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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する B21D
審判 訂正 2項進歩性 訂正する B21D
管理番号 1143685
審判番号 訂正2006-39113  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-11-01 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2006-07-07 
確定日 2006-09-06 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2139927号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2139927号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 第1.手続きの経緯
本件訂正審判事件に関する手続の経緯は、以下のとおりである。
平成 5年 4月21日 本件特許出願(特願平5-93975号)
平成 7年 4月26日 出願公告(特公平7-36934号公報)
平成 7年 7月28日 異議申立
平成 8年 4月18日 手続補正書の提出
平成10年 2月24日 異議決定
平成11年 1月22日 特許権の設定登録(特許第2139927号)
平成14年10月 3日 判定請求(判定2002-60086号、その後取下げ)
平成15年 2月28日 無効審判請求(無効2003-35073号、請求を却下するとの審決が確定)
平成15年 6月 2日 無効審判請求(無効2003-35221号、その後取下げ)
平成15年 7月25日 無効審判請求(無効2003-35311号、請求項1に係る特許を無効とするとの審決が確定)
平成17年 1月21日 第1の訂正審判請求(訂正2005-39011号、その後取下げ)
平成17年 4月11日 第2の訂正審判請求(訂正2005-39061号、その後取下げ)
平成18年 4月18日 第3の訂正審判請求(訂正2006-39057号、その後取下げ)
平成18年 6月26日 第4の訂正審判請求(訂正2006-39109号、その後取下げ)
平成18年 7月 7日 本件訂正審判請求
平成18年 7月31日 手続補正書の提出
平成18年 8月15日 手続補正書の提出

第2.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第2139927号の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものである。

請求人の求める訂正の内容は、以下のとおりである。
1.訂正事項1
本件特許の願書に添付した明細書の訂正前の請求項1(以下、「旧請求項1」という。請求項2以降についても同様。)ないし9を、請求項1ないし13と訂正する。

訂正後の特許請求の範囲は、以下のとおりである。
「【請求項1】
長尺薄板状のナイフの幾何学的な曲げ加工形状を入力する曲げ加工形状入力手段と,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの曲げ加工データを算出する演算手段とを具備するナイフの加工装置において,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを入力する特性データ入力手段と,上記ナイフの曲げ加工に関する実測値のデータベースを記憶する実測値記憶部と,上記実測値のデータベースに基づいて上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを修正する特性データ修正手段とを具備し,上記演算手段が上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ修正手段により修正された特性データとに基づいてナイフの曲げ加工データを算出することを特徴とするナイフの加工装置。
【請求項2】
上記曲げ加工に関する実測値が加工ダイスによる押し量を種々変化させた時の曲げ角度データである請求項1記載のナイフの加工装置。
【請求項3】
上記曲げ加工に関する実測値が加工ダイスによる押し量を一定としてナイフの送り出し量を種々変化させた時の曲げ角度データである請求項1記載のナイフの加工装置。
【請求項4】
長尺薄板状のナイフを一対の固定ダイスで保持し,上記固定ダイスに対して離間して移動する移動ダイスで上記ナイフの側面を押すことで上記ナイフに塑性変形を生じさせて上記ナイフに曲げを与える都度,上記ナイフを小さい送り出し量で送り出した後上記移動ダイスで上記ナイフの側面を押して上記ナイフに塑性変形を生じさせるというナイフの屈曲による上記曲げ処理を繰り返して,上記複数の曲げ処理によって1つの円弧形状を成型することにより上記ナイフを所望の曲げ形状に加工するナイフの加工装置において,
ナイフの幾何学的な多角形からなる曲げ加工形状を入力する曲げ加工形状入力手段と,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの上記送り出し量,ダイスの移動量,及び曲げ処理における曲げ回数からなる曲げ加工データを算出する演算手段と,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを入力する特性データ入力手段を具備し,
上記演算手段が上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ入力手段により入力された上記特性データとに基づいて,ナイフの全長に係る切断加工データ,前記曲げ加工データ及びナイフの前記曲げ処理における曲げ回数を演算し,更に,上記切断加工データを上記ナイフの曲げ加工形状における上記屈曲部の中心軸の伸びを考慮し,且つ,該切断加工データの上記多角形の各辺と該各辺に内接又は外接する円弧との誤差が許容範囲内となるようなルールの下にて上記ナイフの幾何学的な多角形からなる曲げ加工形状を変化させて動作回数がちょうど整数となる曲げ加工形状を決定し,この決定された曲げ加工形状を曲げ加工する上記曲げ加工データを演算するものであるナイフの加工装置。
【請求項5】
加工するナイフの全長を、上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記ナイフの曲げ加工形状における屈曲部の中心軸の伸びを考慮して算出するようにした請求項1記載のナイフの加工装置。
【請求項6】
長尺薄板状のナイフの幾何学的な曲げ加工形状を入力する曲げ加工形状入力手段と,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの曲げ加工データを算出する演算手段とを具備するナイフの加工装置において,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを入力する特性データ入力手段を具備し,上記演算手段が上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ入力手段により入力された上記特性データとに基づいてナイフの曲げ加工データを算出するナイフの加工装置であって,上記ナイフの全長を,上記ナイフの曲げ加工形状における屈曲部の中心軸の伸びを考慮して算出するナイフの加工装置において,上記ナイフの全長の算出時に,上記曲げ加工部分の曲げ方向にかかる分力による伸び量を考慮するナイフの加工装置。
【請求項7】
上記ナイフの全長の算出時に,上記曲げ加工部分の曲げ方向にかかる分力による伸び量を考慮する請求項5記載のナイフの加工装置。
【請求項8】
長尺薄板状のナイフの幾何学的な曲げ加工形状を入力する曲げ加工形状入力手段と,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの曲げ加工データを算出する演算手段とを具備するナイフの加工装置において,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを入力する特性データ入力手段を具備し,上記演算手段が上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ入力手段により入力された上記特性データとに基づいてナイフの曲げ加工データを算出するナイフの加工装置であって,上記ナイフの幾何学的な形状に付随して,該幾何学的な形状の許容範囲が前記曲げ加工形状入力手段により入力されるナイフの加工装置。
【請求項9】
上記ナイフの幾何学的な形状に付随して,該幾何学的な形状の許容範囲が前記曲げ加工形状入力手段により入力される請求項1記載のナイフの加工装置。
【請求項10】
長尺薄板状のナイフの幾何学的な曲げ加工形状を入力する曲げ加工形状入力手段と,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの曲げ加工データを算出する演算手段とを具備するナイフの加工装置において,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを入力する特性データ入力手段を具備し,上記演算手段が上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ入力手段により入力された上記特性データとに基づいてナイフの曲げ加工データを算出するナイフの加工装置であって,上記ナイフの曲げ動作及び/又は送り出し動作を加えることにより上記ナイフが複数の屈曲部からなる曲げ加工形状に加工される時の,上記曲げ加工部分における各曲げ加工形状角度の合計である全曲げ角度内で,上記曲げ動作回数が整数回となるように加工ダイスによる押し量及び/又はナイフの送り出し量を決定するナイフの加工装置。
【請求項11】
上記ナイフの曲げ動作及び/又は送り出し動作を加えることにより上記ナイフが複数の屈曲部からなる曲げ加工形状に加工される時の,上記曲げ加工部分における各曲げ加工形状角度の合計である全曲げ角度内で,上記曲げ動作回数が整数回となるように加工ダイスによる押し量及び/又はナイフの送り出し量を決定する請求項1〜9記載のナイフの加工装置。
【請求項12】
長尺薄板状のナイフの幾何学的な曲げ加工形状を入力する曲げ加工形状入力手段と,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの曲げ加工データを算出する演算手段とを具備するナイフの加工装置において,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを入力する特性データ入力手段を具備し,上記演算手段が上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ入力手段により入力された上記特性データとに基づいてナイフの曲げ加工データを算出するナイフの加工装置であって,上記曲げ加工形状入力手段により入力されるナイフの幾何学的曲げ加工形状がナイフ保持台を加工する時に用いられるCADデータにより表わされる形状であるナイフの加工装置。
【請求項13】上記曲げ加工形状入力手段により入力されるナイフの幾何学的曲げ加工形状がナイフ保持台を加工する時に用いられるCADデータにより表わされる形状である請求項1,4若しくは5記載のナイフの加工装置。」

2.訂正事項2
訂正事項1の特許請求の範囲の訂正に伴い、明細書の段落【0005】、【0006】、【0007】を、
『【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する為に,本発明が採用する主たる手段は,その要旨とするところが,長尺薄板状のナイフの幾何学的な曲げ加工形状を入力する曲げ加工形状入力手段と,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの曲げ加工データを算出する演算手段とを具備するナイフの加工装置において,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを入力する特性データ入力手段と,上記ナイフの曲げ加工に関する実測値のデータベースを記憶する実測値記憶部と,上記実測値のデータベースに基づいて上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを修正する特性データ修正手段とを具備し,上記演算手段が上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ修正手段により修正された特性データとに基づいてナイフの曲げ加工データを算出することを特徴とするナイフの加工装置である。更には,上記曲げ加工に関する実測値が加工ダイスによる押し量を種々変化させた時の曲げ角度データであるナイフの加工装置である。更には,上記曲げ加工に関する実測値が加工ダイスによる押し量を一定としてナイフの送り出し量を種々変化させた時の曲げ角度データであるナイフの加工装置である。
【0006】
また,長尺薄板状のナイフを一対の固定ダイスで保持し、上記固定ダイスに対して離間して移動する移動ダイスで上記ナイフの側面を押すことで上記ナイフに塑性変形を生じさせて上記ナイフに曲げを与える都度,上記ナイフを小さい送り出し量で送り出した後上記移動ダイスで上記ナイフの側面を押して上記ナイフに塑性変形を生じさせるというナイフの屈曲による上記曲げ処理を繰り返して,上記複数の曲げ処理によって1つの円弧形状を成型することにより上記ナイフを所望の曲げ形状に加工するナイフの加工装置において,
ナイフの幾何学的な多角形からなる曲げ加工形状を入力する曲げ加工形状入力手段と,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの上記送り出し量,ダイスの移動量,及び曲げ処理における曲げ回数からなる曲げ加工データを算出する演算手段と,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを入力する特性データ入力手段を具備し,
上記演算手段が上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ入力手段により入力された上記特性データとに基づいて,ナイフの全長に係る切断加工データ,前記曲げ加工データ及びナイフの前記曲げ処理における曲げ回数を演算し,更に,上記切断加工データを上記ナイフの曲げ加工形状における上記屈曲部の中心軸の伸びを考慮し,且つ,該切断加工データの上記多角形の各辺と該各辺に内接又は外接する円弧との誤差が許容範囲内となるようなルールの下にて上記ナイフの幾何学的な多角形からなる曲げ加工形状を変化させて動作回数がちょうど整数となる曲げ加工形状を決定し,この決定された曲げ加工形状を曲げ加工する上記曲げ加工データを演算するものであるナイフの加工装置である。更には,上記ナイフの全長の算出時に,上記曲げ加工部分の曲げ方向にかかる分力による伸び量を考慮するナイフの加工装置である。更には,上記ナイフの幾何学的な形状に付随して,該幾何学的な形状の許容範囲が前記曲げ加工形状入力手段により入力されるナイフの加工装置である。更には,上記ナイフの曲げ動作及び/又は送り出し動作を加えることにより上記ナイフが複数の屈曲部からなる曲げ加工形状に加工される時の,上記曲げ加工部分における各曲げ加工形状角度の合計である全曲げ角度内で,上記曲げ動作回数が整数回となるように加工ダイスによる押し量及び/又はナイフの送り出し量を決定するナイフの加工装置である。更には,上記曲げ加工形状入力手段により入力されるナイフの幾何学的曲げ加工形状がナイフ保持台を加工する時に用いられるCADデータにより表わされる形状であるナイフの加工装置である。尚,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データには,材料特性,曲げ加工を行う機械部の特性等が含まれる。
【0007】
【作用】
本発明によれば,長尺薄板状のナイフの幾何学的な曲げ加工形状が曲げ加工形状入力手段により入力され,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの曲げ加工データが演算手段により算出されるに際し,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データが特性データ入力手段により入力される。そして,上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ入力手段により入力された上記特性データとに基づいてナイフの曲げ加工データが上記演算手段により算出される。また上記ナイフの曲げ加工に関する実測値のデータベースが実測値記憶部に記憶される。上記実測値のデータベースに基づいて上記ナイフの曲げ加工に関する特性データが特性データ修正手段により修正される。そして,上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ修正手段により,修正された特性データとに基づいてナイフの曲げ加工データが上記演算手段により算出される。このように,ナイフの曲げ加工に関する特性データを実測値ベースに修正することにより,算出されるナイフの曲げ加工データの精度を向上させることができる。更に,上記曲げ加工に関する実測値が加工ダイスによる押し量を種々変化させた時の曲げ角度データであるとされる。更に,上記曲げ加工に関する実測値が加工ダイスによる押し量を一定としてナイフの送り出し量を種々変化させた時の曲げ角度データであるとされる。このような種々の曲げ加工に関する実測値を上記特性データの修正に用いることにより,算出されるナイフの曲げ加工データの精度を一層向上させることができる。』と訂正する。

3.訂正事項の整理
上記訂正事項1を詳述すると、以下のとおりである。
(1)訂正事項1-1
旧請求項1を削除する。
(2)訂正事項1-2
旧請求項2を請求項1とする。
(3)訂正事項1-3
旧請求項3の内、旧請求項1を引用していた部分を削除する。
(4)訂正事項1-4
旧請求項3の内、旧請求項2を引用していた部分を請求項2とする。
(5)訂正事項1-5
旧請求項4の内、旧請求項1を引用していた部分を削除する。
(6)訂正事項1-6
旧請求項4の内、旧請求項2を引用していた部分を請求項3とする。
(7)訂正事項1-7
旧請求項5の内、旧請求項1を引用していた部分を請求項4とするとともに、構成要件を付加するものである。
(8)訂正事項1-8
旧請求項5の内、旧請求項2を引用していた部分を請求項5とする。
(9)訂正事項1-9
旧請求項6の内、旧請求項5が旧請求項1を引用していた部分を請求項6とする。
(10)訂正事項1-10
旧請求項6の内、旧請求項5が旧請求項2を引用していた部分を請求項7とする。
(11)訂正事項1-11
旧請求項7の内、旧請求項1を引用していた部分を請求項8とする。
(12)訂正事項1-12
旧請求項7の内、旧請求項2を引用していた部分を請求項9とする。
(13)訂正事項1-13
旧請求項8の内、旧請求項1を引用していた部分を請求項10とする。
(14)訂正事項1-14
旧請求項8の内、旧請求項2ないし7を引用していた部分を請求項11とする。
(15)訂正事項1-15
旧請求項9の内、旧請求項1を引用していた部分を請求項12とする。
(16)訂正事項1-16
旧請求項9の内、旧請求項2、5を引用していた部分を請求項13とする。

第3.判断
1.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の減縮・変更の有無
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1-1は、請求項の削除であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項1-2は、請求項の番号の誤りを訂正するものであるから、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項1-3は、択一的記載の要素の削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項1-4は、択一的記載の要素の削除、及び、請求項の番号の誤りを訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正、及び、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項1-5は、択一的記載の要素の削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項1-6は、択一的記載の要素の削除、及び、請求項の番号の誤りを訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正、及び、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項1-7については、後述する。
上記訂正事項1-8は、択一的記載の要素の削除であり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項1-9は、旧請求項1の削除に伴い、引用形式の記載を独立形式に記載に改めたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項1-10は、択一的記載の要素の削除、及び、請求項の番号の誤りを訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正、及び、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項1-11は、旧請求項1の削除に伴い、引用形式の記載を独立形式に記載に改めたもの、及び、請求項の番号の誤りを訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正、及び、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項1-12は、択一的記載の要素の削除、及び、請求項の番号の誤りを訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正、及び、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項1-13は、旧請求項1の削除に伴い、引用形式の記載を独立形式に記載に改めたもの、及び、請求項の番号の誤りを訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正、及び、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項1-14は、択一的記載の要素の削除、及び、請求項の番号の誤りを訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正、及び、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項1-15は、旧請求項1の削除に伴い、引用形式の記載を独立形式に記載に改めたもの、及び、請求項の番号の誤りを訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正、及び、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。
上記訂正事項1-16は、択一的記載の要素の削除、及び、請求項の番号の誤りを訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正、及び、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。

(2)訂正事項1-7について
上記訂正事項1-7は、旧請求項5に係る発明の内の旧請求項1を引用する発明である「ナイフの加工装置」を、「長尺薄板状のナイフを一対の固定ダイスで保持し,上記固定ダイスに対して離間して移動する移動ダイスで上記ナイフの側面を押すことで上記ナイフに塑性変形を生じさせて上記ナイフに曲げを与える都度,上記ナイフを小さい送り出し量で送り出した後上記移動ダイスで上記ナイフの側面を押して上記ナイフに塑性変形を生じさせるというナイフの屈曲による上記曲げ処理を繰り返して,上記複数の曲げ処理によって1つの円弧形状を成型することにより上記ナイフを所望の曲げ形状に加工する」加工装置であって、「ナイフの幾何学的な多角形からなる曲げ加工形状を入力する曲げ加工形状入力手段と,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの上記送り出し量,ダイスの移動量,及び曲げ処理における曲げ回数からなる曲げ加工データを算出する演算手段と,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを入力する特性データ入力手段を具備し,
上記演算手段が上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ入力手段により入力された上記特性データとに基づいて,ナイフの全長に係る切断加工データ,前記曲げ加工データ及びナイフの前記曲げ処理における曲げ回数を演算し,更に,上記切断加工データを上記ナイフの曲げ加工形状における上記屈曲部の中心軸の伸びを考慮し,且つ,該切断加工データの上記多角形の各辺と該各辺に内接又は外接する円弧との誤差が許容範囲内となるようなルールの下にて上記ナイフの幾何学的な多角形からなる曲げ加工形状を変化させて動作回数がちょうど整数となる曲げ加工形状を決定し,この決定された曲げ加工形状を曲げ加工する上記曲げ加工データを演算」するものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。
そして、請求項の番号の誤りを訂正した点は、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当する。

(3)訂正事項2について
上記訂正事項2は、訂正事項1の特許請求の範囲の訂正に伴い、発明の詳細な説明欄の記載との整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。

(4)他の要件
そして、上記の訂正事項1、2は、いずれも、新規事項の追加に該当せず、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2.独立特許要件
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1は、特許請求の範囲全体の減縮を目的とするものを含んでいるので、訂正後における特許請求の範囲に記載された各発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができる発明であるか(いわゆる独立特許要件を備えるか)について検討する。

(2)本件発明
上記訂正事項による訂正後の本件発明は、前記第2.の1.のとおりである。

(3)特許請求の範囲の請求項4に係る発明(以下、「本件発明4」という。以下、同様。)について
関連する訂正審判(訂正2005-39061)において引用された以下の刊行物及び慣用手段、
刊行物1;欧州特許出願公開第0118987号公報、
刊行物2;特開平2-20619号公報、
刊行物3;特開昭59-47029号、
刊行物4;特開平2-20620号公報、
刊行物5;特開平4-279219号公報、
刊行物6;特開昭62-72434号公報、
刊行物7;特公平1-12568号公報、
刊行物8;特開平1-309728号公報、
慣用手段;「プレス加工便覧」社団法人日本塑性加工学会編、
あるいは、関連する本件特許出願の異議申立事件において提出された、以下の甲各号証及び別添資料、
甲第1号証;株式会社加藤刃木型製作所へのBBS納入の証明書、
別添資料;「写真1〜7」,「納品書(控)」及び「BBS-101&操作マニュアル(Ver1.1)、
甲第2号証;株式会社レザック発行の「マスターカッター」のカタログ、
甲第3号証;株式会社レザック発行の「マスターベンダー」のカタログ、
甲第5号証;特開昭63-309328号公報、
関連する、無効審判事件(審判2003-35311)において提出された、以下の甲各号証、
甲第1号証の1:東京紙器新聞、平成2年7月21日発行、
甲第1号証の2;全國紙器工業新聞、平成2年8月5日発行、
甲第2号証;平成製作所への証明願、
甲第3号証;平成製作所への証明願、
甲第4号証;平成製作所への証明願、
甲第5号証;Cadyのソースリスト、
甲第6号証;被請求人の訴状、
甲第7号証;BBS-101の宣伝用パンフレット、
甲第8号証;BBS-101&Cady操作マニュアル(Ver1.1)
甲第9号証の1;有限会社スリーヴイへの証明願、
甲第9号証の2;有限会社和光抜型への証明願、
甲第9号証の3;有限会社アドバンス堀場への証明願、
甲第9号証の4;有限会社坂本製作所への証明願、
甲第9号証の5;大創株式会社への証明願、
甲第9号証の6;株式会社小池製作所への証明願、
甲第9号証の7;有限会社浅野製作所への証明願、
甲第9号証の8;有限会社丸正への証明願、
甲第9号証の9;有限会社成和抜型製作所への証明願、
甲第9号証の10;有限会社タイセイへの証明願、
甲第9号証の11;有限会社精工抜型への証明願、
甲第9号証の12;大栄製作所への証明願、
甲第10号証;株式会社谷山製作所の谷山政雄に対する聴取報告書、
甲第11号証;BBS-101の試作機のチラシ、
甲第12号証;欧州特許出願公開第0118987号公報(刊行物1)、
甲第13号証;英国特許出願公開第2116086号公報、
甲第14号証;CARTON・BOX、平成5年2月号、
甲第15号証;CARTON・BOX、平成5年3月号、
甲第16号証;CARTON・BOX、平成4年8月号、
甲第17号証;CARTON・BOX、平成5年1月号、
甲第18号証;段ボール事報、平成5年2月10日発行、
甲第19号証;日本紙器新聞、平成5年1月21日発行、
甲第20号証;株式会社たから抜型工業への証明願、
甲第21号証;株式会社たから抜型工業の証明書、
甲第22号証;株式会社たから抜型工業の石瀬文陽の陳述書、
甲第23号証;株式会社たから抜型工業の大野光行の陳述書、
関連する、権利侵害訴訟事件(大阪地裁13ワ9403、大阪高裁16ネ3586)において提出された、以下の乙各号証、
乙第19号証;月刊「CARTONBOX (カートン・ボックス)」1992年(平成4年)8月号、
乙第25号証;欧州特許出願公開第0118987号公報(刊行物1)、
乙第26号証;英国特許出願公開第2116086号公報、
乙第32号証;特開昭59-47029号公報(刊行物3)、
乙第33号証;塑性加工研究会・プレス便覧編集委員会編「プレス便覧」、
乙第34号証;社団法人日本塑性加工学会編「プレス加工便覧」(慣用手段)、
乙第35号証;特開平2-20620号公報(刊行物4)、
乙第36号証;特開平4-279219号公報(刊行物5)、
乙第37号証;特開昭62-72434号公報(刊行物6)、
乙第38号証;特公平1-12568号公報(刊行物7)、
乙第39号証;特開平1-309728号公報(刊行物8)、
のいずれにも、本件発明4の、
『演算手段が・・・切断加工データをナイフの曲げ加工形状における屈曲部の中心軸の伸びを考慮し,且つ,該切断加工データの多角形の各辺と該各辺に内接又は外接する円弧との誤差が許容範囲内となるようなルールの下にて上記ナイフの幾何学的な多角形からなる曲げ加工形状を変化させて動作回数がちょうど整数となる曲げ加工形状を決定し,この決定された曲げ加工形状を曲げ加工する上記曲げ加工データを演算する』点については、記載も示唆もされていない。
そして、本件発明4はこの構成に基づき、明細書の発明の効果の欄に記載された作用効果を奏するものであるから、本件発明4は、上記各刊行物、慣用手段及び各号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(4)他の本件発明について
本件発明4以外の、本件発明1ないし3,5ないし13は、上記各刊行物,慣用手段及び各号証、に基づいて容易に発明できたものとする理由はない。
また、関連する無効審判事件においても、これらの発明を無効とすべきとの主張はなされていない。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし13は、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明であるとすることはできない。

第4.むすび
したがって、上記訂正は、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ナイフの加工装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺薄板状のナイフの幾何学的な曲げ加工形状を入力する曲げ加工形状入力手段と,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの曲げ加工データを算出する演算手段とを具備するナイフの加工装置において,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを入力する特性データ入力手段と,上記ナイフの曲げ加工に関する実測値のデータベースを記憶する実測値記憶部と,上記実測値のデータベースに基づいて上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを修正する特性データ修正手段とを具備し,上記演算手段が上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ修正手段により修正された特性データとに基づいてナイフの曲げ加工データを算出することを特徴とするナイフの加工装置。
【請求項2】
上記曲げ加工に関する実測値が加工ダイスによる押し量を種々変化させた時の曲げ角度データである請求項1記載のナイフの加工装置。
【請求項3】
上記曲げ加工に関する実測値が加工ダイスによる押し量を一定としてナイフの送り出し量を種々変化させた時の曲げ角度データである請求項1記載のナイフの加工装置。
【請求項4】
長尺薄板状のナイフを一対の固定ダイスで保持し,上記固定ダイスに対して離間して移動する移動ダイスで上記ナイフの側面を押すことで上記ナイフに塑性変形を生じさせて上記ナイフに曲げを与える都度,上記ナイフを小さい送り出し量で送り出した後上記移動ダイスで上記ナイフの側面を押して上記ナイフに塑性変形を生じさせるというナイフの屈曲による上記曲げ処理を繰り返して,上記複数の曲げ処理によって1つの円弧形状を成型することにより上記ナイフを所望の曲げ形状に加工するナイフの加工装置において,
ナイフの幾何学的な多角形からなる曲げ加工形状を入力する曲げ加工形状入力手段と,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの上記送り出し量,ダイスの移動量,及び曲げ処理における曲げ回数からなる曲げ加工データを算出する演算手段と,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを入力する特性データ入力手段を具備し,
上記演算手段が上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ入力手段により入力された上記特性データとに基づいて,ナイフの全長に係る切断加工データ,前記曲げ加工データ及びナイフの前記曲げ処理における曲げ回数を演算し,更に,上記切断加工データを上記ナイフの曲げ加工形状における上記屈曲部の中心軸の伸びを考慮し,且つ,該切断加工データの上記多角形の各辺と該各辺に内接又は外接する円弧との誤差が許容範囲内となるようなルールの下にて上記ナイフの幾何学的な多角形からなる曲げ加工形状を変化させて動作回数がちょうど整数となる曲げ加工形状を決定し,この決定された曲げ加工形状を曲げ加工する上記曲げ加工データを演算するものであるナイフの加工装置。
【請求項5】
加工するナイフの全長を,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記ナイフの曲げ加工形状における屈曲部の中心軸の伸びを考慮して算出するようにした請求項1記載のナイフの加工装置。
【請求項6】
長尺薄板状のナイフの幾何学的な曲げ加工形状を入力する曲げ加工形状入力手段と,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの曲げ加工データを算出する演算手段とを具備するナイフの加工装置において,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを入力する特性データ入力手段を具備し,上記演算手段が上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ入力手段により入力された上記特性データとに基づいてナイフの曲げ加工データを算出するナイフの加工装置であって,上記ナイフの全長を,上記ナイフの曲げ加工形状における屈曲部の中心軸の伸びを考慮して算出するナイフの加工装置において,上記ナイフの全長の算出時に,上記曲げ加工部分の曲げ方向にかかる分力による伸び量を考慮するナイフの加工装置。
【請求項7】
上記ナイフの全長の算出時に,上記曲げ加工部分の曲げ方向にかかる分力による伸び量を考慮する請求項5記載のナイフの加工装置。
【請求項8】
長尺薄板状のナイフの幾何学的な曲げ加工形状を入力する曲げ加工形状入力手段と,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの曲げ加工データを算出する演算手段とを具備するナイフの加工装置において,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを入力する特性データ入力手段を具備し,上記演算手段が上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ入力手段により入力された上記特性データとに基づいてナイフの曲げ加工データを算出するナイフの加工装置であって,上記ナイフの幾何学的な形状に付随して,該幾何学的な形状の許容範囲が前記曲げ加工形状入力手段により入力されるナイフの加工装置。
【請求項9】
上記ナイフの幾何学的な形状に付随して,該幾何学的な形状の許容範囲が前記曲げ加工形状入力手段により入力される請求項1記載のナイフの加工装置。
【請求項10】
長尺薄板状のナイフの幾何学的な曲げ加工形状を入力する曲げ加工形状入力手段と,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの曲げ加工データを算出する演算手段とを具備するナイフの加工装置において,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを入力する特性データ入力手段を具備し,上記演算手段が上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ入力手段により入力された上記特性データとに基づいてナイフの曲げ加工データを算出するナイフの加工装置であって,上記ナイフの曲げ動作及び/又は送り出し動作を加えることにより上記ナイフが複数の屈曲部からなる曲げ加工形状に加工される時の,上記曲げ加工部分における各曲げ加工形状角度の合計である全曲げ角度内で,上記曲げ動作回数が整数回となるように加工ダイスによる押し量及び/又はナイフの送り出し量を決定するナイフの加工装置。
【請求項11】
上記ナイフの曲げ動作及び/又は送り出し動作を加えることにより上記ナイフが複数の屈曲部からなる曲げ加工形状に加工される時の,上記曲げ加工部分における各曲げ加工形状角度の合計である全曲げ角度内で,上記曲げ動作回数が整数回となるように加工ダイスによる押し量及び/又はナイフの送り出し量を決定する請求項1〜9記載のナイフの加工装置。
【請求項12】
長尺薄板状のナイフの幾何学的な曲げ加工形状を入力する曲げ加工形状入力手段と,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの曲げ加工データを算出する演算手段とを具備するナイフの加工装置において,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを入力する特性データ入力手段を具備し,上記演算手段が上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ入力手段により入力された上記特性データとに基づいてナイフの曲げ加工データを算出するナイフの加工装置であって,上記曲げ加工形状入力手段により入力されるナイフの幾何学的曲げ加工形状がナイフ保持台を加工する時に用いられるCADデータにより表わされる形状であるナイフの加工装置。
【請求項13】
上記曲げ加工形状入力手段により入力されるナイフの幾何学的曲げ加工形状がナイフ保持台を加工する時に用いられるCADデータにより表わされる形状である請求項1,4若しくは5記載のナイフの加工装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は,打ち抜きプレス加工などにより紙,プラスチック,段ボールなどのシートを所定形状に打ち抜いたり,これに折り目を付けるために用いられる長尺薄板状のシート加工用ナイフ(以下ナイフ)を素材から切断し,この所定の形状に折り曲げる加工装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば,図5に示す如く,この種のナイフAは,薄肉(例えば肉厚寸法0.4〜1.0mm),帯状であって,刃先1を有し,断面が略矩形状に形成されている。そして,このナイフAは,木製,金属製,樹脂製等のナイフ保持台2に連続的に形成されたナイフ嵌入溝3に嵌入固定されて使用される。上記ナイフ嵌入溝3は,例えばレーザ加工により予め所定形状(抜き型に対応する形状)に形成されている。他方,上記ナイフAは,その背部4側を図外の定盤上に沿わせて載置されると共に,該ナイフAの両側面から一組の加工ダイスにて挟圧されることにより曲げ加工が施され,所定の屈曲部5が形成される。上記したレーザを用いたナイフ嵌入溝3の加工は,ナイフ嵌入溝3の幾何学的形状(パターンデータ)をCADにより作成し,このCADデータを用いて従来行われていた。従ってこのナイフ嵌入溝3に嵌入されるナイフAの曲げ加工も上記CADデータを用いれば便利である。図6はこのようなCADデータを用いた従来のナイフの加工装置Bの一例における概略構成を示すブロック図,図7はナイフAの曲げ加工中の状態を示す説明図である。図6に示す如く,従来のナイフの加工装置Bは,ナイフAの幾何学的な曲げ加工形状を表す図形データD1をCADデータから入力する図形データ入力部6と,上記図形データ入力部6により入力された図形データD1に基づいてナイフAの切断加工データD3及び曲げ加工データD4を幾何学的に算出する演算部8と,演算部8により算出された切断加工データD3に基づいてナイフAの素材からの切断加工を行う切断加工部9と,切断加工部9により切断加工された素材を,同じく演算部8により算出された曲げ加工データD4に基づいて曲げ加工を行う曲げ加工部10等から構成されている。
【0003】
ここで,曲げ加工部10は,図7に示すように上記切断された素材に一対の加工ダイスである固定ダイス10aと,移動ダイス10bとを用いて曲げ力をあたえることにより曲げ加工を行い,この曲げ加工の都度上記ナイフAの素材を送り出して所望の曲げ状態を持つナイフAの製品を得るものである。このため上記曲げ加工データD4には加工ダイス10bの上記ナイフAの素材に対する曲げ動作量(押し量)Miと,上記ナイフAの素材の送り出し動作量(送り出し量)Siと,曲げ動作回数Nとが含まれ(i=1,2,…),またナイフAの曲げ加工形状は複数の屈曲部と該屈曲部間を連結する直線部とからなる多角形状をなしている。以下,この従来の装置BによるナイフAの加工手順について図5〜図7を参照しつつ概略説明する。オペレータにより図形データ入力部6を用いてナイフAの図形データD1が入力される。図形データD1はナイフ据付台2の加工を行うためにあらかじめ用意されたCADデータが用いられる。演算部8によりこの図形データD1から,ナイフAの中心線の直線部と屈曲部との合計長さ(延べ距離)が算出され,切断加工データD3として切断加工部9に出力されると共に,同じく演算部8により所定のルールに従って,曲げ加工データD4が作成され,曲げ加工部10に出力される。そして,ナイフAの素材は,切断加工データD3に基づいて切断加工部9により切断加工が施された後,曲げ加工データD4に基づいて曲げ加工部10により曲げ加工が施されて製品化される。上記製品化されたナイフAは,この後,CADデータD5に基づいて別途溝加工が施されたナイフ保持台2に,人手により植刃される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記したような従来のナイフの加工装置Bによる出力データ及びCADデータD3〜D5に基づいて上記ナイフA及び上記ナイフ保持台2を加工した場合,両者の加工形状が一致しないことがある。このため,植刃に際し,ナイフ保持台2のナイフ嵌入溝3にナイフAを嵌入固定できなかったり,また嵌入固定できた場合でも複数のナイフを嵌入固定したときに該ナイフ同士が干渉したり,逆に間隙が生じたりして,上記ナイフAに要求される性能であるシート加工性能を損ったり,ナイフA自体の寿命を縮めたりするおそれがあった。これは,上記ナイフAの加工上の粘弾性特性(スプリングバック等)といった非線形な特性に起因することが多く,特に上記ナイフAの屈曲部の曲げ半径が小さい場合に顕著となる。そこで,本発明は,上記事情に鑑みて創案されたものであり,ナイフの曲げ加工に関する特性を考慮することにより該ナイフの加工を正確に行いうるナイフの加工装置の提供を目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する為に,本発明が採用する主たる手段は,その要旨とするところが,長尺薄板状のナイフの幾何学的な曲げ加工形状を入力する曲げ加工形状入力手段と,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの曲げ加工データを算出する演算手段とを具備するナイフの加工装置において,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを入力する特性データ入力手段と,上記ナイフの曲げ加工に関する実測値のデータベースを記憶する実測値記憶部と,上記実測値のデータベースに基づいて上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを修正する特性データ修正手段とを具備し,上記演算手段が上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ修正手段により修正された特性データとに基づいてナイフの曲げ加工データを算出することを特徴とするナイフの加工装置である。更には,上記曲げ加工に関する実測値が加工ダイスによる押し量を種々変化させた時の曲げ角度データであるナイフの加工装置である。更には,上記曲げ加工に関する実測値が加工ダイスによる押し量を一定としてナイフの送り出し量を種々変化させた時の曲げ角度データであるナイフの加工装置である。
【0006】
また,長尺薄板状のナイフを一対の固定ダイスで保持し,上記固定ダイスに対して離間して移動する移動ダイスで上記ナイフの側面を押すことで上記ナイフに塑性変形を生じさせて上記ナイフに曲げを与える都度,上記ナイフを小さい送り出し量で送り出した後上記移動ダイスで上記ナイフの側面を押して上記ナイフに塑性変形を生じさせるというナイフの屈曲による上記曲げ処理を繰り返して,上記複数の曲げ処理によって1つの円弧形状を成型することにより上記ナイフを所望の曲げ形状に加工するナイフの加工装置において,
ナイフの幾何学的な多角形からなる曲げ加工形状を入力する曲げ加工形状入力手段と,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの上記送り出し量,ダイスの移動量,及び曲げ処理における曲げ回数からなる曲げ加工データを算出する演算手段と,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データを入力する特性データ入力手段を具備し,
上記演算手段が上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ入力手段により入力された上記特性データとに基づいて,ナイフの全長に係る切断加工データ,前記曲げ加工データ及びナイフの前記曲げ処理における曲げ回数を演算し,更に,上記切断加工データを上記ナイフの曲げ加工形状における上記屈曲部の中心軸の伸びを考慮し,且つ,該切断加工データの上記多角形の各辺と該各辺に内接又は外接する円弧との誤差が許容範囲内となるようなルールの下にて上記ナイフの幾何学的な多角形からなる曲げ加工形状を変化させて動作回数がちょうど整数となる曲げ加工形状を決定し,この決定された曲げ加工形状を曲げ加工する上記曲げ加工データを演算するものであるナイフの加工装置。である。更には,上記ナイフの全長の算出時に,上記曲げ加工部分の曲げ方向にかかる分力による伸び量を考慮するナイフの加工装置である。更には,上記ナイフの幾何学的な形状に付随して,該幾何学的な形状の許容範囲が前記曲げ加工形状入力手段により入力されるナイフの加工装置である。更には,上記ナイフの曲げ動作及び/又は送り出し動作を加えることにより上記ナイフが複数の屈曲部からなる曲げ加工形状に加工される時の,上記曲げ加工部分における各曲げ加工形状角度の合計である全曲げ角度内で,上記曲げ動作回数が整数回となるように加工ダイスによる押し量及び/又はナイフの送り出し量を決定するナイフの加工装置である。更には,上記曲げ加工形状入力手段により入力されるナイフの幾何学的曲げ加工形状がナイフ保持台を加工する時に用いられるCADデータにより表わされる形状であるナイフの加工装置である。尚,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データには,材料特性,曲げ加工を行う機械部の特性等が含まれる。
【0007】
【作用】
本発明によれば,長尺薄板状のナイフの幾何学的な曲げ加工形状が曲げ加工形状入力手段により入力され,上記曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいてナイフの曲げ加工データが演算手段により算出されるに際し,上記ナイフの曲げ加工に関する特性データが特性データ入力手段により入力される。そして,上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ入力手段により入力された上記特性データとに基づいてナイフの曲げ加工データが上記演算手段により算出される。また上記ナイフの曲げ加工に関する実測値のデータベースが実測値記憶部に記憶される。上記実測値のデータベースに基づいて上記ナイフの曲げ加工に関する特性データが特性データ修正手段により修正される。そして,上記曲げ加工形状入力手段により入力された幾何学的な曲げ加工形状と上記特性データ修正手段により,修正された特性データとに基づいてナイフの曲げ加工データが上記演算手段により算出される。このように,ナイフの曲げ加工に関する特性データを実測値ベースに修正することにより,算出されるナイフの曲げ加工データの精度を向上させることができる。更に,上記曲げ加工に関する実測値が加工ダイスによる押し量を種々変化させた時の曲げ角度データであるとされる。更に,上記曲げ加工に関する実測値が加工ダイスによる押し量を一定としてナイフの送り出し量を種々変化させた時の曲げ角度データであるとされる。このような種々の曲げ加工に関する実測値を上記特性データの修正に用いることにより,算出されるナイフの曲げ加工データの精度を一層向上させることができる。
【0008】
また,長尺薄板状のナイフの幾何学的な曲げ加工形状が曲げ加工形状入力手段により入力され,上記第曲げ加工形状入力手段により入力された上記幾何学的な曲げ加工形状に基づいて上記ナイフの全長が求められるに際し,上記ナイフの全長が,上記ナイフの曲げ加工形状における屈曲部の中心軸の伸びを考慮して算出される。このようにして算出されたナイフの全長は,該ナイフの曲げ加工特性を考慮しているため,このナイフの全長を含む切断加工データを用いることにより,曲げ加工されたナイフがナイフ保持台に形成されたナイフ嵌入溝に過不足なく正確に収まるようナイフの切断加工を行うことができる。更に,上記ナイフの全長の算出時に,上記曲げ加工部分の曲げ方向にかかる分力による伸び量が考慮される。このように,ナイフの全長の算出に当たり,上記ナイフの曲げ加工特性に係る伸び量を考慮しておくことにより,ナイフの切断加工データの精度を向上させることができる。更に,上記ナイフの幾何学的な形状に付随して,該幾何学的な形状の許容範囲が前記曲げ加工形状入力手段により入力される。このように入力されたナイフの幾何学的な形状の許容範囲を曲げ加工データの算出に用いることにより,該曲げ加工データの精度を確保することができる。更に,上記ナイフの曲げ動作及び/又は送り出し動作を加えることにより上記ナイフが複数の屈曲部からなる曲げ加工形状に加工される時の,上記曲げ加工部分における各曲げ角度の合計である全曲げ角度内で,上記曲げ動作回数が整数回となるように加工ダイスによる押し量及び/又はナイフの送り出し量が決定される。このように決定されたナイフの曲げ加工データに含まれる,加工ダイスによる押し量及び/又はナイフの送り出し量を用いることにより,該ナイフの曲げ加工を正確に行うことができる。更に,上記曲げ加工形状入力手段により入力されるナイフの幾何学的曲げ加工形状がナイフ保持台を加工する時に用いられるCADデータにより表される形状であるとされる。このようにCADデータを有効利用することにより,曲げ加工形状入力を効率的に行うことができると共に,該曲げ加工形状とナイフ保持台の加工形状との整合をも図ることができる。
【0009】
【実施例】
以下添付図面を参照して,本発明を具体化した実施例につき説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施例は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。ここに,図1は本発明の一実施例に係るナイフの加工装置B′の概略構成を示すブロック図,図2は曲げ加工におけるスプリングバックの影響を示す説明図,図3は曲げ加工における曲げ角度合計のズレを示す説明図,図4は曲げ加工中の状態等を示す説明図である。尚,前記図6に示した従来のナイフの加工装置Bの一例における概略構成を示すブロック図と共通する要素には同一符号を使用する。図1に示す如く,本実施例に係るナイフの加工装置B′は,ナイフAの幾何学的な曲げ加工形状を表す図形データD1をCADデータから入力する図形データ入力部6(曲げ加工形状入力手段に相当)と,ナイフAの材料特性(例えば素材の種類や素材の粘弾性特性等),曲げ加工を行う機械部の特性(例えば固定ダイス10aと移動ダイス10bとの間隙等後述する各種演算に用いられる各種パラメータ)等を表す特性データD2を入力する特性データ入力部7(特性データ入力手段に相当)と,上記各データ入力部6,7により入力された図形データD1及び特性データD2に基づいてナイフAの切断加工データD3′及び曲げ加工データD4′を算出する演算部8′(演算手段に相当)と,演算部8′により算出された切断加工データD3′に基づいてナイフAの素材からの切断加工を行う切断加工部9と,切断加工部9により切断された素材を,同じく演算部8′により算出された曲げ加工データD4′に基づいて曲げ加工を行う機械部である曲げ加工部10等から構成されている。図形データ入力部6は,ナイフAの幾何学的な形状の許容範囲D1′の入力にも用いられる。ここで,曲げ加工部10は,図4(a)に示すように上記切断された素材に,一対の加工ダイスである固定ダイス10aと,移動ダイス10bとを用いて曲げ力を与えることにより曲げ加工を行い,この曲げ加工の都度,上記ナイフAの素材を送り出して所望の曲げ形状等を持つナイフAの製品を得るものである。このため,上記曲げ加工データD4′には移動ダイス10bの上記ナイフAの素材に対する曲げ動作量(押し量)Miと,上記ナイフAの素材の送り出し動作量(送り出し量)Si及び曲げ動作回数Nとが含まれるという点で従来例と同様である。
【0010】
しかし,上記のようにナイフAに関する特性データD2を用いて演算部8′が曲げ加工データD4′や,切断加工データD3′を算出する点は従来にない特徴点であり,また上記演算部8′によりナイフAの全長を,上記ナイフAの曲げ加工形状における屈曲部の中心軸の伸びを考慮して算出し,必要に応じてこの合計長を修正する点でも従来例と異なる。また,ナイフAの曲げ加工に関する実測値のデータベースを記憶する実測値記憶部11と,上記実測値のデータベースに基づいて上記特性データD2を修正する特性データ修正部12(特性データ修正手段に相当)とを具備し,上記演算部8′が図形データ入力部6により入力された図形データD1と特性データ修正部12により修正された特性データD2′とに基づいてナイフAの曲げ加工データD4′を算出する点においても従来例と異なる。以下,本装置B′による演算手順について図2〜図4を参照しつつ概略説明する。オペレータにより特性データ入力部7を用いてナイフAの特性データD2が入力される。図形データD1としてはナイフ保持台2をレーザ加工等するためのCADデータD5が図形データ入力部6を用いて入力される。このようにナイフ保持台2を加工するときに用いられるCADデータD5を,図形データ入力手段6により入力される図形データD1として利用することにより,その入力を効率的に行うことができると共に,ナイフAの曲げ加工形状とナイフ保持台2の加工形状との整合をも図ることができる。その結果,ナイフAの一連の加工を自動化した場合にも,出来上がったナイフAをナイフ保持台2に植刃する際に,ナイフ同志が干渉したり,逆に間隙が生じたりして上記ナイフAに要求されるシート加工性能を損ったり,ナイフA自体の寿命を縮めたりするおそれがなくなる。又,図形データD1の一部を手入力することも必要に応じてなされる。同じく図形データ入力部6によりナイフAの幾何学的な形状の許容範囲D1′も入力される。演算部8′により,これらの入力データD1,D1′,D2に基づいて各種演算がなされ,切断加工データD3′及び曲げ加工データD4′等が出力される。
【0011】
曲げ加工データD4′は,前述の如く曲げ加工部10の制御量である曲げ動作量Mi及び送り出し動作量Si等(ただしi=1,2,…)を含むものであり,これらは以下のように決定される。前述の如く,曲げ加工部10は上記切断加工されたナイフAの素材に一対の加工ダイス10a,10bを用いて曲げ力を与えることにより曲げ加工を行い,この曲げ加工の都度上記素材を送り出して所望の曲げ形状を持つナイフAを形成する。このため,ナイフAの曲げ加工形状は複数の屈曲部と該屈曲部間を連結する直線部とからなる幾何学的な形状,即ち多角形状をなしている。この多角形の各辺と該各辺に内接又は外接する円弧との誤差が許容範囲D1′内となるようなルール下にて曲げ動作回数Nを演算により決定する。このように,ナイフAの幾何学的形状の許容範囲D1′を曲げ加工データD4′の算出に用いることにより,該曲げ加工データD4′の精度を確保することができる。尚,許容範囲D1′は予め設定の上記憶しておいて,必要に応じて図形データ入力部6により修正してもよい。上記曲げ動作回数Nは当然に整数でなければならない。そのため上記許容範囲内で上記屈曲部に接する多角形の形状を変化させて動作回数Nがちょうど整数のNとなる各辺の長さと各曲げ角度とを決定する。上記ルールは上記円弧の半径Rと曲げ動作回数Nとの間の非線形な関係を示すものであり,予め求められている関係式を利用する。又,上記円弧の半径Rは図形データD1に含まれているので,これを用いる。このように決定された曲げ動作回数Nを満足するように特性データD2に含まれる各種パラメータを用いて上記曲げ動作量Mi,送り出し動作量Siが演算される。これらの一連の演算は全て演算部8′によって実行される。演算例は後述される。前述のようにナイフAの曲げによる変形は素材の粘弾性特性に影響されるので,単に図形データ入力部6から入力された幾何学的な図形データD1を得る曲げ動作量や送り出し動作量に従って曲げ加工しても所望の曲げ形状を得ることはできない。そのためこの実施例では上記のように特性データ入力部7から入力された特性データD2に含まれる各種パラメータを用いて予め演算部8′に記憶された関係式に基づき曲げ加工データD4′(曲げ動作量Mi,送り出し動作量Si)が演算される。
【0012】
しかしながら上記のような素材の粘弾性特性は非線形であり,材質により種々変化するものであるから当初からあらゆる素材毎に完全な特性パラメータを用意しておくことは極めて困難である。そこで更に改良された実施例として,材質毎に実験的に曲げ加工を行い実測値のデータベースを作成しておき,このデータに基づいて前記特性パラメータを修正する方法が採用される。その具体例を次に説明する。まず,上記実測値として,移動ダイス10bによる曲げ動作量を種々変化させた時の曲げ角度データを用いる場合について述べる。ナイフAの素材は,加工性や耐久性を考慮して適切な材料が選択されるが,一般には鋼が用いられる。このような鋼の薄板に曲げ加工を施す場合,曲げ力を取去った後粘弾性特性の一例としてのスプリングバック現象により変形の戻りが生じることはよく知られている。この現象を図2(a)に示す。従って,曲げ加工に際してはこのスプリングバック量αを所望の曲げ角度θiに加えた時の移動ダイス10bの曲げ動作量Mi′を用いる必要がある。曲げ角度θiと曲げ動作量Mi′との間には図2(b)に示すような非線形の相関関係が成立する。この相関関係をナイフAの素材の種類毎に予め実験などにより求めておき,実測値のデータベースとして用いる。即ち,この実測値のデータベースに基づいて特性データ修正部12により特性データD2を修正する。そして,この修正された特性データD2′に基づいて演算部8′により曲げ加工データを演算することにより,スプリングバック量αを考慮した曲げ加工データD4′(1)が得られる。
【0013】
次に,上記実測値として,移動ダイス10bによる曲げ動作量を一定としてナイフAの送り出し動作量を種々変化させた時の曲げ角度データを用いる場合について述べる。ナイフAの曲げ加工は前述したように素材を曲げる都度送り出すことによりなされるため,各曲げ角度合計Σθiが所望の全曲げ角度θとなるように曲げ加工データD4′を決定する必要がある。しかし,現実には,各曲げ角度合計Σθiと所望の全曲げ角度θとの間にはズレが生じる。この様子を図3(a)に示す。この現象は図中の各曲げ角度θi,θi+1が大きいか又は逆方向の曲げとしたとき,また送り出し動作量Siが小さいときにより顕著となる。これは,各曲げ加工における素材の塑性変形により生じた残留応力が素材の保有する弾性エネルギに影響を及ぼしているためと考えられる。従って,曲げ加工に際してはこのズレ量βを各曲げ角度合計Σθiに考慮した時の送り出し動作量Si′を用いる必要がある。そこで,このズレ量βと,所望の全曲げ角度θと,送り出し動作量Si′との間の関係を実験により求めたところ,図3(b)に示すような3次元の相関関係が得られた。この相関関係をも予めナイフAの素材の種類ごとに求めておき,実測値のデータベースとして用いる。即ち,この場合も,この実測値のデータベースに基づいて特性データ修正部12により特性データD2を修正する。そして,修正された特性データD2′に基づいて演算部8′により曲げ加工データを演算することにより,ズレ量βを考慮した曲げ加工データD4′(2)が得られる。上記実測値は上記の如く予め実験等により求められたものを実測値記憶部11に記憶しているが,必要に応じて,現物確認により例えば特性データ入力手段7を用いて追加,修正などを行うこともできる。
【0014】
引続いて,切断加工データD3′について述べる。ナイフAの切断加工データD3′は基本的には演算部8′により上記図形入力データD1から求められたナイフAの直線部と屈曲部との合計長さL(延べ距離)であるが,本実施例では,屈曲部については従来のCADデータから直接演算される中心線の長さの代わりに屈曲による伸びを考慮した中心軸の長さを用いる。これは,ナイフAは薄肉板状であるとはいっても,現実には一定の厚さtを有しており,曲げ加工に際しては図4(a)に示すように固定ダイス10aに当接する部分Pを中心に屈曲するように曲げ加工を施した場合,中心軸が伸び,これが製品の誤差となるからである。図からも明らかなように,この傾向は特に曲げ角度が大きい場合に顕著となるものであり,全長Lの幾何学的計算を行う際にナイフAの曲げ加工特性を考慮して屈曲部の中心軸の伸びを考慮することにより解決できる。即ち,ナイフAに曲げ加工を施すと応力が反転する点の軌跡である中立軸Xより外側に引張応力が働き伸びを生じ,また内側には圧縮応力が働き縮む。この場合の応力分布は図4(b)のようになり中立軸Xは中心軸Yよりも内側を通る。その結果中心軸Yは伸びmを生じ,この伸びmの分だけCADデータから算出した幾何学的な寸法より余分に伸びが生じることになる。このような伸びmは素材の加工特性に基づくものであるから特性データD2により演算可能である。このようにして,得られたナイフAの曲げ加工特性を考慮した切断加工データD3′を用いることにより,上記ナイフAの曲げ加工後の形状がプレス加工等に供されるシート加工性能などを満足させるものとなるように該ナイフAの全長を決定して切断加工を行うことができる。しかし,曲げ加工時の伸びに関しては上記のような計算等では表すことのできない素材の伸びが生じることがあるため,上記全長Lの計算に際しては必要に応じて以下の点を考慮する。
【0015】
即ち,ナイフAの全長Lの算出時に,曲げ加工部分の曲げ方向にかかる分力による伸び量nを考慮する。つまり,曲げ加工部10によりナイフAの曲げ加工を施す場合,図4(a)に示す如く,移動ダイス10bによる曲げ力Fが作用する。そして,この曲げ力Fをさらに材料の長手方向の分力F1とこれに直角の材料の厚さ方向の分力F2とに分解した時の分力F1によりナイフAの素材が引き伸ばされるという現象が生じる。この伸び量nは上記分力F1とナイフAの断面形状とに基づいて材料特性から一義的に求めることができる。これを考慮して全長Lを計算する。このように,ナイフAの全長Lの算出に当たり,上記ナイフAの曲げ加工特性に係る上記伸び量mだけでなく,伸び量nをも考慮しておくことにより,該ナイフAの切断加工データD3′の精度を向上させることができる。尚,上記実施例では,特性データD2の修正に用いられる実測値のデータベースの2つの具体例について説明したが,実使用に際しては,この他上記実測値として例えばナイフAの曲げポイントのズレ量γ等をも考慮したものとして良い。即ち,ナイフAの曲げ加工に際し,最初の曲げポイントPは当該屈曲部の長手方向中央部Qとは一致しない。これは図4(a)に示すように曲げ加工部10の固定ダイス10aとナイフAとの当接部分である曲げポイントPを中心に実際の曲げ加工が施されるからである。この曲げポイントPと上記中央部Qとのズレ量γは幾何学的手法を用いて求めることができる。このズレ量γを考慮した実測値のデータベースとすることとしてもよい。尚,上記実施例では曲げ加工部10として図4(a)に示すような形状の一対の加工ダイス10a,10bを用いたが,実使用に際しては,上記一対の加工ダイスが雄型,雌型をなすような曲げ機を用いても何ら支障はない。
【0016】
【発明の効果】
本発明は上記したように構成されているため,ナイフの幾何学的な曲げ加工形状及び該ナイフの曲げ加工に関する特性データに基づいて算出される,上記ナイフの曲げ加工に関する特性を考慮した曲げ加工データを用いることにより,上記ナイフのシート加工性能などを満足させるように該ナイフの曲げ加工を行うことができる。更に,上記特性データを実測値ベースに修正することにより,算出されるナイフの曲げ加工データの精度を向上させることができる。更に,種々の曲げ加工に関する実測値を上記特性データの修正に用いることにより,算出されるナイフの曲げ加工データの精度を一層向上させることができる。また,上記ナイフの全長を,上記ナイフの曲げ加工形状における屈曲部の中心軸の伸びを考慮して算出することにより得られるナイフの曲げ加工特性を考慮した切断加工データを用いることにより,曲げ加工されたナイフがナイフ据付台に形成されたナイフ嵌入溝に過不足なく正確に収まるようにナイフの切断加工を行うことができる。更に,上記ナイフの全長の算出に当たり,上記ナイフの曲げ加工特性に係る伸び量を考慮しておくことにより,ナイフの切断加工データの精度を向上させることができる。更に,上記ナイフの幾何学的な形状の許容範囲を曲げ加工データの算出に用いることにより,該曲げ加工データの精度を確保することができる。更に,上記ナイフに曲げ動作及び/又は送り出し動作を加えることにより,上記ナイフが複数の屈曲部からなる曲げ加工形状に加工される時の,上記曲げ加工部分における各曲げ角度の合計である全曲げ角度内で,上記曲げ動作回数が整数回となるように決定される上記曲げ動作量及び/又は上記送り出し動作量を用いることにより,該ナイフの曲げ加工を正確に行うことができる。更に,ナイフ保持台を加工する時のCADデータを有効利用することにより,曲げ加工形状の入力を効率的に行うことができると共に,該曲げ加工形状とナイフ保持台の加工形状との整合をも図ることができる。その結果,ナイフAの一連の加工を自動化した場合にも,出来上がったナイフAをナイフ保持台に人手により植刃する際に,ナイフ同志が干渉したり,間隙が生じたりして上記ナイフA自体の寿命を縮めたりするおそれがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るナイフの加工装置B′の概略構成を示すブロック図。
【図2】曲げ加工におけるスプリングバックの影響を示す説明図。
【図3】曲げ加工における曲げ角度合計のズレを示す説明図。
【図4】曲げ加工中の状態等を示す説明図。
【図5】ナイフAを素材から切断加工した状態を示す説明図。
【図6】従来のナイフの加工装置Bの一例における概略構成を示すブロック図。
【図7】ナイフAの曲げ加工中の状態を示す説明図。
【符号の説明】
A…ナイフ
B′…ナイフの加工装置
6…図形データ入力部(曲げ加工形状入力手段に相当)
7…特性データ入力部(特性データ入力手段に相当)
8…演算部(演算手段に相当)
9…切断加工部
10…曲げ加工部
11…実測値記憶部
12…特性データ修正部(特性データ修正手段に相当)
D1…図形データ(幾何学的な曲げ加工形状に相当)
D1′…許容範囲
D2…特性データ
D2′…修正された特性データ
D3′…切断加工データ
D4′…曲げ加工データ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2006-08-29 
出願番号 特願平5-93975
審決分類 P 1 41・ 856- Y (B21D)
P 1 41・ 121- Y (B21D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 友也  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 菅澤 洋二
鈴木 孝幸
登録日 1999-01-22 
登録番号 特許第2139927号(P2139927)
発明の名称 ナイフの加工装置  
代理人 本庄 武男  
代理人 本庄 武男  

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