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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G01B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1144178
審判番号 不服2004-1152  
総通号数 83 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-05-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-15 
確定日 2006-09-21 
事件の表示 平成 9年特許願第300730号「回転角度センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 5月21日出願公開、特開平11-132707〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成9年10月31日の出願であって、平成15年6月11日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月8日付けで手続補正書が提出され、同年12月11日付け(発送日同月16日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年1月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年2月2日付けで手続補正書が提出されたものである。

第2 平成16年2月2日付けの手続補正書による手続補正について
1.平成16年2月2日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容
本件補正は、以下の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲を、以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲に補正するとともに、明細書の段落【0015】に「なお、磁路構成部材は磁束発生部を含まないものとする。」との記載を追加することを含むものである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】 磁束発生部と磁気検出体を挟んで対向する一対の対向部とを含む磁路構成体により前記磁気検出体を通過する磁束の閉磁路を構成し、前記対向部を回転軸の回転に応動させて前記磁気検出体の位置における前記対向部間の間隔を変化させることにより同位置における磁束密度を変化させ、この磁束密度の大きさから前記回転軸の回転角度を検出するようにした回転角度センサにおいて、
前記磁路構成体は複数の磁路構成部を含み、各磁路構成部間に前記磁束発生部を有し、前記対向部は前記磁路構成部によって形成されるとともに前記各対向部の対向面のうち一方を前記回転軸の軸線に対して傾斜した螺旋状の傾斜面とし他方を同軸線に対して垂直な垂直面としたことを特徴とする回転角度センサ。
【請求項2】 請求項1に記載した回転角度センサにおいて、前記回転軸の軸線方向における前記各対向面間の距離L(θ)が前記回転軸回りにおける角度θの関数:L(θ)=√(αθ+β)+γ(α,β,γは定数)に基づいて設定されていることを特徴とする回転角度センサ。
【請求項3】 請求項1又は2に記載した回転角度センサにおいて、前記磁路構成体は各磁路構成部間に前記磁束発生部となるプラスティック磁石をモールド成形することにより一体形成されたものであることを特徴とする回転角度センサ。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】 磁束発生部と磁気検出体を挟んで対向する一対の対向部とを含む磁路構成体により前記磁気検出体を通過する磁束の閉磁路を構成し、前記対向部を回転軸の回転に応動させて前記磁気検出体の位置における前記対向部間の間隔を変化させることにより同位置における磁束密度を変化させ、この磁束密度の大きさから前記回転軸の回転角度を検出するようにした回転角度センサにおいて、
前記磁路構成体は複数の磁路構成部材を含み、各磁路構成部材間に前記磁束発生部を有し、前記対向部は前記磁路構成部材によって形成されるとともに前記各対向部の対向面のうち一方を前記回転軸の軸線に対して傾斜した螺旋状の傾斜面とし他方を同軸線に対して垂直な垂直面としたことを特徴とする回転角度センサ。
【請求項2】 請求項1に記載した回転角度センサにおいて、前記回転軸の軸線方向における前記各対向面間の距離L(θ)が前記回転軸回りにおける角度θの関数:L(θ)=√(αθ+β)+γ(α,β,γは定数)に基づいて設定されていることを特徴とする回転角度センサ。
【請求項3】 請求項1又は2に記載した回転角度センサにおいて、前記磁路構成体は各磁路構成部材間に前記磁束発生部となるプラスティック磁石をモールド成形することにより一体形成されたものであることを特徴とする回転角度センサ。」

2.補正の目的の適合性
上記補正は、願書に最初に添付した明細書及び図面に記載した事項の範囲内でなされたものであり、請求項1に記載された「磁路構成部材」が磁束発生部を含まないものであることを明確化するためのものであるから、実質的に拒絶の理由に示す事項についてするものと認められる。
したがって、上記補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成15年法律第47号)附則第2条第7項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

第3 本願発明について
平成16年2月2日付けの手続補正書による手続補正は、上記のとおり適法になされたものと認められるので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成15年8月8日付けの手続補正書及び平成16年2月2日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2」の「1.」の「(2)」の本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

第4 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である実願平2-128177号(実開平4-85214号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
(1)「本考案は・・・・耐久性に富み、かつ、小型で広範囲の角度を検出可能な低コストのポテンショメータを得ることを目的とするものである。」(明細書第3頁第19行〜第4頁第3行)
(2)「 次いで、第2図は本考案の第2実施例を示すものである。符号4は前記第1実施例の永久磁石と同じく軸2を中心とする円筒面状をなす強磁性体であり、この強磁性体4に対して磁気センサ3を介して対峙する位置には、永久磁石5が設けられている。前記強磁性体4は、円周方向に沿って軸線と平行な方向(図中上方)への突出量が漸次変えられている。また前記永久磁石1の上方(当審注:「永久磁石5の下方」の誤記であると認められる。)であって、軸2から半径方向にほぼ前記円筒面の半径の相当する距離だけ離れた位置には、磁気センサ3が設けられて、前記永久磁石1により生じた磁界の強さに対応する電気信号を出力するようになっている。
このように構成されたポテンショメータにあっては、強磁性体4の回転角に応じて永久磁石5との距離が変化し、これに伴って、永久磁石5から強磁性体4を経由して再度永久磁石5へ戻る磁路の磁気抵抗も変化するから、・・・・第4図に示すように、強磁性体4の回転角に応じて磁界の強さが変化し、この磁界の強さに対応する電気信号が磁気センサ3から出力される。」(明細書第7頁第2行〜第8頁第2行)
(3)「なお、上記各実施例では・・・・強磁性体を被測定物とともに回転させるようにした」(明細書第8頁第10行〜第11行)

上記摘記事項(1)ないし(3)及び図面の記載から、以下のことが読み取れる。
・上記摘記事項(1)から、引用刊行物には、角度を検出可能なポテンショメータが記載されており、上記摘記事項(2)の「軸2を中心とする円筒面状をなす強磁性体」、「強磁性体4の回転角に応じて磁界の強さが変化し、この磁界の強さに対応する電気信号が磁気センサ3から出力される」という記載からみて、上記ポテンショメータは、軸2の回転角度を検出するものである。
・上記摘記事項(2)の「強磁性体4の回転角に応じて永久磁石5との距離が変化し、これに伴って、永久磁石5から強磁性体4を経由して再度永久磁石5へ戻る磁路の磁気抵抗も変化するから、・・・・第4図に示すように、強磁性体4の回転角に応じて磁界の強さが変化し、この磁界の強さに対応する電気信号が磁気センサ3から出力される」という記載及び図面の第2図からみて、永久磁石5と強磁性体4は、磁気センサ3を挟んで対向しており、これら永久磁石5、磁気センサ3及び強磁性体4は磁路を構成し、強磁性体4の回転角に応じて、磁気センサ3の位置における永久磁石3と強磁性体4間の間隔を変化させることにより同位置における磁界の強さを変化させ、この磁界の強さから前記軸2の回転角度を検出することが記載されているものと認められる。
・上記摘記事項(3)から、強磁性体4は被測定物とともに回転させられるものであり、一方、上記摘記事項(2)から、強磁性体4は軸2を中心軸として回転するから、強磁性体4と被測定物は共に軸2を中心軸として回転し、強磁性体4は被測定物の回転により回転する軸2の回転に応動して回転するものと認められる。
・上記摘記事項(2)及び図面の第2図の記載から、強磁性体4の永久磁石5と対向する対向面は軸2の軸線に対して傾斜した螺旋状の傾斜面であり、永久磁石5の強磁性体4と対向する対向面は軸2の軸線に対して垂直な垂直面であることが読み取れる。

以上のことから、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「軸2の回転角度を検出するポテンショメータであって、永久磁石5と強磁性体4は、磁気センサ3を挟んで対向しており、これら永久磁石5、磁気センサ3及び強磁性体4は磁路を構成し、前記強磁性体4を前記軸2の回転に応動させて前記磁気センサ3の位置における前記永久磁石3と前記強磁性体4間の間隔を変化させることにより同位置における磁界の強さを変化させ、この磁界の強さから前記軸2の回転角度を検出するものであり、前記強磁性体4の前記永久磁石5と対向する対向面は前記軸2の軸線に対して傾斜した螺旋状の傾斜面であり、前記永久磁石5の前記強磁性体4と対向する対向面は軸2の軸線に対して垂直な垂直面であることを特徴とするポテンショメータ。」

第5 本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
(a)引用発明における「軸2」、「ポテンショメータ」、「永久磁石5」、「磁気センサ3」は、それぞれ、本願発明における「回転軸」、「回転角度センサ」、「磁束発生部」、「磁気検出体」に相当する。
(b)引用発明における「永久磁石5」、「強磁性体4」は、磁気センサ3を挟んで対向する一対の対向部を構成しているから、これらは本願発明における「一対の対向部」に相当する。
(c)引用発明における「永久磁石5」、「磁気センサ3」及び「強磁性体4」よりなるものは磁路を構成するから、本願発明における「磁路構成体」に相当する。
(d)磁界の強さと磁束密度は通常一対一に対応しており、磁界の強さの変化に応じて磁束密度は変化するから、引用発明における「磁界の強さを変化させ、この磁界の強さから」は、本願発明における「磁束密度を変化させ、この磁束密度の大きさから」に実質的に相当するということができる。
したがって、本願発明と引用発明とは、
「磁束発生部と磁気検出体を挟んで対向する一対の対向部とを含む磁路構成体により前記磁気検出体を通過する磁束の磁路を構成し、前記対向部を回転軸の回転に応動させて前記磁気検出体の位置における前記対向部間の間隔を変化させることにより同位置における磁束密度を変化させ、この磁束密度の大きさから前記回転軸の回転角度を検出するようにした回転角度センサにおいて、
前記各対向部の対向面のうち一方を前記回転軸の軸線に対して傾斜した螺旋状の傾斜面とし他方を同軸線に対して垂直な垂直面としたことを特徴とする回転角度センサ。」である点で一致し、次の相違点で相違する。

相違点 本願発明が、閉磁路を構成し、磁路構成体は複数の磁路構成部材を含み、各磁路構成部材間に前記磁束発生部を有し、前記対向部は前記磁路構成部材によって形成されるのに対し、引用発明は、磁束を環流させる磁路を構成してはいるが、これが閉磁路であるか明らかではなく、また、磁路構成体が上記のようなものではない点。

上記相違点について検討する。
磁気的な作用を利用した回転角度センサにおいて、閉磁路を構成すること、また、閉磁路を構成する磁路構成体が、複数の磁路構成部材を含み、各磁路構成部材間に磁束発生部を有し、磁気検出体を挟んで対向する対向部を前記磁路構成部材によって形成されるようにしたものは、例えば、実願昭55-180732号(実開昭57-102804号)のマイクロフィルム、特開平6-66508号公報、特開平3-226625号公報、特開昭60-202308号公報に示されるように、本願出願前周知であり、引用発明にこれらの周知技術を適用して上記相違点のごとく構成することは当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の奏する効果は、引用刊行物の記載及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであり、格別のものではない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-07-12 
結審通知日 2006-07-18 
審決日 2006-07-31 
出願番号 特願平9-300730
審決分類 P 1 8・ 574- Z (G01B)
P 1 8・ 121- Z (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯野 茂  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 後藤 時男
下中 義之
発明の名称 回転角度センサ  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  

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