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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09B |
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管理番号 | 1144028 |
審判番号 | 不服2004-633 |
総通号数 | 83 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-11-11 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-01-08 |
確定日 | 2006-09-22 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第131367号「交通情報受信装置及び交通情報表示方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年11月11日出願公開、特開平 9-292834〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明の認定 本願は平成8年4月26日の出願であって、平成15年12月3日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成16年1月8日付けで本件審判請求がされたものである。 本願の請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年8月1日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項6】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「受信された交通情報を記憶部に記憶させる記憶制御処理と、 前記受信された最新の交通情報と、受信されかつ前記記憶部に記憶されている前回の交通情報とに基づき、道路状況の変化を示す変化情報を、前回の交通情報により示される前回の道路状況と共に、かつそれと区別可能に表示させる表示制御処理と、 を有することを特徴とする交通情報表示方法。」 第2 当審の判断 1.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-46087号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア〜ウの記載が図示とともにある。 ア.「【産業上の利用分野】本発明は、車両用表示装置に関し、特に道路の渋滞,工事,規制などの動的道路情報の表示方法に関する。」(段落【0001】) イ.「ステップS22では、動的道路情報の表示範囲内と判別された情報と同じ場所の情報が前回の路上ビーコン受信時の情報の中にあったか否かを判別し、前回と今回の動的道路情報受信時に同じ場所の情報があればステップS23へ進み、そうでなければステップS24へ進む。ステップS23では、同じ場所の動的道路情報の変化率を算出する。この変化率は、例えば交通渋滞に関する情報であれば前回と今回との間で渋滞がどのように変化したかを示すもので、次式により算出する。 変化率=(今回の渋滞距離)/(前回の渋滞距離)-1 ・・・(8) 一方、ステップS24では、今回新たにその場所においてその情報が発生したのであるから変化率を0とする。ステップS25で、上記ステップで設定された表示範囲内の動的道路情報とその変化率,平均車速,平均方位,目的地距離,集点と集点間距離および範囲係数などの情報をD-RAM22およびバックアップRAM24へ記憶し、ステップS20へ戻る。」(段落【0015】) ウ.「変化率の表示方法は、例えば交通渋滞の場合、(8)式の演算結果が正であれば渋滞がひどくなることを示しているので例えば赤色で渋滞区間を表示し、演算結果が負であれば渋滞が解消することを示しているので例えば青色で渋滞区間を表示する。また、変化率を図柄によって表示してもよい。例えば交通渋滞がひどくなる時は記号+を用いた図柄で渋滞区間を表示し、渋滞が解消される時は記号-を用いた図柄で渋滞区間を表示する。いずれにしても、一目で動的道路情報の時間的変化が認識できるような表示方法であればよい。」(段落【0017】) 2.引用例記載の発明の認定 記載イの「交通渋滞に関する情報」(以下「渋滞情報」という。)は受信された情報である。 記載イ(8)式の演算を行い、かつ記載ウにあるとおり渋滞区間を表示する以上、渋滞区間を記憶するものと認める。 したがって、引用例1には 「道路の渋滞情報の表示方法であって、 受信された渋滞情報につき、渋滞区間を記憶し、 新たな渋滞区間であれば変化率を0とし、 前回と同じ渋滞区間であれば、今回の渋滞距離と前回の渋滞距離に基づき、「(今回の渋滞距離)/(前回の渋滞距離)-1」の演算により変化率を算出し、 変化率が正であれば赤色で渋滞区間を表示し、変化率が負であれば青色で渋滞区間を表示する表示方法。」(以下「引用発明1」という。) 3.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定 引用発明1は「道路の渋滞情報の表示方法」であり、これは「交通情報表示方法」に含まれる。 引用発明の「渋滞情報」は「交通情報」の1種であるから、引用発明1において「受信された渋滞情報につき、渋滞区間を記憶」することと、本願発明の「受信された交通情報を記憶部に記憶させる記憶制御処理」に相違はない。 引用発明1では、変化率を算出し、変化率に基づき異なる色で渋滞区間を表示しており、そのことは本願発明における「前記受信された最新の交通情報と、受信されかつ前記記憶部に記憶されている前回の交通情報とに基づき、道路状況の変化を示す変化情報を・・・表示させる表示制御処理」と異ならない。 したがって、本願発明と引用発明1とは、 「受信された交通情報を記憶部に記憶させる記憶制御処理と、 前記受信された最新の交通情報と、受信されかつ前記記憶部に記憶されている前回の交通情報とに基づき、道路状況の変化を示す変化情報を表示させる表示制御処理と、 を有する交通情報表示方法。」である点で一致し、次の点で相違する。 〈相違点〉道路状況の変化を示す変化情報を表示させるに当たり、本願発明では「前回の交通情報により示される前回の道路状況と共に、かつそれと区別可能に表示させる」のに対し、引用発明では、変化率を算出(新たな渋滞区間であれば変化率を0とする。)し、変化率が正であれば赤色で、負であれば青色で渋滞区間を表示する点。 4.相違点についての判断 まず、引用発明1における「新たな渋滞区間」の変化率について検討する。新たな渋滞区間であれば、(8)式における「前回の渋滞距離」は0であるから、算出値は無限大となり、これを0にしなければならない絶対的理由は見あたらず、新たな渋滞区間の変化率を正に変更することは設計事項に属する。 請求人は、「引用文献3(審決注;審決の引用例1)の記載内容を精査しますと、・・・変化分(引用文献3の記載内容においては動的道路情報)を表示させるものであります。」(平成16年2月2日付け手続補正書(方式)4頁20〜22行)及び「引用文献3の記載内容からも、本願発明の「誘導経路上の渋滞箇所における渋滞の度合が激しくなる傾向にあるのか、逆に緩和する傾向にあるのか、又変化しない傾向にあるのかを知ることができる。」という特有の効果は得られるものではありません。」(同頁23〜25行)と主張しているが、引用例1における「動的道路情報」とは記載アのとおり「道路の渋滞,工事,規制など」の情報であり、請求人がいうような「変化分」ではない。まずこの点で、請求人は引用例1の記載内容を誤認しており、記載ウによれば「誘導経路上の渋滞箇所における渋滞の度合が激しくなる傾向にあるのか、逆に緩和する傾向にあるのか、又変化しない傾向にあるのかを知ることができる。」点では、本願発明と何ら異ならない。要するに、本願発明と引用発明1は、上記同一の作用効果を奏する発明であり、「渋滞の度合が激しくなる傾向にあるのか、逆に緩和する傾向にあるのか、又変化しない傾向にあるのかを知る」ための表示形態が異なるだけである。 そこで、表示形態の変更が容易かどうか検討する。 原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-7197号公報(以下「引用例2」という。)には、「現在の道路交通情報の把握ができているユーザにとって、情報の全部を表示してもらうより、少し前の時刻に送られてきた情報に対して、現在どの情報が変化したのかを表示してもらうほうが便利な場合がある。」(段落【0007】)及び「新しい道路交通情報(例えば図1(b)に示すような渋滞情報とする)を受信すると、これらの道路交通情報を比較し、2つの道路交通情報の変化分のみを取り出す(図1(c) 参照)。すなわち、前回のみ渋滞していた区間a、前回も今回も渋滞中の区間b、新しく渋滞になった区間cの3つに分ける。そして、図1(d)に示すように新しく渋滞になった区間cのデータ及び/又は前回のみ渋滞していた区間aのデータのみを出力する。」(段落【0032】)との各記載があり、これら記載によれば「新しく渋滞になった区間c」や「前回のみ渋滞していた区間a」がどの部分であるかをユーザに知らしめることの要望があることが窺える。 引用例2では、前回も今回の道路交通情報の変化分を重視し、変化のなかった部分は非表示とするのであるが、「現在の道路交通情報の把握ができているユーザ」であること、すなわち前回の渋滞情報を記憶していることを前提としており、記憶していない場合又は記憶内容が曖昧な場合には、「前回も今回も渋滞中の区間b」を非渋滞区間と勘違いするおそれがある。引用例2から窺えることは、「新しく渋滞になった区間c」や「前回のみ渋滞していた区間a」がどの部分であるかを明示することの重要性であって、これら区間を「前回も今回も渋滞中の区間b」と区別できるように表示しても、引用例2記載の要望に反するわけではない。 そして、原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-296295号公報(以下「引用例3」という。)には、「渋滞のないところは薄いブルー、やや混雑しているところは黄色、渋滞しているところはピンク色でそれぞれ描画せよという命令を描画装置19に与える。」(段落【0027】)との記載があり、【図4】には連続した道路範囲を渋滞区間とやや混雑区間に区別して表示した様子が図示されている。もちろん、引用例3において区別表示されているのは、渋滞程度に応じた区間であって、前回も今回の比較によって区別した区間ではないけれども、引用例1〜引用例3に接した当業者であれば、引用例1及び引用例2に基づいて、「前回のみ渋滞していた区間a、前回も今回も渋滞中の区間b、新しく渋滞になった区間c」を区別して表示することを想起することが容易であり、その区別表示の仕方として引用例3記載の方法を採用することは容易というべきである。 「前回のみ渋滞していた区間a、前回も今回も渋滞中の区間b、新しく渋滞になった区間c」を区別して表示することは、相違点に係る本願発明の構成を採用することにほかならないから、結局のところ同構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、本願発明は引用発明1並びに引用例2及び引用例3記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第3 むすび 本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-07-12 |
結審通知日 | 2006-07-18 |
審決日 | 2006-08-02 |
出願番号 | 特願平8-131367 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松川 直樹 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 長島 和子 |
発明の名称 | 交通情報受信装置及び交通情報表示方法 |