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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) A45D
管理番号 1143677
審判番号 無効2004-35068  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-07-18 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-02-04 
確定日 2006-07-12 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3073989号「棒状化粧材繰出容器」の特許無効審判事件についてされた平成16年10月 5日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の決定(平成16年行ケ第500号平成17年2月22日決定言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3073989号の請求項1、2及び9に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1.手続の経緯
(1)本件特許3073989号の請求項1ないし11に係る発明についての出願は、平成11年10月19日に出願され、平成12年6月2日にその発明について特許権の設定登録がされたものである。
(2)これに対し、請求人は、平成16年2月4日に請求項1、2及び9に係る発明の特許について無効審判を請求した。
(3)被請求人は、平成16年4月30日に第1回の答弁書を提出した。
(4)請求人及び被請求人は、平成16年9月30日にそれぞれ口頭審理陳述要領書を提出し、同日、特許庁審判廷において、第1回口頭審理が行われた。
(5)平成16年10月5日付けで、「特許3073989号の請求項1、2及び9に係る発明についての特許を無効とする。」との審決がなされた。
(6)これに対し、平成16年11月10日に、被請求人は、上記審決を取り消すことを求めた審決取消訴訟を東京高等裁判所に提起した(平成16年行ケ第500号)ところ、被請求人により訂正審判の請求があり、平成17年2月22日に、東京高等裁判所おいて、差戻し決定がなされた。
(7)被請求人は、平成17年3月15日に、訂正請求書を提出した。
(8)これに対し、請求人は、平成17年4月20日に弁駁書を提出した。
(9)被請求人は、平成17年6月2日に第2回の答弁書を提出するとともに、平成17年6月21日に、該答弁書を補正する手続補正書を提出した。
(10)請求人は、平成17年7月5日に口頭審理陳述要領書を提出し、同日、特許庁審判廷において、第2回口頭審理が行われた。

第2.訂正の可否に対する判断
1.訂正の内容
平成17年3月15日付けの訂正請求の要旨は、本件特許に係る願書に添付した明細書(特許の設定登録時の明細書であり、本件特許掲載公報のとおり。以下、「本件特許明細書」という。)を訂正請求書に添付した訂正明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は次のとおりである。
(1)訂正事項a
請求項1の記載を、次のとおりに訂正する。
「【請求項1】アイライナー又はアイブロウ用の細径の棒状化粧材を進退可能に収容する先筒と、
この先筒に回動可能に連結される容器本体と、
棒状化粧材を挟み込んで保持する複数の爪片からなる化粧材保持部と、
前記先筒内周面に形成され前記爪片が収容される複数の摺動溝とを備え、
前記先筒と容器本体との回動により前記化粧材保持部を進退させて棒状化粧材の繰上および繰下をするアイライナー又はアイブロウ用の棒状化粧材繰出容器において、
前記各爪片の外周面または前記摺動溝の摺動当接面の少なくとも一方に摺動当接部を備え、
前記各爪片の先端部内周面にはテーパ面が設けられ、少なくとも前記爪片間に棒状化粧材を支持したときには前記各爪片が前記摺動当接部を介して前記摺動当接面に常時当接するようにしたことを特徴とする棒状化粧材繰出容器。
(2)訂正事項b
請求項2の記載を、次のとおりに訂正する。
「【請求項2】前記摺動当接部は、前記爪片の外周面に形成された略半球形状の突起であることを特徴とする請求項1に記載の棒状化粧材繰出容器。」
(3)訂正事項c
請求項9の記載を次のとおりに訂正する。
「【請求項9】前記先筒の前記摺動溝は、その断面が、内径側の内周線が短く外径側の外周線が長い扇形断面となるように形成され、それにより、摺動溝内に位置する前記爪片を前記摺動溝に係合させ、前記爪片が前記先筒の内径方向へ脱出することを防止したことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一つに記載の棒状化粧材繰出容器。」
(4)訂正事項d
明細書の【0015】の記載を、次のとおりに訂正する。
「【0015】
【課題を解決するための手段】第1の発明では、アイライナー又はアイブロウ用の細径の棒状化粧材を進退可能に収容する先筒と、この先筒に回動可能に連結される容器本体と、棒状化粧材を挟み込んで保持する複数の爪片からなる化粧材保持部と、前記先筒内周面に形成され前記爪片が収容される複数の摺動溝とを備え、前記先筒と容器本体との回動により前記化粧材保持部を進退させて棒状化粧材の繰上および繰下をするアイライナー又はアイブロウ用の棒状化粧材繰出容器において、前記各爪片の外周面または前記摺動溝の摺動当接面の少なくとも一方に摺動当接部を備え、前記各爪片の先端部内周面にはテーパ面が設けられ、少なくとも前記爪片間に棒状化粧材を支持したときには前記各爪片が前記摺動当接部を介して前記摺動当接面に常時当接するようにした。」
(5)訂正事項e
明細書の【0016】の記載を、次のとおりに訂正する。
「【0016】第2の発明では、前記摺動当接部は、前記爪片の外周面に形成された略半球形状の突起である。」
(6)訂正事項f
明細書の【0023】の記載を、次のとおりに訂正する。
「【0023】第9の発明では、前記先筒の前記摺動溝は、その断面が、内径側の内周線が短く外径側の外周線が長い扇形断面となるように形成され、それにより、摺動溝内に位置する前記爪片を前記摺動溝に係合させ、前記爪片が前記先筒の内径方向へ脱出することを防止した。」
(7)訂正事項g
明細書の【0026】の記載を、次のとおりに訂正する。
「【0026】
【発明の作用および効果】第1の発明では、爪片は摺動当接部を介して摺動当接面に支持されるので、棒状化粧材を爪片間に装着する場合等に、設計で予定されている以上に外側(摺動当接面側)に広がってしまうことはない。このように、爪片の変形が有効に防止されるので、棒状化粧材は安定して保持され、安定した繰上、繰下動作を行うことができる。また、前記各爪片の先端部内周面にはテーパ面が設けられているので、棒状化粧材の挿入、装着を容易かつ的確に行うことができる。」
(8)訂正事項h
明細書の【0027】の記載を、次のとおりに訂正する。
「【0027】第2の発明では、摺動当接部は爪片外周面に形成された略半球形状の突起であるので、突起と摺動当接面の当接面積は突起先端部分による必要最小限のものとでき、大きな摩擦抵抗が生じることはない。したがって、棒状化粧材のストロークは、スムーズになされる。」
(9)訂正事項i
明細書の【0034】の記載を、次のとおりに訂正する。
「【0034】第9の発明では、摺動溝の断面を、内径側の内周線が短く外径側の外周線が長い扇形断面となるように形成し、それにより、摺動溝内に位置する爪片は摺動溝に係合し、摺動溝からの脱出が防止されるので、爪片が内径方向に倒れたり、曲がったりすることがない。」
(10)訂正事項j
明細書の【0048】の記載を、次のとおりに訂正する。
「【0048】また、爪片32の内周面37としては、図2(A)に示すようなフラットな内周面37A、あるいは図2(B)に示すような棒状化粧材Aと略同型の円弧状の内周面37B等を選択的に採用し得る。また、図4に示すように、爪片32の上端部内周面にはテーパ面が設けられている。」
(11)訂正事項k
明細書の【0071】の記載を、次のとおりに訂正する。
「【0071】図示されるように、本実施の形態においては、棒状化粧材Aの保持部は、3片の爪片32で構成される。これらの爪片32は、中心角が略120度の等角度で配置されている。このように、爪片32の片数は、棒状化粧材の硬度、太さ等に応じて、変更することができる。また、図8に示すように、爪片32の上端部内周面にはテーパ面が設けられている。」
(12)訂正事項l
明細書の【0085】の記載を、次のとおりに訂正する。
「【0085】本実施の形態においては、爪片32の外周には、摺動当接部として、上記第1〜第3の実施の形態における摺動突起36の代わりに、摺動凸条(リブ)39が形成されている。また、図11に示すように、爪片32の上端部内周面にはテーパ面が設けられている。」

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
ア.訂正事項aは、請求項1における「棒状化粧材」を「アイライナー又はアイブロウ用の細径の棒状化粧材」と限定し、「棒状化粧材繰出容器」を「アイライナー又はアイブロウ用の棒状化粧材繰出容器」と限定するとともに、「各爪片」に関して「各爪片の先端部内周面にはテーパ面が設けられ、」と限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
イ.「棒状化粧材」を「アイライナー又はアイブロウ用の細径の棒状化粧材」と限定し、「棒状化粧材繰出容器」を「アイライナー又はアイブロウ用の棒状化粧材繰出容器」と限定することは、本件特許明細書の段落【0001】における「本発明は、細径の棒状化粧材(特にアイライナー、アイブロウ、リップライナー等)を複数の爪片により保持する棒状化粧材繰出容器に関し、様々な物性の棒状化粧材をその物性に応じて安定して適切に保持できるようにした改良に関する。」の記載に基づくものであるから、本件特許明細書の記載の範囲内と認められる。
ウ.「各爪片」に関して「各爪片の先端部内周面にはテーパ面が設けられ、」と限定することは、本件特許明細書の段落【0096】の「また、爪片32の上端部にテーパ面32aが設けられているので、棒状化粧材Aを爪片32内に挿入するとき、棒状化粧材Aはスムーズに爪片32の中央に導かれる。したがって、棒状化粧材Aの装着を、容易かつ的確なものとできる。」の記載と図17の記載に基づくものであるから、本件特許明細書又は図面の記載の範囲内と認められる。
エ.したがって、訂正事項aについては、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内であり、新規事項に該当せず、さらに、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
(2)訂正事項bについて
ア.訂正事項bは、請求項2における「突起」を「略半球形状の突起」と限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
イ.「突起」を「略半球形状の突起」と限定することは、本件特許明細書の段落【0055】における「なお、本実施の形態では、摺動突起36は略半球形状のものである。」の記載に基づくものであるから、本件特許明細書の記載の範囲内と認められる。
ウ.したがって、訂正事項bについては、本件特許明細書に記載した事項の範囲内であり、新規事項に該当せず、さらに、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
(3)訂正事項cについて
ア.訂正事項cは、「摺動溝」に関して、「前記先筒の前記摺動溝は、その断面が、内径側の内周線が短く外径側の外周線が長い扇形断面となるように形成され、」と限定するとともに、「前記爪片を摺動溝に係合させ、前記爪片が前記先筒の内径方向へ脱出することを防止した」に関して、「それにより、摺動溝内に位置する前記爪片を前記摺動溝に係合させ、前記爪片が前記先筒の内径方向へ脱出することを防止した」と限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
イ.「摺動溝」に関して、「前記先筒の前記摺動溝は、その断面が、内径側の内周線が短く外径側の外周線が長い扇形断面となるように形成され、」と限定することは、本件特許明細書の段落【0093】の「詳しく説明すると、先筒10の摺動溝13は断面扇形に形成され、内径側の内周線が短く、外径側の外周線が長くなっている。」の記載と図16の記載に基づくものであり、「前記爪片を摺動溝に係合させ、前記爪片が前記先筒の内径方向へ脱出することを防止した」に関して、「それにより、摺動溝内に位置する前記爪片を前記摺動溝に係合させ、前記爪片が前記先筒の内径方向へ脱出することを防止した」と限定することは、本件特許明細書の段落【0094】の「また、爪片32は、この摺動溝13にちょうど収められるように、相似の扇形断面となっている。」の記載と段落【0095】の「このように、爪片32と摺動溝13を脱出不能に係合させることにより、爪片32が内径方向へ倒れたり、曲がったりすることを防止できる。また、組み立ての際には、爪片32を摺動溝13の端部から係合させれば、爪片32は確実に摺動溝13内に装着される。」の記載に基づくものであるから、本件特許明細書又は図面の記載の範囲内と認められる。
ウ.したがって、訂正事項cについては、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内であり、新規事項に該当せず、さらに、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
(4)訂正事項dないしf、訂正事項h、i
訂正事項dないしf及び訂正事項h、iは、訂正事項aないしcに伴って、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲と整合させるためのもので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、新規事項に該当せず、さらに、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
(5)訂正事項g
ア.訂正事項gは、【発明の作用および効果】の欄に、「また、前記各爪片の先端部内周面にはテーパ面が設けられているので、棒状化粧材の挿入、装着を容易かつ的確に行うことができる。」の記載を追加するものであり、訂正事項aに伴い、請求項1に付加した事項による作用効果の記載を付加するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
イ.「また、前記各爪片の先端部内周面にはテーパ面が設けられているので、棒状化粧材の挿入、装着を容易かつ的確に行うことができる。」の記載は、本件特許明細書の段落【0096】の「また、爪片32の上端部にテーパ面32aが設けられているので、棒状化粧材Aを爪片32内に挿入するとき、棒状化粧材Aはスムーズに爪片32の中央に導かれる。したがって、棒状化粧材Aの装着を、容易かつ的確なものとできる。」の記載に基づくものであるから、本件特許明細書の記載の範囲内と認められる。
ウ.したがって、訂正事項gについては、本件特許明細書に記載した事項の範囲内であり、新規事項に該当せず、さらに、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
(6)訂正事項jないしlについて
訂正事項jないしlは、図4、図8、図11の記載に基づいて、発明の詳細な説明において、図4、図8、図11に記載された爪片32の上端部内周面にはテーパ面が設けられている点を明確にするものであって、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当するとともに、本件特許明細書又は図面の記載の範囲内の訂正であると認められる。
したがって、訂正事項jないしlについては、本件特許明細書又は図面に記載した事項の範囲内であり、新規事項に該当せず、さらに、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでもない。
(7)請求項3ないし8、11に係る発明の独立特許要件について
訂正事項aないしcによる請求項1、2及び9の訂正に伴い、これらの請求項を引用する、無効審判が請求されていない請求項3ないし8、11が訂正されたが、これらの請求項にされた訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするもので、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものでなく、これらの請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際に独立して特許を受けることができない発明でもない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書、及び同条第5項で読み替えて準用する同法第126条第3項ないし第5項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3.当事者の主張
1.請求人の主張
請求人は、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2及び9に係る発明は、甲第1号証に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明の特許は同法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである旨主張している。

(証拠方法)
甲第1号証:実公昭53-52520号公報
甲第2号証:実願昭58-124439号(実開昭60-33919号)のマイクロフィルム
甲第3号証:特許第3073989号公報(本件特許公報)
甲第4号証:実願平3-90862号(実開平5-39418号)のCD-ROM
甲第5号証:米国特許第5765955号明細書
甲第6号証:実願昭53-14425号(実開昭54-119771号)のマイクロフィルム
甲第7号証:米国特許第5871295号明細書

なお、平成17年4月20日付けの弁駁書の「7.弁駁の趣旨」において、「(1)上記審判事件に関し、被請求人より本件特許第3073989号の明細書を訂正する訂正請求書(以下、「本件訂正請求書という。」)が提出されたが、訂正後の請求項1,2及び9に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、特許法第123条第2項の規定により無効とされるべきである。」の記載のうち、「甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたものであり、」の点は、平成17年7月5日の第2回口頭審理において、「甲第1号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたものであり、」に訂正された。
また、同「7.弁駁の趣旨」における「(2)本件訂正請求書により、請求項1の棒状化粧材につき、「アイライナー又はアイブロウ用の細径の」なる限定が付加されたが、「細径」の意義が不明確であり、訂正後の請求項1の記載は特許法第36条第6項第1号及び同第2号に違反するものである。したがって、本件請求項1に係る特許は特許法第123条第4項の規定により無効とされるべきである。」との主張については、上記第2回口頭審理において撤回された。

2.被請求人の主張
被請求人は、本件訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2及び9に係る発明は、いずれも、甲第1号証に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではないから、これらの発明は特許法第29条第2項に該当するものではない旨主張している。

第4.本件発明
本件訂正後の請求項1、2及び9に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件発明1」といい、同様に請求項2及び9に係る発明をそれぞれ「本件発明2」及び「本件発明9」という。)は、本件訂正明細書及び本件特許の設定登録時の図面の記載からみてその特許請求の範囲の請求項1、2及び9に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】アイライナー又はアイブロウ用の細径の棒状化粧材を進退可能に収容する先筒と、
この先筒に回動可能に連結される容器本体と、
棒状化粧材を挟み込んで保持する複数の爪片からなる化粧材保持部と、
前記先筒内周面に形成され前記爪片が収容される複数の摺動溝とを備え、
前記先筒と容器本体との回動により前記化粧材保持部を進退させて棒状化粧材の繰上および繰下をするアイライナー又はアイブロウ用の棒状化粧材繰出容器において、
前記各爪片の外周面または前記摺動溝の摺動当接面の少なくとも一方に摺動当接部を備え、
前記各爪片の先端部内周面にはテーパ面が設けられ、
少なくとも前記爪片間に棒状化粧材を支持したときには前記各爪片が前記摺動当接部を介して前記摺動当接面に常時当接するようにしたことを特徴とする棒状化粧材繰出容器。
【請求項2】前記摺動当接部は、前記爪片の外周面に形成された略半球形状の突起であることを特徴とする請求項1に記載の棒状化粧材繰出容器。
【請求項9】前記先筒の前記摺動溝は、その断面が、内径側の内周線が短く外径側の外周線が長い扇形断面となるように形成され、それにより、摺動溝内に位置する前記爪片を前記摺動溝に係合させ、前記爪片が前記先筒の内径方向へ脱出することを防止したことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一つに記載の棒状化粧材繰出容器。」

第5.各甲号証
1.甲第1号証
甲第1号証には、第1、2図と共に以下の事項が記載されている。
a)「案内筒側壁に筒軸方向に切欠した数本のスリットに嵌合した嵌合爪を該案内筒内を摺動自在に成る押盤に一体成型し、且つ外周方向に弾性附勢すると共に螺子作用に依り筒状容器内を進退する様に成る芯チャップの嵌合爪を、上記案内筒に芯口を有する外筒を挿着した時、該外筒内壁が、僅かに内方に押圧する様に構成し、化粧品の芯を該押圧に依り上記芯チャックに挟持する事を特徴とする棒状化粧品用容器。」(第1欄実用新案登録請求の範囲)
b)「従来、口紅、アイシャドウ、眉墨等の棒状固形化粧品の容器は、一搬に該化粧品の芯を芯チャック挟持又は嵌着して保持し、該芯チャックを進退させて使用するものであつた。」(第1欄第28〜31行)
c)「弾発力に依って常時僅かに開いて成る数本の嵌合爪を有する芯チャックに化粧品の芯を挿入した後、外筒を上記嵌合爪を内方に押圧しながら嵌合する事に依り、先に挿入した化粧品の芯を芯チャックが完全に銜えて挟持する様に成る棒状化粧品用容器を提唱せんとするものである。」(第2欄第1〜7行)
d)「第1図は本考案、棒状化粧品用容器の断面図であり、案内筒1は後端を継手筒2に回動自在に嵌合し割リング3に依って抜落ちない様成ると共に先端半分は筒状の周囲に等間隔に平行スリット切欠4を設けて成る。上記案内筒1の後方より螺子筒5を回動自在に挿入し該螺子筒5の雌螺子6に芯チャック7と一体成形に成る螺子軸8を上記案内筒1の前方から螺合して成る。該芯チャック7は上記螺子軸8と連続した、上記案内筒1より僅かに小径な円盤状の押盤9と該押盤の周側に固設し、前記案内筒1のスリット切欠4に摺動自在に嵌合して成る嵌合爪10から成り、該嵌合爪10は案内筒1の筒厚より僅かに厚く又、円筒外向きに僅かに弾性符勢して成ると共に嵌合爪10外端部に小突条11が設けられる。
12は芯口13を有する外筒であり、上記案内筒1前方より冠挿し、後端は該案内筒腹部1′と取外し可能に圧入固着して成ると共に上記芯チャック7の嵌合爪10に設けられた小突条11を内方に僅かに押込んで成る。
14は、前記螺子筒5後端に圧入嵌着すると同時に継手筒2とも圧入嵌着した有底回動筒であり、15は、上記継手筒2先端と着脱自在に嵌合して成るキャップである。
尚、図中aは棒状化粧品の芯である。
上記構成に成る化粧品用容器は、回動筒14を回して螺子筒5を回動する事に依って、該螺子筒5の雌螺子6と螺合した螺子軸8の螺合作用に依り、芯チャック7が案内筒1内を進退する。従って該芯チャック7に挟持された化粧品の芯aは外筒12の芯口13より進退して成るものである。」(第2欄第9行〜第3欄第2行)
e)「次に先に外した外筒12を再び案内筒1に圧入嵌合するがこの時、外筒12は該内壁で上記芯チャック7の嵌合爪10に設けた小突条11を押しながら挿入する為、嵌合爪10は化粧品の芯a後端部を完全に挟持する。
然る後回動筒14を回すと、上記芯チャック7の嵌合爪10が案内筒1のスリット切欠4に回動を阻止されながら且外筒12に押圧されながら摺動自在に成る為、回動筒14と共に回動する螺子筒5と螺子軸8の螺合作用に依り、上記芯チャック7は化粧品の芯aを挟持したまゝ進退するものであり、」(第3欄第8〜20行)
f)「以上の様に本考案、棒状化粧品用容器は、該芯チャックの嵌合爪に常時開いて成る様弾性附勢すると共に外筒の内壁で該嵌合爪を内方に押圧する様構成した為、柔らかい化粧品の芯を芯チャックに装填する際、芯に無理な圧力を加えずに装着出来、芯を折損したり、変型させたりする事故を解消する事が出来た。」(第4欄第1〜7行)
g)上記b)の記載より、甲第1号証には、棒状化粧品として眉墨が例示されており、眉墨が細径であることは自明のことであるから、甲第1号証の棒状化粧品用容器が細径の化粧品を対象とするものであるといえる。
h)また、第1図及び第2図には、棒状化粧品の芯aを挟持する3本の嵌合爪10からなる芯チャック7と、棒状化粧品の芯aを芯チャック7を介して進退させると共に収納する案内筒1及び外筒12とを有し、外筒12の内壁と案内筒1のスリット切欠4とで形成される3条の溝は、内径側の内周線が短く、外径側の外周線が長い断面扇形になっており、この断面扇形の溝と略相似である断面扇形の嵌合爪10が、嵌合爪10の外端部の小突条11を介して外筒12の内壁に常時当接するようにして該溝内に嵌合されている棒状化粧品用容器の構成が示されている。
上記a)〜h)の記載事項及び図示内容を総合すると、甲第1号証には、
「眉墨等の細径の棒状化粧品の芯aを収納して進退させると共に外筒12を圧入固着した案内筒1と
この外筒12を圧入固着した案内筒1に対して、回動自在に挿入されると共に嵌合される、螺子筒5に圧入嵌着した有底回動筒14と、
棒状化粧品の芯aを挟持する数本の嵌合爪10からなる芯チャック7と、
前記外筒12の内壁と案内筒1のスリット切欠4とで形成され前記嵌合爪10が摺動される数条の溝とを備え、
前記外筒12を圧入固着した案内筒1と螺子筒5に圧入嵌着した有底回動筒14との回動により前記芯チャック7を進退させて棒状化粧品の芯aを進退させる眉墨等の棒状化粧品用容器において、
前記各嵌合爪10の外端部に小突条11を備え、
前記嵌合爪間で棒状化粧品の芯aを挟持したときには前記各嵌合爪10が前記小突条11を介して、前記外筒12の内壁に常時当接するようにし、
断面扇形の前記溝と略相似である断面扇形の嵌合爪10を前記溝に嵌合させるようにした棒状化粧品用容器」の発明(以下、「甲第1号証発明」という。)が記載されていると認められる。

2.甲第2号証
甲第2号証には、第1〜3図と共に以下の事項が記載されている。
i)「芯筒後部を外筒前部に外挿すると共に、回転自在に連結し、また芯筒内面に形成した摺動溝に化粧料を取付けた芯チャックの爪片を摺動自在に嵌合し、さらに芯チャックの杆体と外筒とを螺合して化粧料を芯筒より出没自在に構成してなる化粧料容器。」(明細書第1頁実用新案登録請求の範囲)
j)「この考案は、棒状の化粧料であるアイライナー、アイブロウ、アイシャドウ、口紅等を収納した繰出式の容器に関するものである。」(同書第1頁第12〜14行)
k)「まず、第1図乃至第3図の第1実施例から説明すると、(1)は芯筒であって、前後に貫通する透孔(2)の内周面に等間隔に4条の断面十字状の浅い摺動溝(3)を先端部と後方部を残して長手方向に形成し、さらに後方部(1a)の内径を大径に形成して後端近くに浅い環状溝(4)を穿設する。(5)は有底筒状体の外筒であって、内周面に雌ネジ(6)を刻設すると共に、前部を前記芯筒(1)の肉厚分だけ細軸部(5a)とし、先端近くの外周面に円周方向に間隔をおいて数個の凸条(7)を突設し、前記芯筒(1)の環状溝(4)に強圧嵌合して回動自在に、かつ芯筒(1)と外筒(5)との外周面を面一に連結する。(8)は芯チャックであって、基板(9)の周面には前記芯筒(1)の摺動溝(3)に摺動自在に嵌入する4本の爪片(10)を先端方向に向って突設すると共に、該爪片(10)の内面に細巾の線条(11)を突設して爪片(10)内に化粧料(A)を圧嵌する。また基板(9)の後方には杆体(12)を一体に延設し、その後端に突起(13)を突設して前記外筒(5)の雌ネジ(6)に螺合する。」(同書第2頁第18行〜第3頁第16行)
l)「この様に構成されているので、芯筒(1)に対して外筒(5)を回転することによって芯チャック(8)の杆体(12)の突起(13)は外筒(5)の雌ネジ(6)によって前進するため、芯チャック(8)の爪片(10)は芯筒(1)の摺動溝(3)に沿って摺動前進し、爪片(10)に挟持されている化粧料(A)は芯筒(1)の先端より突出させることができる。また外筒(5)を逆に回転すれば上記と反対に作動して芯チャック(8)は後退し化粧料(A)を芯筒(1)内に没入収納させることができる。」(同書第3頁第19行〜第4頁第7行)

3.甲第4号証
甲第4号証には、第1図ないし第38図と共に以下の事項が記載されている。
m)「【産業上の利用分野】
本考案は、棒状化粧料の繰出容器に関する。」(【0001】)
n)「前記押棒75の前部には、図36ないし図38に示す合成樹脂製の芯チャック80の止着用孔81が嵌合して止着してあり、この芯チャック80は、前記保持筒70内に前後摺動可能に嵌入してあり、棒状の化粧料85が装着される。」(【0029】)
o)図36ないし図38の記載から、棒状化粧料85を装着する芯チャック80において、化粧料85を保持するための4本の爪状部分の先端部内周面にテーパ面が形成されていることが明らかである。

4.甲第5号証
甲第5号証には、図1ないし図28と共に以下の事項が記載されている。(訳文は、平成17年7月5日に請求人が提出した口頭審理陳述要領書に添付された「資料1」による。)
p)「Stick-shaped cosmetic cartridge and stick-shaped cosmetic extrusion case(棒状化粧材カートリッジと棒状化粧材押出しケース)」(発明の名称)
q)「The holder 50 inserted into the housing cylinder 40 is made of resin and comprises a holding portion 51 and a shaft portion 52, as shown in FIG. 8 and FIG. 9. As shown in FIG. 10, the holding portion 51 has a bottom plate 53 formed in oval in its top view, and a pair of plate-like holding pieces 54 standing on the bottom plate 53 at the both sides in the longitudinal direction to face each other. The bottom plate 53 is formed in a configuration similar to the cross section of the large-diameter hole portion 44 but of which diameter is smaller than that of the large-diameter hole portion 44 so that the holder can move in the axial direction inside the large-diameter hole portion 44. The holding pieces 54 is each provided with two projections 55 extending in the axial direction formed on the opposite face thereof.(ハウジングシリンダー40に挿入されるホルダー50は樹脂で造られ、図8及び図9に示されるように、保持部51とシャフト部52からなる。図10に示されるように、保持部51は上面視が楕円形の底プレート53と底プレート53の両側に長手方向に起立し、互い向き合う一対の板状保持片54を有している。底プレート53は大径孔部分44の断面形状と同様な形状をなし、その径はその大径孔部分44より小さくされてホルダーが大径孔部分44内を軸方向に動くことができるようにしている。保持片54は夫々対向する面の軸方向に延びる突起55が設けられている。)」(第9欄第63行〜第10欄第9行)
r)「The holder 50 holds a stick-shaped cosmetic 90 attached therein. As shown in FIG. 11 through FIG. 13, the stick-shaped cosmetic 90 has the same oval cross section as that of the bottom plate 53 of the holder 50 in size and configuration and comprises engaging concavities 91, 91 formed in the lower end portion thereof on the both sides in the longitudinal direction of the oval section. The engaging concavities 91, 91 are allowed to engage the holding pieces 54, 54 of the holder 50.
That is, the holding pieces 54, 54 hold the bottom of the stick-shaped cosmetic 90 therebetween through the engaging concavities 91, 91 so that the holder 50 elastically holds the stick-shaped cosmetic 90. As the stick-shaped cosmetic 90 is elastically held in such a manner, external impact exerted to the holder 50 and the stick-shaped cosmetic 90 can be absorbed, thereby preventing damage of the stick-shaped cosmetic 90.(ホルダー50は棒状化粧材90をそこに保持する。図11から図13に示されるように、棒状化粧材90はホルダー50の底プレートと同じ形状とサイズを持つ楕円形の断面を持ち、その下端部の断面楕円形の長軸方向の両側に係合凹所91,91を有している。この係合凹所91,91はホルダー50の保持片54,54と係合する。
すなわち、保持片54,54はその間で係合凹所91,91を介して棒状化粧材90の底部を保持し、これにより、棒状化粧材90を弾性的に保持する。棒状化粧材90がこのように弾性的に保持されるので、外部からの衝撃がホルダー50に作用しても棒状化粧材90は吸収されて、それにより棒状化粧材90の損傷が抑えられる。)」(第10欄第17〜33行)
s)図8ないし図10の記載から、棒状化粧材90を保持するホルダー50の保持片54の先端部内周面にテーパ面が形成されていることが明らかである。

5.甲第6号証
甲第6号証には、第1図ないし第4図と共に以下の事項が記載されている。
t)「眉墨等棒状をした化粧料○1を、収嵌支持する中皿○2とガイドパイプ○3にスプラインを施した事を特徴とした、化粧棒容器の構造。」(実用新案登録請求の範囲)
u)第2図及び第4図の記載から、化粧料○1を収嵌支持する中皿○2の上部に設けられた爪状の部分の断面と、ガイドパイプ○3の内側に設けられ、該爪状の部分が摺動する溝の断面とが、互いに係合するように内径側の内周線が短く外径側の外周線が長い扇形断面となるように形成されていることが明らかである。

第6.対比・判断
1.本件発明1について
本件発明1と甲第1号証発明とを比較すると、後者における「眉墨等の細径の棒状化粧品の芯a」がその作用・機能からみて前者における「アイライナー又はアイブロウ用の細径の棒状化粧材」に相当し、以下同様に、「収納して進退させる」が「進退可能に収容する」に、「回動自在に挿入されると共に嵌合される」が「回動可能に連結される」に、「螺子筒5に圧入嵌着した有底回動筒14」が「容器本体」に、「挟持する数本の嵌合爪10」が「挟み込んで保持する複数の爪片」に、「芯チャック7」が「化粧材保持部」に、「眉墨等の棒状化粧品用容器」が「アイライナー又はアイブロウ用の棒状化粧材繰出容器」に、それぞれ相当する。
また、後者の「嵌合爪10の外端部」、「小突条11」が、それぞれ、前者の「爪片の外周面」、「摺動当接部」に相当するから、後者における「各嵌合爪10の外端部に小突条11を備え」た態様は、前者における「各爪片の外周面または前記摺動溝の摺動当接面の少なくとも一方に摺動当接部を備え」た態様に相当する。
そして、後者の「外筒12を圧入固着した案内筒1」と、前者の「先筒」は、共に、棒状化粧材を進退可能に収容する「収容筒」という概念で共通するものであるから、後者の「外筒12の内壁と案内筒1のスリット切欠4とで形成され嵌合爪10が摺動自在に嵌合される数条の溝」と前者の「先筒内周面に形成され爪片が収容される複数の摺動溝」とは「収容筒内周面に形成され爪片が収容される複数の摺動溝」と捉え得るものであり、後者の「外筒12を圧入固着した案内筒1と螺子筒5に圧入嵌着した有底回動筒14との回動により芯チャック7を進退させて棒状化粧品の芯aを進退させる」態様と前者の「先筒と容器本体との回動により化粧材保持部を進退させて棒状化粧材の繰上および繰下をする」態様とは「収容筒と容器本体との回動により化粧材保持部を進退させて棒状化粧材の繰上および繰下をする」態様と捉え得るものである。
さらに、後者の「嵌合爪間で棒状化粧品の芯aを挟持したときには各嵌合爪10が小突条11を介して、外筒12の内壁に常時当接する」態様が、前者の「少なくとも爪片間に棒状化粧材を支持したときには各爪片が摺動当接部を介して摺動当接面に常時当接する」態様に相当する。
したがって、両者は、
「アイライナー又はアイブロウ用の細径の棒状化粧材を進退可能に収容する収容筒と、
この収容筒に回動可能に連結される容器本体と、
前記収容筒内周面に形成され前記爪片が収容される複数の摺動溝とを備え、
前記収容筒と容器本体との回動により前記化粧材保持部を進退させて棒状化粧材の繰上および繰下をするアイライナー又はアイブロウ用の棒状化粧材繰出容器において、
前記各爪片の外周面または前記摺動溝の摺動当接面の少なくとも一方に摺動当接部を備え、
少なくとも前記爪片間に棒状化粧材を支持したときには前記各爪片が前記摺動当接部を介して前記摺動当接面に常時当接するようにしたことを特徴とする棒状化粧材繰出容器」
である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
収容筒に関し、本件発明1が、「先筒」という単一に形成された部品からなるものであるのに対し、甲第1号証発明は、「外筒12を圧入固着した案内筒1」であるところから、「外筒12」及び「案内筒1」という別体に形成された部品からなる点。
(相違点2)
本件発明1の各爪片の先端部内周面には「テーパ面」が設けられているのに対し、甲第1号証発明の各爪片の先端部内周面にはかかるテーパ面が設けられていない点。
そこで、まず、上記の相違点1について検討する。
棒状化粧材を進退可能に収容する収容筒を、「先筒」という単一に形成された部品で構成することは、例えば、甲第2号証に「棒状の化粧料A(「棒状化粧材」に相当)」を「出没自在(「進退可能」に相当)」に「収納(「収容」に相当)」する「芯筒1(「収容筒」かつ「先筒」に相当)」を備えた「繰出式の化粧料容器(「棒状化粧材繰出容器」に相当)」として開示されているように、この種の分野における周知技術であるといえる。
したがって、甲第1号証発明に上記の周知技術を適用して本件発明1の相違点1に係る構成とすることは、その適用を阻害する格別の要因が見出せない以上、当業者が必要に応じて適宜なし得ることというべきである。
次に、上記の相違点2について検討する。
棒状化粧品の容器において、棒状の化粧品を保持する爪部の先端部内周面にテーパ面を形成することは、例えば、甲第4号証に、「棒状化粧料(「棒状化粧材」に相当)」を装着する「芯チャック80(「化粧材保持部」に相当)」において、化粧料85を保持するための4本の爪状部分の先端部内周面にテーパ面が形成されていることが記載されているとともに、甲第5号証に、「棒状化粧材」を保持する「ホルダー50(「化粧材保持部」に相当)」の「保持片54(「爪片」に相当)」の先端部内周面にテーパ面が形成されていることが記載されているように周知の技術であり、甲第1号証発明の各爪片において、周知の技術のように、先端部内周面にテーパ面を形成することは、当業者が普通に採用し得る事項である。
そして、本件発明1により奏される効果も、甲第1号証発明から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。
そうすると、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというべきである。

なお、被請求人は、平成17年6月2日付けの第2回答弁書において、甲第1号証には、アイライナー又はアイブロウ用の細径の棒状化粧材容器についての発明が記載されていない旨主張している。
確かに、甲第1号証の第1図を参照すると、化粧品の芯aは、長手方向の長さに比して径が太く記載されており、これを細径とは言い難いとしても、図面は甲第1号証の棒状化粧品用容器の一実施例を示すものであって、甲第1号証の記載全体から把握される発明がこの図面の記載のものに限定して解釈されるものではない。
そして、甲第1号証の第28〜31行には、「従来、口紅、アイシャドウ、眉墨等の棒状固形化粧品の容器は、一搬に該化粧品の芯を芯チャック挟持又は嵌着して保持し、該芯チャックを進退させて使用するものであつた。」と記載されており、甲第1号証に記載された化粧材容器の内容物として、眉墨、すなわち、アイブロウのような細径の化粧材を含めることが意図されていることは明らかである。
また、甲第1号証に記載された化粧品用容器がアイライナー又はアイブロウ用の細径の棒状化粧材容器には適用できないとする格別の事情も見あたらない。
よって、上記被請求人の上記主張は採用できない。

2.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に「摺動当接部は、爪片の外周面に形成された略半球状の突起である」とする構成を限定したものである。
甲第1号証発明は、「嵌合爪10(「爪片」に相当)の外端部(「外周面」に相当)に小突条11(「摺動当接部」に相当)を備え」た構成を有しており、該小突条11は断面が円弧状であって、本件発明2の「略半球状の突起」とは相違するが、部材の一部に他の部材に当接する突起を形成する際に、突起として様々な形状のものを試みることは当業者が適宜なし得ることであるところ、「略半球状の突起」も普通に選択し得る形状であって、「略半球状の突起」を採用することによる接触面積が小さくなる等の作用効果は、当業者が普通に予測し得る程度のものにすぎない。
そうすると、本件発明2の上記限定した構成は、当業者が普通に採用し得る設計的事項と捉え得るものであるから、上記1.での検討内容を踏まえれば、本件発明2も、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというべきである。

3.本件発明9について
本件発明9は、本件発明1に「前記先筒の前記摺動溝は、その断面が、内径側の内周線が短く外径側の外周線が長い扇形断面となるように形成され、それにより、摺動溝内に位置する前記爪片を前記摺動溝に係合させ、前記爪片が前記先筒の内径方向へ脱出することを防止した」とする構成を限定したものである。
一方、甲第1号証発明は、「断面扇形の前記溝(「外筒12の内壁と案内筒1のスリット切欠4とで形成される溝」:「摺動溝」に相当)と略相似である断面扇形の嵌合爪10(「爪片」に相当)を前記溝に嵌合(「係合」に相当)させる」構成を有しており、この構成により、爪片が外筒12を圧入固着した案内筒1(収容筒)の内径方向へ倒れたり、曲がったり、抜け出したりすることを防止し得ること、即ち、爪片が収容筒の内径方向へ脱出することが防止されていることが窺える。
また、仮に、甲第1号証発明が断面扇形の溝と略相似である断面扇形の嵌合爪を備えているといえないとしても、かかる構成は例えば、甲第6号証に、「化粧料○1(「棒状化粧材」に相当)」を収嵌支持する「中皿○2(「化粧材保持部」に相当)」の上部に設けられた爪状の部分の断面と、「ガイドパイプ○3(「先筒」に相当)」の内側に設けられ、該爪状の部分が摺動する溝の断面とが、互いに係合するように内径側の内周線が短く外径側の外周線が長い扇形断面となるように形成された構成として記載されているように周知の構成であり、甲第1号証発明にこのような周知の構成を採用することに格別のものは認められない。
そうすると、本件発明9に係る上記限定した構成は、甲第1号証発明が実質的に具備する構成あるいは周知の構成と捉え得るものであるから、上記1.での検討内容を踏まえれば、本件発明9も、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというべきである。

第7.むすび
したがって、本件発明1、2及び9は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明1、2及び9の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
棒状化粧材繰出容器
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】アイライナー又はアイブロウ用の細径の棒状化粧材を進退可能に収容する先筒と、
この先筒に回動可能に連結される容器本体と、
棒状化粧材を挟み込んで保持する複数の爪片からなる化粧材保持部と、
前記先筒内周面に形成され前記爪片が収容される複数の摺動溝とを備え、前記先筒と容器本体との回動により前記化粧材保持部を進退させて棒状化粧材の繰上および繰下をするアイライナー又はアイブロウ用の棒状化粧材繰出容器において、
前記各爪片の外周面または前記摺動溝の摺動当接面の少なくとも一方に摺動当接部を備え、
前記各爪片の先端部内周面にはテーパが設けられ、
少なくとも前記爪片間に棒状化粧材を支持したときには前記各爪片が前記摺動当接部を介して前記摺動当接面に常時当接するようにしたことを特徴とする棒状化粧材繰出容器。
【請求項2】前記摺動当接部は、前記爪片の外周面に形成された略半球形状の突起であることを特徴とする請求項1に記載の棒状化粧材繰出容器。
【請求項3】前記摺動当接部は、前記爪片外周面の略全長にわたって形成された凸条であることを特徴とする請求項1に記載の棒状化粧材繰出容器。
【請求項4】前記凸条は、略三角形断面を持つとともに、この三角形の頂点部分で前記摺動当接面と当接することを特徴とする請求項3に記載の棒状化粧材繰出容器。
【請求項5】前記摺動当接部は、前記摺動当接面に少なくとも前記爪片のストローク範囲にわたって形成された凸条であることを特徴とする請求項1に記載の棒状化粧材繰出容器。
【請求項6】前記凸条は、略三角形断面を持つとともに、この三角形の頂点部分で前記爪片の外周面と当接することを特徴とする請求項5に記載の棒状化粧材繰出容器。
【請求項7】前記爪片の内周面にフラットな部分を形成したことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の棒状化粧材繰出容器。
【請求項8】前記爪片の内周面に段差を設け、前記爪片の内周面により囲まれる断面積が前記段差より下部において上部よりも狭められるようにするとともに、前記段差よりも上部側から棒状化粧材を装着するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の棒状化粧材繰出容器。
【請求項9】前記先筒の前記摺動溝は、その断面が、内径側の内周線が短く外径側の外周線が長い扇形断面となるように形成され、それにより、摺動溝内に位置する前記爪片を前記摺動溝に係合させ、前記爪片が前記先筒の内径方向へ脱出することを防止したことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一つに記載の棒状化粧材繰出容器。
【請求項10】棒状化粧材を進退可能に収容する先筒と、
この先筒に回動可能に連結される容器本体と、
棒状化粧材を挟み込んで保持する複数の爪片からなる化粧材保持部と、
前記先筒内周面に形成され前記爪片が収容される複数の摺動溝とを備え、
前記先筒と容器本体との回動により前記化粧材保持部を進退させて棒状化粧材の繰上および繰下をする棒状化粧材繰出容器において、
前記複数の爪片を円柱部材から構成するとともに、
少なくともこの円柱部材間に棒状化粧材を支持したときにはこの円柱部材の外側側面が前記摺動溝の摺動当接面に当接するようにしたことを特徴とする棒状化粧材繰出容器。
【請求項11】前記先筒内周面の摺動溝間の領域に凹凸を形成したことを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一つに記載の棒状化粧材繰出容器。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、細径の棒状化粧材(特にアイライナー、アイブロウ、リップライナー等)を複数の爪片により保持する棒状化粧材繰出容器に関し、様々な物性の棒状化粧材をその物性に応じて安定して適切に保持できるようにした改良に関する。
【0002】
【従来の技術】棒状化粧材は、油と顔料または染料を混ぜて固めたものであるが、その種類により、硬度や粘度などの特性は多様である。このように多様な特性に応じて、棒状化粧材を破損することなく適切に収容するために、様々の形態の棒状化粧材繰出容器が提案されている。
【0003】例えば、大径な口紅やコンシーラー等、断面積が大きく強度もある棒状化粧材の場合には、化粧材保持部である円筒形の芯チャック内に棒状化粧材の下端側を保持する。この場合、芯チャックに保持される部分の長さと棒状化粧材全長との比は、1:2〜1:3程度とするのが一般である。
【0004】一方、細径の棒状化粧材の場合には、芯チャックに保持される部分の長さと化粧芯材の長さの比は、例えば1:5〜1:6程度にされる。しかしながら、このような細径で脆弱な棒状化粧材の場合、繰出操作時に、棒状化粧材の折れ、抜け、破損等が生じやすい。
【0005】このような棒状化粧材の折れ、抜け、破損等を防止するために、例えば、図20に示すような棒状化粧材繰出容器が提案されている。
【0006】この棒状化粧材繰出容器は、円筒形の芯チャック105を備える。棒状化粧材(図示せず)は、この芯チャック105内に挿入され、先筒102内で繰り出し可能に保持される。この先筒102の上端には、芯チャック105の肉厚分の段部111が形成されている。これにより、先筒102の上端部分(開口孔110側の部分)の内径寸法は、芯チャック105の肉厚分小さくなり、棒状化粧材は、この上端部分により左右から保持されるようになっている。
【0007】しかしながら、この図20の容器では、先筒102の段部111より下の部分では、棒状化粧材と先筒102の内周面との間に、芯チャック105の肉厚分の隙間が存在する。このため、特に細長い棒状化粧材の場合には、温度、湿度の変化や衝撃等により、棒状化粧材がゆがみ、結局破損してしまうことがあった。
【0008】このような問題点を解決するために、実開昭60-33920号には、図21〜図23に示すような棒状化粧材繰出容器201が提案されている。また、特公平3-71121号には、図24に示すような棒状化粧材繰出容器301が提案されている。
【0009】これらの棒状化粧材繰出容器201、301は、いずれも芯チャックを複数の爪片108で構成し、これらの爪片108により棒状化粧材Aを保持するものである。また、先筒102内周面には複数の摺動溝106が形成され、複数の爪片108はこれらの摺動溝106内に収容される。これにより、棒状化粧材Aは、先箱102内周面の摺動溝106以外の部分により、横方向からサポートされることになる。したがって、棒状化粧材Aの曲がりが防止できる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような棒状化粧材繰出容器201、301において採用される爪片108は変形しやすく、棒状化粧材Aが挿入された場合には、図23、図24に示すように、外側に押し広げられた状態となってしまうことがあった。
【0011】詳しく説明すると、爪片108は、通常、弾性を有する長方形の片であって、この弾性により棒状化粧材を挟着するものである。このように爪片108に弾性を持たせることにより、脆弱な棒状化粧材Aを傷つけずに、包むようにして保持できる。そして、爪片108により棒状化粧材Aを支持する場合には、図21、図22に示すように、爪片108は、棒状化粧材Aに沿った形となるのが理想である。
【0012】しかしながら、実際には、爪片108は、棒状化粧材の挿入時の圧迫で、図23、図24に示すように外側に押し広げられた形となってしまう。このため、棒状化粧材Aは、落下、連続的振動等のわずかなショックが加わっただけで、芯チャックより離脱してしまいかねないのである。
【0013】これに対して、爪片の厚みを増して断面積を大きくする等の対策により、爪片108の強度を大きくすれば、爪片108は変形しにくいものにはなる。しかし、これでは爪片108の厚みが増し、先筒のデザインの自由度が損なわれる。
【0014】本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、爪片により棒状化粧材を保持する棒状化粧材繰出容器において、棒状化粧材をその物性に応じて安定して適切に保持できるようにしたものを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】第1の発明では、アイライナー又はアイブロウ用の細径の棒状化粧材を進退可能に収容する先筒と、この先筒に回動可能に連結される容器本体と、棒状化粧材を挟み込んで保持する複数の爪片からなる化粧材保持部と、前記先筒内周面に形成され前記爪片が収容される複数の摺動溝とを備え、前記先筒と容器本体との回動により前記化粧材保持部を進退させて棒状化粧材の繰上および繰下をするアイライナー又はアイブロウ用の棒状化粧材繰出容器において、前記各爪片の外周面または前記摺動溝の摺動当接面の少なくとも一方に摺動当接部を備え、前記各爪片の先端部内周面にはテーパ面が設けられ、少なくとも前記爪片間に棒状化粧材を支持したときには前記各爪片が前記摺動当接部を介して前記摺動当接面に常時当接するようにした。
【0016】第2の発明では、前記摺動当接部は、前記爪片の外周面に形成された略半球形状の突起である。
【0017】第3の発明では、前記摺動当接部は、前記爪片外周面の略全長にわたって形成された凸条である。
【0018】第4の発明では、前記凸条は、略三角形断面を持つとともに、この三角形の頂点部分で前記摺動当接面と当接する。
【0019】第5の発明では、前記摺動当接部は、前記摺動当接面に少なくとも前記爪片のストローク範囲にわたって形成された凸条である。
【0020】第6の発明では、前記凸条は、略三角形断面を持つとともに、この三角形の頂点部分で前記爪片の外周面と当接する。
【0021】第7の発明では、前記爪片の内周面にフラットな部分を形成した。
【0022】第8の発明では、前記爪片の内周面に段差を設け、前記爪片の内周面により囲まれる断面積が前記段差より下部において上部よりも狭められるようにするとともに、前記段差よりも上部側から棒状化粧材を装着するようにした。
【0023】第9の発明では、前記先筒の前記摺動溝は、その断面が内径側の内周線が短く外径側の外周差が扇形断面となるように形成され、それにより、摺動溝内に位置する前記爪片を前記摺動溝に係合させ、前記爪片が前記先筒の内径方向へ脱出することを防止した。
【0024】第10の発明では、棒状化粧材を進退可能に収容する先筒と、この先筒に回動可能に連結される容器本体と、棒状化粧材を挟み込んで保持する複数の爪片からなる化粧材保持部と、前記先筒内周面に形成され前記爪片が収容される複数の摺動溝とを備え、前記先筒と容器本体との回動により前記化粧材保持部を進退させて棒状化粧材の繰上および繰下をする棒状化粧材繰出容器において、前記複数の爪片を円柱部材から構成するとともに、少なくともこの円柱部材間に棒状化粧材を支持したときにはこの円柱部材の外側側面が前記摺動溝の摺動当接面に当接するようにした。
【0025】第11の発明では、前記先筒内周面の摺動溝間の領域に凹凸を形成した。
【0026】
【発明の作用および効果】第1の発明では、爪片は摺動当接部を介して摺動当接面に支持されるので、棒状化粧材を爪片間に装着する場合等に、設計で予定されている以上に外側(摺動当接面側)に広がってしまうことはない。このように、爪片の変形が有効に防止されるので、棒状化粧材は安定して保持され、安定した繰上、繰下動作を行うことができる。また、前記各爪片の先端部内周面にはテーパ面が設けられているので、棒状化粧材の挿入、装着を容易かつ適確に行うことができる。
【0027】第2の発明では、摺動当接部は爪片外周面に形成された略半球形状の突起であるので、突起と摺動当接面の当接面積は突起先端部分による必要最小限のものとでき、大きな摩擦抵抗が生じることはない。したがって、棒状化粧材のストロークは、スムーズになされる。
【0028】第3の発明では、摺動当接部は前記爪片外周面の略全長にわたって形成された凸条であるので、爪片は極めて安定して摺動当接面に支持される。また、爪片の弾性を小さくできるので、変形しにくい爪片で支持する必要がある種類の棒状化粧材に適する。
【0029】第4の発明では、凸条と摺動当接面は凸条の三角形断面の頂点部分で当接するので、当接面積は必要最小限のものとでき、大きな摩擦抵抗が生じることはない。したがって、棒状化粧材のストロークは、スムーズになされる。
【0030】第5の発明では、摺動当接部は前記摺動当接面に少なくとも前記爪片のストローク範囲にわたって形成された凸条であるので、爪片は極めて安定して摺動当接面に支持される。
【0031】第6の発明では、凸条と爪片外周面は凸条の三角形断面の頂点部分で当接するので、当接面積は必要最小限のものとでき、大きな摩擦抵抗が生じることはない。したがって、棒状化粧材のストロークは、スムーズになされる。
【0032】第7の発明では、爪片内周面にフラットな部分を形成したので、棒状化粧材を爪片内周面との間には、爪片間に棒状化粧材を装着したときに棒状化粧材は容易に変形する。したがって、棒状化粧材を容易に安定して保持できる。また、棒状化粧材と爪片内周面の接触面積を小さくできるので、棒状化粧材を傷つける可能性を小さくできる。
【0033】第8の発明では、爪片内周面に段差を設け、この段差より下部の爪片内周面で囲まれる面積を、上部の爪片内周面で囲まれる面積よりも小さくしたので、棒状化粧材は上部側から容易に装着できるとともに、下部側において確実に保持される。
【0034】第9の発明では、摺動溝の断面を、内周側の内径が短く外周側の外径が長い扇形断面となるように形成し、それにより、摺動溝内に位置する爪片は摺動溝に係合し、摺動溝からの脱出が防止されるので、爪片が内径方向に倒れたり、曲がったりすることがない。
【0035】第10の発明では、爪片は円柱部材から構成され、この円柱部材の外側側面が摺動当接面に当接するようにしたので、爪片の変形が有効に防止でき、棒状化粧材は安定して保持され、安定した繰上、繰下動作を行うことができる。また、この場合に、円柱部材の外周側面と摺動当接面との当接面積は小さなものであるので、大きな摩擦抵抗が生じることはなく、棒状化粧材のストロークが阻害されることはない。さらに、円柱部材と棒状化粧材との接触面積も小さなものであるので、棒状化粧材を傷つける可能性を小さくできる。
【0036】第11の発明では、先筒内周面の摺動溝間の領域に凹凸を形成したので、先筒内周面の摺動溝間の領域には棒状化粧材が張り付いてしまう可能性がある場所を小さくできるので、粘度の大きな棒状化粧材の場合でも、先筒内周面との間隔を狭めて、棒状化粧材を側方からサポートすることができる。
【0037】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。
【0038】図1〜図5には、本発明の第1の実施の形態の棒状化粧材繰出容器1を示す。
【0039】図示されるように、棒状化粧材繰出容器1は、先筒10,容器本体20,押棒30、螺旋体40,ストッパー部材50から構成される。
【0040】先筒10は、上部の露出部11と、下部の回動部12とから構成されている。この回動部12は、容器本体20の回動部21内に、回動可能に嵌着される。また、露出部11の上端には、棒状化粧材Aが進退可能な開口孔15が形成されている。なお、棒状化粧材Aの断面形状は、開口孔15に挿入可能な、開口孔15と略同径の円形断面となっている。
【0041】また、先筒10内周面には、4本の摺動溝13が、軸方向に延びて形成されている。これらの摺動溝13内には、押棒30の上端部に形成された爪片32が配置される。
【0042】容器本体20は有底の筒体である。この容器本体20の上端開口側は、回動部21となっている。この回動部21の内周には、環状凹部24が形成されている。この環状凹部24には、先筒10の環状凸部17が脱落不能に嵌合する。
【0043】なお、先筒10と容器本体20の間には、Oリング16が設けられる。このOリング16は、先筒10と容器本体20の回動に適度の摩擦抵抗を与えるものである。
【0044】また、容器本体20中段の内部には、螺旋体40を載置する段部22が設けられている。この段部22には、縦リブ23が設けられている。この縦リブ23は、螺旋体40外周面に形成された係合条部41に同期係合する。これにより、容器本体20と螺旋体40は、同期に回動する。
【0045】螺旋体40は筒状の部材であり、その内周面には、螺旋溝42が形成されている。この螺旋溝42は、押棒30上に配されている複数の係合突起35と螺合係合する。
【0046】押棒30は、4本の爪片32よりなる化粧材保持部31と、この化粧材保持部31から下方に延設される竿体33とからなる。
【0047】爪片32は、例えば0.5mm程度の厚みの略長方形の片であり、押棒30の上端に略90度の間隔で配置されている。これらの爪片32は、その内周面37で、棒状化粧材Aを四方から包むように保持する。なお、棒状化粧材Aとしては、通常、円形あるいは楕円形断面のものが採用される。
【0048】また、爪片32の内周面37としては、図2(A)に示すようなフラットな内周面37A、あるいは図2(B)に示すような棒状化粧材Aと略同型の円弧状の内周面37B等を選択的に採用し得る。また、図4に示すように、爪片32の上端部内周面にはテーパ面が設けられている。
【0049】図2(A)に示すように、爪片32の内周面37Aを平面とした場合には、向かい合う爪片32の間隔を棒状化粧材Aの外径よりもわずかに小さくし、棒状化粧材Aがこれらの爪片32間に押し込まれるようにする。これにより、爪片32のフラットな内周面37Aに接した棒状化粧材の外径の一部は、平板状に変形する(これは、ちょうどタイヤの着地部分が平板状に変形し、接地面積が増え、摩擦抵抗が増大するのと同様である)。
【0050】この場合、内周面37Aがフラットであるため、図2(B)に示す円弧状内周面37Bの場合に比較して、棒状化粧材Aがフラット面に沿った形に変形するのに棒状化粧材Aの変形分が逃げていく隙間があり、棒状化粧材Aは容易に変形することができる。したがって、棒状化粧材Aは爪片32により安定して保持される。
【0051】また、内周面37Aをフラットとすることで、棒状化粧材Aと内周面37Aとの当接面積は、図2(B)に示す円弧状内周面37Bの場合よりも小さくなる。
【0052】なお、後述するように、爪片32の外周面38に形成された摺動突起36が摺動当接面14に当接しているので、棒状化粧材Aを爪片32間に押し込んだとしても、爪片32が計画された間隔よりも拡がってしまうことはない。
【0053】一方、図2(B)のように、爪片32の内周面を円弧状面とした場合には、棒状化粧材Aをあまり変形させずに、保持することができる。
【0054】このように、爪片32の内周面37の形状は、棒状化粧材の特性(棒状化粧材の硬度や、粘り強さ等)に応じて選択できる。例えば、比較的柔らかく粘性がある棒状化粧材Aには、フラットな内周面37Aを採用する。この場合、棒状化粧材の特性に応じて、このフラット内周面37Aの長さを調節する。一方、比較的硬くて脆い棒状化粧材Aの場合には、円弧状内周面37Bを採用して、棒状化粧材Aの変形を最小限とする。さらに、フラット内周面37Aと円弧状内周面37Bを併用することもできる(例えば全部で4片の爪片32の2片ずつをフラット内周面37A、円弧状内周面37Bとする、あるいは、後述の第3の実施の形態の構成(図9、図10参照)を採用する等)。
【0055】各爪片32の外周面38には、それぞれ一片につき一個の摺動突起36が形成されている。この摺動突起36は、摺動当接部であり、少なくとも爪片32に棒状化粧材Aが挿入されているときには、摺動溝13の摺動当接面14に、常時当接している。なお、本実施の形態では、摺動突起36は略半球形状のものである。
【0056】竿体33の外周面には、複数の係合突起35が、等間隔に配されている。前述したように、これら複数の係合突起35は、螺旋体40内に配されている螺旋溝42と螺合係合する。これにより、係合突起35は、雄ねじの働きをする。
【0057】これらの係合突起35と爪片32は、押棒30の軸方向の同一直線上に配置されている。すなわち、係合突起35は、4片の爪片32のそれぞれの下方で、4列をなしている。これら複数の係合突起35は、螺旋体40の上方に繰り出されたとき、先筒10の摺動溝13と同期に係合する。これにより、先筒10と押棒30とは同期回転をする。
【0058】また、係合突起35の円周方向の幅は、爪片32と同等か、爪片32よりも広くなっている。これにより、押棒30のストローク中の左右から(摺動溝13の側面から)の負荷は係合突起35が受けることになるので、爪片32には左右から負荷が作用しないようになっている。
【0059】竿体33の下端には、環状凹部34が形成されている。この環状凹部34は、ストッパー部材50の内部に形成された環状凸部51と凹凸嵌合する。この嵌合により、ストッパー部材50は押棒30に嵌着する。このストッパー部材50の上端面52と後端面53により、押棒30のストロークの上限と下限が定められるようになっている。このように、押棒30のストロークの上限、下限において、上下方向の負荷はストッパー部材50が受けるので、爪片32には上下からの負荷がかからないようになっている。
【0060】つぎに作用を説明する。
【0061】容器本体20を固定して先筒10を回動させると、容器本体20に同期係合している螺旋体40と、先筒10に同期係合している押棒30は、回動する。これにより、螺旋体40の螺旋溝42と押棒30外周の係合突起35との螺合による繰出機構の作用で、押棒30が上方に進出する。この場合、螺旋体40から上方に抜け出た係合突起35は、先筒内に形成されている摺動溝13に係合して、押棒30と先筒10の回転止めの役割を果たす。この押棒30の進出に伴い、棒状化粧材保持部31に保持された棒状化粧材Aは、先筒10上端の開口孔15から繰り出される。
【0062】このような容器本体20と先筒10との回動を続けると、やがて、押棒30後端の環状凹部34に嵌着されたストッパー部材50の上端面52が、螺旋体40の下端面43と当接する。これにより、押棒30のストロークは、図3に示されている上昇限の状態となる。
【0063】また、先筒10と容器本体20を逆方向に回道させると、押棒30は下方に後退する。そして、ストッパー部材50の後端面53と容器本体20の底面が当接したところで、この押棒30のストロークは、後退限に達する。
【0064】このような押棒30の繰上、繰下ストロークにおいて、爪片外周面38に形成された摺動突起36は、常時、摺動当接面14に当接している。このため、爪片32は、弾性を持ったものであったとしても、外側に開きようがなく、その内周面37で棒状化粧材Aを確実に保持することができる。したがって、棒状化粧材Aの抜け落ちなどが起こらず、安定した繰上、繰下動作を行うことができる。
【0065】また、この場合、摺動突起36と摺動当接面14との当接面積は、突起先端部分による必要最小限のものであるので、押棒30のストロークを阻害するような摩擦抵抗は生じない。よって、押棒30の繰上、繰下動作は、スムーズになされる。
【0066】つぎに、本実施の形態の棒状化粧材繰出容器1の組み立て方法について説明する。
【0067】組み立てにおいては、まず、押棒30を下端側(竿体33の環状凹部34側)から螺旋体40内に挿入する。この挿入に伴い、押棒30外周の複数の係合突起35は、螺旋体40の螺旋溝42に螺合係合していく。つぎに、ストッパー部材50の環状凸部51を竿体33の環状凹部34に嵌合させることにより、ストッパー部材50を押棒30下部に装着する。これにより、押棒30、螺旋体40、ストッパー部材50からなるユニットを構成する。
【0068】続いて、このユニットの押棒30下部側を、容器本体20内に載置する。この場合、螺旋体40外周面の係合条部41は、前述の容器本体20内部に形成されている縦リブ23に同期係合する。
【0069】このように押棒30等のユニットを容器本体20に載置したならば、これに先筒10を組み付ける。この場合、先筒10内周面に形成された摺動溝13に、押棒30上端の爪片32が係合するように、先筒10を組み付けていく。そして、容器本体回動部21に設けられた環状凹部24に、先筒回動部12の環状凸部17を嵌着させ、組み立てが完了する。
【0070】図6〜図8には、本発明の第2の実施の形態を示す。
【0071】図示されるように、本実施の形態においては、棒状化粧材Aの保持部は、3片の爪片32で構成される。これらの爪片32は、中心角が略120度の等角度で配置されている。このように、爪片32の片数は、棒状化粧材の硬度、太さ等に応じて、変更することができる。また、図8に示すように、爪片32の上端部内周面にはテーパ面が設けられている。
【0072】また、先筒10の内周面18の摺動溝13の間の領域には、多数の縦溝からなる凹凸19が形成されている。この凹凸19により、棒状化粧材Aが先筒10の内周面18に少ない接触面積で接触するようにできる。したがって、柔らかな(粘度の高い)棒状化粧材Aを先筒内周面18に接触させたとしても、棒状化粧材Aと先筒内周面18が粘着してしまうことはない。よって、粘度の高い棒状化粧材Aに対しても、先筒内周面18に接触させて、安定したサポートを与えることができる。
【0073】なお、上記凹凸19は、摺動溝13と同時に(一体成型で)製作するようにしてもよい。また、本実施の形態では凹凸19を縦溝で構成したが、本発明はこのような形態に限られるものではなく、不規則な形状からなる凹凸19を先筒内周面18の適当な部位に設けるようにしてもよい。
【0074】図9、図10には、本発明の第3の実施の形態を示す。
【0075】この実施の形態は、上記第1〜第2の実施形態と比較して、爪片32の形態が異なっている。
【0076】詳しく説明すると、本実施の形態では、図9(A)に示すように、爪片32の内周面は上部37aと下部37cに分かれており、これら上部37aと下部37cの間には段差37bが設けられている。この段差37bは、上部37aから下部37cにかけて傾斜するものである。下部37cの内径は、この段差37b分だけ、上部37aの内径よりも小さくなっている。
【0077】この図9(A)の爪片32に、下部37cの内径よりもわずかに大きい外径の棒状化粧材Aを挿入し、爪片下部37c側まで押し込む。これにより、図9(B)に示す状態となる。
【0078】このとき、弾性のある爪片32の下部37cは、棒状化粧材Aにより圧迫され、押し広げられる。しかしながら、爪片32外周面の摺動突起36は先筒10の摺動当接面14に当接しているので、爪片32は計画された以上に広がってしまうことはない。したがって、爪片32は、主として下部37cにおいて、棒状化粧材Aを適切な圧力で保持することができる。
【0079】また、このような棒状化粧材Aの装着においては、棒状化粧材Aは、径の大きな上部37aに挿入された後、段部37bを通って、下部37cに押し込まれる。したがって、下部37cへの棒状化粧材Aの押し込みは、スムーズに行うことができる。
【0080】また、棒状化粧材Aの径は、寸法の設計公差を見込んだうえで、上部37aの内径よりも小さく、下部37cの内径よりも大きくなるようにしておくとよい。これにより、爪片32は、寸法に設計公差のある棒状化粧材Aを、適切な圧力で保持することができる。
【0081】爪片32の下部37cは、図10(B)(図9(B)のD-D断面図)に示すように、フラットな面となっている。これにより、下部37cに押し込まれた棒状化粧材Aは、容易に平板状に変形し、安定して保持される。
【0082】また、爪片32の上部37aは、図10(A)(図9(B)C-C断面図)に示すように、棒状化粧材Aの外周面と略同型の円弧の断面形状をしている。なお、この上部37aは、下部37c内周面と同様にフラットな面としてもよい。
【0083】また、爪片32の段部37bは、棒状化粧材Aの硬度等の性質に応じて位置を変化させることが可能である。すなわち、内周面上部37aの部分を長くしたり、短くしたりすることにより、棒状化粧材Aを保持する圧力を微妙に変化させることができる。
【0084】図11、図12には、本発明の第4の実施の形態を示す。
【0085】本実施の形態においては、爪片32の外周には、摺動当接部として、上記第1〜第3の実施の形態における摺動突起36の代わりに、摺動凸条(リブ)39が形成されている。
【0086】この摺動凸条39は、爪片外周部38の全長にわたって軸方向に形成されている。したがって、各爪片32は摺動凸条39を介して摺動当接面14に高い安定性をもって支持される。また、図11に示すように、爪片32の上端部内周面にはテーパ面が設けられている。
【0087】また、摺動凸条39は、断面三角形状のものであり、この三角形の頂点で摺動当接面14と当接する。したがって、摺動凸条39と摺動当接面14の当接面積は必要最小限であるので、摺動凸条39と摺動当接面14間には、押棒30のストロークを阻害するような摩擦抵抗発生の可能性を最小とすることができる。言い換えれば、摺動凸状39を、特に断面三角形状とすることにより、摺動凸状39と摺動当接面14間の摩擦抵抗を最小とする形態が得られる。
【0088】また、摺動凸条39の存在により、爪片32の弾性は全長にわたって小さくなる。したがって、本実施の形態は、棒状化粧材の性質により爪片が非弾性のものであるべき場合に適している。(なお、上記第1〜第3の実施の形態は、本実施の形態とは異なり、いずれも、厚みが少なく弾性が大きな爪片32を用いるものである。)図13、図14には、本発明の第5の実施の形態を示す。
【0089】この実施の形態では、爪片32を円柱状としている。これらの爪片32は、略90度の等角度(等間隔)で配置され、棒状化粧材Aを保持している。したがって、4本の円柱が小面積で棒状化粧材Aを保持するので、特に粘性が高い棒状化粧材の保持に適し、棒状化粧材を安定して保持することができる。
【0090】また、本実施の形態では、各爪片32の棒状化粧材Aと反対側の部分が、先筒10の摺動当接面14と当接するようになっている。したがって、爪片32は変形せず、非弾性的に棒状化粧材Aを保持することができる。また、円柱状の爪片32と摺動当接面14の当接は小面積でなされるので、大きな摩擦抵抗発生の可能性を小さくでき、押棒30のストロークが阻害されることはない。
【0091】図15〜図17には、本発明の第6の実施の形態を示す。
【0092】この実施の形態では、爪片32と摺動溝13は、先筒10内径側に脱出不能に係合するようになっている。
【0093】詳しく説明すると、先筒10の摺動溝13は断面扇形に形成され、内径側の内周線が短く、外径側の外周線が長くなっている。
【0094】また、爪片32は、この摺動溝13にちょうど収められるように、相似の扇形断面となっている。この爪片32の外周面38には、摺動当接部として摺動突起36が配され、摺動当接面14に当接している。さらに、爪片32の上端には、内径方向に向かうテーパ面32aが設けられるとともに、棒状化粧材Aを保持する内周面37は、フラットに形成されている。
【0095】このように、爪片32と摺動溝13を脱出不能に係合させることにより、爪片32が内径方向へ倒れたり、曲がったりすることを防止できる。また、組み立ての際には、爪片32を摺動溝13の端部から係合させれば、爪片32は確実に摺動溝13内に装着される。
【0096】また、爪片32の上端部にテーパ面32aが設けられているので、棒状化粧材Aを爪片32内に挿入するとき、棒状化粧材Aはスムーズに爪片32の中央に導かれる。したがって、棒状化粧材Aの装着を、容易かつ的確なものとできる。
【0097】なお、摺動溝13と爪片32の係合は、本実施の形態のような扇形断面によるものとは限られない。爪片32が内径側に抜け出さないように、摺動溝13と爪片32を係合させるものであればよい。
【0098】図18、図19には、本発明の第7の実施の形態を示す。
【0099】本実施の形態では、上記第1〜第6の実施の形態と異なり、摺動当接部は、爪片外周面38に設けられず、摺動当接面14上に設けられる。すなわち、摺動当接面14上には、摺動当接部として、摺動凸条51が設けられる。この摺動凸条51は、少なくとも爪片32の移動範囲にわたって、軸方向に延びている。また、この摺動凸条51は、断面三角形状のものであり、この三角形の頂点において爪片32の外周面38と当接する。
【0100】このように、摺動当接部を摺道当接面14側に設けることによっても、上記第1〜第6の実施の形態(特に第4の実施の形態)と同様の作用、効果が得られる。すなわち、各爪片32は、摺動凸条51を介して摺動当接面14に支持されるので、必要以上に押し広げられてしまう等の変形が防止される。また、摺動凸条51と外周面38の当接は三角形の頂点部分でなされ、接触面積は小面積であるので、大きな摩擦抵抗が生じる可能性を最も小さくすることができ、押棒30(爪片32)のストロークが阻害されることはない。
【0101】本発明の実施の形態は以上のようなものであるが、上記各実施の形態は本発明の実施の形態の一例を示すもので、本発明は、当然、上記実施の形態の内容のみに限定されるものではない。
【0102】例えば、爪片32の形状は、上記実施の形態に記載されたものに限られず、棒状化粧材Aを保持しうるものであれば任意の形態を採り得る。
【0103】また、本発明が適用される棒状化粧材繰出容器は、先筒が容器本体に常時組み付けられたタイプ(いわゆるディスポーサブル型棒状化粧材繰出容器)に限られず、先筒部分が着脱自在のカートリッジとなったタイプ(いわゆるカートリッジ式棒状化粧材繰出容器)をも含むものである。
【0104】また、摺動当接部の形状も、上記実施の形態における摺動突起36、摺動凸条39、摺動凸条51に限られるものではない。
【0105】また、摺動当接部(摺動突起36、摺動凸条39、摺動凸条51)は、少なくとも爪片32に棒状化粧材Aが保持された場合に、摺動当接面14または爪片外周面38に当接するものであればよい。すなわち、爪片32に棒状化粧材Aが未挿入のときには、摺動当接部と摺動当接面14または爪片外周面38との間に間隔があっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態における棒状化粧材繰出容器を示す縦断面図である。
【図2】図1のA-A断面図である。(A)は爪片内周面がフラットである場合、(B)は爪片内周面が円弧状である場合を、それぞれ示す。
【図3】繰出上昇限における棒状化粧材繰出容器を示す縦断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における押棒を示す斜視図である。
【図5】同じく押棒を示す平面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における棒状化粧材繰出容器を示す縦断面図である。
【図7】図6のB-B断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態における押棒を示す斜視図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態における棒状化粧材繰出容器を示す一部断面図である。(A)は棒状化粧材が未挿入の場合を示し、(B)は棒状化粧材が挿入された場合を示す。
【図10】(A)は図9のC-C断面であり、(B)は図9のD-D断面図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態における押棒を示す斜視図である。
【図12】同じく押棒を示す平面図である。
【図13】本発明の第5の実施の形態における押棒を示す斜視図である。
【図14】同じく押棒を示す平面図である。
【図15】本発明の第6の実施の形態における棒状化粧材繰出容器を示す一部断面図である。
【図16】図15のG-G断面図である。
【図17】本発明の第6の実施の形態における押棒を示す斜視図である。
【図18】本発明の第7の実施の形態における棒状化粧材繰出容器を示す一部断面図である。
【図19】図18のF-F断面図である。
【図20】従来の棒状化粧材繰出容器を示す一部断面である。
【図21】従来の棒状化粧材繰出容器を示す断面図である。
【図22】図21のE-E断面図である。
【図23】従来の芯チャックに棒状化粧材を挿入した状態を説明するための説明図である。
【図24】従来の棒状化粧材繰出容器を示す断面図である。
【符号の説明】
A 棒状化粧材
1 棒状化粧材繰出容器
10 先筒
13 摺動溝
14 摺動当機面
18 先筒内周面
19 凹凸
20 容器本体
30 押棒
31 化粧材保持部
32 爪片
36 摺動突起
37 爪片内周面
37a 爪片内周面上部
37b 段差
37c 爪片内周面下部
38 爪片外周面
39 摺動凸条
40 螺旋体
51 摺動凸条
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2004-10-05 
出願番号 特願平11-296808
審決分類 P 1 122・ 121- ZA (A45D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 種子 浩明  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 安池 一貴
佐々木 芳枝
登録日 2000-06-02 
登録番号 特許第3073989号(P3073989)
発明の名称 棒状化粧材繰出容器  
代理人 鈴木 秀雄  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 佐々木 定雄  
代理人 鈴木 秀雄  

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