリマー組成物が、炭化水素オイルまたは固体状粒子から選択される少量成分を含有しており、そして該多孔性を与える段階が更に、引き伸ばし後、上記少量成分の除去を含む請求項1の方法。 【請求項5】 該第一ポリマーが、エチレンとC4-C10アルファ-オレフィンとの共重合体から選択される請求項1、2、3または4の方法。 【請求項6】 該第一ポリマーが、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、またはエチレン-メタアクリレート共重合体、或はポリエチレンから選択され、そして該第二ポリマーが、ポリエチレンおよびポリプロピレンから選択される請求項1、2、3または4の方法。」 3-3.引用刊行物に記載された事項 当審の取消理由2に引用した刊行物1〜5には、以下の事項がそれぞれ記載されている。 (1)刊行物1:特開平2-77108号公報 (摘示1-1)「(1)融点が158℃以上の第1のポリオレフィン系多孔質層と、該第1のポリオレフィン系多孔質層に積層された融点が110℃から150℃の第2のポリオレフィン系多孔質層とを有し、全層の平均空孔率が50%から85%、全層の平均空孔径が0.01μmから5μmである、多孔質ポリオレフィン系積層体から成る電解液セパレータ。」(特許請求の範囲第1項) (摘示1-2)「この発明は、電解コンデンサ、リチウム電池、バッテリー等に用いられる電解液セパレータに関する。」(第1頁右下欄第2〜4行) (摘示1-3)「本願発明者らは、鋭意研究の結果、融点が158℃以上の第1のポリオレフィン多孔質層と、融点が110℃から150℃の第2のポリオレフィン多孔質層とを積層して電解液セパレータとして用いると、電極上の微細導電物質がセパレータを突き破って反対極に移動してショートが発生しても、その際発生する熱によって比較的融点の低い第2のポリオレフィン多孔質層が融解されてショートによって形成された孔が自動的に閉塞封止され、セパレータが全破壊に至る確率を低減することができることを見出しこの発明を完成した。」(第2頁左上欄第7〜17行) (摘示1-4)「この発明の電解液セパレータでは、融点が158℃以上の第1のポリオレフィン系多孔質層(以下A層という)と、融点が110℃から150℃の第2のポリオレフィン系多孔質層(以下B層という)とが積層されている。A層の融点は158℃以上であり、好ましくは160℃以上である。A層の融点が158℃未満の場合には高温下においてB層を支持する機能が低下し、セパレータの耐熱性が低下する。・・・A層を構成するポリオレフィンとしてはポリプロピレン・・・もしくはブレンド物等が好ましく・・・」(第2頁右上欄第6行〜左下欄第1行) (摘示1-5)「B層の融点が110℃未満の場合には耐熱性が低下し、正常な作動中に融解するおそれがあり、一方、150℃を超えるとショートが発生しても形成された孔が閉塞封止されにくくなる。B層を構成するポリオレフィンとしてはポリエチレン、ポリブテン及び及びエチレンプロピレン共重合体等が好ましく・・・」(第2頁左下欄第8〜14行) (摘示1-6)「セパレータの層構成は、A層/B層又はA層を中央に挟むB層/A層/B層が好ましい。」(第2頁左下欄末行〜右下欄第1行) (摘示1-7)「セパレータ全層の厚みは、・・・10μmから70μmが好ましく、・・・。セパレータ全層の厚みに対するB層の厚みの割合は、・・・20%から60%が好ましく、・・・」(第2頁右下欄第18行〜第3頁左上欄第4行) (摘示1-8)「この発明の電解液セパレータを構成するA層及びB層は、層を構成するポリオレフィン樹脂100重量部に、ジシクロヘキシルフタレート(DCHP)又はトリフェニルフォスフェイト(TPP)のような・・・可塑剤として使用されている・・・有機固体80重量部から240重量部・・・を配合し、溶融押出した後、・・・有機固体の良溶媒を用いて、上記有機固体の添加量の95%以上、好ましくは98%以上を抽出することにより製造することができる。」(第3頁左上欄第6〜19行) (摘示1-9)「A層とB層とを一体化して積層する場合には、A層及びB層を上記のようにしてそれぞれ製造した後に点融着法によって積層一体化することもできるし、A層とB層とを共押出しし、その後に上記抽出を行なうことによっても積層一体化を行なうことができる。」(第3頁右上欄第2〜8行) (摘示1-10)「積層の前又は後に、該ポリオレフィンのガラス転移点以上、融点-10℃以下の温度で1.5倍から6倍に延伸すると・・・好ましい。さらに・・・ポリオレフィンの溶融結晶化温度以上、融点-5℃以下の温度範囲で熱固定することが好ましい。」(第3頁右上欄第8〜14行) (摘示1-11)「この発明の電解液セパレータを構成するポリオレフィン系多孔質層(A層及びB層)は、それぞれポリオレフィンのみから成っていることが好ましいが、上記した融点、平均空孔率及び平均空孔径がこの発明の範囲内に入るならば、微量の不純物を含んでいても差支えなく、また、例えば熱安定剤、酸化防止剤、滑り剤、帯電防止剤等の添加剤やオレフィン以外のモノマーを微量配合しても差支えない。特許請求の範囲でいう「ポリオレフィン系多孔質層」とはこのような不純物等を含んだポリオレフィン多孔質層をも包含する意味で用いている。」(第3頁左下欄第2〜13行) (摘示1-12)「実施例1 A層樹脂としてポリプロピレンホモポリマー(PP、融点161℃)100重量部とジシクロヘキシルフタレート(DCHP)150重量部とのブレンド物及び、B層樹脂としてエチレンプロピレンコポリマー(EPC、融点145℃)100重量部とDCHP150重量部とのブレンド物をそれぞれ別の押出機より溶融押出しし、Tダイ内で積層しA層/B層から成る溶融シートを成形し、・・・冷却した。引き続きこのシートを50℃の1-1-1-トリクロロエタン溶媒槽中で抽出を行ない、乾燥後、130℃にて3.5倍に延伸し、微孔性フィルムを得た。」(第4頁左下欄第3〜16行) (2)刊行物2:特開昭62-10857号公報 (摘示2-1)「1.(a)少なくとも1枚の、あらかじめ決定した長さおよび幅ならびに10ミル(0.025cm)未満の厚さを有する微細孔性シートの形状の第1種層であって、上記シートがシート製品の構成成分である場合に、約80℃乃至150℃の温度においてあらかじめ決定した長さおよび幅の寸法を実質的に保ちつつ、実質的に無孔性の膜状シートに変成することが可能であるもの、および (b)少なくとも1枚の、あらかじめ決定した長さおよび幅、ならびに10ミル(0.025cm)未満の厚さの、平均孔径約0.005乃至約5ミクロンの細孔を有する微細孔性シートの形状の第2種層であって、上記細孔が上記シートの全体積の少なくとも約25パーセントを占め、上記シートが蓄電池に組み込まれている場合に、常温乃至上記第1種層の変成温度より少なくとも約10℃高い温度において上記微細孔構造ならびに上記のあらかじめ決定した長さ、幅および厚さを実質的に保つことが可能であるもの よりなる、ことを特徴とする少なくとも2層を有するシート製品。」(特許請求の範囲第1項) (摘示2-2)「本発明は電池のセパレータ、特にリチウム電池の過熱および熱的暴走の発生(・・・)を防ぐたのセパレータとして有用なシート製品に関するものである。」(第5頁右上欄第14〜17行) (摘示2-3)「第1種層の細孔は、通常は約0.005乃至約5ミクロンの平均孔径を有し、また、この細孔は、通常はシートの全体積の少なくとも約10体積パーセント、好ましくは少なくとも約25体積パーセントを占めるであろう。」(第7頁左下欄第19行〜右下欄第5行) (摘示2-4)「第2種のポレフィン(「ポリオレフィン」の誤記と認める。)は少なくとも100,000の大きな重量平均分子量を有するべきであり、100,000乃至2,000,000の重量平均分子量を有するポリオレフィンから選択することができる。第2種のポリオレフィンは単独重合体たとえばポリエチレンもしくはポリプロピレンから、またはオレフィン性炭化水素単量体、たとえばエチレン、プロピレン、ブテン等の混合物から、もしくは、少なくとも90重量パーセントのオレフィン性炭化水素単量体と他のオレフィン性単量体、たとえば・・・との混合物より形成した共重合体から選択することができる。」(第9頁左下欄第14行〜右下欄第7行) (摘示2-5)「水不溶性可塑剤の代表的なものは・・・炭化水素物質たとえば潤滑油および燃料油を包含する石油・・・である。」(第10頁左上欄第4〜18行) (摘示2-6)「微細孔性の、実質的に非充填のポリオレフィンシートは・・・たとえばブローフィルム押出し法・・・のようにポリオレフィンのフィルムを速い引出し・・・速度および割合で押出し、たとえば約-20℃乃至ポリオレフィンの結晶融解温度の約25℃下の範囲の温度で、一軸に冷延伸してフィルムに微細孔性を与えることにより形成することができる・・・。・・・形成された微細孔性シートは、通常は、延伸の起らない張力下で、普通はシートの結晶融解温度より約40℃下乃至約5℃下の範囲の温度にさらすことによりアニールする。」(第13頁右上欄第2行〜左下欄第2行) (3)刊行物3:特開平2-129238号公報 (摘示3-1)「(1)自発的に接着し、かつ、接着前と実質的に同じ気孔率を有する少なくとも2層の微孔質ポリオレフイン層から成ることを特徴とする多層、微孔質ポリオレフインシート物質。 ・・・(中略)・・・ (7)多層、微孔質ポリオレフインシート物質の製造方法であって、 (a)ポリオレフインと、ブレンドの溶融温度で該ポリマーと混和性であるが冷却すると相分離を起こす添加剤とを溶融混合し、該溶液から層を形成し、該層を非平衡相分離を起こす速度で、かつ温度まで冷却し、そして、該層を凝固するまで冷却することによつて少なくとも2層の微孔質ポリオレフイン層を形成し; (b)前記のポリオレフインを膨潤させうる溶剤を使用して各層から前記の添加剤を抽出し、そして該溶剤湿潤層を接触させるか、または該溶剤湿潤層を接触させ、そして該接触層から前記の添加剤を抽出し;そして (c)該接触層を乾燥させて前記の溶剤を除去して該接触層間を接着させる 諸工程から成ることを特徴とする前記の方法。」(特許請求の範囲の請求項1,7) (摘示3-2)「これらの層は、所望により、添加剤の除去前または乾燥および接着後に延伸する。」(第3頁右下欄第10、11行) (摘示3-3)「本発明において有用なポリオレフインには、好ましくはエチレンおよびプロピレンのポリマーのみならず1-オクテン、1-ブテン、1-メチル-4-ペンテン、スチレンなどのポリマーおよび重合して結晶性および非晶質セグメントを含むことができる2種以上のかようなオレフインのコポリマーおよび・・・が含まれる。」(第4頁左上欄第17行〜右上欄第7行) (摘示3-4)「本発明の微孔質ラミネートシートは、テープ、ピンホールのない包装、バツテリーセパレーター、傷用包帯、およびフイルターのような広い範囲の用途に有用である。」(第6頁右上欄第16〜19行) (4)刊行物4:特開平2-75151号公報 (摘示4-1)「ポリプロピレンを延伸して得られる多数の微細孔を有する多孔質ポリプロピレンフィルムからなる電池用セパレータであって」(第2頁左下欄第19行〜右下欄第2行) (摘示4-2)「好ましい延伸温度の例を示すと、窒素を用いた場合には、-209℃〜-146℃の範囲・・・エタンを用いた場合には-183℃〜-70℃の範囲である。」(第4頁右下欄第10〜18行) (摘示4-3)「上記の極低温延伸工程における延伸倍率は、一般に未延伸ポリプロピレンフィルムに対して1〜200%の範囲の値である。」(第5頁右上欄第3〜5行) (摘示4-4)「熱固定処理は、極低温での延伸状態を保持したまま多孔質化したポリプロピレンフィルムを、通常は110〜165℃、好ましくは130〜155℃に加熱した空気中で3秒以上加熱する方法などにより実施される。」(第5頁左下欄第8〜12行) (5)刊行物5:特開昭56-20035号公報 (摘示5-1)「1.・・・非-多孔性重合体先駆フイルムからの連続気ほう性微孔性重合体フイルム製造用“溶媒ストレツチ”法において・・・オレフイン系ホモ重合体の約0.01乃至約10重量%の核形成剤が含まれており・・・」(特許請求の範囲第1項) (摘示5-2)「3.核形成剤がシリカ・・・から選ばれたものである・・・」(特許請求の範囲第3項) 3-4.当審の判断 (1)本件発明1について (1-1)刊行物1発明 刊行物1の(摘示1-1)には、「融点が158℃以上の第1のポリオレフィン系多孔質層と、該第1のポリオレフィン系多孔質層に積層された融点が110℃から150℃の第2のポリオレフィン系多孔質層とを有し、全層の平均空孔率が50%から85%、全層の平均空孔径が0.01μmから5μmである、多孔質ポリオレフィン系積層体から成る電解液セパレータ。」が記載されている。そして、(摘示1-4)の「この発明の電解液セパレータでは、融点が158℃以上の第1のポリオレフィン系多孔質層(以下A層という)と、融点が110℃から150℃の第2のポリオレフィン系多孔質層(以下B層という)とが積層されている。」という記載、及び、(摘示1-6)の「セパレータの層構成は、A層/B層又はA層を中央に挟むB層/A層/B層が好ましい。」という記載によると、上記電解液セパレータは、少なくとも1つの第1のポリオレフィン系多孔質層(A層)と、少なくとも1つの第2のポリオレフィン系多孔質層(B層)を有するものであるといえるし、上記第1の層(A層)及び第2の層(B層)はともに、「微孔性フィルム」といえるものである。さらに、上記第1の層(A層)は、(摘示1-4)によると、高温下において、上記第2の層(B層)を支持する機能とセパレータの耐熱性を保持するものであり、上記第2の層(B層)は、(摘示1-3)、(摘示1-5)によると、正常作動中には融解しないが、ショートが発生する際の発熱により融解して、ショートにより形成された孔を自動的に閉塞封止するようにされたものである。 また、(摘示1-11)の「この発明の電解液セパレータを構成するポリオレフィン系多孔質層(A層及びB層)は、それぞれポリオレフィンのみから成っていることが好ましいが・・・例えば熱安定剤、酸化防止剤、滑り剤、帯電防止剤等の添加剤やオレフィン以外のモノマーを微量配合しても差支えない。」という記載によると、上記電解液セパレータを構成する第1の層(A層)と、第2の層(B層)は、ともに、本質的に充填されていないポリオレフィン系樹脂組成物から成るものであるといえるし、(摘示1-7)によると、セパレータ全層の厚みは、10〜70μmである。 これらの事項を整理すると、刊行物1には、「融点が158℃以上の微孔性フィルム(このフィルムは、本質的に充填されていない第1のポリオレフィン系樹脂組成物から成る)の形態の少なくとも1つの第1の層(A層)と、該第1のポリオレフィン系多孔質層に積層された融点が110〜150℃の微孔性フィルム(このフィルムは、本質的に充填されていない第2のポリオレフィン系樹脂組成物から成る)の形態の少なくとも1つの第2の層(B層)とを有し、第1の層(A層)は、高温下において、第2の層(B層)を支持する機能とセパレータの耐熱性を保持し、第2の層(B層)は、正常作動中には融解しないが、ショートが発生する際の発熱により融解して、ショートにより形成された孔を自動的に閉塞封止するようにされており、全層の厚みが10〜70μm(0.001〜0.007cm)、全層の平均空孔率が50〜85%、全層の平均空孔径が0.01〜5μmである、多孔質ポリオレフィン系積層体から成る電解液セパレータ」が記載されているといえる。 さらに、上記電解液セパレータの製造法に関して、(摘示1-12)には、「実施例1 A層樹脂としてポリプロピレンホモポリマー(PP、融点161℃)100重量部とジシクロヘキシルフタレート(DCHP)150重量部とのブレンド物及び、B層樹脂としてエチレンプロピレンコポリマー(EPC、融点145℃)100重量部とDCHP150重量部とのブレンド物をそれぞれ別の押出機より溶融押出しし、Tダイ内で積層しA層/B層から成る溶融シートを成形し、・・・冷却した。引き続きこのシートを50℃の1-1-1-トリクロロエタン溶媒槽中で抽出を行ない、乾燥後、130℃にて3.5倍に延伸し、微孔性フィルムを得た。」と記載されているから、上記電解液セパレータは、少なくとも1つの第1の樹脂組成物と、少なくとも1つの第2の樹脂組成物との積層シートを成形した後、溶媒抽出、延伸して微孔性フィルムを得ることにより製造されるものであるといえる。そして、(摘示1-9)の「A層とB層とを共押出しし・・・積層一体化を行なうことができる。」という記載、及び、(摘示1-10)の「積層の・・・後に・・・延伸すると・・・好ましい。さらに・・・ポリオレフィンの溶融結晶化温度以上、融点-5℃以下の温度範囲で熱固定することが好ましい。」という記載によると、上記第1の樹脂組成物と第2の樹脂組成物との積層シートは、共押出しによる積層一体化により成形し、その後、延伸及び熱固定することが好ましいといえる。 これらの事項を本件発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、「微孔性シート(このシートは、本質的に充填されていない第2のポリオレフィン系樹脂組成物から成る)の形態の少なくとも1つの第2の層(B層)と 微孔性シート(このシートは、本質的に充填されていない第1のポリオレフィン系樹脂組成物から成る)の形態の少なくとも1つの第1の層(A層)とを含む少なくとも2つの層を有し、全層の厚さが0.001〜0.007cm、全層の平均空孔率が50〜85%、全層の平均空孔径が0.01〜5ミクロンである、多孔質ポリオレフィン系積層体から成る電解液セパレータの製造方法であって、 第2の樹脂組成物と第1の樹脂組成物とを共押出しし、 該第2の樹脂組成物から成る少なくとも1つの第2の層(B層)と、該第1の樹脂組成物 から成る少なくとも1つの第1の層(A層)とを有する積層シートを生じさせ、ここで、上記第2の層および上記第1の層の各々を一緒に結合させ、そして、上記第2の樹脂組成物は、融点が110〜150℃であり、正常作動中には融解しないが、ショートが発生する際の発熱により融解して、ショートにより形成された孔を自動的に閉塞封止する一方、該第1の樹脂組成物は、融点が158℃以上であり、高温下において、第2の層(B層)を支持する機能とセパレータの耐熱性を保持し、該第1の樹脂組成物が、ポリオレフィン系樹脂であり、 上記積層シートに溶媒抽出、延伸及び熱固定を受けさせることによって、該積層シートに多孔性を与え、そして 最終的シート状製品を回収することを含む多孔質ポリオレフィン系積層体から成る電解液セパレータの製造方法」という発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されているといえる。 (1-2)本件発明1と刊行物1発明との対比 本件発明1と刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「第2の層(B層)」、「第1の層(A層)」、「第2のポリオレフィン系樹脂組成物、第2の樹脂組成物」、「第1のポリオレフィン系樹脂組成物、第1の樹脂組成物」、「%」、「積層シート」、「延伸」は、本件発明1の「第一層」、「第二層」、「第一ポリマー組成物」、「第二ポリマー組成物」、「容積%」、「初期シート状製品、初期シート」、「引き延ばし」にそれぞれ相当する。さらに、刊行物1発明の「多孔質ポリオレフィン系積層体から成る電解液セパレータ」は、微孔性多層シート状製品といえるものであって、「リチウム電池、バッテリー等に用いられる」(摘示1-2)のであるから、第2の層(B層)及び第1の層(A層)を構成する組成物は電池環境に対して本質的に不活性な成分から成ることは明らかであるし、第2の層(B層)及び第1の層(A層)は、ともに予め決められた長さ及び幅を有することも明らかである。 そうすると両発明は、「1)予め決められた長さおよび幅を有する微孔性シート(このシートは、本質的に充填されていない第一ポリマー組成物から成る)の形態の少なくとも1つの第一層と、 2)予め決められた長さ及び幅を有する微孔性シート(このシートは、本質的に充填されていない第二ポリマー組成物から成る)の形態の少なくとも1つの第二層とを含む少なくとも2つの層を有する微孔性多層シート状製品の製造方法であって、 a)第一ポリマー組成物と第二ポリマー組成物とを共押出しし、上記組成物の各々は、このシート状製品が用いられる電池環境に対して本質的に不活性な成分から成り、 b)該第一ポリマー組成物から成る少なくとも1つの第一層と、該第二ポリマー組成物から成る少なくとも1つの第二層とを有する初期シート状製品を生じさせ、ここで、上記第一層および上記第二層の各々を一緒に結合させ、 c)上記初期シートに多孔性を与え、そして d)最終的シート状製品を回収することを含む微孔性多層シート状製品の製造方法」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点: (イ)本件発明1は、微孔性シートの形態の第一層が厚さ0.025cm未満で、微孔性シートの形態の第二層が厚さ0.025cmであり、第一層及び第二層が、ともに、シートの少なくとも20容積%を占めるところの、直径が0.005〜50ミクロンから成る平均孔サイズの孔を有するのに対し、刊行物1発明は、全層の厚さが0.001〜0.007cm、全層の平均空孔率が50〜85容積%、全層の平均空孔径が0.01〜5ミクロンである点。 (ロ)本件発明1は、第一ポリマー組成物が、その粘度が超高であり、そして80℃以下の温度で、該第二ポリマー組成物のそれと本質的に同じであるような粘度プロファイルを示し、そして80℃〜150℃の範囲の変換温度で流れを示す粘度減少を有する一方、第二ポリマー組成物が、上記変換温度を越える少なくとも10℃に渡ってその超高粘度を維持するのに対し、刊行物1発明は、第一ポリマー組成物(第2の樹脂組成物)が、融点が110〜150℃であり、正常作動中には融解しないが、ショートが発生する際の発熱により融解して、ショートにより形成された孔を自動的に閉塞封止する一方、第二ポリマー組成物(第1の樹脂組成物)は、融点が158℃以上であり、高温下において、第一層(B層)を支持する機能とセパレータの耐熱性を保持する点。 (ハ)本件発明1は、第二ポリマー組成物が、超高分子量のポリオレフィン、または他のポリオレフィン類、ポリスルホン類、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリジ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体、ポリアミド類、ポリフェニレンオキサイド-ポリスチレン共重合体、およびポリカーボネート類のうちの少なくとも一のポリマーと、超高分子量のポリオレフィンとの混合物であるのに対し、刊行物1発明は、ポリオレフィン系樹脂である点。 (ニ)本件発明1は、初期シートに引き伸ばし及び焼きなましを受けさせることによって、該初期シートに多孔性を与えるのに対し、刊行物1発明は、初期シートに溶媒抽出、延伸及び熱固定を受けさせることによって、該初期シートに多孔性を与える点。 (1-3)相違点についての判断 (i)相違点(イ)について 刊行物2には、「電池のセパレータ、特にリチウム電池の過熱および熱的暴走の発生・・・を防ぐたのセパレータとして有用なシート製品」(摘示2-2)が記載されており、このシート製品は、(摘示2-1)によると、少なくとも1枚の、0.025cm未満の厚さを有し、約80℃乃至150℃の温度において実質的に無孔性の膜状シートに変成することが可能である微細孔性シートの形状の第1種層(微孔性シートの形態の第一層)と、少なくとも1枚の、0.025cm未満の厚さを有し、常温乃至上記第1種層の変成温度より少なくとも約10℃高い温度において微細孔構造ならびにあらかじめ決定した長さ、幅および厚さを実質的に保つことが可能である微細孔性シートの形状の第2種層(微孔性シートの形態の第二層)よりなる2層を有するものであって、電池の過熱や熱的暴走の発生を防ぐのであるから、刊行物1発明の微孔性多層シート状製品(多孔質ポリオレフィン系積層体から成る電解液セパレータ)と共通する作用、効果を奏するものであるといえる。さらに、(摘示2-3)によると、第1種層は、平均孔径約0.005〜約5ミクロンの細孔を有し、細孔が第2種層シートの少なくとも約10容量%以上、好ましくは少なくとも約25容積パーセントを占めるものであり、また、(摘示2-1)によると、第2種層は、平均孔径約0.005〜約5ミクロンの細孔を有し、細孔が第2種層シートの少なくとも約25容積%を占めるものである。 そうすると、刊行物2には、電池用セパレータに有用なシート製品を構成する微孔性シートの形態の第1種層(第一層に相当)と、微孔性シートの形態の第2種層(第二層に相当)は、ともに、厚さが0.025cm未満で、シートの少なくとも25容量%を占めるところの、直径が0.005〜5ミクロンから成る平均孔サイズの孔を有することが記載されているといえるし、これら第1種層及び第2種層の厚さや孔の特性を、刊行物1発明の微孔性多層シート状製品の第一層及び第二層に適用することに何ら阻害要因は見あたらない。 してみると、刊行物1発明において、「微孔性シートの形態の第一層(B層)」を厚さ0.025cm未満とし、「微孔性シートの形態の第二層(A層)」を厚さ0.025cmとし、第一層及び第二層が、ともに、シートの少なくとも20容積%を占めるところの、直径が0.005〜50ミクロンから成る平均孔サイズの孔を有するものとすることは、刊行物2の記載事項に基づいて当業者が適宜なし得ることであるというべきである。 (ii)相違点(ロ)について 刊行物1発明の第一ポリマー組成物(第2の樹脂組成物)は、融点が110〜150℃であり、正常作動中には融解しないが、ショートが発生する際の発熱により110〜150℃の融点以上の温度で融解し、ショートにより形成された孔を自動的に閉塞封止するものであるから、110〜150℃の融点以上の温度では流れを示す粘度減少を有し、それ以下の正常作動中の温度では固体状態で流れを生じないような超高の粘度を有するといえる。そうすると、110〜150℃の範囲の温度は変換温度といえるし、変換温度以下の正常作動中の使用温度では、第二ポリマー組成物(第1の樹脂組成物)と同じであるような流れを生じない粘度プロファイルを示すことにより、第二層(A層)とともに電解液セパレータとして機能するといえる。すると、上記変換温度は、本件発明1の変換温度と重複しており、第一ポリマー組成物に係る他の構成も、本件発明1の相違点(ロ)に係る構成と共通している。 さらに、刊行物1発明の第二ポリマー組成物(第1の樹脂組成物)は、融点が158℃以上であり、高温下において、第一層(B層)を支持する機能とセパレータの耐熱性を保持するのであるから、上記変換温度(110〜150℃)を超える158℃以上という融点を有することにより、高温下において流れを生じることのない超高の粘度を維持して、上記変換温度で流れを生じた第一層を支持し、セパレータの耐熱性を保持するといえる。そうすると、第二ポリマー組成物(第1の樹脂組成物)は、上記変換温度を超える少なくとも10℃に渡ってその超高の粘度を維持するものを包含している。 してみると、刊行物1発明の第一、第二ポリマー組成物(第2、第1の樹脂組成物)は、本件発明1の相違点(ロ)に係る構成を備えるものであるから、相違点(ロ)は実質的な相違点ではない。 (iii)相違点(ハ)について (iii-1)本件明細書における第二ポリマーに関する記載について 本件明細書には、第二ポリマー(乃至第二ポリマー組成物)とそのポリオレフィンに関し、次のような記載が存在する。 (摘示A)「第一および第二ポリマー組成物の両方共、それらが固体状材料であるところの、低および中間温度では、非常に高い粘度を示すと理解される。これらの温度(例えば周囲温度から約70℃)では、両方の固体状組成物は、それらがいかなる著しい流れも生じないように、本質的に同じ(無限値に近づく)粘度を有する。・・・変換温度で、該第二ポリマー組成物は、充分に高い粘度を有し、従ってその弾性エネルギーを維持する必要がある、即ち本質的に流れを示さない必要がある。 本発明の多層シート状製品の各々の層を形成させるに有益なポリマー状組成物は、微孔性シートを生じ得る公知の種類のポリマー、例えばポリオレフィン類、・・・、ポリカーボネート類など、から選択され得る。この多層シート状製品の第一および第二シートを製造するために用いられるポリマー類は、好適には、上述した特性を与えるに最良の同じ種類のポリマー状材料から選択される。 好適な種類のポリマー類は、それらが接触する他の電池構成要素に関してそれらが不活性であるため、ポリオレフィン類である。この説明の残りの部分は、本シート状材料そしてそれから製造されたセパレータを製造するためポリオレフィン組成物を用いたところの、好適な具体例の組み合わせによって、本発明を説明する。通常は望ましくない長さおよび幅の収縮特性を示すところの、充填されていない微孔性ポリオレフィン組成物から成る少なくとも1つの第一層と共に、より高い粘度プロファイルのポリオレフィン組成物から成る少なくとも1つの第二ポリマーを有する製品を製造したとき、予想外に、低い変換温度を有するが、高い寸法安定性を示しそれを維持する製品が得られることを見い出した。例えば、ポリマー類は、ポリオレフィン類、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-メタアクリレート共重合体など、およびそれらの混合物から選択され得る。この第一層を形成する好適なポリオレフィンは、ポリオレフィンワックス、・・・、である。・・・これらのポリオレフィン類は、100,000〜約5,000,000から成る重量平均分子量を有するべきであり、好適には該第一ポリマーは、約100,000〜約1,000,000から成る低い重量平均分子量のポリマーであり、そして好適には、該第二ポリマーは、超高(約2,000,000以上)分子量のポリオレフィン(例えばポリエチレン)を含む、より高い重量平均分子量を有するものとする。」(段落【0022】〜【0024】) (摘示B)「第二層を形成している好適なポリマー類は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-メタアクリレート共重合体などから選択されるポリオレフィン類である。この第二ポリマーは、該第一ポリマーの変換温度よりも少なくとも10℃高い、好適には少なくとも20℃高い融点を有するように選択される。この第二ポリマー類は、好適には、該第一ポリマーのそれよりも高い重量平均分子量を有し、そして100,000〜2,000,000以上、最も好適には200,000〜5,000,000から選択される。」(段落【0026】) (摘示C)「この第一ポリマー/第二ポリマーの組み合わせは、この第二層に対して該第一層が有意に低い温度流動性プロファイルを示すように選択されるべきである。例えば、適切な組み合わせは、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン;ポリエチレン/ポリプロピレン/狭い分子量のポリエチレン/広い分子量のポリエチレン;エチレン-ブテン共重合体(5:1〜20:1)/ポリエチレン;エチレン-ヘキセン共重合体(5:1〜20:1)/ポリエチレン;エチレン-ヘキセン共重合体(5:1〜20:1)/ポリプロピレンなどである。」(段落【0027】) (摘示D)「本発明のシート状製品を形成している各々の層のポリマー状構成要素は、該第一層のポリマー状構成要素が、該第二層のために選択されたものよりも有意に低い温度-流動性プロファイルを有するように考慮して、選択される必要がある。2番目として、この第一および第二ポリマー類は、それによって製造された第一および第二層が互いに接着し得る相溶性を示す必要がある。3番目として、この第一および第二ポリマー類は、この得られるシート状製品の使用が意図されている電池環境に対して不活性である必要がある。4番目として、この第二ポリマー組成物は、シートを形成させるために用いられる該第一ポリマー組成物の変換温度よりも少なくとも10℃、好適には少なくとも20℃高い温度に及んで、その高い粘度-流動性プロファイルを維持できる必要がある。従って、これらのポリマー類は、数多くの、フィルムを生じさせるポリマー状材料から選択され得るが、これらは上記基準に合致する必要がある。例えば、狭い分子量を有する高密度ポリエチレン(第一ポリマーとして)/幅広い分子量分布を有する高密度ポリエチレン(第二ポリマーとして)の組み合わせ;低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレンの組み合わせ;ポリエチレン/ポリプロピレンの組み合わせなどが、該初期シート状製品を製造するために用いられ得る。加うるに、このポリマーはホモポリマーであってもよいが、各々は、例えばエチレン-ブテン共重合体/ポリエチレン;エチレン-ヘキセン共重合体/ポリエチレン、エチレン-ブテン共重合体/ポリプロピレンなどの共重合体から選択されてもよい。この好適な材料は、第一ポリマーとしてのエチレン-ブテンの共重合体またはエチレン-ヘキセン共重合体の使用である。この第一ポリマーの選択は、このシート状製品の特別な転移温度によって決定される。低転移温度(80℃〜110℃)のシート状製品が望まれている場合、この第一ポリマーは、狭い分子量分布を有するエチレン-ブテンもしくはエチレン-ヘキセンの共重合体から選択され得る。好適な第二ポリマーは、高密度ポリエチレンもしくは主にアイソタクティック(80%)なポリプロピレンから選択される。」(段落【0034】) (iii-2)第二ポリマーに必要とされる性質について 本件明細書の上記(iii-1)の記載からすると、本件発明1における「第二ポリマー(乃至第二ポリマー組成物)」は、 (a)固体状態である低及び中間温度では、いかなる著しい流れも生じないように非常に高い(超高の)粘度を示すものである(摘示A参照)、 (b)変換温度で、充分に高い(超高の)粘度を有し、本質的に流れを示さない(摘示A参照)、 (c)第一ポリマーの変換温度よりも少なくとも10℃高い融点を有する(摘示B参照)、 (d)接触する他の電池構成要素に関して不活性である(摘示A、D参照)、 (e)第一ポリマーと接着し得る相溶性を示す(第一ポリマーと同じ種類である)(摘示A、D参照)、 などの性質を必要とされていることが認められる。 (iii-3)第二ポリマーに超高分子量ポリオレフィン、または他のポリマーと超高分子量ポリオレフィンとの混合物を用いる技術的意義について 本件明細書には、第二ポリマーに必要とされる性質については、前示のように記載されているが、「第二ポリマー(乃至第二ポリマー組成物)」を「超高分子量ポリオレフィン、または他のポリオレフィン類・・・およびポリカーボネート類のうちの少なくとも一のポリマーと、超高分子量ポリオレフィンとの混合物であり」と限定した技術的意義については、特に記載されておらず、単に、(摘示A)のように、 「例えば、ポリマー類は、ポリオレフィン類、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-メタアクリレート共重合体など、およびそれらの混合物から選択され得る。・・・好適には、該第二ポリマーは、超高(約2,000,000以上)分子量のポリオレフィン(例えばポリエチレン)を含む、より高い重量平均分子量を有するものとする。」(段落【0024】) と記載され、また、ポリマーの種類を問わずに、「超高分子量」については、(摘示B)のように、 「好適には、該第一ポリマーのそれよりも高い重量平均分子量を有し、そして100,000〜2,000,000以上、最も好適には200,000〜5,000,000から選択される。」(段落【0026】) と記載されているだけである。 そして、他方、(摘示D)のように、 「好適な第二ポリマーは、高密度ポリエチレンもしくは主にアイソタクティック(80%)なポリプロピレンから選択される。」(段落【0034】) と記載されていることや、超高分子量ポリオレフィン、または他のポリマーと超高分子量ポリオレフィンとの混合物を用いた実施例が全く存在しないことを考慮すると、本件明細書の記載に基づく限りにおいて、超高分子量ポリオレフィンは、「第二ポリマー(乃至第二ポリマー組成物)」として例示された他のポリマーに比べ、格別に顕著な技術的意義を有するものとは認められない。 (iii-4)相違点(ハ)についての判断 以上の(iii-2)、(iii-3)を考慮して、相違点(ハ)について検討すると、「第二ポリマー(乃至第二ポリマー組成物)」として必要とされる前記(a)〜(e)の性質のうち、(a)〜(c)は、前記相違点(ロ)で検討したように、また、(d)は、前記一致点として、刊行物1発明の第二ポリマー組成物のポリオレフィン系樹脂が具備するものであるし、(e)は、刊行物1発明の第一ポリマー組成物がポリオレフィン系樹脂組成物であることを前提にすると、刊行物1発明の第二ポリマー組成物のポリオレフィン系樹脂が当然に具備するものであるといえる。 そして、ポリオレフィンとして、超高分子量ポリオレフィンは、本件特許の出願前において周知のものであるし、刊行物2には、第二ポリマーを100,000乃至2,000,000の重量平均分子量を有するポリオレフィンから選択することが記載され(摘示2-4、上記「(i)」参照)、前記(a)〜(e)の性質を具備する第二ポリマーとして超高分子量ポリオレフィンである超高分子量ポリエチレンを用いることが実質的に記載されているといえる。また、電池用セパレータに、超高分子量ポリエチレンを用いることも、例えば、特開昭63-273651号公報、特開昭60-255107号公報、特開昭60-242035号公報、特開平2-251545号公報に記載され、超高分子量ポリエチレンと他のポリエチレンとの混合物を用いることも、例えば、特開平3-105851号公報に記載されるように、本件特許の出願前において周知のことである。しかも、ポリマーの分子量が高ければ、溶融粘度が高くなることは、「新版 プラスチック材料読本」桜内雄二郎著、(株)工業調査会(1989年5月20日新版第2版発行)第131頁にも記載されるように周知のことであるし、超高分子量ポリエチレンは、溶融粘度が極めて高く、流動性が非常に低いことも、例えば、特開昭59-215833号公報第1頁、特開平2-30514号公報第1頁右下欄〜第2頁左上欄に記載されるように周知のことであるから、超高分子量ポリエチレンは、前記(c)〜(e)の性質を満足するだけでなく、前記(a)(b)の性質の点でより望ましい材料であることは、当業者に自明のことといえる。さらに、ポリマーの分子量が高ければ、機械的強度が高くなることも周知のことであるし、超高分子量ポリエチレンが汎用のポリエチレンに比べ、耐衝撃性、耐摩耗性、耐薬品性、引張強度等に優れていることも、前記「新版 プラスチック材料読本」第131頁、第133〜134頁、特開昭59-215833号公報第1頁、特開平2-30514号公報第1頁右下欄〜第2頁左上欄に記載されるように周知のことである。 してみると、超高分子量ポリエチレンが前示の如き各種の性質においてより望ましい材料であることは、本件特許の出願前において周知であるといえるし、超高分子量ポリエチレンが、本質的に充填されていなくても前示の如き各種の優れた性質を発揮することも周知であるといえるから、刊行物1記載の電池用セパレータの発明において、第二ポリマー組成物であるポリオレフィン系樹脂を、前記周知乃至刊行物2に記載の超高分子量ポリオレフィンである超高分子量ポリエチレンとすること、または他のポリオレフィン類と超高分子量ポリエチレンとの混合物とすることは、当業者が容易に想到し得たというべきである。 (iv)相違点(ニ)について 刊行物1発明は、(摘示1-8)によると、「A層及びB層は、層を構成するポリオレフィン樹脂100重量部に、ジシクロヘシキルフタレート(DCHP)又はトリフェニルフォスフェイト(TPP)のような・・・有機固体80重量部から240重量部・・・を配合し」たポリマー組成物を用いたものであり、A層とB層を積層一体化した初期シート(積層シート)に、「有機固体の良溶媒を用いて、上記有機固体の添加量の95%以上、好ましくは98%以上を抽出する」ことによる溶媒抽出を受けさせることにより多孔性を与えるものであるから、引き延ばし(延伸)及び熱固定のみにより、初期シートに多孔性を与えるものではない。しかしながら、刊行物2には、ポリオレフィンフィルムをブローフィルム押出し法で押出し、約-20℃乃至ポリオレフィンの結晶融解温度の約25℃下の範囲の温度で、一軸に冷延伸してフィルムに微細孔性を与えた後、延伸の起らない張力下で、シートの結晶融解温度より約40℃下乃至約5℃下の範囲の温度にさらしてアニールすることにより、微細孔性の実質的に非充填のポリオレフィンシートを製造すること、すなわち、引き伸ばし(延伸)及び焼きなまし(アニール)によりシートに多孔性を与えることが記載されている(摘示2-6)。 そうすると、刊行物1発明の初期シートを、「有機固体」(摘示1-8)を含有しない非充填のポリマー組成物により形成した後、初期シートに溶媒抽出を受けさせることなく、刊行物2に記載されるような、引き延ばし及び焼きなましを受けさせることにより多孔性を与えることは、当業者であれば格別困難なことではないというべきである。 してみると、本件発明1の相違点(ニ)に係る構成は、刊行物2に記載された事項から、当業者が適宜なし得ることである。 (1-4)本件発明1についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件発明1は、刊行物1、2に記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1において、第二ポリマーの二次転移温度と第一ポリマーの溶融温度との間の温度で初期シート状製品を引き伸ばした後、引き伸ばし状態を維持しながら、該初期シート状製品の熱焼きなましを行うことにより、該初期シート状製品に多孔性を与えることをさらに限定するものであるが、刊行物2には、「約-20℃乃至ポリオレフィンの結晶融解温度の約25℃下の範囲の温度で、一軸に冷延伸(引き延ばし)」した後、「延伸の起らない張力下で・・・アニール(焼きなまし)する」ことにより初期シートに多孔性を与えることが記載されている(摘示2-6)。 そうすると、初期シートに多孔性を与えるための引きのばし及び焼きなましの条件を、本件発明2のように限定することは、刊行物2の記載事項から当業者が適宜なし得ることであるから、本件発明2は、上記「(1)」で検討した事項を勘案すると、刊行物1、2に記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)本件発明3について 本件発明3は、本件発明1において、-198℃〜-70℃の低温で、初期シート状製品の大きさを基準にして1〜200%、該初期シート状製品を一軸引き伸ばしした後、引き伸ばした状態を維持しながら、この引き伸ばしたシートを、第一ポリマーの溶融温度よりも5〜60℃低い温度に加熱することにより、該初期シート状製品に多孔性を与えることをさらに限定するものであるところ、刊行物4には、ポリプロピレンを延伸して微細孔を有する多孔質ポリプロピレンフィルムとするに際し(摘示4-1)、延伸温度-209〜-70℃(摘示4-2)、延伸倍率1〜200%(摘示4-3)で延伸した後、延伸状態を保持したまま多孔質化したポリプロピレンフィルムを温度110〜165℃に加熱する熱固定処理を実施することが記載されており(摘示4-4)、ポリプロピレンの融点が、161℃(摘示1-12)であることを考慮すると、上記熱固定温度は、ポリプロピレンの溶融温度よりも5〜60℃低い温度と重複する温度である。 そうすると、刊行物4のポリオレフィンフィルムに係る多孔化手段を適用して、ポリオレフィン樹脂で構成される刊行物1発明の初期シートに多孔性を与えること、及びその際に、延伸、焼きなましの条件を、本件発明3の上記さらなる限定事項のように規定することは、当業者であれば格別困難なことではない。 よって、本件発明3は、上記「(1)」で検討した事項を勘案すると、刊行物1、2、4に記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)本件発明4について 本件発明4は、本件発明1において、第一および第二ポリマー組成物が、炭化水素オイルまたは固体状粒子から選択される少量成分を含有しており、そして該多孔性を与える段階が更に、引き伸ばし後、上記少量成分の除去を含むという構成を付加するものであるところ、刊行物1には、「A層樹脂としてポリプロピレンホモポリマー(PP、融点161℃)100重量部とジシクロヘキシルフタレート(DCHP)150重量部とのブレンド物及び、B層樹脂としてエチレンプロピレンコポリマー(EPC、融点145℃)100重量部とDCHP150重量部とのブレンド物」を用いて、初期シートを成形し、「引き続きこのシートを50℃の1-1-1-トリクロロエタン溶媒槽中で抽出を行ない、乾燥後、130℃にて3.5倍に延伸し、微孔性フィルムを得た」こと(摘示1-12)、及び、ジシクロヘキシルフタレート(DCHP)は可塑剤であって溶媒抽出により除去される有機固体であることが(摘示1-8)、記載されている。そうすると、刊行物1には、第一および第二ポリマー組成物(B層およびA層樹脂組成物)が可塑剤である固体状粒子(ジシクロヘキシルフタレート、DCHP)を含有しており、多孔性を与える段階が、引き伸ばし前に、固体状粒子の除去を含むことが記載されているといえる。 また、刊行物2には、可塑剤として、炭化水素物質たとえば潤滑油及び燃料油を包含する石油等が(摘示2-4)、刊行物3には、添加剤の除去前に延伸すること、すなわち、引き伸ばし後、添加剤(少量成分)を除去することが(摘示3-2)、それぞれ記載されている。 そして、刊行物1発明の初期シートも、可塑剤や滑り剤(潤滑剤)の添加剤を含有し得るのであるから(摘示1-8)、(摘示1-11)、可塑剤として、上記固体状粒子(ジシクロヘキシルフタレート、DCHP)に限らず、刊行物2に記載されるような炭化水素オイルを、第一及び第二ポリマー組成物(B層及びA層の樹脂組成物)が含有し得ることは明らかであるし、初期シートに多孔性を与える段階が、刊行物3に記載されるように、引き伸ばし後に、少量成分である添加剤の除去を含むようにすることも、当業者にとって格別困難なことではない。 してみると、上記本件発明4に付加する構成は、刊行物2、3に記載される事項から当業者が適宜なし得ることであるから、本件発明4は、上記「(1)」で検討した事項をも勘案すると、刊行物1〜4に記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)本件発明5について 本件発明5は、本件発明1、2、3または4において、第一ポリマーが、エチレンとC4-C10アルファ-オレフィンとの共重合体から選択されることをさらに限定するものであるところ、刊行物1には、第一ポリマー(B層樹脂)に関して、「B層を構成するポリオレフィンとしてはポリエチレン、ポリブテン及びエチレンプロピレン共重合体等」(摘示1-5)が好ましいことが記載されている。これに対し、刊行物3には、バッテリーセパレータに有用な多層、微孔質ポリオレフィンシート物質(摘示3-1)に用い得るポリオレフィンとして(摘示3-1)、(摘示3-4)、「エチレンおよびプロピレンのポリマーのみならず、1-オクテン(C8アルファーオレフィン)、1-ブテン(C4アルファーオレフィン)・・・などのポリマーおよび・・・2種以上のかようなオレフィンのコポリマー(共重合体)」(摘示3-3)が用いられることが記載されているから、刊行物3には、「エチレンとC4-C8アルファーオレフィンとの共重合体」が、ポリエチレンと等価なポリマーとして記載されているといえるし、各モノマーの量を調整すること等により、これらの共重合体が、刊行物1発明の第一ポリマーの有する110〜150℃の融点を持ち得ることも明らかである。 そうすると、刊行物1発明において、第一ポリマーを、エチレンとC4-C10アルファーオレフィンとの共重合体から選択されるものとすることは、刊行物1のその余の記載事項及び刊行物3の記載事項から当業者が適宜なし得ることである。 してみると、本件発明5は、上記「(1)」〜「(4)」で検討した事項をも勘案すると、刊行物1〜4に記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6)本件発明6について 本件発明6は、本件発明1、2、3または4において、第一ポリマーが、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、またはエチレン-メタアクリレート共重合体、或はポリエチレンから選択され、そして該第二ポリマーが、ポリエチレンおよびポリプロピレンから選択されることをさらに限定するものであるが、刊行物1には第一ポリマー(B層樹脂)がポリエチレンであることが記載されているし(摘示1-5)、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体は、エチレンとC4-C10アルファーオレフィンとの共重合体に属するのであるから、第一ポリマーが、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体から選択されることは、上記「(5)」で述べたように、刊行物1のその余の記載事項及び刊行物3の記載事項から当業者が適宜なし得ることである。さらに、刊行物1には、第二ポリマー(A層樹脂)が、ポリプロピレンであることが記載されているし(摘示1-4)、第二ポリマーを超高分子量ポリエチレンとすることは、上記「(1)(1-3)(iii)」で述べたように、刊行物2の記載事項及び周知の事項に基づいて当業者が適宜なし得ることである。 してみると、本件発明6は、上記「(1)」〜「(4)」で検討した事項をも勘案すると、刊行物1〜4に記載された発明、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3-5.むすび 以上のとおりであるから、本件発明1〜6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1〜6に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものである。 したがって、本件発明1〜6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものでる。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 電池用セパレータの製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】1)予め決められた長さおよび幅そして0.025cm未満の厚さを有し、そしてこのシートの少なくとも20容積%を占めるところの、直径が0.005〜50ミクロンから成る平均孔サイズの孔を有する微孔性シート(このシートは、本質的に充填されていない第一ポリマー組成物から成る)の形態の少なくとも1つの第一層と、 2)予め決められた長さおよび幅そして0.025cmの厚さを有し、そしてこのシートの少なくとも20容積%を占めるところの、直径が0.005〜50ミクロンから成る平均孔サイズの孔を有する微孔性シート(このシートは、本質的に充填されていない第二ポリマー組成物から成る)の形態の少なくとも1つの第二層とを含む少なくとも2つの層を有する微孔性多層シート状製品の製造方法であって、 a)第一ポリマー組成物と第二ポリマー組成物とを共押出しし、上記組成物の各々は、このシート状製品が用いられる電池環境に対して本質的に不活性な成分から成り、 b)該第一ポリマー組成物から成る少なくとも1つの第一層と、該第二ポリマー組成物から成る少なくとも1つの第二層とを有する初期シート状製品を生じさせ、ここで、上記第一層および上記第二層の各々を一緒に結合させ、そして上記第一ポリマー組成物は、その粘度が超高であり、そして80℃以下の温度で、該第二ポリマー組成物のそれと本質的に同じであるような粘度プロファイルを示し、そして80℃〜150℃の範囲の変換温度で流れを示す粘度減少を有する一方、該第二ポリマー組成物は、上記変換温度を越える少なくとも10℃に渡ってその超高粘度を維持し、該第二ポリマー組成物が、超高分子量のポリオレフィン、または他のポリオレフィン類、ポリスルホン類、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリジ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体、ポリアミド類、ポリフェニレンオキサイド-ポリスチレン共重合体、およびポリカーボネート類のうちの少なくとも一のポリマーと、超高分子量のポリオレフィンとの混合物であり、 c)上記初期シートに引き伸ばしおよび焼きなましを受けさせることによって、該初期シートに多孔性を与え、 そして d)最終的シート状製品を回収することを含む微孔性多層シート状製品の製造方法。 【請求項2】該第二ポリマーの二次転移温度と該第一ポリマーの溶融温度との間の温度で該初期シート状製品を引き伸ばした後、引き伸ばし状態を維持しながら、該初期シート状製品の熱焼きなましを行うことにより、該初期シート状製品に多孔性を与える請求項1の方法。 【請求項3】-198℃〜-70℃の低温で、初期シート状製品の大きさを基準にして1〜200%、該初期シート状製品を一軸引き伸ばしした後、引き伸ばした状態を維持しながら、この引き伸ばしたシートを、第一ポリマーの溶融温度よりも5〜60℃低い温度に加熱することにより、該初期シート状製品に多孔性を与える請求項1の方法。 【請求項4】該第一および第二ポリマー組成物が、炭化水素オイルまたは固体状粒子から選択される少量成分を含有しており、そして該多孔性を与える段階が更に、引き伸ばし後、上記少量成分の除去を含む請求項1の方法。 【請求項5】該第一ポリマーが、エチレンとC4-C10アルファ-オレフィンとの共重合体から選択される請求項1、2、3または4の方法。 【請求項6】該第一ポリマーが、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、またはエチレン-メタアクリレート共重合体、或はポリエチレンから選択され、そして該第二ポリマーが、ポリエチレンおよびポリプロピレンから選択される請求項1、2、3または4の方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の背景】 本主題の発明は、電池におけるセパレータ、特にリチウム電池における過熱および熱暴走の発生を防止するためのセパレータ、として有益なシート状製品を意図したものである。 【0002】 蓄電池は、反対の極性を有する少なくとも1対の電極を有しており、そして一般に、交替する極性を有する1組の隣接した電極を有している。これらの電極間の電流は、この電池系の性質に応じて、酸性、アルカリ性または本質的に中性であり得る、電解質によって維持されている。セパレータは、電池中、反対の極性を有する隣接する電極の間に位置しており、自由な電解伝導を可能にさせながら、反対に電荷した電極板の間の直接的接触を防止している。このセパレータは、通常、薄いシートもしくはフィルムの形態であるか、或は特定の設計において、1つの極性を有する各々の電極板を取り巻いている覆いの形態であり得る。セパレータは、(a)高エネルギー密度の電池を与えるのを補助する目的で薄く軽量であり、(b)接触している電池成分に対する劣化および不安定さに対して耐性を示し、(c)高いイオン伝導率(低い電解抵抗)を示す能力を有し、そして(d)適宜、電池システム内での樹脂状結晶体の生成および成長を抑制する能力を有する、べきである、と一般的に受け入れられている。 【0003】 リチウム電池は、他の蓄電池に比べて顕著な利点を有する。これらの電池は、他の種類の電池よりもずっと高い電力貯蔵密度を与えることができ、優れた貯蔵安定性、リチウム金属の低原子量による高エネルギー密度(単位重量当たりのエネルギー含有量)、そして起電列中、該リチウム電極から遠く離れた陽極と連結している電池を作り出す高い可能性を与える。この電池は、通常の物理的デザインのいずれか、即ち筒状、四角形もしくは円盤状の「ボタン」電池、で製造でき、そして通常、密封された電池構造を有する。上記電池は、一般に、リチウム陰極、陽極および非水系電解質からなっている。この陰極は、通常、リチウム金属、或は支持体上のその合金、例えばニッケルをコートしたスクリーン、である。種々の種類の陽極が提案されており、それらには、金属酸化物、例えば二酸化マンガン、或は遷移金属の硫化物、例えばコバルト、ニッケル、銅、チタン、ヴァナジウム、クロム、セリウムおよび鉄の硫化物が含まれる。これらは、単独か或は混合物として用いられてもよく、そして更に他の金属イオン、例えばアルカリ金属イオンを含有していてもよい。この陽極は更に炭素および集電装置を含んでいてもよい。該電解質は、リチウム塩を含有している非水系溶媒から製造される。例えば、溶媒はアセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、および種々のスルホン類であってもよい。これらのリチウム塩は過塩素酸リチウム、ヨウ化物、またはヘキサフルオロ砒酸塩などであってもよい。電解伝導を可能にしながら上記板の間の接触を防止するための追加的な、通常受動的な、電池要素は、反対の極性を有する板の間に存在している分離膜である。 【0004】 本電池系で通常用いられるセパレータは、電解質もしくは電解質系中に入れた場合、この電池によって与えられる環境に対して安定である一方、高度の伝導性を示すことのできるところの、ポリマー状フィルムから製造される。これらのフィルムは巨孔性もしくは微孔性を示し、従って電解質の移動を可能にする。上記セパレータの例には、このシートに微孔性を与えるため引き伸ばされそして焼きなましされたポリプロピレンシートが含まれる。米国特許番号3,426,754;3,558,764;3,679,538;3,801,404および4,994,335に開示されている如きシートは、通常、高配向性を示し、そして熱を受けたとき収縮する。他の例は、米国特許番号3,351,495および4,287,276に開示されているような、充填されているポリマー状シートであり、ここでは、電解質は微孔チャネルを通り、そしてこの充填剤のウィッキングにより該セパレータを通過する。 【0005】 リチウムの反応性のためこれらの電池が遭遇する主要な問題は、この電池の不適当な使用による電池の過熱、例えば逆の位置に置くことで陽極上に電解質の析出を生じさせること;例えば樹脂状結晶の生成またはセパレータの収縮などによる、反対の極性を有する電極間の接触;溶媒-電解質と発熱的に反応するところの、広い表面積を有する海綿状リチウムの生成;並びに他の公知の状態を伴う。上記過熱は、熱暴走をもたらし、そしてこの系が引き続いて欠陥状態で作動する場合、爆発的影響を生じさせる可能性がある。これは、商業的許容性を有する電池を得るためには制御される必要がある。熱暴走を制御もしくは抑制する1つの方法は、過熱が検出されたときこの装置の電気系を遮断するセンサーに連結した電池用ケーシングを備えることである。この方法には、追加的電気回路そしてそれに関連した装置が必要であり、そして内部の電池過熱を初期に検出して防止作用を作り出すことは不可能である。 【0006】 セパレータとして通常のポリマー状フィルムが用いられているリチウム電池は、一般に、未制御の過熱のいずれをも防止し得るものではない。いくつかのセパレータ用フィルムは熱に対して不活性であり、従っていかなる防止機構も有していない。現在用いられている他のセパレータ、例えば微孔性ポリオレフィン類は、高温を受けた場合、寸法不安定性および/または劣化を示し、その結果として、電池の熱暴走を促進するのみの、反対の極性を有する電極断面間の大きな接触を許すことになる。 【0007】 最近の米国特許番号4,650,730には、電池用セパレータとして有益でありそして予め決められた高温でその多孔性を顕著に減少し得るところの、シート状製品が開示されている。従って、このセパレータは、内部過熱を検出したとき、反対の極性を有する電極間のイオン通過に対する防護壁になることにより、この電池系を遮断することができる。このセパレータは、少なくとも2つの、微孔性を示す層を有するシート状製品から成っており、その1つの層は、予め決められた温度で非孔性を示すシートに変換し得るところの、本質的に充填されていない微孔性シートであり、一方2番目の層は、その温度で本質的に安定な、高度に充填された微孔性シートである。米国特許番号4,650,730(この教示は、明白に、ここでは参照にいれられる)では、個々のシートを製造し、それらを一緒に結合し、そして多重抽出段階を用いるか或は抽出と加工段階の組み合わせを用いること、を伴う方法によって、そのシート状製品が製造されている。これらの多段階方法は、リチウム電池のデザインに対して安全性を与えるための価格効果を有する手段としては、該シート状製品を製造することに対することの妨げになっている。 【0008】 本発明は、この製品の長さおよび幅寸法を維持しながら、予め決められたところの上昇した温度で本質的に非孔性を示す層製品に変換するところの、少なくとも1層のシート状製品を有することのできる2層から成る微孔性シート状製品を有効にそして効率良く製造する方法を意図したものである。 【0009】 【発明の要約】 本発明は、個々に異なる流動性を有するポリマー状組成物から成る少なくとも1つの第一層および少なくとも1つの第二層から成る多層シート状製品、並びに遮断用電池セパレータとして有益な多層シート状製品を製造するための有効な方法を意図したものである。この方法は、第一および第二ポリマー状組成物を、非孔性を示す多層シートに共押出しすることから成る。この第一および第二組成物は、各々、互いに異なる流動性(溶融/粘度)を有する異なるポリマーから成る。その結果として、このシートを引き伸ばしそして焼きなましして多孔性多層シートを生じさせることによって、該非孔性シートに多孔性が与えられる。 【0010】 【発明の詳細な記述】 本発明は、多層シート状製品を製造するための有効で効率の良い方法を提供する。本方法は、最初に、多層から成る非孔性ポリマー状初期シート状製品を製造した後、本文中以下に充分に説明するように、それに多孔性を誘発させる、ことを必要としている。 【0011】 明確にする目的で、この直ぐに利用できる発明を記述するため、本文中および付随する請求の範囲で用いる言葉のいくつかを下記のように定義する:「シート(状)」は、厚さに対して大きな長さおよび幅寸法を有しそして厚さが約0.025cm未満、好適には約0.005cm未満の構造を定義することを意図したものである。 【0012】 「層」は、本質的に均一なポリマー状組成物から製造されたシート様材料であり、そして以下に定義するような、初期シート状製品および最終シート状製品の構成要素である。 【0013】 「初期シート状製品」は、(a)ポリマー状組成物から成る少なくとも1つの層と、(b)少なくとも1つの層(a)とは異なるポリマー状組成物から成る少なくとも1つの層と、を有する本質的に非孔性を示す多層構造である。 【0014】 「シート状製品」は、(a)微孔性を示し、ポリマー状組成物から成り、そして予め決められた変換温度で本質的に非孔性を示す層に変換し得るところの、少なくとも1つの層と、(b)微孔性を示し、少なくとも1つの層(a)とは異なるポリマー状組成物から成り、そして周囲温度から、層(a)の該変換温度よりも少なくとも約10℃、好適には少なくとも約20℃高い温度で、その寸法を維持し得るところの、少なくとも1つの層と、を有する微孔性を示す多層構造であり;そして全ての層は、該シート状製品構造の長さおよび幅寸法を本質的に維持するように互いに結合させられている。 【0015】 言葉「第一」は、これが用いられている場合、層(a)そして初期シート状製品およびシート状製品のそれを形成している構成要素に対する言葉に参照事項を付けるため、言葉を修飾することを意図したものである。 【0016】 言葉「第二」は、これが用いられている場合、層(b)そして初期シート状製品およびシート状製品のそれを形成している構成要素に対する言葉に参照事項を付けるため、言葉を修飾することを意図したものである。 【0017】 言葉「ポリマー状組成物」は、そこに本質的に均一分散している他の材料、例えば可塑剤、抗酸化剤、染料、着色剤、抽出可能液体(初期シート中)などを含有していてもよい熱可塑性ポリマーを表す。本発明で有益であることが見いだされたポリマー状組成物は、固体状の粒子状充填剤を本質的に含有していない。 【0018】 言葉「流動性」は、ポリマー状組成物が流れ出すことができることを表すこと、即ち互いの上で滑る能力を有する組成のポリマー分子量を有すること、を意図したものである。この能力は、このポリマーの特別な構造、即ち線状もしくは分枝、結晶性もしくは非晶質、架橋の度合、この組成物の温度など、に依存している。この流動性は、通常の技術、例えば種々の温度で測定できるように修飾した高負荷メルトインデックス試験の標準的負荷メルトインデックス(Standard Load Melt Index of High Load Melt Index tests)(ASTM-1238-57T)を用いて測定できる。 【0019】 言葉「粘度」は、ポリマー組成物が流れに抵抗する能力を表すことを意図したものである。粘度は流動性に対して逆関係にある。 【0020】 「セパレータ」は、電池、特に蓄電池、の構成要素であり、これにより該構成要素が、反対の極性を有する隣接した電極板間の分離を維持している。本発明のセパレータは、シート状製品から製造され、そして種々の構造、例えば電極間の分離を維持し得る膜もしくは覆いの形態の、平板状でひだ付きの波形シート状製品であってもよい。 【0021】 本方法は、有効で効率の良い様式で、その少なくとも1層が予め決められた温度で非孔性を示すことのできる微孔性多層シート状製品を提供することができる。本方法は、初期シート状製品の製造を必要とする。この初期シート状製品は、第一ポリマー組成物から成る少なくとも1つの第一層と、第二ポリマー組成物から成る少なくとも1つの第二層と、を有する多層構造である。 【0022】 本発明のこのシート状製品は、温度に関して異なる粘度と流れのプロファイルを有する第一および第二ポリマー状組成物を用いている。これらの特性は、公知の方法、例えばある温度範囲、特に80℃〜150℃の範囲の温度に渡って行うところの、修飾した標準的負荷メルトインデックスまたは高負荷メルトインデックス試験により容易に測定できる。この第一層を形成している組成物の粘度は、全ての温度で、該第二層の組成物のそれと同じであるか或はそれ以下であるべきである。この第一および第二ポリマー組成物の両方共、それらが固体状材料であるところの、低および中間温度では、非常に高い粘度を示すと理解される。これらの温度(例えば周囲温度から約70℃)では、両方の固体状組成物は、それらがいかなる著しい流れも生じないように、本質的に同じ(無限値に近づく)粘度を有する。しかしながら、このシート状製品のための用途によって意図された如き、約80℃またはそれ以上の、予め決められたところの、ある上昇した温度で、この第一ポリマー状組成物から製造された層は、流れを示しそして崩壊してその孔に入り得るに充分な程の粘度変化(減少)または関係した弾性変化を示し得る必要がある。この温度は、該第一ポリマー状組成物の変換温度である。この変換温度で、該第二ポリマー組成物は、充分に高い粘度を有し、従ってその弾性エネルギーを維持する必要がある、即ち本質的に流れを示さない必要がある。 【0023】 本発明の多層シート状製品の各々の層を形成させるに有益なポリマー状組成物は、微孔性シートを生じ得る公知の種類のポリマー、例えばポリオレフィン類、ポリスルホン類、例えばポリアリールエーテルスルホン類など、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリジ塩化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体、ポリアミド類、ポリフェニレンオキサイド-ポリスチレン共重合体、ポリカーボネート類など、から選択され得る。この多層シート状製品の第一および第二シートを製造するために用いられるポリマー類は、好適には、上述した特性を与えるに最良の同じ種類のポリマー状材料から選択される。 【0024】 好適な種類のポリマー類は、それらが接触する他の電池構成要素に関してそれらが不活性であるため、ポリオレフィン類である。この説明の残りの部分は、本シート状材料そしてそれから製造されたセパレータを製造するためポリオレフィン組成物を用いたところの、好適な具体例の組み合わせによって、本発明を説明する。通常は望ましくない長さおよび幅の収縮特性を示すところの、充填されていない微孔性ポリオレフィン組成物から成る少なくとも1つの第一層と共に、より高い粘度プロファイルのポリオレフィン組成物から成る少なくとも1つの第二ポリマーを有する製品を製造したとき、予想外に、低い変換温度を有するが、高い寸法安定性を示しそれを維持する製品が得られることを見い出した。例えば、ポリマー類は、ポリオレフィン類、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-メタアクリレート共重合体など、およびそれらの混合物から選択され得る。この第一層を形成する好適なポリオレフィンは、ポリオレフィンワックス、低密度ポリエチレン、低分子量の高密度ポリエチレン、およびエチレンと他のα-オレフィン類(特にC4-C10アルファ-オレフィン類)との共重合体である。このα-オレフィンは、該共重合体の5〜20重量%で存在している。これらのポリオレフィン類は、100,000〜約5,000,000から成る重量平均分子量を有するべきであり、好適には該第一ポリマーは、約100,000〜約1,000,000から成る低い重量平均分子量のポリマーであり、そして好適には、該第二ポリマーは、超高(約2,000,000以上)分子量のポリオレフィン(例えばポリエチレン)を含む、より高い重量平均分子量を有するものとする。 【0025】 この第一層を形成している好適なポリマー類は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-メタアクリレート共重合体などから選択されるポリオレフィン類である。この第一ポリマーは、80℃〜150℃の範囲、好適には80℃〜120℃の範囲の所望温度で非孔性を示す第一層を与えるところの、低い融点を有するように選択される。この好適な第一ポリマー類は、100,000〜1,000,000から成る低い重量平均分子量を有する。 【0026】 該第二層を形成している好適なポリマー類は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-メタアクリレート共重合体などから選択されるポリオレフィン類である。この第二ポリマーは、該第一ポリマーの変換温度よりも少なくとも10℃高い、好適には少なくとも20℃高い融点を有するように選択される。この第二ポリマー類は、好適には、該第一ポリマーのそれよりも高い重量平均分子量を有し、そして100,000〜2,000,000以上、最も好適には200,000〜5,000,000から選択される。 【0027】 この第一ポリマー/第二ポリマーの組み合わせは、この第二層に対して該第一層が有意に低い温度流動性プロファイルを示すように選択されるべきである。例えば、適切な組み合わせは、低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレン;ポリエチレン/ポリプロピレン/狭い分子量のポリエチレン/広い分子量のポリエチレン;エチレン-ブテン共重合体(5:1〜20:1)/ポリエチレン;エチレン-ヘキセン共重合体(5:1〜20:1)/ポリエチレン;エチレン-ヘキセン共重合体(5:1〜20:1)/ポリプロピレンなどである。 【0028】 各々の層は、以下の本文中に充分に記述するようなポリマーから成るポリマー状組成物から製造され、そして更に、上記ポリマーのための、そこに均一に分配された可塑剤、安定剤、抗酸化剤などを含有していてもよい。このポリマー組成物は、本質的にいかなる粒子状充填剤も含有しているべきでないが、約15重量%以下、好適には約10重量%以下の少量が該組成物内に含有されていてもよい。 【0029】 この初期シート状製品は、第一ポリマー組成物の少なくとも1枚のシートと共に第二ポリマー組成物の少なくとも1枚のシートを同時に押出すことによって製造される。この加工段階は、好適には、該第一および第二ポリマー組成物を単一のダイスにより共押出しすることによって行われる、ここで、それらは、それらが個別の良く結合した層を生じ、単一の初期シート状製品を与えるように互いに接合する。この共押出しは、例えば通常のフィードブロックダイスを用いて行うことができ、ここでは、溶融したポリマー組成物の各々が、ダイス自身に入る前に、比較的小さい断面で結合させられる。多層初期シート状製品を同時成型するための好適な方法は、多岐管内部結合用ダイスを用いた共押出しによるものである。上記システムにおいて、第一および第二ポリマー組成物(溶融フィード原料として)は別々にダイスに入った後、最終的なダイスのオリフィスに入る直前で結合させられる。このシステムは、本質的に異なる流れ特性を有する2種以上のポリマー組成物使用のためのものであるが、ここでは、高度の層均一性および厚さ制御が可能であり、薄い初期シート状製品が製造され得る。 【0030】 この初期シートは、ブローンフィルム技術により成型され得る。このフィルムは、最初に、チューブを規定の直径に膨張させるため該初期チューブ形成の中心部に空気または他の気体を注入するようにしてある環状出口を有する共押出し用ダイスによって成型される。このフィルムが冷却されると、これが切り裂かれて、多層の初期シート状製品が得られる。この技術は、相当な幅、例えば30〜40インチの幅、を有する初期シートが必要なときに用いられる。二者択一的に該初期シートは、スリットダイスを用いたシート押出しによって製造できる。この場合、このシートの幅は、そのスリットの大きさにより本質的に制御される。 【0031】 本発明の多層シート状製品は、(a)予め決められた長さおよび幅そして約10ミル(0.025cm)未満、好適には5ミル(0.013cm)未満、最も好適には0.1〜2ミル、の厚さを有する少なくとも1つの第一層を含む必要がある。このシートの孔は、本発明の得られるシート状製品が低い電解抵抗率、即ち特別な用途に応じて500ohm-cmまたはそれ以下、を示すに充分な程の大きさおよび量を有する必要がある。このシートの寸法が薄ければ薄い程、この所望の低電解抵抗率を維持するためにこれらの孔が占める必要があるところの、シートの全体的容積パーセントは低くなる。この第一層の孔は、通常、約0.005〜約50ミクロンから成る直径の平均孔サイズを有しており、そして通常これらの孔は、このシートの全容積の少なくとも約20容積パーセント、好適には少なくとも約40容積パーセントを占めている。この第一層は、予め決められた変換温度(これは通常80℃〜150℃、好適には80℃〜120℃であり、そしてこの多層シート状製品の1構成要素である場合)で本質的に非孔性を示すシートに変換し得るような粘度/流れ特性を有するポリマー組成物でできている。この多層シート状製品は更に、(b)孔がこのシート容積の少なくとも約20容積パーセント、好適には少なくとも約40容積パーセントを占めているところの、直径が約0.005〜約50ミクロンの平均孔サイズを有する、予め決められた長さと幅そして10ミル(0.025cm)未満、好適には5ミル(0.013cm)未満、最も好適には0.1〜2ミル(0.00025〜0.005cm)の厚さを有する少なくとも1つの第二層を含む。この層(b)は、周囲温度から、層(a)のポリマー組成物の変換温度よりも少なくとも約10℃、好適には少なくとも20℃高い温度の範囲の温度で、形状および寸法に関して本質的に安定である(10パーセント未満の小さい収縮は通常の電池寿命に渡って生じ得るが、これは初期のデザインで調整され得る)。本多層シート状製品は、このシート状製品の変換温度およびそれ以上で、その長さおよび幅寸法を維持する能力を有する。 【0032】 シート状材料の変換温度は、電池用セルで用いられた場合、このシートの電解抵抗率が大きく上昇して、電池システムまたは上記システムの一部(例えば1つのセル)または局在部分を本質的に遮断することで、望ましくない熱暴走が生じるのを抑制するに充分な抵抗性を与える温度である。少なくとも約1500ohm-cmの電解抵抗率は、通常、電池システムを遮断するに充分であるが、特別な電池または特別な用途に関しては、より大きいかより小さい抵抗率でも充分であり得る。この変換温度は、本質的に、該第一層の組成物がこのシート状製品の1構成要素であるとき、本質的に非孔性を示すシートを生じさせるに充分な、流動性および孔の中に崩壊する能力が表われる温度と一致している。 【0033】 この第一および第二層は各々、ポリマー状組成物からできている。このポリマーマトリックスは、特に電解質組成物に関して電池内で遭遇する条件下で不活性なポリマー類から選択される必要がある。加うるに、各々のポリマー組成物は微孔性を示す能力を有する必要があり、そしてまた、10ミル未満、好適には5ミル未満、最も好適には2ミル未満の薄いシートに成型され得る必要がある。加うるに、各々のポリマー組成物は、共押出しシート状製品を生じさせるその能力を増強させる目的で、本質的に充填されていない組成物である。 【0034】 本発明のシート状製品を形成している各々の層のポリマー状構成要素は、該第一層のポリマー状構成要素が、該第二層のために選択されたものよりも有意に低い温度-流動性プロファイルを有するように考慮して、選択される必要がある。2番目として、この第一および第二ポリマー類は、それによって製造された第一および第二層が互いに接着し得る相溶性を示す必要がある。3番目として、この第一および第二ポリマー類は、この得られるシート状製品の使用が意図されている電池環境に対して不活性である必要がある。4番目として、この第二ポリマー組成物は、シートを形成させるために用いられる該第一ポリマー組成物の変換温度よりも少なくとも10℃、好適には少なくとも20℃高い温度に及んで、その高い粘度-流動性プロファイルを維持できる必要がある。従って、これらのポリマー類は、数多くの、フィルムを生じさせるポリマー状材料から選択され得るが、これらは上記基準に合致する必要がある。例えば、狭い分子量を有する高密度ポリエチレン(第一ポリマーとして)/幅広い分子量分布を有する高密度ポリエチレン(第二ポリマーとして)の組み合わせ;低密度ポリエチレン/高密度ポリエチレンの組み合わせ;ポリエチレン/ポリプロピレンの組み合わせなどが、該初期シート状製品を製造するために用いられ得る。加うるに、このポリマーはホモポリマーであってもよいが、各々は、例えばエチレン-ブテン共重合体/ポリエチレン;エチレン-ヘキセン共重合体/ポリエチレン、エチレン-ブテン共重合体/ポリプロピレンなどの共重合体から選択されてもよい。この好適な材料は、第一ポリマーとしてのエチレン-ブテンの共重合体またはエチレン-ヘキセン共重合体の使用である。この第一ポリマーの選択は、このシート状製品の特別な転移温度によって決定される。低転移温度(80℃〜110℃)のシート状製品が望まれている場合、この第一ポリマーは、狭い分子量分布を有するエチレン-ブテンもしくはエチレン-ヘキセンの共重合体から選択され得る。好適な第二ポリマーは、高密度ポリエチレンもしくは主にアイソタクティック(80%)なポリプロピレンから選択される。 【0035】 この第一ポリマーおよび第二ポリマーは、シート状製品のそれぞれの第一層および第二層を製造するために用いられる主要成分である。この第一および第二ポリマー類は、温度に関して異なるプロファイルの粘度および流れを有するポリマー類から選択される必要がある。この第一ポリマー組成物の転移温度(このポリマーが高い流れを示す温度)は該第二ポリマーのそれよりも少なくとも10℃、好適には少なくとも20℃低いことが望ましい。 【0036】 上述したように、これらの第一および第二ポリマー状組成物は各々、本分野の技術者に公知な、安定剤、抗酸化剤、核形成剤、添加剤、および加工助剤を含有していてもよい。安定剤の代表例には、4,4-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールなどが含まれる。抗酸化剤の代表的例には、ヒドロキノンなどが含まれる。他の添加剤の代表的例には、高い表面積(1000m2/gm)を有するカーボンブラックなどが含まれる。加工助剤の代表的例には、ステアリン酸亜鉛などが含まれる。加工助剤、安定剤、抗酸化剤などは、約2パーセント以下の如き通常の低含有量で用いられる。このカーボンブラック添加剤は、約10重量%以下で用いられ得る。 【0037】 各々の第一および第二ポリマー状組成物は、通常の方法、例えば混合、粉砕、混練りなど、により個別に加工されて、本質的に均一な組成物を与える。これらの組成物を、同時に、該初期シートを製造する手段、例えば共押出しヘッドおよびそれに関係したフィード手段が備わっている押出し装置に送り込む。初期シート状製品が製造される。この初期シート状製品は、通常、1つの第一層と1つの第二層とを有する2層製品、或は2つの第二層の間に在る1つの第一層を有する3層製品である。 【0038】 初期シート状製品を製造するために用いられる各々の第一および第二ポリマー状組成物は、この最終的シート状製品の各々の第一および第二層に適切な組成物であるべきである。各々組成物は、上述したような所望の粘度および流れプロファイル特性を有するポリマーから成り、そしてまた、少量の添加剤、例えば安定剤、抗酸化剤、湿潤剤、着色剤などを含有していてもよい。これらの添加剤は、通常、全組成物の約10重量%以下で存在している。このポリマー組成物は、使用が意図されている電池環境に対して本質的に不活性である必要がある。 【0039】 このフィルムを引き伸ばして焼きなましすることにより相当する単一の均一なフィルムから単一の微孔性シートを製造する方法は開示されている。上記方法は、米国特許番号3,426,754;3,558,764;3,679,538;3,801,404;3,801,692;3,843,761および4,138,459に開示されている。これらの文献の技術は明らかにここでは参照にいれられる。上記文献によって開示された方法の主旨は、引き伸ばされていないフィルムに熱処理を受けさせ、そして室温に近い温度、或はこの樹脂の二次転移温度以上の温度(例えば、ポリプロピレンの場合-40℃以上の温度)と、結晶相の部分的溶融が始まる温度以下の温度と、の間の範囲の温度で、このフィルムを引き伸ばす段階から成る。孔が発生し、そしてこれが多孔性体を与え、これを次に、この相の部分的溶融が開始する温度よりも高い温度と、この結晶溶融点を越えない温度と、の間の範囲の温度で引き伸ばし、そして再び熱処理することで、このようにして生じた孔を熱的に固定化させる。 【0040】 もう1つの引き伸ばし方法は、米国特許番号4,539,256および4,726,989に記述されており、ここでは、このシート内に存在している核形成剤の助けで、上昇させた温度で引き伸ばしを行う。 【0041】 単一の均一な高結晶性ポリマーシートに微孔性を与えるための更にもう1つの引き伸ばしおよび焼きなまし方法が米国特許番号4,994,335に記述されており、この教示はここでは参照にいれられる。この方法では、-198℃〜-70℃から成る非常に低い温度でフィルムを引き伸ばした後、このポリマーの溶融温度よりも5〜60℃低い温度で熱固定化を受けさせる。二者択一的に、このポリマーの融点よりも10〜60℃低い温度に維持しながら、1分間当たり10%以下の速度でシートを引き伸ばした後、上述したようにこのシートに熱固定化を受けさせる。 【0042】 しかしながら、上記教示の各々は、単一ポリマーから製造されそしてその厚さを横切って均一な組成を有する1層の単一シートから成るポリマーシートに対して多孔性を与えるための特定の方法を記述している。本発明では、上述したように、該多層初期シート状製品に引き伸ばしおよび焼きなましを受けさせることにより、上述したところの、始めに製造した多層初期シート状製品が微孔性を示すようにされ得る。使用する温度範囲は、この初期シート状製品を製造するために用いられる第一および第二ポリマー組成物の最大融点を有するポリマーを基にすべきである。しかしながら、引き伸ばしおよび焼きなまし温度は、該第一ポリマー組成物の変換温度よりも20℃低い温度以上であるべきではない。 【0043】 この得られるシート状製品は、該第二層のポリマー組成物と共に引き伸ばされそして焼きなましされるとき、この第一層(これはより低い融点のポリマーから成るが)が多孔性を示すところの、多層製品である。 【0044】 この得られるシート状製品は、樹脂状結晶成長の抑制、周囲温度での高い伝導性、非常に薄いシート状製品への成型性、そして電池によってそしてその構成要素によって生じる環境に対する安定性、を示すことができることを見い出した。加うるに、本シート状製品は寸法安定性を示し、そして上昇させた温度を受けたとき、その長さおよび幅寸法に関して、許容されない有害な収縮を表さない。従って、このシート状製品は、セパレータとして用いられたとき、従来のポリオレフィンセパレータが劣化および/または収縮するような温度でさえも、電極間の接触を生じさせない。 【0045】 この抽出段階で得られる製品は、微孔性多層ポリマーシート状製品である。 【0046】 各々の層の正確な最終組成は元の組成に依存している。各々の層は微孔性を示す。本シート状製品の孔の大きさは、直径が0.5ミクロン未満(キャピラリーフローポロメトリー方法(Capillary Flow Porometry Method))の実質的比率であり、そして一般的に実際上ねじれている。この成型したシート状製品に一軸引き伸ばしを受けさせることにより、この微孔性を最終的シート状製品の構造にさせ得ることを見い出した。この引き伸ばしは、押出しに続く巻き取りロールの速度を変化させることによって達成され得る。この引き伸ばしは、約25℃〜約110℃、好適には約40℃〜約100℃の温度で行うべきである。この引き伸ばしは、少なくとも1:1.05、好適には約1:2〜約1:4の比率になるようにすべきである。 【0047】 本方法で製造されたシート状製品は、予め決められたところの、上昇した温度を受けたとき、その長さおよび幅を維持しながらその多孔性の度合を顕著に減少する能力を有する。この減少した多孔性は、反対の極性を有する電極の間にある電解質中のイオンの通過に対する防護壁になることにより、電池電気系の「遮断」を引き起こす。この「遮断」能力は、リチウム電池の場合、熱暴走、或は欠陥を受けた電池の爆発による障害を受けるに先立って有効にこの回路を切るところの、「安全スイッチ」として作用する。 【0048】 以下に示す実施例は単に説明の目的のために与えるものであり、本文中に記述した発明およびここに付随する請求の範囲内の発明に対する制限を与えることを意図したものではない。以下に示す全ての部およびパーセントは特に明記されていない限り重量である。 【0049】 【実施例】 実施例1 1つの層としての、重量平均分子量が250,000であり約80%の結晶度を有する高密度ポリエチレンと、約50%の結晶度を有し融点が110℃のエチレン-ブテン(87-13)共重合体と、を共押出しすることにより、2層シート状製品を製造する。この共押出しは、170℃の温度のブローンフィルム用ダイスを用いて行い2層シート状製品を製造する。 【0050】 この得られる非孔性シート状製品を、液体窒素に接触させながら1つの方向に15%まで引き伸ばす。この引き伸ばした状態を保ちながら、このシート状製品を空気オーブン中90℃に5分間加熱する。次に、このシートを、約150パーセントに引き伸ばされるまで、初期の引き伸ばしと同じ方向に引き伸ばしながら80℃で加熱する。その後、このシート状製品を90℃で1時間焼きなましする。 【0051】 実施例2 実施例1のポリエチレンの代わりに65%の結晶度を有するポリプロピレンを用いる以外は、実施例1の方法を繰り返す。 【0052】 この微孔性シート状製品は、110℃で同様の抵抗変化を示す。 【0053】 実施例3 該ポリエチレンに更に、核形成剤として約5重量%の煙霧シリカを含有させて実施例1の方法を繰り返す。 【0054】 この得られるシート状製品は、より高い度合の多孔性を示し、また110℃で抵抗変化を示す。 【0055】 実施例4 60重量%の高密度ポリエチレンと40重量%の鉱物油との混合物(外側の層)、および60重量%のエチレン-ブテン共重合体と40重量%の鉱物油との混合物(中間層)を共押出しすることにより、3層シート状製品を製造する。この共押出しは、245℃の温度の多岐管フィルム用ダイスを用い、50℃の冷ロール上に押出すことによって行う。次に、この3層シート状製品を機械方向に配向させた(10:1)。 【0056】 この得られる製品は、100℃以下の温度で低い抵抗を示し、そして100℃にさらしたとき1500ohm-cm以上の高抵抗を示すところの、多層微孔性シート状製品である。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-12-28 |
出願番号 | 特願平4-25850 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(H01M)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 三宅 正之、冨士 美香 |
特許庁審判長 |
綿谷 晶廣 |
特許庁審判官 |
酒井 美知子 吉水 純子 |
登録日 | 2003-04-25 |
登録番号 | 特許第3422496号(P3422496) |
権利者 | セルガード・インコーポレーテッド |
発明の名称 | 電池用セパレータの製造方法 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 秋山 暢利 |
代理人 | 秋山 暢利 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 奥山 尚男 |
代理人 | 奥山 尚男 |