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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1143901
審判番号 不服2004-9600  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2006-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-06 
確定日 2006-09-28 
事件の表示 平成 9年特許願第540747号「偏光照明装置、および、これを用いた表示装置並びに投写型表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年12月31日国際公開、WO97/50012〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成9年6月25日の出願(優先権主張平成8年6月25日、日本国)であって、その請求項1〜13に係る発明は、平成15年3月27日付け、平成15年7月28日付け及び平成16年2月16日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜13に各々記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「光源と、
前記光源から出射された光束を複数の中間光束に分離する第1の光学要素と、
前記中間光束のそれぞれが収束する位置付近に配置された第2の光学要素とを備え、
前記第2の光学要素は、
前記中間光束のそれぞれをS偏光光束とP偏光光束とに空間的に分離する偏光分離素子と、
前記偏光分離素子により分離されたS偏光光束またはP偏光光束のうちいずれか一方の偏光光束の偏光方向と他方の偏光光束の偏光方向とを揃える選択位相差板と、
それらの偏光光束を重畳結合させる結合レンズとを有し、
前記偏光分離素子は、
複数対の偏光分離面と反射面とを有し、前記偏光分離面は、前記中間光束のそれぞれが収束する位置に対応するように配置され、前記P偏光光束またはS偏光光束のうちいずれか一方の偏光光束を透過させ他方の偏光光束を反射させて偏光光束を分離し、前記反射面は、前記偏光分離面とほぼ平行に配置され、前記偏光分離面で反射された偏光光束を前記偏光分離面を透過した偏光光束の出射方向に向けて反射してなり、
前記第2の光学要素付近には、それぞれの前記中間光束が前記反射面に直接入射するのを防ぐ遮光手段または光減衰手段が設けられてなることを特徴とする偏光照明装置。」

2.引用例に記載の発明
原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である米国特許第2748659号明細書(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
「本発明の全般的な目的は、従来の偏光器の望ましくない光損失を避け、反射した部分光束を主方向光束に戻し、比較的安価に製造できる偏光器を提供することである。・・・・本発明の他の目的は、所要空間が小さく、外面が比較的滑らかで、比較的簡単に製造できる偏光器を提供することである。」(第1欄第56〜68行)
「ここで図1を参照すると、番号1は、放物面ミラー3を有し光源ないしランプ1の光線をヘッドランプミラーに向けて屈曲させるように小さい球面ミラー2が設けられたヘッドランプ光源を示している。ヘッドランプミラー3は、階段状またはV字波形の形状21′をなす高屈折率及び低屈折率が交互になった偏光積層体21を含む干渉偏光体4にほぼ平行な光束が通過するような形状であるのが好ましい。」(第2欄第16〜25行)
「本発明では、部分偏光体を複数埋め込んだ透明体を形成して、この透明体への偏光していない一次光線の入射が間隔をおいた反射面により入射光線の方向に対してほぼ垂直な方向に相互に間隔をおいた帯状の面に制限されるようにすることにより、光束のうちの反射した部分も用いられるであろう。図2に示されるように、このような構成は平行面体を形成するようにしたステンレスまたは有機ガラスからなる複数のプリズム体33を含むようにしてもよい。プリズム体33の向かい合う傾斜面の間に偏光層36が介在する。・・・・一つおきのこのプリズム体の端面が平行面体の入射面において内側と外側の両方を反射性にした反射面39によって遮光される。他の1つおきのプリズム体の端面は平行面体の出光面側に回転を生成するλ/2位相板38が設けられている。
図2から、反射面39の間で平行面体の面34に入射した光束8′は隣接する反射面39の間に傾斜した状態で延びる偏光層36に達して偏光層36により、偏光層36を透過して位相板38の間の平行面体の出光側の面35を通って出て行く一方の成分7′と、これに垂直方向に振動し層36により隣接する層36に向けて反射する他方の成分9′の2つの成分に分離されることがわかるであろう。反射した光の成分9′は再び層36により初めの光の方向に屈曲してこの成分が平行面体の出光側の面35の間に配置された面37を通過し、ここで位相板38により振動面が90°回転する。層36の裏側の面は光が入り込むのを遮るように黒色にされるのが好ましい。」(第3欄第36行〜第4欄第9行)
「ランプの光線を十分に用いるために、面39はこれに当たる光がランプ空間に戻されるように金属面化され、あるいは、面39に入るような光を屈曲させるように偏光器の前側に帯状に金属面化されたガラス板が光路中に斜めに配置され、あるいは、入射面34上にこのような縮小された帯状の光線断面を生ずることができる望遠型の円筒結像光学系をヘッドランプからの平行光束の光線空間中に設けることによってなされよう。図2に示されるように、このような結像光学系は、相互に接触して並置されそれぞれ入射面34の幅の2倍となる幅を有する1組の帯状の凸円筒レンズ31からなる。レンズ31の配置は各々の円筒レンズの中心面が入射面34の中心面に一致するようになされる。この光学系の焦点距離の1/2の位置でこの光学系と面34との間に、焦点距離が凸レンズの1/2である凹レンズの組32が配置され、レンズの組31からの収束光線を平行光束の状態で面34に入るようにする。」(第4欄第37〜58行)
また、図1に、光源1からの光が放物面ミラー3で反射され平行光束化されて干渉偏光体4に入射するようにした偏光器の構成が示され、図2には、入射する光を縮小する手段を備えた偏光器の構成が示されており、図2の構成においては、一つおきのプリズム体33に凸円筒レンズ31と凹円筒レンズ32とで幅が縮小した複数の光束に分離されて入射し、間の一つおきのプリズム体には光束が入射せず、入射面側に設けられた反射面39によって遮光されること、また、最初の偏光層36で反射し隣接する偏光層36でさらに反射した光束が最初の偏光層36を透過した光束に平行に出射することが見てとれる。
以上の記載によれば、引用例には、「複数のプリズム体33を、その向かい合う傾斜面の間に偏光層36が介在するように並設して形成した平行面体をなす偏光器であって、1つおきのプリズム体33の端面が平行面体の入射面において内側と外側の両方を反射性にした反射面39によって遮光され、他の1つおきのプリズム体の端面は平行面体の出光面側に回転生成λ/2位相板38が設けられている偏光器に対して、光源からの平行光束化された光が凸円筒レンズ31と凹円筒レンズ32とにより幅が縮小した複数の光束に分離されて1つおきのプリズム体33に入射し、偏光層36を透過して位相板38の間の平行面体の出光側の面35を通って出て行く一方の成分7′と、これに垂直方向に振動し層36により隣接する偏光層36に向けて反射する他方の成分9′の2つの成分に分離され、他方の成分9′は偏光層36で反射しλ/2位相板38を透過し振動面が90°回転して出射するようにした照明装置」が記載されているものと認める。

3.対比、判断
本願発明と引用例に記載のものとを対比する。
(1)引用例に記載のものにおける「凸円筒レンズ31と凹円筒レンズ32」は、光源1からの光束をそれぞれ幅が縮小した複数の光束に分離するものであって、本願発明における光源から出射された光束を複数の中間光束に分離する「第1の光学要素」に相当し、引用例に記載のものにおける、凸円筒レンズ31と凹円筒レンズ32とにより幅が縮小して分離された「複数の光束」は、本願発明における「複数の中間光束」に相当する。
(2)引用例に記載のものにおける「偏光層36」は、分離された複数の光束がこれを透過して一方の成分7′と、これに垂直方向に振動する他方の成分9′の2つの成分に分離するものであって、本願発明における「中間光束のそれぞれをS偏光光束とP偏光光束とに空間的に分離する偏光分離素子」に相当する。
(3)引用例に記載のものにおける「λ/2位相板38」は、偏光層36を透過した一方の成分7′に対して垂直に振動する他方の成分9′がこれを透過して振動面が90°回転して出射するようにするものであるから、一方の成分7′と他方の成分9′との偏光方向を揃える作用をなすことは明らかであって、本願発明における「偏光素子により分離されたS偏光光束またはP偏光光束のうちいずれか一方の偏光光束の偏光方向と他方の偏光光束の偏光方向とを揃える選択位相差板」に相当する。
(3)引用例に記載のものにおける「偏光器」は、複数のプリズム体33をその向かい合う傾斜面の間に偏光層36が介在するように並設して形成した平行面体をなし、一つおきのプリズム体33の端面にλ/2位相板38が設けられているものであって、本願発明における第2の光学要素に相当する。
(4)引用例に記載のものにおける「偏光層36」は凸円筒レンズ31と凹円筒レンズ32とにより幅が縮小して分離した光束が入射する位置に配置され、入射光束の一方の成分7′を透過し他方の成分9′反射するものと、反射した他方の成分をさらに反射するものとが交互に並置されて対をなしていて、これが複数対設けられており、また、この1対の偏光層36のうち前者の「一方の成分7′を透過し他方の成分9′を反射するもの」、後者の「反射した他方の成分9′をさらに反射するもの」は、それぞれ本願発明における「偏光分離面」、「反射面」に相当するものを有しており、それらは平行に配置されていて、前者により透過した光束と後者により反射した光束とは平行に、すなわち同じ方向に出射する。
(5)引用例に記載のものにおいて、1つおきのプリズム体33の端面が平行面体の入射面において内側と外側の両方を反射性にした反射面39によって遮光されており、この反射面39は凸円筒レンズ31と凹円筒レンズ32とにより幅が縮小して分離された光束が前記(4)で指摘した後者の偏光層36に直接入射するのを防ぐ遮光手段として作用することは明らかであり、また、引用例に記載のものにおける「照明装置」は、本願発明における「偏光照明装置」に相当する。
上記(1)〜(5)の考察によれば、本願発明と引用例に記載のものは、
「光源と、前記光源から出射された光束を複数の中間光束に分離する第1の光学要素と、前記中間光束のそれぞれが収束する位置付近に配置された第2の光学要素とを備え、前記第2の光学要素は、前記中間光束のそれぞれをS偏光光束とP偏光光束とに空間的に分離する偏光分離素子と、前記偏光分離素子により分離されたS偏光光束またはP偏光光束のうちいずれか一方の偏光光束の偏光方向と他方の偏光光束の偏光方向とを揃える選択位相差板と、を有し、前記偏光分離素子は、複数対の偏光分離面と反射面とを有し、前記偏光分離面は、前記P偏光光束またはS偏光光束のうちいずれか一方の偏光光束を透過させ他方の偏光光束を反射させて偏光光束を分離し、前記反射面は、前記偏光分離面とほぼ平行に配置され、前記偏光分離面で反射された偏光光束を前記偏光分離面を透過した偏光光束の出射方向に向けて反射してなり、前記第2の光学要素付近には、それぞれの前記中間光束が前記反射面に直接入射するのを防ぐ遮光手段または光減衰手段が設けられてなる偏光照明装置」である点において一致し、次の点において相違する。
a.本願発明において、第2の光学素子が偏光方向を揃えた一方の偏光光束と他方の偏光光束を重畳結合させる結合レンズを有するのに対して、引用例に記載のものにおいては、偏光器が出射する一方の成分7′と他方の成分9′とを重畳結合する結合レンズを有していない点。
b.本願発明における偏光分離面は、中間光束のそれぞれが収束する位置に対応するように配置されているのに対して、引用例に記載のものにおける偏光層36は、光源からの平行光束化された光が凸円筒レンズ31と凹円筒レンズ32とにより幅が縮小して複数に分離された平行光束が入射した位置に配置されており、偏光層36の位置で入射光束が収束しない点。
そこで、上記相違点について検討する。
相違点aについて:
複数の光束を重畳結合するための結合レンズを光学系の出射面側に設けることは周知の事項(この点は拒絶査定で引用した特開平4-234016号公報(図26、レンズ111)にも開示されている。)であり、必要に応じて適宜配置し得るものであって、この点において何ら格別な技術的特徴は与えられない。
相違点bについて:
引用例に記載のものにおいては、光源からの平行光束化された光を凸円筒レンズ31と凹円筒レンズ32とにより幅を縮小し分離された複数の光束にしてプリズム体33の端面から偏光層36に入射させており、このように光束の幅を縮小させてプリズム体33から偏光層36に入射させるのは、ランプの光線を十分に用いることを目的としており、その目的からすれば、光束の幅を図2の場合よりさらに縮小させてもよいことは明らかであるとともに、あえて平行光束化せず、凹円筒レンズ32を省いて、光束が凸円筒レンズ31によりプリズム体33の位置、すなわち偏光器の位置付近の位置に収束するようにしてもよいことも明らかである。すなわち、この相違点も何ら格別なものではなく、当業者が容易に採用し得る程度のことである。

なお、本願発明を特定する事項に基づくものではないが、請求人は、引用例の記載に関して言及し、その第4欄第37〜46行において、全てのランプ出射光を利用するために、「1)反射面39をランプの空間に光を反射して戻すために、金属化する」、「2)反射面39に入る光を偏向させるために、板状の金属化されたガラスプレートを斜めに配置する」、「3)ヘッドライトからの平行光束の光線空間内に、入射面34の断面形状に幅を制限することができる伸縮自在(「望遠型」の誤り:審決註)のシリンドリカルイメージングシステムを提供する」ことが記載されているが、1)、2)、3)は「または(or)」の関係であって、「光源から出射された光束を複数の中間光束に分離する第1の光学要素」と「前記第2の光学要素付近には、それぞれの前記中間光束が前記反射面に直接入射するのを防ぐ遮光手段または光減衰手段が設けられてなる」の構成の両立は不可能である旨主張する。
しかしながら、前記1)と3)とは、ランプ出射光を有効に利用する上で何ら相反するものではなく、両方を用いることにより、むしろランプ出射光が確実に有効利用されることは明らかであり、引用例の図2においても、この両方の要件を備えるものとして示されていることと符合するものであるから、この主張は採用できない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-26 
結審通知日 2005-05-10 
審決日 2005-05-24 
出願番号 特願平9-540747
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三橋 健二  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 町田 光信
稲積 義登
発明の名称 偏光照明装置、および、これを用いた表示装置並びに投写型表示装置  
代理人 藤綱 英吉  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 須澤 修  

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