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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A41H
管理番号 1143981
審判番号 不服2002-11597  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-04-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-05-22 
確定日 2006-10-06 
事件の表示 特願2000-400120号(発明の名称「布帛布地・伸縮性布地・カットソー・皮・バイヤス表布地に左バイヤスと右バイヤスの交差張力を活用した、芯地・テープ・裏地の裁断と接着と縫製方法。」と記載されている)拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月19日出願公開、特開2002-115116〕について,平成16年10月18日付け審決に対し,知財高等裁判所において審決取消の判決(平成17年(行ケ)第10352号平成17年4月28日判決言渡)があったので,さらに審理の上,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は,国内優先権主張(平成12年8月2日)を伴う平成12年12月28日の出願(特願2000-400120号)である。

II.当審の拒絶理由
一方,当審の拒絶理由通知(平成16年1月14日付け)は,本件明細書の記載について,以下の不備等を指摘している。
「 1.請求項1について
(1)「45〜55度裁断で」の意味が明りょうでない。何を基準にして、45〜55度で裁断するのか明らかでない。
(2)「左〜右裁断バイヤス部と右〜左裁断バイヤス部」の意味が明りょうでない。何がどのような状態にあることを「バイヤス」というのか明りょうでない。また、何を基準にして何が「左〜右」、「右〜左」となっているのか明りょうでなく、「左〜右」、「右〜左」はどのような状態を意味するのか明りょうでない。
以下の請求項についても同様である。
(3)「左〜右裁断バイヤス部と右〜左裁断バイヤス部」の「裁断バイヤス部」の意味が明りょうでない。この「裁断バイヤス部」とバイヤス表布地、バイヤス接着芯地、バイヤス接着テープ、バイヤス裏地との関係、及び「布地」との関係が明りょうでない。
(4)「伸縮性一方向にした」は、その意味が明りょうでない。
(5)「バイヤス表布地・バイヤス接着芯地、バイヤス接着テープ・バイヤス裏地」は、「・」と「、」にどのような意味があり、全体として何を意味するのか明りょうでない。
(6)「バイヤス表布地・バイヤス接着芯地、バイヤス接着テープ・バイヤス裏地」と「布地」との関係が明りょうでない。
なお、請求項1に係る発明は、どの図と対応しているのか明りょうでない。

2.請求項2について
(1)「左バイヤスと右バイヤスの交差張力を活用した」と発明の名称にはあるけれども,何と何をどのように組み合わせるのか明りょうでない。
(2)「バイヤス芯地バイヤステープ」の意味が明りょうでない。バイヤス芯地とバイヤステープは共に接着すべきものであるのかどうか明りょうでない。
(3)「接着〜縫製方法」の意味が明りょうでない。バイヤス芯地またはバイヤステープを何に接着し,縫製する方法なのか明りょうでない。
(4)「縦織部」の意味が明りょうでない。発明の詳細な説明における「縦糸の方向」との関係が明りょうでない。
(5)「縦織部左〜右バイヤスと縦織部右〜左バイヤス布」の「左〜右」,「右〜左」の意味が明りょうでない。また,「縦織部左〜右バイヤス」及び「縦織部右〜左バイヤス布」とバイヤス芯地またはバイヤステープ,あるいは,表布地,芯地,裏地との関係が明りょうでない。
(6)「縦織部左〜右バイヤスと縦織部右〜左バイヤス布を交差で重ね合せ縫上りでバイヤス伸縮張力を安定伸縮を保つ交差バイヤス芯地」は意味が明りょうでない。芯地それ自体の状態を表しているのか(そうすると「縫上がりで」の意味が明りょうでない),縫製後の芯地の状態を表しているのか(そうすると芯地と表布地や裏地との関係が明りょうでない)明りょうでない。
(7)「バイヤステープ前進伸張バイヤステープ」,「後進後張バイヤステープ」は何を意味し,また,表布地,芯地,裏地とどのような関係にあるのか明りょうでない。
(8)「縫合せる裁断による縫製方法」は意味が明りょうでない。「縫合」は,何と何を縫合するのか明りょうでなく,縫合と裁断の前後関係も明りょうでない。
なお,請求項2に係る発明は,どの図と対応しているのか明りょうでない。

3.請求項3について
(1)布帛表布地(縦・横織)でジャケットを縫製する時に接着芯地をバイヤスで接着する方法で縫製する方法は意味が明りょうでない。「バイヤスで接着する」は,バイヤス芯地の接着とどのような関係にあるのか明りょうでない。また,「接着」と「縫製」の前後関係が明りょうでない。
(2)「前身頃の内側にバイヤス芯地接着するバイヤスの縦織部は右から〜左方向に接着し」の意味が明りょうでない。請求項2について(5)で指摘したと同様の事項はここでも明りょうでなく,また,「接着」が重複していることは何を意味しているのかも明りょうでない。
(3)「次に向い合う見返し部,その上部上襟も右から左方向バイヤス芯地を接着すると前身頃付下襟(G襟)は右〜左織と見返付上襟右〜左織は地縫いでひっくり返すと交差で向い合う接着芯地は芯地と芯地がバイヤス交差する方法」は,意味が明りょうでない。「右〜左織」の意味が明りょうでなく,前出の「右〜左」と同じ意味なのがどうかも明りょうでない。「接着すると」は,方法の発明における特定事項として明りょうでない。接着と地縫いとひっくり返しの前後関係が明りょうでない。
(4)「布帛布地に接着芯地の交差によって襟をレンズ凸形ふくらみの伸縮性を利用した立体襟でボタン位置に美的襟返りはバイヤス芯地張力を利用した請求項1〜2に記載のバイヤス芯地張力による布帛布地の裁断をして接着による縫製方法。」は,作用効果的な記載を含み,発明の特定を不明りょうにしている。
また,請求項1は布地の発明であるから,請求項1記載の縫製方法というのは意味が明りょうでなく,請求項2のいずれの事項をさらに特定したのか明りょうでないから,請求項2記載の縫製方法というのも意味が明りょうでない。
なお,請求項3に係る発明は,どの図と対応しているのか明りょうでない。

4.請求項4について
(1)請求項1は布地の発明であるから,請求項1記載の縫製方法というのは意味が明りょうでない。また,請求項2及び3のいずれの事項をさらに特定したのか明りょうでないから,請求項2〜3記載の縫製方法というのも意味が明りょうでない。
(2)「伸縮性布地(ライクラ)等」のライクラは登録商標であり,その内容が明りょうでないので,(ライクラ)を削除するのが好ましい。また,「等」で示される範囲が明りょうでない。
(3)「バイヤス接着芯」は「バイヤス芯地」とどのような関係にあるのか明りょうでない。同じものか異なるものか明りょうでない。
(4)「(左〜右織と右〜左織の縦)交差による」の意味が明りょうでない。「縦」は何を意味するのか明りょうでない。「左〜右織」,「右〜左織」は,先の「左〜右」,「右〜左」と同じことを意味するのかどうか明りょうでない
(5)「バイヤス張力」は何を意味しているのか明りょうでない。
(6)「バイヤス芯地とバイヤス裏地のバイヤス張力による伸縮性布地とニット布地の裁断をして接着による縫製方法。」は,裁断と接着の前後関係が明りょうでない。
(7)この請求項記載の縫製方法では,伸縮性布地又はニット布地と芯地の接着が行われる段階と,裏地を縫合する段階の前後関係が明りょうでない。
なお,請求項4に係る発明は,どの図と対応しているのか明りょうでない。

5.請求項5について
(1)「バインダーテープ」とはどのようなテープなのか明りょうでない。
(2)「バイヤス左〜右織テープとバイヤス右〜左テープ」の意味が明りょうでない。
(3)「の中央に」は意味が明りょうでない。「バイヤス左〜右織テープ」と「バイヤス右〜左テープ」が中央で一部重なっているのかどうか明りょうでない。
(4){ライクラ」はその内容が明りょうでない。ライクラは登録商標であるから「ライクラ」を削除するのが好ましい。
(5)「バインダーテープ」と「布帛バインダーテープ」は同じものなのか異なるものなのか明りょうでない。
(6)「首回,襟回,袖回,裾回にバインダーテープの一方向伸び用布帛バインダーテープとする」は意味が明りょうでない。首回,襟回,袖回,裾回に用いるものか明りょうでない。また,どのようにしたから一方向伸びとなったのかも明りょうでない。
(7)「バイヤス左〜右織テープとバイヤス右〜左テープ」,「バイヤス布地の左右裁断布」のそれぞれの意味が明りょうでなく,お互いに異なるものなのか,同じものなのかも明りょうでない。
(8)「バイヤス布地の左右裁断布とライクラテープをジグザグステッチで加えた」は意味が明りょうでない。
(9)「布帛布バインダーテープの方法。」は,「布帛布」の意味が明りょうでない。「バインダーテープの方法。」の意味も明りょうでない。
なお,請求項5に係る発明は,どの図と対応しているのか明りょうでない。

6.請求項6について
(1)「バイヤス布地が縦糸と横糸で織られた布地はねぢれ現象によって縦糸織方向に斜め落ちドレープねぢれ現象が発生する原因は横糸たるみ織であり,」は意味が明りょうでない。主語と述語の関係が明りょうでない。
(2)「バイヤス斜めねぢれ変形をその布の重力を直下させる方法で衣類の前身後身の縫合せ合印をずらし縫いでねぢれを変える補正して」の意味が明りょうでない。
(3)「裁断で縫製する方法」の意味が明りょうでない。裁断と縫製の前後関係が明りょうでない。
なお,請求項6に係る発明は,どの図と対応しているのか明りょうでない。

7.全般について
特許請求の範囲の記載は,次のようにするのが好ましい。
(1)主語と述語の関係及び用語の修飾関係を明りょうにする。
(2)裁断する前の布と裁断した後の布が明りょうに区別されるように表現する。
(3)方法の発明にあっては,裁断,接着,縫製等の各工程がどのような順序になっているのかが明りょうになるよう記載する。
(4)方法の発明であって,裁断された布,芯地が接着された布等から始まるものにあっては,そのことが明りょうになるよう記載する。
(5)用語はできる限り統一する。
(6)補正に当たっては,明細書の記載の範囲内で,意味の通るクレームに補正し,新規事項を含まないように注意する。
(7)補正に当たっては,特許法施行規則第24条の4の規定に適合するよう補正する。 」

III.当審の判断
(1) 拒絶理由の前記1(4)について
当審の前記拒絶理由通知により,「伸縮性一方向にした」の文言は,「伸縮性斜め変形無しの一方向にした」と補正されたが,以下の理由により,この文言は依然として不明りょうである。
まず,本願明細書及び図面には,「斜め変形」なる用語に関係する記載としては,次のものがある。
「【0002】【従来の技術】従来,バイヤス布地は縦斜めに伸び上り,図1(b)その伸び上りは図7(a)〜(K)の片方ドレープ71は縦地織1方向斜めドレープで不均衡斜めドレープ71が出来てスカートの裾上衣の裾やズボンの裾71はねぢれて左右対称でない,又縫製使用のバイヤステープ図1(a)8方向伸び(e)9方向一方向バイヤスで出来ており,ミシン機も一方向布送りで糸縫でギャク伸びとなり一方向バイヤステープ8と9縫い合せは布は蝸牛り型ねぢれ現象が起る。」
「【0003】【発明が解決しようとする課題】しかしながら,従来のバイヤス裁断や縫製方法では図7(a)〜(k)に示すドレープ71ように,斜めドレープ現象71で中央ドレープは縦糸織方向1が強く横糸織方向がたるみ織糸なので片寄ドレープ斜めとなる。さらにミシン機の送りで縫合は蝸牛りねぢれ縫上りで左右対称に縫製することは出来ない。」
そして,「一方向」なる用語に関係する記載としては,次のものがある。
「【0008】即ち,請求項1記載の発明は,布帛布地のバイヤス裁断方法であって,縦,横90度で織られた正方形布帛布地(3,4,5,6)を45度〜55度裁断でバイヤス(斜め)布地裁断(7)として,左-右裁断で左バイヤス部と,右-左裁断は右バイヤス部として区別,図4(a)〜(b)バイヤス裁断左側(43),もう一方バイヤス裁断右側(44)として伸縮性二方向にした,バイヤス表布地,バイヤス接着芯地バイヤス接着テープ,バイヤス裏地に裁断した布地。」
「【0018】…図4(a)左右縦布帛布に接着芯地37の左側371をバイヤス方向左下方38の381に左-右にカットテープに切断し,次に接着芯地37の右側372にバイヤス方向右下方,39の391にカットテープに切断して,バイヤス左接着テープとバイヤス右接着テープを形成して二方向テープの裁断方法。図4(b)の布帛縦布地40に横芯地41上を横芯地41下を縫合せ42を縦主布地40と横地接着芯地は41上と41下縫合せ42で接着した2枚の布地が1枚布として衣類の左バイヤス43と右バイヤス44で切断して先の伸縮性バイヤス二方向38と39テープと伸縮性バイヤス二方向衣類の裁断方法。」

しかしながら,これらの記載を総合しても,「伸縮性一方向にした」ないし「伸縮性斜め変形無しの一方向」なる記載の意味する内容は,必ずしも明確であるとはいえず,当該文言で表される構成の技術的意義を一義的に確定して理解することは困難であるといえる。

(2) また,繊維業界では,バイアスないしバイアス裁ちという言葉が業界用語として使用され,それぞれ「バイヤス(バイアス)」とは,「バイアスは斜め,斜線の意。織物の布目方向のことをいい,経て(たて)糸,緯(よこ)糸の90度交差に対して斜め方向のことで,斜めに裁つこと,または斜めに裁った布地(斜め布)などをいう。とくに45度の斜め地方向のことを正バイアスという。」(文化出版局編「服飾辞典」昭和59.1.10,630頁)を意味し,「バイアスだち(バイアス裁ち)」とは,「布の経て(たて)地と緯(よこ)地に対して45度の角度で交わる方向のバイアス(正バイアス)で裁つこと。」(同630頁)を意味するものとされている。
一方,本願の発明においては,当審の拒絶理由通知により補正された前記の「伸縮性斜め変形無しの一方向」のほか,「左布裁断」,「右布裁断」,「左バイヤス」,「右バイヤス」,「バイヤス裁断左側」,「バイヤス裁断右側」,「左-右裁断」,「右-左裁断」など,当業者が正確な意味を一義的に理解し得ないような,独自の用語ないし表現というべきものが多用されているが,これらについて,特許請求の範囲においてはもとより,本願明細書においても,定義付け等がされているわけでもない。また,図面を参照しても,一義的に意義を確定することが困難な部分も少なくない。そして,全体として,文章自体の理解に極めて難渋するものである。
(3) 拒絶理由の前記7について
前記拒絶理由の中で,特許請求の範囲の記載に使用された用語の意味が明りょうでないこと(数多くの用語について指摘している。),それぞれの用語同士の関係が明りょうでないこと,読点の使用方法に問題があること,全体として何を意味するのか明りょうでないことなど,多くの点が具体的に指摘した。そして,当該拒絶理由通知書では,出願人に対し,特許請求の範囲の記載について,主語と述語の関係及び用語の修飾関係を明りょうにすること,裁断する前の布と裁断した後の布が明りょうに区別されるように表現すること,用語はできるだけ統一すること,補正に当たっては,意味の通るクレームに補正することなどを指導している。
しかしながら,この拒絶理由通知に対応してされた手続補正書(平成16年3月12日)を精査しても,上記拒絶理由がほとんど解消されておらず,依然として,読点の用い方が不適切でかつ統一性がなく,用語の不適切さもあって,特許請求の範囲の記載は,不明りょうであり,発明の詳細な説明欄を参酌しても,本願発明の技術的意義を明確に理解することは極めて困難である。
したがって,本願については,特許請求の範囲の記載が依然として特許法36条6項2号の要件を満たしているとはいえない。

IV.むすび
したがって,本願は,特許法36条6項に規定する要件を満たしていない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-06-11 
結審通知日 2004-06-22 
審決日 2005-07-29 
出願番号 特願2000-400120(P2000-400120)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (A41H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 成就  
特許庁審判長 松縄 正登
特許庁審判官 中西 一友
渡邊 豊英
発明の名称 布帛布地・伸縮性布地・カットソー・皮・バイヤス表布地に左バイヤスと右バイヤスの交差張力を活用した、芯地・テープ・裏地の裁断と接着と縫製方法。  

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